説明

ライダ風速測定装置を有する風力タービン制御装置

風の制御を達成するためのライダ風速測定装置10、16、18を有する風力タービンが提供される。ライダ装置は、風場を横切る風速の測定値を生成するように、風力タービンの前方の領域30を走査するように構成されている。ライダ装置は、風力タービンのハブ6に配置され、視方向32a、32b、および32cは、ハブ6の回転が走査を確実にするように、回転軸から傾斜している。好ましくは、ライダ装置は、走査速度を増加させるように複数の視方向32a、32b、および32cを有する。このことは、いくつかの専用のライダシステムを有することによって、および/または多重化されたライダを使用することによって達成されることができる。風場の測定は、風力タービンの改良された制御を可能にし、効率、および摩耗の減少という利点を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンのための制御システム、およびピッチブレード制御を提供するためのライダシステムを有する風力タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、その再生可能な性質および汚染のないことにより、エネルギーを発生させる手段として人気が上昇している。風力タービンは、一般に、発電機と接続された2つまたは3つのブレードを備えるロータを有する。
【0003】
風力タービンが風からパワーを抽出することができる効率は、様々な要因に応じる。一定の翼端速度対風速比を維持することで、ある風力タービンの性能を改善することができることが知られている。しかし、このことは、風速についての情報を必要とする。US4,331,881は、風速が風杯風速計などの風速計によって決定され、発電機の界磁電流が、一定の翼端速度対風速比を維持するためにタービンに負荷を与えるように制御される、風力駆動発電機のための界磁制御システムを開示している。
【0004】
しかし、風杯風速計および類似のものは、タービンに装着されたとき、タービンでの風速の表示しか与えないという欠点を有する。タービンの特徴を変更するのには、有限量の時間がかかり、したがって正確な設置が実施されることができるように、タービンの前方から短い距離での風速が、理論上必要とされる。風力タービンの前方のマスト上に風速計を配置することが知られているが、タービンが風に面するように回転する場合、マストは、タービンの前方に常に正確に配置されるとは限らないことがある。
【0005】
レーザレーダ(ライダ)システムは、何年もの間、風速および方向を測定することが知られてきた。通常、これらは、COレーザシステムを採用しており、広範囲の用途で成功して採用されてきた。通常、ライダは、自然のエアロゾル(塵、花粉、水小滴など)からの放射を散乱し、出射放射と帰還放射との間のドップラー偏移を測定することによって動作する。風速および方向を測定するために、風ベクトルが、真の(3D)速度ベクトルが推論されることを可能にする角度範囲で交差されことができるように、円錐走査を通常使用してライダを走査するのが通例である。ライダが交差している方向が、高い精度を有すると常に知られている場合、他の走査パターンが、真のベクトルを決定するために使用されることができる。このようなライダは、軍事および民間の両方の用途で何年もの間、ウインドシアー、乱流、および後流渦を測定するために使用されてきた。
【0006】
Laser Doppler Velocimetry Applied to the Measurement of Local and Global Wind,J.M.Vaughan and P.A.Forrester,Wind Engineering,Vol.13 No.1 1989は、ライダシステムが、最も効率的な動作のためのブレードピッチの制御を可能にするために、風力タービンの前で風の測定を行うためにどのようにして使用されることができるかを記載している。
【0007】
WO98/42980は、レーザ風速計が、ナセルの運動を追従するように風力タービンに装着されることができることを教示している。言い換えれば、ライダシステムは、たとえばナセルに対して同じ位置で常に見るように、ナセルに装着することによって配置されることができる。このようにして、ライダシステムは、ある距離だけ風上での風速の表示を常に与える。このことは、コントローラが、一定の翼端速度対風速比を維持するために、検知された風速に対して適切なブレードピッチを設定することを可能にする。
【0008】
