説明

ヤヌスキナーゼ阻害剤として有用なアザインドール

本発明はプロテインキナーゼ、特にJAKファミリーキナーゼ抑制剤として有用な化合物に関する。本発明は、前記化合物を含む薬学的に許容できる組成物及び種々の疾病、症状、又は障害の治療において当該組成物を使用する方法も提供する。これらの化合物、及びその薬理学的に許容できる組成物は、増殖性疾患、心疾患、神経変性病、自己免疫疾患、臓器移植に関連する症状、炎症性疾患、又は免疫媒介性の疾患を含む、患者における種々の疾患の治療又は重篤さの低減において有用である。本発明により提供される化合物及び組成物はまた、生物学的及び病理学的現象におけるJAKキナーゼの研究、当該キナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究、及び新規キナーゼ阻害剤に対する比較評価においても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害剤として有用な化合物の提供に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬理学的に許容できる組成物、及び種々の疾患の治療への、かかる組成物の使用方法の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤヌスキナーゼ(JAK)はチロシンキナーゼのファミリーであり、JAK1、JAK2、JAK3及びTYK2から構成される。JAKはサイトカインシグナル伝達系において重要な役割を果たす。JAKファミリーキナーゼの下流物質としては、転写のシグナル伝達物質及び活性剤(STAT:signal transducer and activator of transcription)タンパク質が挙げられる。JAK/STATシグナル伝達は、アレルギー、喘息、移植による拒絶反応等の自己免疫疾患、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、並びに白血病及びリンパ腫等の固形及び血液の悪性疾患等、多くの免疫反応の異常に影響を与えることが報告されている。また、JAK2は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性突発性骨髄線維症、骨髄線維症を伴う骨髄様化生、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、慢性好酸球性白血病、好酸球増加症候群及び体系肥満細胞病(systemic mast cell disease)を含む骨髄増殖性障害にも関与しうることが報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物の開発に対する大きなニーズが存在する。特に、JAKファミリーキナーゼの阻害剤として有用な化合物の開発が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る化合物、及びその薬学的に許容できる組成物が、プロテインキナーゼ(特にJAKファミリーキナーゼ)の阻害剤として効果的であることが見出された。これらの化合物は、一般式I
【化1】

を有するか、又は、その薬学的に許容できる塩であり、式中、X、R、R及びRは本明細書に定義するとおりである。
【0005】
これらの化合物、及びその薬理学的に許容できる組成物は、増殖性疾患、心疾患、神経変性病、自己免疫疾患、臓器移植に関連する症状、炎症性疾患、又は免疫媒介性の疾患を含む、患者における種々の疾患の治療又は重篤さの低減において有用である。
【0006】
本発明により提供される化合物及び組成物はまた、生物学的及び病理学的現象におけるJAKキナーゼの研究、当該キナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究、及び新規キナーゼ阻害剤に対する比較評価においても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
定義及び一般的な専門用語
本明細書では、特に明記しない限り以下の定義を用いる。本発明の目的において、化学元素の同定は、CAS版の元素周期表、及びHandbook of Chemistry and Physics、第75版、1994に従う。更に、有機化学の一般的な原則については、”Organic Chemistry”、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito:1999、及び、”March’s Advanced Organic Chemistry”、5th Ed.、M.B.Smith and J.March、eds.、John Wiley&Sons、New York:2001に記載され、これらの記載内容全体は、参照により本明細書中に援用する。
【0008】
本明細書に記載のように、本発明の化合物は、上述の図示又は本発明の特定の分類、下位分類及び化学種により例示のように、1種以上の置換基によって任意に置換されてもよい。語句「任意に置換され」は、「置換又は非置換の」と用語と同義的に用いられる。一般に、「置換され」という用語は、用語「任意に」が前に付いても付かなくても、所定の構造において、1個以上の水素基が所定の置換基で置換されることを指す。特に明記しない限り、任意に置換されてもよい基は、その基の各置換位置において置換基を有していてもよい。所定の構造における2カ所以上の位置を、所定の群から選択される2以上の置換基で置換可能である場合、当該置換基は、各置換位置において同一でもよく、異なっていてもよい。
【0009】
本明細書に記載の用語「任意に置換されてもよい」が列挙の前にある場合、当該用語は、その列挙において後続の全ての基が置換可能であることを指す。置換基としての遊離基又は構造が「任意に置換されてもよい」として同定も定義もされない場合、当該置換基又は構造は置換されていない。例えば、Xがハロゲン、任意に置換されてもよいC1−3アルキル又はフェニルである場合、Xは任意に置換されてもよいアルキル基又は任意に置換されてもよいフェニル基のいずれかであってもよい。同様に、用語「任意に置換されてもよい」が列挙に続く場合も、当該用語は、特に明記しない限り、前述の列挙の全ての基が置換可能であることを指す。例えば、Xがハロゲン、C1−3アルキル又はフェニルであり、且つXが任意にJで置換されてもよい場合、当該C1−3アルキル基及びフェニル基は両方共に任意にJで置換されてもよい。当業者に明らかなように、水素、ハロゲン、NO、CN、NH、OH又はOCF等の基は、置換可能な基ではないことから、そこには含まれない。
【0010】
本発明において想定される置換基の組み合わせは、安定な又は化学的に適合性を有する化合物の形成を可能にするものが好ましい。本明細書で使用する用語「安定」とは、化合物を製造、検出、及び好ましくは、回収、精製、及び本明細書に開示される1以上の目的で使用する場合において、実質的に変質しない化合物を指すときに用いる。一実施形態では、安定化合物又は化学的使用可能な化合物は、水分の非存在下又は他の化学的反応性条件において、40℃以下の温度で少なくとも1週間に亘って保持される場合、実質的に変質しない化合物とする。
【0011】
本明細書で使用の用語「脂肪族」又は「脂肪族基」は、完全飽和の、若しくは1つ以上の不飽和単位を含む直鎖(すなわち非分岐)又は分岐等の、置換若しくは非置換の炭化水素鎖を意味する。特に明記しない限り、脂肪族は1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。一実施形態では、脂肪族は1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族は1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。また別の実施形態では、脂肪族は1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。更に別の実施形態では、脂肪族は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。好適な脂肪族としては、直鎖状若しくは分岐状の、置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル又はアルキルニル基が挙げられるがこれらに限定されない。脂肪族の他の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ビニル、及びsec−ブチル基が挙げられる。
【0012】
用語「脂環式」基(又は「カルボシクリル」又は「シクロアルキル」基)は完全に飽和するか又は不飽和の1つ以上の単位を含むが、芳香族化合物でない炭化水素基のことを指し、それは残りの分子への単一の結合部位を有し、前記二環式環システムのいかなる個々の環も3〜7員を有する。特に明記しない限り、用語「脂環式」基とは、単環式のC−C炭化水素基又は二環式のC−C12炭化水素基を指す。好適な脂環式基としては、シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族の更なる例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル及びシクロヘプテニル基が挙げられる。
【0013】
本明細書に使用の用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、又は「複素環式」は、完全飽和の、若しくは1以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではなく、分子の残りの部分に対して1つの結合部位を有し、1以上の環員が独立して選択されるヘテロ原子である、単環式、二環式又は三環式の環系を指す。一実施形態では、「複素環」、「ヘテロシクリル」、又は「複素環式」基は、3〜14員環であり、1以上の環員が酸素、硫黄、窒素又はリンから独立して選択されるヘテロ原子であり、かかる系における各々の環は3〜7個の環員から構成される。
【0014】
複素環の例として、以下の単環:2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル基;及び以下の二環:3−1H−ベンゾイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンゾイミダゾール−2−オン、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、及び1,3−ジヒドロイミダゾール2−オン基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
用語「ヘテロ原子」とは1つ以上の酸素、硫黄、窒素、リン、又はケイ素を意味し、それらには酸化形態の窒素、硫黄、リン若しくはケイ素、塩基性窒素の四級化形態、又は3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるNやピロリジニルにおけるNH又はN−置換ピロリジニルにおけるNR等の、複素環中に存在する置換可能な窒素が包含される。
【0016】
本明細書で使用する用語「不飽和」とは、ある部分が1以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0017】
用語「アラルキル」、「アラルコキシ」又は「アリールオキシアルキル」基中の一部又は比較的大きな部分の構造を現すために使用する用語「アリール」とは、合計6〜14員の単環式、二環式、及び三環式の炭素環のことを指し、これらの系における少なくとも1個の環は芳香族であり、系におけるそれぞれの環は3〜7員で構成され、分子の残りの部分に対する単一の結合部位を有する。用語「アリール」とは、用語「アリール環」と同義的に使用できる。アリール環の例としては、フェニル、ナフチル、及びアントラセンが挙げられる。
【0018】
「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアリールアルコキシ」基における一部又は比較的大きな部分構造を表すために使用する用語「ヘテロアリール」とは、合計5〜14環の単環式、二環式、及び三環式の環を指し、この系における少なくとも1個の環は芳香族であり、系における少なくとも1個の環は1以上のヘテロ原子を含み、系におけるそれぞれの環は3〜7員であり、分子の残りの部分に対する単一の結合部位を有する。用語「ヘテロアリール」は、「ヘテロアリール環」又は「ヘテロ芳香族」と同義的に使用できる。
【0019】
ヘテロアリール環の例としては、単環式:2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例、5−テトラゾリル)、チアゾリル(例、2−トリアゾリル及び5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ピラゾリル(例、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル基、及び二環式:ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例、2−インドリル)、プリニル、キノリニル(例、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、及びイソキノリニル基(例、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、又は4−イソキノリニル基)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
一実施形態では、アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)又はヘテロアリール(ヘテロアラルキル及びヘテロアリールアルコキシ等を含む)基は、1個以上の置換基を含んでいてもよい。アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素原子における好適な置換基は、以下のR及びRの定義において列挙される基から選択される。他の好適な置換基としては、以下のものを挙げられる:ハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、Rで任意に置換されてもよいフェニル(Ph)、Rで任意に置換されてもよいO(Ph)、Rで任意に置換されてもよい(CH1−2(Ph)、Rで任意に置換されてもよいCH=CH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)N(R、−NRC(S)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)N(R、−C(S)N(R、−OC(O)N(R、−OC(OR)、−C(O)N(OR)R、−C(=NOR)R、−S(O)、−S(O)、−S(O)N(R、−S(O)R、−NRS(O)N(R、−NRS(O)、−N(OR)R、−C(=NH)−N(R、又は−(CH0−2NHC(O)R
(式中、Rは各々独立に水素、任意に置換されてもよいC1−6脂肪族、非置換の5〜6員のヘテロアリール又は複素環、フェニル、−O(Ph)又は−CH(Ph)から選択され、あるいは、同一の置換基又は異なる置換基における2つのRは独立に、各R基が結合する原子と共に、5〜8員のヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリール環を形成するか、又は3〜8員のシクロアルキル環を形成し、且つかかるヘテロアリール又はヘテロシクリル環は窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族に対する任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、又はハロC1−4脂肪族から選択され、且つ上記のRにおけるC1−4脂肪族はそれぞれ非置換である)。
【0021】
一実施形態では、脂肪族又はヘテロ脂肪族、又は非芳香族複素環は、1個以上の置換基を含んでいてもよい。脂肪族又はヘテロ脂肪族、又は非芳香族複素環の飽和炭素における好適な置換基は、アリール又はヘテロアリール基の不飽和炭素に関して列挙された基から選択され、更に以下のものが挙げられる:
=O、=S、=NHNR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)、又はNR
(但し、各Rは、水素又は任意に置換されてもよいC1−6脂肪族から独立して選択される。Rの脂肪族における任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、又はハロC1−4脂肪族から選択され、且つ上記のRにおけるC1−4脂肪族はそれぞれ非置換である)。
【0022】
一実施形態では、非芳香族複素環の窒素に対する任意の置換基としては、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−S(O)、−S(O)N(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R又は−NRS(O)が挙げられ、Rは水素、任意に置換されてもよいC1−6脂肪族、任意に置換されてもよいフェニル、任意に置換されてもよい−O(Ph)、任意に置換されてもよい−CH(Ph)、任意に置換されてもよい−(CH1−2(Ph)、任意に置換されてもよい−CH=CH(Ph)であるか、又は酸素、窒素若しくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5〜6員のヘテロアリール又は複素環であるか、あるいは、2つのR(同一の置換基又は異なる置換基)は独立に、各R基が結合する原子と共に、5〜8員のヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリール環を形成するか、又は3〜8員のシクロアルキル環を形成し、かかるヘテロアリール又はヘテロシクリル環は、窒素、酸素若しくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族又はフェニル環における任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、又はハロ(C1−4脂肪族)から選択され、且つ上記のRにおけるC1−4脂肪族はそれぞれ非置換である。
【0023】
一実施形態では、上記で詳述したように、R(又はR又は本明細書で同様に定義される他の可変構造)が独立して2つ発生する場合は、各可変構造が結合する原子と共に、5〜8員のヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリール環、又は3〜8員のシクロアルキル環を形成してもよい。2つの独立したR(又はR又は本明細書で同様に定義される他の可変構造)が、各可変構造が結合する原子と共に形成する環としては、以下のものが挙げられるがそれらに限定されない:
a)2つの独立したR(又はR又は本明細書で同様に定義される他の可変構造)が同一の原子と結合し、その原子と共に形成する環、例えばN(R:(式中、Rは両方とも窒素原子と共にピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル又はモルホリン−4−イル基を形成する);並びに、
b)2つの独立したR(又はR又は本明細書で同様に定義される他の可変構造)が異なる原子に結合し、それらの原子の両方と共に形成する環、例えば2個のORでフェニル基が以下のように置換される場合、
【化2】


