説明

ユビデカレノン含有自己乳化組成物

【課題】ユビデカレノンを高濃度に含有し、自己乳化する組成物を提供する。
【解決手段】組成物中10質量%以上のユビデカレノン、並びに、該ユビデカレノンの1質量部に対して、メントールを0.2質量部以上、融点が37℃以上の飽和テルペノイド(ただし、メントールを除く。)を0.1質量部以上、HLBが10以上の親水性界面活性剤を0.05質量部以上、及び、炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドを0.05質量部以上含有することを特徴とする自己乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユビデカレノンを高濃度に含有する自己乳化組成物に関し、医薬品、医薬部外品及び食品の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ユビデカレノンはミトコンドリア内膜状の電子伝達系に関与し、ATP産生に重要な役割を担う補酵素であり、うっ血性心疾患治療薬として多数の医療用医薬品に用いられている。また、近年、その抗疲労作用、抗酸化作用が世界中で注目され、食品素材としても広く利用されている。しかしながら、ユビデカレノンは疎水性のため水に対する溶解度が小さく、消化管からの吸収性が悪いことが課題となっている(非特許文献1参照)。
【0003】
ここに、疎水性(脂溶性)薬物の吸収性改善方法の一つとして、自己乳化体を利用する方法が知られており、ユビデカレノンについても脂肪酸に溶解させる方法(特許文献1参照)、脂肪酸モノグリセリドに溶解させる方法(特許文献2参照)、大豆油等の油に分散して小型カプセルに充填する方法(特許文献3参照)、リモネンとポリオキシエチレンソルビタンエステルタイプの乳化剤を添加する方法(特許文献4参照)、プロピレングリコール脂肪酸エステルに溶解させる方法(非特許文献2参照)等が開示されている。しかしながら、これらの方法によるユビデカレノンの溶解度は小さく、ユビデカレノンを高濃度に溶解すること、例えば15質量%以上で溶解することは難しい。そして、溶解していないユビデカレノンは製品としての外観を損ねるばかりでなく、その吸収性も好ましくない。
【0004】
また、ユビデカレノンを高濃度に含有し吸収性を改善する方法としては、ユビデカレノンをカゼインやクエン酸モノグリセリド、及びポリグリセリン脂肪酸エステルで乳化したエマルションを噴霧乾燥する方法が知られている(特許文献5参照)。しかしながら、製造方法が複雑な上に噴霧乾燥装置のような特殊な装置を必要とするため、工業化には不向きである。
【0005】
そこで、特殊な装置を必要とせず、簡便な方法でユビデカレノンを高濃度に含有する自己乳化組成物の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特公昭63−23965号公報
【特許文献2】特公昭64−10494号公報
【特許文献3】特公昭63−51122号公報
【特許文献4】特開2005−60252号公報
【特許文献5】特開2005−43号公報
【非特許文献1】Chem.Pharm.Bull., 20,(12) 2585(1972)
【非特許文献2】T.R. Kommuru, et.al., Int. J. Pharm., 212, 233-246 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特殊な装置を必要とせず、簡便な方法で調製でき、かつユビデカレノンを高濃度に含有する自己乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、融点が何れも37℃以上であるユビデカレノン、メントール及びカンフルを混合することにより混合物の融点が降下し、体温付近の温度(37℃)でユビデカレノンを高濃度に含有する液体が得られ、この液体にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等のHLBが10以上の親水性界面活性剤、及び、モノカプリル酸グリセリル等の炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリルを加えて加熱溶解することにより、簡易に15質量%以上の高濃度のユビデカレノンを含有する自己乳化体が得られることを見出した。
【0009】
かかる知見により得られた本発明の態様の一つは、組成物中10質量%以上のユビデカレノン、並びに、該ユビデカレノンの1質量部に対して、メントールを0.2質量部以上、融点が37℃以上の飽和テルペノイド(ただし、メントールを除く。)を0.1質量部以上、HLBが10以上の親水性界面活性剤を0.05質量部以上、及び、炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドを0.05質量部以上含有することを特徴とする自己乳化組成物である。
【0010】
本発明の他の態様は、組成物中10質量%以上のユビデカレノン、並びに、該ユビデカレノンの1質量部に対して、メントールを0.2質量部以上、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部以上、HLBが10以上の親水性界面活性剤を0.05質量部以上、及び、炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドを0.05質量部以上含有することを特徴とする自己乳化組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、噴霧乾燥装置等の特殊な装置を必要とせず、簡便な方法で調製でき、かつ、ユビデカレノンを高濃度に含有する自己乳化組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
「ユビデカレノン」は、生体内でも合成される補酵素の一種で、コエンザイムQ10、ビタミンQ及びユビキノンとも呼ばれている。水にほとんど溶けず、融点は約48℃である。
【0013】
ユビデカレノンの含有(配合)量は、組成物中10質量%以上である。ユビデカレノンの高濃度自己乳化体を形成させるという本発明の意義からは、ユビデカレノンの含有(配合)量は、組成物中15質量%以上であることが好ましい。また、本発明の自己乳化組成物の安定な乳化状態を維持するという観点からは、ユビデカレノンの含有(配合)量は、組成物中65質量%が上限となる。組成物中65質量%を超えてユビデカレノンを自己乳化させるのは、メントールや融点が37℃以上の飽和テルペノイドの配合量が制限されることにより、困難であるためである。
