説明

ユウリコマロンギフォリアの生理活性フラクション

【課題】テストステロン合成および放出並びに精子活性および精子数の増大という生理活性を有し、性機能障害または男性不妊症の治療のための新規使用および製品の提供。
【解決手段】植物のユウリコマ・ロンギフォリア(マレーシアではトンカット・アリ(Tongkat Ali)としても知られている)の根の抽出物から、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはサイズ排除クロマトグラフィーにより単離された、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを生理活性成分としてを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の詳細な説明]
発明の分野
本発明は、一般に、生理活性天然物の分野、そして特に、ユウリコマ ロンギフォリア(Eurycoma longifolia)のフラクションに由来する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ユウリコマ ロンギフォリア(マレーシアではトンカット アリ(Tongkat Ali)としても知られている)の成分は、伝統的な民間薬に用いられている。植物の抽出物は、一般に、マラリア、癌、不安症、潰瘍並びに男性不妊症および性機能障害などの複数の疾患および症候群の治療に有用であると考えられている。従来、植物の薬理効果に関する情報の多くは逸話であった。
【0003】
十分に制御された、再現可能な抽出および生理活性アッセイは、成分の機能を明確にし得る。例えば、細胞毒性効果を有することが示されているユウリコマ ロンギフォリアの抽出物を調査するための研究が進行中である。クアシノイドを含むこれらの抽出物は、細胞毒性特性ならびに抗癌、抗マラリアおよび抗潰瘍剤としての潜在的な使用について調査がなされているユウリコマラクトン(eurycomalactone)、ユウリコマノール(eurycomanol)およびユウリコマノン(eurycomanone)などの化合物を包含する。
【0004】
ユウリコマ ロンギフォリアからクアシノイド抽出物を製造するためのクロマトグラフィー法が、Chan, et. al. (1998)に開示されている。この文献は、癌、潰瘍、マラリアおよび発熱の治療における、かかるクアシノイド抽出物の潜在的な有用性を報告している。
【0005】
その効果がストリンジェントな精製ストラテジーにより調査されたクアシノイドとは対照的に、性欲促進活性を起こし得、且つ男性不妊症および性機能障害のための治療としての可能性を有するユウリコマ ロンギフォリアの成分は、単離されなかった。ユウリコマ ロンギフォリアのブタノール、メタノール、水およびクロロホルム抽出された粗フラクションは、哺乳類における行動的な作用について調査がなされている。これらの基本的な方法により分離した化合物の混合物は、動物の性的行動および能力を評価するために、雄マウスおよびラットに投与された。
【0006】
ユウリコマ ロンギフォリアの性的効果の調査は、受容可能な雌に対する、性的経験があり且つ実験未使用の雄ラットの方向付け活動(orientation activities)において粗抽出物の影響を中心に取扱った。処置されたラットにおいて観察された活動は、マウンティング、リッキング(licking)および肛門性器におい嗅ぎ(anogenital sniffing)を含み、および処置されたラットの環境に対する行動もまた評価され、これは、挙動、探索、立ち上がり(rearing)、よじ登り(climbing)などの活動の分析を含んだ。さらに、ラットは、性器および非性器のグルーミンのレベルに関しても評価された。
【0007】
これらの種類の行動的要素の分析は、ユウリコマ ロンギフォリアの逸話的な性欲促進特性を研究するためのアッセイとして機能し、そして粗抽出物の投与は、処置された動物の性的能力の増大に関連付けられた。
【0008】
行動アッセイの使用は、粗ユウリコマ ロンギフォリア抽出物の性生理学における効果を示すが、その研究は、単離された成分を生じる精製ストラテジーは用いなかった。したがって、この技術は、ユウリコマ ロンギフォリアの催淫性化合物の候補の物理的性質を同定しておらず、またはユウリコマ ロンギフォリアから単離された化合物の不妊症若しくは性的機能障害における効果を細胞レベルで評価できなかった。
【発明の概要】
【0009】
現在、ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物の特定の精製された成分が、テストステロン合成および放出並びに精子活性および精子数の増大という生理活性を示すことが発見された。これらの精製された成分は、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを含む。精製された成分を用いて、男性不妊症および性機能障害を治療するための方法が提供される。ユウリコマ ロンギフォリア植物の根の抽出物を含む製剤もまた提供される。製剤は、適用または投与のために、種々の手段により調製され得る。
【0010】
