説明

ユーカリ属の種間雑種の樹種識別法

【課題】ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を容易に識別する方法を提供する。
【解決手段】ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別する方法であって、該方法は、該雑種のゲノムDNAを鋳型にしてSNP1〜SNP17の各々を含む領域を増幅する工程、増幅産物を配列決定しSNP1〜SNP17の各塩基を決定する工程、及びSNPと樹種との関係を示す表に基づいて該雑種の親種を特定する工程を含む方法、並びに、このような方法に使用するためのPCRプライマーセットを含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の一塩基多型(SNP;Single Nucleotide Polymorphism)を利用してユーカリ属の種間雑種の樹種を識別するための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーカリ属植物は、東南アジアを中心に植林が行われており、紙の原料として多く使われている。このような植物では、天然交雑に由来する種間交雑個体群のなかに親種に比べて優れた形質を有する場合があることが知られている。例えば、ユーカリ・ペリータとユーカリ・ブラシアーナ間の種間雑種は優れた特性を示すことから、東南アジアで植林へ利用し始めている。雑種集団から優良個体選抜など育種的試みも行われている。すなわち、このような植物では、天然交雑による種子の獲得が可能である。このように、ユーカリ属植物では、優れた特性をもつ種間交雑種を容易に選抜することが望まれている。
【0003】
従来、形態的特徴の比較やアイソザイム分析から雑種の判定を行っているのが一般的である。しかし、形態による判定は、識別者の経験に基づく主観的判断であり、必ずしも正確な判定法ではない。また、アイソザイム分析では、タンパク質を扱うため個体の生育条件や分析時のプロテアーゼによる分解などの不確定要因により、必ずしも正確な判定が可能ではない。近年ではさらに、アカシア属植物などの熱帯早生樹、シバ属植物、果樹などにおいてDNAを用いた雑種の識別法が開発され、その手法として、例えばRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法、AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)法、SSR(Simple Sequence Repeat; Microsatellite)マーカー、ゲノムDNAの種特異的な塩基配列の長さの違い、などによる判定方法が使用されている(特許文献1、2、3、及び非特許文献1)。
【0004】
RAPD法やAFLP法は、操作が簡便で少量のDNAで分析可能であり、雑種の識別の他に個体識別などにも利用されているが、再現性が悪いといった欠点があるため、必ずしも正確で確実な雑種識別法ではない。また、塩基配列の長さの違いによる種別鑑定法は、実用的に雑種を見つけ出すために約1,000個体以上の大量サンプルを対比する必要が生じるため、分析時間や費用の点で実用的ではない。SSRマーカーを使用する方法もまた、ゲノムの全塩基配列が解析されていない植物の場合、多数存在するといわれているゲノムDNAの繰り返し(マイクロサテライト)領域を検出し、他の多くの雑種との対比を行わなければならないため、効率が悪く、多くの労力と費用を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-295925号公報
【特許文献2】特開平10-229898号公報
【特許文献3】特開2008-245572号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】林建樹, 果樹研究所報告4号, 1-11頁, 2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の背景技術に記載されたように、植物の種間雑種または種内雑種を正確にかつ簡単に識別または判別するための手法が非常に少ないことが分かった。ユーカリ属植物についてもこれらの交雑種のなかに成長性、病害性などの特性の点で優良な品種が存在することが認められるため、そのような優良品種を選抜するためにひとつひとつ栽培して各交雑種の特性を調べるやり方では多大の時間と労力を要することは明らかである。
【0008】
実際に、例えば主要樹種であるユーカリ・グロブラス(E. globulus)およびユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)の種間雑種には、両者の利点を兼ね備えた新品種が得られる可能性があるため、形態的には雑種と思われる候補木が遺伝的にも雑種であるかを識別する手法を開発する必要性がある。また、ラオスをはじめとする東南アジア植林地では、外部から導入したユーカリ雑種クローンあるいは将来目標にあげている種間雑種の両親樹種が何であるかを調べる必要性が高まっているし、今後も東南アジアを中心とした国々で様々なクローンあるいは雑種が導入されることが予想され、樹種識別ツールは将来にわたって有用であると予想される。
【0009】
このため、本発明は、ユーカリ属植物の種間雑種を複数のSNPを利用して正確かつ容易に識別する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ユーカリ属由来の多数の樹種のサンプルを種々の産地から集め、全ゲノム中で近縁種間のSNPが存在すると考えられる3領域(NS領域、ETS領域及びCCR領域)を中心に解析して樹種間で差のある17種のSNPを見出し、そして、これらのSNPでユーカリ属9樹種を4〜8グループに分類できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
なお、NS領域とETS領域の8種のSNPを利用する樹種の識別については、この出願と同じ出願人による出願である特願2009-295174号にも記載されている。
【0012】
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
(1) ユーカリ属植物のゲノムDNA中のシンナモイル-CoAリダクターゼ(CCR)をコードする遺伝子領域内の複数の一塩基多型(SNP)に基づいてユーカリ属植物の樹種を識別することを含む、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を識別する方法。
【0013】
(2) 上記ユーカリ属植物のゲノムDNA中のNS(すなわち、18S rDNA)領域及び葉緑体ETS(external transcribed spacer)領域内の複数のSNPに基づいて上記ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を識別することを行い、この識別結果と、上記CCR遺伝子領域のSNPを利用する識別結果とを組み合わせて該ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を決定することをさらに含む、上記(1)に記載の方法。
【0014】
(3) 上記方法が、前記ユーカリ属植物の種間雑種のゲノムDNA中の1又は2以上のSNPを含む領域を、各SNPを挟む該ゲノムDNAの配列に相補的な約20〜約30塩基の配列からなるプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、その増幅産物を配列決定し1又は2以上のSNPの各塩基を決定する工程、並びにSNPの塩基と樹種との関係を示すデータに基づいて該種間雑種の樹種を決定する工程を含む、上記(1)又は(2)に記載の方法。
【0015】