【0014】
「メントール」にはL体、D体及びDL体のすべてが含まれ、いずれも水に極めて溶け難い。DL体の融点は約27〜28℃、L体の融点は約42〜43℃である。
【0015】
メントールの含有(配合)量は、ユビデカレノンの1質量部に対して0.2質量部以上であり、組成物中のユビデカレノンの含有率を考慮すれば、0.5〜1.0質量部が好ましい。また、メントールの配合量が多すぎると消化管運動を阻害したり、刺激性が強くなるので、その配合量の上限は1.5質量部である。
【0016】
「テルペノイド」は、テルペンとも呼ばれ、本発明においては、融点が37℃以上の飽和テルペノイドが該当する。ただし、メントールは含まれない。具体的には、カンフル(D体、L体、DL体のすべてを含む。融点約175〜180℃)、ボルネオール(D体、L体、DL体のすべてを含む。融点約205〜210℃)などが挙げられる。これらは1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
融点が37℃以上の飽和テルペノイド(ただし、メントールを除く。)の含有(配合)量は、ユビデカレノンの1質量部に対して0.1質量部以上であり、ユビデカレノンの含有率と溶解性のバランスを考慮すると、0.5〜1.0質量部が好ましく、その上限は1.5質量部である。
【0018】
「プロピレングリコール脂肪酸エステル」は、ユビデカレノンの溶解度の点からジ脂肪酸エステルが好ましく、安定性や臭いの点から飽和脂肪酸が好ましい。また、炭素鎖長は8〜10が好ましい。炭素鎖が長いと融点が高くなり、ユビデカレノンの溶解度が低下して好ましくないし、炭素鎖が短いと沸点が低くなり、取り扱いが難しくなるからである。具体的には、ジカプリル酸プロピレングリコール及びジカプリン酸プロピレングリコールが挙げられる。プロピレングリコール脂肪酸エステルは1種を用いるだけでなく、数種を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
プロピレングリコール脂肪酸エステルの含有(配合)量はユビデカレノンの1質量部に対して0.6質量部以上であり、ユビデカレノンの含有率と溶解性のバランスを考慮すると、0.7〜1.0質量部が好ましく、その上限は1.5質量部である。
【0020】
「HLBが10以上の親水性界面活性剤」は、乳化の点から、融点が低く、ユビデカレノンやテルペノイドと相溶性が良いものが好ましく、例えば、分岐した分子構造を有していたり、疎水部に不飽和結合を有しているものが好ましい。HLBが10以上の親水性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80が挙げられる。これらは1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
HLBが10以上の親水性界面活性剤の含有(配合)量はユビデカレノン1重量部に対して0.05重量部以上であり、ユビデカレノンの含有率と乳化性のバランスを考慮すると、0.1〜3.0質量部が好ましい。
【0022】
「炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリド」は、乳化の点から、融点が低く、ユビデカレノンやテルペノイドと相溶性が良いものが好ましくい。具体例としては、カプリル酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド及びラウリル酸モノグリセリドが挙げられる。これらは1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
その含有(配合)量はユビデカレノン1重量部に対して0.05重量部以上であり、ユビデカレノンの含有率と乳化性のバランスを考慮すると、0.1〜3.0質量部が好ましい。
【0024】
本発明の自己乳化組成物は、例えば、所定量のユビデカレノン、メントール、融点が37℃以上の飽和テルペノイドとしてカンフル、HLBが10以上の親水性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドとしてカプリル酸モノグリセリドを混合し、これを50〜60℃に加熱して融解させた後、室温(約25℃)まで冷却して調製することができる。
【0025】
また、本発明のユビデカレノン自己乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の公知の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、防腐剤や抗酸化剤などの安定化剤、糖や香料などの矯味剤が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
実施例1
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ニッコールHCO−60;日光ケミカルズ)0.15g、カプリル酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0028】
実施例2
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.1g、カプリル酸モノグリセリド0.1gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0029】
実施例3
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.05g、カプリル酸モノグリセリド0.15gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0030】
実施例4
ユビデカレノン0.39g、DL−メントール0.18g、DL−カンフル0.18g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.15g、カプリル酸モノグリセリド0.1gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0031】
実施例5
ユビデカレノン0.39g、DL−メントール0.18g、DL−カンフル0.18g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.1g、カプリル酸モノグリセリド0.15gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0032】
