説明

ユビデカレノンを含有する多層錠ビタミン複合製剤

本発明は、ユビデカレノンの安定性を増加させた総合ビタミン/ミネラル多層錠製剤に関する。本発明は、ユビデカレノンを第1層に含ませ、ユビデカレノンの安定性を阻害する成分を第1層とは区分して別途の層に含ませることを特徴とする。この方法は製造工程が便利であり、この方法によって製造された製剤は、長期間保存の際にもユビデカレノンの含量を高く維持し、ユビデカレノンと共にビタミンなどの他の栄養成分を同時に摂取し得るようにする効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビデカレノンを含有するビタミン複合製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビデカレノン(コエンチームQ10;ubidecarenone;分子式C5990;分子量863.36)は、人体内で合成される補酵素の一つであって、ミトコンドリア内での酸化/還元周期を経て電子伝達系で電子輸送体の機能を行う。ユビデカレノンの約40〜90%は生命体内で一般に還元型として存在し、このように還元されたユビデカレノンは抗酸化効果を持つものと知られている。
【0003】
ユビデカレノンの生理学的機能の例には、ミトコンドリア機能の活性化によるエネルギー生産の活性化、心肺機能の活性化、細胞膜の安定化、抗酸化効果による細胞生産、心筋保護作用、発癌予防、老化防止作用、血中LDL酸化抑制、血圧上昇抑制、および虚血心筋への酸素利用効率の改善などが含まれる。また、医薬品分野では、代謝性強心剤、心不全症状の改善、老化防止、動脈硬化、糖尿病、高血圧、低血圧、狭心症、虚血性心臓病、および筋肉の退行性萎縮などの疾患治療に適用されている。
【0004】
ユビデカレノンは、一般に、魚類、肉類または海草に含まれているものと知られているが、天然食品内の含有量は極めて少ない。したがって、通常の食事では、十分な量のユビデカレノンを摂取することが難しいため、栄養補助食品または薬品として市販されている。
【0005】
特に、ユビデカレノンは、癌、成人病または老化の原因である活性酸素を直接除去し、他の抗酸化物質(ビタミンC、E)の機能促進作用を果たすので、一般に、他の抗酸化ビタミンと複合して服用される。ユビデカレノンは、ベータカロチン、セレニウム、ビタミンCおよびビタミンEを含む他の抗酸化剤と複合して投与するとき、抗酸化剤単独投与に比べて2〜3培以上高い効果を示すものと知られている。特に、ビタミンEの抗酸化活性を十分発揮させるためにはユビデカレノンの共存が非常に重要であると報告されている。
【0006】
前述したユビデカレノンは、脂溶性物質であって、大部分が水とアルコールに対して不溶性であるが、エーテルなどに対しては高い溶解度を有する。また、ユビデカレノンは、非常に不安定であり、光、空気または他のビタミン類との反応などによって分解されてヒドロキノン体などを生成する。よって、ユビデカレノンの体内摂取のためには、可溶性および安定性を高める段階を経ることが必要である。一般には、製剤化により安定化された錠剤またはカプセル剤などの形で摂取し、或いは脂質類と共に可溶化および/または安定化された液体剤形などの形で摂取する。
【0007】
特許文献1〜6は、可溶性および生体吸収率を増加させた経口用液体剤形を開示する。特に、特許文献7では懸濁剤および非イオン性界面活性剤を用いて液体剤形を安定化させ、特許文献8では水溶性高分子、乳化剤および懸濁剤を用いて安定化および生体利用率の向上を実現した。
【0008】
特許文献9は、1種以上の糖アルコールと1種以上の有機酸を含んでユビデカレノンを安定化させた飲料を開示し、特許文献10では、カゼインナトリウムとデキストリンによってユビデカレノンとその他のビタミン類の分散性および安定性を増加させた。特許文献11は、コエンチームQを水溶液中に乳化させ、有機酸を共に添加して安定性を増加させた技術を開示する。
【0009】
一方、特許文献12〜14は、ゼラチンカプセルに充填された軟質或いは硬質の経口用カプセル製剤を開示し、特に特許文献15および16は、カプセル剤内のユビデカレノンを安定化させたものを開示する。ユビデカレノンは、一般にゼラチンと共に存在するとき、水溶性ビタミンとの接触によって分解がさらに加速化されるものと知られている。よって、前記文献らでは、有機酸、有機酸の混合物、およびその他の安定化剤が使用された。特許文献17は、β−カロチンおよび酵素処理したルチンを含む栄養組成物を開示する。
【0010】
前記文献らは、剤形および添加剤によってユビデカレノンの安定性および生体利用率を増加させたものである。ところが、懸濁液剤または大きいサイズのカプセル剤の代用として、多様なビタミンを含有するがビタミン以外の賦形剤の量を最少に減らして大きさが小さく、一口で多様な種類のビタミン、ミネラルおよびユビデカレノンを服用することが可能な固形錠剤製剤の必要性は依然として存在する。
【0011】
一方、ユビデカレノン自体を処理して安定化させる技術も研究されてきている。例えば、特許文献18はシクロデキストリンに包接する技術を開示し、特許文献19はユビデカレノンとγ−シクロデキストリンとの粉末状複合体を形成して可溶性および安定性を向上させた技術を開示する。
【0012】
特許文献20は、ユビデカレノンおよびその安定化剤としての有機酸を含有するグループと、ビタミンB1類を含有するグループを別個に顆粒化させた後、互いに混合することにより、ユビデカレノンの安定性を向上させる固形製剤の製造技術を開示する。ところが、造粒過程によるユビデカレノンとビタミンB1類間の分離は、接触面積が広くて安定化効果が低いという問題点がある。したがって、一般にユビデカレノンの分解を抑制させるものと知られている有機酸を共に使用することにより、安定性を向上させることができた。
【0013】
このように、従来のユビデカレノン安定化技術では、一般にユビデカレノンを直接処理する追加工程が必要であり、或いは有機酸などの安定化剤を必須的に含有する。
【0014】
ところが、有機酸の使用は非経済的であり、人為的な有機酸の使用は、血液酸性化を誘発し、これによる頭痛、めまい、不眠症、疲労などの症状を発生させるおそれがある。また、有機酸は腸を刺激して下痢の原因になることもある。シュウ酸(oxalate)およびフィチン酸(phytate)などの有機酸は、消化器内でカルシウムと結合して不溶性塩を合成することによりカルシウムの吸収を阻害させる副作用がある。
【0015】
また、有機酸は、ビタミンK、葉酸、ビタミンAなどの酸性条件で不安定なビタミン、ミネラルとの共存の際にこれらの安定性を低下させるおそれがある。
【0016】
そして、ユビデカレノン、ビタミンおよびミネラルなどの栄養成分を含む単一製剤を製造する際に、前述した従来の技術は、ビタミンB、Eなどの限定的なビタミン類のみを考慮しているので、総合ビタミン製剤に通常使用するそれ以外のビタミン類とミネラル類に対するユビデカレノンの安定性問題に対しては開示していない。
【0017】