本発明の一側面により、ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物のフラクションを含む組成物が提供される。該フラクションは、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを含む。ある態様において、フラクションは、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および精子運動性の増大からなる群から選択される活性を有する。
【0011】
いくつかの好ましい態様において、ペプチドはグリコペプチドである。他の好ましい態様において、ペプチドは、約30〜39個のアミノ酸を有し、好ましくは、ペプチドは、約36個のアミノ酸を有する。
【0012】
本発明の別の側面により、ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物から生理活性成分を単離するための方法が提供される。該方法は、ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物の調製およびフラクションからの生理活性成分の単離を含む。生理活性成分は、クロマトグラフィー法、好ましくは、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびサイズ排除クロマトグラフィーからなる群から選択されるものにより単離される。
【0013】
生理活性成分は、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを含む。ある好ましい態様において、逆相HPLCは、C4およびC18からなる群から選択されるクロマトグラフィー媒体を用いて実施される。他の態様において、本方法は、さらに、逆相HPLCのクロマトグラフィーによる分離前に、Bio−Gel P−2およびBio−Gel P−4からなる群から選択される少なくとも1つのサイズ排除クロマトグラフィー媒体を用いて、水性抽出物を分別することを含む。他の好ましい態様において、生理活性は、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および精子運動性の増大からなる群から選択される。
【0014】
本発明のさらに別の側面により、前記方法により調製されたユウリコマ ロンギフォリアの生理活性化合物が提供される。
本発明のさらに別の側面により、性機能障害または男性不妊症の治療における使用のためのユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物を含む組成物が提供される。該使用は、ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物のフラクションを含む組成物の量を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む。フラクションは、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを含む。
【0015】
投与される量は、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および精子運動性の増大からなる群から選択される活性を増大するために効果的な量である。本発明の更なる側面により、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および/または精子運動性の増大のためのユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物を含む組成物の使用が提供される。
【0016】
該使用は、かかる治療が必要な対象に、テストステロン合成、精巣細胞からのテストステロン放出、精子数および精子運動性を増大させるためにそれぞれ効果的な量の、前記ユウリコマ ロンギフォリア組成物を投与することを含む。
本発明のさらに別の側面により、医薬組成物が提供される。該組成物は、効果的な量の前記組成物とともに薬学的に許容し得るキャリアを含む。
本発明のこれらおよび他の側面は、以下に一層詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ユウリコマ ロンギフォリアの生理活性フラクションを単離するためのサイズ排除クロマトグラフィー手順の概略フローチャートを示す図である。生理活性フラクションであるFDAEおよびF3AEは、指示された工程で回収される。
【図2】ユウリコマ ロンギフォリアの生理活性フラクションについての逆相HPLC精製の概略フローチャートを示す図である。
【図3】FADE(上図)およびF3AE(下図)について行われたユウリコマ ロンギフォリア逆相HPLC精製のクロマトグラムを示す図である。トレースの下部を横切る数字および区分は、時間を分で表したものである。アスタリスク()は、生理活性フラクションまたはピークを示す。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、男性不妊症および性機能障害の治療における使用のための、ユウリコマ ロンギフォリアの抽出物の生理活性フラクションの使用を対象とする。男性不妊症は、広く知れ渡った問題であり、限定されずに、異常な性欲、異常な精子運動性および異常な精子数を含む多くの側面を包含する。これらの種類の異常は、異常に低いテストステロンレベルに関連する。男性不妊症は、治療が困難である。