しかし、WO98/42980に記載された装置によって収集された風速データは、制限されており、風力タービンの基本的な制御のみが許される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、改良された風力タービン制御システムを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって本発明によると、ライダ手段が、タービンのハブ内に装着され、ハブが回転するとき、ライダ手段が、タービンの前方の領域を走査するように、その回転軸に対して傾斜された少なくとも1つの視方向を有する、風速を決定するためのライダ手段を有する風力タービンが提供される。
【0011】
タービンの前方の風速は、一様な風速場であるとは考えられず、ブレードによって掃引される領域を横切る風速における変動が、タービンが動作する方法に影響を与える可能性がある。タービンの前方の領域、すなわちナセルが現在指している方向の前方の領域を横切ってライダ手段を走査することによって、風力タービンの制御を補助することができる風速場が決定されることができる。改良された制御スキームのいくつかの例を以降に説明する。
【0012】
ライダ手段をハブ内に装着することは、ハブが風によって動かされたとき、ハブの回転が原動力走査手段を供給することを可能にする。このことは、複雑な走査機構の必要性を除去するだけでなく、ハブの装着が、システムに装着されるナセルとは異なり、ライダ手段が風力タービンのブレードによっていかなる点でも妨害されないことを意味する。
【0013】
軸から外れて傾斜された1つのみの視方向を有するライダ手段は、走査を完了するためにハブの1回転の時間がかかる。大きな風力タービンでは、回転速度は、かなり遅いことがある。十分な周波数ですべての方向から風速データが得られることを確実にするために、ライダ手段は、複数の視方向を有してもよい。たとえば、すべて同じ角度またはそうでない場合同じ領域を走査するように構成された3つのライダ視方向が、ハブの周囲に等間隔で設けられることができる。そのとき、ハブの1回転の結果、タービンの前方の同じ領域が3回走査されることになる。たとえば4つまたは6つの方向など3つ以上の視方向が、必要に応じ提供されることができる。
【0014】
それに加えて、または別法として、少なくとも2つの視方向が、ハブが回転したとき、異なる領域を走査するように構成されることができる。たとえば、ハブに対して異なる角度で傾斜された2つの視方向が、ハブが回転したときに異なる領域を走査することになる。このようにして、タービンの前方の風場についてのより詳細な情報が作成されることができる。たとえば、3つの視方向が回転軸に対してある角度で提供され、別の3つの視方向がより低い角度で提供され、3つの視方向のそれぞれのグループが、ハブの周囲で等距離に離隔される。このことの結果、2つの円錐走査パターンが追跡されることになる。外側の円錐に対応する走査が、より高い角度で3つの視方向によって追跡され、内側の円錐が、より低い角度で3つの視方向によって追跡される。両方の円錐は、各回転ごとに3回掃引される。1つの視方向が、回転軸に沿うまたは回転軸と平行になるように配置されることもできる。
【0015】
ライダ手段は、単一の視方向を有するいくつかの別個のライダを備えることができる。各ライダは、それ自体のレーザ、送信および受信光学装置、および検知器を有する。これは、送信パワーの損失なく、複数の視方向を達成する簡単な手段である。しかし、いくつかの視方向を有することのコストは、少なくともいくつかの視方向を提供するための多重化されたライダ装置を使用することによって減少され得る。多重化されたライダ装置は、1つのレーザ源を有するが、ビームが異なる視方向に送信されることを可能にするための2組以上の送信/受信光学装置を有する。多重化されたライダ装置は、単一のビームが、異なる送信/受信光学装置に周期的に切り替えられる切替型のもの、またはレーザビームが異なる送信ビ−ムに分割されるビームスプリッティング型のものであってもよい。切替型の多重化されたライダは、同じレベルのデータを供給するために、3つの別個の単一のビームライダの周波数が3回操作される必要がある。ビームスプリッティングタイプは、同じ周波数で動作することができるが、各チャンネルに別個の検知器を必要とし、明らかに出力ビームパワーが減少される。
【0016】
必要に応じて、ライダ手段は、走査手段を備えることができる。走査手段は、使用中、ハブに対して少なくとも1つの視方向を走査することができる。ハブの回転とともに複雑な走査パターンを与えることができる、回転プリズムまたはミラーなどの比較的簡単な走査手段が、使用されることができる。しかし、走査手段は、ハブ内に配置された移動する光学系を一般に必要とし、このことは複雑性を加える。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つの視方向が、回転軸の5°〜20°の範囲で、より好ましくは回転軸の10°〜20°の範囲で傾斜されている。この範囲の、すなわち回転軸に対してほぼ15°傾斜された軸外れ角が、タービンの前方の風場の良好な走査を与える。このことは、視野が十分に広い風場で風速が決定されることを可能にする。風の変化は、必ずしも風力タービンの前方で直接生じるとは限らず、広い視野を横切る風場を監視することは、軸外れから生じる風の変化を検知することができる。