そこで、本発明者らは、共存の際にユビデカレノンの安定性を阻害するその他の栄養成分(ビタミン、ミネラル、アミノ酸など)を究明し、これらを含有する層とユビデカレノンを含有する層を分離して多層化することにより、一体型の固形製剤内で、別途の複雑な工程または有機酸などの安定化剤添加なしでもユビデカレノンが安定的に分離保存できる多層錠製剤を開発し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,035,895号明細書
【特許文献2】米国特許第6,300,377号明細書
【特許文献3】米国特許第6,441,050号明細書
【特許文献4】米国特許第6,652,891号明細書
【特許文献5】特開第2003−169630号公報
【特許文献6】特開第2005−000043号公報
【特許文献7】英国特許第1,112,568号明細書
【特許文献8】米国特許第7,026,361号明細書
【特許文献9】特開第2004−16011号公報
【特許文献10】特開第2003−169630号公報
【特許文献11】特開第2004−81158号公報
【特許文献12】米国特許第5,443,842号明細書
【特許文献13】米国特許第6,740,338号明細書
【特許文献14】米国特許第6,855,733号明細書
【特許文献15】米国特許第6,995,820号明細書
【特許文献16】特開第2001−354553号公報
【特許文献17】特開第2005−124482号公報
【特許文献18】特開第2005−2005号公報
【特許文献19】韓国公開特許第2002−0080370号公報
【特許文献20】特開第2006−182770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述した従来の技術の限界を克服するために、本発明は、ユビデカレノンと共に、各種ビタミン類の栄養成分を同時に含有する総合ビタミン製剤を提供するにおいて、製造工程がより単純であって経済的であるうえ、長期間保存の際にもユビデカレノンの含量を高く維持することができる、ユビデカレノン含有複合ビタミン経口用多層錠製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記従来の技術の限界を克服するために、本発明の目的は、ユビデカレノンと共に、各種ビタミンおよびミネラル類の栄養成分を同時に含有する総合ビタミン製剤を提供するにおいて、製造工程がより単純であって経済的であるうえ、長期間保存の際にもユビデカレノンの含量を高く維持することができる、ユビデカレノン含有複合ビタミン/ミネラル経口用多層錠製剤を提供することにある。
【0021】
また、本発明の他の目的は、基準含量以上のビタミン、ミネラルなどを含む場合でも、ユビデカレノンの安定性が長期間維持できるようにする、ユビデカレノン含有複合ビタミン/ミネラル経口用多層錠製剤を提供することにある。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ユビデカレノンを第1層に含ませ、ユビデカレノンの安定性を阻害する成分を第1層と区分して別途の層に含ませることを特徴とする。この方法は製造工程が便利であり、この方法によって製造された製剤は、長期間保存の際にもユビデカレノンの含量を高く維持し、ユビデカレノンと共にビタミン/ミネラルなどの他の栄養成分を同時に摂取し得るようにする効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、ユビデカレノン(第1成分)を含む第1層と、前記ユビデカレノンの安定性を阻害する活性成分(第2成分)を含む別途の第2層を含む多層錠製剤であり、前記第1成分と第2成分は同じ層に同時に存在せず、前記第2成分はアスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、コレカルシフェロール、フルスルチアミン、イノシトール、これらの誘導体、およびこれらの混合物から選ばれたビタミンを含むことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤を提供する。
【0024】
また、本発明は、前述した複合製剤として、長期保存安定性試験(24ヶ月:25±2℃、60±5%RH)または加速安定性試験(6ヶ月:40±2℃、75±5%RH)の際にユビデカレノンの含量が90%以上に維持されることを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記複合製剤において、前記第2成分は、硫酸亜鉛、硫酸鉄、酒石酸水素コリン、リン酸水素カルシウムおよびこれらの混合物から選ばれるミネラル、L−システイン、その誘導体およびこれらの混合物から選ばれるアミノ酸、γ−オリザノール、その誘導体およびこれらの混合物から選ばれる生薬抽出物の中から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤をさらに提供する。
【0026】
また、本発明は、前記複合製剤において、前記第1層および第2層は上層/下層構造または内層/外層構造を持つことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤をさらに提供する。
【0027】
また、本発明は、前記複合製剤において、前記第2層において前記ビタミンと前記ミネラルを別途の層に区分して含むことにより、全体的に三層錠をなすようにしたことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤をさらに提供する。
【0028】
また、本発明は、前記複合製剤が賦形剤、崩解剤、結合剤、滑沢剤および甘味剤の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤をさらに提供する。
【0029】
また、本発明は、前記複合製剤にさらに防湿コーティングと遮光コーティングの少なくとも一つが加えられたことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤をさらに提供する。
【0030】
また、ユビデカレノン(第1成分)を含有する第1層原料、およびユビデカレノンの安定性を阻害する活性成分(第2成分)を含有する第2層原料のいずれか一つをそれぞれ圧縮成形した後、生成された圧縮成形物上に他の一つを上層/下層または内層/外層の形で圧縮成形して多層錠剤化する段階を含み、前記第2成分は、アスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、フルスルチアミン、パルミチン酸レチノール、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、コレカルシフェロール、イノシトール、これらの誘導体、またはこれらの混合物から選ばれたビタミンを含み、前記第1成分と第2成分は同じ層に同時に存在しないことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤の製造方法をさらに提供する。
【0031】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0032】
