説明

ヨーグルトおよびその製造方法

【課題】
良好な甘味を有し、かつ、低カロリーである後発酵型ヨーグルトを提供すること。
【解決手段】
ヨーグルトミックスとアドバンテームを含有する原料に乳酸菌スターターを添加した後、この混合物を容器に充填して発酵を行い、ヨーグルトを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルトおよびその製造方法に関し、特にアドバンテームを用いた良好な甘味を有するヨーグルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトは、食生活における健康志向の高まりによって、近年、需要が増える傾向にある。
【0003】
一方、ヨーグルトには、その特有の酸味や苦味を緩和して嗜好性を高めることを目的として、一般に、砂糖(スクロース)、果糖(フラクトース)、ブドウ糖(グルコース)、液糖などの糖質甘味料や蜂蜜などの素材が用いられることが多い。上記の甘味料や食品素材はカロリーの過剰摂取の原因となりやすく、肥満や肥満が関与することが知られている糖尿病などの疾患のリスクを高めることが課題である。上記の背景から砂糖などの高カロリー甘味料の使用量を減少させ、かつ、良好な甘味を有するヨーグルトが求められている。
【0004】
なお、ヨーグルトの製造方法には乳酸菌を発酵させる工程の違いにより、前発酵型製造方法と後発酵型製造方法の2種類の方法がある。前発酵型製造方法は、乳などの原材料(ヨーグルトミックス)に乳酸菌スターターを添加して発酵させた後に、甘味料や香料などの食品原料を添加して容器に充填する方法である。一方、後発酵型製造方法は、乳などの原材料(ヨーグルトミックス)に甘味料や香料などの食品原料を添加したものに乳酸菌スターターを添加し、これを容器に充填して発酵を行い、容器入りヨーグルトを製造する方法である。製造上の利点や個食容器のニーズの高まりから、最近では後発酵型製造方法が主流となってきている。
【0005】
甘味付けされた低カロリー乳酸発酵食品を提供するために、アスパルテームを用いることが提案されている(特許文献1)。しかしながらこの方法は、甘味付与のためにアスパルテームを用いているが、アスパルテームの分解による甘味の継時的低下を抑制するために、特定の乳酸菌を用いることが特徴であり汎用性において十分とは言えない。
【0006】
また、乳などの原材料(ヨーグルトミックス)にスクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテームを添加した状態で発酵を行う、低カロリー後発酵型ヨーグルトの製造方法が提案されている(特許文献2)。しかしながらこの製造法は高甘味度甘味料としてスクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテームのいずれかを用いることが必須であり、甘味質上の課題や製造コスト上の課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−97351号公報
【特許文献2】特開2008−136490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、良好な甘味を有し、かつ低カロリーである後発酵型ヨーグルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、乳などの原材料(ヨーグルトミックス)にアドバンテームを添加した後に発酵を行うことにより、良好な甘味を有する低カロリーヨーグルトを製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の各発明を包含する。
(1)ヨーグルトミックスとアドバンテームを含有する原料に乳酸菌スターターを添加した後、この混合物を容器に充填して発酵を行うヨーグルトの製造方法。
(2)ヨーグルトミックスとアドバンテームを含有する原料にアドバンテーム以外の甘味料素材も含有させることを特徴とする発明(1)記載のヨーグルトの製造方法。
(3)アドバンテーム以外の甘味料素材が砂糖、液糖、果糖、葡萄糖、糖アルコール、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、ステビア、モナチンから選ばれる1つ以上であることを特徴とする発明(1)または発明(2)記載のヨーグルトの製造方法。
