説明

ユニット建物の再築方法

【課題】ユニット建物の再築に際して基礎部分についても考慮したユニット建物の再築方法を提供すること。
【解決手段】既築のユニット建物6の建物ユニット(7〜10,屋根ユニット11,12)を基礎(布基礎1)からユニット単位で分離して、前記分離した建物ユニット(7〜10,屋根ユニット11,12)の補修・部品交換した後、元の場所に戻してユニット建物6を建築するに際し、建物ユニット(7〜10,屋根ユニット11,12)を基礎(布基礎1)から分離してから元の場所に戻すまでの間に、前記基礎(布基礎1)側に改善を施すようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユニット建物の再築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既築のユニット建物の建物ユニットを基礎からユニット単位で分離し、工場等へ輸送して部品交換したり再資源化する方法、およびその後の建物ユニットを用いて再築(移築を含む)する方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平6−212813号公報
【特許文献2】特開2002−88918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの方法によれば、建物ユニット(建物本体)部分の改修や高機能化が図れるが、基礎部分については考慮されていなかった。
【0004】
そこで、この発明は、ユニット建物の再築に際して基礎部分についても考慮したユニット建物の再築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、請求項1の発明は、既築のユニット建物の建物ユニットを基礎からユニット単位で分離して、前記分離した建物ユニットの補修・部品交換した後、元の場所に戻してユニット建物を建築するに際し、建物ユニットを基礎から分離してから元の場所に戻すまでの間に、前記基礎側に改善を施すようにしたユニット建物の再築方法としたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のユニット建物の再築方法において、前記改善は前記基礎側の改修・補強・全交換・基礎断熱であることを特徴とする。
【0007】
更に、請求項3の発明は、請求項1に記載のユニット建物の再築方法において、前記改善は換気・空調関連機器の基礎内設置であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載のユニット建物の再築方法において、前記改善は地下室構築であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ユニット建物の再築に際して基礎側の部分についても種々の改善を考慮できる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、基礎側の改修・補強・断熱化等を行うことにより、劣化した基礎側の性能を復元したり更に補強したり、高度利用対応することが可能となる。例えば、基礎側を補強することによって、建物の耐震、耐風性能を向上したり、重量のある設備(太陽電池等)や外装材(タイル外壁等)の新規採用に対応することができる。
【0011】
更に、請求項3の発明によれば、換気空調関連機器を基礎内に設置することで、ユニット建物の室内に機器を置かずに(省スペースで)、換気空調性能に優れた建物を構築することができる。
【0012】
また、請求項4の発明によれば、地下室を構築することにより、有効利用空間を拡大することができる。
【0013】
以上のように建物全体として、安全性・居住性・耐久性の優れた建物を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1Aにおいて、1は建物敷地に施工された布基礎である。この布基礎1は、図1Aに示したように4つの基礎部2a〜2dから方形枠状に形成された外基礎部2と、基礎部2b,2dの長手方向中央部間に連設された中基礎部3を有する。4,5は布基礎1の内側の地面であって単に表面をならした状態のものである。尚、基礎部2a,3間には床下空間Aが形成され、基礎部2c,3間には床下空間Bが形成される。
【0016】
このような布基礎1の上には、図1に示したようにユニット建物6が配設されている。このユニット建物6は、左右に並設した状態で布基礎1の左右の部分上に載置された1階(下階)の建物ユニット7,8と、建物ユニット7,8上に積層された2階(上階)の建物ユニット9,10と、建物ユニット9,10上に取り付けられた屋根ユニット11,12(建物ユニット)を有する。
【0017】