本発明の多層錠製剤は、第1層にユビデカレノンが含有されており、ユビデカレノンの安定性を阻害する活性成分、例えばミネラル、ビタミン類などはこれと区分された他の層に含有されている総合ビタミン多層錠製剤である。本発明は、各原料において別途に安定性を増加させる安定化剤の添加、遮蔽、カプセル化などの前処理過程を経なくても良いから製造工程に便宜性を提供し、懸濁液剤または大きいサイズの軟質カプセル剤の代用として、多様なビタミンを含有するがビタミン以外の賦形剤の量を最少に減らして大きさが小さく、一口で多様な種類のビタミンとミネラルおよびユビデカレノンを服用することが可能な便利性を提供する。
【0033】
前記ユビデカレノンおよびその他のビタミンミネラルとの混合物は、通常の方法によって製造することができ、これらの混合物は、ユビデカレノンおよびその他のビタミン、ミネラル類だけでなく、薬学的に許容可能な賦形剤、崩解剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤などを含むことができる。そして、混合物で製造された多層錠はフィルムまたは糖衣でコートできる。
【0034】
本発明のユビデカレノンを含有した層の活性成分としては、ユビデカレノン、ユビデカレノン誘導体、およびユビデカレノンとの共存の際にユビデカレノンの安定性を阻害しない成分を全て使用することができ、ユビデカレノンの安定性を阻害する成分でも、処方内でユビデカレノンの安定性を阻害しなければ使用できる。
【0035】
ビタミン、ミネラルを含有した層の成分としては、ユビデカレノンとの共存の際に、安定性を阻害しながら経口投与が可能なビタミン類、例えばアスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、フルスルチアミン、パルミチン酸レチノール、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、コレカルシフェロール、イノシトールなどのビタミンおよびその誘導体と、ユビデカレノンとの共存の際に、安定性を阻害しながら経口投与が可能なミネラル類、例えば硫酸亜鉛、硫酸鉄、酒石酸水素コリン、リン酸水素カルシウムなどのミネラルおよびその誘導体と、ユビデカレノンとの共存の際に安定性を阻害しながら経口投与が可能なアミノ酸および生薬抽出物、例えばL−システイン、γ−オリザノールなどのミネラル類およびこれらの誘導体、またはこれら成分の混合物を含むことができる。
【0036】
本発明で使用される賦形剤は、一般に経口投与が可能な乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉、アルファ化澱粉、微結晶セルロースまたはセルロース誘導体、デキストリン、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、エチルセルロース、メチルセルロースなどよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含むことができる。
【0037】
本発明で使用される結合剤は、一般に経口投与が可能なポリビニルピロリドンまたはその誘導体、ビニルピロリドン/ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉、アルファ化澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含むことができる。
【0038】
本発明で使用される崩解剤は、一般に経口投与が可能なクロスカルメロースナトリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスポビドンなどよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含むことができる。
【0039】
本発明で使用される滑濁剤は、一般に経口投与が可能なステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、硬質無水ケイ酸などよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含むことができる。
【0040】
本発明で使用される甘味剤としては、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ステビオシド、サッカリンなどよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含むことができる。
【0041】
本発明で使用されるコーティング剤は、特に限定されないが、ユビデカレノンおよびビタミンの安定性を維持するためには防湿および遮光の機能を持つコーティング剤がさらに好ましい。
【0042】
前記コーティング剤に使用されるコーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体、例えばポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーLまたはLD、アミノアルキルアクリレートコポリマーRS、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、デキストリン、フルラン、ゼイン、アルギン酸ナトリウム、白糖、ゼラチン、並びにセラック(serac)などを含む。可塑剤としては、例えばマクロゴール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、重鎖脂肪酸トリグリセリド、グリセリンなどが使用される。滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、蔗糖脂肪酸エステルなどを使用し、遮光剤または色素としては、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、黒色三二酸化鉄などの酸化金属、タール色素などが使用される。
【0043】
本発明に係る薬学的組成物は、二層錠、三層錠、核錠などの経口投与用固形多層錠製剤に製剤化できる。
【0044】
多層錠の製造に適用される打錠方法としては、既存の公知の方法が利用できる。但し、多層錠において、一番目の打錠の際には通常4.9kN(kilo Newton、10ton=98kN)未満の圧力が加えられることが好ましいが、これは、それ以上の圧力が加えられる場合、あまり硬くて二番目の層と結合しないおそれがあるためである。二番目の打錠の際に、例えば1〜2トン、すなわち11.76〜14.7kN程度の圧力が加えられる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0046】
I.ユビデカレノンの安定性を阻害する成分の確認
ユビデカレノンの安定性を阻害する成分を区分するために、多様なビタミン/ミネラル/生薬抽出物/アミノ酸成分とユビデカレノンを含ませた単層錠を製造し(製造例1−1〜製造例1−7)、これらそれぞれに対して安定性評価を行った(試験例1)。その詳細は次のとおりである。
【0047】
1.多様な処方のユビデカレノン含有単層錠の製造
(1)製造例1−1:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0048】
【表1】

