説明

ヨウ素徐放・吸着型殺菌材料

【解決課題】経時的に殺菌効果が劣化せず長期使用に適切で且つ周囲環境に与える影響が少ないヨウ素徐放・吸着型殺菌材料を提供することを目的とする。
【解決手段】有機高分子基材と、第四級アンモニウム基含有重合単位とN-アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマー及び/又は第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマーとN-アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマーとの混合物からなり、前記有機高分子基材を主鎖として化学的に結合する重合体側鎖と、前記重合体側鎖に吸着されている三ヨウ化物イオンと、を具備するヨウ素徐放・吸着型殺菌材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気中又は液体中の微生物、ウィルスなどを殺菌できるヨウ素徐放・吸着型有機高分子殺菌材料に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療現場でしばしば起こる感染症は深刻で毎年のように院内感染による死亡例が報告されている。その原因はMRSA等をはじめとする抗生物質耐性菌やカビ、ウィルスなどによるとされている。院内感染は接触感染や空気感染が原因とされている。そのため手術室や集中治療室のような閉鎖空間では室内に取り込む外気や室内循環する空気を清浄にする必要がある。また、飛行機の客室内や劇場、ホ−ルなどでも同様に空気清浄が必要である。
【0003】
通常、空気中の除菌には、定格流量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕獲率をもつHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air filter)や定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集効率をもつULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air filter)と呼ばれる高性能フィルタや、前処理用又は外気処理用に比較的大きな粒子を除去する中性能フィルタを用い、物理的に捕捉する方法が行われている。これらフィルタによる物理的な捕捉では、通常はウィルスなどの除去は難しい。ウィルスなどを充分に除去するためには、フィルタのポアサイズを小さくする必要があるが、フィルタの圧力損失が大きくなり、フィルタへ吸気するための動力費が大きくなるという問題があった。また、フィルタを交換する際には、フィルタに捕捉されている菌類が再飛散するという問題もある。
【0004】
そこで、殺菌作用を有し、フィルタの構成材料などとして利用できる殺菌材料が種々開発されている。
【0005】
例えば、強塩基性アニオン交換樹脂に三ヨウ化物イオンをイオン交換吸着させたヨウ素化殺菌剤樹脂を含浸又は添着してなる不織布を中性能フィルタの一次側及び/又は二次側に貼着してなる抗菌フィルタが提案されている(特許文献1)。強塩基性アニオン交換樹脂に三ヨウ化物イオンをイオン交換吸着させたヨウ素化殺菌剤樹脂は、ヨウ素デマンド型殺菌剤として知られている。三ヨウ化物イオンを吸着させた強塩基性アニオン交換樹脂の表面は正に帯電しており、負に帯電している微生物を静電吸着する。表面の静電吸着サイトでは、三ヨウ化物イオンが遊離し、これが直ちに殺菌能力のあるヨウ素(I2)とヨウ素イオン(I)に分離するため、殺菌作用を呈する。ヨウ素イオン(I)は強塩基性アニオン交換樹脂に残るので、ヨウ素が不必要に放出されず、殺菌作用が長持ちするという利点がある。
【0006】
しかしながら、この抗菌フィルタは静電吸着を利用するため、負に帯電している塵埃なども多量に吸着する。抗菌不織布表面に塵埃が堆積することにより、ヨウ素化殺菌剤樹脂の露出面積が少なくなるので、殺菌効果が減ずる。抗菌フィルタに塵埃が付着した場合には、ヨウ素化殺菌剤樹脂が含浸又は添着されている不織布(抗菌不織布ともいう)表面に微生物が接触した部分でのみヨウ素が遊離されるので、塵埃中に存在していて不織布表面と接触しない微生物には殺菌作用が及ばず、却って微生物を増殖させることになる。また、中性能フィルタの表面に抗菌不織布を貼着させているので、中性能フィルタと抗菌不織布との間に隙間(数十μm以上)が存在する。この隙間に捕捉された微生物(MRSAやその他の微生物は1〜数μmサイズである)は抗菌不織布表面と接触しないため、充分に殺菌されない。従って、抗菌フィルタのわずかな操作条件の変動によって、捕捉されている微生物が漏れ出る危険性がある。さらに、この抗菌フィルタを空調フィルタなどに利用する場合には、経時的に殺菌作用が失われ、頻繁なフィルタ交換を要するという問題がある。
【0007】
殺菌材料の他の例として、N−アルキル−N−ビニルアルキルアミド(主としてN−ビニルピロリドン)から誘導される単位を含む高分子重合体に三ヨウ化物イオンを吸着させてなる有機高分子殺菌材料が提案されている(特許文献2)。この有機高分子殺菌材料は、重合体と三ヨウ化物イオンとの相互作用が小さく、ヨウ素を徐放しやすいという特徴があり、いわばヨウ素徐放型殺菌剤という性質を有する。しかし、ヨウ素徐放量はヨウ素添着濃度によって大きく変動し、ヨウ素添着濃度が高いと初期に高濃度のヨウ素が放出されてしまい、殺菌作用が失われてしまうという問題がある。また、温度、湿度及び圧力等の操作条件によってもヨウ素徐放量が変動するという問題もある。このため、有機高分子殺菌材料におけるヨウ素の残存量が不明となり、効果有効期間が推定できないなど使用方法に注意を要するなどの問題もある。さらに、環境中へのヨウ素徐放量が増えると、金属を腐食させたり、物品の表面を着色させたりする問題もある。