これらの2個のRは、それらが結合する酸素原子と共に縮合し、酸素を含む6員環
【化3】


を形成する。なお、本発明はR(又はR又は本明細書で同様に定義される他の可変構造)が独立して2つ存在する態様、各可変構造がそれらが結合する原子と共に種々の他の環を形成する態様、並びに上述の具体的な例示的態様に限定されないことは自明である。
【0024】
一実施形態では、アルキル鎖又は脂肪族鎖には、任意に他の原子又は基を介在させてもよい。これは、アルキル又は脂肪族鎖のメチレン単位が他の原子又は基で任意に置換されてもよいことを意味する。このような原子又は基の例としては、以下のものが挙げられるがそれらに限定されない:
−NR−、−O−、−S−、−CO−、−O(C)O−、−C(O)C(O)−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)−、−NRC(O)−、−NRC(O)O−、−S(O)NR−、−NRS(O)−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−又は−S(O)−(式中Rは本明細書に定義される)。特に明記しない限り、任意に置換を行うことより化学的に安定な化合物が形成される。かかる任意の介在は、鎖の途中及び鎖の両端部、すなわち結合位置及び/又は末端部の両方に存在してもよい。化学的に安定な化合物が得られる限りにおいて、2つの介在部が鎖内で相互に隣接してもよい。特に明記しない限り、当該置換又は介在が末端部に存在する場合、置換原子は末端部のHに結合する。例えば、−CHCHCHが−O−で任意に遮断された場合、これにより得られる化合物は、−OCHCH、−CHOCH又は−CHCHOHであり得る。
【0025】
本明細書で、多環系(以下に示す)中の1つの環の中心から置換基との結合が延びている表記を行う場合、当該置換基がかかる多環系内の任意の環中の置換位置と結合してもよいことを意味する。例えば、図aは、図bで示される任意の位置で置換されてもよいことを意味する。
【化4】

【0026】
このことはまた、任意の環系(点線で示す場合がある)が縮合した多環系に対しても適用される。例えば図cでは、Xは、環A及び環Bの両方に対して任意に結合してもよい置換基となる。
【化5】

【0027】
しかしながら、多環系における2個の環が、各環の中心から引き出される異なる置換基を各々有する場合は、特に明記しない限り、各置換基はそれぞれが結合する環に対する置換基であることを意味する。例えば、図dでは、Yは環Aのみに対する任意の置換基であり、Xは環Bのみに対する任意の置換基である。
【化6】

【0028】
特に明記しない限り、本明細書に示される構造体には、その構造体についての全ての異性体(例、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何(又は構造)異性体)の形態、例えば、各非対称中心に対するR及びS配置、(Z)及び(E)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)構造異性体が包含されることを意味する。したがって、本発明の化合物に関する単一の立体化学異性体並びにエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何(又は構造)異性体混合物は本発明の範囲内である。
【0029】
特に明記しない限り、本発明の化合物に関する全ての互変異性体形態は本発明の範囲内にある。更に、特に明記しない限り、本明細書に示される構造体には、1個以上の同位体標識原子の存在のみにおいて異なる化合物が包含されることを意味する。例えば、水素が重水素又はトリチウムで置換、あるいは炭素が13C又は14C標識炭素で置換されている以外は同一の構造を有する本発明の化合物は本発明の範囲内となる。かかる化合物は、例えば生物学的アッセイにおける分析ツール又はプローブとして有用である。
【0030】
本発明に係る化合物の説明:
本発明は、式Iの化合物、
【化7】

又はその薬学的に許容できる塩に関する。式中Rは水素、Cl又はFであり、XはN又はCRであり、Rは水素、F、R’、OH、OR’、COR’、COOH、COOR’、CONH、CONHR’、CON(R’)又はCNであり、Rは水素、F、R’、OH、OR’、COR’、COOH、COOR’、CONH、CONHR’、CON(R’)又はCNであるか、又はR及びRは共に、1〜4個のR10で任意に置換されてもよい5−7員のアリール又はヘテロアリール環を形成し、R’は、1〜4個のRで任意に置換されてもよいC1−3脂肪族であり、各Rはハロゲン、CF、OCH、OH、SH、NO、NH、SCH、NCH、CN又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択されるか、又は2つのR群はそれらが結合する炭素原子と共にシクロプロピル環又はC=Oを形成し、各R10はハロゲン、OCH、OH、NO、NH、SH、SCH、NCH、CN又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択され、R
【化8】


