説明

ユニットルームの壁パネル及びその接続構造

【課題】安価で且つ容易に組み立てられ、壁パネルと建築壁との間隙を小さくできるユニットルームの壁パネル及びその接続構造を提供する。
【解決手段】さねはぎ接合されるユニットルームの壁パネル接合構造において、第1の壁パネルの一側端に形成された凹溝の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの該凹溝に対向する一側端に上記凹溝に嵌合する形状に形成された凸条の室内側に位置する底部とを当接させ、上記凹溝の室外側に位置する頂部と上記凸条の室外側に位置する底部との間に間隙を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等のユニットルームの壁面を構成する壁パネル、及び斯かるユニットルームの壁パネル相互間の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニットルームは、床,壁,天井に給排水設備や電気設備等を組合せて構成された室型ユニットであり、中でも、それ自身で平面を維持できる程度の強さをもった板状のパネルを接続して壁面を構成するパネル方式のものは、ユニットバスルーム、ユニットシャワールーム、ユニットトイレルーム等で広く採用されている。
【0003】
このパネル方式によるユニットルームの壁面は、床外縁に形成された壁パネル載置部上に、床面から天井面に達する高さを有する縦張りの壁パネルを立設する構造のものが主流である。この構造の壁パネルは、高さが2000mm以上あり、パネル幅が大きくなれば重量も増加することから、その運搬や組立作業を考慮すれば、パネル幅を大きくすることはできず、そのため、一つの壁面は複数の壁パネルで構成される。
【0004】
このとき、壁パネル間で前後に段差が生じることを防止する、或いは高さ方向に長いパネルが面外方向に撓む(上下方向中央部が室内側へ張り出す、或いは室外側へ退行する)ことを防止するため、例えば図16に示すように、これら壁パネル101の接続部分において床面から支柱102を立設して支持させる必要がある。
【0005】
そのため、建築本体の壁面103と壁パネル101との間にこの支柱102を立設するスペースSを確保すべく壁パネル101は室内側へと押し出され、畢竟ユニットルーム内の空間が狭くなる。特に、既存建築物のリフォームに際して、規格化されたユニットルームを所定の場所に設けるには、必要空間を確保するために往々既存壁を斫る必要が生じるが、これは、斫り作業という工数の増加による工期の延長ばかりではなく、斫りガラという建築廃材の処分費用も増加する。また、発生する騒音や埃が近隣に迷惑をかけることもある。
【0006】
したがって、建築壁面とユニットルーム壁面との間隙をできるだけ小さくすべく、支柱を小さくする、或いはなくす方法が種々検討されている。その中に、壁パネルを横積み構造とするものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、押出し成形セメント板からなる壁パネルの一側端に凸条、もう一側端に凹溝部を設けて嵌合させる接続構造で、凹溝の2つの縁がともにもう一方の壁パネルの凸条根本に当接する形状を備えるものである。この構造は、壁面端部から他端までの横方向には1枚のパネルで掛け渡すことが可能であり、また、上下のパネルを嵌合させることから撓みの虞もないため、連結材や支柱が不要となって、合理的な構造といえる。
【0007】
しかしながら、図17(a)に示すように、凸条及び/又は凹溝の成型精度が悪い場合や、同図(b)に示すように、組立中に嵌合部に異物Fを噛み込んだ場合に、下側の壁パネル上端と上側の壁パネル下端との間に間隙Gが発生し、意匠性の低下、水密信頼性の低下、隙間に汚れが入り込むことによる清潔感の低下等の問題が発生する。
【0008】
特に、壁パネルの室外側において嵌合部に異物Fを噛み込んだ場合は、室内側にいる作業者の手が届かないので、異物Fを除去するために組立中の壁パネルを一度外さなければならず、組立作業の能率を著しく悪化させる虞がある。
【0009】
この問題を解決するために、シリコンコーキング等水密材を充填することも考えられるが、これは、組立作業工数が増加する、組立作業者の熟練度のバラツキにより、仕上がりに差が生じる、カビ等が発生して清潔感を損なう等新たな問題をもたらす。或いは、壁パネル同士を強制的に引き寄せる特殊な部品或いは治具を用いることも考えられるが、これでも組立作業工数やコストの増加という問題がある。
【0010】
