説明

ユニバーサルジョイント及び一軸偏心ねじポンプ

【課題】容易に分解可能であり、応力の局所集中に伴う異常摩耗による経年劣化等の問題を大幅に低減しうるユニバーサルジョイント、及び当該ユニバーサルジョイントを備えた一軸偏心ねじポンプを提供する。
【解決手段】ユニバーサルジョイント80は、第一接続部82と第二接続部84とをピンA,Bによって枢支し、連結したものである。ピンAの略中央部には、ピンBを挿通可能な軸挿通孔98が設けられている。ピンAを第一ピンA挿通孔90a、90b及び第二ピンA挿通孔94に対して挿通すると共に、ピンBを第一ピンB挿通部92a、92b、第二ピンB挿通孔96、及びピンAに形成されている軸挿通孔98に対して挿通することにより連結構造が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手及び一軸偏心ねじポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているようなユニバーサルジョイントが提供されている。特許文献1のユニバーサルジョイントは、前部本体に形成された左右二股と後部本体に形成された上下二股との間に介在させた十字コマに対して3本のピンを挿通する等して形成されたものである。具体的には、前部本体及び十字コマを左右方向に貫通するように左右方向ピンを挿通するとともに、後部本体の上下に形成された前端二股のそれぞれに上下方向ピンを挿通し、これらの上下方向ピンを十字コマに螺合させることにより形成されたものである。
【0003】
また従来、図8に示すようなユニバーサルジョイント150が一軸偏心ねじポンプに用いられている。このユニバーサルジョイントは、第一シャフトのシャフト端に形成された第一接続部152と、第二シャフトのシャフト端に形成された第二接続部154とを有し、両者に亘って連結ピン156を挿通することにより回転力を伝達可能に連結したものである。第二接続部152には、前述した連結ピン156の挿通用として貫通孔158が設けられている。貫通孔158は、テーパー状であり中央から両外側に向かうに連れて開口径が拡大するような形状とされている。連結ピン156は、貫通孔146の内部において揺動することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−344587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示されているユニバーサルジョイントは、上下方向ピンを十字コマに螺合させたものであるため、容易に分解や洗浄を行うことができない。そのため、このユニバーサルジョイントは、メンテナンスに相当の手間を要し、日常的に分解、洗浄等を行わねばならない食品を取り扱う機器類には不向きであるという問題がある。
【0006】
また、図8に示すユニバーサルジョイント150は、一軸偏心ねじポンプのようにシャフトが偏心回転する状態で使用すると、図9に示すような挙動により局部的に大きな応力が作用し、その結果として構成部品であるピンや、ピンが挿通されている挿通孔が異常摩耗する可能性がある。具体的には、一軸偏心ねじポンプに使用されるユニバーサルジョイントには、トルクによるラジアル方向への荷重と、吐出圧によるスラスト方向への荷重が作用し、かつ偏心軸であるという制約も加わる。図9(a),(b)に示すように、ラジアル方向への荷重(図9(a)中に矢印で示す)が作用すると、ピンと挿通孔とが線接触する。これにより、図9(a)において太線で示した部分や図9(b)において黒丸で示した部分において大きな面圧が作用する。また、スラスト方向への荷重が作用すると、図9(c)に示すようにテーパー状の挿通孔の頂点部分(図中において黒点で示す部分)において回転により局部的に大きな応力が作用する。その結果、ピンや挿通孔の異常摩耗や破損、変形などの問題が引き起こされ、ユニバーサルジョイントを分解したり、洗浄したりすることが困難となり、メンテナンス特性が低下してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、枢軸と枢軸が挿通された軸挿通孔との接触面圧を下げ、応力の局所集中に伴う異常摩耗を大幅に低減しうるユニバーサルジョイント、及び当該ユニバーサルジョイントを備えた一軸偏心ねじポンプの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すべく提供される本発明のユニバーサルジョイントは、第一シャフトのシャフト端に設けられた第一接続部と、第二シャフトのシャフト端に設けられた第二接続部と、前記第一接続部を回動可能なように枢支する枢軸Aと、前記第二接続部を回動可能なように枢支する枢軸Bとを有する。