【特許文献1】特開平11−276823号公報
【特許文献2】WO00/64264公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、経時的に殺菌効果が劣化せず長期使用に適切で且つ周囲環境に与える影響が少ないヨウ素徐放・吸着型殺菌材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、鋭意研究した結果、ヨウ素吸着型とヨウ素徐放型との並存によって、上記課題を解決できることを知見した。すなわち、徐放される遊離ヨウ素によって繊維−繊維間や繊維外の空間の殺菌性を維持する(徐放性)と共に、徐放された遊離ヨウ素を吸着してヨウ素の過多放出を抑制し、繊維表面の電荷を正に維持して微生物に対する静電吸着力を維持する(吸着性)ことにより、上記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明によれば、有機高分子基材と;第四級アンモニウム基含有重合単位とN-アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマー及び/又は第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマーとN-アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマーとの混合物からなり、前記有機高分子基材を主鎖として化学的に結合する重合体側鎖と;前記重合体側鎖に吸着されている三ヨウ化物イオンと;を具備するヨウ素徐放・吸着型殺菌材料が提供される。
【0011】
本発明によるヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成の概念を図1に模式的に示す。
【0012】
図1において、[A]は第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマーを表し、[B]はN−アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマーを表し、[A+B]は、第四級アンモニウム基含有重合単位とN-アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマーをそれぞれ表す。(基材+[A+B]〜I3-)とは、主鎖である基材に、第四級アンモニウム基含有重合単位とN-アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマーが重合体側鎖として化学的に結合しており、さらに重合体側鎖に三ヨウ化物イオン(I3-)が吸着されている状態を表す。同様に、(基材+([A]+[B])〜I3-)とは、主鎖である基材に、第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマー[A]とN-アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマー[B]との混合物が重合体側鎖として化学的に結合しており、さらに重合体側鎖に三ヨウ化物イオン(I3-)が吸着されている状態を表す。
【0013】
本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料において、重合体側鎖に対する三ヨウ化物イオンの吸着の程度は、用途に応じて調節可能である。また、三ヨウ化物イオンは全ての重合体側鎖に吸着されている必要はなく、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位の両者に均等に吸着されている必要もない。ヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の用途又は所望される特性(ヨウ素徐放性かヨウ素吸着性か)に応じて、重合体側鎖の一部又は第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位のいずれか一方に偏って吸着されていてもよい。一般に、三ヨウ化物イオンは、第四級アンモニウム基含有重合単位に吸着されやすく、N-アルキルアミド基含有重合単位に対する相互作用が小さくヨウ素として徐放されやすい。
【0014】
重合体側鎖として導入されている第四級アンモニウム基含有重合単位において、第四級アンモニウム基は、塩素イオン(Cl-)型、水酸イオン(OH-)型、ヨウ素イオン(I3-)型などの形態で存在することが好ましく、特に水酸イオン(OH-)型として存在することが好ましい。水酸イオン(OH-)型の場合には、中和によって他の酸性ガスを吸着しやすいという効果を奏することができる。また、塩素イオン(Cl-)型、水酸イオン(OH-)型の場合には本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料はヨウ素吸着性が高く、特に水酸イオン(OH-)型の場合に高いヨウ素吸着性を示し、ヨウ素イオン(I3-)型の場合には本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料はヨウ素徐放性が高いものとなる。