一方、この建築壁面とユニットルーム壁面との間隙の問題を解決するには、支柱を小さくする、或いはなくす方法だけでなく、壁パネル自体の厚みを小さくするという方面からも検討する必要がある。しかしながら、特許文献1で採用されている押出成形セメント板は、それ自体ある程度の厚みがあるので改善の余地がある。また、コスト的にも、現在縦張り壁パネルに多く用いられている、鋼板に裏張り材を貼着したものに比べて高いものとなる。ところが、この化粧鋼板に裏打ち材を貼着して形成される壁パネルは、薄く、強く、且つ廉価であるという特徴を有するものの、精度が出難いため、嵌合部の精度確保が必須である横積み構造には適用できなかった。
【特許文献1】特開平6−42075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、安価で且つ容易に組み立てられ、壁パネルと建築壁との間隙を小さくできるユニットルームの壁パネル及びその接続構造を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明の他の目的は、意匠性、水密信頼性、清潔感のあるユニットルームの壁パネル及びその接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るユニットルームの壁パネル接合構造は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、第1の壁パネルの一側端の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの対向する一側端の室内側に位置する頂部とが当接される一方、上記両壁パネルの室外側に位置する頂部同士の間に間隙が設けられたものである。
【0014】
また、本発明に係るユニットルームの壁パネル接合構造は、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、さねはぎ接合されるユニットルームの壁パネル接合構造において、第1の壁パネルの一側端に形成された凹溝の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの該凹溝に対向する一側端に上記凹溝に嵌合する形状に形成された凸条の室内側に位置する底部とが当接される一方、上記凹溝の室外側に位置する頂部と上記凸条の室外側に位置する底部との間に間隙が設けられたものである。
【0015】
この壁パネル接合構造は、請求項3に記載したように、立設された第1の壁パネルの上側端に前記凸条を配置し、該壁パネルの上に立設された第2の壁パネルの下側端に前記凹溝を配置することにより、横積み構造の壁パネル接合構造に適用することができる。
【0016】
そして、請求項4に記載したように、この凸条を、挟装された水密材を介して前記凹溝に嵌合される構成とすれば、より水密性を高めることができる。
【0017】
また、請求項5に記載したように、前記水密材を、一端が前記凹溝の頂部と前記凸条の底部とが当接する部分よりも室内側に膨出拡開する形状に成形し、前記壁パネルの室内側接合部分を掩蔽する構成とすることにより、該水密材に化粧モールとしての機能を兼ねさせることができ、意匠性が向上する。
【0018】
一方、上述した課題を解決するために、請求項6に係る壁パネルは、一側端にさねはぎ接合に供される凸条が設けられ、該凸条の一方の底部から上記凸条の頂部までの距離が、上記凸条の他方の底部から上記凸条の頂部までの距離より短く形成されたものである。この場合、請求項7に記載したように、前記凸条の頂部までの距離が他方より短く形成された底部を、表面側から前記底部へと下降する傾斜面に形成してもよい。
【0019】
或いは、上述した課題を解決するために、請求項8に係る壁パネルは、一側端にさねはぎ接合に供される凹溝が設けられ、該凹溝の一方の頂部から上記凹溝の底部までの距離が、上記凹溝の他方の頂部から上記凹溝の底部までの距離より長く形成される。この場合、請求項9に記載したように、前記凹溝の底部までの距離が他方より長く形成された頂部は、表面側から前記底部へと下降する傾斜面に形成してもよい。
【0020】
さらに、本発明に係るユニットルームの壁パネル接合構造は、上述した課題を解決するために、請求項10に記載したように、相じゃくり接合されるユニットルームの壁パネル接合構造において、第1の壁パネルの一側端に形成された室内側に位置する凸条の頂部と、第2の壁パネルの該凸条に対向する一側端に上記凸条に係合する形状に形成された室内側に位置する凸条受け部とが当接される一方、上記第1の壁パネルの室外側に形成された凸条受け部と上記第2の壁パネルの室外側に形成された凸条の頂部との間に間隙が設けられたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るユニットルームの壁パネル及びその接続構造によれば、安価で且つ容易に組み立てられ、壁パネルと建築壁との間隙を小さくできるユニットルームの壁パネル及びその接続構造を提供することができる。
