説明

ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体及びヨウ素包接化物の製造方法

【課題】 シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体−ヨウ素包接化物、ヨウ素包接化物の製造方法を提供する。
【解決手段】 シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体のシクロデキストリン部分にヨウ素が包接された、シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体−ヨウ素包接化物、及びヨウ素包接化物の製造方法。本発明の包接化物は、優れた溶剤可溶性及び熱可塑性、さらに熱安定性を有するため、コーティング等への成形を容易に行うことができ、樹脂中への溶融混練も行うことができる。また、本発明の製造方法は、水やアルコール系溶媒を使用しないため、経済面や環境面の観点で好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体、該包接化物と熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物、該樹脂組成物からなるコーティング材料、フィルム材料、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素は優れた抗菌作用を示すのでヨードホール製剤として利用されているが、これらのヨードホール製剤からヨウ素は徐々に揮散して抗菌効果が低下するため、長期に渡る使用には適さない。また、ヨウ素の揮散は独特の臭気の発生やヨウ素の酸化力により周囲が腐蝕されるため、ヨウ素の揮散の抑制が強く求められてきた。
【0003】
ヨウ素の揮散を抑制する方法として、ヨウ素をβ−シクロデキストリンに包接させて得られたβ−シクロデキストリン−ヨウ素包接化物(以下βCD−Iと記す)を樹脂に添加することによって、抗菌性を有するインナーソールやスリッパなどの衣料品、あるいは天井材や壁紙などの建築材料などとして利用する試みがある(特許文献1)。しかし、前記βCD−Iはほとんどの有機溶剤には不溶でまた、加熱により溶融しないため樹脂とβCD−Iを均一に混合することは困難である。また、樹脂が溶融するような温度条件では、β−シクロデキストリンの包接によるヨウ素の安定化が十分でなく、相当量のヨウ素が揮散されるため、臭気や混練機の腐蝕等を考慮すると、溶融混練によって樹脂とβCD−Iを混合することには問題が多い。
【0004】
これまで、シクロデキストリンにヨウ素を包接させる方法としては、ヨウ素溶解助剤を含む水溶液にヨウ素を溶解し、そこにβ−シクロデキストリンを添加してβCD−Iを沈殿として析出させる方法(特許文献2)や、ヨウ素溶解助剤を含む多価アルコール溶液にヨウ素を溶解し、β−シクロデキストリンを添加してβCD−I溶液を得る方法(特許文献3)などが開示されている。しかし、得られた包接化物を樹脂に混合する場合や固体状態で使用する場合には、使用した水やアルコール系溶媒などを除去する必要があり、経済面及び環境面で好ましい方法ではなかった。
【特許文献1】特許第3738306号
【特許文献2】特開2002−193719
【特許文献3】特開2005−306764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来技術の実情と問題点に鑑みて、本発明の目的は、有機溶剤への優れた溶解性を有し、熱安定性に優れたヨウ素包接化物、熱可塑性樹脂との樹脂組成物、コーティング材料、フィルム材料及びそれらのヨウ素包接化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、シクロデキストリンまたはその誘導体が結合したポリエステル系重合体とヨウ素の包接化物が優れた溶剤可溶性及び熱可塑性、さらに熱安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、シクロデキストリン又はその誘導体が結合したポリエステル系重合体のシクロデキストリン又はその誘導体部分にヨウ素が包接されてなることを特徴とする、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項1)。
【0007】
シクロデキストリン又はその誘導体がポリエステル系重合体の末端に結合していることを特徴とする請求項1に記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項2)。
【0008】
シクロデキストリンが、α―シクロデキストリン、β―シクロデキストリン、γ―シクロデキストリン、あるいはこれらの混合物である請求項1〜2いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項3)。
【0009】
ポリエステル系重合体が、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、これらの各成分の共重合体、あるいはこれらの混合物である請求項1〜3いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項4)。
【0010】
