説明

ユニット化された繊維コンクリート補強物

本発明は、硬化時にセメント質混合物に補足性および補強強度を付与するのに使用される繊維構造体、特に有限の切断長さを有する複数の配向された補強用繊維構成成分を含んでなるユニット化された繊維構造体であって、この繊維成分がその成形時に予め決められた有限な切断長さに切断可能でありセメント質のブレンドあるいは混合物の製造時にユニット化された繊維基材が組み込まれそして機械的な撹拌を受ける時点まで、繊維成分が複数の平行な形に保持可能であるものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化時にセメント質混合物に補足性および補強性の強度を付与するのに使用される繊維構造体、特にセメント質混合物に正確に添加を行うための有用な手段を提供する、有限の切断長さを有する複数の配向された補強用繊維構成成分を含んでなるユニット化された繊維構造体に関する。一つの態様においては、周辺保持要素が、セメント質のブレンドあるいは混合物の製造時にユニット化された繊維基材が組み込まれそして機械的な振盪を受ける時点まで、この配向された補強用繊維構成成分の一時的な保持を提供する。代替の態様においては、結合剤が使用される。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの硬化の前に水性ベースのコンクリート混合物にアスベスト、ガラス、スチール、ならびに合成ポリマー繊維を含む種々のタイプの繊維構成成分を適用するか、および/または組み込むことにより、セメント質混合物の性質を補強、強化、あるいは他の利点をもたらすように変質させる多数の提案がなされた。使用されている、あるいは使用が提案されているポリマー繊維のタイプは、天然および合成の組成物から構成されるものを含む。
【0003】
先行技術において明白であるように、個々の繊維構成成分はこれらの性能変成の属性の形でよく知られている。例えば直径が40〜60ミクロンを超える比較的大きな直径の繊維を水分を含んだコンクリートブレンドなどのセメント質混合物に添加し、機械的撹拌によりこのブレンド中に分散し、引き続いてこのコンクリートを注型、硬化することができる。大きな直径の繊維は、更なる引っ張り強さを付与しそして衝撃損傷とクラック伝播を最小とすることにより、硬化後にこのコンクリートを補強する役割をする。硬化期間におけるコンクリート中の小さいクラックの進行を低減するために、通常直径が30〜40ミクロン未満の、そして比較的大きな表面積を有する小さい直径の繊維が普通コンクリート混合物に添加される。クラック進行の問題は、コンクリートの不均一な硬化の結果として起こることが知られている。
【0004】
補強用セメント質混合物で通常使用される繊維構成成分は、ポリプロピレンステープル繊維などの有限のステープル長の特に熱可塑性合成繊維を含む。熱可塑性ステープル繊維は、溶融ポリマーを複数の小さな開口部を有する金型から押し出して、制御された直径の連続的な熱可塑性フィラメントのトウを製造する、よく知られそして経済的な溶融紡糸法により製造される。このフィラメントを冷却、延伸あるいは引き伸ばして、引っ張り強さを増大させる。通常、サイズまたは仕上げ剤をこのフィラメントに塗布し、引き続いて乾燥し、所望の長さに切断して、個々の繊維の束を提供する。低原材料コスト、展性などの有利な物理的性質およびセメント質混合物でしばしば遭遇する悪環境(すなわち強アルカリ性pH)中でのポリマーの非反応性という化学的性質を含むいくつかの理由によってポリプロピレン繊維の使用が望ましい。
【0005】
この補強用繊維構成成分の機能的な性能が有利である一方で、定量的な測定、物理的な添加およびセメント質混合物の中への補強用繊維構成成分の均質分散に対する手段は、問題なしとはしない。ステープル長の繊維は、慣用されてきたように、繊維成形ラインから製造されるように同一の形で提供され、これは種々の大きさおよび重量の集塊物、交じり合ったステープル繊維のもつれた物または結んだ物およびそれ自体ランダムにほどける傾向のある多数の個々のステープル繊維を含む。変動し易く、予測不能な形のために、在来の補強用繊維構成成分は、これまで建築作業現場におけるなどの最終使用消費に提供されてきたが、セメント質混合物の順次バッチの中への補強用繊維構成成分の添加が正確で再現性があるかについてはたかだか半信半疑というものであった。この補強用繊維構成成分の実際の使用を更に複雑化しているのは、好適なステープル繊維の形成に使用される多数の合成熱可塑性ポリマーが本来的に有する疎水性である。結果として、在来の混合装置を用いて均一な分散物を得ること、および水和セメント質混合物にわたって補強用繊維構成成分をブレンドすることにおいて困難が生じる。