例えば、「不妊男性の三分の二は、精液パラメータの部分的な減少および低い受精能力(subfertility)を有し」、そして「多様な経験的治療法(例えば、テストステロンリバウンド、性腺刺激ホルモン、抗エストロゲン)は、失敗に終わった」(Harrison's Principles of Internal Medicine, 1998)。不妊症に加えて、減少したテストステロンレベルは、多くの高齢および時には若い男性を悩ます性的機能の欠如および減少した性欲に関連し得る。本発明はまた、かかる生理活性フラクションを含む、生殖能力および抗性機能障害製剤を対象とする。
【0019】
本発明は、(テストステロンの放出若しくは産生または精子運動性若しくは精子数を増大させるための)ユウリコマ ロンギフォリアの生理活性成分の、ペプチド分子、おそらくグリコペプチドとしての同定を含む。以下の例に示されるように、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドが、最終的に逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製工程で終わる、一連のクロマトグラフィー法により精製された。単離および精製された生理活性フラクションの分析は、数種の糖残基を伴う約4300ダルトンの生理活性ペプチドの存在を示した。
【0020】
本明細書記載のクロマトグラフィー法における出発物質としてのユウリコマ ロンギフォリア抽出物は、ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出により得ることができる。好ましい態様においては、植物の根だけが用いられる。好ましい態様において、根は粉末にされる。多様な親水性溶媒が抽出手順に使用され、これは、例えば水、メタノール、エタノールおよび他の低級アルキルアルコールを含む。粉末にされた根は、溶媒中でボイルされてもよく、そして残屑は遠心分離により抽出物から除去される。水性抽出物をさらに精製するために、多回抽出が実施され得る。
【0021】
本明細書で記載されるように、多様なクロマトグラフィー手順を、ユウリコマ ロンギフォリアの活性成分を含有するフラクションの単離に用いることができる。かかるクロマトグラフィー法は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLCおよびイオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0022】
一態様において、クロマトグラフィー手順は、サイズ排除クロマトグラフィーであり得る。当業者には理解されるであろうが、いくつかの態様において、サイズ排除クロマトグラフィーは、Bio−Gel P−2またはBio−Gel P−4などのポリアクリルアミドビーズで実施してもよく、および他の態様において、サイズ排除クロマトグラフィーは、同一または他の製造業者からのサイズ排除製品で実施され得る。サイズ排除材料および方法の選択方法は、クロマトグラフ技術に精通する人にとっては、慣例的であろう。
【0023】
他の態様において、クロマトグラフィー手順は逆相HPLCであり得る。好ましくは、一態様において、カラムは、シリカベーズの吸着剤を含む。いくつかの態様において、逆相HPLCカラムは、C4(ブチルジメチルクロロシラン)カラムである。他の態様においては、逆相HPLCカラムは、C18(オクタデシル)カラムである。当業者には理解されるであろうが、カラムもまた、限定されずに、C8、C1(トリメチルクロロシラン)、CNまたはフェニルカラムの中から選択され得る。逆相HPLCカラム、吸着剤、および吸着剤修飾の選択方法は、クロマトグラフ技術に精通する人にとっては、慣例的であろう。
【0024】
ユウリコマ ロンギフォリア抽出物フラクションの特性を評価するために、フラクションの製剤を用いて、多様な実験が実施された。これらの実験の詳細は、以下の例において、提供する。精子の運動性、数およびテストステロンレベルをアッセイするための代替的な方法は、当業者には十分に公知であり(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 1998; Winters et al., 1991; Froman and McLean, 1996; Bomman, et al, 1993を参照)、そして生理活性のフラクションのアッセイに有用であることが理解されるであろう。他の態様において、ユウリコマ ロンギフォリア抽出物フラクションの評価は、本明細書で記載されるように、行動パラメータをモニターすることを含み得る。
【0025】
一組の態様において、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物(例えば、ユウリコマ ロンギフォリア抽出物のフラクション)に加えて、本発明の製剤は、経口投与のための薬学的に許容し得るキャリアを含む。