【0015】
一方、N−アルキルアミド基含有重合単位において、少なくとも一部のN−アルキルアミド基はヨウ素イオン(I3-)型として存在する。三ヨウ化物イオンは、N-アルキルアミド基に三ヨウ化物イオン(I3-)とヨウ素(I2)とがポリヨウ素の形態を呈して対イオンとして付加体を形成している形態で導入されていてもよい。N−アルキルアミド基は三ヨウ化物イオンとの相互作用が小さくヨウ素を徐放しやすいので、ヨウ素イオン(I3-)型のN−アルキルアミド基の割合が高いほど、本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料はヨウ素徐放性が高くなり、特に初期に高濃度のヨウ素が放出される。
【0016】
図1は、重合体側鎖が基材を構成する繊維に結合しており、基材表面ばかりでなく基材内部にまで深く導入されている状態を表す。基材としては、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布及びこれらの加工物から選択される高分子基材を好ましく用いることができる。特に、織布/不織布の形態のポリオレフィン系有機高分子基材は、後述する放射線グラフト重合用の基材として好適に用いることができ、軽量で加工しやすいので、本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の基材として好適である。
【0017】
図1に示す構成のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料は、放射線グラフト重合法を用いて製造することができる。放射線グラフト重合法は、有機高分子基材に放射線を照射してラジカル部位を生成させ、ラジカル部位に重合性単量体を反応させることによって所望の重合体側鎖を導入できる方法であり、重合体側鎖の数や長さを比較的自由にコントロールすることができ、また、各種形状の有機高分子基材に適用できるので、好適である。放射線グラフト重合法において用いることのできる放射線源としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができるが、特に、電子線や60Coのγ線などを好ましく用いることができる。電子線と比較すると60Coのγ線は透過深度が大きいが単位時間あたりの放射線強度(線量率)が低い。グラフト重合に必要な照射線量は一般的に10〜300kGy程度である。放射線グラフト重合法には、有機高分子基材に予め放射線を照射した後、重合性単量体を接触させて重合体側鎖を導入する前照射グラフト重合法と、有機高分子基材と重合性単量体との共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあり、いずれの方法も本発明において用いることができる。また、重合性単量体との接触態様により、重合性単量体の溶液に有機高分子基材を浸漬させたまま重合させる液相グラフト重合法、重合性単量体の蒸気に有機高分子基材を接触させて重合させる気相グラフト重合法、有機高分子基材を重合性単量体の溶液に浸漬させた後で重合性単量体の溶液から取り出して気相中で重合させる含浸気相グラフト重合法などがあり、いずれの方法も本発明において用いることができる。本発明において、織布/不織布の形態の有機高分子基材を用いる場合には、重合性単量体の溶液を保持しやすいので含浸気相グラフト重合法が好適である。
【0018】
図1に示す構成のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の製造に用いることができる放射線グラフト重合法として前照射グラフト重合法を用いた場合のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の製造工程を図2を参照しながら説明する。
【0019】
前照射グラフト重合法とは、予め主鎖となる基材に放射線を照射してラジカル部位を発生させ、次いで重合体側鎖となる重合単位の重合性単量体と接触させてグラフト重合させる方法である。具体的には、まず基材を構成する有機高分子繊維に放射線を照射してラジカル部位を発生させ、次いでラジカル部位を有する有機高分子繊維を第四級アンモニウム基含有重合性単量体とN−アルキルアミド基含有重合性単量体との混合物に接触させて、基材である有機高分子繊維のラジカル部位に第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位をグラフト重合(接ぎ木重合)させて重合体側鎖を成長させる。その後、導入された重合体側鎖を有する基材をヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液などの三ヨウ化物イオン含有液に接触させて、重合体側鎖である第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位に三ヨウ化物イオンを吸着させて、本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料を製造することができる。
【0020】
第四級アンモニウム基含有重合単位を形成する第四級アンモニウム基含有重合性単量体としては、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)及び(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドから選択される1種以上の重合性単量体を好ましく挙げることができる。また、第三級アミノ基などの低級アミノ基が共存していてもよく、ジエチルアミノメタクリレートなどの重合性単量体をVBTAC又は(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドと共に用いることもできる。