本発明のユニバーサルジョイントでは、前記枢軸A,Bがそれぞれピンによって構成されており、前記枢軸A,Bのうち一方をなすピンには軸方向中間部分において軸方向に対して交差する方向に貫通した軸挿通孔が設けられており、前記枢軸A,Bのうち他方をなすピンを前記軸挿通孔に挿通することにより枢軸A,Bが互いに自由に回動可能な状態で連結された連結構造が形成されている。
【0009】
本発明のユニバーサルジョイントは、前記軸挿通孔の内周面と、前記軸挿通孔に挿通されたピンの外周面との間に形成される隙間が、前記ピンの軸方向のいずれの位置においても略一定なものであることが望ましい。また、本発明のユニバーサルジョイントは、前記第一接続部及び前記第二接続部に、枢軸A,Bをなすピンを挿通可能なピン挿通孔が設けられており、前記ピン挿通孔の内周面と、前記ピン挿通孔に挿通されたピンの外周面との間に形成される隙間が、前記ピンの挿通方向のいずれの位置においても略一定であることが望ましい。
【0010】
本発明のユニバーサルジョイントについてさらに具体的に説明すると、前記第一接続部に、前記ピンAを挿通可能な第一のピンA挿通部と、前記ピンBを挿通可能であり、前記第一のピンA挿通部に対して交差し連通するように形成された第一のピンB挿通部とが設けられたものとすることが可能である。また、前記第二接続部には、前記ピンAを挿通可能な第二のピンA挿通部と、前記ピンBを挿通可能であり、前記第二のピンA挿通部に対して交差し連通するように形成された第二のピンB挿通部とが設けられたものとすることが可能である。さらに、前記軸挿通孔は、前記ピンAの軸方向中間部分において軸方向に対して交差する方向に貫通するように形成されたものとすることが可能である。かかる構成とした場合、本発明のユニバーサルジョイントは、第一のピンA挿通部および第二のピンA挿通部に亘ってピンAを挿通すると共に、第一のピンB挿通部、第二のピンB挿通部、及び軸挿通孔に亘ってピンBを挿通することにより前記第一接続部と前記第二接続部とが連結された構造とすることが可能である。なお、上述した第一のピンA挿通部、第二のピンA挿通部、第一のピンB挿通部、及び第二のピンB挿通部の一部又は全部を貫通孔によって形成することが可能である。また、これらの挿通部を貫通孔によって形成した場合は、その開口径がピンA,Bの外接円の径と略同一であり、ピンA,Bの挿通方向のいずれの部位においても開口径が略同一であることが望ましい。
【0011】
本発明のユニバーサルジョイントは、前記連結構造が形成された部分において、流動物が出入り可能とされたものであってもよい。また、本発明のユニバーサルジョイントは、前記連結構造が形成された部分に、カバーが装着されていることが好ましい。
【0012】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、上述した本発明のユニバーサルジョイントと、前記ユニバーサルジョイントを介して伝達される回転動力により駆動されて偏心回転する雄ねじ型のロータと、前記ロータを挿通可能であり、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明のユニバーサルジョイントは、第一接続部及び第二接続部を二本のピンからなる枢軸A,Bによって枢支すると共に、枢軸A,Bを互いに回動可能なように連結することにより形成されたものである。具体的には、本発明のユニバーサルジョイントでは、第一接続部が枢軸Aに対して自由に回動可能とされており、第二接続部が枢軸Bに対して自由に回動可能とされている。さらに、枢軸A,Bのうち一方をなすピンの軸方向中間部に設けられた軸挿通孔に他方のピンが挿通されており、これにより枢軸A,Bが互いに自由に回動可能なように連結されている。従って、本発明のユニバーサルジョイントは、枢軸A,Bをなすピンを挿入あるいは離脱させるだけで組み立てや分解を行うことができ、容易に清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0014】