(4)発明(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の方法により製造されたヨーグルト。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な甘味を有し、かつ低カロリーである後発酵型ヨーグルトの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のヨーグルトの製造方法は、ヨーグルトミックスにアドバンテームを添加した後に発酵を行うことを特徴とする。本発明においてヨーグルトミックスとは乳原料および必要に応じて加えた原料を混合し、殺菌した原料液をいう。一般的には、以下の工程で行われる。すなわち乳原料にバター等の油脂類、甘味料を混合して加温溶解し、加熱殺菌を行う。殺菌後、40℃程度に冷却する。
また本発明のヨーグルトに対するアドバンテームの添加量は、ヨーグルト中の乳原料や乳酸菌スターターの濃度や種類、製品の流通、保存状態によって異なるが、アドバンテームの添加量は砂糖甘味度換算で0.2〜20質量%が好ましく、1.0〜15.0質量%が適度な甘味を有するという点で更に好ましい。アドバンテームの甘味度は対砂糖で約20,000倍であることから、ヨーグルトに対するアドバンテームの添加濃度としては、通常は0.1〜10ppmの範囲で添加することが望ましく、適度な甘味を有するという点から0.5〜7.5ppmが更に好ましい。ただし、pHなどの条件によって甘味倍率が変動することから、上記の数値範囲に限定されるものではなく、目的に応じて添加量を設定することが望ましい。
【0012】
本発明で使用するアドバンテームは、正式名称、N−[N−[3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロピル]−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステルで示される化合物である。アドバンテームなどのアスパルチルジペプチドエステル誘導体は、アスパルテーム又はその誘導体を、フェニル基上に種々の置換基を持ち、かつ主鎖上に1から2個のアルキル置換基を持つ3−フェニルプロピオンアルデヒド誘導体、シンナムアルデヒド誘導体又は(2−フェニルエチル)アルキルケトン誘導体と還元剤(例えば水素/パラジウム炭素触媒)とを用いて還元的にアルキル化することによって容易に合成できる。或いは、通常のペプチド合成法(泉屋等、「ペプチド合成の基礎と実験」:丸善1985.1.20発行)に従って得ることができるβ位のカルボン酸に保護基を持つアスパルテーム誘導体(例えばβ−O−ベンジル−α−L−アスパルチル−L−アミノ酸メチルエステル)を、上記3−フェニルプロピオンアルデヒド誘導体、シンナムアルデヒド誘導体又は(2−フェニルエチル)アルキルケトン誘導体と還元剤(例えばNaB(OAc)H)とを用いて還元的にアルキル化(A. F. Abdel-Magid et al., Tetrahedoron Letters, 31, 5595(1990))した後に保護基を除去する方法、或いは必要に応じて不飽和結合を還元剤で飽和する方法によって得ることができる。また、上記3−フェニルプロピオンアルデヒド誘導体、シンナムアルデヒド誘導体又は(2−フェニルエチル)アルキルケトン誘導体の代わりに、これらのアセタール又はケタール誘導体等も還元的アルキル化の際のアルデヒド或いはケトン成分として用いられ得る。なお、本発明におけるアスパルチルジペプチドエステル誘導体の合成法は上記の通り例示されるが、必ずしもこれらに限られるものではない。
【0013】
本発明における乳原料は、乳を原料とした素材であれば特に制限されず、牛乳、山羊乳などの乳の他に、脱脂粉乳、練乳、生クリーム、乳蛋白なども用いることができる。本発明においては、これら乳原料に、必要に応じて油脂、甘味料等その他従来のヨーグルトミックスの配合剤として知られているものを添加することもできる。
【0014】
本発明において、ヨーグルトミックスの配合剤として用いられるものとしては、本発明の効果に影響を与えない範囲において、通常のヨーグルトと同様の構成をとることができる。例えば、糖質、安定剤、乳化剤、酸味料、pH調整剤、着香料、着色料、風味調整剤、酸化防止剤などを一例としてあげることができる。
【0015】
なお、本発明のヨーグルトには通常の糖質を用いることができるが、高甘味度甘味料と組み合わせることでカロリーを抑えることができることも利点である。