【0006】
記述されているこの問題に取り組む先行の試みは、結合剤の使用に焦点を当ててきた。引用により本明細書に包含される(特許文献1)は、少量の微細(30ミクロン未満)ポリマー繊維をコンクリートに添加することを開示している。製造時このフィラメントは局所湿潤剤により処理される。このフィラメントをステープル長の繊維にチョップした後、湿潤剤は微小束の形でステープル繊維を一緒に保持あるいは結合する。この微小束は取り扱い時比較的安定に保持され、そして繊維をコンクリート混合物に添加する場合には、この湿潤剤は繊維の分散を促進する。同様に本明細書に包含される(特許文献2)は、溶融押し出し工程時にこのステープル繊維それ自身の中に結合剤を組み込むことにより、繊維の微小束の形成に取り組むことを試みている。
【0007】
内部あるいは外部で塗布されるものであれ、結合剤の使用は個々のステープル繊維に本質的な部分的な問題を改善する一方で、このようなやり方はランダムな集塊物の大きさなどの問題を解消せず、そして更には結合剤の使用は更なる問題を招いた。とりわけ、この結合剤の相当する性能は、結合剤を補強用繊維構成成分に塗布することに基づいている。そこで、バッチ内で均等性を得るように結合剤を繊維の大部分に均一に塗布し、そして補強用繊維構成成分をばらばらにして、均一に分配させる能力に悪影響を及ぼすので過剰の結合剤を導入しないようにする。結合剤の使用において遭遇する一つの他の阻止要件は、ステープル繊維の塗布および集塊時に空気が微小束内にしばしばとりこまれるということである。このような微小束を機械的混合にかけると、このとりこまれた空気は泡として放出され、この泡はセメント質混合物が均一に硬化する能力を相応に危くする。
【特許文献1】米国特許第5,399,195号明細書
【特許文献2】米国特許第6,258,159号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当業界では明白であるように、この補強用繊維構成成分が均一で予測可能な使用のための表示(presentation)の属性及び機械的撹拌時に均一分布される能力を示し、そして得られるセメント質マトリックスの性能を弱体化する可能性のある有害な化学的薬剤を導入しないように、補強用繊維構成成分をセメント質混合物の中に導入する手段に対する必要性が未達成のまま存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、硬化時にセメント質混合物に補足性および補強強度を付与するのに使用される繊維構造体、特に成形時に予め決められそして有限の切断長さに切断され、そしてセメント質のブレンドあるいは混合物の製造時にユニット化された繊維基材が組み込まれそして機械的な振盪を受ける時点まで、複数の平行な形で存在可能な複数の配向された補強用繊維構成成分を含んでなるユニット化された繊維構造体に関する。この補強用繊維構成成分は、配向された補強用繊維構成成分の一時的な保持を提供する周辺保持要素と組み合わせることができる。このユニット化された繊維構造体は、コンクリート、モルタル、しっくいなどの有機あるいは無機のセメント質マトリックス中への関連の補強用繊維構成成分の本来的な、かつ改善された分配性と分散性を付与されている。
【0010】
一つの態様においては、本発明のユニット化された繊維の構造体は、有限のステープル長と本質的に平行な配向の2つ以上の補強用繊維構成成分から形成され、そして周辺保持要素を含むことができる。もう一つの態様においては、本発明のユニット化された繊維構造体は、無限の長さと本質的に平行な配向の2つ以上の補強用繊維構成成分から形成され、そして周辺保持要素を含むことができる。この補強用繊維構成成分の組成物は、合成ポリマー、天然ポリマー、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択され、そして必ずしも同一のポリマー組成、デニール、有限のステープル長または官能性である必要はない。この周辺保持要素は、合体された2つ以上の本質的に平行な補強用繊維構成成分の周りの経路を描き(describes)、それにより補強用繊維構成成分の組み合わせと本質的に平行な配向の両方を維持する。一度形成されると、この周辺保持要素は、出荷、測定、およびセメント質混合物の中への添加の目的でユニット化された繊維構造体とその中の補強用繊維構成成分の完全性(integrity)を維持することを助ける。好ましくは、この周辺保持要素は、このユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を囲み;更に好ましくはこのユニット化された繊維構造体の全表面積の50%以下を囲み;そして最も好ましくはこのユニット化された繊維構造体の全表面積の30%以下を囲み、ここで全表面積はこのユニット化された繊維構造体の全体の長さと周辺として定義されるものである。この周辺保持要素を制限することは、ユニット化された繊維構造体内の配向された補強用繊維構成成分の有意で有用な部分を外部環境に露出する役割をする。セメント質混合物中でユニット化された繊維構造体を機械的に撹拌すると、周辺保持要素が崩壊し、補強用繊維構成成分をセメント質混合物の全体の中に均質に放出、分配および分散せしめる。