また、本発明のユニバーサルジョイントは、第一接続部及び第二接続部が枢軸Aの軸心周り方向及び枢軸Bの軸心周り方向の双方に自由に回動可能とされている。そのため、第一シャフト及び第二シャフトが偏心回転するなどしても、ピン全体で応力を受けるため従来技術として示したユニバーサルジョイントのように特定の部分への応力集中が発生しにくく、異常摩耗がほとんど発生しない。また、第一接続部や第二接続部、枢軸A,Bなどの部材の劣化や、これに伴うメンテナンス特性の低下などの問題も解消される。
【0015】
ここで、本発明のユニバーサルジョイントは、連結構造の形成部分において、流動物が出入り可能な、いわゆるオープンジョイント式のものとすることができる。そのため、本発明のユニバーサルジョイントがオープンジョイント式の連結構造を採用したものであり、流動物に晒される場所に設置されることが想定される場合は、分解や組み立て、清掃などのメンテナンス特性に優れていることが望ましい。特に、前述した流動物が食品や医薬品など人体に摂取される可能性がある場合には清掃などのメンテナンスが頻繁に行われるため、メンテナンスの実施しやすさが求められる。本発明のユニバーサルジョイントは、上述したように分解や組み立て、清掃などのメンテナンスを容易に行うことが可能であり、食品や医薬品を取り扱う場合のようにメンテナンスを頻繁に行われるような場合であっても好適に使用することができる。
【0016】
本発明のユニバーサルジョイントは、軸挿通孔の内周面と、前記軸挿通孔に挿通されたピンの外周面との間に形成される隙間が前記ピンの軸方向のいずれの位置においても略一定となるように構成することにより、軸挿通孔部分においてピンの接触に伴う応力の局所集中が発生するのを回避できる。すなわち、ピン挿通孔とピンとの接触面圧の均一化を図り、応力の局所集中を回避できる。従って、本発明のユニバーサルジョイントでは、図8に示した従来技術のユニバーサルジョイントにおいて懸念される異常摩耗を確実に防止することができる。また、本発明のユニバーサルジョイントは、異常摩耗による各部材の劣化や損傷が生じにくく、分解や組み立て、洗浄などのメンテナンス特性の面においても従来技術のものに比べて優れている。
【0017】
また同様の知見に基づき、枢軸A,Bをなすピンを挿通可能なピン挿通孔を前記第一接続部及び前記第二接続部に設けた場合は、ピン挿通孔の内周面と、ピン挿通孔に挿通されたピンの外周面との間に形成される隙間をピンの挿通方向のいずれの位置においても略一定となるようにすることが可能である。かかる構成とすることにより、ピン挿通孔とピンとの接触面圧の均一化を図り、ピン挿通孔部分においてピンの接触に伴う応力の局所集中が発生するのを防止できる。これにより、異常摩耗を抑制し、各部材の劣化や損傷を防止すると共に、分解や組み立て、洗浄などのメンテナンス特性の面においても従来技術のものに比べて優れたユニバーサルジョイントを提供できる。
【0018】
上述したように、本発明のユニバーサルジョイントは、枢軸A,Bをピンによって構成したものであり、これらのピンを抜き差しするだけで分解や組み立てを行うことができる。その反面、振動などの影響により枢軸A,Bをなすピンが位置ずれしたり脱落したりすることも考えられるため、何らかの方策を講じることが好ましい。かかる観点から、前記連結構造が形成された部分をカバーによって覆われたものとし、枢軸A,Bをなすピンの脱落や位置ずれを防止することが望ましい。
【0019】
本発明の一軸偏心ねじポンプは、上述した本発明のユニバーサルジョイントを備えているため、駆動源からの動力をロータに伝達させ、ロータをスムーズに偏心回転させることが可能である。また、本発明の一軸偏心ねじポンプは、ユニバーサルジョイントを容易に分解や組み立て、清掃などし、メンテナンスすることが可能である。従って、本発明の一軸偏心ねじポンプは、例えば食品や医薬品などのように人体に摂取される可能性がある流動物の搬送用にも好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るユニバーサルジョイントを示す斜視図である。
【図3】図2に示すユニバーサルジョイントの分解斜視図である。
【図4】図2に示すユニバーサルジョイントのP方向矢視図である。
【図5】図2に示すユニバーサルジョイントのQ−Q断面図である。
【図6】脱落防止手段の一例を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は同(a)のR−R断面図である。
