説明

ヨウ素含有微細繊維

【課題】フィルター素材等に使用した場合に優れた殺菌・抗菌機能を持つ微細繊維、その製造方法、及び前記繊維からなる不織布を提供すること。
【解決手段】ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸して得られるヨウ素含有微細繊維、ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸法により繊維化する、ヨウ素含有微細繊維の製造方法、ならびに前記繊維からなる不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヨウ素含有微細繊維及びその製造方法、ならびに当該繊維からなる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌・抗菌剤としては、トリアゾール系、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ハロゲン系、トリアジン系、イミダゾール系、チアゾール系、ジスルフィド系、チオカーバメート系等の所謂有機合成で得られる有機系の殺菌・抗菌剤と、銀などの金属イオン系、ホウ酸系、イオウ系、ヨウ素系等の無機系の殺菌・抗菌剤が良く知られている。
【0003】
中でも、ヨウ素は古くから殺菌・抗菌効果があることがよく知られており、人体に対して比較的安全であることから、各種の用途に用いられている。このようなヨウ素系の殺菌・抗菌剤としては、ポリビニルピロリドンに分子ヨウ素が錯体を形成したポビドンヨードが広く知られている。ポビドンヨードは、通常は10重量%程度の水溶液として使用されているが、繊維基材の表面にポビドンヨードを担持して抗菌性のシートを得ることが検討されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、特許文献2には、水溶性のシクロデキストリンにヨウ素が包接されているヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を含有し、有効ヨウ素がシート状物全質量に対して0.01〜20質量%である、抗菌性シート状物が開示されており、抗菌性シート状物を構成する基材として、織布、不織布等が挙げられている。
【特許文献1】特開2001‐89974号公報
【特許文献2】特開2005‐350358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、繊維の表面にポビドンヨードを水溶性ポリマーなどを介して担持させるため、繊維表面からの脱落といった問題があった。また、特許文献2の方法においても、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物の溶液にシート状物の基材を浸漬させるだけであり、基材からのヨウ素の脱落といった問題があった。
【0006】
本発明は、例えば、フィルター素材等に使用した場合に優れた殺菌・抗菌機能を持つ微細繊維、その製造方法、及び前記繊維からなる不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に対し種々検討を進めた結果、ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸法により繊維化することにより、殺菌・抗菌機能を持つ微細繊維が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕 ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸して得られる、ヨウ素含有微細繊維、
〔2〕 前記〔1〕記載の繊維からなる不織布、及び
〔3〕 ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸法により繊維化する、ヨウ素含有微細繊維の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微細繊維は、殺菌・抗菌機能を有するヨウ素がシクロデキストリンに包接されたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を原料に用いて繊維を製造するため、シクロデキストリンにより包接されたヨウ素が繊維から脱落することなく安全に使用できる。また、微細繊維を製造するときに樹脂の溶解溶剤として水を使用しているため、製造時の引火・爆発の危険が無く、また溶剤の回収が必要ないため、製造コストの低減が図れるという長所もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物(以下、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と記載することもある)と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸して得られるヨウ素含有微細繊維であり、前記繊維の製造に殺菌・抗菌機能を有するヨウ素をシクロデキストリンに包接させた化合物を含有する樹脂組成物を原料として用いることに大きな特徴を有する。本発明においては、ヨウ素がシクロデキストリンに包接された化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸法により繊維化することにより、ヨウ素が繊維表面から脱落することなく繊維の構造中に保持された微細繊維を、安全で、かつ低コストで製造することができる。また、ヨウ素がシクロデキストリンに包接されることで、ヨウ素をそのまま含有させた樹脂組成物を原料として用いるよりも、繊維表面からの脱離が生じにくいので好ましい。
【0011】