【0018】
ライダ手段による風場の測定値が、風力タービンを制御するための制御手段に好ましくは入力される。ある有用な制御は、ロータブレードのピッチを制御することである。
【0019】
本発明の1つの用途は、ガスト制御にある。タービンでの風速の突然の変化は、1つまたは複数のブレードに過度の負荷を及ぼし、応力の増加に至ることがある。このことは、次に、より短い寿命またはタービンに対するより頻繁な調整をもたらす、疲労を生じさせることがある。ライダを使用すると、風の変化がタービンタワーに到達するかなり前に、ガストが検知されることができる。十分な警告が与えられると(通常2、3秒)、ブレードは、(大型タービンで一般的であるピッチ制御を使用して)フェザーリングされることができ、それによってガストが生じさせる過度の負荷が減少する。このようにして、摩耗が減少されることができ、動作寿命が延長する。極端な場合には、このような機構が、損傷が生じるのを防止することができる。
【0020】
ガストは、それらの性質によって、タービンの前方から直接生じないかもしれない。このため本明細書に記載したガスト検知システムは、軸から外れた風の変化が、同様に検知されることを可能にする。
【0021】
好ましい実施形態では、制御手段は、ブレードが回転するとき、各ブレードのピッチを個別に変更するように構成されている。風速は高度とともに通常増加するため、最上部のブレードへの風圧が、下側のブレードへの風圧よりもずっと高いことが極めて通常である。このことは、伝達列への負荷の不均衡に至ることがある。しかし、円板上での風速の変化は、各回転中に個々のブレードを動的に変化させること、すなわち負荷釣合によって、釣り合わされることができる。このことは、駆動列上での釣合を改善し、摩耗を減少させ、寿命を改善する。理論上、ブレード当たり1つのライダビームが、風がその位置に到達するときまでに所与のブレードが到達する位置のすぐ前方の点での、ロータの前方の風速を測定する。
【0022】
異なる制御方式の下で、最適な角度に対してブレードを動的にフェザーリングすることによって、変動する風からより多くのエネルギーを抽出することが可能である。このタイプの制御は、たとえば、負荷釣合とともに使用されることができる。風が比較的弱い(および負荷が小さい)とき、風から最大量のエネルギーを抽出するようにブレードが周囲を掃引するとき、各ブレードのピッチを変化させることが優先的である。もちろん、このことは、負荷釣合の原理と対照的であるが、中間の風速ではこれは、あまり重要ではない。しかし、特に最大の出力パワーのために必要とされる風速を超えて、風速が増加すると、制御方式は、代わりに負荷釣合に切り替わることができる。このようにして、同じライダセンサが、高速および過度の風でのより大きな保護を与えながら、ほとんど条件で、エネルギー生産を最大化するために使用されることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、ハブに装着されたライダ手段を使用しているが、ライダ手段をいかなる場所に装着することも可能である。たとえば、ライダシステムは、ナセル上に装着され、視方向が、回転軸上のハブ内に配置されたミラーに向けられてもよい。したがって、ハブの回転が、ミラーを走査し、軸を外れた走査を提供する。このことは、中空の主軸を通ってライダビームを方向付けることによって達成されることができる。いくつかのタービンは、オフセットしたギアボックスを有し、中空の主軸を有する。別法として、走査光学系が、ナセル上に装着されてもよい。複数のライダ視方向が、ナセルの周囲に採用され、ナセルの前方の風場を走査するために異なる方向で走査されてもよい。したがって、本発明の第2の態様によると、複数の視方向でタービンの前方の領域を走査するように構成されたライダ手段を有する風力タービンが提供される。好ましくは、ライダ手段は、多重化されライダ装置、すなわち、2組以上の送信/受信光学装置と結合された単一のレーザを有するライダ装置である。
【0024】