【図7】脱落防止手段の一例を示す説明図である。
【図8】従来技術のユニバーサルジョイントを示す平面図である。
【図9】図8に示す従来技術のユニバーサルジョイントにおけるピンと貫通孔との関係を示す説明図であり、(a)はラジアル方向への荷重が作用した状態、(b)はスラスト方向への荷重が作用した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、本発明の一実施形態に係る一軸偏心ねじポンプ10及びユニバーサルジョイント80について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、一軸偏心ねじポンプ10は、ユニバーサルジョイント80に特徴を有するものであるが、以下の説明ではユニバーサルジョイント80の説明に先立って全体構造について説明する。
【0022】
≪一軸偏心ねじポンプ10の全体構造について≫
一軸偏心ねじポンプ10は、いわゆる回転容積型のポンプであり、図1に示すように、ケーシング12の内部にステータ20や、ロータ30、動力伝達機構50などが収容された構成とされている。ケーシング12は、金属製で筒状の部材あり、長手方向一端側に取り付けられた円板形のエンドスタッド12aに第1開口14aが設けられている。また、ケーシング12の外周部分には、第2開口14bが設けられている。第2開口14bは、ケーシング12の長手方向中間部分に位置する中間部12dにおいてケーシング12の内部空間に連通している。
【0023】
第1,2開口14a,14bは、それぞれ一軸偏心ねじポンプ10の吸込口および吐出口として機能する部分である。さらに詳細に説明すると、本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ30を正方向に回転させることにより、第1開口14aが吐出口として機能し、第2開口14bが吸込口として機能するように流動物(流体)を圧送することが可能である。またこれとは逆に、一軸偏心ねじポンプ10は、ロータ30を逆方向に回転させることにより、第1開口14aが吸込口として機能し、第2開口14bが吐出口として機能するように流動物を圧送させることが可能である。本実施形態の一軸偏心ねじポンプ10は、第1開口14aが吐出口として機能し、第2開口14bが吸込口として機能するように作動する。
【0024】
ステータ20は、ゴムに代表される弾性体や樹脂などで作成され、ほぼ円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ20の材質は、一軸偏心ねじポンプ10を用いて移送する被搬送物である流動物の種類や性状などにあわせて適宜選択される。ステータ20は、ケーシング12において第1開口14aに隣接する位置にあるステータ取付部12b内に収容されている。ステータ20の外径は、ステータ取付部12bの内径とほぼ同一である。そのため、ステータ20は、その外周面がステータ取付部12bの内周面にほぼ密着するような状態で取り付けられている。また、ステータ20は、一端側にあるフランジ部20aをケーシング12の端部においてエンドスタッド12aによって挟み込み、エンドスタッド12aとケーシング12の本体部分とに亘ってステーボルト16を取り付けて締め付けることにより固定されている。そのため、ステータ20は、ケーシング12のステータ取付部12b内において位置ずれ等を起こさない。図1や図2に示すように、ステータ20の内周面24は、2条で多段の雌ねじ形状とされている。
【0025】
ロータ30は、金属製の軸体であり、1条で多段の雄ねじ形状とされている。ロータ30は、長手方向のいずれの位置で断面視しても、その断面形状がほぼ真円形となるように形成されている。ロータ30は、上述したステータ20に形成された貫通孔22に挿通され、貫通孔22の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0026】
ロータ30をステータ20に対して挿通すると、ロータ30の外周面32とステータ20の内周面24とが両者の接線にわたって当接した状態になる。また、この状態において、貫通孔22を形成しているステータ20の内周面24と、ロータ30の外周面との間には、流体搬送路40が形成される。流体搬送路40は、上述したステータ20やロータ30のリードの長さLを基準長Sとした場合に、ステータ20やロータ30の軸方向にリードの基準長Sのd倍の長さを有する多段(d段)の流路となっている。