ポリエステル系重合体が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ乳酸繰り返し単位とポリグリコール酸繰り返し単位からなるポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)繰り返し単位とポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)繰り返し単位からなるポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]、あるいはこれらの混合物である請求項4に記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項5)。
【0011】
シクロデキストリンまたはその誘導体が結合したポリエステル系重合体が、水酸基の一部が脱プロトン化されているシクロデキストリンまたはその誘導体をポリエステル系重合体に反応させることを特徴とする製造方法により得られる、請求項1〜5いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項6)。
【0012】
シクロデキストリンまたはその誘導体が結合したポリエステル系重合体が、シクロデキストリンまたはその誘導体を開始点として環状エステル系化合物を重合させることを特徴とする製造方法により得られる、請求項1〜5いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体(請求項7)。
【0013】
請求項1〜7いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなることを特徴とするヨウ素包接ポリエステル系接樹脂組成物(請求項8)。
【0014】
請求項1〜8いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体あるいはヨウ素包接ポリエステル系樹脂組成物からなるヨウ素包接コーティング材料(請求項9)。
【0015】
請求項8に記載のヨウ素包ポリエステル系樹脂組成物からなるヨウ素包接フィルム材料(請求項10)。
【0016】
シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物を、水およびアルコール系溶媒の非存在下において、ヨウ素とともに混合することを特徴とする、ヨウ素包接化物の製造方法(請求項11)。
【0017】
シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物を、水およびアルコール系溶媒の非存在下において、ヨウ素と、さらにハロゲン化物とともに混合することを特徴とする請求項11に記載のヨウ素包接化物の製造方法(請求項12)。
【0018】
ハロゲン化物が、水素原子またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とハロゲン原子とのハロゲン化物である、請求項12に記載のヨウ素包接化物の製造方法(請求項13)。
【0019】
ハロゲン原子が、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項13に記載のヨウ素包接化物の製造方法(請求項14)。
【0020】
ハロゲン化物が、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムである、請求項14に記載のヨウ素包接化物の製造方法(請求項15)。
シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体を用いることを特徴とする請求項11〜15いずれかに記載のヨウ素包接化物の製造方法 (請求項16)。
【0021】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなることを特徴とするヨウ素包接樹脂組成物の製造方法(請求項17)。
【0022】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物からなるコーティング材料の製造方法(請求項18)。
【0023】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物からなるフィルム材料の製造方法(請求項19)。
【0024】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなることを特徴とするヨウ素包接樹脂組成物からなるフィルム材料の製造方法(請求項20)である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体は、優れた溶剤可溶性・熱可塑性を有するため、コーティング材料、フィルム材料等として用いることができる。また、本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体は熱安定性に優れるために、樹脂との溶融混練を容易に行うことができ、均一な組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[ポリエステル系重合体]
本発明に用いるシクロデキストリン又はその誘導体が結合したポリエステル系重合体としては、ポリエステル系重合体の重合単位中にシクロデキストリン又はその誘導体が複数個共重合したもの、あるいはシクロデキストリン又はその誘導体がポリエステル系重合体の末端に結合したものでありうる。シクロデキストリン又はその誘導体がポリエステル系重合体の末端に結合したものは、製造の容易さや物性バランス等の観点から好ましい。
【0027】