【0021】
また、重合体側鎖である第四級アンモニウム基含有重合単位は、まず第四級アンモニウム基に転換可能な構造を有する重合単位を重合体側鎖として導入し、その後、公知の有機化学反応により第四級アンモニウム基含有重合単位に転換してもよい。第四級アンモニウム基に転換可能な構造を有する重合単位を形成することができる重合性単量体としては、スチレン、クロロメチルスチレン(CMS)、メタクリル酸グリシジル(GMA)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)及びビニルピリジン(VP)から選択される1種以上の重合性単量体を好ましく挙げることができる。
【0022】
N−アルキルアミド基含有重合単位を形成するN−アルキルアミド基含有重合性単量体としては、N−ビニルピロリドン、1−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−N−メチルアセタミド、N−ビニル−N−エチルアセタミド、N−ビニル−N−メチルプロピルアミド、N−ビニル−N−エチルプロピルアミド又はこれらから誘導される化合物からなる群から選択される1種以上の重合性単量体を好ましく挙げることができる。
【0023】
前照射グラフト重合法を用いると、重合性単量体が単独に重合することが少なく、グラフト重合率が高いので、効率よくグラフト鎖を有機高分子基材に導入して成長させることができる。
【0024】
三ヨウ化物イオンの導入は、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を重合体側鎖として有する基材と、三ヨウ化物イオンを含む溶液、たとえばヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液、ヨウ素/ヨウ化水素水溶液を接触させることにより行うことが好ましい。あるいは、ヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液などに浸漬した基材にヨウ素蒸気を接触させてもよい。三ヨウ化物イオンの重合体側鎖への導入量は、用いる溶液のヨウ素濃度を調節することによって適宜調整可能である。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様として、同時照射グラフト重合法を用いて製造したヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成の模式図を図3に示す。
【0026】
図3において、[A]、[B]、[A+B]は、図1について説明したとおりである。([A+B]〜I3-)とは、第四級アンモニウム基含有重合単位とN-アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマーが重合体側鎖として成長し、さらに重合体側鎖に三ヨウ化物イオン(I3-)が吸着されている状態を表す。(([A]+[B])〜I3-)とは、第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマーとN-アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマーとの混合物が重合体側鎖として成長し、さらに重合体側鎖に三ヨウ化物イオン(I3-)が吸着されている状態を表す。([A]〜I3-)とは第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマーが重合体側鎖として成長し、さらに重合体側鎖に三ヨウ化物イオン(I3-)が吸着されている状態を表す。([B]〜I3-)とは、N-アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマーが重合体側鎖として成長し、さらに重合体側鎖に三ヨウ化物イオン(I3-)が吸着されている状態を表す。図面においては説明を簡易にするために、全ての重合体側鎖が三ヨウ化物イオンを吸着している状態で示しているが、三ヨウ化物イオンが全ての重合体側鎖に吸着している必要はなく、四級アンモニウム基含有重合単位及び/又はN-アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー及び/又は各ホモポリマーの重合体側鎖に吸着される程度はヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の用途に応じて調節可能であり、いずれか一方に偏って吸着されていてもよい点は上述したとおりである。
【0027】
図1に示したヨウ素徐放・吸着型殺菌材料との相違点は、図3に示すヨウ素徐放・吸着型殺菌材料においては重合体側鎖が基材の表面に多く結合しており、基材の内部にまで入り込む割合が少ないことである。また、同時照射グラフト重合法によると、グラフト重合により基材に結合する重合体側鎖が生成されるだけでなく、単純な重合も進行して第四級アンモニウム基含有ポリマー及びN−アルキルアミド基含有ポリマーも生成する可能性があり、前照射グラフト重合法と比較するとグラフト率が若干低下する傾向がある。
【0028】