実施例6
ユビデカレノン0.39g、DL−メントール0.18g、DL−カンフル0.18g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.05g、カプリル酸モノグリセリド0.2gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0033】
実施例7
ユビデカレノン0.35g、DL−メントール0.18g、DL−カンフル0.18g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.1g、カプリル酸モノグリセリド0.14gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0034】
実施例8
ユビデカレノン0.35g、DL−メントール0.18g、DL−カンフル0.18g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60の0.15g、カプリル酸モノグリセリド0.14gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0035】
実施例9
ユビデカレノン0.39g、L−メントール0.18g、D−カンフル0.18g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.1g、カプリル酸モノグリセリド0.15gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0036】
実施例10
ユビデカレノン0.3g、L−メントール0.18g、ジカプリル酸プロピレングリコール0.26g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.14g、カプリル酸モノグリセリド0.1gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0037】
実施例11
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.15g、カプリン酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0038】
実施例12
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.1g、カプリン酸モノグリセリド0.15gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0039】
実施例13
ユビデカレノン0.42g、DL−メントール0.21g、DL−カンフル0.21g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.11g、カプリン酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0040】
実施例14
ユビデカレノン0.4g、L−メントール0.2g、D−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.15g、カプリン酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0041】
実施例15
ユビデカレノン0.42g、DL−メントール0.21g、DL−カンフル0.21g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.11g、ラウリン酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0042】
実施例16
ユビデカレノン0.35g、DL−メントール0.175g、DL−カンフル0.175g、ポリソルベート80を0.25g、カプリル酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0043】
実施例17
ユビデカレノン0.35g、DL−メントール0.175g、DL−カンフル0.175g、ポリソルベート80を0.2g、カプリル酸モノグリセリド0.1gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0044】
実施例18
ユビデカレノン0.17g、DL−メントール0.165g、DL−カンフル0.165g、ポリソルベート80を0.25g、カプリル酸モノグリセリド0.25gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0045】
実施例19
ユビデカレノン0.167g、DL−メントール0.167g、DL−カンフル0.167g、ポリソルベート80を0.299g、カプリル酸モノグリセリド0.2gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0046】
実施例20
ユビデカレノン0.17g、DL−メントール0.165g、DL−カンフル0.165g、ポリソルベート80を0.4g、カプリル酸モノグリセリド0.1gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0047】
実施例21
ユビデカレノン0.33g、DL−メントール0.16g、DL−カンフル0.16g、ポリソルベート80を0.3g、カプリン酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0048】
実施例22
ユビデカレノン0.38g、DL−メントール0.19g、DL−カンフル0.19g、ポリソルベート80を0.2g、カプリン酸モノグリセリド0.04gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0049】
実施例23
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリソルベート80を0.15g、カプリン酸モノグリセリド0.05gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0050】
実施例24
ユビデカレノン0.39g、L−メントール0.18g、D−カンフル0.18g、ポリソルベート80を0.2g、ラウリン酸モノグリセリド0.1gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0051】