【0049】
ユビデカレノンと低置換度ヒドロキシメチルセルロース、ルディプレス、ポビドンを10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れてさらに5分間混合することにより、粉体を形成した。前記粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチ(lower punch)に充填した。充填の後、上パンチ(upper punch)で圧縮成形し、ダイ(die)から錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0050】
(2)製造例1−2:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0051】
【表2】

【0052】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと乳糖を顆粒化した後、整粒した。ここにセレニウム、パントテン酸カルシウムおよび低置換度ヒドロキシメチルセルロースを入れて10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクを入れて5分間混合して粉体を形成した。この粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチに充填した。これを上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0053】
(3)製造例1−3:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0054】
【表3】

【0055】
ユビデカレノンと硝酸チアミン、ビオチン、リボフラビン、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、ルディプレスを10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れてさらに5分間混合した。この混合粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチに充填した。これを上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介してユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0056】
(4)製造例1−4:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0057】
【表4】

【0058】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと酢酸α−トコフェロール、乳糖を顆粒化して整粒した後、ここに低置換度ヒドロキシメチルセルロース、アスコルビン酸を入れて10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合した。この混合粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチに充填した。これを上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介してユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0059】
(5)製造例1−5:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0060】
【表5】

【0061】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと酒石酸水素コリン、酢酸α−トコフェロール、乳糖を顆粒化して整粒した後、ここに低置換度ヒドロキシメチルセルロースを入れて10分間混合し、しかる後に、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合した。この混合粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチに充填した。これを上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介してユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0062】
(6)製造例1−6:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0063】
【表6】

【0064】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと酒石酸水素コリン、乳糖を顆粒化して整粒した後、ここにパルミチン酸レチノール、低置換度ヒドロキシメチルセルロースを入れて10分間混合し、しかる後に、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合した。この混合粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチに充填した。これを上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介してユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0065】
(7)製造例1−7:ユビデカレノン含有単層錠の処方
【0066】
【表7】

【0067】
ユビデカレノンと0.1%シアノコバラミン、酒石酸水素コリン、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、ルディプレス、ポビドンを10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れてさらに5分間混合した。この混合粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下方にある下パンチに充填した。これを上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介してユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0068】
2.試験例1:製造例1−1〜1−7の各処方例に対するユビデカレノン安定性の評価
(1)単層錠中のユビデカレノンの加速安定性試験結果(単位:ユビデカレノンの残存量%)
【0069】
【表8】