同時照射グラフト重合法は、有機高分子基材と重合性単量体との共存下に放射線を照射する点を除いて、前照射グラフト重合法と同じ条件で行うことができる。
【0029】
本発明のまた別の好ましい実施形態として、逐次グラフト重合法を用いて製造したヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成の模式図を図4及び図5に示す。
【0030】
図4及び図5において、([A]〜I3-)及び([B]〜I3-)は、図3について説明したとおりである。図4に示すヨウ素徐放・吸着型殺菌材料は、まずN-アルキルアミド基含有重合単位を含む重合性単量体を有機高分子基材と接触させてグラフト重合させ、次いで、第四級アンモニウム基含有重合単位を含む重合性単量体を有機高分子基材及びN-アルキルアミド基含有重合単位を含む重合体側鎖に逐次グラフト重合させて製造することができる。図5に示すヨウ素徐放・吸着型殺菌材料は、逆の順番で逐次グラフト重合させて製造することができる。図4及び図5に示す場合のいずれも、逐次グラフト重合によってN-アルキルアミド基含有重合単位を含む重合性単量体及び第四級アンモニウム基含有重合単位を含む重合性単量体を有機高分子基材に導入した後、三ヨウ化物イオンを含むヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液等と接触させて三ヨウ化物イオンを重合体側鎖に吸着させることで、本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料を製造することができる。
【0031】
図面においては説明を簡易にするために、すべての重合体側鎖が三ヨウ化物イオンを吸着している状態で示しているが、図4及び図5のいずれの場合においても、三ヨウ化物イオンが四級アンモニウム基含有重合単位を含む重合体側鎖及びN-アルキルアミド基含有重合単位を含む重合体側鎖に吸着される程度はヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の用途により調節可能であり、いずれか一方に偏って吸着されていてもよい点は上述したとおりである。
【0032】
図4及び図5に示す逐次グラフト重合法において、放射線を照射することによって有機高分子基材への重合体側鎖の結合をより強固にし且つ有機高分子基材の内部にまで浸透させることができる。しかし、放射線を照射することは必ずしも必要ではない。同様に、図3に示すヨウ素徐放・吸着型殺菌材料も放射線グラフト重合法によらずに製造することができる。例えば、第四級アンモニウム基含有重合単位とN−アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマー及び/又は各ホモポリマーの混合物を有機高分子基材の表面に塗布した後、溶媒を揮発させることによってコポリマー及び/又は各ホモポリマーの混合物を有機高分子基材に固着させてもよい。
【0033】
本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料において、第四級アンモニウム基含有重合単位はヨウ素吸着サイトとして作用し、一方、N−アルキルアミド基含有重合単位はヨウ素徐放サイトとして作用する。このように、本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料はヨウ素吸着サイトとヨウ素徐放サイトとを有するので、ヨウ素徐放サイトから徐放されたヨウ素は隣接するヨウ素吸着サイトに吸着されてヨウ素徐放・吸着型殺菌材料に保持され続けることになるので、過剰のヨウ素が環境雰囲気中に放出されることなく、殺菌作用が経時劣化することもない。なお、第四級アンモニウム基含有重合単位は正に帯電しており、負に帯電した微生物を静電吸着するので、微生物静電吸着サイトとしても作用する。
【0034】
図4及び5に示すような積層構造とした場合には、外側に積層された重合単位の機能がより強く発揮されることになる。すなわち、第四級アンモニウム基含有重合単位を含む重合体側鎖又はホモポリマーが外側に積層されている場合には、ヨウ素の吸着性(デマンド性)が強く発揮され、逆に、N−アルキルアミド基含有重合単位を含む重合体側鎖又はホモポリマーが外側に積層されている場合にはヨウ素徐放性が強く発揮されることになる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料は、適度にヨウ素を徐放するので環境に与える影響が少なく、除菌効果が高く、経時的劣化も少ない。このような効果を奏する本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料は、各種フィルタ材料として利用できる。
【0036】
また、空気中の微生物、ウィルスの殺菌ばかりでなく建築材料の壁、床あるいは家具などの表面に付着した微生物やウィルスを効果的に払拭できる材料やマスク材料として利用できる。
【0037】
また、風呂や水槽など溜り水の除菌にも利用できる。この場合、循環ろ過用のフィルタなどとして利用できる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の調製]
(1)基材
基材として、ポリエチレンを主成分とする径15μmの繊維よりなる目付け60g/m2、厚み0.3mmの熱融着不織布を用いた。
(2)第四級アンモニウム基含有重合単位のホモポリマー[A]の製造
ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)/水=1/2に調製した重合性単量体水溶液200mLを重合用ガラスアンプルに入れ、15分間窒素曝気した。次にガンマ線を100kGy照射して重合させ、第四級アンモニウム基含有単位のホモポリマー[A]を得た。
(3)N−アルキルアミド基含有重合単位のホモポリマー[B]の製造
N−ビニルピロリドン(NVP)20%に調製した重合性単量体水溶液200mLを重合用ガラスアンプルに入れ、15分間窒素曝気した。次にガンマ線を100kGy照射して重合させ、N−アルキルアミド基含有重合単位のホモポリマー[B]を得た。
(4)第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]の製造(共重合物)
N−ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)/水=1/2/3に調製した重合性単量体水溶液200mLを重合用ガラスアンプルに入れ、15分間窒素曝気した。次にガンマ線を100kGy照射して重合させ、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]を得た。
(5)基材へのコポリマー又はホモポリマーの固定化
(5)−1:ホモポリマー[A]と[B]の混合付与
(2)で調製した第四級アンモニウム基含有重合単位のホモポリマー[A]を含む溶液50mLと(3)で調製したN−アルキルアミド基含有重合単位のホモポリマー[B]を含む溶液50mLとの混合物を基材不織布に付与し、乾燥させた。乾燥後の重量増加率から約5g/m2の[A]および[B]が基材不織布表面に付着したことがわかった。次に、この基材不織布に窒素雰囲気で20kGyのガンマ線を照射して、第四級アンモニウム基含有重合単位のホモポリマー[A]及びN−アルキルアミド基含有重合単位のホモポリマー[B]を基材に固定化させた。
【0039】
(5)−2:ホモポリマー[A]と[B]の積層付与
(2)で調製した第四級アンモニウム基含有重合単位のホモポリマー[A]を含む溶液50mLを基材不織布に付与し、乾燥させた。乾燥後の重量増加率から約3g/m2の[A]が不織布表面に付着したことがわかった。次に、この基材不織布に、さらに(3)で調製したN−アルキルアミド基含有重合単位のホモポリマー[B]を含む溶液50mLを付与し、乾燥させた。洗浄乾燥後の重量増加率から約4g/m2の[B]が基材不織布表面に付与されたことがわかった。次に、この基材不織布に窒素雰囲気で20 kGyのガンマ線を照射して、第四級アンモニウム基含有重合単位のホモポリマー[A]及びN−アルキルアミド基含有単位のホモポリマー[B]をこの順序で基材に積層固定化させた。
【0040】
(5)−3:ホモポリマー[A]と[B]の積層付与((5)−2と逆の順序)
(5)−2とは逆に、先ず(3)で調製したN−アルキルアミド基含有単位のホモポリマー[B]を含む溶液50mL基材不織布に付与し、乾燥させた。洗浄乾燥後の重量増加率から約4g/m2の[B]が不織布表面に付着したことがわかった。次に、この不織布にさらに(2)で調製した第四級アンモニウム基含有単位のホモポリマー[A]を含む溶液50mLを付与し、洗浄乾燥させた。洗浄乾燥後の重量増加率から約7g/m2の[A]が基材不織布表面に付与されたことがわかった。次に、この基材不織布に窒素雰囲気で20kGyのガンマ線を照射して、N−アルキルアミド基含有単位のホモポリマー[B]及び第四級アンモニウム基含有単位のホモポリマー[A]をこの順序で積層固定化させた。
【0041】
(5)−4:コポリマー[A+B]の付与
(4)で調製した第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]を含む溶液100mlを基材不織布に付与し、乾燥した。乾燥後の重量増加率から約6g/m2の[A+B]のコポリマーが基材不織布表面に付着したことがわかった。この基材不織布に窒素雰囲気で20kGyのガンマ線を照射して、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]を基材に固定化させた。
【0042】
(5)−5:コポリマー[A+B]同時照射グラフト重合法による導入
N−ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)/水=1/2/3に調製した重合性単量体水溶液200mLと基材不織布20cm×30cmを重合用ガラスアンプルに入れ、15分間窒素曝気した。次にガンマ線を100kGy照射して、同時照射グラフト重合により、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]を基材に導入した。洗浄後の重量増加率からグラフト率を計算すると86%であった。
【0043】
(5)−6:コポリマー[A+B]前照射グラフト重合法による導入
予め基材不織布20cm×30cmを窒素雰囲気にて電子線を150kGy照射した後、N−ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)/水=1/2/3に調製した重合性単量体水溶液500mLに浸漬し、50℃で6時間、グラフト重合を行い、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]を基材に導入した。洗浄乾燥を行ってグラフト率を算出すると122%であった。
【0044】
(6)ヨウ素添着(三ヨウ化物イオンの吸着)