経口投与を容易にするために、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物は、任意の多様な経口投与のための薬学的に許容し得るキャリアと混合され得る。
【0026】
用語「経口投与のための薬学的に許容し得るキャリア」に関しては、組成物が、無毒性であり、ヒト胃腸系を刺激せず、そして溶液、シロップ、エマルジョン、ゲルまたは固体を形成するために、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物と混合可能であることを意味する。静脈内、筋肉内、皮下または一般に、非経口投与のための製剤もまた、当該技術分野において公知の方法により製造され得る。
【0027】
経口投与のために薬学的に許容し得るキャリアとして機能することができる物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉などの澱粉;セルロースおよびその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなど;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;
【0028】
落花生油、綿実油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;ポリビニルピロリドン;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩液;リン酸緩衝溶液;ココアバター;乳化剤;並びに医薬製剤に用いられる他の無毒の適合物質が挙げられる。
【0029】
湿潤剤およびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに着色剤、着香剤、賦形剤、錠剤加工剤、安定剤、酸化防止剤および防腐剤もまた存在可能である。他の適合医薬添加物および活性成分は、本発明の組成物への使用のための薬学的に許容し得るキャリアに含まれ得る。
【0030】
経口投与ための製剤は、遅延放出性および長期放出性製剤を含む、錠剤、キャプレット、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、ピル、分散可能な粉末剤または顆粒剤、トローチ剤、サシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、噴霧剤、(固体としてまたは液状媒体中)等の形態であり得る。
【0031】
他の態様の組において、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物(例えばユウリコマ ロンギフォリア抽出物のフラクション)に加えて、本発明の製剤は、局所適用のための薬学的に許容し得るキャリアを含む。かかる薬学的に許容し得るキャリアは、当該技術分野において十分に公知であり、本質的に、現在使用されており、且つ市販の任意の皮膚用製剤若しくは化粧用製剤、または現在使用されており、且つ市販の皮膚用製剤若しくは化粧用製剤の組み合わせを含み得る。
【0032】
したがって、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物を付加し、そして所望により、局所適用に好適な粘度を維持するために、水性成分および非水性成分の比率を調節することにより、市販の皮膚用製剤若しくは化粧用製剤を簡単に改質することができる。
【0033】
本明細書で用いられているように、用語「局所適用のための薬学的に許容し得るキャリア」は、ヒトの皮膚の刺激の原因とならず、且つ溶液、エマルジョン、ゲル、ローション、軟膏、バーム、クリームまたは広げられる固体若しくはペーストを形成するために、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物と混合できる、塗布またはすり込みによるヒトの皮膚への局所適用に好適な組成物を意味する。
【0034】
かかる薬学的に許容し得るキャリアは、緩和剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、防水剤、殺菌剤、経皮浸透剤および防腐剤を含み得る。さらに、芳香剤、顔料などの種々の化粧剤が、局所適用のための薬学的に許容し得るキャリアに含まれ得る。
【0035】
性機能障害または男性不妊症の治療のための組成物の使用の一態様は、本明細書に記載されるように、ユウリコマ ロンギフォリア由来の生理活性剤を対象に投与することである。本明細書で用いられているように、対象はヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯類である。全態様において、ヒト対象が好ましい。全態様において、雄の対象が好ましい。好ましくは、対象は、性機能障害を有するかまたは不妊である疑いがある、または性機能障害若しくは不妊症と診断されたヒトである。
【0036】
本発明の一態様において、生理活性剤を含んでいるユウリコマ ロンギフォリア由来組成物を含む製剤を用いた、テストステロン合成、精巣細胞からのテストステロン放出、精子数および/または精子運動性を増大させるための方法が開示される。一態様において、ユウリコマ ロンギフォリア由来組成物の製剤は、テストステロン合成、テストステロン放出、精子数または精子運動性を増大させるために、当業者に公知の他の医薬とともに、投与され得る。例えば、徐放性のテストステロンパッチの適用は、ユウリコマ ロンギフォリア生理活性製剤の同時投与を伴ない得る。