本発明において使用するヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、例えば、特開2002−193719号公報、特開2006−335751号公報等に記載された方法により得ることができる。即ち、ヨウ素を、ヨウ化カリウムなどのヨウ素溶解補助剤、および必要ならばアルコール類を用いて溶解し、これにシクロデキストリンを混合する方法、或いはシクロデキストリンとヨウ素、必要ならば補助剤とを密閉容器中、固体状で混合する方法などが挙げられる。
【0012】
シクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン(例えば、メチル-β-シクロデキストリン)、アセチル化シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンなどが挙げられる。
【0013】
また、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物として、市販品〔例えば、日宝化学株式会社製のBCDI(ヨウ素−β-シクロデキストリン包接化合物)、MCDI(ヨウ素−メチル-β-シクロデキストリン包接化合物)など〕を使用することもできる。
【0014】
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中のヨウ素の被包接量はシクロデキストリン100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物中の有効ヨウ素含有量は0.1〜23重量%が好ましく、1〜16重量%がより好ましい。
【0015】
本発明で用いられる水溶性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸エステル共重合体等のアクリル酸系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエチレンオキシド等のポリアルキレンオキシド系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリエーテルグリコール系樹脂;澱粉類;天然物から採取精製されたグァーガム、ローカストビーンガム等の各種ガム類;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸類;ゼラチン類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニル等との共重合体等のビニルピロリドン系重合体;イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸共重合体のアルカリ溶解液等の水溶性高分子類;水溶性になるように分子量を小さくしたキチン・キトサンなどが挙げられる。これらの中でも、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂の相溶性、後加工の容易さの観点から、ビニルピロリドン系重合体、ポリアルキレンオキシド系樹脂およびポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
水溶性樹脂の分子量は水溶性樹脂を一度水に溶解し、その後繊維化する時に効率よく製造するという観点から、3,000〜3,000,000が好ましく、5,000〜1,500,000がより好ましく、6,000〜1,300,000がさらに好ましい。分子量が3,000未満では繊維強度が確保しにくく、3,000,000を超えると水への溶解性が悪くなり、後述の濃度範囲での粘度の確保が難しくなる。なお、本明細書において、樹脂の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0017】
本発明において、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を得る方法は特に限定されない。たとえば、予め包接させたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を水溶性樹脂の溶液に添加する方法や、ヨウ素とシクロデキストリンを水溶性樹脂の溶液にそれぞれ添加後、ヨウ素とシクロデキストリンを包接させる方法が挙げられる。
【0018】
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物の添加量は、水溶性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜150重量部、より好ましくは0.01〜100重量部である。
【0019】
樹脂組成物はヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂を含有するが、本発明の効果を損なわない範囲でシクロデキストリン(例えば、α−シクロデキストリン)などの他の成分を含有してもよい。ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂の総含有量は、樹脂組成物中、5〜100重量%が好ましく、10〜100重量%がより好ましい。
【0020】
本発明においては、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸法により微細繊維化する。静電紡糸法はエレクトロスピニング法とも呼ばれ、1μm以下の径を持つ繊維の製造方法として数十年以上前に発見された方法であるが、最近になっていわゆるナノスケールの微細繊維が有機EL素子、電池セパレーター、電子ペーパー、電磁波シールド材等への用途のニーズが拡大したこともあり再度注目を集めている。
【0021】
静電紡糸法では、2〜100kV、多くの場合5〜50kVに設定された電極の一方にセットされた細いノズルより樹脂溶液を他方の電極に向けて放出することにより、他方の電極上に通常は積層された形で微細繊維を得ることができる。
【0022】