【0070】
(2)単層錠中のユビデカレノンの長期安定性試験結果(単位:ユビデカレノンの残存量%)
【0071】
【表9】

【0072】
表8および表9に示すように、製造例1−1、1−2および1−3の処方は、確認加速6ヶ月間または24ヶ月の長期安定性試験結果、90%以上の高い安定性を維持したので、本発明のユビデカレノン含有層の組成物として使用してもよい。
【0073】
ところが、製造例1−4、1−5、1−6および1−7の処方は、加速6ヶ月間または24ヶ月の長期安定性試験結果、ユビデカレノンの含量低下が激しかったので、本発明のユビデカレノン含有層の組成物として不適である。よって、ユビデカレノンを除いた活性成分の一部或いは全部を、本発明で完成した多層錠中の、ユビデカレノン含有層以外の他の層に含ませなければならないものと判断される。
【0074】
II.本発明に係る多層錠および従来の技術に係る単層錠の製造、並びにこれらに対する安定性の比較
1.本発明に係る多層錠の製造
(1)製造例2:ユビデカレノン含有層/ビタミンおよびミネラル含有層からなる二層錠Aの製造
(A)ユビデカレノン含有層
【0075】
【表10】

【0076】
(B)ビタミンおよびミネラル含有層
【0077】
【表11】

【0078】
(C)製造方法
ユビデカレノンと硝酸チアミン、ビオチン、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、ルディプレスを10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れてさらに5分間混合することにより、ユビデカレノン含有層(A)の混合物を製造した。そして、ポビドンを結合液として酒石酸水素コリン、リン酸水素カルシウム、および乳糖を顆粒化して整粒した後、ここにリボフラビン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキシン、乾燥コレカルシフェロール、0.1%シアノコバラミン、酢酸α−トコフェロール、ルディプレス、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、およびポビドンを入れて10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れてさらに混合し、ビタミンおよびミネラル含有層(B)の混合物を製造した。
【0079】
ユビデカレノン含有層(A)の混合物を、ダイの下方にある下パンチに充填した後、上パンチで一定の圧力を加えて1次成形を行い、次いでビタミンおよびミネラル含有層(B)の混合粉体を充填した後、最終圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノンを含有する経口用総合ビタミン二層錠を製造した。
【0080】
(2)製造例3:ユビデカレノン含有層/ビタミンおよびミネラル含有層からなる二層錠Bの製造
(A)ユビデカレノン含有層
【0081】
【表12】

【0082】
(B)ビタミンおよびミネラル含有層
【0083】
【表13】

【0084】
(C)製造方法
ユビデカレノンと低置換度ヒドロキシメチルセルロース、ルディプレスを10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れてさらに5分間混合し、ユビデカレノン含有層(A)の混合物を製造した。ポビドンを結合液としてビオチン、酒石酸水素コリン、リン酸水素カルシウムおよび乳糖を顆粒化して整粒した後、ここにパントテン酸カルシウム、パルミチン酸レチノール、硝酸チアミン、リボフラビン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、乾燥コレカルシフェロール、0.1%シアノコバラミン、酢酸α−トコフェロール、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、およびルディプレスを入れて10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ビタミンおよびミネラル含有層(B)の混合物を製造した。
【0085】
ユビデカレノン含有層(A)の混合物を、ダイの下方にある下パンチに充填した後、上パンチで一定の圧力を加えて1次成形を行い、次いでビタミンおよびミネラル含有層(B)の混合粉体を充填した後、最終圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノンを含有する経口用総合ビタミン二層錠を製造した。
【0086】
(3)製造例4:ユビデカレノン含有内層/ビタミンおよびミネラル含有外層からなる核錠Aの製造
(A)ユビデカレノン含有内層の成分および重量
【0087】
【表14】

【0088】
(B)ビタミンおよびミネラル含有外層
【0089】
【表15】

【0090】
(C)製造方法
ユビデカレノンとセレニウム、パントテン酸カルシウム、乳糖、低置換度ヒドロキシメチルセルロースを10分間混合した後、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、およびタルクを入れてさらに5分間混合することにより、ユビデカレノン含有内層(A)の混合物を製造した。
【0091】
これとは別途に、フルスルチアミン、リボフラビン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、乾燥コレカルシフェロール、0.1%シアノコバラミン、酢酸α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、γ−オリザノール、アスコルビン酸、イノシトール、乳糖、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、微結晶セルロース、およびポビドンを入れて10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れてさらに混合することにより、ビタミンおよびミネラル含有外層(B)の混合物を製造した。
【0092】
ユビデカレノン含有内層(A)の混合物を、ダイの下方にある下パンチに充填した後、上パンチで一定の圧力を加えて成形を行い、次いでビタミンおよびミネラル含有外層(B)の混合物と混合して下パンチに充填した後、上パンチで最終圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノンを含有する経口用総合ビタミン核錠を製造した。
【0093】
(4)製造例5:ユビデカレノン含有内層/ビタミンおよびミネラル含有外層からなる核錠Bの製造
(A)ユビデカレノン含有内層
【0094】
【表16】