0.5 mol/Lのヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液10mLを純水で希釈し0.05mol/Lのヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液100mLを調製し、(5)−1〜(5)−6で得た第四級アンモニウム基及びN−アルキルアミド基が導入された基材不織布(20cm×30cm)をそれぞれ10分浸漬させた。次いで100mLの純水で洗浄した後、70℃で乾燥し、本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料を製造した。
【0045】
[IR及び13CNMRのスペクトル測定結果]
ヨウ素添着前のN−ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)重合性単量体の混合比率を変えてグラフト重合した場合の赤外スペクトル(FT−IR)を図6、13CNMRのスペクトルを図7に示す。図7ではVBTACの比率が増加するに従い、130ppm、52ppm付近のピ−クの増加が観察できる。
【0046】
[比較例1]:第四級アンモニウム基含有単位のホモポリマー[A]のグラフト重合及びヨウ素添着
(2)で調製した重合性単量体水溶液100mLを基材不織布に付与し、洗浄乾燥した。乾燥後の重量増加率から約7g/m2の[A]が不織布表面に付着したことがわかった。この不織布に窒素雰囲気で20kGyのガンマ線を照射して、第四級アンモニウム基含有単位のホモポリマー[A]を基材に固定化させた。次いで、(6)と同様の方法で、0.05mol/Lのヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液100mLに基材不織布(20cm×30cm)を10分浸漬した。次いで100mLの純水で洗浄した後、70℃で乾燥し、第四級アンモニウム基含有単位ホモポリマーからなるヨウ素型殺菌材料を製造した。
【0047】
[比較例2]:N−アルキルアミド基含有単位のホモポリマー[B]のグラフト重合及びヨウ素添着
(3)で調製した重合性単量体水溶液100mLを基材不織布に付与し、洗浄乾燥した。乾燥後の重量増加率から約4g/m2の[B]が不織布表面に付着したことがわかった。この基材不織布に窒素雰囲気で20kGyのガンマ線を照射して、N−アルキルアミド基含有単位のホモポリマー[B]を固定化させた。次いで、(6)と同様の方法で、0.05mol/Lのヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液100mLに基材不織布(20cm×30cm)を10分浸漬させた。次いで100mLの純水で洗浄した後、70℃で乾燥し、N−アルキルアミド基含有単位ホモポリマーからなるヨウ素型殺菌材料を製造した。
【0048】
[比較例3]:前照射グラフト重合によるコポリマー導入基材
(5)−6で調製した第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位を含むコポリマー[A+B]を導入した基材をヨウ素添着なしにそのまま用いた。
【0049】
[ヨウ素添着量の測定]
ヨウ素添着後の不織布5cm×5cm角に規定濃度のチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え1昼夜静置した。1昼夜静置後のチオ硫酸ナトリウム量を規定濃度のヨウ素溶液で滴定し、消費されたチオ硫酸ナトリウム量から算出した。ヨウ素添着量は表1のとおりであった。
【0050】
【表1】

【0051】
[抗菌性及びヨウ素の徐放性の評価]
(1)ハロー法による抗菌性の評価
JIS L1902(2002)繊維製品の抗菌性試験方法(ハロー法)に記載の方法に従って、抗菌性を調べた。ハロー法は一定濃度に調整した菌類を含む培地に28mmφの不織布を置き、24時間培養後の阻止円(図8)の幅を測定するもので、この幅が大きいほど抗菌性物質であるヨウ素が培地と接触した状態でヨウ素型殺菌材料から多く徐放されていることを示す。
【0052】
【表2】

【0053】
比較例2は徐放型のヨウ素型殺菌材料であるため10mm前後の阻止円と大きな幅となっているが、本発明の態様ではいずれも1mm以下とハロー法による阻止円の幅が小さい。第四級アンモニウム基の共存により、ヨウ素型殺菌材料の外へのヨウ素放出が抑制されたと考えられる。比較例3はヨウ素を含有していないので、阻止円が観察されず、材料の表面にも菌の増殖が観察された。
【0054】
(2)フィルタ流通試験法での評価
本発明のヨウ素型殺菌材料を上流、本発明で使用した基材不織布を下流に配置し、47mmφの円形ホルダ−に装着した。図9に示す装置を用いて菌濃度を調節した液をネブライザで添加し、不織布に0.5L/分の流量で流通させた。5日間経過後の下流側の不織布を取り出し、生理食塩水20mLを加えキャップをしたバイアル瓶で振とうした。この液1mLを採り、寒天培地を用いたコロニ−計数法により菌濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
本発明のヨウ素型殺菌材料は下流側への菌の放出量が比較的小さい。比較例2はヨウ素徐放性のため、菌放出量が抑えられている。比較例1及び3は本発明より菌放出量が大きく、しかもばらついている。比較例1は流通初期に菌の除去効果が認められるが、流通後半には菌の除去効果が低下した。比較例3については材料内部にヨウ素がないので殺菌材料上で菌増殖が起こっている可能性があり、菌放出量が大きい。
【0057】
(3)ヨウ素の長期保存性
