説明

ユーザインタフェース装置

【課題】距離画像センサを用いたユーザインタフェース装置において、ディスプレイと距離画像センサの位置のずれによって生じる誤入力を軽減し、入力精度を向上させる。
【解決手段】本発明に係るユーザインタフェース装置は、透明ディスプレイと、前記透明ディスプレイに画像を出力する画像出力手段と、前記透明ディスプレイの背面に設置され、前記透明ディスプレイ越しに距離画像を取得する距離画像センサと、前記距離画像センサによって取得される距離画像を解析してユーザの入力操作を検出する解析手段とを備える。また、透明ディスプレイへの画像出力と、距離画像センサによる距離画像の取得は時分割で交互に行われることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離画像センサを用いたユーザインタフェース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体までの距離を測る距離画像センサ(3次元カメラ、深度センサなどとも呼ばれる)のユーザインタフェース装置への応用が注目を集めている。
【0003】
たとえば、イスラエルの3DV Systems社が開発した技術では、以下のように物体までの距離を計算する。センサデバイスから赤外光のパルスを照射し、物体から反射される反射光を測定する。センサは、180度反転したベクトルで入ってくる反射光によって、センサ位置から見た物体の形状を検知する。さらに、光が戻ってくるまでの飛行時間(Time of Flight)によって、センサから物体までの位置を計算する。
【0004】
図4に、距離画像センサを用いた従来のユーザインタフェース装置の概要を示す。従来のユーザインタフェース装置は、情報処理装置101と、情報処理装置から出力される画像を表示するディスプレイ102と、距離画像センサ103とから構成される。距離画像センサ103はディスプレイ102のそばに設置され、ディスプレイ102正面付近の距離画像を取得する。距離画像センサ103によって取得された距離画像は情報処理装置101へ入力されて、情報処理装置101が距離画像を解析してユーザ104の動作(ジェスチャ)を入力として処理する。
【0005】
ジェスチャ入力には様々な種類が考えられる。距離画像センサは対象物の近づき・遠ざかりを検出するだけでなく、検出された物体形状の重心などをポインタとするポインティングデバイスとして用いることも可能である。したがって、たとえば、ディスプレイ102からの距離が所定値以内の物体(掌など)の重心をカーソル位置として利用することが考えられる。そして、ユーザが掌などをさらにディスプレイ102に近づけることで、クリック入力として利用することも考えられる。さらには、距離画像として得られる物体の形状(掌の形など)や動きなどに基づいて、どのような入力であるか判断してもよい。
【0006】
このように、距離画像センサを用いたユーザインタフェース装置では、キーボードなどを利用することなく、ユーザが画面に対して働きかけることで、情報処理装置への入力を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−266241号公報
【特許文献2】特開2010−015553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ディスプレイ装置の周辺に距離画像センサを設置する場合は、図5に示すように距離センシング用の光パルスの方向と画像の表示方向にずれが生じる。ユーザは、目に見える対象に向かって働きかけようとする傾向がある。画面上に表示されているOKボタンを選択する場合、OKボタンと目を結ぶ線上で手を動かそうとする。このとき、距離センシング用の光パルスの方向がずれているため、情報処理装置は、ユーザの意図しないところをポイントしたと認識することがある。
【0009】
このような問題を考慮して、本発明は、距離画像センサを用いたユーザインタフェース装置の入力精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明ではディスプレイとして透明ディスプレイを採用し、透明ディスプレイの背後から透明ディスプレイ越しに距離画像を取得する。
【0011】
より具体的には、本発明に係るユーザインタフェース装置は、
透明ディスプレイと、
前記透明ディスプレイに画像を出力する画像出力手段と、
前記透明ディスプレイの背面に設置され、前記透明ディスプレイ越しに距離画像を取得する距離画像センサと、
前記距離画像センサによって取得される距離画像を解析してユーザの入力操作を検出する解析手段と、
を備える。
【0012】
このように、距離画像センサを透明ディスプレイの背面に配置することで、ユーザがポイントしようとする向きと距離画像センサの向きとのずれが小さくなるので、入力精度を向上させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記透明ディスプレイへの画像出力と、前記距離画像センサによる距離画像の取得は交互に行われることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、画像表示の影響を受けることなく距離画像の取得が行える。また、画像出力と距離画像取得の切り替えを十分高速に行えば、表示画像品質を損なうことなく距離画像の取得が行える。
【0015】
本発明は、上記手段の少なくとも一部を含むユーザインタフェース装置として捉えることができる。また、これらの処理を行う情報入力方法、さらには、これらの方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、距離画像センサを用いたユーザインタフェース装置において、入力の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るユーザインタフェース装置の概要を示す図である。
【図2】本実施形態に係るユーザインタフェース装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】本実施形態に係るユーザインタフェースの処理を示すフローチャートである。