【0037】
本発明のユウリコマ ロンギフォリア生理活性製剤は、効果的な量で単独または他の化合物との複合物で投与される。効果的な量は、テストステロン合成、精巣からのテストステロン放出、精子数または精子運動性を増大させるために十分な量である。効果的な量は、当然ながら、治療されている症状の重症度;年齢、体調、大きさおよび体重を含む個々の患者のパラメータ;併用している治療;治療の頻度;並びに投与の形態に依存するであろう。
【0038】
これらの要素は、当業者に十分に公知であり、常用の実験法だけで対応できる。一般に、最大用量、即ち、信頼できる医学的判断による最高の安全用量が用いられることが好ましい。
【0039】
一般に、活性化合物の1日用量は、1日約0.01ミリグラム/kg〜1日2000ミリグラム/kgであろう。1日1回または数回の投与において、10〜500ミリグラム/kgの範囲の経口用量により、所望の結果が得られると考えられる。かかる用量で、対象の応答が十分でない場合、患者の耐性が許容する範囲で、さらにより高い用量(または異なる、より局所的な送達経路による事実上より高い用量)を用いてもよい。用量範囲は、個々の患者の治療に必要であるようにそして治療される具体的な症状に応じて調節してもよい。化合物の適切な全身的なレベルを達成するために、1日当たりの複数回投与が意図される。
【0040】
多様な投与経路が使用可能である。選択される特定の様式は、当然ながら、選択された特定の製剤、治療されている症状の重症度および治療的な有効性のために必要とされる用量に依存するであろう。この発明の方法は、一般的に言えば、医学的に許容可能な任意の投与様式を用いて実施してもよく、該投与様式は、臨床的に許容し得ない副作用をもたらさずに活性化合物の効果的なレベルをもたらす任意の形態を意味する。
【0041】
かかる投与形態は、経口、直腸内、局所的、鼻腔内、経皮的または非経口経路を含む。用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内または注入を含む。静脈内および筋肉内経路は、長期治療および予防には特に好適ではない。急性の緊急的な状況においては、静脈内投与が好ましい。経口投与は、患者および投与計画に好都合であるため、予防的な治療に好ましい。
【0042】
組成物は、好都合に、単位投薬形態で提出されてもよく、そして薬学の技術分野において十分に公知の任意の方法により調製され得る。一般に、組成物は、活性化合物を液体キャリア、細かく分割された固体キャリアまたはその両方に一様且つ十分に結び付け、および必要であれば、次に生成物を成形することにより調製される。
【0043】
経口投与に好適な組成物は、それぞれが活性化合物の既定量を含有するカプセル剤、カシェ剤、錠剤またはトローチ剤などの離散性ユニットとして提示され得る。他の組成物は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤などの水性液または非水性液中の懸濁剤を含む。
【0044】
他の送達システムは、持続放出性、遅延放出性または徐放性送達システムを含むことができる。かかるシステムは、本発明の活性化合物の繰返される投与を回避することができ、対象および医師の利便性が増大する。多種の放出送達システムが使用可能であり、当業者に公知である。
【0045】
それらは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ酸無水物およびポリカプロラクトンなどのポリマーベースのシステム;コレステロールなどのステロール、コレステロールエステル並びに脂肪酸またはモノ−、ジ−およびトリ−グリセリドなどの中性脂肪を含む脂質の非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;サイラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;慣用の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤、部分的に連結されたインプラントなどを含む。
【0046】
具体例としては、限定されずに:(a)マトリックス内の形態に多糖類が含有されている、米国特許第4,452,775号(Kent);同第4,667,014号(Nestor et al.);並びに同第4,748,034号および同第5,239,660号(Leonard)に記載のエロージョンシステム(erosional systems)、並びに(b)活性成分が制御された割合でポリマーを介して浸透する、米国特許第3,832,253号(Higuchi et al.)および同第3,854,480号(Zaffaroni)に記載の拡散システムが挙げられる。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムが使用可能であり、このいくつかは、移植に適合する。
【0047】

例1:ユウリコマ ロンギフォリア生理活性フラクションの単離