【0027】
流体搬送路40は、ステータ20やロータ30の長手方向に向けて螺旋状に延びている。また、流体搬送路40は、ロータ30をステータ20の貫通孔22内において回転させると、ステータ20内を回転しながらステータ20の長手方向に進む。そのため、ロータ30を回転させると、ステータ20の一端側から流体搬送路40内に流動物を吸い込むと共に、この流動物を流体搬送路40内に閉じこめた状態でステータ20の他端側に向けて移送し、ステータ20の他端側において吐出させることが可能である。すなわち、ロータ30を正方向に回転させると、第2開口14bから吸い込んだ流動物を圧送し、第1開口14aから吐出することが可能である。また、ロータ30を逆方向に回転させると、第1開口14aから吸い込んだ流動物を第2開口14bから吐出することが可能である。
【0028】
動力伝達機構50は、ケーシング12の外部に設けられたモータなどの動力源(図示せず)から上述したロータ30に対して動力を伝達するために設けられている。動力伝達機構50は、動力接続部52と偏心回転部54とを有する。動力接続部52は、ケーシング12の長手方向の一端側、さらに詳細には上述したエンドスタッド12aやステータ取付部12bが設けられたのとは反対側(以下、単に「基端側」とも称す)に設けられた軸収容部12c内に設けられている。また、偏心回転部54は、軸収容部12cとステータ取付部12bとの間に形成された中間部12dに設けられている。
【0029】
動力接続部52は、ドライブシャフト56を有し、これが2つの軸受58a,58bによって自由に回転可能なように支持されている。ドライブシャフト56は、ケーシング12の基端側の閉塞部分から外部に取り出されており、動力源に接続されている。そのため、動力源を作動させることにより、ドライブシャフト56を回転させることが可能である。動力接続部52が設けられた軸収容部12cと中間部12dとの間には、例えばメカニカルシールやグランドパッキンなどからなる軸封装置60が設けられており、これにより中間部12d側から軸収容部12c側に被搬送物たる流動物が漏れ出さない構造とされている。
【0030】
偏心回転部54は、上述したドライブシャフト56とロータ30とを動力伝達可能なように接続する部分である。偏心回転部54は、枢軸62と、2つのユニバーサルジョイント80,80とを有する。枢軸62は、従来公知のカップリングロッドや、スクリューロッドなどによって構成されいる。ユニバーサルジョイント80,80は、それぞれ枢軸62とロータ30との間、及び枢軸62とドライブシャフト56との間を連結するものである。ユニバーサルジョイント80,80は、ドライブシャフト56を介して伝達されてきた回転動力をロータ30に伝達し、ロータ30を偏心回転させることが可能である。
【0031】
≪ユニバーサルジョイント80の構造について≫
続いて、ユニバーサルジョイント80の構造について、詳細に説明する。なお、ロータ30及び枢軸62の間を連結するユニバーサルジョイント80と、枢軸62及びドライブシャフト56の間を連結するユニバーサルジョイント80とは同一のものであるが、以下の説明では、特に断りのない限りロータ30と枢軸62との連結するものを例に挙げて説明する。
【0032】
ユニバーサルジョイント80は、第一接続部82と第二接続部84とを有し、これらをピンA,Bによって構成される連結構造によって連結し、枢支したものである。第一接続部82及び第二接続部84は、それぞれロータ30(第一シャフト)及び枢軸62(第二シャフト)の端部に設けられている。
【0033】
第一接続部82は、正面視が円弧形の周壁部86a,86bの間に第二接続部84を差し込み可能な空間88を備えた構成とされている。また、第一接続部82は、周壁部86a,86bに第一ピンA挿通部90a,90bを有する。さらに、第一接続部82は、周壁部86a,86bの両端部間(図示状態において上下)に存在する隙間により形成された第一ピンB挿通部92a,92bを有する。
【0034】
第一ピンA挿通部90a,90bは、第一接続部82の軸心位置を通り、第一接続部82の軸方向に対して略直交する方向、すなわち径方向に向けてピンAを挿通可能な貫通孔である。第一ピンA挿通部90a,90bの開口径は、ピンAの外接円の径と略同一である。第一ピンA挿通部90a,90bの開口径は、ピンAの挿通方向のいずれの部位においても略一定である。また、第一ピンB挿通部92a,92bは、第一接続部82の径方向に向けてピンBを挿通可能な隙間によって構成されている。