【0095】
(B)ビタミンおよびミネラル含有外層
【0096】
【表17】

【0097】
(C)製造方法
ユビデカレノンと乳糖、低置換度ヒドロキシメチルセルロースを10分間混合した後、ポビドン、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを入れてさらに5分間混合することにより、ユビデカレノン含有内層(A)の混合物を製造した。
【0098】
これとは別途に、アスコルビン酸、L−システイン、パントテン酸カルシウム、微結晶セルロース、ルディプレスおよび低置換度ヒドロキシメチルセルロースを入れて10分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよび硬質無水ケイ酸を入れてさらに5分間混合することにより、ビタミンおよびミネラル含有外層(B)の混合物を製造した。
【0099】
ユビデカレノン含有内層(A)の混合物を、ダイの下方にある下パンチに充填した後、上パンチで一定の圧力を加えて成形を行い、次いでビタミンおよびミネラル含有外層(B)の混合物と混合して下パンチに充填した後、上パンチで最終圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノンを含有する経口用総合ビタミン核錠を製造した。
【0100】
(5)製造例6:ユビデカレノン層/ビタミン層/ミネラル層を含有する三層錠の製造
(A)ユビデカレノン含有層
【0101】
【表18】

【0102】
(B)ユビデカレノンを除いたビタミン含有層
【0103】
【表19】

【0104】
(C)ユビデカレノンを除いたミネラル含有層
【0105】
【表20】

【0106】
(D)製造方法
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと乳糖を顆粒化して整粒した後、ここに低置換度ヒドロキシメチルセルロースを入れて10分間混合し、しかる後に、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ユビデカレノン含有層(A)の混合物を製造した。
【0107】
そして、リボフラビン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、塩酸ピリドキシン、乾燥コレカルシフェロール、0.1%シアノコバラミン、酢酸α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、アスコルビン酸、イノシトール、低置換度ヒドロキシメチルセルロース、乳糖、微結晶セルロースおよびポビドンを10分間混合し、ここにステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ユビデカレノンを除いたビタミン含有層(B)の混合物を製造した。
【0108】
これとは別途に、ポビドンを結合液として酒石酸水素コリン、リン酸水素カルシウム、硫酸亜鉛、乾燥硫酸鉄、セレニウムおよび乳糖を顆粒化して整粒し、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシメチルセルロースを混合した後、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ミネラル含有層(C)の混合物を製造した。
【0109】
ユビデカレノン含有層(A)の混合物を、ダイの下方にある下パンチに充填した後、上パンチで一定の圧力を加えて1次成形を行い、次いでビタミン含有層(B)の混合粉体を充填した後、圧縮成形し、さらにミネラル含有層(C)の混合粉体を充填した。この充填物を圧縮成形した後、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノンを含有する経口用総合ビタミン三層錠を製造した。
【0110】
(6)製造例7:ユビデカレノンを含有するフィルムコーティング二層錠の製造
製造例2の処方によって二層錠を製造した後、ポリビニルアルコール44.0g、タルク20.0g、アルラレッドAC(Allura Red AC)アルミニウムレーキ15.7g、ポリエチレングリコール12.4g、レシチン3.5g、酸化チタン3.0g、エリトロシン1.2g、およびインジゴカルミンアルミニウムレーキ0.3gを精製水に溶かした後、フィルムコートすることにより、1錠のコーティング量が32mgのコーティング錠剤を得た。
【0111】
2.従来の技術に係る多層錠の製造
(1)比較製造例1:ユビデカレノン、ビタミンおよびミネラルを含有する単層錠の製造(製造例2の二層錠Aと比較)
製造例2で製造した表10のユビデカレノン含有層(A)の混合物と、表11のユビデカレノンを除いたビタミンおよびミネラル含有層(B)の混合物とを互いに混合し、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した後、上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0112】
(2)比較製造例2:ユビデカレノン、ビタミンおよびミネラルを含有する単層錠の製造(製造例4の核錠Aとの比較)
製造例4で製造した表14のユビデカレノン含有層(A)の混合物と、表15のユビデカレノンを除いたビタミンミネラル含有層(B)の混合物とを互いに混合し、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した後、上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0113】
(3)比較製造例3:ユビデカレノン、ビタミンおよびミネラルを含有する単層錠の製造(製造例5の核錠Bとの比較)
製造例5で製造した表16のユビデカレノン含有層(A)の混合物と、表17のユビデカレノンを除いたビタミンおよびミネラル含有層(B)の混合物とを互いに混合し、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した。この充填物を上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0114】
(4)比較製造例4:ユビデカレノン、ビタミンおよびミネラルを含有する単層錠の製造(製造例6の三層錠との比較)
製造例6で製造した表18のユビデカレノン含有層(A)の混合物と、表19のユビデカレノンを除いたビタミン含有層(B)の混合物と、表20のミネラル含有層(C)の混合物とを互いに混合し、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した後、上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0115】
3.従来の技術における造粒方法でユビデカレノンとビタミン類などを区分した単層錠の製造
(A)比較製造例5−1: 造粒方法でユビデカレノンとビタミン類を区分した単層錠I
【0116】
【表21】