イントロダクション
部分的に精製されたユウリコマ ロンギフォリアの根の抽出物が、還流および二回のサイズ排除クロマトグラフィーを含むいくつかの精製工程により得られた。
【0048】
方法
ユウリコマ ロンギフォリアの生理活性フラクションの単離の第一工程は、ユウリコマ ロンギフォリア根500gの粉末化であり、次いで8Lの蒸留水で8時間ボイルした。次に、ボイルされた混合物を遠心分離し、ペレットを廃棄し、そして洗浄した上澄み液を回収および凍結乾燥して、収量約30gを得た。このフラクションを「FDAE」として識別し、例3および例4における更なる精製およびアッセイのため、FDAEの一部を残した。
【0049】
残りの凍結乾燥されたFDAEペレットから、15gを蒸留水50mlに再懸濁し、内径45-mmおよびベッド体積280mlを有するBio−Gel P−2カラム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に負荷し、蒸留水によりカラムから溶出させた。溶出液を2つのフラクション(第一のフラクションは茶色および第二のフラクションは黄色の蛍光色であり、色で区別された)で回収した。第一のフラクション(フラクション1)を凍結乾燥した。
【0050】
凍結乾燥したフラクションから1.5gを、10〜15mlの蒸留水に再懸濁し、20×800mm、ベッド体積260mlのBio−Gel P−4 カラム (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)に負荷し、蒸留水で溶出した。彩色を区別することにより、溶出液を4つのフラクションで回収し、凍結乾燥して、生理活性の測定に用いた。図1は、精製の模式図を要約するものである。
【0051】
結果
第三の溶出されたフラクションを、「F3AE」として識別した。F3AEの一部を、例2で記載されるように生理活性実験に利用し、F3AEの一部を、さらに、例3で記載したように精製した。
【0052】
例2:ユウリコマ ロンギフォリア精製手順からの生理活性フラクションのバイオアッセイ
イントロダクション
第三の溶出フラクションF3AEの生理活性を評価するために、溶出したフラクションの一部を、標準のテストステロンおよび精液評価方法を用いて評価した。
【0053】
方法
標準の手順を用い、テストステロンのインビボ放射免疫測定を、テストおよびコントロール動物の血漿を用いて実施した。さらに、インビトロホルモンアッセイを、標準のガスクロマトグラフィー法を用いて実施した。濃度および運動性に関する精子の分析を、標準の方法を用いて実施した。
結果
バイオアッセイの結果を表1に示す。
【0054】
表1.インビボおよびインビトロにおける生理活性アッセイ結果
【表1】

【0055】
例3:ユウリコマ ロンギフォリアの生理活性フラクションの単離のための代替的方法
イントロダクション
ユウリコマ ロンギフォリアからのフラクションの最初の分離(例1参照)後に、FDAEの一部(例1参照)およびユウリコマ ロンギフォリア根から単離した生理活性フラクションF3AEの一部(例2参照)を、逆相HPLC方法を用いて精製し、アミノ酸分析、糖分析および質量分析法を用いて特性評価した。
【0056】
方法
フラクションFDAEまたはフラクションF3AE(例1および例2の方法の項を参照)の一方を、逆相分離のためにRaininHPLCシステム(Rainin Instrument Co., Woburn, MA)のRaininC4カラムに負荷した。HPLC精製を、一定の1ml/分の流速で、60分実施した。時間0に、蒸留水約1mg/mlで、フラクションFDAEまたはフラクションF3AEの一方を注入した。
【0057】
最初の10分間は、移動相は、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)が100%であり、次いで、実行の残りの50分間は、0.1%TFAが100%からアセトニトリルが100%に移行した。実行中にフラクションを回収し、溶出液を245−nm UV検出でモニターし、次いで、凍結乾燥した。図3は、分離によるクロマトグラフトレースを提供するものであり、上図がFDAEについてのものおよび下図がF3AEについてのものである。
【0058】
図3の下図において、「*」により示されているシングルピークは、例2で特性評価された生理活性フラクションを示す。9分に溶出されたシングルピークの内容は、標準の方法を用いた、ペプチド分析および糖分析に供された。質量分析法もまた、製造業者の使用説明書に従い、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI; 例えば、Ciphergen, Palo Alto, CA)を用いて、9分フラクションについて実施した。
【0059】
結果
9分の溶出シングルピークは、例2に記載したバイオアッセイに基づき、生理活性を有することが決定された。該ピークは、その組成物を決定するために、数種の方法により分析された。9分に溶出した化合物は、約33〜36個のぺプチドからなり;キシロース、グルコース、フコースを含む約3つのタイプの糖と結び付いており;そして約4300ダルトンの質量を有することが決定された。