【0035】
第二接続部84は、第一接続部82の周壁部86a,86b間に形成された空間88内に収まる大きさを有する円柱状の部位である。第二接続部84は、第二ピンA挿通部94と、第二ピンB挿通部96とを有する。第二ピンA挿通部94及び第二ピンB挿通部96は、それぞれ第二接続部84の軸心位置を通り、第二接続部84の軸方向に対して略直交する方向、すなわち径方向に向けて延び、内径が部位によらず略一定の貫通孔によって構成されている。第二ピンA挿通部94の開口径はピンAの外接円の径と略同一とされており、第二ピンB挿通部96の開口径はピンBの外接円の径と略同一とされている。また、第二ピンA挿通部94と第二ピンB挿通部96とは、略直交するように形成されており、互いに連通している。
【0036】
ピンAは、上述した第一ピンA挿通部90a,90bの開口径及び第二ピンA挿通部94の開口径と略同一の外径を有する円柱状の部材である。上述したように第一ピンA挿通部90a,90bの開口径及び第二ピンA挿通部94の開口径は、それぞれ部位によらず略一定であるため、ピンAを挿通すると、これらの挿通部90a,90b,94の内周面とピンAの外周面とが面接触した状態になる。ピンAは、軸方向略中央部に軸挿通孔98を有する。軸挿通孔98は、ピンAの軸方向に対して略直交する方向、すなわちピンAの径方向に貫通するように形成されている。軸挿通孔98の開口径は、ピンBの外接円の径と略同一であり、部位によらず略一定である。そのため、軸挿通孔98にピンBを挿通すると、軸挿通孔98の内周面とピンBの外周面とが面接触した状態になる。また、ピンBは、円柱状の外観形状を有する部材である。
【0037】
本実施形態のユニバーサルジョイント80は、上述したピンA,Bを用いて構成される連結構造100により第一接続部82と第二接続部84とを連結したものである。具体的には、連結構造100は、第一接続部82に形成された空間88内に第二接続部84を差し込み、第一ピンA挿通部90a,90b及び第二ピンA挿通部94に亘ってピンAを挿通すると共に、第一ピンB挿通部92a,92bをなす隙間を介して挿通されたピンBを第二ピンB挿通部及び軸挿通孔98に亘って挿通することにより形成される。これにより、ピンA,Bが略十字状に連結され、第一接続部82及び第二接続部84がピンA,Bを中心として自由に回動可能なように連結された状態になる。
【0038】
また、図4において一点鎖線で示すように、連結構造100が形成された部分には、ピンA及びピンBの脱落を防止するための脱落防止手段99が設けられている。そのため、ユニバーサルジョイント80に振動が加わっても、ピンA,Bが脱落することなく、第一接続部82と第二接続部84とが接続された状態を維持することができる。
【0039】
上述したように、本実施形態のユニバーサルジョイント80は、第一接続部82及び第二接続部84を枢軸として機能する二本のピンA,Bによって構成される連結構造100により連結したものである。ユニバーサルジョイント80では、第一接続部82がピンAに対して自由に回動可能とされており、第二接続部84がピンBに対して自由に回動可能とされている。さらに、ピンAの軸方向中間部に設けられた軸挿通孔98にピンBが挿通されており、ピンA,Bが互いに自由に回動可能なように連結されている。従って、ユニバーサルジョイント80は、第一接続部82及び第二接続部84をピンA,Bを中心として自由に回動させることが可能である。
【0040】
また、本実施形態で採用されている連結構造100は、ピンA,Bの組み合わせにより構成されたものであり、ピンA,Bを抜き差しするだけで分解や組み立てを行うことが可能であり、特別な工具等を必要としない。そのため、ユニバーサルジョイント80は、容易に清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0041】