【0117】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと乳糖を顆粒化して整粒した後、ここに低置換度ヒドロキシメチルセルロース、アスコルビン酸、および酢酸α−トコフェロールを入れて10分間混合した。ここにステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ユビデカレノンが含有された混合物を製造した。
【0118】
この混合粉体を、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した後、上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0119】
(B)比較製造例5−2:造粒方法でユビデカレノンとビタミン類を区分した単層錠II
【0120】
【表22】

【0121】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと低置換度ヒドロキシメチルセルロースを顆粒化して整粒した後、ここに乳糖、アスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、および酒石酸水素コリンを入れて10分間混合した。ここにステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ユビデカレノンが含有された混合物を製造した。
【0122】
この混合物を、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した後、上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0123】
(C)比較製造例5−3:造粒方法でユビデカレノンとビタミン類を区分した単層錠III
【0124】
【表23】

【0125】
ポビドンを結合液としてユビデカレノンと微結晶セルロースを顆粒化して整粒した後、ここに低置換度ヒドロキシメチルセルロース、アスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、および酒石酸水素コリンを入れて10分間混合した。ここにステアリン酸マグネシウム、タルク、および硬質無水ケイ酸を入れて5分間混合することにより、ユビデカレノンが含有された混合物を製造した。
【0126】
この混合物を、フィーダーを用いて、ダイの下にある下パンチに充填した後、上パンチで圧縮成形し、ダイから錠剤が排出される操作を介して、ユビデカレノン含有単層錠を製造した。
【0127】
4.試験例2:製造例2〜6(本発明)および比較製造例1〜4(従来の技術)の加速安定性試験
製造例2、3、4、5、6で製造された錠剤に対して、対照群としての比較製造例1、2、3、4で製造された錠剤と共に、加速安定性試験を行った。製造された錠剤は、HDPE(High density polyethylene)瓶に包装し、それぞれ40±2℃、75±5%RHの条件で保管して加速試験開始日、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月における含量の変化を測定した。その結果は、加速試験開始日のユビデカレノンの含量を100.0%とした残存率で示した。
【0128】
[表24:ユビデカレノンを含有する錠剤の加速安定性の試験結果]
【0129】
【表24】

【0130】
製造例2〜6の全体成分を単層錠に製造した比較製造例1、2、3、4と比較すると、ユビデカレノンを相互作用のあるビタミン/ミネラル層から分離した製剤としての製造例2、3、4、5、6ではユビデカレノンの安定性が改善されたことが分かる。
【0131】
5.試験例3:造粒方法で分離した単層錠(従来の技術)の加速安定性試験
[表25:ユビデカレノン層の組成物内における加速安定性の試験結果]
【0132】
【表25】

【0133】
比較製造例5−1〜5−3は、ユビデカレノンを賦形剤と造粒によって安定化させたものである。これらは、製造例1−4に比べて安定したが、加速6ヶ月間ユビデカレノンの含量低下が激しく、いずれも造粒をすることなく二層錠に製造した製造例3に比べて安定性が低下するので、単純顆粒化による総合ビタミン剤内のユビデカレノンの安定化は難しいだろうと判断される。
【0134】
III.ビタミン類などとユビデカレノンとの共存時の安定性試験結果および含量との関係
韓国薬典薬師法規集では、ビタミン、ミネラル剤などの医薬品標準製造基準を規定しており、特にこれらの成分による効能、効果を製品に表示することができるためには当該医薬品に含まれた前記成分の含量が一定量以上であることを要求する。よって、本発明者は、ユビデカレノンの安定性を阻害する成分を選択する際に、このような基準を参考とした。すなわち、少量使用の際にはユビデカレノンの安定性低下効果が微々であっても、前記基準を超える一定用量を使用するときにユビデカレノンの安定性を多く低下させる成分を、ユビデカレノンの安定性を阻害する成分として規定した。
【0135】
次に、その詳細は次のとおりである。
【0136】
1.ユビデカレノンとビタミン類/ミネラル類との共存時の安定性試験
まず、ユビデカレノンと、製剤で通常使用されるビタミン類またはミネラル類とを1:1の比率で混合し、加速条件(40±2℃、75±5RH%)で6週間ユビデカレノンの含量変化を測定した。その結果は、加速試験開始日のユビデカレノンの含量を100.0%とした残存率で示し、下記表26のとおりである。
【0137】
[表26:ユビデカレノンとビタミン類との共存時の安定性試験結果]
【0138】
【表26】

【0139】
表26に示すように、各成分がユビデカレノンと単独で混合されているとき、特に酒石酸水素コリン、酢酸α−トコフェロール、乾燥コレカルシフェロール、パルミチン酸レチノールなどがユビデカレノンの安定性を大きく阻害する。
【0140】
2.ユビデカレノンとビタミン類/ミネラル類の常用処方比率による共存時の安定性試験
各ユビデカレノンとビタミン類/ミネラル類を常用処方量および比率で共存させた場合、ユビデカレノンの加速安定性を試験した。その結果は次のとおりである。下記表において、各処方にはユビデカレノン50mgが同一に含まれることに注意すべきである。製造処方欄にはユビデカレノンの処方量の記載を省略した。
【0141】
【表27】