であり、R”は水素であるか又は−R11の1〜3個の基で任意に置換されてもよいC1−2脂肪族であり、各R11はハロゲン、OCH、OH、SH、NO、NH、SCH、NCH、CN、CON(R15又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択されるか、又は2つのR11基が、それらが結合する炭素原子と共にシクロプロピル環又はC=Oを形成し、Rは1〜5個のR12基で任意に置換されてもよいC1−4脂肪族化合物であり、各R12はハロゲン、OCH、OH、NO、NH、SH、SCH、NCH、CN又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択されるか、又は2つのR12基が、それらが結合する炭素原子と共にシクロプロピル環を形成し、環Aは、N、O又はSから選択される最高2つのヘテロ原子を含有し、1〜4個のR13基で任意に置換されてもよい4〜8員の飽和窒素含有環であり、各R13はハロゲン、R’、NH、NHR’、N(R’)、SH、SR’、OH、OR’、NO、CN、CF、COOR’、COOH、COR’、OC(O)H、OC(O)R’、CONH、CONHR’、CON(R’)、NHC(O)R’又はNR’C(O)R’から独立に選択されるか、又はあらゆる2つのR13基が、同じ置換基又は異なる置換基と、各R13基が結合している1つ以上の原子と共に、1〜3個のR基で任意に置換されてもよい3〜7員の飽和、不飽和、若しくは部分的に飽和の炭素環若しくは複素環を形成し、Rは1〜5個のR12基で任意に置換されてもよいC1−4脂肪族化合物であり、RはC1−2アルキルであるか、又は、R及びRが共に、1〜5個のR12基で任意に置換されてもよい3〜7員の炭素環式若しくは複素環式の飽和環を形成し、R14は水素又は非置換C1−2アルキル基であり、R15は水素又は非置換C1−2アルキル基であり、Rは最高6つのFで任意に置換されてもよい、C2−3脂肪族若しくは脂環式基である。
【0031】
一実施形態では、本発明の化合物は式I−A又はI−Bのうちの1つで表される。
【化9】

【0032】
一実施形態では、Rは水素又はClである。更なる実施形態では、RはClである。更なる実施形態では、Rは水素である。
【0033】
一実施形態では、Rは水素、F、R’、OH又はOR’である。更なる実施形態では、Rは水素又はFである。
【0034】
一実施形態では、化合物は式I−Aで表され、Rは水素、F、R’、OH又はOR’である。他の実施形態では、Rは水素又はFである。更なる実施形態では、RはFであり、Rは水素である。他の実施形態では、RはFであり、Rは水素である。他の実施形態では、R及びR両方は水素である。更なる実施形態では、RはClである。代替実施形態では、Rは水素である。
【0035】
他の実施形態では、化合物は式I−Aであり、R及びRは共に6員のアリール環を形成する。更なる実施形態では、RはClである。別の実施形態では、Rは水素である。
【0036】
他の実施形態では、RはCHCH、CHCF、CHCHF、CHCHF、CHCHCH、CHCHCF、CHCHCHF又はCHCHCHFである。更なる実施形態では、RはCHCH、CHCF、CHCHCH又はCHCHCFである。更に別の実施態様において、RはCHCFである。
【0037】
他の実施形態では、R”は水素又はCHである。更なる実施形態では、R”は水素である。
【0038】
他の実施形態では、R14は水素である。更に別の実施形態では、R15は、存在する場合、水素である。他の実施形態では、R15は存在しない。
【0039】
他の実施形態では、本発明は式IIの化合物の提供に関する。
【化10】

式中、X1AはN、CH又はCFであり、R1A
【化11】


である。更なる実施形態では、RはCHCH、CHCF、CHCHCH又はCHCHCFである。更に別の実施形態では、RはCHCFである。
【0040】
他の実施形態では、本発明は式IIIの化合物の提供に関する。
【化12】

式中、X1AはN、CH又はCFであり、R1A
【化13】



である。更なる実施形態では、RはCHCH、CHCF、CHCHCH又はCHCHCFである。更に別の実施形態では、RはCHCFである。
【0041】
式I、II又はIIIのいずれかの他の実施形態では、R
【化14】


から選択される。
【0042】
更なる実施形態では、R
【化15】


から選択される。
【0043】
更に別の実施形態では、R
【化16】


から選択される。
【0044】
式I、II又はIIIのいずれかの他の実施形態では、環Aは
【化17】


であり、R13’は水素又はR13である。
【0045】
更なる実施形態では、環Aは
【化18】


である。
【0046】
更なる実施形態では、環Aは
【化19】


である。
【0047】
一実施形態では、各R13はハロゲン、R’、NH、NHR’、N(R’)、SH、SR’、OH、OR’、NO、CN、CF、COOR’、COOH、COR’、OC(O)R’又はNHC(O)R’から独立に選択されるか、又はいかなる2つのR13群も、同じ置換基又は異なる置換基と、各R13基が結合する1つ以上の原子と共に、1〜3個のR基で任意に置換されてもよい3〜7員の飽和、不飽和若しくは部分的に飽和の炭素環若しくは複素環を形成する。
【0048】
本発明の一実施形態では、R13は存在しない。他の実施形態では、環Aは1つのR13で置換されている。更なる実施形態では、上記1つのR13はOH、CH、F、OR’又はNHR’である。更に別の実施形態では、R’はC1−2アルキル又はC2−3アルケニル基である。他の実施形態では、R13はOHである。
【0049】
式I、II又はIIIのいずれかの他の実施形態では、R及びRは共に、
【化20】


から選択される環を形成し、前記環中の1つ以上の炭素原子が独立に、N、O又はSで任意に置換されてもよい。
【0050】
式I、II又はIIIのいずれかの他の実施形態では、R及びR
【化21】


である。
【0051】
更なる実施形態では、R及びR
【化22】


である。
【0052】
更に別の実施形態では、R及びR
【化23】


である。
【0053】
更に別の実施形態では、R及びR
【化24】


である。
【0054】
別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の提供に関する。前記化合物は、前記化合物がAurora−1(AUR−B)、Aurora−2(AUR−A)、Src、CDK2、Flt−3又はc−Kitから選択される1つ以上のキナーゼを阻害するよりも低いKで(すなわちより強力に)、JAKキナーゼを阻害する。別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の提供に関する。前記化合物は、前記化合物がJAK2、Aurora−1、Aurora−2、Src、CDK2、Flt−3又はc−Kitから選択される1つ以上のキナーゼを阻害するよりも低いKでJAK3を阻害する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIのいずれかの化合物の提供に関する。前記化合物は、0.1μM未満のKでJAK3を阻害する。更なる実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIのいずれかの化合物の提供に関する。前記化合物は、0.01μM未満のKでJAK3を阻害する。別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIのいずれかの化合物の提供に関する。前記化合物は、0.01μM未満のKでJAK3を阻害し、JAK3の場合のKより少なくとも5倍高いKでAurora−2を阻害する。更なる実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIのいずれかの化合物の提供に関する。前記化合物は、0.01μM未満のKでJAK3を阻害し、JAK3の場合のKより少なくとも10倍高いKでAurora−2を阻害する。
【0056】
別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の提供に関する。前記化合物は、細胞アッセイにおいて、5μM未満のIC50でJAK3を阻害する。更なる実施形態では、前記化合物は、細胞アッセイにおいて、1μM未満のIC50でJAK3を阻害する。
【0057】
別の実施形態では、前記化合物は細胞アッセイにおいて、前記化合物が細胞アッセイにおいてJAK2、Aurora−1、Aurora−2、Src、CDK2、Flt−3又は中でc−Kitから選択される1つ以上のキナーゼを阻害するよりも、少なくとも5倍少ないIC50でJAK3を阻害する。別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の提供に関する。前記化合物は細胞アッセイにおいて、5μM未満のIC50でJAK3を阻害し、JAK2のIC50はJAK3のIC50より少なくとも5倍高い。更なる実施形態では、前記化合物は細胞アッセイにおいて、1μM未満のIC50でJAK3を阻害し、JAK2のIC50はJAK3のIC50より少なくとも5倍高い。更なる実施形態では、前記化合物は細胞アッセイにおいて、5μM未満のIC50でJAK3を阻害し、JAK2のIC50はJAK3のIC50より少なくとも10倍高い。更なる実施形態では、前記化合物は細胞アッセイにおいて、1μM未満のIC50でJAK3を阻害し、JAK2のIC50はJAK3のIC50より少なくとも10倍高い。更に別の実施形態では、本発明は、式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の提供に関する。前記化合物は細胞アッセイにおいて、1μM未満のIC50でJAK3を阻害し、JAK2のIC50はJAK3のIC50よりも少なくとも5倍高く、前記化合物は0.01μM未満のKでJAK3を阻害し、JAK3のKより少なくとも5倍高いKでAurora−2を阻害する。更に別の実施形態では、前記化合物は細胞アッセイにおいて、1μM未満のIC50でJAK3を阻害し、JAK2のIC50がJAK3のIC50より少なくとも10倍高く、前記化合物は0.01μM未満のKでJAK3を阻害し、JAK3のKよりも少なくとも10倍高いKでAurora−2を阻害する。
【0058】
他の実施形態では、本発明は表1、表2又は表3の化合物の提供に関する。
表1
【表1】