【0011】
この周辺保持要素は、好適な材料、例えば熱可塑性、熱硬化性および可溶性の樹脂であって、対応する応力および/または溶解力のしきい値を超えると機械的崩壊を受けるものから選択される。限定ではないが、合体された本質的に平行な補強用繊維構成成分を囲む連続あるいは不連続のフィラメント、リボン、またはシートを含む種々の形状が周辺保持要素の適用において使用され得る。この周辺保持要素は、補強用繊維構成成分を複数の外装手法により保持して、外部環境に多かれ少なかれ繊維を曝露する種々の厚さの1つ以上の連続あるいは不連続のフィラメント、リボン、またはシートを含んでなり得る。周辺保持要素の組成と補強用繊維構成成分の1つ以上の組成が必ずしも同一である必要がないということは本発明の範囲内である。
【0012】
補強用繊維構成成分ならびに得られるユニット化された繊維構造体は、材料流動増進性潤滑剤の局所的な塗布により代表されるものなどの性能変成用添加剤により処理可能であることを注目すべきである。更には、ポリビニルアルコールなどの水溶性化学材料を含む一時的な結合剤がこの周辺結合要素と一緒に使用可能である。
【0013】
化学的および/または機械的な手段による補強用繊維構成成分の絡み合いによっても本発明のユニット化された繊維構造体が形成可能である。このような好適な手段は、複数の平行な形を維持するのに充分な耐久性を示すが、適切な機械的な力または溶媒和の力を受けた場合、耐久性の点で識別可能である(discernable)か、あるいは別の形で不足(deficient)である結合剤の塗布を含む。好ましくは、この化学的および/または機械的な絡み合い手段は、このユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を含んでなり;更に好ましくはこのユニット化された繊維構造体の全表面積の50%以下を含んでなり;そして最も好ましくはこのユニット化された繊維構造体の全表面積の30%以下を含んでなり、ここで全表面積はユニット化された繊維構造体の長さと周辺全体として定義されるものである。この化学的および/または機械的な絡み合い手段を制限することは、ユニット化された繊維構造体内の配向された補強用繊維構成成分の有意で有用な部分を外部環境に露出する役割をする。
【0014】
このユニット化された繊維構造体の最終形成時には、この構造体は自動包装システムにより容易に包装可能であるか、あるいはバルクでコンテナーに積載可能である。後者の包装によって、混合ステーションにおいて例えば自動化重量分配システムにより所定量のユニット化された繊維構造体を正確かつ再現性よく予想し(augured)すくい集め、あるいはセメント質混合物の中にブレンドすることが可能となる。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明、添付の図面および添付の特許請求の範囲から容易に明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は種々の形の態様をとるが、本発明の開示は本発明の例示として考慮されるべきであり、そして本発明を例示した特定の態様に限定するような意図ではないという理解の下に、本明細書ではこれ以降現時点で好ましい態様を述べる。
【0017】
このような繊維を組み込んだ対応する硬化セメント質構造体の構造的欠陥と崩壊に対する抵抗性を増大させるために、有限のステープル長の繊維がセメント質混合物における補強手段として日常的に使用される。セメント質混合物の製造において経験する有限のステープル長の繊維の実際の取り扱いと均一な組み込みにおいて遭遇する困難により、本発明は、正確で再現性の良い方法でこのような製造を容易にするための手段を指向する。
【0018】
繊維構成成分が本質的に平行な配向を有するように、複数の配向された補強用繊維構成成分を含んでなるユニット化された繊維構造体が形成される。このユニット化された構造体は、セメント質のブレンドあるいは混合物の製造時にユニット化された繊維基材が組み込まれそして機械的な撹拌を受ける時点まで、補強用繊維構成成分の一時的な保持が付与されるが、これは周辺保持要素の形をとることができる。このユニット化された繊維構造体は、コンクリート、モルタル、しっくいなどの有機あるいは無機のセメント質マトリックス中への関連の補強用繊維構成成分の本来的なかつ改善された分配性と分散性を付与されている。