このようなユニット建物6に例えば換気・空調関連機器等の設備を付加する場合、例えば換気・空調関連機器等の設備として蓄熱ユニットを布基礎1内に設置することも考えられる。この蓄熱ユニットはかなり重量が略大きく100kg程度のものもあり、このような大きな重量の蓄熱ユニットを布基礎1内の地面4上に設置した場合、地面4が蓄熱ユニットの重量で沈んでしまう虞がある。このような地面4上に蓄熱ユニットを設置する場合には、地面4の改良が必要となる。
【0018】
この場合には、図1(a)に示したように、ユニット建物6のユニット7〜12をクレーン13を用いて分解する。この分解したユニット7〜12は、図1(b)に示した大型トラックTRにより図1(c)の工場14に搬送する。そして、工場14内において搬送したユニット7〜12の補修や部品の交換をする。この後、ユニット7〜12は、元の布基礎1上に再築する。
【0019】
この再築の前に、布基礎1の状態に応じてその改修・補強・全交換を行うと共に、布基礎1の内側面の基礎断熱や地面4の改善を以下のような手順で施す。この改善は、ユニット7〜12の補修や部品の交換と並行して行う。
【0020】
図2(a)は地面4は単に表面をならした状態を示したものであり、この状態では重量の大きい蓄熱ユニットを地面4上に設置するのは不可能である。尚、図2(a)において、基礎部2aは、フーチング2a1と、フーチング2a1上に連設された縦壁2a2を有する。同様に基礎部3は、フーチング3a1と、フーチング3a1上に連設された縦壁3a2を有する。このフーチング2a1は傾斜上面2a3及び側面2a4を有し、フーチング3a1は傾斜上面3a3及び側面3a4を有する。
【0021】
次に、地面4を改善するために、図2(b)の如く地面4を少し掘り下げて地面4上の全体に砕石15を敷き詰めた後、敷き詰めた砕石15を略平らになるように突き固める。この際、砕石15はフーチング2a1,3a1の側面2a4,3a4間に位置するようにする。
【0022】
この後、砕石15の上方に格子状補強部材16を配置する。この格子状補強部材16は鉄筋17,18を砕石15上に格子状に配筋することにより形成したものである。この鉄筋17,18は、針金等で或いは溶接等により互いに固定する。これは後述するコンクリートを流し込む際に鉄筋17,18同士がずれないようにするためである。
【0023】
また、鉄筋17は両端部が傾斜上面2a3,3a3上にそれぞれ係るように配置して、格子状補強部材16が砕石15から浮いた状態とすることにより、格子状補強部材16と砕石15との間に所定間隔が形成されるようにする。
【0024】
次に、図2(c)に示したようにホース19を介してコンクリート20を砕石15上に流し込み、格子状補強部材16をコンクリート20内に埋没させると共に、流し込んだコンクリート20の表面を図2(d)に示したように水平にならす。
【0025】
そして、図2(d)の如く、コンクリート20の上面全体を板状床21で覆う。この板状床21は、方形状の多数のPC板(プレキャストコンクリート板)21aを敷き詰め、PC板21a,21a間の目地にモルタル等の目地材22を充填して、目地を埋めることにより形成したものである。尚、PC板21aは、予め工場等で成形により形成したものである。
【0026】
しかも、図2(e)に示したように、多数のPC板21aの端部のものと基礎部2a,3の縦壁2a2,3a2との間には発泡ポリエチレン製の充填部材23を挿入して、充填部材23の部分にコーキング材23aでコーキング処理を施す。尚、図示は省略したが、このような充填部材の挿入やコーキング処理は、図1Aの基礎部2b,2dとこれに隣接するPC板(図示せず)との間でも行う。
【0027】
また、図2(f)の如く、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等からなる板状の発泡体24を基礎部2a,3上に設置する。同様に図1Aの基礎部2b,2c,2d上にもEPDMからなる発泡体(図示せず)を設置する。この際、発泡体24は基礎部2a,3の長手方向全体に沿うように配設し、図示しない発泡体も基礎部2b,2c,2dの長手方向全体に沿うように配設して、基礎部2a,3上の発泡体24と基礎部2b,2d上の発泡体(図示せず)との間は隙間なく接合する。
【0028】
更に、図2(f)の如く、基礎部2aの縦壁2a2の内側面及び基礎部3の縦壁3a2の内側面に沿わせて断熱材25を設置すると共に、断熱材25に沿ってPC板21a上に断熱材26を設置する。この断熱材25,26には、例えばポリスチレン等を押し出し成形することにより形成したものである。尚、図示は省略したが、図1Aの基礎部2b,2dの床下空間Aに臨む部分及びこれに沿うPC板(図示せず)にも同様な断熱材(図示せず)を設置する。このようにして床下空間Aの周縁部を隙間なく断熱する。