【0142】
表27の製造処方項目の欄に示した数値は、共存するビタミン類などの成分の含量とユビデカレノンの含量(50mgと均一)を示したものである。
【0143】
このように、使用製品に含まれる量を含量とした場合、一部の成分では加速安定性試験においてユビデカレノンの残存率が90%以下と非常に低くなることを確認した。よって、本発明の多層錠製剤の製造の際に、これらの成分をユビデカレノンとは別途の層に含まれるように区分することが必要であることがわかる。
【0144】
3.1日服用量が大きいビタミンCの含量(%)変化によるユビデカレノンの安定性変化試験
1錠当たり10mgのユビデカレノンと50mg、100mg、500mg、1000mg、1500mgの90%アスコルビン酸とを共存させて含有したサンプルを製造し、加速安定性試験を行った。その結果は次のとおりである。
【0145】
【表28】

【0146】
このように、サンプル錠剤内のアスコルビン酸の含量が増加するにつれてユビデカレノンの残存量が顕著に低くなることを確認した。常用ビタミン製剤におけるビタミンCの含量が約500〜5000mgであることを勘案するとき、ビタミンCは、ユビデカレノンの安定性を阻害する成分として区分されるべきであり、本発明の多層錠製剤を製造する際に、ユビデカレノンとは別途の層にのみ存在するようにする必要性があることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、人体に有用なユビデカレノンを含むビタミンとミネラル複合製剤において、特にユビデカレノンの安定性およびこれによる生体利用率を増加させた経口用固形製剤を提供する。本発明では、比較的生産工程が容易な多層錠を製造することにより、有機酸などの安定化剤の添加なしでもユビデカレノンの安定性を増加させることができることを示した。
【0148】
このような効果は、第1層にはユビデカレノンおよびユビデカレノンの安定性を阻害しない薬学的組成物が含有され、その他の層にはユビデカレノンの安定性を阻害するビタミンおよびミネラル類が含有されてそれぞれの成分の接触を最小化することにより、達成することができた。また、防湿コーティングによってユビデカレノンの水分による付加的な分解および酸化を防止するという効果を持つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分としてのユビデカレノンを含む第1層と、
前記ユビデカレノンの安定性を阻害する第2成分としての活性成分を含む第2層とを含んでなる多層錠製剤であり、
前記第2成分は、アスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、コレカルシフェロール、フルスルチアミン、イノシトール、これらの誘導体およびこれらの混合物から選ばれたビタミンを含むことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項2】
25±2℃、60±5%RHで行われる24ヶ月長期保存安定性試験または40±2℃、75±5%RHで行われる6ヶ月加速安定性試験の際に、ユビデカレノンの含量が90%以上に維持されることを特徴とする、請求項1に記載のユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項3】
前記第2成分は、
硫酸亜鉛、硫酸鉄、酒石酸水素コリン、リン酸水素カルシウムおよびこれらの混合物から選ばれるミネラル、
L−システイン、その誘導体およびこれらの混合物から選ばれるアミノ酸、並びに
γ−オリザノール、その誘導体およびこれらの混合物から選ばれる生薬抽出物の中から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項4】
前記第1層および第2層は上層/下層構造または内層/外層構造を持つことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項5】
前記第2層において、前記ビタミンと前記ミネラルを別途の層に区分して含むことにより、全体的に三層錠を成すようにしたことを特徴とする、請求項4に記載のユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項6】
前記多層錠製剤は賦形剤、崩解剤、結合剤、滑沢剤および甘味剤の少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項7】
前記多層錠製剤はさらに防湿コーティングと遮光コーティングの少なくとも一つが加えられたことを特徴とする、請求項1に記載のユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤。
【請求項8】
第1成分としてのユビデカレノンを含有する第1層原料、およびユビデカレノンの安定性を阻害する第2成分としての活性成分を含有する第2層原料のいずれか一つをそれぞれ圧縮成形した後、
生成された圧縮成形物上に他の一つを上層/下層または内層/外層の形で圧縮成形して多層錠剤化する段階を含み、
前記第2成分は、アスコルビン酸、酢酸α−トコフェロール、フルスルチアミン、パルミチン酸レチノール、シアノコバラミン、ニコチン酸アミド、塩酸ピリドキシン、コレカルシフェロール、イノシトール、これらの誘導体およびこれらの混合物から選ばれたビタミンを含むことを特徴とする、ユビデカレノン含有多層錠ビタミン複合製剤の製造方法。


【公表番号】特表2010−533168(P2010−533168A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515978(P2010−515978)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004111
【国際公開番号】WO2009/008683
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(508353891)チュンウェ ファーマ コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】