【図4】従来のユーザインタフェース装置の概要を示す図である。
【図5】従来のユーザインタフェース装置の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係るユーザインタフェース装置の概要を、図1,2を参照して説明する。本実施形態においては、情報処理装置1からの画像出力は、透明ディスプレイ2に表示される。距離画像センサ3は透明ディスプレイ2の背面側に設置され、距離画像の取得は透明ディスプレイ2越しに行われる。
【0019】
情報処理装置1は、CPU,主記憶装置、補助記憶装置、ネットワーク装置などを含むコンピュータである。情報処理装置1は、画像を透明ディスプレイ2に出力する。また、距離画像センサ3を入力装置として利用する。もちろん、距離画像センサに加えて、キーボードやマウス、コントローラ(有線/無線)などを入力装置として備えていてもよい。情報処理装置1は、メモリ上に展開されたプログラムをCPUが実行することで、本明細書において説明する各機能を実現する。
【0020】
透明ディスプレイ2は、透明状態とデジタル画像の表示状態を切り換え可能な表示装置である。透明ディスプレイとしては、たとえば、EL素子を用いたELディスプレイ、液晶ディスプレイ等を用いることができる。本実施形態では、透明有機ELディスプレイを用いている。この有機ELディスプレイは、自発光であり、低電力で高輝度、高コントラスト、高視野角であるため表示画像が見やすく、液晶ディスプレイのようにバックライトを必要としないため薄型化が可能という利点がある。透明ディスプレイ2には、情報処理装置1から出力される画像が表示される。
【0021】
距離画像センサ3は、赤外光などの光パルスを照射し、物体に当たって戻ってくる反射光とその飛行時間を検出することで、物体の形状と距離を計測する。距離画像センサ3が取得した距離画像は、情報処理装置1に入力される。
【0022】
情報処理装置1の画像出力部12は、制御部11によって生成された画像データを透明ディスプレイ2へ出力する。また、距離画像入力部13は、距離画像センサ3から距離画像を取得する。距離画像解析部14は、距離画像を解析して情報処理装置1へ対するユーザの入力操作を検出する。距離画像を介した入力操作に従って、制御部11はプログラムの実行を行う。
【0023】
距離画像センサによる入力は種々の手法が考えられる。たとえば、ある程度近い距離にある物体の重心をポイント位置として認識する。ここで、距離画像に撮影される物体の形状を考慮して、形状に応じて異なる入力がされたものと判断してもよい。また、物体の移動にしたがって入力を判断してもよい。たとえば、物体が近づいた場合を「選択」と判断したり、左右に移動した場合に「ドラッグ」であると判断したりすることができる。本発明において、どのような動作をどのような入力操作として解釈するかは、適宜設計により定めればよい。
【0024】
制御部11は、また、透明ディスプレイ2上での画像表示と、距離画像センサ3による距離画像取得のタイミングを制御して、画像表示のための光と距離画像センサの光パルスを交互に点滅させる。このとき、点滅の時間を人間の目には知覚されない程度に十分短くすることで、表示画像を損なうことなく、かつ、ディスプレイの真裏から距離センシングのための光パルスを照射することができる。
【0025】
図3に、本実施形態に係るユーザインタフェース装置が行う処理のフローチャートを示す。ユーザインタフェース装置は、図3に示す処理を繰り返し実行する。ここでは、透明ディスプレイ2が1秒間に30フレームの画像を表示するものとする。まず、1フレーム分の画像の出力を開始し(S101)、1/60後に画像出力を停止させる(S102)。透明ディスプレイ2に画像表示がされていない状態で、距離画像センサ3から距離計測用の光パルスを発光し距離画像を取得する(S103)。そして、距離画像を解析してユーザからの入力を取得する(S104)。これらの処理を繰り返すことで、画像の表示とユーザからの入力の受付が同時に行える。なお、ここでは距離画像の解析処理(S104)を透明ディスプレイ2に画像を表示していない状態で行うとして説明したが、距離画像の取得が画像非表示状態で行われれば十分であり、距離画像の解析は画像表示中に行って
もよい。
【0026】
なお、距離画像の取得がディスプレイの画像非表示時に行われればよいので、距離画像計測を1フレーム表示のたびにおこなう必要はないし、ディスプレイ表示と距離画像計測の時間を同一とする必要もない。たとえば、透明ディスプレイ2に数フレーム続けて表示した後に、距離画像の取得を1回行うというような動作を採用してもかまわない。
【0027】
上記の説明では、情報処理装置1と透明ディスプレイ2と距離画像センサ3を別体であるとして説明したが、透明ディスプレイ2と距離画像センサ3、または、情報処理装置1と透明ディスプレイ2と距離画像センサ3を一体として構成してもかまわない。
【符号の説明】
【0028】
1 情報処理装置
2 透明ディスプレイ
3 距離画像センサ
11 制御部
12 画像出力部
13 距離画像入力部
14 距離画像解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ディスプレイと、
前記透明ディスプレイに画像を出力する画像出力手段と、
前記透明ディスプレイの背面に設置され、前記透明ディスプレイ越しに距離画像を取得する距離画像センサと、
前記距離画像センサによって取得される距離画像を解析してユーザの入力操作を検出する解析手段と、
を備えるユーザインタフェース装置。
【請求項2】
前記透明ディスプレイへの画像出力と、前記距離画像センサによる距離画像の取得は交互に行われる、
請求項1に記載のユーザインタフェース装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−3585(P2012−3585A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139263(P2010−139263)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】