本発明では樹脂溶液として、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物の水溶液が用いられる。前記樹脂溶液では樹脂組成物の溶解溶剤として水を使用しているため、製造時の引火・爆発の危険が無く、また溶剤の回収が必要ないため、製造コストの低減を図ることができる。得られる微細繊維の径は、水溶性樹脂の特性にもよるが、水溶性樹脂の分子量、水溶液の粘度、水溶液の濃度、水溶液を供給するノズル径、水溶液の供給速度、2極間の電圧、2極間の距離等種々の要因により変えることができる。これらの要因は得られる微細繊維の径を決定するのに各々独立して影響を与えるものではなく、それぞれの要因がお互いに影響を及ぼしあっている。
【0023】
水溶液から繊維化にいたるのは、電極にセットされたノズルから放出された水溶液が積層側の他の電極に至るまでの間に、溶媒である水を蒸発させながら静電反発等により微細液滴化・微細繊維化が進むことによるものと考えられるが、この遷移している状態を好適化させるために水溶液の粘度は1つの要因となる。本発明で使用可能な水溶液の粘度範囲としては5〜10000mPs・sが好ましく、5〜6000mPs・sがより好ましい。水溶液粘度が5mPs・s未満では積層側の電極に至る前に繊維化することなく液滴の分散が起こる。また粘度が10000mP・sより大きいとノズルからの供給が難しいだけでなく繊維径の調整が難しくなる。なお、本明細書において、水溶液の粘度は、25℃における粘度のことであり、B型粘度計により測定される。水溶液の粘度は実質的に水溶性樹脂の水溶液での粘度に非常に近いので、上記粘度範囲は使用する水溶性樹脂の水溶液粘度と考えてよい。
【0024】
水溶液の濃度は、繊維化が可能である範囲で出来る限り濃い濃度が好ましい。具体的には0.5〜70重量%が好ましく、0.5〜50重量%がより好ましい。濃度が0.5重量%未満では電極間移動中での乾燥が進まず、それが静電反発にも影響するためか繊維の微細化がうまく行われない。濃度が70重量%を超える場合には水溶液粘度を確保するために使用する水溶性樹脂の分子量を小さくする必要などが生じ、分子量の低下が繊維化を難しくするため好ましくない。
【0025】
静電紡糸法において、水溶液を供給するノズルの径は、目的とする微細繊維の径、使用する水溶性樹脂の種類、水溶液濃度、粘度により選択され、通常0.05〜3mmのものが好ましく使用される。また繊維径の細いものを得るためには、ノズル径が細いほうが良好な結果が得られる場合がある。この場合のノズル径は、好ましくは0.05〜0.5mm、より好ましくは0.10〜0.25mmのノズルが使用される。
【0026】
微細繊維を製造するために与える2極間の電圧は、目的とする微細繊維の径により上述の各種要因を変更させながら適切に設定すればよく、通常5〜50kVの範囲で選択される。
【0027】
電極間の距離、すなわちノズル先端と積層させる電極(巻き取り機)との距離は微細繊維の径、微細繊維の含水率に影響を与えるが、本発明においては、5〜30cmに設定することが好ましい。なお、本明細書において、ノズルと巻き取り機との間の距離とは、ノズルから水溶液が放出される方向に対して垂直に巻き取り機が設置された場合の、ノズルと巻き取り機との間の最短距離のことを意味する。
【0028】
水溶液の供給速度は、目的とする微細繊維の径により、各種要因を変更させながら適切な値、例えば、1個のノズル当たり0.01〜0.3mL/minに設定にすればよい。供給速度が速すぎると、溶媒である水の蒸発が十分に行われず、液滴の静電反発が十分に進行しない等の影響で、所望の微細繊維が得られない。逆に供給速度が遅すぎると微細繊維の生産性が悪くなるため好ましくない。
【0029】
本発明においては、上記条件を適宜設定することにより微細繊維が得られる。本発明における「微細繊維」とは、平均繊維径が10μm以下の繊維を意味するが、この中に生産条件によっては、繊維中に数μm程度の粒子状物を含有する場合があるが特に問題はない。本発明により平均繊維径が好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.03〜5μmの範囲のヨウ素含有微細繊維が得られる。本発明において、平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0030】
静電紡糸法においては、通常、微細繊維が電極上に積層された形で得られるため、これを不織布として利用することができる。従って、本発明では、本発明の微細繊維からなる不織布を提供する。本発明の不織布を、例えばフィルターとして使用する場合、繊維が微細化されているため粉塵・バクテリア等の直接の捕集効果が向上する。また、微細繊維中にヨウ素が含有されているために、殺菌・抗菌効果が一層大きくなる。また、電極上に得られた不織布に撚りを掛けることにより数本の微細繊維が集まった撚糸にすることもできる。
【実施例】
【0031】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
静電紡糸は図1記載の装置を用いて行った。なお、巻き取り機部の金網は、ノズルから樹脂組成物の水溶液を放出する方向に対して垂直に設置された。また、得られた繊維は電子顕微鏡(日本電子社製、JSM-6390LA型)を用いて繊維状態を確認し、平均繊維径は、前記顕微鏡を用いて、任意に30本の繊維の繊維径を計測して、平均を算出することにより得た。繊維からのヨウ素の脱離の程度は、得られた繊維をガラス等の密閉容器に保存し(48時間)、ガラス壁等に昇華したヨウ素の付着状態を観察することにより判定した。
【0033】
実施例1
ポリビニルピロリドン(ISP社製、PVP K30、分子量60,000)10gを水10gに溶解した50重量%濃度のポリビニルピロリドン水溶液(溶液粘度2800mPa・s)にヨウ素−β-シクロデキストリン包接化合物〔日宝化学株式会社製、BCDI-20(有効ヨウ素20重量%含有)〕0.001gを添加、溶解して樹脂溶液を調製した。図1に示した静電紡糸装置に得られた樹脂溶液を仕込み、ノズル(0.22mmφ)と巻き取り機部の金網との間の距離を10cmとして、2極間に電圧を印加(18kV)し、静電紡糸を実施した。得られた繊維は平均繊維径0.5μmの繊維状物と粒子(数μm)の混合されたもので、ヨウ素の脱離もなく良好であった。