【0029】
また、板状床21上に蓄熱ユニット27を設置し、床下空間A内に蓄熱ユニット27への配管(図示せず)や配線(図示せず)を行う。このように予め工場等で製造した板状床21を、流し込んで水平にならした直後のコンクリート20上に設置して、この設置直後の板状床21上に蓄熱ユニット27を設置することで、コンクリート20の養生期間を省略できる。
【0030】
この後、図3(c)に示したように工場14で補修や部品の交換がなされたユニット7〜12を図3(b)に示した大型トラックTRにより図3(a)の建物敷地まで搬送して、この搬送したユニット7〜12を建物敷地の布基礎1上に図1とは逆の手順で設置することにより、布基礎1上にユニット建物6を再築する。この再築に際して又は再築後に、ユニット建物6内への必要な配管及び配線を行うことにより、暖房設備が完成する。
(変形例1)
また、地下室を作る場合には図2の工程は必要なく、図1のユニット建物6の分解と、工場14での補修や部品の交換等を実行し、このユニット建物6を再築する前に布基礎1の状態に応じてその改修・補強・全交換を行うと共に、地面4,5の下の地中に地下室(図示せず)を形成し、地下室(図示せず)への階段等を設置する。この後、上述したようにして建物ユニット6を布基礎1上に再築する。
(変形例2)
また、ユニット建物の形状・構造等を変更する場合であって、布基礎1に対する構造計算上の負荷が増大する場合には、ユニット建物の基礎構造の体力を強化する必要が生じることがある。例えば、フラット屋根から勾配屋根、又は2階建てから3階建て、若しくは屋上利用のための構造物追加等その他種々の場合が考えられる。
【0031】
本変形例では、先ず、図1のユニット建物6の屋根ユニット11,12を図4(a)に示したようにフラット屋根28に代えた場合に布基礎1係る荷重(負荷)について説明する。
【0032】
この場合に、建物ユニット8,10及びフラット屋根28の右半分の荷重の合計を右側荷重とすると、この右側荷重から布基礎1の基礎部2a,3に係る分散荷重は図4(b)に示したように右側荷重の半分が基礎部2a,3に係ることになる。
【0033】
同様な考え方から、図4(c)に示したように基礎部2a,3間に中基礎部29を追加した場合、右側荷重から基礎部2a,3にかかる荷重は更に1/4になる。この場合、中基礎部29に対応する部分には必要に応じて中柱30を追加すると良い。尚、図1と同じ部材,同じ構成要素l,又は類似する部分には図1に用いた符号を附して、その詳細な説明は省略する。
【0034】
ところで、中基礎29を追加する場合には、ユニット建物6を解体する前に、図5(a)に示したように、基礎部2a,3間の側面2a4,3a4間に位置させて地面4に割石31を設けて突き固め、この割石31上にフーチングに相当するコンクリート製のベース32を設け、このベース32を形成する際に複数のアンカーボルト33の下部をベース32に埋設固定しておく。
【0035】
この後、図1に示したような手順でユニット建物6を建物ユニット7〜10,フラット屋根28等に分解して工場14に搬送し、ユニット建物6の建物ユニット7〜10等の補修や部品の交換をする。
【0036】
一方、この補修や部品の交換と並行して、複数のアンカーボルト33を利用してベース32上に中基礎本体34のベース板34aを固定する。この中基礎本体34としては、プレキャストコンクリート又は鋼材等を用いることができる。この中基礎本体34は、高さ調整できる構造であるのが望ましい。この高さ調整できる構造がない場合には、ベース板34aとベース32との間にスペーサ(図示せず)を介装して、中基礎本体34の高さ調整を行うようにする。このようにして、ベース32及び中基礎本体34を有する中基礎29を図5(b),図5(c),図6に示したように基礎部2a,3間に形成する。このような中基礎29は、図6に示したように基礎部2c,3間にも設ける。
【0037】
この後、建物ユニット7〜10等を布基礎1及び中基礎本体34上に再築し、建物ユニット10上に建物ユニット35を積層すると共に、建物ユニット9,35上に傾斜屋根ユニット36,37を取り付けて、傾斜屋根ユニット36,37からなる傾斜屋根38を形成して、ユニット建物6の再築が完了する。
【0038】
このようにユニット建物6を解体する前にコンクリート製のベース32を打説した後、ユニット建物6を解体すると共にその補修や部品の交換をしている間にベース32の固化と養生を行う一方、この補修や部品の交換をしている間にプレキャストコンクリート又は鋼材等からなる中基礎本体34をベース32に取り付けるようにしているので、ユニット建物6の解体から再築までの期間を短縮できる。
【0039】