実施例25
ユビデカレノン0.17g、L−メントール0.165g、L−カンフル0.165g、ポリソルベート80を0.3g、カプリル酸モノグリセリド0.2gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、自己乳化体を得た。
【0052】
比較例1
ユビデカレノン0.37g、中鎖脂肪酸トリグリセリド0.38g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.1g、カプリル酸モノグリセリド0.15gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、組成物を得た。
【0053】
比較例2
ユビデカレノン0.4g、DL−メントール0.2g、DL−カンフル0.2g、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を0.2gを混合後、50〜60℃に加温して溶解し、組成物を得た。
【0054】
比較例3(ユビデカレノン結晶粉末懸濁液)
ユビデカレノン結晶粉末0.05gをカルボキシセルロースナトリウム0.5質量%水溶液100mLに加え、これに超音波を1分照射した後、10分振とうして、ビデカレノン結晶粉末懸濁液を得た。
【0055】
試験例1
実施例1〜25で得た自己乳化体並びに比較例1及び2で得た組成物を約0.3gずつ精製水(900mL、37℃)に入れ、日局溶出試験装置(パドル回転数50rpm)で緩やかに2分から最大30分まで攪拌し、その乳化状態を目視した。
【0056】
その結果、実施例1〜17及び実施例21〜25の乳化体は、乳化粒子が速やかに水中に広がり、微細なエマルションを形成した。また、実施例18〜20の乳化体では、透明な溶液を形成した。他方、比較例1の組成物では、一部乳化したが、大部分が水面に残った。さらに、比較例2の組成物では、ほとんど乳化せず、水面に塊状に残った。
【0057】
以上より、一般的なエマルションの基剤である中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いた比較例1及び分子内に少なくとも1つの水酸基を有し、かつ炭素原子数が12以下のモノ脂肪酸グリセリルであるカプリル酸モノグリセリドを除いた比較例2では劣悪な乳化能を示したのに対し、実施例1〜25の本発明にかかるユビデカレノン自己乳化体は、いずれも緩和な攪拌下で微細な粒子に乳化した。
【0058】
試験例2
SD系雄性ラット(11週齢、N=6)を用い、比較例3で調製したビデカレノン結晶粉末懸濁液と実施例19で調製した自己乳化体を乳化させた乳化液を非絶食条件のもと、ユビデカレノンとして5mg/kg経口投与した。投与1時間後にエーテル吸入麻酔し、頚静脈からヘパリン採血した。得られた血液は4℃にて遠心分離を行い、血漿とし、測定に供するまで−80℃にて保存した。血漿中のユビデカレノン濃度は、Kevin D.Williamsらの方法(J.Agric.Food.Chem.、1991、47、3756−3762)に準じて測定した(ただし、移動相はメタノール:イソプロパノール(6:4))。結果を図1に示す。
【0059】
図1より、経口投与1時間後のユビデカレノンの血漿中濃度は、比較例3(懸濁液)が83.3±28.7ng/ml(平均±標準誤差)であったのに対し、実施例19の乳化液は489.5±91.9ng/mlであり、実施例19の乳化液は比較例3に対して、有意に高いユビデカレノンの吸収性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の自己乳化組成物は、ユビデカレノンを高濃度に含有し、体温付近の温度(約37℃)でも溶液化させることができる。従って、体内で微細粒子に乳化するためユビデカレノンの消化管内での吸収が良く、また、ユビデカレノンを高濃度に含有するため小型で服用性の良い製剤(液体カプセル剤など)として提供することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】試験例2におけるユビデカレノン投与1時間後の血漿中のユビデカレノンの濃度(ng/ml)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物中10質量%以上のユビデカレノン、並びに、該ユビデカレノンの1質量部に対して、メントールを0.2質量部以上、融点が37℃以上の飽和テルペノイド(ただし、メントールを除く。)を0.1質量部以上、HLBが10以上の親水性界面活性剤を0.05質量部以上、及び、炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドを0.05質量部以上含有することを特徴とする自己乳化組成物。
【請求項2】
組成物中10質量%以上のユビデカレノン、並びに、該ユビデカレノンの1質量部に対して、メントールを0.2質量部以上、プロピレングリコール脂肪酸エステルを0.6質量部以上、HLBが10以上の親水性界面活性剤を0.05質量部以上、及び、炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドを0.05質量部以上含有することを特徴とする自己乳化組成物。
【請求項3】
融点が37℃以上の飽和テルペノイドがカンフルである請求項1記載の自己乳化組成物。
【請求項4】
プロピレングリコール脂肪酸エステルがジカプリル酸プロピレングリコール及びジカプリン酸プロピレングリコールの少なくとも1種である請求項2記載の自己乳化組成物。
【請求項5】
HLBが10以上の親水性界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60及びポリソルベート80の少なくとも1種である請求項1又は2記載の自己乳化組成物。
【請求項6】
炭素原子数が12以下の脂肪酸のモノグリセリドがカプリル酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド及びラウリル酸モノグリセリドの少なくとも1種である請求項1又は2記載の自己乳化組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−13449(P2008−13449A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183960(P2006−183960)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】