【0034】
実施例2
ポリビニルピロリドン(ISP社製、PVP K90、分子量1,200,000)1.7gを水8.3gに溶解した17重量%濃度のポリビニルピロリドン水溶液(溶液粘度1280mPa・s)にヨウ素−メチル-β-シクロデキストリン包接化合物〔日宝化学株式会社製、MCDI(有効ヨウ素6重量%含有)〕0.17gを添加、溶解して樹脂溶液を調製した。図1に示した静電紡糸装置に得られた樹脂溶液を仕込み、ノズル(0.22mmφ)と巻き取り機部の金網との間の距離を10cmとして、2極間に電圧を印加(15kV)し、静電紡糸を実施した。得られた繊維は平均繊維径0.2μmの繊維状物で、ヨウ素の脱離もなく良好であった。
【0035】
実施例3
ポリエチレンオキサイド(住友精化社製、PEO 1Z、分子量300,000)1gを水9gに溶解した10重量%濃度のポリエチレンオキサイド水溶液(溶液粘度1500mPa・s)にヨウ素−メチル-β-シクロデキストリン包接化合物〔日宝化学株式会社製、MCDI(有効ヨウ素6重量%含有)〕0.03gとα-シクロデキストリン 0.01gを添加、溶解して樹脂溶液を調製した。図1に示した静電紡糸装置に得られた樹脂溶液を仕込み、ノズル(0.22mmφ)と巻き取り機部の金網との間の距離を10cmとして、2極間に電圧を印加(15kV)し、静電紡糸を実施した。得られた繊維は平均繊維径0.1μmの繊維状物と粒子(1μm程度)の混合されたもので、ヨウ素の脱離もなく良好であった。
【0036】
実施例4
ポリエチレンオキサイド(住友精化社製、PEO 1Z、分子量300,000)1gを水9gに溶解した10重量%濃度のポリエチレンオキサイド水溶液(溶液粘度1500mPa・s)にヨウ素−α-シクロデキストリン包接化合物〔(株)テトラバイオレメディック社製、よう素のちから(有効ヨウ素17重量%含有)〕0.045gを添加、溶解して樹脂溶液を調製した。図1に示した静電紡糸装置に得られた樹脂溶液を仕込み、ノズル(0.1mmφ)と巻き取り機部の金網との間の距離を15cmとして、2極間に電圧を印加(15kV)し、静電紡糸を実施した。得られた繊維は平均繊維径0.06μmの繊維状で、ヨウ素の脱離もなく良好であった。
【0037】
実施例5
ポリビニルアルコール(日本合成化学社製、ゴーセノールGH20、分子量80,000)2.8gを水22.6gに溶解した11重量%濃度のポリビニルアルコール水溶液(溶液粘度2500mPa・s)にヨウ素−メチル-β-シクロデキストリン包接化合物〔日宝化学株式会社製、MCDI(有効ヨウ素6重量%含有)〕2.8gを添加、溶解して樹脂溶液を調製した。図1に示した静電紡糸装置に得られた樹脂溶液を仕込み、ノズル(0.1mmφ)と巻き取り機部の金網との間の距離を15cmとして、2極間に電圧を印加(15kV)し、静電紡糸を実施した。得られた繊維は平均繊維径0.2μmの繊維状で、ヨウ素の脱離もなく良好であった。
【0038】
比較例1
実施例5においてヨウ素−メチル-β-シクロデキストリン包接化合物2.8gのかわりに、0.5mol/Lのヨウ素水溶液を0.2g添加した以外は同様の操作を行い、静電紡糸を実施した。平均繊維径0.3μmの繊維が得られたが、2日後ガラス容器を確認するとガラス壁に昇華したヨウ素が付着しており、繊維からヨウ素が脱離していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の微細繊維は、殺菌・抗菌機能を有するヨウ素をシクロデキストリンに包接させた化合物と水溶性樹脂を含む樹脂組成物を原料に用いて得られるため、微細繊維にヨウ素が含まれており、優れた殺菌・抗菌効果を有しており、殺菌・抗菌性のフィルターやシート等の素材に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の微細繊維の製造に好適に使用される静電紡糸装置の一例を示す概略図である。図中7〜9は、巻き取り機部を構成するものである。
【符号の説明】
【0041】
1 エアーコンプレッサー
2 加圧容器
3 圧力調節器
4 サンプル容器
5 ノズル
6 加電圧器
7 モーター
8 アース線
9 金網


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸して得られる、ヨウ素含有微細繊維。
【請求項2】
包接化合物中のヨウ素の被包接量がシクロデキストリン100重量部に対して1〜30重量部である請求項1記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項3】
水溶性樹脂が、ビニルピロリドン系重合体、ポリアルキレンオキシド系樹脂およびポリビニルアルコール系樹脂の少なくとも1種である請求項1又は2記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項4】
平均繊維径が0.01〜10μmの範囲である請求項1〜3いずれか記載のヨウ素含有微細繊維。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の繊維からなる不織布。
【請求項6】
ヨウ素のシクロデキストリンによる包接化合物と水溶性樹脂を含有する樹脂組成物を静電紡糸法により繊維化する、ヨウ素含有微細繊維の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−266847(P2008−266847A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113818(P2007−113818)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】