説明

ヤットコ

【課題】搬入道路が狭い都市部の建築現場でも搬入を容易とし、且つ杭の埋設位置の精度を向上させる。
【解決手段】上端に回転トルクが伝達される伝達部材1aを有する杭1と、杭1を回転させて埋設する埋設機の駆動装置2と、を連結して回転トルクを伝達するヤットコAであって、予め設定された長さを有する複数のヤットコ部材10〜12からなり、下端に配置されるヤットコ部材は下端部に杭1の上端に設けた伝達部材1aと係合する係合部10aが設けられると共に上端部に他のヤットコ部材(11、12)と着脱可能に連結される連結部15が設けられた下端ヤットコ部材10として構成され、上端部に配置されるヤットコ部材は上端部に埋設機の駆動装置2と接続される接続部11aが設けられると共に下端部に他のヤットコ部材(10、12)と着脱可能に連結される連結部15が設けられた上端ヤットコ部材11として構成され、前記下端ヤットコ部材10と上端ヤットコ部材11とを連結部15、16を介して連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭を地中に埋設する際に該杭と埋設機の駆動装置との間に介在させるヤットコに関し、特に、複数のヤットコ部材を長手方向に連結し得るようにしたヤットコに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下構造物を有する建物を建築する場合、根伐り作業を容易に進行させることを考慮して杭の上端部が地下構造物の最下層の基礎に対応させて埋設するのが一般的である。この場合、杭の上端部と埋設機の駆動装置との間に回転トルクを伝達するためのロッド又はヤットコを介在させて埋設することが行われる。
【0003】
例えば、ロッドを利用する場合には図7に示すように、上端部に係合部52を設けた杭51に対し、ロッド55に接続されたキャップ53を上方から嵌め込んで該キャップ53に設けた伝達部54を係合部52に係合させ、この状態で、図示しない埋設機の駆動装置を駆動してロッド55、キャップ53を所定の方向(例えば時計方向)に回転させることで、駆動装置の回転トルクを杭51に伝えるようにしている。
【0004】
そして、杭51が予め設定された埋設深さに到達したとき、駆動装置を反時計方向に回転させてキャップ53の杭51に対する係合を解除し、その後、ロッド55を引き抜くことで、杭51を予め設定された深さに埋設している。
【0005】
ロッド55を介して杭51に回転トルクを伝達する構造の場合、杭51の埋設深さが深くなるのに対応してロッド55の長さを長くする必要がある。このため、予め設定された長さを持った複数のロッド部材を用意しておき、このロッド部材を目的の杭51の埋設深さに対応した長さになるように接続してロッド55を構成している。
【0006】
一方、地中に圧入することで、或いはアースオーガによる掘削孔に対して挿入することで、埋設されるコンクリート杭の上端に対するヤットコの接合構造として、例えば特許文献1に記載された技術が提案されている。この技術は、コンクリート杭の頭部にねじ孔を有する鋼製座板を設けておき、該ねじ孔にヤットコよりも長いロッドの一端を螺合して他端をヤットコの上板から突出させ、この突出部のねじにナットを締結することで、ヤットコをコンクリート杭の上端部に結合するものである。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案第3051124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の如く、ロッド55を介して杭51に回転トルクを伝達する装置では、複数のロッド部材を長手方向に約100mm程度嵌合させ、該嵌合部位の直径方向にピンを貫通させることで容易に接続し得るように簡易な構造で構成されている。このため、ピンを利用した接合部位では該ピンを中心とした回動が生じる可能性がある。即ち、ピンを介して接続されたロッド部材の互いの軸芯がピンを中心として折れ曲がることによって、ロッド55に曲がりが生じる可能性がある。特に、ロッド55の地中にある部分でこのような曲がりが生じた場合、杭51の埋設位置が予め設定された埋設位置の許容範囲を逸脱してしまう虞が生じる。
【0009】