【0022】
本発明は、意匠性、水密信頼性、清潔感のあるユニットルームの壁パネル及びその接続構造を得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るユニットルームの壁パネル及びその接続構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る壁パネルを構成要素とするユニットルーム1の全体的な概要を示すものである。本実施形態に示されたユニットルーム1は、床2と、壁3と、コーナー支柱4と図示しない天井パネル及び出入り口とを備え、一定の広さを有する空間を形成する。
【0024】
床2は、建築床或いは防水パンで構成され、床2の四周には、壁3を構成する壁パネル10を載置可能な壁パネル載置部2aが形成される。
【0025】
コーナー支柱4は、この床の四隅に立設され、壁パネル10,10Aを立設状態に保持するものである。
【0026】
壁3は、壁パネル載置部2a上に立設された下段の壁パネル10と、その上に載置された上段の壁パネル10Aとから構成される。壁パネル10,10Aは、さねはぎ(一方を凸,他方を凹に彫って合わせる板の接合方法)に接合されて、床2の外縁に設けられた壁パネル載置部2a上に載置され、立設されたコーナー支柱4,4間に渡設される。したがって、壁3の中間に支柱を設ける必要はない。本実施形態では2段の場合を例に採って説明するが、天井高さが高い場合等では、3段或いはそれ以上の壁パネルを積み上げて壁3を構成してもよい。
【0027】
例えば、ユニットルームの一形態であるユニットバスでは、その大きさが長さ1600×幅1600×高さ2000mm程度が主流である。この場合、従来の縦張り型壁パネルでは、1枚のパネルの長さは、2000mm前後となる。ところが、本発明に係る横積み構造の壁パネルでは、その長さが1600mm前後となるので、運搬時や組立時においての振り回しが容易になる。
【0028】
ユニットルーム1の壁3を構成する壁パネルのうち下段に設置される壁パネル10は、図2に示すように、芯材12に、室内側に面する表面材11と、室外側に面する裏面材13とが接着剤により貼着されて形成される。表面材11及び裏面材13には、例えば化粧鋼板が用いられ、芯材12には、例えば石膏ボード、セメント板、珪酸カルシウム板或いは発泡樹脂製の板等が用いられる。この構成により、壁パネル10自体の厚さは略12mm程度に抑えられ、厚さが30mm程度の押出成形セメント板に比べて薄く、また、重量も押出成形セメント板より格段に軽く、運搬上及び組立上取り扱い易いものとなっている。そして、押出成形セメント板よりも安価に製造することができる。
【0029】
表面材11の上側端は、図2(c)に示すように、背面側に折曲されて、さねはぎ接合に供される凸条14が形成される。この凸条14は、室内側底部14aと室外側底部14cとの中央に、頂部14bが立設される。ここで、室内側底部14aと室外側底部14cとは、同じ高さに形成される。
【0030】
これに対し、表面材11の下側端は、図2(d)に示すように、背面側に折曲されて凹条15が形成される。この凹溝15は、壁パネル10の厚さ方向中央に位置する底部15bを挟んで、室内側頂部15aと室外側頂部15cとが立設されるが、室内側頂部15aから底部15bまでの距離は、室外側頂部15cから底部15bまでの距離より長くなるように、すなわち、室内側頂部15aの方が相対的に高く形成される。
【0031】
一方、表面材の両側端は、図2(e)に示すように、単純に背面側に直角に折曲されて、芯材12の端部を保護する。
【0032】
また、壁パネル10の背面には、上方の両端近傍に図2(c)に示す掛止孔12aが凹設される。壁パネル10は、この掛止孔12aが、支柱4に突設された、後述するピン30dに掛止されて立設される。
【0033】
ユニットルーム1の壁3を構成する壁パネルのうち上段に設置される壁パネル10Aは、基本的には壁パネル10と同様の構成であるが、その上側端が単純に背面側に折曲されている点で壁パネル10と相違する(図6参照)。
【0034】
コーナー支柱4は、ユニットルーム1の出隅のコーナーに設けられ、壁3の荷重を支持するとともに、壁パネルの表面相互間で出入りが生じないように配置する機能を有する。このコーナー支柱4は、室内側に位置するコーナー目地20と、壁パネル裏面側に位置するコーナーバックアップ材30とから構成される。
【0035】