本発明のシクロデキストリン又はその誘導体が末端に結合したポリエステル系重合体、の「末端に結合した」とはシクロデキストリン又はその誘導体の水酸基あるいは置換基とポリエステル系重合体の重合端が直接あるいは各種スペーサーを介して化学的に結合していることを意味している。本発明のシクロデキストリン又はその誘導体が末端に結合したポリエステル系重合体としては、直鎖状ポリエステル系重合体の片末端にシクロデキストリン又はその誘導体が結合したもの又は両末端に結合したもの、分岐状ポリエステル系重合体のいくつかの末端にシクロデキストリン又はその誘導体が結合したもの、あるいは1つのシクロデキストリン又はその誘導体に複数のポリエステル系重合体末端が結合したものなど、を含む。
【0028】
本発明のポリエステル系重合体は特に限定されるものではないが、製造の容易さ等の観点から脂肪族ポリエステルが好ましい。
【0029】
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリプロピオラクトン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトンなどのポリラクトン類;ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)などのポリ(ヒドロキシアルカノエート)類;ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールを主たる構成成分とする脂肪族ポリエステル類などが挙げられ、これらの各成分を共重合したものでも良い。
【0030】
これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、これらの各成分の共重合体、あるいはこれらの混合物であることが好ましい。
【0031】
さらに好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ乳酸繰り返し単位とポリグリコール酸繰り返し単位からなるポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)繰り返し単位とポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)繰り返し単位からなるポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]、あるいはこれらの混合物である。
【0032】
本発明のシクロデキストリン含有ポリエステル系重合体の分子量は特に限定されるものではないが、分子量の好ましい範囲を敢えて例示するとすれば、数平均分子量1,500〜100,000であり、より好ましくは2,000〜50,000である。
ポリエステル系重合体の製造方法としては、特に制限はなく、製造の容易さ、コスト、得られるシクロデキストリン含有ポリエステル系重合体の構造、などの観点から適宜選択されるものである。
【0033】
例えば、水酸基の一部が脱プロトン化されているシクロデキストリンまたはその誘導体をポリエステル系重合体に反応させることを特徴とするシクロデキストリン含有ポリエステル系重合体の製造方法を用いると製造の容易さ、コストなどの観点から好ましい。
また、シクロデキストリンまたはその誘導体を開始点として環状エステル化合物(例えば、ラクトン類、ラクチドなど)を重合させる方法を用いることもできる。
【0034】
[シクロデキストリンまたはその誘導体]
本発明で使用されるシクロデキストリン又はその誘導体としては、特に限定されないが、シクロデキストリンとしては例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンを挙げることができる。又シクロデキストリンの誘導体としては例えば、シクロデキストリンの水酸基のうち一部の水素原子が直鎖又は分岐のアルキル基、直鎖又は分岐のアルケニル基、直鎖又は分岐のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、アシル基、グリコシル基、マルトシル基、イミダゾリル基などで置換された化合物、分岐シクロデキストリン、シクロデキストリンの2量体あるいは多量体、などを挙げることができる。またグルコース単位が5以下又は9以上のシクロデキストリン類縁体も同様に使用可能である。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0035】
例えば、広く市販されているα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、モノアセチル−β−シクロデキストリン、トリアセチル−β−シクロデキストリン、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる。
これらの中でもα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、あるいはこれらの混合物がコストなどの観点から好ましく、この中でもβ−シクロデキストリンが特に好ましく使用される。
【0036】
[ヨウ素の包接]
本発明において包接されるヨウ素はシクロデキストリン部分に包接されるが、シクロデキストリン部分に包接されるヨウ素の含有量は特に限定されるものではなく、使用する用途によって適宜選択することができる。例えば、必ずしもシクロデキストリン含有ポリエステル系重合体中の全てのシクロデキストリン部分にヨウ素が包接されている必要はなく、ヨウ素が包接されていないシクロデキストリン部分が存在しても構わない。
【0037】
本発明におけるヨウ素包接方法は、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物を、水およびアルコール系溶媒の非存在下において、ヨウ素とともに混合することにより、シクロデキストリンあるいはその誘導体にヨウ素を包接させることが可能である。
【0038】