また、ロッド55の直径は、杭51の直径が150mm〜350mm程度であるのに対し約130mmと小さく、従って、材質等の他の条件が杭と同じであれば、剛性は杭よりも小さい。このため、施工時に地層の状況等によりロッド55に軸芯に対して交差する方向の力が作用したとき、該ロッド55に目視し得るような曲がりが生じる虞がある。この曲がりが地上にあるロッド55に生じている場合には修正することが可能である。しかし、地中にあるロッド55に曲がりが生じた場合、この曲がりを修正し得ないことがあり、この場合、杭51の埋設位置が予め設定された埋設位置の許容範囲を逸脱してしまう虞が生じる。
【0010】
また特許文献1の技術はコンクリート杭を回転させながら埋設するものではないが、利用するヤットコはロッド55と比較して剛性が大きい。このため、ヤットコを利用することにより、少なくともロッド55のように曲がりや撓みが生じる虞を排除することができ有利である。
【0011】
しかし、ヤットコの場合、長さが長いものが多く、都市部に於ける住宅建築の際に資材の搬入に有利な例えば2トントラック程度の小型トラックの荷台に載せて運搬することができないという問題がある。このため、小型トラックの荷台の長さに合わせて形成した複数のヤットコ部材を長さ方向に接続して目的のヤットコを構成することが好ましいが、このような接続部を実現したヤットコが存在しないのが実状である。
【0012】
本発明の目的は、搬入道路が狭い都市部の建築現場でも搬入が容易で、且つ杭の埋設位置の精度を向上させることができるヤットコを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係るヤットコは、上端に回転トルクが伝達される伝達部材を有する杭と、前記杭を回転させて埋設する埋設機の駆動装置と、を連結して回転トルクを伝達するヤットコであって、予め設定された長さを有する複数のヤットコ部材からなり、下端に配置されるヤットコ部材は下端部に杭の上端に設けた伝達部材と係合する係合部が設けられると共に上端部に他のヤットコ部材と着脱可能に連結される連結部が設けられた下端ヤットコ部材として構成され、上端部に配置されるヤットコ部材は上端部に埋設機の駆動装置と接続される接続部が設けられると共に下端部に他のヤットコ部材と着脱可能に連結される連結部が設けられた上端ヤットコ部材として構成され、前記下端ヤットコ部材と上端ヤットコ部材とを連結部を介して連結したものである。
【0014】
上記ヤットコに於いて、予め設定された長さを有するヤットコ部材であって上下両端部に夫々他のヤットコ部材と連結される連結が設けられた中間ヤットコ部材として構成され、1又は複数の前記中間ヤットコ部材を前記下端ヤットコ部材と前記上端ヤットコ部材との間に配置すると共に連結部を介して連結したことが好ましい。
【0015】
また上記何れかのヤットコに於いて、前記連結部が、隣接する一対のヤットコ部材の一方のヤットコ部材の内周面に係合突起を設けておき、他方のヤットコ部材の端部に前記一方のヤットコ部材に挿入し得る管状突起を設けると共に該管状突起が前記一方のヤットコ部材の内周面に設けた係合突起と離脱阻止部材を受け入れる受け部を有し更に該他方のヤットコ部材に於ける該受け部の近傍に開口部を設けておき、前記他方のヤットコ部材に設けた管状突起を前記一方のヤットコ部材に挿入して受け部によって係合突起を受け入れると共に、前記開口部を介して前記受け部に離脱阻止部材を挿入して前記環状突起の受け部からの離脱を阻止するように構成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヤットコでは、上端ヤットコ部材と下端ヤットコ部材とを連結部を介して連結することで、所望の長さのヤットコを構成することができる。そして、上端ヤットコ部材を接続部を介して埋設機の駆動装置に接続し、下端ヤットコ部材を係合部を介して杭の伝達部材と係合させることによって、駆動装置からの回転トルクを杭に伝達することができる。
【0017】
このように構成されたヤットコは、杭と略同じ直径を有する鋼管によって構成されるため、従来のロッドと比較して充分に太く、これに伴って剛性も大きい。このため、ヤットコに軸芯に対し交差する方向の力が作用した場合であっても、ロッドと比較して曲がりや撓みが生じることが少なく、従って、杭の埋設位置の精度を向上させることができる。
【0018】
また、上下両端部に夫々他のヤットコ部材と連結される連結部が設けられた中間ヤットコ部材として構成され、1又は複数の中間ヤットコ部材を下端ヤットコ部材と上端ヤットコ部材との間に配置して連結することでヤットコを構成した場合には、各ヤットコ部材の長さを、トラックの荷台の長さ、埋設すべき杭の深さ、に対応させて設定することができる。このため、運搬効率の良いヤットコ部材及びこれらのヤットコ部材からなるヤットコを構成することができる。また中間ヤットコ部材の数を選択することによって、所望の長さを持ったヤットコを構成することができる。