コーナー目地20は、図3に示すように、目地本体20aと、軟質部20bと、支持部20cとを備える。目地本体20aは、ABS樹脂等の硬質プラスティックを細長い略三角柱状に成形したものであり、壁パネル10と、直交するもう一方の壁パネル10との突き合わせ端部を掩蔽し、水密性及び意匠性を高めるものである。
【0036】
軟質部20bは、例えばオレフィン系エラストマーからなる柔軟な部材で、コーナー目地20が壁パネル10に押圧されると変形して壁パネル10に圧着され、水密性を高める。
【0037】
支持部20cは、例えばステンレス鋼板を2つに折曲して断面が略Y字状の棒体に形成される。支持部20cには、一定の間隔で系入片20dが複数突設される。この系入片20dが、コーナーバックアップ材30に穿設された、後述するスリット30dに系入されることにより、壁パネル10がコーナー目地20及びコーナーバックアップ材30に挟持される。
【0038】
コーナーバックアップ材30は、図4(a)に示すように、細長い、例えば亜鉛メッキ鋼板等を折曲加工したもので、その短手方向断面は、図4(c)に示すように、中央のコーナー目地掛合部30aと、このコーナー目地掛合部30aの両側端で45度の角度で折曲された壁パネル受け部30b,30bとからなる。
【0039】
コーナー目地掛合部30aには、所定の間隔で、コーナー目地20の系入片20dが系入される複数のスリット30dが穿設されている。一方、壁パネル受け部30bには、図4(b)に示すように、上段及び下段の壁パネルに設けられた掛止孔12aが対向する位置に、この掛止孔12aに嵌挿されるピン30dが突設される。また、コーナー目地掛合部30aの下端近傍には、コーナーバックアップ材30を、アングルピース等を介して床2の壁パネル載置部2aに立設するためのボルト孔30eが穿設される。
【0040】
本実施の形態に係るユニットルーム1は上記のように構成されており、以下その壁パネルの取付順序について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0041】
まず、建築床或いは防水パン等の床2上に、コーナーバックアップ材30を立設する(ステップS1)。この立設は、例えば、床2上にアングルピースを固定し、このアングルピースに穿設されたボルト孔と、コーナーバックアップ材30のボルト孔30eとにボルトを連通螺挿して行う。
【0042】
次に、下段の壁パネル10の掛止孔12aを、立設されたコーナーバックアップ材30のピン30dに外嵌させて、壁パネル10を立設する(ステップS2)。このユニットルームが水密性を要求されるものであれば、図6(b)に示すように、壁パネル載置部2a上に水密材50を敷設してから壁パネル10を載置する。
【0043】
続いて、上段の壁パネル10A下端の凹溝15Aを、下段の壁パネル10上端の凸条14に嵌合させてさねはぎ接合させた後、上段の壁パネル10Aの係止孔12aを、立設されたコーナーバックアップ材30のピン30dに外嵌させて、壁パネル10Aを立設する(ステップS3)。
【0044】
その結果、図6(b)に示すように、室内側底部14aと室内側頂部15aとが当接しても、室外側底部14cと室外側頂部15cとは当接せず、両者の間に間隙Gが形成される。したがって、組立時に室外側底部14cと室外側頂部15cとの間に異物が挟まっても、この異物により、室内側底部14aと室内側頂部15aとの当接が阻害されることはない。
【0045】
なお、下段の壁パネル10の下側端には、上段の壁パネル10Aの下側端と同様に、凹溝15が形成されるが、このように形成することにより、一方の側端に凸条14、他方の側端に凹溝15が必ず形成されるので、壁パネルの種類を、上段用、下段用に分ける必要がなくなり、管理が容易となる。
【0046】
一方、上段の壁パネル10Aの上側端は、化粧鋼板11を1回折り曲げただけの形状に形成されているので、加工が容易であるというメリットが得られる。このように、実際にさねはぎに接合される側端以外は、任意の形状に形成することもできる。
【0047】
続いて、図7に示すように、コーナー目地20の系入片20dを、コーナーバックアップ材30のスリット30cに系入させて、コーナー目地20を取り付ける(ステップS4)。これにより、図8に示すように、壁パネル10,10Aは、コーナーバックアップ材30とコーナー目地20とに挟持され、壁パネル10,10Aの掛止孔12aがコーナーバックアップ材30のピン30dから脱落することなく、堅固に固定される。
【0048】
このとき、コーナー目地20の背面側にある軟質部20bは、壁パネル10,10Aと目地本体20aとの間で押圧されて変形し、壁パネル10,10Aに圧着されて水密性が高められる。また、壁パネル10,10Aが押圧されることにより、上段の壁パネル10Aと下段の壁パネル10との間に段差が生じることもない。