水およびアルコール系溶媒を用いないことでヨウ素包接化物を得てから、水およびアルコール系溶媒を除去することなく、そのまま使用することができる点で有利である。もちろん、必要に応じて精製操作をすることも可能である。また、水及びアルコール系溶媒以外の溶媒の存在下で混合することも可能であるが、無溶媒下で行うことが好ましい。ヨウ素との混合はシクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物とヨウ素を単に混合すればよいが、その際、ヨウ素とは後述する物理的あるいは機械的に混合することで目的物を得ることができるので好ましい。
【0039】
本発明の製造方法におけるシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体と、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物とヨウ素の組成は特に限定はされないが、シクロデキストリン部分のモル量に対して、大過剰のモル量のヨウ素を用いた場合には未包接のヨウ素が大量に存在することになるため、包接効率の面や、得られた物の用途によっては必ずしも好ましくない場合がある。
【0040】
従って、シクロデキストリン部分1モルに対して、ヨウ素を0.01モル〜2モル用いるのが好ましく、さらには0.1モル〜1.5モル、特には0.2モル〜1.2モルが好ましい。用いるヨウ素の下限量については、用いる用途のヨウ素の必要量により適宜選択すればよいが、最大量の包接を目的とする場合はシクロデキストリン部分1モルに対して0.9〜1.4モルが好ましく、さらには0.95〜1.2モル用いることが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法では混合の際、機械的あるいは物理的な方法でヨウ素と強制的に接触を多くすることが好ましいが、その他成分を必ずしも必要としないが、さらにハロゲン化物を使用すると、包接化効率が向上するため好ましい。
【0042】
ハロゲン化物としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウムなどが挙げられる。これらのうち、ヨウ素との親和性や安全性の観点から、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムを使用するのが好ましい。
【0043】
上記ハロゲン化物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用可能であるが、好ましくは単独で使用される。特に好ましくはヨウ化カリウムが使用される。
使用できるハロゲン化物の量については特に制限はないが、あえて好ましい範囲を言及するとすれば、ヨウ素の0.1〜10モル倍、より好ましくは0.5〜5.0モル倍である。
【0044】
本発明では機械的あるいは物理的な混合方法を用いてヨウ素と混合することが出来る。その混合方法については特に限定はされず、通常の混合方法を使用すればよい。例を挙げると、ロール、プレス、押出機、ミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、撹拌機などを使用することができる。少量の場合には、乳鉢中で混合することも可能である。混合温度・混合時間についても特に制限はなく、所望の包接化物が得られるように調整すればよいが、好ましい混合温度・時間にあえて言及すれば、混合温度としては−20℃〜120℃、さらには0℃〜100℃、特には5℃〜80℃が好ましい。混合時間については1秒〜2時間、さらには10秒〜1時間、特には20秒〜30分が好ましい。混合は大気圧条件下あるいは加圧条件下で実施することができる。
【0045】
[熱可塑性樹脂]
また、本発明ではヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなる組成物とすることも可能である。その場合、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体と熱可塑性樹脂の比率は上記範囲内であれば良く、得られる組成物の強度や各種物性、あるいはシクロデキストリン含有量、ヨウ素含有量などの観点から最適な組成比を選択することができる。あえて好ましい範囲を言及すれば、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体が80〜0.5重量%、熱可塑性樹脂が20〜99.5重量%が好ましく、特にはヨウ素包接化物が40〜5重量%、熱可塑性樹脂が60〜95重量%が好ましい。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂との組成物を製造する方法としては、特に限定はなく、両成分が混合できる通常の方法を用いればよい。例えば、ヨウ素を包接したシクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体と熱可塑性樹脂とをロール、プレス、押出機、ミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、撹拌機などを用いて混合する方法、両成分を溶媒などに溶解して混合する方法、などを例示することができる。
【0047】