糖質としては、例えば、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、還元パラチノース、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)を用いることができる。また、高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、アリテーム、モナチン、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、甘茶抽出物(フィロズルチン)、ラカンカ抽出物(モグロシド)、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、ソーマチン、ラカンカ抽出物等の甘味成分が挙げられる。その中でも糖質としては良好な甘味を有するという点で砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、還元パラチノース、キシリトール、ラクチトール等)が好ましい。
【0016】
安定剤としては、特に限定はないが、例えば、アラビアガム、カラギナン、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、ローメトキシルペクチン(LMペクチン)、ハイメトキシルペクチン(HMペクチン)、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、グルコマンナン、でん粉、化工でん粉、加工でん粉、デキストリン、ジェランガム、キサンタンガム、プルラン、カードラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース塩、メチルセルロース、キチン、キトサン、ゼラチン等が良好な物性保持能を有するという点で好ましい。
【0017】
なお、本発明のヨーグルトには、その風味に合った食品及び必要成分を分散させても良い。食品として、例えば、ベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリー等)、柑橘類(ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、スウィーティー、キーライム、レモン等)、核果類(桃、杏、プラム、マンゴー、梅、チェリー、ライチ、等)、バナナ、ぶどう、イチジク、梨、りんご、パイナップル、メロン、キーウィ、アセロラ、パッションフルーツ、パパイヤ、アサイー、ヤーコン等のフルーツ類の果肉・果汁や野菜、ナッツ類、チョコレート、ゼリー、キャラメルなどが使用できる。特にヨーグルトの風味により適合するという点で、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリーなどのベリー類、桃、マンゴー、チェリーなどの核果類が好ましい。
また、本発明のヨーグルトには各種の果実系香料やシュガーフレーバーなどの香料類を添加することもできる。香料については天然香料、合成香料および複合香料のいずれも用いることができる。特にヨーグルトの風味により適合するという点で、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリーなどのベリー類、桃、マンゴー、チェリーなどの核果類の特徴的な香りを有するフレーバーや香料素材が好ましい。
【0018】
乳酸菌スターターとしては、特に限定されるのもではなく、通常ヨーグルトに使用されるものを用いることができる。例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・デルブッキー、ラクトバチルス・ブルガリカス等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・ジアセチラクチスなどのストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクチスなどのラクトコッカス属細菌、ロイコノストック・メセンテロイデス、ロイコノストック・ラクチス、ロイコノストック・クレモリスなどのロイコノストック属細菌、エンテロコッカス・フェーカリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属細菌、ペディオコッカス・クレモリスなどのペディオコッカス属細菌などを起用することができる。これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。上記の細菌の中でも、ヨーグルト風味の強さなど官能特性から、ストレプトコッカス・サーモフィリスおよびラクトバチルス・ブルガリカスの組合せ、ストレプトコッカス・サーモフィリスとラクトバチルス・ブルガリカスにこの2種以外の細菌を前述した細菌から選択される1種類以上の細菌を組み合わせたものを用いることが望ましい。