【0049】
この軟質部20bは、斯かる機能を有するものであれば、本実施形態に示した形状に限られない。例えば、本実施形態では、三角断面の棒状体を目地本体20aの左右にそれぞれ2本設けているが、それ程高い水密性が要求されない場合は、図9(a)に示すように、左右それぞれ1本のみとしてもよい。また、図9(b)に示すように、目地本体20aの先端にヒレ状の軟質材20b1として取り付けてもよい。或いは、図9(c)に示すように、発泡パッキン20b2を目地本体20aの壁パネル10,10Aに当接する部分全体に貼着することも可能である。
【0050】
このように、壁パネル10,10Aの取付には、ビス止めやボルト締め等の工程がないので工数が減少し、工期の短縮、延いてはコストの低減が可能となる。
【0051】
こうして立設された壁3上に天井パネル40を載置すれば(ステップS5)、ユニットルームの外枠が完成する。天井パネル40の取付は、例えば図6(b)に示すように、天井パネル40の端部を、接続ピース41の嵌合凹部41に嵌合させ、この接続ピース41のもう一方の嵌合凹部41bを、壁パネル10Aの上端に嵌合させて行う。
【0052】
本発明の要旨は、上述したように、ユニットルームの壁パネル接合構造において、第1の壁パネルの一側端の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの対向する一側端の室内側に位置する頂部とが当接される一方、上記両壁パネルの室外側に位置する頂部同士の間に間隙が設けられたことにある。したがって、さねはぎの形状は、上述した実施形態に係るものに限られない。以下、さねはぎの形状のいくつかの変形例について説明する。
【0053】
図10(a)に示す第1の変形例では、上段の壁パネル10Cの下側端に形成される凹溝15は、室内側頂部15aと室外側頂部15cとが、同じ高さに形成される。
【0054】
一方、下段の壁パネル10Bの上側端に形成された凸条14は、室内側底部14aから頂部14bまでの距離は、室外側底部14cから頂部14bまでの距離より小さくなるように、すなわち、室内側底部14aの方が相対的に高く形成される。
【0055】
その結果、図10(b)に示すように、さねはぎ結合された組立後において、室内側底部14aと室内側頂部15aとが当接しても、室外側底部14cと室外側頂部15cとは当接せず、間隙Gが形成される。したがって、組立時に室外側底部14cと室外側頂部15cとの間に異物が挟まっても、この異物により、室内側底部14aと室内側頂部15aとの当接が阻害されることはない。
【0056】
図11(a)に示す第2の変形例は、基本的には本実施形態に示したものと同様に、上段の壁パネル10Dの下側端の凹溝15は、室内側頂部15aから底部15bまでの距離が、室外側頂部15cから底部15bまでの距離より長くなるように、すなわち、室内側頂部15aの方が相対的に高く形成されるが、室内側頂部15aが、室内に面する表面側から底部15bへと高さが小さくなる、すなわち、勾配が設けられた傾斜面15dとして形成される点で異なる。
【0057】
このように、上段の壁パネル10Dと下段の壁パネル10とは、室内側頂部15a及び室内側底部14aの表面側でのみ当接することになり、本実施形態に示したものと同様の効果が得られる外、室内側頂部15aと室内側底部14aとの間に異物が挟まった場合でも、それが小さなものであれば間隙Gを生じさせないという効果も得られる。
【0058】
図12(a)に示す第3の変形例は、基本的には第1の変形例に示したものと同様に、下段の壁パネル10Eの上側端の凸条14は、室内側底部14aから頂部14bまでの距離が、室外側底部14cから頂部14bまでの距離より小さくなるように、すなわち、室内側底部14aの方が相対的に高く形成されるが、室内側底部14aが、室内に面する表面側から頂部14bへと高さが小さくなる、すなわち、勾配が設けられた傾斜面14dとして形成される点で異なる。この構成においても、第2の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0059】
図13(a)に示す第4の変形例は、これまで説明した例とは異なり、凹溝15と凸条14との間に薄く柔軟な水密材16が挟装される。これにより、室内で撒水された水がこのさねはぎ接合部から外部へと漏れることがより確実に防止できる。したがって、ユニットルームが、ユニットバスルームやユニットシャワールームとして使用される場合に特に有効である。
【0060】