(4) 識別可能なユーカリ属植物の樹種が、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)、ユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、ユーカリ・テレティコルニス(E.tereticornis)、ユーカリ・グランディス(E. grandis)、ユーカリ・サリグナ(E.saligna)、ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、ユーカリ・ペリータ(E. pellita)、及びユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)からなる群から選択される、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
【0016】
(5) 上記NS(すなわち、18S rDNA)領域が、ユーカリ・グランディス(E. grandis)のゲノムDNA配列(配列番号31)の約180000番目の塩基から約181000番目の塩基までの領域に相当する領域であり、上記葉緑体ETS(external transcribed spacer)領域が、該ゲノムDNA配列(配列番号31)の約193500番目の塩基から約194000番目の塩基までの領域に相当する領域であり、及び上記CCR領域が、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)のゲノムDNA配列(配列番号32)に相当する領域である、上記(2)〜(4)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(6) 上記SNPの塩基と樹種との関係を示すデータが、下記の表1(NS及びETS領域を利用する場合)及び表2(CCR領域を利用する場合)に示されるものである、ただし表中のスラッシュ(/)を挟む塩基は、各アレルの塩基を表す、上記(3)に記載の方法。
【表1】

【表2】

【0018】
(7) 上記CCR領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーが、P220(配列番号22)、CCR02(配列番号23)、P223(配列番号26)、CCR001(配列番号24)、P221(配列番号27)、P225(配列番号25)、P219(配列番号28)、及びP217(配列番号29)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される、上記(3)〜(6)のいずれかに記載の方法。
【0019】
(8) 上記NS領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーが、NS2(配列番号2)、NS3(配列番号3)、NS4(配列番号4)、NS6(配列番号6)、NS11(配列番号12)、及びNS13(配列番号14)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される、上記(3)〜(6)のいずれかに記載の方法。
【0020】
(9) 上記ETS領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーが、ETS2(配列番号19)及びETS4(配列番号21)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される、上記(3)〜(6)のいずれかに記載の方法。
【0021】
(10) ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別するためのPCRプライマーセットを含むキットであって、該PCRプライマーセットが、ユーカリ属植物ゲノムのNS領域及びETS領域内のSNP1〜SNP8並びにCCR領域内のSNP9〜SNP17の各々を含む領域を増幅するためのプライマーを含み、該SNP1〜SNP8がそれぞれ、ユーカリ・グランディスのNS及びETS領域のゲノムDNA配列(配列番号30)の180133番目、180769番目、193840番目、193651番目、193650番目、193624番目、193591番目、193545番目に相当する位置に存在し、該SNP9〜SNP17がそれぞれ、ユーカリ・グロブラスのCCR領域のゲノムDNA配列(配列番号31)の989番目、1163番目、1210番目、1223番目、1846番目、1878番目、2312番目、2428番目、2548番目に相当する位置に存在し、該プライマーが、該SNP1〜SNP17の各SNPを挟む該ゲノムDNAの塩基配列、又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列、に相補的な約20〜約30塩基長の配列からなるセンス及びアンチセンスプライマーのセットを含む、上記キット。
【0022】
(11) 上記PCRプライマーセットが、下記の(a)〜(l):
(a) SN領域内のSNP1について、増幅プライマーがNS11(配列番号12)/NS13(配列番号14)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS2(配列番号2)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS6(配列番号6)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(b)SN領域内のSNP2について、増幅プライマーがNS11(配列番号12)/NS13(配列番号14)の組合せ、及び/又はNS3(配列番号3)/NS4(配列番号4)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS6(配列番号6)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;並びに、
(c) ETS領域内のSNP3〜SNP8の各々について、増幅プライマーがETS4(配列番号21)/ETS2(配列番号19)の組合せ、及び/又はETS18S(配列番号16)/ETSMyrtF(配列番号17)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(d)CCR領域内のSNP9について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(e)CCR領域内のSNP10について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(f)CCR領域内のSNP11について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(g)CCR領域内のSNP12について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(h)CCR領域内のSNP13について、増幅プライマーがCCR001(配列番号24)/P219(配列番号28)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(i)CCR領域内のSNP14について、増幅プライマーがCCR001(配列番号24)/P219(配列番号28)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(j)CCR領域内のSNP15について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(k)CCR領域内のSNP16について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;並びに、
(l)CCR領域内のSNP17について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
からなる、上記(10)に記載のキット。
【0023】