【0019】
本発明におけるヨーグルトの発酵は、ヨーグルトミックスとアドバンテームを含有する原料に乳酸菌スターターを添加した後に、容器に充填して発酵を行う。このとき原料の充填後に開口部を蓋材でシールして発酵させることが静菌性の点で好ましい。発酵は、原材料やスターター乳酸菌によって異なるが、25〜45℃で2〜72時間行う。
【0020】
本発明のヨーグルトを充填する容器としては、流通や小売に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、プラスチック、紙、ガラス、金属、陶器やそれらの複合材料を用いた容器を用いることができる。また、容器は通常の手段により密封包装して流通等を行うことが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法により得られるヨーグルトは、高甘味度甘味料を添加後に発酵を行い、得られたヨーグルトをソフトタイプ、ドリンクタイプ、フローズンタイプ等に加工することもできる。
【0022】
以下に実験例ならびに実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
<試験例1 各種高甘味度甘味料がヨーグルトの風味に与える影響>
市販のプレーンヨーグルト(明治乳業社製「明治ブルガリアプレーンヨーグルト」97.5gにアスパルテーム50mgおよび蒸留水2.5gを添加および混合して、アスパルテーム500ppm含有ヨーグルトを得た(砂糖甘味度換算で10%)。また前記市販のプレーンヨーグルト97.5gに0.02%アドバンテーム水溶液2.5gを添加および混合して、アドバンテーム5ppm含有ヨーグルトを得た。(砂糖甘味度換算で10%)。また前記市販のプレーンヨーグルト97.5gにアセスルファムカリウム50mgおよび蒸留水2.5gを添加および混合して、アセスルファムカリウム500ppm含有ヨーグルトを得た(砂糖甘味度換算で10%)。
これらのヨーグルト試料について、専門パネル5名による官能評価を実施した。評価は味の印象についてフリーワード式に記載する方法により実施した。
【0024】
その結果、アスパルテーム添加ヨーグルトについては「ヨーグルト風味とあう甘味」、「良好な甘味」、「ボディー感が付与される」とのコメントが得られた。また、アドバンテーム添加ヨーグルトについては「後味に強い甘味」、「砂糖のような甘味を後味に感じる」、「ボディー感が付与される」などのコメントが得られた。一方、アセスルファムカリウム添加ヨーグルトについては「先味に強い甘味を感じる」、「ボディー感が不足している」、「苦味を感じる」、「ヨーグルトの味とあわない」などのコメントが得られた。以上の結果から、アスパルテームならびにアドバンテームは若干の味質の差は認められるものの、ヨーグルトに良好な甘味を付与しうる甘味料であることが確認された。
【0025】
<試験例2 各種高甘味度甘味料が加糖ヨーグルトの風味に与える影響>
市販のプレーンヨーグルト(明治乳業社製「明治ブルガリアプレーンヨーグルト」1000gにグラニュー糖(日新製糖社製)40gを添加、混合して加糖ヨーグルトを得た。得られた加糖ヨーグルトに対して各種高甘味度甘味料を以下に示す方法にて添加して、砂糖ならびに高甘味度甘味料を含有するヨーグルトを調製した。なお、ヨーグルトの甘味度が砂糖換算で約8%になるように、各種高甘味度甘味料を添加した。上記加糖ヨーグルト97.5gにアスパルテーム25mgおよび蒸留水2.5gを添加および混合して、アスパルテーム250ppm含有ヨーグルト(試料1−A)を得た。上記加糖ヨーグルト97.5gに0.02%アドバンテーム水溶液1.25gおよび蒸留水1.25gを添加および混合して、アドバンテーム2.5ppm含有ヨーグルト(試料1−B)を得た。上記加糖ヨーグルト97.5gに0.5%サッカリンナトリウム水溶液2.5gを添加および混合して、サッカリンナトリウム125ppm含有ヨーグルト(試料1−C)を得た。上記加糖ヨーグルト97.5gにアセスルファムカリウム25mgおよび蒸留水2.5gを添加および混合して、アセスルファムカリウム250ppm含有ヨーグルト(試料1−D)を得た。これらのヨーグルト試料について、専門パネル5名による官能評価を実施した。
官能評価は、4種類の試料について「味の好ましさ」における、各試料の順位を記入させることによって行った。具体的には各自で一番味が好ましいと考える試料を1点、次に好ましい試料を2点、次に好ましい試料を3点、次に好ましい試料を4点とし、各試料についてパネルの点数を合計したものをその試料の点数とした。