ヨウ素型殺菌材料を温度25℃に制御され、遮光された恒温室に静置し、300日経過後の長期保存性を調べた結果を表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
空気中でのヨウ素の長期保存性は比較例2が一番悪く、300日経過後で約40%の低下率であった。徐放したヨウ素量が大きく殺菌効果は高いが、そのため長期保存性が小さいと考えられる。
【0060】
(4)総合評価結果
上記3種類の評価をまとめると表5のとおりである。比較例で示した材料は要求性能を満たさぬ場合があり、総合評価で劣る。
【0061】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料は、第四級アンモニウム基含有重合単位及びN−アルキルアミド基含有重合単位の含有比率及び導入順序を変えることで、ヨウ素の徐放量の制御や長期保存性を比較的容易に制御できるので、所望のヨウ素殺菌効果に応じて種々の使用態様が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明によるヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、前照射グラフト重合法を用いた本発明のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の製造工程を模式的に示す説明図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態によるヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成を模式的に示す説明図である。
【図4】図4は、本発明のまた別の実施形態によるヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成を模式的に示す説明図である。
【図5】図5は、本発明の更に別の実施形態によるヨウ素徐放・吸着型殺菌材料の構成を模式的に示す説明図である。
【図6】図6は、N−ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)重合性単量体の混合比率を変えてグラフト重合した場合の赤外スペクトルである。
【図7】図7は、N−ビニルピロリドン(NVP)/ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)重合性単量体の混合比率を変えてグラフト重合した場合の13CNMRのスペクトルである。
【図8】図8は、ハロー測定法の説明図である。
【図9】図9は、実施例で用いた流通試験装置の概略説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子基材と、
第四級アンモニウム基含有重合単位とN-アルキルアミド基含有重合単位とを含むコポリマー及び/又は第四級アンモニウム基含有重合単位を含むホモポリマーとN-アルキルアミド基含有重合単位を含むホモポリマーとの混合物からなり、前記有機高分子基材を主鎖として化学的に結合する重合体側鎖と、
前記重合体側鎖に吸着されている三ヨウ化物イオンと、
を具備するヨウ素徐放・吸着型殺菌材料。
【請求項2】
前記N−アルキルアミド基含有重合単位は、N−ビニルピロリドン、1−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−N−メチルアセタミド、N−ビニル−N−エチルアセタミド、N−ビニル−N−メチルプロピルアミド、N−ビニル−N−エチルプロピルアミド又はこれらから誘導される化合物からなる群から選択される1種以上の重合性単量体を重合して得られる重合単位である、請求項1に記載のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料。
【請求項3】
前記第四級アンモニウム基含有重合単位は、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)及び(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドから選択される1種以上の重合性単量体を重合して得られる重合単位であるか、又はスチレン、クロロメチルスチレン(CMS)、メタクリル酸グリシジル(GMA)及びビニルピリジン(VP)から選択される第四級アンモニウム基に転換可能な構造を有する重合性単量体を重合して得られる重合体を第四級アンモニウム基含有重合体に転換した重合単位である、請求項1又は2に記載のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料。
【請求項4】
前記重合体側鎖は、放射線グラフト重合を利用して得られるグラフト側鎖である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料。
【請求項5】
前記有機高分子基材は、繊維、繊維の集合体である織布又は不織布及びこれらの加工物から選択される、請求項1〜4のいずれか1に記載のヨウ素徐放・吸着型殺菌材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−307253(P2008−307253A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158533(P2007−158533)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】