(12) ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別するための、SNP1〜SNP8、SNP9〜17と樹種との関係を示す上記(6)に示される表1及び表2の組合せの使用方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を実験室レベルで容易にかつ正確に識別することが可能になり、これにより、各雑種をひとつひとつ栽培してその特性を調べる必要性がなくなった。すなわち、約1,000種以上も存在するといわれるユーカリ属植物の天然交雑種のなかから優良品種を従来法と比べてより効率よく正確に選抜することを本発明の方法が可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この図は、ユーカリ属植物のゲノムDNA上のCCR(cinnamoyl-CoA reductase)配列(例えば、2304bp)中のSNPを含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーの種類と位置、及び2つのプライマーによる増幅産物のサイズを示す。ここで、5'側から順番に表示した、P220, CCR02, P223, CCR001, P221, P225, P219及びP217は、プライマーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(樹種識別法)
ユーカリ属植物は、主にオーストラリア原産であるが、今日では、東南アジア、オーストラリア、南米などの地域に植林されるようになり、世界的に有用な産業造林樹種のひとつであり、特に、紙パルプ、製材、木炭、オイルなどとして利用されている。この植物には、多数の種間交雑種が存在する。種間交雑には、天然交雑、人工交配、その他の交雑が含まれる。天然交雑は、分布域と開花期が重なった場合に起こり、例えばユーカリ・ペリータ×ユーカリ・ブラシアーナ、ユーカリ・グロブラス×ユーカリ・カマルドレンシスなどでこの種の交雑が認められている。人工交配は、優良木同士の人工交配であり、例えばユーカリ・ユーロフィラ×ユーカリ・グランディスなどで雑種育種が試みられている。
【0027】
多数存在する交雑種について、現在の種間雑種の判別法は形態的な指標によるものであり、より早期により確実に判別する方法としてDNAマーカーを利用する方法が求められてきた。
【0028】
このような状況のなかで、本発明は、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数のSNPを利用して識別する方法であって、該雑種のゲノムDNAを鋳型にしてSNP1〜SNP17の各々を含む領域を増幅する工程、増幅産物を配列決定しSNP1〜SNP17の各塩基を決定する工程、並びに表1及び表2に基づいて該雑種の樹種を判定する(又は、該雑種の親種を特定する)工程を含んでなる方法を提供する。
【0029】
本発明の方法によって識別可能な(又はグループ分け可能な)ユーカリ属植物の樹種は、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)、ユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、ユーカリ・テレティコルニス(E. tereticornis、ユーカリ・グランディス(E. grandis)、ユーカリ・サリグナ(E. saligna)、ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、ユーカリ・ペリータ(E. pellita)、及びユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)からなる9種である。
【0030】
本発明によれば、ユーカリ属植物の上記樹種のゲノムDNA中で特定されたSNP1〜17からなる17種のSNPを利用して雑種の樹種又は親種を識別又はグループ分けすることができる。これらのSNPは3領域、すなわちNS領域、ETS領域及びCCR領域に存在しており、具体的には、NS領域に2種のSNP(SNP1及びSNP2と称する。)、ETS領域に6種のSNP(SNP3, SNP4,SNP5, SNP6, SNP7, SNP8と称する。)、CCR領域に9種のSNP(SNP9, SNP10, SNP11, SNP12, SNP13, SNP14, SNP15, SNP16, SNP17と称する。)がそれぞれ存在している。これらのSNPでユーカリ属9樹種を、NS領域及びETS領域の8種のSNPを利用するとき5つのグループに、CCR領域の9種のSNPを利用するとき4つのグループに、そしてこれらの17種のSNPを利用するとき8つのグループに分類できる。
【0031】
すなわち、SNP1〜SNP8を使用するとき、ユーカリ属植物の上記9樹種は以下の5つの群(A群〜E群)にグループ分け可能である。
(A群)ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、
(B群)ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)又はユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、又はユーカリ・テレティコルニス(E.tereticornis)
(C群)ユーカリ・グランディス(E. grandis)、又はユーカリ・サリグナ(E.saligna)
(D群)ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、及び
(E群)ユーカリ・ペリータ(E. pellita)又はユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)。
【0032】
また、SNP9〜SNP17を使用するとき、ユーカリ属植物の上記9樹種は以下の4つの群(a群〜d群)にグループ分け可能である。
(a群)ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、
(b群)ユーカリ・テレティコルニス(E.tereticornis)、
(c群) ユーカリ・サリグナ(E.saligna)、
(d群)ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)、ユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、ユーカリ・グランディス(E. grandis)、ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、ユーカリ・ペリータ(E. pellita)又はユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)。
【0033】
さらにまた、SNP1〜SNP8とSNP9〜SNP17の両方を組み合せて使用するとき、ユーカリ属植物の上記9樹種は以下の8つの群(I群〜VIII群)にグループ分け可能である。
(I群)ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、
(II群)ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)
(III群)ユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、
(IV群)ユーカリ・テレティコルニス(E.tereticornis)、
(V群)ユーカリ・グランディス(E. grandis)、
(VI群)ユーカリ・サリグナ(E.saligna)、
(VII群)ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、及び
(VIII群)ユーカリ・ペリータ(E. pellita)又はユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)。
【0034】