なお、群間の有意差検定は、Mann−Whitney検定によって実施し、危険率5%未満をもって有意差あり、と判断した。得られた順位点の合計値を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示した通り、アスパルテーム含有ヨーグルト(試料1−A)は他のいずれの試料と比較しても、統計的に有意に良好な呈味を有することが確認された。また、アドバンテーム含有ヨーグルト(試料1−B)はアスパルテーム含有ヨーグルトと比較すると、味質の好ましさにおいては劣るものの、サッカリンナトリウム含有ヨーグルト(試料1−C)と比較すると良好な呈味を有する傾向を示しており(危険率=5.6%)、アセスルファムカリウム含有ヨーグルト(試料1−D)と比較すると有意に良好な呈味を有していた。
【0028】
<試験例3 各種高甘味度甘味料がストロベリー風味加糖ヨーグルトの風味に与える影響>
市販のプレーンヨーグルト(明治乳業社製「明治ブルガリアプレーンヨーグルト」1000gにグラニュー糖(日新製糖社製)40gおよびストロベリーフレーバー(ジボダン社製)3gを添加、混合して加糖ストロベリー風味ヨーグルトを得た。得られた加糖ストロベリー風味ヨーグルトに対して各種高甘味度甘味料を以下に示す方法にて添加して、砂糖ならびに高甘味度甘味料を含有するストロベリー風味ヨーグルトを調製した。なお、ヨーグルトの甘味度が砂糖換算で約8%になるように、各種高甘味度甘味料を添加した。上記加糖ストロベリー風味ヨーグルト97.5gにアスパルテーム25mgおよび蒸留水2.5gを添加および混合して、アスパルテーム250ppm含有ヨーグルト(試料2−A)を得た。上記加糖ストロベリー風味ヨーグルト97.5gに0.02%アドバンテーム水溶液1.25gおよび蒸留水1.25gを添加および混合して、アドバンテーム2.5ppm含有ヨーグルト(試料2−B)を得た。上記加糖ストロベリー風味ヨーグルト97.5gに0.5%サッカリンナトリウム水溶液2.5gを添加および混合して、サッカリンナトリウム125ppm含有ヨーグルト(試料2−C)を得た。上記加糖ストロベリー風味ヨーグルト97.5gにアセスルファムカリウム25mgおよび蒸留水2.5gを添加および混合して、アセスルファムカリウム250ppm含有ヨーグルト(試料2−D)を得た。これらのストロベリー風味ヨーグルト試料について、専門パネル5名による官能評価を実施した。なお、官能評価は、試験例2と同様に、4種類の試料について「味の好ましさ」における、各試料の順位を記入させることによって行った。
なお、群間の有意差検定は、Mann−Whitney検定によって実施し、危険率5%未満をもって有意差あり、と判断した。得られた順位点の合計値を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2に示した通り、アスパルテーム含有ストロベリー風味ヨーグルト(試料2−A)は他のいずれの試料と比較しても、統計的に有意に良好な呈味を有することが確認された。また、アドバンテーム含有ストロベリー風味ヨーグルト(試料2−B)はアスパルテーム含有ストロベリー風味ヨーグルトと比較すると、味質の好ましさにおいては劣るものの、サッカリンナトリウム含有ストロベリー風味ヨーグルト(試料2−C)およびアセスルファムカリウム含有ストロベリー風味ヨーグルト(試料2−D)と比較すると有意に良好な呈味を有していた。
【0031】
試験例1乃至3から、甘味として、アスパルテーム、アドバンテームが好ましく、サッカリン、アセスルファムカリウムは好ましくないことが判明した。これは、ヨーグルトの系においてはサッカリンやアセスルファムカリウムのような先味型甘味料素材の方が、アルパルテームやアドバンテームのような後味型の甘味料素材よりもヨーグルトの風味に合うだろうという事前予想とは大きく異なるものであった。
【0032】
<実施例1 アドバンテームを用いた後発酵ヨーグルトの製造>
脱脂濃縮乳(よつ葉乳業(株)社製)23.0kg、脱脂粉乳(雪印乳業(株)社製)3.23kg、生クリーム(よつ葉乳業(株)社製)3.93kg、タピオカ化工澱粉(日本食品化工(株)社製)0.7kg、ゼラチン(新田ゼラチン(株)社製)0.3kgおよび水67.19kgを調合タンク内にて混合し、約60℃までプレート熱交換機を用いて加熱した。加熱後、ゴーリン式乳化機(三和機械(株)社製)を用いて、15.0MPaの条件にて乳化処理を行った。乳化処理の後、プレート熱交換機を用いて95℃、6分間の殺菌処理を行い、プレート熱交換器により、45℃に冷却した。このようにして、殺菌済みミルクベースを得た。得られた殺菌済みミルクベース39.34kgにヨーグルトカルチャー懸濁液(クリスチャン&ハンセン社製:ストレプトコッカス・サーモフィラスおよびラクトバチルス・ブルガリスを含む)0.16kgならびに0.0528%アドバンテーム水溶液0.5kgを添加し攪拌した。