【0019】
一つの態様においては、本発明のユニット化された繊維構造体は、有限のステープル長と本質的に平行な配向の2つ以上の補強用繊維構成成分から形成され、ここで、このようなステープル繊維の組成物は、限定ではないが、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、およびこれらの組み合わせ物を含む合成ポリマー、ならびに限定ではないが、レーヨン、木綿、パルプ、亜麻、および麻およびこれらの組み合わせ物を含む天然繊維からなる群から選択されるものである。好ましくは、この補強用繊維の組成物は、限定ではないが、熱可塑性および熱硬化性ポリマーを含む合成ポリマーから選択される。本発明の特に好ましい態様は、ポリオレフィン熱可塑性樹脂を含んでなる補強用ステープル繊維を指向する。もう一つの態様においては、本発明のユニット化された繊維構造体は、無限の長さと本質的に平行な配向の2つ以上の補強用繊維構成成分から形成され、ここでこのような繊維の組成物は、合成ポリマー、天然ポリマー、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択されるものである。このユニット化された繊維構造体に組み込まれる個々の補強用繊維構成成分は、必ずしも同一のポリマー組成、デニール、有限のステープル長、または官能性である必要はないということは本発明の範囲内である。更には、補強用繊維構成成分を捩じる手段あるいは他の手段により、補強用繊維構成成分の一部または補強用繊維構成成分の全部が張力下に置かれ得るということは本発明の範囲内である。補強用繊維構成成分の一部または全部に張力をかけることによって、繊維構成成分は機械的撹拌時にポンと割れて(burst or pop)、セメント質混合物内の繊維分配が増進される。
【0020】
この態様においては、このユニット化された繊維構造体は周辺保持要素を更に含む。この周辺保持要素は、合体された2つ以上の本質的に平行な補強用繊維構成成分の周りの経路を描き、それによって補強用繊維構成成分の合体および本質的に平行な配向の両方を維持する。一度形成されると、この周辺保持要素は、出荷、測定、およびセメント質混合物の中への添加の目的でユニット化された繊維構造体とその中の補強用繊維構成成分の完全性を維持することを助ける。セメント質混合物中でユニット化された繊維構造体を機械的に撹拌し、場合によっては適切な溶剤に曝露すると、この周辺保持要素は崩壊し、補強用繊維構成成分をセメント質混合物の全体の中に均質に放出、分配および分散することが可能となる。
【0021】
この周辺保持要素は、熱可塑性、熱硬化性および可溶性樹脂などの好適な材料であって、対応する応力および/または溶解力のしきい値を超えると機械的崩壊を受けるものから選択される。限定ではないが、合体された、本質的に平行な補強用繊維構成成分を囲む連続あるいは不連続のフィラメント、リボン、またはシートを含む、種々の形状物が周辺保持要素の適用において使用され得る。この周辺保持要素は、複数の外装手法により補強用繊維構成成分を保持して、外部環境に多かれ少なかれ繊維を曝露する種々の厚さの1つ以上の連続あるいは不連続のフィラメント、リボン、またはシートを含んでなり得る。周辺保持要素の組成と補強用繊維構成成分の1つ以上の組成が必ずしも同一である必要がないということは本発明の範囲内である。
【0022】
一つの態様においては、この補強用繊維構成成分は二重ラセンの外装手法による2つの薄い周辺保持要素により保持され、この場合には2つの周辺保持要素が繊維構成成分の周辺で前後に交差する(criss−cross back and forth)。周辺保持要素の組成と補強用繊維構成成分の1つ以上の組成が必ずしも同一である必要がないということは本発明の範囲内である。好ましくは、この周辺保持要素は、ユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を囲み;更に好ましくはユニット化された繊維構造体の全表面積の50%以下を囲み;そして最も好ましくはユニット化された繊維構造体の全表面積の30%以下を囲む。この周辺保持要素を制限することは、ユニット化された繊維構造体内の配向された補強用繊維構成成分を外部環境に露出する役割をする。加えて、この繊維構成成分を曝露することによって、機械的あるいは溶媒による崩壊にかけた場合のユニット化された繊維構造体の有効な崩壊が可能となる。
【0023】