したがって、本発明の方法により上記の17種のSNPを利用することによって、ユーカリ属植物の9樹種のうち7種の樹種を識別することが可能であるし、また、残りの2樹種についても、SNP1, SNP3, SNP5, SNP6, SNP7, SNP8, SNP11, SNP15, SNP17の少なくとも1つによる判定結果に基づいて、場合によっては各樹種の識別が可能になるか、或いはそうでない場合には、その2樹種のいずれかであると判定可能である。
【0035】
上記のSNP1〜SNP8のうち、SNP1とSNP2はユーカリゲノムDNAのNS(すなわち、18S rDNA)領域に存在し、SNP3〜SNP8はユーカリゲノムDNAの葉緑体ETS(external transcribed spacer)領域に存在する。ユーカリゲノム配列(scaffold 522、http://eucalyptusdb.bi.up.ac.za/)に基づくSNP1〜SNP8の位置は次のとおりである。
SNP1: scaffold 522, 180133番目T又はC
SNP2: scaffold 522, 180769番目A又はG
SNP3: scaffold 522, 193840番目A又はG
SNP4: scaffold 522, 193651番目G又はA
SNP5: scaffold 522, 193650番目T又はC
SNP6: scaffold 522, 193624番目G又はC
SNP7: scaffold 522, 193591番目T又はC
SNP8: scaffold 522, 193545番目A又はG
(ここで、scaffold 522は、ユーカリ・グランディスのゲノムDNA断片の番号を表す。)
「http://eucalyptusdb.bi.up.ac.za/」は、Eucspressoが提供するユーカリ遺伝子発現データベース(The Eucalyptus gene expression database)である。
【0036】
また、上記のSNP9〜SNP17は、ユーカリゲノムDNAのCCR(cinnamoyl-CoA reductase)領域に存在する。このCCR領域の配列情報は、例えばユーカリ・グロブラスのCCR遺伝子の塩基配列についてGenBank:AY656821(配列番号31)に記載されている。この塩基配列に基づくと、SNP9〜SNP17は、それぞれ989番目、1163番目、1210番目、1223番目、1846番目、1878番目、2312番目、2428番目、2548番目に位置する。
【0037】
本発明の方法では、まず、樹種が不明のユーカリ属植物の組織(例えば、葉、根、茎など)からゲノムDNAを抽出する。具体的には、組織を粉砕し、フェノール/クロロホルム法、グアニジンイソチオシアネート/酸性フェノール法などのDNA抽出法を用いてDNAを抽出し、エタノールを加え沈殿するDNAを回収する。DNAの抽出は、市販のDNA抽出キットを使用して実施することができる。
【0038】
次に、抽出されたゲノムDNA(検査すべき目的の領域を含むDNA断片でもよい。)を鋳型にしてSNP1〜SNP2、SNP3〜SNP8、SNP9〜SNP17の1又は2以上のSNPの各々を含む領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、その後、各増幅産物に対し配列決定用プライマーを使用してPCRを行って相補鎖DNAを合成し、その塩基配列を決定し、これによってSNP1〜SNP17の1又は2以上、好ましくはすべての各塩基を決定する。
【0039】
上記の9樹種のユーカリ属植物における上記のSNPを含むゲノム領域をPCRによって増幅するためのプライマーセットは、該ユーカリ属植物ゲノムの上記のNS領域及びETS領域内のSNP1〜SNP8並びに上記のCCR領域内のSNP9〜SNP17の各々を含む領域を増幅するためのプライマーを含み、該SNP1〜SNP8がそれぞれ、ユーカリ・グランディスのNS及びETS領域のゲノムDNA配列(配列番号30)の180133番目、180769番目、193840番目、193651番目、193650番目、193624番目、193591番目、193545番目に相当する位置に存在し、該SNP9〜SNP17がそれぞれ、ユーカリ・グロブラスのCCR領域のゲノムDNA配列(配列番号31)の989番目、1163番目、1210番目、1223番目、1846番目、1878番目、2312番目、2428番目、2548番目に相当する位置に存在し、該プライマーが、該SNP1〜SNP17の各SNPを挟む該ゲノムDNAの塩基配列、又は、該塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列、に相補的な約20〜約30塩基長の任意の配列からなるセンス及びアンチセンスプライマーセットを含む。このようなプライマーセットを使用して上記SNPを含む領域を増幅したときの増幅産物のサイズは、少なくとも40〜70塩基長であり、好ましくは少なくとも100塩基長であり、例えば200〜1000塩基長又はそれ以上であってもよい。
【0040】
上記のプライマーの例は以下のとおりである。
上記CCR領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーの例は、P220(配列番号22)、CCR02(配列番号23)、P223(配列番号26)、CCR001(配列番号24)、P221(配列番号27)、P225(配列番号25)、P219(配列番号28)、及びP217(配列番号29)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される。
【0041】
上記NS領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーの例は、NS2(配列番号2)、NS3(配列番号3)、NS4(配列番号4)、NS6(配列番号6)、NS11(配列番号12)、及びNS13(配列番号14)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される。
【0042】
上記ETS領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーは、ETS2(配列番号19)及びETS4(配列番号21))のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される。
【0043】
増幅工程のプライマーの組合せは、SNP1〜SNP8及びSNP9〜SNP17の各塩基を含む領域を増幅するのに適したユーカリゲノム配列由来のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの組合せであり、例えば、下記の(a)〜(l)に示されるプライマーの組み合わせである。
【0044】
(a) SN領域内のSNP1について、増幅プライマーがNS11(配列番号12)/NS13(配列番号14)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS2(配列番号2)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS6(配列番号6)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(b)SN領域内のSNP2について、増幅プライマーがNS11(配列番号12)/NS13(配列番号14)の組合せ、及び/又はNS3(配列番号3)/NS4(配列番号4)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS6(配列番号6)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;並びに、