【0060】
参考文献
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【0061】
本発明は、種々の現在の好ましい態様に関して、上記のように記載されたが、多くの変更および改変がなされ得ることは、当業者であれば明らかであろう。したがって、本発明は、本明細書に記載の特定の態様に限定して理解されるものではなく、むしろ、ここに添付される請求項の思想および範囲に含まれる、全てのかかる変更および改変を包含するものとして理解されるものである。
本明細書で開示されている全ての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物のフラクションを含む組成物であって、該フラクションが、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを含む、前記組成物。
【請求項2】
フラクションが、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および精子運動性の増大からなる群から選択される活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ペプチドがグリコペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ペプチドが約30〜39個のアミノ酸を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ペプチドが約36個のアミノ酸を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物から生理活性成分を単離するための方法であって、
ユウリコマ ロンギフォリアの水性抽出物を調製すること、および
逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびサイズ排除クロマトグラフィーからなる群から選択されるクロマトグラフィー法により生理活性成分を単離することを含み、
ここで、該生理活性成分が、約4300ダルトンの分子量を有するペプチドを含む、前記方法。
【請求項7】
逆相HPLCが、C4およびC18からなる群から選択されるクロマトグラフィー媒体を用いて実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
逆相HPLCのクロマトグラフィーによる分離前に、Bio−Gel P−2およびBio−Gel P−4からなる群から選択される、少なくとも1つのサイズ排除クロマトグラフィー媒体を用いて、水性抽出物を分別することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
生理活性が、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および精子運動性の増大からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法により調製される、ユウリコマ ロンギフォリアの生理活性成分。
【請求項11】
性機能障害または男性不妊症の治療のための請求項1に記載の組成物の使用であって、テストステロン合成の増大、細胞からのテストステロン放出の増大、精子数の増大および精子運動性の増大からなる群から選択される活性を増大させるために効果的な組成物の量を、かかる治療が必要な対象に投与することを含む、前記使用。
【請求項12】
テストステロン合成を増大させるための請求項1に記載の組成物の使用であって、テストステロン合成を増大させるために効果的な組成物の量を、かかる治療が必要な対象に投与することを含む、前記使用。
【請求項13】
精巣細胞からのテストステロン放出を増大させるための請求項1に記載の組成物の使用であって、精巣細胞からのテストステロン放出を増大させるために効果的な組成物の量を、かかる治療が必要な対象に投与することを含む、前記使用。
【請求項14】
精子数を増大させるための請求項1に記載の組成物の使用であって、精子数を増大させるために効果的な量を、かかる治療が必要な人に投与することを含む、前記使用。
【請求項15】
精子運動性を増大させるための請求項1に記載の組成物の使用であって、精子運動性を増大させるために効果的な量を、かかる治療が必要な対象に投与することを含む、前記使用。
【請求項16】
効果的な量の請求項1に記載の組成物および薬学的に許容し得るキャリアを含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92108(P2012−92108A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−252115(P2011−252115)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2002−522919(P2002−522919)の分割
【原出願日】平成13年2月14日(2001.2.14)
【出願人】(503080626)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】