図14(a)に示す第5の変形例は、第4の変形例で示した水密材を使用するケースをより発展させ、水密材を化粧モール17として積極的に見せるように構成したものである。化粧モール17は、エラストマー等の弾性材を用いて、凹溝15及び凸条14間に挟装される部分はこれらに嵌合する形状に成形される一方、視認できる部分は、室内側へ膨出するとともに、壁パネル10,10Aの表面に沿って拡開する。
【0061】
これにより、さねはぎ接合部は完全に見えなくなり、例えば、壁パネルの左右で接合部分の幅が異なるようなことが生じても、この化粧モール17の拡開部分により掩蔽されるので、製品誤差や施工誤差を吸収することができる。のみならず、下段の壁パネルと上段の壁パネルとの間を明確に区別するので、壁面の腰部を、上部と異なった意匠とする場合等に新たな意匠性を与えることができる。
【0062】
また、本発明の要旨によれば、接合構造はさねはぎ接合に限られず、相じゃくり接合(板材を幅方向につなぐとき、接合する2枚の板材の木端部分を互いに板厚の半分ずつを欠き取って接合すること)であってもよい。例えば図16に示すように、壁パネル10Fの一側端に形成された室内側に位置する凸条14の頂部14bと、壁パネル10Gの、この凸条14に対向する一側端に凸条14に係合する形状に形成された室内側に位置する凸条受け部15eとが当接される一方、壁パネル10Fの室外側に形成された凸条受け部15eと壁パネル10Gの室外側に形成された凸条14の頂部14bとの間に間隙Gが設けられる。
【0063】
このように室外側に間隙Gが設けられるので、相じゃくり接合によっても、組立時に室外側の凸条の頂部14bと凸条受け部15eとの間に異物が挟まっても、この異物により、室内側頂部14bと凸条受け部15eとの当接が阻害されることはない。
【0064】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0065】
例えば、本実施形態においては、横積み構造のものを例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、縦張り型の壁パネルにおいても、例えば、足下においては床に剛に結合し、そして、頂部においては天井に剛に接合する等してスパン中間の支柱を省略できる場合には、採用することが可能である。
【0066】
また、ユニットルームも、ユニットバスルーム、ユニットシャワールーム、ユニットトイレルーム等に限られず、第1の壁パネルの一側端の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの対向する一側端の室内側に位置する頂部とが当接される一方、上記両壁パネルの室外側に位置する頂部同士の間に間隙が設けられたものであれば、物置やトランクルーム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る壁パネル及びその接続構造を備えるユニットルームの全体概要を示す図。
【図2】壁パネルの詳細図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)中のA−A矢視図,(d)は同B−B矢視図、(e)は同C−C矢視図。
【図3】コーナー目地の詳細図で、(a)は側面図、(b)は(a)中のF−F矢視図。
【図4】コーナーバックアップ材の詳細図で、(a)は正面図、(b)は(a)中のD−D矢視図,(c)は同E−E矢視図、(d)は同F部拡大図。
【図5】本実施形態に係る壁パネルの組立順序を示すフローチャート。
【図6】図1に示された壁パネルの取付を説明する図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図7】コーナーバックアップ材にコーナー目地を取り付ける様子を説明する図。
【図8】壁パネルの取付状態を示す横断面図。
【図9】軟質材の変形例のいくつかを示す図。
【図10】本実施形態に示された壁パネルの第1の変形例を示す図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図11】本実施形態に示された壁パネルの第2の変形例を示す図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図12】本実施形態に示された壁パネルの第3の変形例を示す図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図13】本実施形態に示された壁パネルの第4の変形例を示す図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図14】本実施形態に示された壁パネルの第5の変形例を示す図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図15】相じゃくり接合される壁パネルの取付を説明する図であり、(a)は組立前の、(b)は組立後の縦断面図。