(c) ETS領域内のSNP3〜SNP8の各々について、増幅プライマーがETS4(配列番号21)/ETS2(配列番号19)の組合せ、及び/又はETS18S(配列番号16)/ETSMyrtF(配列番号17)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(d)CCR領域内のSNP9について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(e)CCR領域内のSNP10について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(f)CCR領域内のSNP11について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(g)CCR領域内のSNP12について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(h)CCR領域内のSNP13について、増幅プライマーがCCR001(配列番号24)/P219(配列番号28)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(i)CCR領域内のSNP14について、増幅プライマーがCCR001(配列番号24)/P219(配列番号28)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(j)CCR領域内のSNP15について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(k)CCR領域内のSNP16について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;並びに、
(l)CCR領域内のSNP17について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい。
【0045】
上記プライマーは、通常、塩基数17〜30、好ましくは20〜30、より好ましくは20〜25のサイズのDNAからなり、また、自然界で植物の突然変異が起こりうることを考慮して、それぞれの上記配列番号の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーを使用することができる。変異は、1、2又は3個の塩基の置換、欠失又は挿入(若しくは、付加)を含む。
【0046】
配列に関する「同一性」は、2つの塩基配列を、最大の一致率となるようにギャップを導入して又はギャップを導入しないで整列(アラインメント)したときに、ギャップを含めての塩基の総数に対する同一塩基数の割合(%)を表す。%同一性は、BLAST、FASTAなどの公知のアルゴリズムを使用して決定することができる(Altschul, S.F. et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990); Altschul, S.F. et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997); McGinnis, S & Madden, T.L., Nucleic Acids Res. 32:W20-W25 (2004)等)。
【0047】
PCRは、変性、アニーリング及び伸長反応を1サイクルとして約20〜40サイクルを繰り返すことによって行うことができる。
【0048】
変性は、二本鎖DNAを加熱によって解離して一本鎖にする、すなわちセンス鎖とアンチセンス鎖に分離する、ステップであり、そのための条件は、例えば約94〜96℃の温度で約10〜60秒間二本鎖DNAを含む溶液を加熱処理することを含む。
【0049】
アニーリングは、センス鎖及びアンチセンス鎖の各鋳型DNAに、それらに対応するプライマー、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマー、を結合するステップであり、そのための条件は、鋳型DNAとプライマーを含む溶液を約50〜65℃で約10〜60秒間加熱処理することを含む。
【0050】
伸長反応は、鋳型DNAにアニーリングしたプライマーを起点にして相補的DNA鎖を合成するステップであり、そのための条件は、耐熱性DNAポリメラーゼ及びdNTPs(NはA,T,G,Cである。)の存在下で、プライマーがアニーリングした鋳型DNAを含む溶液を約60〜80℃で約10〜60秒間加熱処理することを含む。
【0051】
PCRの緩衝液は、dNTPs及びMgCl2を含むPCR用緩衝液であり、伸長反応に際して、このなかにさらに、耐熱性DNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼ(Thermus aquatics由来)やPfuポリメラーゼ(Pyrococcus furiosus由来)など、が添加される。
【0052】
PCRは市販のサーマルサイクラーを使用して実施することによって自動的なDNA増幅が可能になる。サーマルサイクラーは、例えば宝酒造、Applied Biosystems、Bio-Rad Labsなどから市販されている。
【0053】
本発明の方法では、増幅されたDNAを回収、精製し、さらに配列決定のために、精製DNAを鋳型にしてPCRを行い、増幅産物のDNA配列を決定する。
【0054】
DNAの回収、精製のために、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アガロースゲル電気泳動などの電気泳動の使用のほかに、市販のPCR産物精製キット、例えばQIAquick PCR purification kit(QIAGEN)、などを使用すると便利である。
【0055】
また、塩基配列の決定は、ジデオキシ法(Sanger法)を利用した自動DNAシークエンサーを使用する方法などによって行うことができる。
【0056】
Sanger法では、上記のPCR条件(ただし、4種類の基質(dNTPs)のほかに、蛍光標識された特異的競合阻害剤(ddNTPs)を加える。)で鋳型DNAに相補的なDNAを合成するが、この合成の際に基質と阻害剤の間で競合反応が起こり、阻害剤が取り込まれると反応が停止し、生成する相補鎖DNAはその3'末端がいずれもddNTP(N=A,T,G又はC)で停止した種々の長さのDNA断片として得られ、これをゲル電気泳動でサイズ分離し、それを読み取って塩基配列を決定する。読み取りに際しては、レーザー光を励起し、その蛍光を検出するなどの手法を使用できる。
【0057】
(キット及び使用)
本発明はさらに、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別するためのPCRプライマーセットを提供する。該PCRプライマーセットは、NS領域及びETS領域内のSNP1〜SNP8及びCCR領域内のSNP9〜SNP17の各々を含む領域を増幅するための上記のプライマー並びに、必要に応じて、増幅産物を配列決定するためのプライマーを含み、好ましい例として上記の(a)〜(l)のプライマーを含むセットである。
【0058】
本発明はさらに、上記のプライマー、好ましくは上記の(a)〜(l)のプライマーセットを含む、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を識別するためのキットを提供する。キットには、上記プライマーセットのほかに、PCRのために必要な試薬類、例えば、PCRバッファー、耐熱性ポリメラーゼ、dNTPs(N=A,T,G,C)などの試薬、鋳型DNA調製用試薬、例えばゲノムDNA抽出用溶媒、制限酵素などの試薬、並びに使用説明書(手順や操作法を含む。)を含めることができる。
【0059】