【0019】
特に、連結部を本発明のように構成することによって、一対のヤットコ部材の一方のヤットコ部材に他方のヤットコ部材の管状突起を嵌合させ、該管状突起に形成された受け部を一方のヤットコ部材の内周面に形成した係合突起に係合させ、その後、受け部に離脱防止部材を挿入することによって、一対のヤットコ部材を連結することができる。即ち、上端ヤットコ部材、下端ヤットコ部材、複数の中間ヤットコ部材からなるヤットコを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るヤットコの好ましい実施の形態について説明する。本発明に係るヤットコは、都市部に於ける住宅建築のように、周辺が狭い道路しかないような土地に地下構造物を有する建物を建築する際に用いて有利なものであり、且つ可及的に杭の埋設位置の精度を向上させることを実現し得るようにしたものである。
【0021】
即ち、ヤットコを、2トントラック程度の小型トラックの荷台の幅又は長さに対応した長さを有する複数のヤットコ部材を連結することによって、所望の長さに調整し得るようにしたものである。
【0022】
またヤットコ部材どうしの連結部の構成を、係合突起と、管状突起に形成され前記係合突起を受け入れると共に該受け部に受け入れた係合突起の離脱を阻止する離脱阻止部材が挿入される受け部を形成することにより、ピンによる簡易な接続と異なり、連結部を介してヤットコ部材を連結したときの軸芯の折れ曲がりの自由度を極めて小さくすることが可能となり、この結果、杭の埋設位置の精度を向上させることが可能となるのである。
【実施例1】
【0023】
次に、第1実施例に係るヤットコの構成について図を用いて説明する。図1はヤットコの全体構成を説明する図である。図2はヤットコ部材を連結する連結部の構成と離脱防止部材の構成を説明する図である。図3は連結部を介して一対のヤットコ部材を連結した状態を説明する図である。
【0024】
図1に示すヤットコAは、地中に埋設される杭1と図示しない埋設装置に装着された駆動装置2との間に配置されてこれらの杭1と駆動装置2とを連結し、駆動装置2から発生した回転トルクを杭1に伝達するものである。
【0025】
ヤットコAは、下端ヤットコ部材10、上端ヤットコ部材11、中間ヤットコ部材12からなる複数のヤットコ部材を有している。夫々のヤットコ部材10〜12は杭1の太さと略同じ太さを持ち、且つ予め設定された長さを持った鋼管によって構成されている。
【0026】
各ヤットコ部材10〜12の長さは特に限定するものではないが、前述したように、2トントラックの荷台に載置し得るような長さであって、且つ1階層分の長さに対応し得る長さであることが好ましい。各ヤットコ部材10〜12をこのような長さに設定することによって、都市部に於ける狭い道路を通って狭い土地に地下構造物付きの建物を建築するような場合でも、杭を所定の深さに埋設することが可能となる。
【0027】
本実施例では、下端ヤットコ部材10と中間ヤットコ部材12の長さは夫々約4mに設定されており、上端ヤットコ部材11は0.5mに設定されている。従って、ヤットコAとしては、4.5mから4m毎の長さに設定されることとなる。
【0028】
また、ヤットコAは、目的の杭1の埋設深さに対応して、下端ヤットコ部材10と上端ヤットコ部材11、又はこれらのヤットコ部材10、11の間に配置された所定数の中間ヤットコ部材12、を夫々相互に連結して構成されている。従って、ヤットコAでは、下端ヤットコ部材10と上端ヤットコ部材11は必須であるが、中間ヤットコ部材12は必ずしも必要なものではない。
【0029】
下端ヤットコ部材10の上端部、上端ヤットコ部材11の下端部、及び中間ヤットコ部材12の上下両端部には夫々後述するように構成された連結部が構成されており、互いに長手方向に連結して長尺状のヤットコAを構成し、或いは長尺状のヤットコAの連結を解除して個々のヤットコ部材10〜12に分解し得るように構成されている。
【0030】
下端ヤットコ部材10は、杭1の上端に設けられた回転トルクが伝達される伝達部材1aと係合する係合部10aが設けられている。本発明に於いて、下端ヤットコ部材10に設けられる係合部10aの形状や寸法、構造は限定するものではなく、埋設すべき杭1の伝達部材1aの形状や寸法、構造に対応して設定される。
【0031】