本発明で使用される熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリシクロオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体などのエチレン系共重合樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレンなどの塩素系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートなどのポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、スチレン・メチルメタクリレート共重合体などのスチレン系樹脂;スチレン系熱可塑性エラストマー類;ポリウレタン類;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル類;ポリアミド類;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンエーテル;ポリサルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン類;液晶性ポリマー;熱可塑性ポリイミド;ポリシロキサン系ポリマー類;フッ素含有重合体類;セルロース類、デンプン類、キチン、キトサンなどの多糖類に熱可塑性を付与したもの;ポリフェノール類などを挙げることができ、これらの各成分を共重合体したものでも良い。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
[コーティング材料]
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体及びまたは熱可塑性樹脂との組成物はコーティング材料として使用することができる。
ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなる組成物とすることも可能である。その場合、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体と熱可塑性樹脂の比率は上記範囲内であれば良く、得られる組成物の強度や各種物性、あるいはシクロデキストリン含有量、ヨウ素含有量などの観点から最適な組成比を選択することができる。
【0049】
あえて好ましい範囲を言及すれば、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体が80〜0.5重量%、熱可塑性樹脂が20〜99.5重量%が好ましく、特にはヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体が40〜5重量%、熱可塑性樹脂が60〜95重量%が好ましい。
【0050】
本発明のコーティング材料によりコートされる基材は、特に限定するものではないが、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、他のビニルポリマー、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステルおよびポリアクリレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリビニルアセタール、ラテックスゴム又は他のゴムのような天然又は合成エラストマー、シリコーンなどの重合体又はこれらの共重合体、金属、ガラス、セラミックス、又はこれらの複合体などが挙げられる。また、フッ素樹脂にも用いることができる。中でもコーティングの際の温度や圧力によって悪影響を受けないような基材が特に好ましい。溶剤を用いてコーティングを行う場合には、溶剤によって悪影響を受けないような基材が好ましい。
【0051】
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体及び熱可塑性樹脂からなる組成物は、溶剤可溶性及び熱可塑性を有するため、溶剤に溶解させる方法、または熱溶融させる方法のどちらによっても基材にコートすることができる。
【0052】
本発明のコーティング材料をコートする方法は特に限定されるものではなく、バーコート、ダイコート、カーテンフローコート、ロールコート、グラビアコート、マルチコート、コンマコート、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、刷毛塗り等の通常のコーティング方法を用いることができる。これによって得られたコーティング被膜の膜厚は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1μm〜2000μm、更に好ましくは0.5μm〜200μmである。
【0053】
[フィルム材料]
また、本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体あるいはヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体と熱可塑性樹脂とからなる組成物は、フィルム材料として好適に使用することができる。
【0054】
ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体と熱可塑性樹脂とからなる組成物は、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなる組成物とすることも可能である。その場合、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体と熱可塑性樹脂の比率は上記範囲内であれば良く、得られる組成物の強度や各種物性、あるいはシクロデキストリン含有量、ヨウ素含有量などの観点から最適な組成比を選択することができる。あえて好ましい範囲を言及すれば、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体が80〜0.5重量%、熱可塑性樹脂が20〜99.5重量%が好ましく、特にはヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体が40〜5重量%、熱可塑性樹脂が60〜95重量%が好ましい。