本実施形態では、連結構造100を構成するピンA,Bの脱落防止のために脱落防止手段99を設けた例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、カバー99を備えていないものであってもよい。また、脱落防止手段99はピンA,Bの脱落を防止可能なものであればいかなるものであってもよく、例えば図6や図7に示すようなものとすることが可能である。具体的には、図6に示す例は、脱落防止手段99としてスリーブ99aを採用したものである。この例においては、第一接続部82の周壁部86a,86bにスリーブ99aを装着可能なように段落とし部86cを設けておき、ピンA,Bを装着して連結構造100を形成した後に図6(a)中に矢印で示すようにスリーブ99aを移動させて段落とし部86cに装着させることにより図6(b)に示すようにピンA,Bが抜け止めされた状態になる。
【0042】
また、図7に示す例は、ピンAを一端側に頭部99bを有するものとし、ピンAの装着後に他端側に抜け止め用の止め輪99cを装着したものである。このような構成とすることによっても、ピンAが抜け止めされた状態とすることが可能である。なお、図7に示す例では、ピンAを頭部99b及び止め輪99cによって構成される脱落防止手段99によって抜け止めしたものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ピンBについても同様の構成を採用することにより抜け止めすることが可能である。また図7に示す例では、ピンAのみを抜け止めした例を例示したが、ピンBのみを抜け止めした構成であってもよく、ピンA,Bの双方を抜け止めした構成であってもよい。さらに、図7に示す例では、ピンA(あるいはピンB)の一端側に頭部99bを設け、他端側に止め輪99cを装着した例を例示したが、頭部99bを設けず、両端ともに止め輪99cなどによって抜け止めした構成とすることも可能である。
【0043】
また、ユニバーサルジョイント80は、第一接続部82及び第二接続部84が互いに交差するように配された二本のピンA,Bを介して連結され、ピンAの軸心周り方向及びピンBの軸心周り方向の双方に自由に回動可能とされている。また、ピンAは、第一ピンA挿通部90や、第二ピンA挿通部94に対して面接触した状態で回動可能であり、ピンBは、第二ピンB挿通部96や軸挿通孔98に対して面接触した状態で回動可能である。また、スリット状の第一ピン挿通部92は、連結構造の組み立て、分解時にピンBが通る部分であり、使用状態においてはピンBは接触していない。そのため、ユニバーサルジョイント80は、ロータ30が偏心回転するなどしても特定の部分に応力集中せず、異常摩耗が起こらない。従って、ユニバーサルジョイント80は、第一接続部82や第二接続部84、ピンA,Bが変形や異常摩耗するといったような各部材の劣化や、メンテナンス特性の低下などの問題が殆ど発生しない。従って、一軸偏心ねじポンプ10は、食品や医薬品など人体に摂取される可能性がある流動物を取り扱う場合のように、清掃などのメンテナンスを頻繁に行う必要がある場合であっても好適に使用できる。
【0044】
上記実施形態では、使用状態においてピンA,Bが挿通された状態になっている第一ピンA挿通部90や、第二ピンA挿通部94、第二ピンB挿通部96、軸挿通孔98の内周面が部位によらず略均一の開口径を有するものであったが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更することは可能である。具体的には、ピンA,Bの着脱を容易にするなどの目的で、第一ピンA挿通部90や、第二ピンA挿通部94、第二ピンB挿通部96、軸挿通孔98の入口部分を面取りするなどして、上述した応力の局所集中に伴う異常摩耗などの問題が生じない程度において開口径が不均一な部分を形成してもよい。
【0045】
ユニバーサルジョイント80は、連結構造100が形成された部分に流動物が自由に出入りできる構造(いわゆるオープンジョイント式の構造)を有し、一軸偏心ねじポンプ10により取り扱われている流動物が連結構造100に侵入可能なものであるが、上述したように応力の局所集中に伴う異常摩耗が生じにくいため流動物中に摩耗片が混入するといった問題が生じにくい。なお、ユニバーサルジョイント80は、流動物中への摩耗片の混入をより一層確実に防止する等の観点から、連結構造100を所定のカバーによって覆った構成とすることも可能である。
【0046】
本実施形態では、第一ピンA挿通部90を貫通孔によって構成し、第一ピンB挿通部92をスリット(隙間)によって構成した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、第一ピンB挿通部92も貫通孔によって構成することが可能であり、第一ピンA挿通部90を貫通孔によって構成し、第一ピンB挿通部92をスリット(隙間)によって構成することも可能である。