本実施例では、杭1の伝達部材1aは、杭1の外周に於ける上端部分に溶接等の手段で固定した板状の部材によって形成されている。また、伝達部材1aとしては、杭1の上端面に面板を設け、この面板にボルト等によって固定した鋼板によって構成することも可能である。何れの構造であっても、ヤットコAを介して伝達される回転トルクに対抗することが可能な強度を有するものであれば、伝達部材1aとして利用することが可能である。
【0032】
このため、下端ヤットコ部材10に設けた係合部10aは、上記したような杭1に設けた伝達部材1aの形状や寸法、構造に対応させて最も好ましいものが形成される。本実施例では、下端ヤットコ部材10の下端部分に杭1の伝達部材1aを含んだ上端部分を嵌合し得るキャップ10bが設けられており、該キャップ10bの側面に係合部10aが形成されている。
【0033】
上端ヤットコ部材11は、駆動装置2と接続されて該駆動装置2からの回転トルクを受けるものである。このため、上端ヤットコ部材11の上端部分には駆動装置2の出力部2aと接続される接続部11aが形成されている。
【0034】
上端ヤットコ部材11に設けた接続部11aは、駆動装置2の出力部2aの形状や寸法、構造に対応して構成されている。本実施例では、出力部2aはフランジを有して構成されており、接続部11aは上端ヤットコ部材11の上端面に溶接等の手段で固定した鋼板に複数のねじを形成して構成されている。そして、出力部2aを構成するフランジを上端ヤットコ部材11の接続部11aに対向させて図示しないボルトによって接続している。
【0035】
次に、下端ヤットコ部材10及び中間ヤットコ部材12の上端部に形成される上端連結部15、上端ヤットコ部材11及び中間ヤットコ部材12の下端部に形成される下端連結部16の構成について、図2、3により説明する。尚、各図では代表して中間ヤットコ部材12の上下両端に、上端連結部15、下端連結部16を構成したものとして説明している。
【0036】
上端連結部15は、中間ヤットコ部材12(及び下端ヤットコ部材10)の上端部分に構成されている。中間ヤットコ部材12の内周面であって上端12aから所定長さ離隔した位置に係合突起15aが形成されている。この係合突起15aは予め設定された幅寸法と長さ寸法、及び厚さ寸法を持った鋼板を溶接等の手段で固定して構成されており、厚さ分が下端連結部16と係合する係合突起15aとして形成される。
【0037】
係合突起15aの長さや厚さは特に限定するものではなく、後述する下端連結部16を構成する受け部の係合部と係合したときに伝達される回転トルクに応じて面圧に充分に耐えることが可能な面積と強度を有するものであれば良い。また係合突起15aの数も特に限定するものではなく、中間ヤットコ部材12の上端部分に2カ所、或いは3カ所程度形成しておくことができる。
【0038】
下端連結部16は、中間ヤットコ部材12(及び上端ヤットコ部材11)の下端部分に構成されている。中間ヤットコ部材12の下端12bから管状突起16aが突出して形成されている。管状突起16aの長さは、上端連結部15を構成する係合突起15aの下端よりも充分に下方に到達し得るものであることが好ましい。また管状突起16aの厚さは特に限定するものではなく、上端連結部15を構成する係合突起15aと当接して回転トルクを伝達する際に生じる抵抗に充分に対抗し得るものであれば良い。
【0039】
管状突起16aには、上端連結部15を構成する係合突起15aに対応する位置に夫々受け部16bが形成されている。この受け部16bには、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端に対し上方に位置する中間ヤットコ部材12の管状突起16aを嵌合する際に、係合突起15aの通過を許容すると共に離脱阻止部材17が挿入される通路16dと、該通路16dに設けられ中間ヤットコ部材12の上端部分に管状突起16aが嵌合されたとき、係合突起15aを受け入れる凹部16cとが形成されている。
【0040】
また、中間ヤットコ部材12の下端12b側であって受け部12bと対応する位置に開口12cが形成されている。この開口12cは、離脱阻止部材17を挿通し、或いは挿通されている離脱阻止部材17を取り外す際に利用するものである。
【0041】
離脱阻止部材17は、管状突起16bを中間ヤットコ部材12の上端部分に嵌合して係合突起15aを通路16dを介して凹部16cに受け入れた後、開口12cから通路16dに挿通して該通路16dを閉鎖することによって、係合突起15aの凹部16cからの離脱を阻止するものである。