【0055】
本発明のフィルム材料の製造方法は特に限定はされず、公知の方法により得ることができる。例えば、溶媒などに溶解してキャストする方法、スピンコートする方法、熱プレスあるいはロールによる方法、溶融押出法、インフレーション法、などを挙げることができる。これによって得られたフィルムの膜厚は特に限定されるものではないが、好ましくは1μm〜2000μm、更に好ましくは10μm〜200μmである。
【0056】
[その他]
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体及び熱可塑性樹脂からなる組成物は、他の有機材料や無機材料とともに用いることができる。上記他の有機材料又は無機材料としては、例えば、各種熱硬化性樹脂、可塑剤、滑剤、核剤、難燃剤、薬効作用を有する薬剤、光学機能を有する有機又は無機化合物、染料、顔料、金属や半導体微粒子、有機又は無機フィラー、充填剤、安定剤、発泡剤、発泡助剤、無機塩等を挙げることができる。
【0057】
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体、該包接化物と熱可塑性樹脂の組成物は、ヨウ素がシクロデキストリンに包接化されているために、ヨウ素が長期的に徐放され、持続的な抗菌活性を示す。抗菌性だけに限らず、ヨウ素自体が有する消臭性・防カビ性・防腐性等も示すため、幅広い用途で使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例で更に詳しく説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
(合成例1)
ガラス製容器にβ−シクロデキストリン2.0g(1.8mmol)、水酸化リチウム41mg(1.7mmol)を入れ、ジメチルホルムアミド60mLを加えて、100℃で60分加熱した。この溶液を、ポリカプロラクトン(Aldrich社製、数平均分子量(ポリスチレン換算)Mn138,000)8gを含むジメチルホルムアミド溶液60mLに加えて、100℃で2時間加熱した。得られた溶液を室温まで放冷した後、少量の酢酸を添加し、反応溶液を水に投入して固体を析出させた。固体を濾過・乾燥させて、白色固体9gを得た。1H−NMRスペクトル測定を行い、シクロデキストリンが結合したポリカプロラクトン(CDPCL)の生成を確認した。得られたポリマーの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、数平均分子量が10,600であった。また、シクロデキストリン含有量は約24重量%であった。
【0060】
(合成例2)
ガラス製容器にβ−シクロデキストリン4.1g(3.6mmol)、水酸化リチウム85mg(3.6mmol)を入れ、ジメチルホルムアミド60mLを加えて、100℃で60分加熱した。この溶液を、ポリ乳酸(三井化学株式会社製レイシアH400)12gを含むジメチルホルムアミド溶液150mLに加えて、100℃で1時間加熱した。得られた溶液を室温まで放冷した後、少量の酢酸を添加し、反応溶液を水に投入して固体を析出させた。固体を濾過・乾燥させて、白色固体12gCDPLA)を得た。得られたポリマーの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、数平均分子量が4,800であった。また、シクロデキストリン含有量は約25重量%であった。1H−NMRスペクトル測定を行い、シクロデキストリンが結合したポリ乳酸(CDPLA)を得た。得られたポリマーの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、数平均分子量が4,8000であった。また、シクロデキストリン含有量は約25重量%であった。
【0061】
(実施例1)
上記合成例1で得たCDPCL1.5g、ヨウ素81mg(0.3mmol)、ヨウ化カリウム53mg(0.3mmol)を乳鉢に入れ、25℃で約10分間混合することにより、褐色のヨウ素包接CDPCL(CDPCL−I)を得た。包接処理により重量は5%増加していた。このCDPCL−Iをガラス製密封容器に室温で24時間放置してもガラス壁面にはヨウ素が付着していなかったことから、CDPCLへのヨウ素の包接を確認した。合成したCDPCL−Iは、塩化メチレンやアセトンに可溶であり、45℃で融解した。
【0062】
得たCDPCL−Iの熱重量分析(TGA)を行い、熱安定性を評価した。窒素雰囲気下において100℃及び150℃でそれぞれ20分間保持した場合のヨウ素残存量を表1に示す。なお、ヨウ素残存量(%)は、(加熱による減量/包接処理により増加した重量)×100の計算式により計算した。
【0063】
(実施例2)
上記合成例2で得たCDPLA1.5g、ヨウ素80mg(0.3mmol)、ヨウ化カリウム53mg(0.3mmol)を乳鉢に入れ、25℃で約10分間混合することにより、褐色のヨウ素包接CDPLA(CDPLA−I)を得た。重量は5%増加していた。実施例1と同様にガラス容器中で放置した結果、このCDPLA−Iからはヨウ素の昇華は認められず、CDPLAへのヨウ素の包接を確認した。合成したCDPLA−Iは、塩化メチレンやアセトンに可溶であり、106℃で融解した。
【0064】
実施例1、2に示したように、本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体は溶剤可溶性であり、また熱可塑性を示した。