【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】


【表14】


【表15】


表2
【表16】


【表17】


【表18】


【表19】


【表20】


【表21】


【表22】


【表23】


【表24】


【表25】


【表26】


表3
【表27】


【表28】


【表29】


【表30】


【表31】


【表32】


【表33】


【表34】



【0059】
使用法、製剤化及び投与:薬学的に許容できる組成物:
他の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIで表される化合物を含む医薬品組成物の提供に関する。
【0060】
他の実施形態では、当該組成物は更に、化学療法薬又は抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、神経栄養因子、心疾患を治療するための薬剤、破壊性骨疾患を治療するための薬剤、肝疾患を治療するための薬剤、抗ウィルス薬、血液疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、又は免疫不全疾患を治療する薬剤からための選択される治療薬を含む。
【0061】
他の実施形態では、本発明は、本発明の化合物又はその薬理学的に許容できる誘導体と、薬理学的に許容できる担体、アジュバンド又は賦形剤を含む組成物を提供する。本発明の組成物における化合物の量は、生体試料又は患者において、タンパク質キナーゼ、特にJAKファミリーキナーゼを適度に阻害するのに有効な量である。本発明の組成物は、かかる組成物を必要とする患者に投与する直前に処方されるのが好ましい。本発明の組成物は、患者に対する経口投与用に処方されるのが最も好ましい。
【0062】
本明細書に使用の用語「患者」とは、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【0063】
したがって、本発明の他の実施形態では、薬理学的に許容できる組成物が提供され、かかる組成物は、本明細書に記載される化合物、及び必要に応じて薬理学的に許容できる担体、アジュバンド又は賦形剤を含む。特定の実施形態では、かかる組成物は任意に1種以上の更なる治療薬を含む。
【0064】
本発明の化合物は、治療に用いる際、遊離形態としてもよく、又は任意にその薬理学的に許容できる誘導体としてもよいことは自明である。本発明における薬理学的に許容できる誘導体としては、薬理学的に許容できるプロドラッグ、塩、エステル、かかるエステルの塩、又は任意の他のアダクト若しくは誘導体であって、必要とする患者への投与において直接的又は間接的に本明細書に特に記載の化合物、又はこれらの代謝物若しくはその残留物を提供できるものが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に用いる用語「阻害活性を有する代謝物又はその残留物」とは、代謝物又はその残留物がJAKファミリーキナーゼの阻害剤でもあることを意味する。
【0065】
本明細書で使用する用語「薬理学的に許容できる塩」とは、有効な医学的判断の範囲内で、人間及び下等動物の組織との接触の際に、望ましくない毒性、刺激、アレルギー反応等を生じさせることなく使用でき、利益対不利益の比が適切に釣り合った塩のことを指す。
【0066】
薬理学的に許容できる塩は、当該分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらが、J.Pharmeceuical Sciences、第66巻、1〜19ページ、1977年において詳細に記載されている薬理学的に許容できる塩は、参照により本願の内容に援用される。本発明の化合物の薬理学的に許容できる塩には、好適な無機及び有機の酸及び塩基から誘導される塩が包含される。薬理学的に許容できる、非毒性の酸付加塩の例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸等の無機酸、又は例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸又はマロン酸等の有機酸、又はイオン交換等の分野において使用される他の方法により得られるアミノ酸が挙げられる。他の薬理学的に許容できる塩はとして、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビスルフェート、ボレート、ブチレート、カンフォレート、カンフォルスルホネート、シトレート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、ホルメート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、グルコネート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ヒドロヨージド、2−ヒドロキシ−エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルスルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、ペルスルフェート、3−フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、チオシアネート、p−トルエンスルホネート、ウンデカノエート、バレレートなどが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN+(C1−4アルキル)塩が挙げられる。更に本発明では、本明細書に開示の化合物の塩基性窒素含有基の四級化形態も包含される。当該四級化により、水溶性又は油溶性又は分散性の生成物が得られる場合がある。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの塩が挙げられる。他の薬理学的に許容できる塩としては、任意に非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及び対イオンを使用して形成されるアミンカチオン、例えばハライド、水酸化物、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネート及びアリールスルホネートが挙げられる。
【0067】
上述したように、本発明の薬理学的に許容できる組成物は更に、薬理学的に許容できる担体、アジュバンド又は賦形剤を含有し、特に本発明における使用においては、上述した特定の投薬形態に適するようなあらゆる溶剤、希釈剤、又は他の液体の賦形剤、分散若しくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、防腐剤、固体の結合剤、滑剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980)には薬理学的に許容できる組成物の処方に使用される種々の担体、及びそれらを用いた公知の製剤技術が開示されており、各々の開示内容は、参照により本発明に援用される。従来公知の担体媒体は、例えば望ましくない生物学的効果を生じさせることや、そうでなくとも薬理学的に許容できる組成物中の他成分と好ましくない相互作用を生じさせる等、本発明の化合物との適合性を有さない場合を除き、その使用は本発明の範囲内と解される。
【0068】
薬理学的に許容できる担体として機能しうる材料としては、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清タンパク質、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、又はソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛の塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、羊毛脂、糖類、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシのデンプン及びジャガイモのデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテート;粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;医薬品添加物、例えばココアバター及び坐薬のワックス;油、例えばピーナツ油、綿実油;紅花油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール又はポリエチレングリコール;エステル、例えばエチルオレエート及びエチルラウレート;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸、発熱物質非含有水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、及びホスフェート緩衝溶液、並びに他の非毒性の相溶性滑剤、例えばナトリウムラウリルスルフェート及びステアリン酸マグネシウム。並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、着香料及び香料添加剤、防腐剤及び酸化防止剤を当該組成物中に任意に含有させてもよい。
【0069】
本明細書に使用の用語「顕著に阻害する」とは、本発明の化合物及びJAKキナーゼを含む試料と、当該化合物の非存在下でJAKキナーゼを含む同様の試料との間で、キナーゼ活性、特にJAKファミリーキナーゼ活性が顕著に異なることを意味する。
【0070】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入噴霧、局所的、直腸、鼻腔、頬、膣内又はインプラント容器を介して投与されてもよい。本明細書に使用の用語「非経口」には、皮下、静脈、筋肉、関節内、胸骨内、鞘内、眼球内、肝臓内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術による投与が挙げられる。好適には、当該組成物は経口、腹膜内又は静脈内で投与される。本発明の組成物を無菌的に注射する場合、水性又は油性の懸濁液として投与する。かかる懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該分野で公知の技術により処方してもよい。無菌の注射製剤は非毒性で、非経口的に受容可能な希釈剤又は溶剤を用いた、無菌注射可能な溶液又は懸濁液(例えば1,3−ブタンジオール溶液)であってもよい。使用できる許容可能な賦形剤及び溶剤としては、水、リンゲル溶液及び等張の塩化ナトリム溶液である。更に、無菌の不揮発性油を、溶剤又は懸濁媒体として従来どおり使用してもよい。
【0071】
この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む不揮発性油のブレンドを任意に使用してもよい。脂肪酸(例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体)は、天然の薬理学的に許容できる油、例えばオリーブ油又はひまし油、特にこれらのポリオキシエチル化型であることから、注射可能な製剤において有用である。これらの油溶液又は懸濁液は、長鎖アルコールの希釈剤又は分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース、又は薬理学的に許容できる投与形態の処方で一般に使用される類似の分散剤、例えばエマルジョン及び懸濁化剤を含有してもよい。他の一般的に使用される界面活性剤(例えばTween、Span)及び薬理学的に許容できる固体及び液体、又は他の投与形態の製造で一般的に使用される他の乳化剤又は生物学的利用能のエンハンサーを用いて製剤化してもよい。
【0072】
本発明の薬理学的に許容できる組成物は、カプセル、タブレット、水性懸濁液又は水溶液等の経口的に受容可能な投与形態にて経口投与されてもよいが、これらに限定されない。経口タブレットの場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びトウモロコシのデンプンが挙げられる。通常どおり滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムを添加してもよい。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液を経口投与に用いる場合、有効成分を乳化剤及び懸濁剤と混合する。必要により適当量の甘味剤、着香料及び香料添加剤を添加してもよい。
【0073】
あるいは、本発明の薬理学的に許容できる組成物を、坐薬の形態で直腸内投与してもよい。かかる坐薬は、室温条件下で固体であるが、直腸温度では液体となり、直腸内で融解して薬剤を放出する適切な無刺激性賦形剤と、当該薬剤とを混合することによって調製できる。このような材料としてはココアバター、蜜ろう及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0074】
本発明における薬理学的に許容できる組成物は、特に治療の目標が局所投与により容易にアクセスできる領域又は器官(例えば、眼、皮膚、又は下部腸管)の疾病である場合、局所投与するのが好ましい。好適な局所投与用製剤は、かかる領域又は器官への直接投与用に調製される。
【0075】
下部腸管への局所投与は、直腸坐薬調剤(上記を参照)又は好適な浣腸調剤により実施できる。あるいは局所用の経皮パッチを使用してもよい。
【0076】
局所投与の場合、薬理学的に許容できる組成物は、1種以上の担体に懸濁又は溶解される有効成分を含む好適な軟膏として製剤化してもよい。本発明の化合物の局所投与に用いる担体としては、鉱油、液体の石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬理学的に許容できる組成物は、1種以上の薬理学的に許容できる担体に懸濁又は溶解される有効成分を含む好適なローション又はクリームとして製剤化してもよい。好適な担体としては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
眼への投与に用いる場合、薬理学的に許容できる組成物は例えば、等張性のpH調節された無菌食塩水又は他の水溶液中の微細懸濁液として、又は好適には、等張性のpH調節された無菌食塩水又は他の水溶液として調製してもよく、またベンジルアルコニウムクロリド等の防腐剤を用いてもよく、用いずともよい。あるいは、眼への投与に用いる場合、薬理学的に許容できる組成物を、ワセリン等の軟膏中に添加してもよい。また本発明の薬理学的に許容できる組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入により投与されてもよい。このような組成物は、医薬調剤の分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコール又は他の好適な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン及び/又は他の一般的な可溶化剤又は分散剤を使用して、生理食塩水の溶液として調製されてもよい。
【0078】
最も好ましくは、本発明の薬理学的に許容できる組成物は経口投与用に処方される。
【0079】
経口投与用の液体の投与形態としては、薬理学的に許容できるエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられるが、これらに限定されない。液体の投与形態は、活性化合物の他に、当該分野で一般的に使用される不活性希釈剤(例えば水又は他の溶剤)、可溶化剤及び乳化剤(例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド)、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物を含有してもよい。経口組成物は、不活性希釈剤の他に、アジュバンド(例えば湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤)、甘味剤、着香料及び香料添加剤を含有させてもよい。
【0080】
注射可能な製剤(例えば無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液)を、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して公知の技術により処方してもよい。また、無菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口使用に許容できる希釈剤又は溶剤中における、無菌の注射可能な溶液、懸濁液又はエマルジョン(例えば、1,3−ブテンジオール中における溶液)であってもよい。使用できる許容可能な賦形剤及び溶剤としては、水、リンゲル溶液、U.S.P及び等張性の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。更に、無菌の不揮発性油を、従来どおり溶剤又は懸濁媒体として使用してもよい。この目的には、合成のモノ−又はジ−グリセリドを含む不揮発性油ブレンドを使用してもよい。更に、注射可能物の調製においてオレイン酸等の脂肪酸を用いてもよい。
【0081】
注射可能な調剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過により滅菌してもよく、又は使用前に滅菌水又は他の無菌の注射可能媒体に溶解又は懸濁できる滅菌剤を、無菌の固体組成物の形で添加して滅菌してもよい。
【0082】
本発明の化合物の効果を長期化するために、皮下又は筋肉内注射による化合物の吸収を遅延させることが望ましい場合がある。これは、水溶性の低い結晶性又は無定形の材料を使用することによって達成されうる。この場合に化合物の吸収速度は溶解速度、更に結晶の寸法及び結晶形態に依存する。あるいは、非経口的に投与される化合物形態の吸収は、化合物を油性賦形剤に溶解又は懸濁することで遅延させることもできる。注射可能な徐放性形態は、ポリラクチド−ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中に当該化合物のマイクロカプセルマトリックスを生成させることにより調製できる。ポリマーと化合物の比率及び使用する特定の性質を有するポリマーを任意に選択し、化合物の放出速度をコントロールすることもできる。生分解性ポリマーの他の例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。また注射可能な徐放性製剤は、化合物を、体組織と適合しうるリポソーム又はミクロエマルジョン中へ封入することによっても調製できる。