上記のようにして決定されたテストサンプルのSNP1〜SNP8及びSNP9〜SNP17の各塩基について、表1及び表2に示されたそれぞれSNP1〜SNP8及びSNP9〜SNP17の各SNP塩基と樹種との関係に基づいて、後述の実施例の樹種の識別例のようにして、検査すべき交雑種の親種の樹種を決定することができる。例えば、テストサンプルのSNP1〜SNP8の塩基がそれぞれT/C, G/G, A/G, G/A, T/C, G/C, C/C, A/Aであれば、そのサンプルの樹種は、E. camaldulensis×E. deglputaであると推定される。また、例えば、ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)とユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)は、SNP1〜SNP8を利用しても識別がむずかしいが、SNP1〜SNP8とSNP9〜SNP17(例えば、SNP15及びSNP17)の組合せを利用することによって、それらの識別が可能になる。
【0060】
したがって、本発明には、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別するための、SNPと樹種との関係を示す表1及び表2の組合せの使用方法も包含される。
【0061】
この表に記載されるSNP/樹種の関係を利用することによって、上記のとおり、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を識別することが可能になる。
【実施例】
【0062】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
【0063】
[実施例1]
(ユーカリ属の樹種間で差のあるSNPの探索(1))
ユーカリ属植物の全ゲノム中で近縁種間のSNPが存在すると考えられる2領域を中心に解析し、それらの領域に含まれる複数のSNPを組み合わせることにより、未知の樹種の識別の信頼性を高めることを目的とする。これらの2領域(すなわち、領域1(NS)及び領域2(ETS))を、E. camaldulensisとE. globulusを例に以下に示す。
【0064】
【化1】

【0065】
ここで、領域1(NS)は、SNP1とSNP2が存在する領域であり、scaffold 522として知られるE. grandisのゲノムDNA配列(配列番号30)の約180000番目の塩基から約181000番目の塩基までの領域に相当する領域であり、領域2(ETS)は、SNP3〜SNP8の各SNPが存在する領域であり、該ゲノムDNA配列の約193500番目の塩基から約194000番目の塩基までの領域に相当する領域である。SNP1〜SNP8のゲノム上の各位置は、雑種によって幾分異なる場合もあると予想されるが、これらの領域は比較的保存性が高いため、当業者であれば、SNP周辺の配列との対比から各SNPの位置を特定することは容易である。
【0066】
材料
発見したSNPが個体間ではなく樹種間で差のあるものであることを確かめるため、それぞれの樹種で大量のサンプルについて調査した。解析に使用したサンプルは、表3に示した。
【0067】
【表3】

【0068】
方法
(ユーカリ属全DNAの抽出)
乾燥したユーカリ属の葉約50ngをジルコニアボールとともにマイクロチューブミキサーで粉砕し、東洋紡Plant genomeを用いてゲノムDNAを抽出した。得られたDNAは滅菌水に溶解した。
【0069】
(標的領域の増幅)
得られたユーカリ属のゲノムDNAを鋳型としてPCR増幅を行った。PCRはゲノムDNA50ng、プライマー(NS0/NS9, ETS4/ETS2)各終濃度0.3μM、KOD-Plus-ver.2(東洋紡) 1Unit、dATP、dTTP、dGTP、dCTP各200μM、MgCl21.5mMを加えた緩衝液50μl中で行った。反応条件はサーマルサイクラー(Dice、宝酒造社製)中で、鋳型DNAを94℃で2分間変性させ、その後、変性:94℃で10秒間、アニーリング:58℃で30秒間、伸長反応:68℃で1分間を1サイクルとして30サイクル繰り返した。
増幅及び配列決定に使用したプライマーは、次の表4及び表5に示したとおりである。
【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
上記の表4及び表5に示したプライマーの塩基配列は、配列番号22〜24のDNAの塩基配列に基づいて設計された。ここで、配列番号22は、Eucalyptus lehmanniiの18S rRNA(DNA)遺伝子の部分配列(登録番号AM235528)を示し、配列番号23は、Eucalyptus camaldulensisのexternal transcribed spacer(ETS)と18S rRNA(DNA)遺伝子の部分配列(登録番号DQ352528)を示し、配列番号24は、Eucalyptus perrinianaの葉緑体external transcribed spacer(ETS)の部分配列(登録番号AM489907)を示す。
【0073】
(PCR産物の精製)
得られたPCR産物をQIAquick PCR purification kit(QIAGEN)を用いて精製した。
【0074】
(配列決定反応)
精製したサンプルを塩基長に応じて10〜20ng、プライマー(NS0/NS2/NS3/NS4/NS5/NS6/NS9、ETS2/ETS4)各終濃度0.16μM、Big Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(ABI)を用いてシークエンス反応を行った。反応条件はサーマルサイクラー(Dice、宝酒造社製)中で、鋳型DNAを96℃で1分間変性させたのち、変性:96℃で10秒間、アニーリング:50℃で5秒間、伸長反応:60℃で1分間を1サイクルとして25サイクル繰り返した。
【0075】
(精製)
得られたサンプルをBig Dye Xterminator(ABI)を用いて精製した。
【0076】
(配列決定)
Genetic Analyzer 3130xl(ABI)を用いて配列決定を行った。解析条件はBDx_FASTseq_POP7_BDv3を用いた。得られたデータは変異検出ソフトSeqScape(ABI)を用いて解析した。
【0077】
結果
それぞれ2領域を解析した結果、樹種間で差のあるSNPが7つ見つかった(上記表1)。これらのSNPでユーカリ属9樹種を5つのグループに分類できる可能性が高い(表6)。
【0078】
上記表1及び表6中、1〜8の数字はそれぞれSNP1〜SNP8を表す。また、例えばA/AGという表記は、A/A又はA/Gを意味する。また、同様に、GA/GAという表記は、G/G、G/A、A/G又はA/Aのいずれかを意味する。なお、領域1及び領域2の括弧内の「NS」は18S rRNA(DNA)領域、「ETS」は葉緑体external transcribed spacerをそれぞれ表す。
【0079】
【表6】

【0080】
SNP1〜SNP8のユーカリゲノム上の位置について、SNP1とSNP2はユーカリゲノムDNAの領域1に、SNP3〜SNP8はユーカリゲノムDNAの領域2にそれぞれ由来し、ユーカリ・グランディスのゲノム配列(http://eucalyptusdb.bi.up.ac.za/)(配列番号30)に基づくSNP1〜SNP8の位置は、上で説明したとおりである。
【0081】
また、SNP1〜SNP8の各塩基をPCRによって特定するために、SNP1〜SNP8を含む領域を増幅するプライマー、及び増幅産物を配列決定するためのプライマーを次のように決定した。
SNP1: NS11/NS13又はNS11/NS2又はNS11/NS6で増幅し、NS11及びNS2を用いて配列決定する。
SNP2: NS11/NS13又はNS3/NS4又はNS11/NS6で増幅し、NS3及びNS4を用いて配列決定する。
SNP3〜SNP8:ETS4/ETS2又はETS18S/ETSMyrtFで増幅し、ETS2/ETS4、あるいは、ETS18S/ETSMyrtFで配列決定する。
【0082】
[実施例2]
(ユーカリ属樹種の識別例)
供試材料
・ユーカリ・カマルドレンシスと考えられるユーカリ(DH2)の葉
・ユーカリ・カマルドレンシス×ユーカリ・デグルプタと考えられるユーカリ(K7)の葉
【0083】
方法
1)DNA抽出:乾燥した葉約20mgをMag - Extractor Plant Genome(TOYOBO)用いて抽出した。