【図16】従来の縦張り壁パネルの接続構造を示す図。
【図17】従来の横積み構造の問題点を説明する図であり、(a)は凸条及び/又は凹溝の成型精度が悪い場合、(b)は組立中に嵌合部に異物を噛み込んだ場合の例を示す図。
【符号の説明】
【0068】
1 ユニットルーム
2 床
2a 壁パネル載置部
3 壁
4 コーナー支柱
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G 壁パネル
11 表面材
12 芯材
12a 掛止孔
13 裏面材
14 凸条
14a 室内側底部
14b 頂部
14c 室外側底部
14d 傾斜面
14e 凸条受け部
15 凹溝
15a 室内側頂部
15b 底部
15c 室外側頂部
15d 傾斜面
15e 凸条受け部
16,50 水密材
17 化粧モール
20 コーナー目地
20a 目地本体
20b 軟質部
20c 支持部
20d 係入片
30 コーナーバックアップ材
30a コーナー目地掛合部
30b 壁パネル受け部
30c スリット
30d ピン
30e ボルト孔
40 天井パネル
41 接続ピース
41a,41b 嵌合凹部
F 異物
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁パネルの一側端の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの対向する一側端の室内側に位置する頂部とが当接される一方、上記両壁パネルの室外側に位置する頂部同士の間に間隙が設けられたことを特徴とするユニットルームの壁パネル接合構造。
【請求項2】
さねはぎ接合されるユニットルームの壁パネル接合構造において、第1の壁パネルの一側端に形成された凹溝の室内側に位置する頂部と、第2の壁パネルの該凹溝に対向する一側端に上記凹溝に嵌合する形状に形成された凸条の室内側に位置する底部とが当接される一方、上記凹溝の室外側に位置する頂部と上記凸条の室外側に位置する底部との間に間隙が設けられたことを特徴とするユニットルームの壁パネル接合構造。
【請求項3】
前記壁パネル接合構造は、立設された第1の壁パネルの上側端に前記凸条を配置し、該壁パネルの上に立設された第2の壁パネルの下側端に前記凹溝を配置したことを特徴とする請求項2記載のユニットルームの壁パネル接合構造。
【請求項4】
前記凸条は、挟装された水密材を介して前記凹溝に嵌合されることを特徴とする請求項2及び3のいずれかに記載のユニットルームの壁パネル接合構造。
【請求項5】
前記水密材は、一端が前記凹溝の頂部と前記凸条の底部とが当接する部分よりも室内側に膨出拡開する形状に成形され、前記壁パネルの室内側接合部分を掩蔽することを特徴とする請求項4記載のユニットルームの壁パネル接合構造。
【請求項6】
一側端にさねはぎ接合に供される凸条が設けられ、該凸条の一方の底部から上記凸条の頂部までの距離が、上記凸条の他方の底部から上記凸条の頂部までの距離より短く形成されたことを特徴とするユニットルームの壁パネル。
【請求項7】
前記凸条の頂部までの距離が他方より短く形成された底部は、表面側から前記底部へと下降する傾斜面に形成されたことを特徴とする請求項6記載のユニットルームの壁パネル。
【請求項8】
一側端にさねはぎ接合に供される凹溝が設けられ、該凹溝の一方の頂部から上記凹溝の底部までの距離が、上記凹溝の他方の頂部から上記凹溝の底部までの距離より長く形成されたことを特徴とするユニットルームの壁パネル。
【請求項9】
前記凹溝の底部までの距離が他方より長く形成された頂部は、表面側から前記底部へと下降する傾斜面に形成されたことを特徴とする請求項8記載のユニットルームの壁パネル。
【請求項10】
相じゃくり接合されるユニットルームの壁パネル接合構造において、第1の壁パネルの一側端に形成された室内側に位置する凸条の頂部と、第2の壁パネルの該凸条に対向する一側端に上記凸条に係合する形状に形成された室内側に位置する凸条受け部とが当接される一方、上記第1の壁パネルの室外側に形成された凸条受け部と上記第2の壁パネルの室外側に形成された凸条の頂部との間に間隙が設けられたことを特徴とするユニットルームの壁パネル接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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