【0065】
(比較例1)
ヨウ素包接シクロデキストリン(βCD−I)、(日宝化学製、商品名「BCDI−20」(ヨウ素量20%))0.11gとポリカプロラクトン(Aldrich製、数平均分子量(ポリスチレン換算)Mn23,000)0.33gを乳鉢に入れ25℃で約10分間混合した。このサンプルを実施例1と同様にしてTGA測定を行い、熱安定性を評価した。その結果を表1に示した。
【0066】
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体は、比較例1のβCD−Iと比べると、一定温度保持後のヨウ素残存量が高く、ヨウ素を保持する特性に優れていることがわかった。(表1参照)
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例3)
上記実施例1で得たCDPCL−I0.2gをガラス製容器に入れ、塩化メチレン2mLに溶解させた。この溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材上、ガラス基材上、ステンレス上基材上にそれぞれ塗布した。塩化メチレンを乾燥後、基材上に膜厚60〜80μmの均一なコーティング皮膜が形成された。
【0069】
(比較例2)
トリアセチル−β−シクロデキストリン(東京化成製)0.3g(0.2mmol)、ヨウ素39mg(0.2mmol)、ヨウ化カリウム25mg(0.2mmol)を乳鉢に入れ、25℃で約10分間混合することにより、褐色のヨウ素包接トリアセチル−β−シクロデキストリン(TACD−I)を得た。このTACD−I0.5gをガラス製容器に入れ、塩化メチレン2mLに溶解させた。この溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材上、ガラス基材上、ステンレス基材上にそれぞれ塗布した。塩化メチレンを乾燥後、基材上にはTACD−Iの膜が形成されたが、不均一であり、基材との密着性も悪く、コーティング膜は一部剥がれ落ちてしまった。
【0070】
(実施例4)
上記実施例1で得たCDPCL−I0.8g、ポリカプロラクトン(Aldrich製、数平均分子量(ポリスチレン換算)Mn138,000)1.9gをガラス製容器に入れ、塩化メチレン12.5mLに溶解させた。これをPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布した。塩化メチレンを十分に乾燥させた後、PETフィルムから引き剥がし、膜厚約65ミクロンのキャストフィルムを作成した。このフィルム中でCDPCL−Iは均一に分散していることを目視で確認した。また、このフィルムは十分な強度を有していた。
【0071】
(実施例5)
上記実施例1で得たCDPCL−I67mg、ポリ塩化ビニル(カネカ製カネビニールS1007)0.60gを、ガラス製容器に入れ、テトラヒドロフラン4mLに溶解させた。これをPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布した。テトラヒドロフランを十分に乾燥させた後、PETフィルムから引き剥がし、膜厚約41ミクロンのキャストフィルムを作成した。このフィルム中でCDPCL−Iは均一に分散していることを目視で確認した。また、このフィルムは十分な強度を有していた。
【0072】
(実施例6)
上記実施例1で得たCDPCL−I0.21g、ポリカプロラクトン(Aldrich製、数平均分子量(ポリスチレン換算)Mn138,000)1.81gをガラス製容器に入れ、100℃に加熱して溶融混練した。混練物中でCDPCL−Iは均一に分散していることを目視で確認した。この混練物をフッ素樹脂シートに挟んでプレスし、冷却後、フッ素樹脂シートから引き剥がして、膜厚約160ミクロンのフィルムを作成した。このフィルム中でCDPCL−Iが均一に分散していることを目視で確認した。また、このフィルムは十分な強度を有していた。
【0073】
(比較例3)
ヨウ素包接シクロデキストリン(βCD−I)58mg、ポリカプロラクトン(Aldrich製、数平均分子量(ポリスチレン換算)Mn138,000)2.1gをガラス製容器に入れ、100℃に加熱して溶融混練した。この混練物をフッ素樹脂シートに挟んでプレスし、冷却後、フッ素樹脂シートから引き剥がして、膜厚約110ミクロンのフィルムを作成した。このフィルム中ではβCD−Iの粒が目視で確認され、分散は不均一であった。
【0074】
(比較例4)
トリアセチル−β−シクロデキストリン(東京化成製)0.3g(0.2mmol)、ヨウ素39mg(0.2mmol)、ヨウ化カリウム25mg(0.2mmol)を乳鉢に入れ、25℃で約10分間混合することにより、褐色のヨウ素包接トリアセチル−β−シクロデキストリン(TACD−I)を得た。このTACD−I76mg、ポリカプロラクトン(Aldrich製、数平均分子量(ポリスチレン換算)Mn138,000)1.4gをガラス製容器に入れ、100℃に加熱して溶融混練した。この混練物をフッ素樹脂シートに挟んでプレスし、冷却後、フッ素樹脂シートから引き剥がして、膜厚約160ミクロンのフィルムを作成した。このフィルム中ではTACD−Iの粒が目視で確認され、分散は不均一であった。
【0075】
本発明のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体は、熱安定性が良好であり、また熱可塑性を有するために、熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン又はその誘導体が結合したポリエステル系重合体のシクロデキストリン又はその誘導体部分にヨウ素が包接されてなることを特徴とする、ヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項2】