本発明によるユニット化された繊維構造体の形成には多数の好適な方法が存在する。限定ではないが、引用により本明細書に包含されている米国特許第4,228,641号により好ましい方法が一部教示され、この場合には合成モノフィラメントの芯束からなるトワイン(twine)がこのモノフィラメントの周りにらせん状に巻かれた薄帯形の合成材料により囲まれている。ラセン巻きの各々の繰り返しの点においてあるいはそれらの間において、連続的なトワイン構造体を’641の方法の実施に続いてそして繰り返し切断することによって、本発明を考慮した実施に好適な有限の長さのユニット化された繊維構造体が形成されることが本発明者らにより見出された。
【0024】
このユニット化された繊維構造体の寸法は、個々の補強用繊維構成成分の量と相対デニールを基準とした全周辺および補強用繊維構成成分の累積組み合わせの最大の有限のステープル長を基準とした長さの形で定義される。本発明により形成されるユニット化された繊維構造体の好適な全周辺と長さは、合理的には、それぞれ3mm〜150mmおよび8mm〜100mmの範囲内にあり得る。標準的な実施のための本発明の好ましい態様においては、ユニット化された繊維構造体は3mmと30mmの間の全直径を示し、そして12mmと50mmの間の長さが使用され得る。
【0025】
本発明によれば、この補強用繊維構成成分は無限の長さのものでもあり得、ここでは補強用繊維構成成分は本質的に平行な配向で合体され、この場合1つ以上の周辺保持要素は連続的な補強用繊維構成成分の全周辺を囲むか、あるいは1つ以上の化学的および/または機械的な絡み合い手段が連続的な補強用繊維構成成分の全周辺を囲むものである。このような成形によって、連続的なユニット化された補強用繊維構成成分が連続ロールでの形で入手可能となるか、あるいは連続的な重ね成形物(lap formation)で包装可能となる。更には、ロールの形から所望の部分が選択され、減じられ(detracted)てもよいように、連続的なユニット化された補強用繊維構成成分は、連続成形品に沿った一連のセグメント化された孔あき体(perforations)または低強度化された点(weakened points)を含んでなる。
【0026】
この補強用繊維構成成分ならびに得られるユニット化された繊維構造体は、材料流動増進性潤滑剤の局所的な塗布により代表されるものなどの性能変成用添加剤及び水溶性化学物質などの一時的な結合剤により処理可能であることを注目すべきである。
【0027】
本発明を具体化する補強用繊維構成成分は、化学的および/または機械的な手段によってもユニット化された繊維構造体を形成することができる。このような好適な手段は、複数の平行な形を維持するのに充分な耐久性を示すが、適切な外的な力を受けた場合、耐久性において識別可能であるか、あるいはさもなければ不足である結合剤の塗布を含む。好ましくは、この化学的および/または機械的な絡み合い手段は、ユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を含んでなり;更に好ましくはユニット化された繊維構造体の全表面積の50%以下を含んでなり;そして最も好ましくはユニット化された繊維構造体の全表面積の30%以下を含んでなる。この化学的および/または機械的な絡み合い手段を制限することは、ユニット化された繊維構造体内の配向された補強用繊維構成成分の有意で有用な部分を外部環境に露出する役割をする。加えて、繊維構成成分を曝露することによって、機械的あるいは溶媒により崩壊させた場合ユニット化された繊維構造体の有効な崩壊が可能となる。
【0028】
一度形成されると、絡み合い手段またはポリビニルアルコールまたは他の水溶性結合剤などの薬剤は、出荷、測定、およびセメント質混合物の中への添加の目的でユニット化された繊維構造体とその中の補強用繊維構成成分の完全性を維持することを助ける。セメント質混合物中でユニット化された繊維構造体を機械的撹拌し、場合によっては適切な溶剤に曝露すると、絡み合い構造は崩壊し、この補強用繊維構成成分をセメント質混合物の全体の中に均質に放出、分配および分散することが可能となる。
【0029】
このユニット化された繊維構造体の最終形成時には、この構造体は自動包装システムにより容易に包装されるか、あるいはバルクでコンテナーに積載可能である。後者の包装によって、混合ステーションにおいて例えば自動化重量分配システムにより所定量のユニット化された繊維構造体を正確かつ再現性よく予想し、すくい集め、あるいはセメント質混合物の中にブレンドすることが可能となる。
【0030】