【0047】
本実施形態では、ロータ30側に第一接続部82を設け、枢軸62側に第二接続部84を設けた例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一接続部82と第二接続部84とが本実施形態とは逆の配置とされていてもよい。また、ユニバーサルジョイント80が枢軸62及びドライブシャフト56の間を連結するものである場合についても同様に、枢軸62側及びドライブシャフト56側のうちいずれか一方に第一接続部82が設けられ、他方側に第二接続部84が設けられていればよい。
【0048】
本実施形態では、ユニバーサルジョイント80を一軸偏心ねじポンプ10に適用した例を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、他の機器類において軸体同士を連結するために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 一軸偏心ねじポンプ
20 ステータ
30 ロータ
80 ユニバーサルジョイント
82 第一接続部
84 第二接続部
86a,86b 周壁部
90a,90b 第一ピンA挿通孔(ピン挿通部)
92a,92b 第一ピンB挿通部(ピン挿通部)
94 第二ピンA挿通孔(ピン挿通部)
96 第二ピンB挿通孔(ピン挿通部)
98 軸挿通孔
100 連結構造
A,B ピン(枢軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一シャフトのシャフト端に設けられた第一接続部と、
第二シャフトのシャフト端に設けられた第二接続部と、
前記第一接続部を回動可能なように枢支する枢軸Aと、
前記第二接続部を回動可能なように枢支する枢軸Bとを有し、
前記枢軸A,Bがそれぞれピンによって構成されており、
前記枢軸A,Bのうち一方をなすピンには軸方向中間部分において軸方向に対して交差する方向に貫通した軸挿通孔が設けられており、
前記枢軸A,Bのうち他方をなすピンを前記軸挿通孔に挿通することにより枢軸A,Bが互いに自由に回動可能な状態で連結された連結構造が形成されていることを特徴とするユニバーサルジョイント。
【請求項2】
前記軸挿通孔の内周面と、前記軸挿通孔に挿通されたピンの外周面との間に形成される隙間が、前記ピンの軸方向のいずれの位置においても略一定であることを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルジョイント。
【請求項3】
前記第一接続部及び前記第二接続部には、枢軸A,Bをなすピンを挿通可能なピン挿通孔が設けられており、
前記ピン挿通孔の内周面と、前記ピン挿通孔に挿通されたピンの外周面との間に形成される隙間が、前記ピンの挿通方向のいずれの位置においても略一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載のユニバーサルジョイント。
【請求項4】
前記連結構造が形成された部分において、流動物が出入り可能とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のユニバーサルジョイント。
【請求項5】
前記連結構造が形成された部分に、カバーが装着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のユニバーサルジョイント。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のユニバーサルジョイントと、
前記ユニバーサルジョイントを介して伝達される回転動力により駆動されて偏心回転する雄ねじ型のロータと、
前記ロータを挿通可能であり、内周面が雌ねじ型に形成されたステータとを備えていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−256910(P2011−256910A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130395(P2010−130395)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】