【0042】
このため、離脱阻止部材17は、受け部16bを構成する通路16dの幅寸法よりも僅かに小さい幅寸法と、開口12cの下端部分から受け部16bに形成された凹部16cの下端部分に至る長さと、通路16dの厚さよりも僅かに小さい厚さを有する短冊状の鋼板によって構成されている。特に、上端部分にはハンドル17aが取り付けられており、作業員がこのハンドル17aを把持して操作することで、通路16dに対する着脱を容易に行えるように構成されている。
【0043】
尚、管状突起16aに構成された受け部16b(凹部16c、通路16d)は、該管状突起16aを厚さ方向に貫通して形成したスリットによって構成しても良く、また管状突起16aの外周面に彫り込んだ溝によって構成しても良い。
【0044】
受け部16bを管状突起16aの肉厚を貫通するスリットによって構成する場合、加工が簡単である。しかし、スリットによって管状突起が複数の片に分割されることとなり、強度的な面から管状突起16aの肉厚を厚くする必要が生じることがある。また受け部16bを管状突起16aを肉厚貫通することのない溝によって構成する場合、管状突起16aは管としての形状を保持することとなり、強度的な面からは有利である。
【0045】
上記の如く構成された上端連結部15と、下端連結部16を有する中間ヤットコ部材12を連結する手順について図3により説明する。
【0046】
先ず、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端部12aの上方に、上方に位置する中間ヤットコ部材12の下端12bを対向させ、管状突起16aを下方の中間ヤットコ部材12の上端12aに嵌合させる。このとき、管状突起16aに設けた通路16dを下方に位置する中間ヤットコ部材12の係合突起15aに正確に対向させる。
【0047】
上方に位置する中間ヤットコ部材12の管状突起16aを、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端12aから嵌合し、通路16dに係合突起15aを嵌合させる。この状態で、上方に位置する中間ヤットコ部材12の管状突起16aの下方に位置する中間ヤットコ部材に対する嵌合を進行させ、両中間ヤットコ部材12の上端12aと下端12bとが当接して嵌合を停止する。
【0048】
その後、上方に位置する中間ヤットコ部材12を時計方向に回動させ、この回動によって係合突起15aを凹部16cに嵌め込む。上方に位置する中間ヤットコ部材12の回動に伴って、通路16dは開口12cと連通する。その後、開口12cを介して離脱阻止部材17を中間ヤットコ部材12の内部に挿入すると共に通路16dに挿入する。これにより、上下に位置する中間ヤットコ部材12を連結することが可能である。
【0049】
上記の如くして上下に位置する中間ヤットコ部材12を嵌合させると共に離脱阻止部材17を利用することによって、図3に示すように、係合突起15aを受け入れた凹部16cを、通路16dに嵌め込まれた離脱阻止部材17によって閉鎖することが可能となる。このため、上下に位置する中間ヤットコ部材12を相対的に反時計方向に回動させたとしても、係合突起15aの通路16dへの移動を離脱阻止部材17によって阻止することとなり、従って、係合突起15aの受け部16bからの離脱を阻止することが可能となる。
【0050】
上記の如く構成されたヤットコAでは、駆動装置2から付与された回転トルクは、受け部16bを構成する凹部16cと係合突起15aとの係合によって、上方に位置するヤットコ部材(11、12)から下方に位置するヤットコ部材(12、10)に伝達される。
【実施例2】
【0051】
次に、第2実施例に係るヤットコの構成について説明する。図4は第2実施例に係る連結部の構成を説明する図である。本実施例は、上下に位置する中間ヤットコ部材12をボルトによって連結するものである。
【0052】
図に示すように、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端12aには、上端連結部20が設けられている。この上端連結部20は、中間ヤットコ部材12の内周面に複数の突起片20aを溶接等の手段で固定すると共に、各突起片20aの更に内周面側にナット20bを溶接等の手段で固定して構成されている。突起片20aの数、及びナット20bのサイズは特に限定するものではないが、付与される回転トルクの値に対応させて適宜設定することが好ましい。