【0083】
直腸又は膣内投与の組成物は、好適には座薬の形態を有する。本発明の化合物を、ココアバター、ポリエチレングリコール等の好適な無刺激性の医薬品添加物又は担体、又は環境温度条件下では固体であるが体温では液体となり、直腸又は膣腔中で融解して活性化合物を放出する坐薬ワックスと混合することによりそれらを調製することができる。
【0084】
経口投与用の固体の投薬形態は、カプセル、タブレット、ピル、粉末、及び顆粒を含む。このような固体の投与形態においては、活性化合物は少なくとも1つの不活性で薬理学的に許容できる医薬品添加物又は担体、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム及び/又は
a)充填剤又は賦形剤(例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸)、
b)結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、及びアラビアゴム)、
c)湿潤剤(例えばグリセロール)、
d)崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカのデンプン、アルギン酸、所定のシリケート、及び炭酸ナトリウム)、
e)溶液保持剤(例えばパラフィン)、
f)吸収促進剤(例えば第四級アンモニウム化合物)、
g)湿潤剤(例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレート)、
h)吸収剤(例えばカオリン及び弁とナイト年度)、ならびに
i)滑剤(例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルスルフェート)、並びにこれらの混合物と混合する。カプセル、タブレット及びピルの場合、製剤中に緩衝剤を含有させてもよい。
【0085】
また、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤と同じタイプの固体組成物を、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いてもよい。タブレット、糖剤、カプセル、ピル、及び顆粒の固体投与形態は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング及び医薬処方技術で周知の他のコーティングを用いて調製されうる。これらには任意に乳白剤を含んでいてもよく、腸管の所定部分において、任意に遅延形態で、活性成分を単独で又は優先的に放出する組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、ポリマー性物質及びワックスが挙げられる。また、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤と同様のタイプの固体組成物を、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中充填剤として用いてもよい。
【0086】
また、活性化合物を、上述の1種以上の医薬品添加物を有するマイクロカプセルに封入してもよい。タブレット、糖剤、カプセル、ピル及び顆粒の固体投与形態は、コーティング及びシェル(例えば腸溶コーティング、放出制御コーティング及び医薬処方技術で周知の他のコーティング)を用いて調製できる。かかる固体投与形態においては、有効化合物を少なくとも1種の不活性希釈剤(例えばスクロース、ラクトース又はデンプン)と混合してもよい。また、かかる投与形態は、通常行われるように、不活性希釈剤以外の更なる物質(例えばタブレット化滑剤及び他のタブレット化助剤、例えばステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロース)を含んでいてもよい。カプセル、タブレット及びピルの場合、製剤中に緩衝剤を含有させてもよい。これらは任意に乳白剤を含んでいてもよく、腸管の所定部分において、任意に遅延形態で、活性成分を単独又は優先的に放出する組成物であってもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0087】
本発明の化合物の局所又は経皮投与用の投与形態としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、粉末、溶液、スプレー、吸入及びパッチが挙げられる。活性成分は、必要に応じて薬理学的に許容できる担体及び任意の必要な防腐剤又は緩衝液と無菌条件下で混合される。軟膏剤(すなわち点耳剤及び点眼剤)も本発明の範囲内と解される。更に本発明には、経皮パッチの使用が包含され、これは生体への化合物の輸送の制御において更に有利である。かかる投与形態は、化合物を適当な媒体中に溶解又は懸濁させることによって調製できる。吸収促進剤を使用して皮膚への化合物の輸送を促進してもよい。速度制御膜を設けるか、又は化合物をポリマーマトリックス若しくはゲル中に分散させて吸収速度を制御してもよい。
【0088】
投与の容易性、及び投薬の均一性のために、本発明の化合物は単位投薬形態で処方されるのが好ましい。本明細書に使用の用語「単位投薬形態」とは、治療される患者に対して適切な、物理的に切り分けられた薬剤の単位を指す。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の1日の合計使用量は、有効な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることが理解されよう。特定の患者又は生体に対する特に効果的な服用レベルは、種々の要因(例えば治療すべき疾患及び疾患の重大性;使用される特定化合物の活性;使用される特定の組成物;年齢;体重;全体の健康;性別及び患者の日常の食べ物;投与時間、投与経路、及び使用される特定化合物の排泄速度;治療時間;使用される特定化合物と組み合わせて又は同時に用いられる薬剤)、並びに医学分野で周知の他の要因に依存しうる。
【0089】
単一の投与形態にて組成物を調製する場合、担体材料と混合する本発明の化合物の量は、治療される受容者、投与の特定の型式に応じて任意に変化するが、好適には、組成物を受容する患者に対して0.01〜100mg/kg体重/日の阻害剤が投与されうるように、当該組成物を調製する。
【0090】
治療又は予防されるべき特定の症状又は疾病に応じて、この症状の治療又は予防用に通常投与される他の治療薬を、本発明の組成物中に含有させてもよい。本明細書で使用される、かかる特定の疾病又は症状の治療又は予防用に通常投与される更なる治療薬としては、「治療すべき疾病又は症状に適切な薬剤」として公知のものであってもよい。
【0091】
例えば、化学療法薬又は他の抗増殖剤を本発明の化合物と組み合わせて、増殖性疾患及び癌を治療してもよい。例えば公知の化学療法薬としては、Gleevec(登録商標)(イマチニブメシレート)、アドリアマイシン、デキサメタソン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、トポテカン、タキソール、インターフェロン及び白金誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
本発明の阻害剤と組み合わせてもよい薬剤の他の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:アルツハイマー病治療薬(例えばAricept(登録商標)及びExcelon(登録商標));パーキンソン病の治療薬(例えばL−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール、パラミペクソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル、及びアマンタジン);多発性硬化症(MS)の治療薬(例えばβ−インターフェロン(例、Avonex(登録商標)及びRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、及びミトキサントロン);喘息の治療薬(例えばアルブテロール及びSingulair(登録商標));精神分裂病の治療用薬(例えばジプレクサ、リスペルダール、セロクエル及びハロペリドール);抗炎症薬(例えばコルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、及びスルファサラジン);免疫調節剤及び免疫抑制剤(例えばシクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、マイコフェノレートモフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、及びスルファサラジン);
神経栄養因子(例えばアセチルクロリンステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネルブロッカー、リルゾール)、並びに抗パーキンソン薬、心疾患治療薬(例えばβ−ブロッカー、ACE阻害剤、利尿薬、ニトレート、カルシウムチャンネルブロッカー、及びスタチン);肝疾患治療薬(例えばコルチコステロイド、コレスチルアミン、インターフェロン、及び抗ウィルス薬);血液疾患治療薬(例えばコルチコステロイド、抗白血病薬、及び成長因子);並びに免疫不全疾患治療薬(例えばガンマグロブリン)。
【0093】
本発明の組成物に含有させる更なる治療薬の量は、その治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物中に通常含まれる量を超えない。好適には、本明細書に開示の組成物における追加の治療薬の量は、その治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成において通常に用いる量の約50%から100%の範囲である。
【0094】
本発明の化合物及び組成物の使用
別の実施形態では、本発明は、前記患者に本発明の化合物及び組成物を投与することを含む、患者におけるJAKキナーゼ活性を抑制する方法の提供に関する。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、患者におけるJAK媒介症状又は疾病の治療するか又は重篤さを軽減する方法の提供に関する。本明細書で用いる用語「JAKにより媒介される疾病」とは、JAKファミリーキナーゼ(特にJAK2又はJAK3)が関与することが知られている各種の疾病又は他の有害な症状のことを意味する。更なる実施形態では、本発明にはJAK3により媒介される疾患の治療方法が包含される。このような症状としては、白血病及びリンパ腫等の固形悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍、並びに、アレルギー又はI型過敏性反応、喘息、移植拒絶等の自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、家系性の筋萎縮性側索硬化症(FALS)等の神経変性障害等の免疫応答などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
別の実施形態では、本発明は、前記患者に本発明の化合物又は組成物を投与することを含む、増殖性障害、心臓障害、神経変性障害、自己免疫疾患、臓器移植に伴う障害、炎症性障害、免疫不全又は免疫学的に媒介された障害から選択される疾病症状の重篤さを治療又は軽減する方法の提供に関する。
【0097】
更なる実施形態では、当該方法は、化学療法薬又は抗増殖薬、抗炎症薬、免疫調節性又は免疫抑制性の薬剤、神経栄養因子、心血管疾患治療のための薬剤、糖尿病治療薬、又は免疫不全症治療薬から選ばれる追加の治療薬剤を前記患者に投与するステップを更に含んでなり、前記追加の治療薬剤は治療される疾病に対して適切であり、前記追加の治療薬剤は、単位投薬形態として投与してもよく、又は多回投与用の形態の一部として前記組成物とは別個に、若しくは前記組成物と同時に投与してもよい。
【0098】
一実施形態では、当該疾病又は障害は、アレルギー又はI型過敏性反応、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連の痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、分裂病、心筋細胞肥大、再潅流/虚血、脳梗塞、禿頭、移植拒絶、移植片対宿主疾患、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、及び白血病及びリンパ腫等の固形悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍である。更なる実施形態では、前記疾病又は障害は喘息である。別の実施形態では、前記疾病又は障害は移植拒絶である。他の実施形態では、前記疾患又は障害は関節リウマチである。
【0099】
別の実施形態では、本発明の化合物又は組成物を骨髄増殖性障害の治療に用いてもよい。一実施形態では、骨髄増殖性障害は真性多血症、基本的血小板血症又は慢性的特発性骨髄線維症である。別の実施形態では、骨髄増殖性障害は、骨髄線維症を伴う異形成、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、慢性好酸球性白血病、過好酸性症候群、系統的肥満細胞疾患、非定型的なCML又は若年型の骨髄単球性白血病である。
【0100】
別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の、JAKにより媒介される疾患の治療への使用の提供に関する。更なる実施形態では、本発明は上記疾患のいずれかの治療への、前記化合物の使用の提供に関する。別の実施形態では、本発明は式I、IA、IB、II又はIIIの化合物の、JAKにより媒介される疾患の治療用薬剤の製造への使用の提供に関する。更なる実施形態では、本発明は上記疾患のいずれかの治療用薬剤の製造への、前記化合物の使用の提供に関する。
【0101】
他の実施形態では、本発明は生物学的サンプルにおけるJAKキナーゼ活性の阻害方法の提供に関し、当該方法は、本発明の化合物又は組成物と、前記生物学的サンプルを接触させることを含む。
【0102】
本明細書で用いられる用語「生物学的サンプル」はex vivoサンプルを意味し、培養細胞又はその抽出物、組織若しくは器官サンプル又はその抽出物、哺乳類から得られた生検材料又はその抽出物、血液、唾液、尿、排泄物、精液、涙若しくは他の体液又はその抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
生体試料におけるキナーゼ活性(特にJAKキナーゼ活性)の阻害は、当業に周知の種々の目的にとり有用である。このような目的の例としては、輸血、臓器移植術、生体試料貯蔵、及びバイオアッセイなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本発明のある実施形態では、当該化合物の「有効量」又は薬理学的に許容できる量は、1以上の前述した障害の重篤さを治療するか又は低減するために有効な量である。本発明の方法に係る化合物及び組成物は、当該障害又は疾病の重篤さを治療又は低減するための、任意の量及び任意の投与経路を用いて投与することができる。具体的な必要量は人種、年齢及び患者の健康状態、感染の重篤さ、使用する薬剤、その投薬様式などに依存し、患者ごとに随時変化する。
【0105】
別の実施形態では、本発明の方法は、前記患者に更なる治療薬剤を別個に投与する追加的なステップを含む。これらの更なる治療薬剤を別個に投与する場合、本発明の組成物の投与の前、投与の最中又は投与の後において、当該患者に投与することができる。
【0106】
本発明の化合物又はその薬理学的組成物は、人工関節、人工弁、代用血管、ステント及びカテーテル等の移植可能な医療機器に塗布して用いてもよい。例えば、血管用ステントは再狭窄(損傷後に血管壁が狭くなること)を克服するために用いられてきたが、ステント又は他の移植可能な医療機器を用いる患者では血塊形成又は血小板活性化の危険性が存在していた。そこで、本発明の化合物を含む薬理学的に許容できる組成物で、当該機器を事前にコーティングすることにより、かかる望ましくない事態を防止若しくは低減させることができる。
【0107】
好適なコーティング及びコーティングされた移植可能機器の一般的調製方法は、米国特許第6099562号、第5886026号、及び第5304121号に記載が存在する。当該コーティングは、典型的にはハイドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル及びそれらの混合物等の生物適合性ポリマー材料である。当該コーティングを、フルオロケイ素樹脂、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質又はこれらの組み合わせの好適なトップコートで更に任意に被覆されてもよい。本発明の化合物によりコーティングされる移植可能な機器も本発明の別の実施形態である。当該化合物をビーズ等の移植可能機器上にコーティングされてもよく、ポリマー又は他の分子と共に「薬物ストック」として調製し、それにより当該薬物の水溶液を投与するよりも長時間にわたる当該薬物の放出が可能となる。
【0108】
化合物の合成及び同定方法
本発明の化合物は、類似化合物のための周知の方法によって、又は下記の実施例で表される方法によって、通常調製できる。例えば国際公開第2005/095400号パンフレット(全開示内容を本発明に援用する)の記載を参照のこと。
【0109】
一実施形態では、列挙される全ての引用文献は参照によって本明細書に援用される。本発明における全ての略語、記号及び慣例は、公知の科学文献で使用されるものと同義である。例えばJanet S.Dodd編、ACS Style Guide:A Manual for Authors and Editors,2nd Ed.,Washington,D.C.:American Chemical Society,1997(参照により本発明に援用する)を参照。
【実施例】
【0110】
<実施例1:本発明の化合物の調製>
一般合成方法
【化25】