2)PCR:KOD-plus-ver.2(TOYOBO)を用いて対象領域を増幅した。対象領域はNS, ETSの2領域でそれぞれに対応したプライマー(NS11-NS13 もしくは NS11-NS2/ NS3-NS4, ETS4-ETS2)を用いた。PCR条件は変性94℃10sec, アニール60℃30sec, 伸長68℃30-60sec, 30cycleとした。PCR後、マルチスクリーンμ96(Millipore)を用いて精製した。
3)配列決定:Genetic Analyzer 3130xl(ABI)を用いて配列解析を行った。配列決定プライマーはそれぞれSNP1:NS11/NS2, SNP2:NS3/NS4, SNP3-SNP8: ETS4/ETS2を用いた。
【0084】
結果
結果を表7(樹種「unkown DH2」及び「unkown K7」)に示す。
DH2は、ユーカリ・カマルドレンシスである可能性が高いことが確認できた。また、K7は、ユーカリ・カマルドレンシス×ユーカリ・デグルプタの雑種である可能性が高いことが確認できた。
【0085】
【表7】

【0086】
[実施例3]
(ユーカリ属の樹種間で差のあるSNPの探索(2))
この実施例では、実施例1に記載の手法と同様の手法が使用された。
ユーカリ属植物9樹種(ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)、ユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、ユーカリ・テレティコルニス(E.tereticornis)、ユーカリ・グランディス(E. grandis)、ユーカリ・サリグナ(E.saligna)、ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、ユーカリ・ペリータ(E. pellita)、及びユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla))について、それらの核ゲノムDNA中のCCR(Cinnamoyl-CoA Reductase)をコードする遺伝子領域の塩基配列を比較した。その結果、CCR遺伝子領域に9ヶ所のSNPが存在することを見出した。これら9つのSNPのそれぞれを、該遺伝子の5'側からSNP9, SNP10, SNP11, SNP12, SNP13, SNP14, SNP15, SNP16, SNP17と称した。なお、例えばユーカリ・グロブラスのCCR遺伝子領域の配列は、例えばGenBankのデータベースから入手可能であり、AY656821の登録番号が付与されている。この配列(配列番号31)を利用して、配列が不明のユーカリ属植物のCCR遺伝子領域の増幅をPCR法で行い、該遺伝子領域を配列決定した。各樹種、少なくとも3個体以上についてCCR遺伝子領域の配列決定を行い、樹種内で共通している配列を決定した。さらに樹種間で変異があるSNPを決定した。なお、各個体、各樹種の塩基配列の比較はGENETYX Ver.9.0.5(株式会社 ゼネティックス)を用いて行った。
【0087】
上記のSNP9〜SNP17の1又は2つ以上のSNPを含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーは次のとおりである。プライマーの位置関係は図1に示されている。
【0088】
また、増幅用プライマー及び塩基配列(配列番号)は、P220(配列番号22)、CCR02(配列番号23)、CCR001(配列番号24)、P225(配列番号25)、P223(配列番号26)、P221(配列番号27)、P219(配列番号28)、P217(配列番号29)である。
【0089】
これらの配列、及びプライマーの組合せ(フォワード(F)とリバース(R))は、表8に示すとおりである。このような組合せによってSNP9〜SNP17のすべてを増幅することができる。
【0090】
【表8】

【0091】
増幅産物は、配列決定プライマーを用いて配列決定され、各SNPの塩基が特定された。その結果は、表2(上記)に示されたとおりである。SNP9〜SNP17によって、ユーカリ属9樹種を4つのグループに分けることができた(表9)。さらに実施例1で決定されたSNP1〜SNP8と、本実施例で決定されたSNP9〜SNP17とを組合せて雑種の各SNPのアレル塩基を対比することによって、上記9樹種を8つのグループに分けることが可能であった(表9)。
【0092】
【表9】

【0093】
[実施例4]
(雑種の識別例)
(1) E.cam x E.gloの識別例
実施例2と同様に領域1(NS)のSNPと領域2(ETS)のSNPを利用することでグループA(グロブラス)とグループBの雑種であることが判るが、樹種の特定は出来なかった。しかし、実施例3と同様にCCR(この場合、CCR4、5、6、7)のSNPを利用することで、グロブラスとカマルドレンシスの雑種であることが特定できた(表10,11)。
【0094】
(2) E.gra x E.camの識別例
実施例2と同様に領域1のSNPと領域2のSNPを利用することでグループBとグループCの雑種であることが判る。しかし実施例3と同様にCCR(この場合、CCR1、4、5、6、7、8)のSNPを利用することで、グランディスとカマルドレンシスの雑種であることが特定できた(表10,11)。
【0095】
【表10】

【0096】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明により、ユーカリ属植物の種間雑種を正確にかつ容易に識別することが可能になるため、ユーカリ天然交雑種のなかの優良品種の選抜が容易に行えるようになり、林業、紙パルプなどの産業で利用価値が高いと考えられる。
【配列表フリーテキスト】
【0098】
配列番号1〜29:プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ属植物のゲノムDNA中のシンナモイル-CoAリダクターゼ(CCR)をコードする遺伝子領域内の複数の一塩基多型(SNP)に基づいてユーカリ属植物の樹種を識別することを含む、ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を識別する方法。
【請求項2】
前記ユーカリ属植物のゲノムDNA中のNS(すなわち、18S rDNA)領域及び葉緑体ETS(external transcribed spacer)領域内の複数のSNPに基づいて上記ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を識別することを行い、この識別結果と、上記CCR遺伝子領域のSNPを利用する識別結果とを組み合わせて該ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記ユーカリ属植物の種間雑種のゲノムDNA中の1又は2以上のSNPを含む領域を、各SNPを挟む該ゲノムDNAの配列に相補的な約20〜約30塩基の配列からなるプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する工程、その増幅産物を配列決定し1又は2以上のSNPの各塩基を決定する工程、並びにSNPの塩基と樹種との関係を示すデータに基づいて該種間雑種の樹種を決定する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