【0053】
上方に位置する中間ヤットコ部材12の下端12b側に下端連結部21を構成するボルト穴21aが形成されている。このボルト穴21aは、上端連結部20を構成する突起片20aに於ける上端12aからナット20bの中心までの距離に対応させて下端12bからの距離が設定されると共に、ナット20bのサイズに対応させた直径を持って形成されている。
【0054】
本実施例では、上方に位置する中間ヤットコ部材12の下端12bを、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端12aに設けた突起片20aに嵌合させる。このとき、各突起片20aに設けたナット20bの穴と、ボルト穴21aとを正確に対向させる。そして、上下の中間ヤットコ部材12を嵌合して、ナット20bとボルト穴21aとが対向した後、ボルト穴21aに図示しないボルトを挿通してナット20bに締結することで、上下に位置する中間ヤットコ部材12を連結することが可能である。
【0055】
上記の如く構成されたヤットコAでは、駆動装置2からの回転トルクは、図示しないボルトを介して、上方に位置するヤットコ部材(11、12)から下方に位置するヤットコ部材(12、10)に伝達される。
【実施例3】
【0056】
次に、第3実施例に係るヤットコの構成について説明する。図5は第3実施例に係る連結部の構成を説明する図である。図6は連結部を介して一対のヤットコ部材を連結した状態を説明する図である。本実施例は、上下に位置する中間ヤットコ部材12を、連結プレートを介して連結したものである。
【0057】
下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端12aから予め設定された寸法離隔した位置であって対向する部位に上端連結部25を構成する一対の開口25aが形成されている。開口25aの形状は特に限定するものではなく、丸、多角形等の形状であって良い。
【0058】
上方に位置する中間ヤットコ部材12の下端12bから下端連結部26を構成する管状突起26aが形成されている。この管状突起26aに於ける下端12bからの距離が、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端12aから開口25aの中心までの距離と等しい位置であって対向する位置に、前記開口25aよりも小さい寸法を持った一対の開口26bが形成されている。
【0059】
開口26bの寸法は特に限定するものではなく、中間ヤットコ部材12に作用する回転トルクに対抗し得る面圧、強度を発揮し得るものであれば良い。
【0060】
連結プレート27は、開口25aと開口26bにわたって配置され、上方に位置する中間ヤットコ部材12の開口26bを介して伝えられる回転トルクを、開口25aを介して下方に位置する中間ヤットコ部材12に伝達する機能を有するものである。
【0061】
このため、連結プレート27は、下方に位置する中間ヤットコ部材12の曲率と略等しい曲率を有し且つ少なくとも開口25aの円周方向の寸法と等しい寸法を持った第1プレート27aと、上方に位置する中間ヤットコ部材12の曲率と略等しい曲率を有し且つ少なくとも開口26bの円周方向の寸法と等しい寸法を持った第2プレート27bと、を有し、両プレート27a、27bを溶接等の手段で一体化して構成されている。そして中心にはボルト28aを挿通するためのボルト穴27cが形成されている。
【0062】
本実施例では、図6に示すように、下方に位置する中間ヤットコ部材12の上端12aに上方に位置する中間ヤットコ部材12の下端12bに設けた管状突起26aを嵌合する。このとき、管状突起26aに設けた開口26bを、下方に位置する中間ヤットコ部材12に設けた開口25aに対向させる。
【0063】
次に、対向する開口25a、26aに連結プレート27を嵌め込む。連結プレート27を構成する各プレート27a、27bが、夫々対応する開口25a、26aの円周方向の寸法と等しい寸法を有するため、連結プレート27を各開口25a、26bに嵌め込んだとき、上下に位置する中間ヤットコ部材12は、開口26b、連結プレート27、開口25aが互いに接続することになる。
【0064】
対向する開口25a、26bに夫々連結プレート27を嵌め込んだ後、一方の連結プレート27のボルト穴27cにボルト28aを挿通して他方の連結プレート27のボルト穴27cから突出させ、この突出部にナット28bを締結することで、上下に位置する中間ヤットコ部材12を連結することが可能である。