また、この時のアドバンテーム濃度は原料重量合計に対して、6.60ppmであった。攪拌後に、43℃、6時間、発酵させた。なお、発酵後のpHは4.5であった。発酵後、20メッシュ(目開き0.833mm)のインラインフィルターを用いてスタード化処理を行い、本発明のヨーグルトを得た。
得られたヨーグルト中のアドバンテーム濃度について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量分析を行った結果、4.92ppmであった。すなわち、配合量に対して約74.5%が残存していた。
得られたヨーグルト試料について、専門パネル19名による官能評価を実施した。官能評価は味の印象についてフリーワード式に記載する方法により、実施した。本発明のヨーグルトについては「良好な甘味を有する」、「後味の甘味が強い」、「持続性のある甘味」、「さわやかな甘味を感じる」、「甘味と酸味のバランスが良好」、「クセの無い甘味」などのコメントが得られた。以上の結果から、ミルクベースなどの原料にアドバンテームを添加した後に発酵させる、後発酵法により、良好な甘味を有するヨーグルトが調製可能であることが示された。
【0033】
<比較例1 アドバンテームの変わりにアスパルテームを用いた後発酵ヨーグルトの製造>
pH4.0に調整した25%還元脱脂乳3750mL、アスパルテーム3.0gを水に溶解してクエン酸にてpH4.5に調整した後に全量を3500mLとして100℃で5分間加熱殺菌したシロップ液3500mLおよびハイメトキシルペクチン40gを水に溶解して全量を2750mLとした後に100℃で30分間加熱して得られたペクチン溶液2750mLを混合し、ホモゲナイザーで均質化処理を行った後に、プレート熱交換機を用いて殺菌処理を行った。このようにして得られたpH調整殺菌乳にストレプトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・ブルガリカスを植菌し、40℃で24時間、発酵させた。
得られた発酵後ヨーグルトについてアスパルテーム含有量を、定法によりHPLCを用いて測定した結果、添加した量の1%が残存しており、添加した量の99%は発酵によって分解されていた。
【0034】
試験例1乃至3の結果から、アスパルテームはヨーグルトに添加した場合には良好な甘味を有することが判明したが、比較例1の結果からヨーグルトの発酵により分解されるという課題を有していることが示された。一方、乳などの原料にアドバンテームを添加して発酵させた場合には、アドバンテームが残存し、かつ、良好な甘味を有するヨーグルトを製造することが可能であることが試験例1乃至3および実施例1により示された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、良好な甘味を有し、かつ、低カロリーである後発酵型ヨーグルトおよびその製造方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーグルトミックスとアドバンテームを含有する原料に乳酸菌スターターを添加した後、この混合物を容器に充填して発酵を行うヨーグルトの製造方法。
【請求項2】
ヨーグルトミックスとアドバンテームを含有する原料にアドバンテーム以外の甘味料素材も含有させることを特徴とする請求項1記載のヨーグルトの製造方法。
【請求項3】
アドバンテーム以外の甘味料素材が砂糖、液糖、果糖、葡萄糖、糖アルコール、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテーム、ステビア、モナチンから選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のヨーグルトの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法により製造されたヨーグルト。

【公開番号】特開2012−200198(P2012−200198A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67287(P2011−67287)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】