前出から、本発明の真の精神および新規な概念の範囲を逸脱せずに、多数の改変および変形が実施可能であることが観察されるであろう。本明細書で例示される具体的な態様に関する限定が意図されることはないということ、あるいは推測されるべきでないということを理解すべきである。この開示は、添付の特許請求の範囲により特許請求の範囲内に入るすべてのこのような改変物を網羅するように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明により形成される代表的なユニット化された繊維構造体の写真であり、近似的な寸法は全周辺25mmおよび長さ18mmである。
【図2】図2は図1に示す同一のユニット化された繊維構造体の顕微鏡写真であり、複数の補強用繊維構成成分と単一の周辺保持要素が特に示される。
【図3】図3は本発明により形成される代表的なユニット化された繊維構造体の写真である。
【図4】図4は図3に示す同一のユニット化された繊維構造体の顕微鏡写真であり、複数の補強用繊維構成成分と単一の周辺保持要素が特に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質混合物の性質を改善する方法であって、
a.セメント質混合物を準備し;
b.ユニット化された繊維構造体を準備し、前記ユニット化された繊維構造体の各々が
i. 2つ以上の補強用繊維構成成分と;
ii. 1つ以上の周辺保持要素からなり;
iii.ここで、前記補強用繊維構成成分が本質的に平行な配向で合体されているものであり、そして前記周辺保持要素が前記合体されそして本質的に平行な補強用繊維構成成分により描かれる全周辺を囲むものであり;
c.前記セメント質混合物の中に所定量のユニット化された繊維構造体を添加して、セメント質混合物とユニット化された繊維構造体のブレンドを形成し;そして
d.前記セメント質混合物/ユニット化された繊維構造体のブレンドを機械的に撹拌して、前記周辺保持要素を崩壊させ、そして前記補強用繊維構成成分を前記セメント質混合物の中に分散させる
段階を含んでなる前記方法。
【請求項2】
前記繊維構造体が天然繊維である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記天然繊維がレーヨン、木綿、パルプ、亜麻、麻、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維構造体が合成繊維である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記合成繊維がポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ユニット化された繊維構造体が約3mmと150mmの間の全円周を示す請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ユニット化された繊維構造体が約3mmと30mmの間の全円周を示す請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ユニット化された繊維構造体が約8mmと100mmの間の長さを示す請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ユニット化された繊維構造体が約12mmと50mmの間の長さを示す請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記補強用繊維構成成分が有限のステープル長を示す請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記補強用繊維構成成分が無限の長さ(infinite length)を示す請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記補強用繊維構成成分の一部または全部が張力下に置かれる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記周辺保持要素が前記ユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を囲う請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ユニット化された繊維構造体が孔あきセグメントを含んでなる請求項11に記載の方法。
【請求項15】
セメント質混合物の性質を改善する方法であって、
a.セメント質混合物を準備し;
b.ユニット化された繊維構造体を準備し、前記ユニット化された繊維構造体の各々が
i. 2つ以上の補強用繊維構成成分と;
ii. 絡み合い手段を含んでなり;
iii.ここで、前記補強用繊維構成成分が本質的に平行な配向で合体されているものであり、そして前記絡み合い手段が前記合体されそして本質的に平行な補強用繊維構成成分により描かれる全周辺の周りに適用されているものであり;