【0065】
上記の如く構成されたヤットコAでは、駆動装置2からの回転トルクは、連結プレート27を介して、上方に位置するヤットコ部材(11、12)から下方に位置するヤットコ部材(12、10)に伝達される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るヤットコは、搬入用の道路が狭い都市部に於ける地下構造物を持った建物の基礎工事を行う際に利用して有利である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ヤットコの全体構成を説明する図である。
【図2】ヤットコ部材を連結する連結部の構成と離脱防止部材の構成を説明する図である。
【図3】連結部を介して一対のヤットコ部材を連結した状態を説明する図である。
【図4】第2実施例に係る連結部の構成を説明する図である。
【図5】第3実施例に係る連結部の構成を説明する図である。
【図6】連結部を介して一対のヤットコ部材を連結した状態を説明する図である。
【図7】ロッドを利用して杭を埋設する際の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
A ヤットコ
1 杭
1a 伝達部材
2 駆動装置
2a 出力部
10 下端ヤットコ部材
10a 係合部
10b キャップ
11 上端ヤットコ部材
11a 接続部
12 中間ヤットコ部材
12a 上端
12b 下端
12c 開口
15 上端連結部
15a 係合突起
16 上端ヤットコ部材
16a 管状突起
16b 受け部
16c 凹部
16d 通路
17 離脱阻止部材
17a ハンドル
20 上端連結部
20a 突起片
20b ナット
21 下端連結部
21a ボルト穴
25 上端連結部
25a 開口
26 下端連結部
26a 管状突起
26b 開口
27 連結プレート
27a 第1プレート
27b 第2プレート
27c ボルト穴
28a ボルト
28b ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に回転トルクが伝達される伝達部材を有する杭と、前記杭を回転させて埋設する埋設機の駆動装置と、を連結して回転トルクを伝達するヤットコであって、予め設定された長さを有する複数のヤットコ部材からなり、下端に配置されるヤットコ部材は下端部に杭の上端に設けた伝達部材と係合する係合部が設けられると共に上端部に他のヤットコ部材と着脱可能に連結される連結部が設けられた下端ヤットコ部材として構成され、上端部に配置されるヤットコ部材は上端部に埋設機の駆動装置と接続される接続部が設けられると共に下端部に他のヤットコ部材と着脱可能に連結される連結部が設けられた上端ヤットコ部材として構成され、前記下端ヤットコ部材と上端ヤットコ部材とを連結部を介して連結したことを特徴とするヤットコ。
【請求項2】
予め設定された長さを有するヤットコ部材であって上下両端部に夫々他のヤットコ部材と連結される連結部が設けられた中間ヤットコ部材として構成され、1又は複数の前記中間ヤットコ部材を前記下端ヤットコ部材と前記上端ヤットコ部材との間に配置すると共に連結部を介して連結したことを特徴とする請求項1に記載したヤットコ。
【請求項3】
前記連結部が、隣接する一対のヤットコ部材の一方のヤットコ部材の内周面に係合突起を設けておき、他方のヤットコ部材の端部に前記一方のヤットコ部材に挿入し得る管状突起を設けると共に該管状突起が前記一方のヤットコ部材の内周面に設けた係合突起と離脱阻止部材を受け入れる受け部を有し更に該他方のヤットコ部材に於ける該受け部の近傍に開口部を設けておき、前記他方のヤットコ部材に設けた管状突起を前記一方のヤットコ部材に挿入して受け部によって係合突起を受け入れると共に、前記開口部を介して前記受け部に離脱阻止部材を挿入して前記管状突起の受け部からの離脱を阻止するように構成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載したヤットコ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−7225(P2010−7225A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163919(P2008−163919)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】