【0111】
工程1
Boc−バリン(1;R=Me、3.8g、0.02mol)、EDC(4.63g、0.024mol)、HOBt(4.0g、0.026mol)、DIEA(10.5mL、0.06mol)の攪拌された溶液に、トリフルオロエチルアミンHCl(2.92g、0.022mol)の100mLのDCM溶液を添加した。反応混合液を16時間撹拌した。乾燥濃縮し、EtOAc中に再融解し、0.5N HCl、NaHCO及び塩の飽和水溶液で順次洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)させ、真空内で濃縮し、白色固体として化合物2、5.4g(98%)を得た。
【0112】
工程2
化合物2(5.32g、0.0197mol)を、DCM/TFAの1:1混合液で、室温で45分間脱保護した。乾燥させて濃縮し、中間体のアミンを得、次の工程に直接用いた。5−フルオロ−2,4−ジクロロピリミジン(3;R=F;3.28g、0.0197mol)、粗アミンTFA塩(5.25g、0.0197mol)及びDIEA(10.27mL、0.059mol)の混合液を室温で16時間、イソプロパノール中で撹拌した。反応混合液を真空内で濃縮し、EtOAc中に再融解し、0.5N HCl、NaHCOの飽和水溶液、および生理食塩水で順次洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)させ、真空内で濃縮して粗製の油状物を得、更にクロマトグラフィ(50%EtOAc/50%ヘキサン)に供し、所望の化合物4を得た。
【0113】
工程3
化合物5(30mg、0.075mmol、国際公開第2005/095400号に従って調製)、化合物4(23mg、0.075mmol)、Pd(PhP)(9mg、0.0078mmol)及び炭酸ナトリウム2M(115μL、0.23mmol)の1mLのDME中の混合液を150℃で10分間、超音波処理した。反応混合液を乾燥濃縮させた後、30%のEtOAc−70%のヘキサンを溶出液として用い、シリカゲルの短いパッドで濾過し、粗製の中間体を得、次の工程に直接用いた。
【0114】
粗中間体を1mLの無水メタノールに溶解し、25%のナトリウムメトキシド/メタノール200μLを添加した。反応混合液を60℃で1時間撹拌し、6N HCl(154μL)でクエンチした。混合液を窒素雰囲気下で乾燥させ、逆相HPLC(10−60のMeCN/水/0.5%のTFA)で精製し、式6aの所望の材料を得た。
【0115】
式6b及び6cの化合物は、適当な開始材料を使用して、同様の方法で調製できる。例えば、式6bの化合物は通常、tert−ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエチルカルバモイル)ピロリジン−1−カーボネートで化合物1を置き換えることによって調製でき、一方、式6cの化合物は通常、tert−ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエチルカルバモイル)プロパン−2−イルカルバメートで化合物1を置で換えることによって調製できる。
【0116】
<実施例2>分析結果
以下の表4、5及び6は、本発明の具体的な化合物の例示的なH−NMRデータ(NMR)及び液体クロマトグラフィの質量スペクトルデータ(質量+陽子(M+H)として出力され、エレクトロスプレーで測定された)、及び滞留時間(RT)を示す。表4、5及び6の化合物番号はそれぞれ表1、2及び3で表す化合物に対応する(空欄は試験を実施しなかったことを示す)。
【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】