尚、傾斜屋根38には太陽電池(図示せず)を装備することもできる。この場合にもユニット建物6全体の重量が増大するが、中基礎29,29を設けることで、布基礎1に係る重量を分散できるので、基礎はユニット建物6全体の重量が増大しても充分に支持可能となる。
【0040】
以上説明したように、この発明の実施の形態のユニット建物の再築方法においては、既築のユニット建物6の建物ユニット(7〜10,屋根ユニット11,12)を基礎(布基礎1)からユニット単位で分離して、前記分離した建物ユニット(7〜10,屋根ユニット11,12)の補修・部品交換した後、元の場所に戻してユニット建物6を建築するに際し、建物ユニット(7〜10,屋根ユニット11,12)を基礎(布基礎1)から分離してから元の場所に戻すまでの間に、前記基礎(布基礎1)側に改善を施すようにしている。
【0041】
この方法によれば、ユニット建物6の再築に際して基礎(布基礎1)側の部分(布基礎1、又は、布基礎1及び地面4)についても種々の改善を考慮できる。
【0042】
また、この発明の実施の形態のユニット建物の再築方法において、前記改善は前記基礎側(布基礎1及び地面4)の改修・補強・全交換・基礎断熱としている。
【0043】
この方法によれば、基礎側(布基礎1及び地面4)の改修・補強・断熱化等を行うことにより、劣化した基礎側(布基礎1及び地面4)の性能を復元したり更に補強したり、高度利用対応することが可能となる。例えば、基礎側(布基礎1及び地面4)を補強することによって、建物の耐震、耐風性能を向上したり、重量のある設備(太陽電池等)や外装材(タイル外壁等)の新規採用に対応することができる。
【0044】
更に、この発明の実施の形態のユニット建物の再築方法において、前記改善は換気・空調関連機器(蓄熱ユニット27)の基礎内設置としている。
【0045】
この方法によれば、換気・空調関連機器(蓄熱ユニット27)を基礎内に設置することで、ユニット建物6の室内に機器を置かずに(省スペースで)、換気空調性能に優れた建物を構築することができる。
【0046】
また、この発明の実施の形態のユニット建物の再築方法において、前記改善は地下室構築としている。この方法によれば、地下室を構築することにより、有効利用空間を拡大することができる。
【0047】
以上のように建物全体として、安全性・居住性・耐久性の優れた建物を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明に係るユニット建物の再築方法の概略説明図である。
【図1A】図1のユニット建物の基礎の概略斜視図である。
【図2】図1の基礎及びその内側の地面の改善方法の説明図である。
【図3】図2の基礎及びその内側の地面の改善後のユニット建物の再築の概略説明図である。
【図4】(a)はフラット屋根を有するユニット建物の概略説明図、(b),(c)は(a)の基礎の支持荷重の説明図である。
【図5】図4(a)の基礎の補強の説明図である。
【図6】図5の基礎上に再築されたユニット建物の概略説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・布基礎(基礎)
6・・・ユニット建物
7〜10・・・建物ユニット
11,12・・・屋根ユニット(建物ユニット)
27・・・蓄熱ユニット(換気・空調関連機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既築のユニット建物の建物ユニットを基礎からユニット単位で分離して、前記分離した建物ユニットの補修・部品交換した後、元の場所に戻してユニット建物を建築するに際し、建物ユニットを基礎から分離してから元の場所に戻すまでの間に、前記基礎側に改善を施すことを特徴とするユニット建物の再築方法。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット建物の再築方法において、前記改善は前記基礎側の改修・補強・全交換・基礎断熱であることを特徴とするユニット建物の再築方法。
【請求項3】
請求項1に記載のユニット建物の再築方法において、前記改善は換気・空調関連機器の基礎内設置であることを特徴とするユニット建物の再築方法。
【請求項4】
請求項1に記載のユニット建物の再築方法において、前記改善は地下室構築であることを特徴とするユニット建物の再築方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−81931(P2008−81931A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259995(P2006−259995)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】