識別可能なユーカリ属植物の樹種が、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、ユーカリ・カマルドレンシス(E. camaldulensis)、ユーカリ・ブラシアーナ(E. brassiana)、ユーカリ・テレティコルニス(E.tereticornis)、ユーカリ・グランディス(E. grandis)、ユーカリ・サリグナ(E.saligna)、ユーカリ・デグルプタ(E. deglputa)、ユーカリ・ペリータ(E. pellita)、及びユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記NS(すなわち、18S rDNA)領域が、ユーカリ・グランディス(E. grandis)のゲノムDNA配列(配列番号31)の約180000番目の塩基から約181000番目の塩基までの領域に相当する領域であり、上記葉緑体ETS(external transcribed spacer)領域が、該ゲノムDNA配列(配列番号31)の約193500番目の塩基から約194000番目の塩基までの領域に相当する領域であり、及び上記CCR領域が、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)のゲノムDNA配列(配列番号32)に相当する領域である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記SNPの塩基と樹種との関係を示すデータが、下記の表1(NS及びETS領域を利用する場合)及び表2(CCR領域を利用する場合)に示されるものである、ただし表中のスラッシュ(/)を挟む塩基は、各アレルの塩基を表す、請求項3に記載の方法。
【表1】

【表2】

【請求項7】
前記CCR領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーが、P220(配列番号22)、CCR02(配列番号23)、P223(配列番号26)、CCR001(配列番号24)、P221(配列番号27)、P225(配列番号25)、P219(配列番号28)、及びP217(配列番号29)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記NS領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーが、NS2(配列番号2)、NS3(配列番号3)、NS4(配列番号4)、NS6(配列番号6)、NS11(配列番号12)、及びNS13(配列番号14)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ETS領域のSNPの各々を含む領域をPCRによって増幅するためのプライマーが、ETS2(配列番号19)及びETS4(配列番号21)のプライマー、並びに、これらのプライマーの各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーからなる群から選択される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別するためのPCRプライマーセットを含むキットであって、該PCRプライマーセットが、ユーカリ属植物ゲノムのNS領域及びETS領域内のSNP1〜SNP8並びにCCR領域内のSNP9〜SNP17の各々を含む領域を増幅するためのプライマーを含み、該SNP1〜SNP8がそれぞれ、ユーカリ・グランディスのNS及びETS領域のゲノムDNA配列(配列番号30)の180133番目、180769番目、193840番目、193651番目、193650番目、193624番目、193591番目、193545番目に相当する位置に存在し、該SNP9〜SNP17がそれぞれ、ユーカリ・グロブラスのCCR領域のゲノムDNA配列(配列番号31)の989番目、1163番目、1210番目、1223番目、1846番目、1878番目、2312番目、2428番目、2548番目に相当する位置に存在し、該プライマーが、該SNP1〜SNP17の各SNPを挟む該ゲノムDNAの塩基配列、又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列、に相補的な約20〜約30塩基長の配列からなるセンス及びアンチセンスプライマーのセットを含む、上記キット。
【請求項11】
前記PCRプライマーセットが、下記の(a)〜(l):
(a) SN領域内のSNP1について、増幅プライマーがNS11(配列番号12)/NS13(配列番号14)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS2(配列番号2)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS6(配列番号6)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(b)SN領域内のSNP2について、増幅プライマーがNS11(配列番号12)/NS13(配列番号14)の組合せ、及び/又はNS3(配列番号3)/NS4(配列番号4)の組合せ、及び/又はNS11(配列番号12)/NS6(配列番号6)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;並びに、
(c) ETS領域内のSNP3〜SNP8の各々について、増幅プライマーがETS4(配列番号21)/ETS2(配列番号19)の組合せ、及び/又はETS18S(配列番号16)/ETSMyrtF(配列番号17)の組合せであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(d)CCR領域内のSNP9について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(e)CCR領域内のSNP10について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(f)CCR領域内のSNP11について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(g)CCR領域内のSNP12について、増幅プライマーがPP20(配列番号22)/P223(配列番号26)の組み合わせ又はCCR002(配列番号23)/P221(配列番号27)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(h)CCR領域内のSNP13について、増幅プライマーがCCR001(配列番号24)/P219(配列番号28)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(i)CCR領域内のSNP14について、増幅プライマーがCCR001(配列番号24)/P219(配列番号28)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(j)CCR領域内のSNP15について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
(k)CCR領域内のSNP16について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;並びに、
(l)CCR領域内のSNP17について、増幅プライマーがP225(配列番号25)/P217(配列番号29)の組み合わせであり、但し各組合せのプライマーは、独立に、前記配列番号の各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるプライマーであってもよい;
を含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
ユーカリ属植物の種間雑種の樹種を複数の一塩基多型(SNP)を利用して識別するための、SNP1〜SNP8、SNP9〜17と樹種との関係を示す、請求項6に示される表1及び表2の組合せの使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−66(P2013−66A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135402(P2011−135402)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】