【表42】

【表43】

【表44】

【表45】

【表46】

【表47】

【表48】

【表49】

【表50】

【表51】

【表52】

【表53】

【表54】

【表55】

【表56】

【表57】

【表58】

【表59】

【表60】

【表61】

【表62】

【0117】
<実施例3>JAK3阻害アッセイ
下記に示すアッセイを用い、JAK3を阻害する性能について、化合物をスクリーニングした。反応は、100mMのHEPES(pH7.4)、1mMのDTT、10mMのMgCl、25mMのNaCl、及び0.01%のBSAを含むキナーゼ緩衝剤中で行った。アッセイにおける基質濃度を、5μMのATP(200uCi/μmol ATP)と1μMのポリ(Glu)Tyrとした。25℃、1nMのJAK3で反応させた。
【0118】
96ウェルのポリカーボネートプレートの各ウェルに、1.5μlの候補JAK3阻害剤を、2μMのポリ(Glu)Tyrと10μMのATPを含む50μlのキナーゼ緩衝剤と共に添加した。次いでこれを混合し、2nMのJAK3酵素を含む50μlのキナーゼ緩衝剤を添加し、反応を開始させた。室温(25℃)で20分反応させた後、0.4mMのATPを含む50μlの20%トリクロロ酢酸(TCA)で反応を停止させた。次いで、各ウェルの全内容物をTomTek Cell Harvesterを用い、96ウェルのガラス繊維フィルタプレートに移した。洗浄後、60μlのシンチレーション液を添加し、33P取り込みをPerkin Elmer TopCountで検出した。
【0119】
<実施例4>JAK2阻害アッセイ
JAK−2酵素を用い、最終的なポリ(Glu)Tyr濃度を15μMとし、最終的なATP濃度を12μMとしたことを除き、実施例3で上記した通りアッセイを実施した。
【0120】
化合物22、35、56、68、177、223、310、317、318、319、320、321、322、326、336、337、338、339、340、351、356、367、369、370、388、及び390を除いて、表1、2及び3で表す全ての化合物が、0.1μM未満のKiでJAK3を阻害することが明らかとなった。表1、2及び3の全ての化合物は、化合物68及び319を除いて、2.0μM未満のKiでJAK3を阻害した。化合物9、22、35、56、57、68、310、317、38、319、320、321、336、338、339、340、348、351、356、367及び372を除いて、表1、2及び3の全ての化合物が、0.5μM未満のKiでJAK2を阻害することが明らかとなった。全ての表1、2及び3つの化合物は、化合物68、318及び319を除いて、5.0μM未満のKiでJAK2を阻害した。
【0121】
<実施例5>JAK3細胞阻害アッセイ
HT−2クローンA5E細胞(ATCC Cat.#CRL−1841)を、湿らせた37℃のインキュベーターにおいて、細胞培養培地(RPMI1640培地:2mMのL−グルタミンを補充し、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、10mMのHEPES、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、0.05mMの2−メルカプトエタノール、10%のウシ胎児血清、及びConAを有する10容量%のラットT−STIM因子[Fisher Scientific Cat#CB40115]を含有するように調整)中で増殖および維持した。試験日にHT−2細胞を洗浄し、T−STIMを含有しない新鮮な細胞培養培地で、5×10細胞/mlの濃度で再懸濁し、T−STIMのない状態で4時間インキュベートした。4時間後に、再懸濁させた細胞懸濁液50μl(0.25×10細胞)を96穴プレートの各ウェルに添加した。化合物のDMSO中の連続希釈系列を調製し、次にRPMIに添加した。希釈化合物液100μlを各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。40ng/ml(R&D System社Cat#402−ML)の組換えラットインターロイキン2(rmIL−2)50μlを添加し、プレートを37℃で15分間インキュベートした。
【0122】
プレートを1000回転/分で5分間遠心分離し、上澄を吸引し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の3.7%のホルムアルデヒド50μlをウェルに添加した。プレートをプレートシェーカ上で、室温で5分間インキュベートした。プレートを1000回転/分で5分間、再度遠心分離した。上澄を吸引し、90%メタノール50μlを各ウェルに添加し、プレートを30分間氷上でインキュベートした。上澄を吸引し、プレートをPBSで洗浄した。1:10希釈されたPhospho STAT−5(Y694)PEコンジュゲート抗体(PS−5 PE抗体、Becton−Dickinson Cat.#61256)をウェルあたり25μlでプレートに添加し、当該プレートをプレートシェーカ上で室温で45分間インキュベートした。100μlのPBSを添加し、プレートを遠心分離した。上澄を吸引し、細胞を100μlのPBS中に再懸濁した。次にプレートを96穴FACSリーダー(Guava PCA−96)で測定した。
【0123】
本発明の化合物が、本アッセイにおいてJAK3を阻害することが明らかとなった。
【0124】
<実施例6>JAK2細胞阻害アッセイ
TF−1細胞(ATCC Cat.#CRL−2003)を、湿らせた37℃のインキュベーターにおいて、細胞培養培地(RPMI1640培地:2mMのL−グルタミンを補充し、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、10mMのHEPES、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、10%のウシ胎児血清及び組換えヒト顆粒白血球−大食細胞コロニー刺激因子[rhGMCSF、R&D Systems社 Cat.#215−GM]を含むように調整)中で増殖および維持した。試験日にTF−1細胞を洗浄し、rhGMCSFを含有しない新鮮な細胞培養培地に5×10細胞/mlの濃度で再懸濁し、rhGMCSFのない状態で4時間インキュベートした。4時間後に、再懸濁させた細胞50μl(0.25×10細胞)を96穴プレートの各ウェルに添加した。化合物の連続希釈をDMSO中で調製し、次にRPMIに添加した。希釈化合物100μlを各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。10ng/mlのrhGMCSF 50μlを添加し、プレートを37℃で15分間インキュベートした。実施例5で詳述したように、プレートをFACS分析に供した。本発明の化合物が、本細胞アッセイにおいてJAK2を阻害することが明らかとなった。
【0125】
本発明者らは、本発明の多数の実施形態を記載したが、本発明者らの基本的な例は改変され、本発明の化合物および方法を使用する他の実施形態を提供し得ることが明白である。従って、本発明の範囲は、上で例示のために提示した具体的な実施形態よりもむしろ、添付の特許請求の範囲によって規定されるべきであることが認識される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物:
【化1】