シクロデキストリン又はその誘導体がポリエステル系重合体の末端に結合していることを特徴とする請求項1に記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項3】
シクロデキストリンが、α―シクロデキストリン、β―シクロデキストリン、γ―シクロデキストリン、あるいはこれらの混合物である請求項1〜2いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項4】
ポリエステル系重合体が、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、これらの各成分の共重合体、あるいはこれらの混合物である請求項1〜3いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項5】
ポリエステル系重合体が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ乳酸繰り返し単位とポリグリコール酸繰り返し単位からなるポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)繰り返し単位とポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)繰り返し単位からなるポリ[(3−ヒドロキシブチレート)−コ−(3−ヒドロキシヘキサノエート)]、あるいはこれらの混合物である請求項4に記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項6】
シクロデキストリンまたはその誘導体が結合したポリエステル系重合体が、水酸基の一部が脱プロトン化されているシクロデキストリンまたはその誘導体をポリエステル系重合体に反応させることを特徴とする製造方法により得られる、請求項1〜5いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項7】
シクロデキストリンまたはその誘導体が結合したポリエステル系重合体が、シクロデキストリンまたはその誘導体を開始点として環状エステル系化合物を重合させることを特徴とする製造方法により得られる、請求項1〜5いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなることを特徴とするヨウ素包接ポリエステル系接樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載のヨウ素包接シクロデキストリン含有ポリエステル系重合体あるいはヨウ素包接ポリエステル系樹脂組成物からなるヨウ素包接コーティング材料。
【請求項10】
請求項8に記載のヨウ素包ポリエステル系樹脂組成物からなるヨウ素包接フィルム材料。
【請求項11】
シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物を、水およびアルコール系溶媒の非存在下において、ヨウ素とともに混合することを特徴とする、ヨウ素包接化物の製造方法。
【請求項12】
シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体、あるいはこれらの混合物を、水およびアルコール系溶媒の非存在下において、ヨウ素と、さらにハロゲン化物とともに混合することを特徴とする請求項11に記載のヨウ素包接化物の製造方法。
【請求項13】
ハロゲン化物が、水素原子またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とハロゲン原子とのハロゲン化物である、請求項12に記載のヨウ素包接化物の製造方法。
【請求項14】
ハロゲン原子が、塩素、臭素、またはヨウ素である、請求項13に記載のヨウ素包接化物の製造方法。
【請求項15】
ハロゲン化物が、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムである、請求項14に記載のヨウ素包接化物の製造方法。
【請求項16】
シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が結合したポリエステル系重合体を用いることを特徴とする請求項11〜15いずれかに記載のヨウ素包接化物の製造方法。
【請求項17】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなることを特徴とするヨウ素包接樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物からなるコーティング材料の製造方法。
【請求項19】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物からなるフィルム材料の製造方法。
【請求項20】
請求項16の方法で得られたヨウ素包接化物99〜0.1重量%、熱可塑性樹脂1〜99.9重量%、からなることを特徴とするヨウ素包接樹脂組成物からなるフィルム材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−314698(P2007−314698A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147146(P2006−147146)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】