c.前記セメント質混合物の中に所定量のユニット化された繊維構造体を添加して、セメント質混合物とユニット化された繊維構造体のブレンドを形成し;そして
d.前記セメント質混合物/ユニット化された繊維構造体のブレンドを機械的に撹拌して、前記絡み合い手段を崩壊させ、そして前記補強用繊維構成成分を前記セメント質混合物の中に分散させる
段階を含んでなる前記方法。
【請求項16】
前記繊維構造体が天然繊維である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記天然繊維がレーヨン、木綿、パルプ、亜麻、麻、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維構造体が合成繊維である請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記合成繊維がポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ユニット化された繊維構造体が約3mmと150mmの間の全周辺を示す請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ユニット化された繊維構造体が約3mmと30mmの間の全周辺を示す請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ユニット化された繊維構造体が約8mmと100mmの間の長さを示す請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ユニット化された繊維構造体が約12mmと50mmの間の長さを示す請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記絡み合い手段が結合剤である請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記絡み合い手段が前記ユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を含んでなる請求項15に記載の方法。
【請求項26】
記補強用繊維構成成分の一部または全部が張力下に置かれる請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記補強用繊維構成成分が有限のステープル長を示す請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記補強用繊維構成成分が無限の長さを示す請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記ユニット化された繊維構造体の各々が2つ以上の補強用繊維構成成分と1つ以上の周辺保持要素からなり、ここで前記補強用繊維構成成分は本質的に平行な配向で合体されているものであり、そして前記周辺保持要素は前記合体され本質的に平行な補強用繊維構成成分により描かれる全周辺を囲むものである、ユニット化された繊維構造体を含んでなるセメント質補強物。
【請求項30】
前記周辺保持要素が前記ユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を囲む請求項29に記載のセメント質補強物。
【請求項31】
前記ユニット化された繊維構造体の各々が2つ以上の補強用繊維構成成分と絡み合い手段からなり、ここで前記補強用繊維構成成分は本質的に平行な配向で合体されているものであり、そして前記絡み合い手段は前記合体され本質的に平行な補強用繊維構成成分により描かれる全周辺に適用されるものである、ユニット化された繊維構造体を含んでなるセメント質補強物。
【請求項32】
前記絡み合い手段が前記ユニット化された繊維構造体の全表面積の80%以下を含んでなる請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−517902(P2006−517902A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502962(P2006−502962)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/001850
【国際公開番号】WO2004/067467
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(503126326)ポリマー・グループ・インコーポレーテツド (5)
【Fターム(参考)】