(I)
又はその薬学的に許容できる塩。
(式中、Rは水素、Cl又はFであり、XはN又はCRであり、Rは水素、F、R’、OH、OR’、COR’、COOH、COOR’、CONH、CONHR’、CON(R’)又はCNであり、Rは水素、F、R’、OH、OR’、COR’、COOH、COOR’、CONH、CONHR’、CON(R’)又はCNであるか、又はR及びRは共に、1〜4個のR10で任意に置換されてもよい5−7員のアリール又はヘテロアリール環を形成し、R’は、1〜4個のRで任意に置換されてもよいC1−3脂肪族であり、各Rはハロゲン、CF、OCH、OH、SH、NO、NH、SCH、NCH、CN又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択されるか、又は2つのR基はそれらが結合する炭素原子と共にシクロプロピル環又はC=Oを形成し、各R10はハロゲン、OCH、OH、NO、NH、SH、SCH、NCH、CN又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択され、R
【化2】


であり、R”は水素であるか又は1〜3個の−R11で任意に置換されてもよい−C1−2脂肪族であり、各R11はハロゲン、OCH、OH、SH、NO、NH、SCH、NCH、CN、CON(R15又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択されるか、又は2つのR11基が、それらが結合する炭素と共にシクロプロピル環又はC=Oを形成し、Rは1〜5個のR12で任意に置換されてもよいC1−4脂肪族であり、各R12はハロゲン、OCH、OH、NO、NH、SH、SCH、NCH、CN又は非置換C1−2脂肪族から独立に選択されるか、又は2つのR12基が、それらが結合する炭素と共にシクロプロピル環を形成し、環Aは、N、O又はSから選択される2つまでのさらなるヘテロ原子を含有し、1〜4個のR13で任意に置換されてもよい4〜8員の飽和窒素含有環であり、各R13はハロゲン、R’、NH、NHR’、N(R’)、SH、SR’、OH、OR’、NO、CN、CF、COOR’、COOH、COR’OC(O)R’、又はNHC(O)R’から独立に選択されるか、又は任意の2つのR13基が、同じ置換基又は異なる置換基において、各R13基が結合している1つ以上の原子と共に、1〜3個のR基で任意に置換されてもよい3〜7員の飽和、不飽和、若しくは部分的に飽和の炭素環若しくは複素環を形成し、Rは1〜5個のR12で任意に置換されてもよいC1−4脂肪族であり、RはC1−2アルキルであるか、又は、R及びRが共に、1〜5個のR12で任意に置換されてもよい3〜7員の炭素環式若しくは複素環式の飽和環を形成し、R14は水素又は非置換C1−2アルキルであり、R15は水素又は非置換C1−2アルキルであり、Rは6つまでのFで任意に置換されてもよい、C2−3脂肪族若しくは脂環式基である。)
【請求項2】
前記化合物が式IAを有する、請求項1記載の化合物。
【化3】


(I−A)。
【請求項3】
が水素又は塩素である、請求項1又は2のいずれか1項記載の化合物。
【請求項4】
が塩素である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
が水素である、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
が水素、フッ素、R’、OH又はOR’である、請求項1から5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
が水素又はフッ素である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が式IAのものであり、Rが水素、フッ素、R’、OH又はOR’であるか、又はR及びRが共に6員のアリール環を形成する、請求項1から5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
が水素又はフッ素である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
がフッ素であるときRが水素であり、Rがフッ素であるときRが水素である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
及びRが共に水素である、請求項9記載の化合物。
【請求項12】
が塩素である、請求項10又は11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
が水素である、請求項10又は11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
がCHCH、CHCF、CHCHF、CHCHF、CHCHCH、CHCHCF、CHCHCHF又はCHCHCHFである、請求項1から13のいずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
がCHCH、CHCF、CHCHCH又はCHCHCFである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
がCHCFである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
R”が水素又はCHである、請求項1から16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
R”が水素である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
14が水素である、請求項1から18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
15が水素である、請求項1から19のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
前記化合物が式II又はIIIのものである、請求項1記載の化合物。
【化4】



(II) 又は (III)
(式中、X1AはN、CH又はCFであり、R1A
【化5】


である。)
【請求項22】
がCHCH、CHCF、CHCHCH又はCHCHCFである、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
がCHCFである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】

【化6】


から選択される、請求項1から23のいずれか1項記載の化合物。
【請求項25】

【化7】


から選択される、請求項24記載の化合物。
【請求項26】

【化8】


から選択される、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
環Aが
【化9】


であり、R13’が水素又はR13である、請求項1から23のいずれか1項記載の化合物。
【請求項28】
環Aが
【化10】


である、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
環Aが
【化11】


である、請求項28記載の化合物。
【請求項30】
13が存在しない、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
環Aが1つのR13で置換されている、請求項29記載の化合物。
【請求項32】
13がOH、CH、F、OR’又はNHR’である、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
R’がC1−2アルキル又はC2−3アルケニルである、請求項32記載の化合物。
【請求項34】
13がOHである、請求項32記載の化合物。
【請求項35】
及びRが共に
【化12】


から選択される環を形成し、前記環中の1つ以上の炭素原子が独立にN、O又はSで任意に置換されてもよい、請求項1から23のいずれか1項記載の化合物。
【請求項36】
及びR
【化13】


である、請求項1から23のいずれか1項記載の化合物。
【請求項37】
及びR
【化14】


である、請求項36記載の化合物。
【請求項38】
及びR
【化15】


である、請求項37記載の化合物。
【請求項39】
1AがCH又はCFである、請求項21から38のいずれか1項記載の化合物。
【請求項40】
表1、表2又は表3の中から選択される化合物。
【請求項41】
請求項1から40のいずれか1項記載の化合物、並びに薬学的に許容できる担体、補助剤又は賦形剤を含む医薬品組成物。
【請求項42】
更に、化学療法薬又は抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、神経栄養因子、心血管疾患を治療するための薬剤、破壊性骨疾患を治療するための薬剤、肝疾患を治療するための薬剤、抗ウィルス薬、血液疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、又は免疫不全疾患を治療するための薬剤から選択される治療薬を含む、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
生物学的サンプルのJAKキナーゼ活性を阻害する方法であって、請求項1から40のいずれか1項記載の化合物、又は請求項41若しくは42のいずれか1項記載の組成物と、前記生物学的サンプルとを接触させることを含む方法。
【請求項44】
患者のJAKキナーゼ活性を阻害する方法であって、前記患者に、請求項1から40のいずれか1項記載の化合物、又は請求項41若しくは42のいずれか1項記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項45】
患者の増殖性障害、心臓障害、神経変性障害、自己免疫不全、臓器移植に伴う障害、炎症性障害、免疫不全又は免疫学的に媒介された障害から選ばれる疾病症状を治療するか又重篤さを軽減する方法であって、前記患者に、請求項1から40のいずれか1項記載の化合物、又は前記化合物を含有する組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項46】
前記患者に化学療法薬又は抗増殖薬、抗炎症薬、免疫調節性又は免疫抑制性の薬剤、神経栄養因子、心血管疾患の治療のための薬剤、糖尿病の治療のための薬剤、又は免疫不全症を治療するための薬剤から選ばれる追加的な治療薬を投与するステップを更に含んでなり、前記追加的な治療薬が治療しようとする疾病に適切である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記疾病又は障害が、アレルギー又はI型過敏性反応、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連の痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)、多発性硬化症(MS)、精神分裂病、心筋細胞肥大、再潅流/虚血、脳卒中、禿頭、移植拒絶、移植片対宿主疾患、関節リウマチ、固形悪性疾患、血液悪性疾患、白血病、リンパ腫及び骨髄増殖性疾患である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記疾患又は障害が喘息である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記疾患又は障害が移植拒絶である請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記疾患又は障害が関節リウマチである、請求項47記載の方法。

【公表番号】特表2009−525962(P2009−525962A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551353(P2008−551353)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/001225
【国際公開番号】WO2007/084557
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】