したがって、本発明は、風上を向いており、風力タービンの制御を可能にするように風力タービンの前方の風場を走査する。しかし、ライダシステムを風力タービンの風下に向けて、すなわち後向きにライダシステムを装着することにも利点がある。ライダを後向きに向けて装着することによって、風がタービンを通過した後の風場、すなわちタービン後流についての情報が収集されることができる。この情報は、風力タービンによって生じる乱流についての情報を含む。タービンの後流内の流れについての知識が、性能を最適化するために制御システム内で使用されることができるタービン性能のモデリングを補助することができる。好ましくは、後ろを向いたライダが、当該領域を走査するための走査ライダであってもよい。
【0025】
さらなる改良点は、風力タービンへのエネルギー入力を定量化するために走査ライダ手段を使用することである。このことは、現在のマスト装着風量計技術よりも正確な風場測定を提供することができ、タービンの方位に無関係である。また、WO98/42980に記載されているような単一のスターリングビームよりも厳密な入力された風力エネルギーの測定が提供される。このような情報は、タービン性能の重要な測定であるタービンパワー曲線の決定に使用されることができる。パワー曲線は、上記で説明したように、負荷釣合またはガスト保護のために構成された埋込型ライダシステムによって連続的に監視されることができる。別法として、パワー曲線は、特にこの目的のためにタービンに一時的に装着され、次にタービンからタービンへ移動され、必要に応じて測定を行うように構成された、別個のライダ手段を使用して測定されることができる。
【0026】
ここで本発明を、以下の図面を一例として参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、ハブ内に装着され、かつその回転軸に対して傾斜された視方向を有するライダシステムを有する風力タービンを示している。タービンは、ナセル4を支持しているタワー2から成る。ナセル4は、ブレード8を支持する回転ハブ6と接続されている。3枚のブレードは、現代の風力タービンで一般的である。
【0028】
ナセル4は、最大のパワー抽出のためにタービンが風に常に向かうように、タワー2と直交する平面内で少なくとも部分的に回転可能である。ブレード8のピッチは、ブレードによって受けられる力を変化させるように、ハブ内に配置されたアクチュエータによって制御可能である。通常、ブレードのピッチは、有効なパワー抽出を最大化させるように変化させられるが、強風中では、ブレードは、タービンを保護するためフェザーリングされてもよい。
【0029】
WO98/42980は、レーザ風速計が、風状態の警告の向上を与え、適切な動作がとられることを可能にする、タービンの前方のある距離での風速を決定するように、ナセル4上にどのようにして装着されるかを記載している。
【0030】
しかし、タービン前方の風場は、通常一様ではない。このことは、特に現在建造されている大型タービンでは、ブレード8によって掃引される円板を横切って異なる状態が加えられることに至ることがある。たとえば、地面から上へ進むにつれて、風速が増加するのが一般的である。このため、タービンの上部でのブレードの負荷が、下側のブレードまたは複数のブレードでの負荷よりも大きいことがある。このことは、負荷の不均衡を生じさせることがある。強風中では、この負荷の不均衡が顕著になり、タービン伝達装置の過度の摩耗に至ることがある。強くない風の中では、負荷の不均衡は大きくはないが、ブレードによって掃引される円板の中央での風速に対して決定されるピッチは、最も効率的ではないかもしれない。
【0031】
また、ガストが、タービンの前方から直接発しないことがあり、したがって軸の外れたガストが、タービンで発生し、損傷を生じさせることがある。
【0032】
したがって、本発明の一実施形態では、ライダが、ハブ6内に配置され、その視方向を軸から外れて傾斜されている。このことは、図3により詳細に示されている。
【0033】
ライダヘッドおよび電子部品10、すなわちレーザ源および検知器が、振動を最小化するように回転軸上の密封されたユニット内に配置されている。ナセル(図示せず)内のそれぞれ電源および制御ユニットとの接続12、14は、ハブとナセルとの間のスリップリングを介している。別法として、ライダからの出力は、光ファイバリンクによって、または無線通信によって通信されてもよい。制御ユニットは、ライダユニットとともにハブ内に配置されてもよいが、風速データを外部、たとえば監視目的のための中央制御ユニットに通信することがまだ望まれる。
【0034】
光ファイバ16は、ライダヘッドを送受信光学装置、すなわち望遠鏡18と連結している。望遠鏡18は、チューブ20内に配置され、ハブ軸22に対してある角度で位置付けられている。チューブは、ハブ内の開口26を通って前部光学窓24に到達する塵および降水の量を減少させる。チューブ20内の排水穴28が、チューブを乾いた状態に保持する。実用上、これは十分でないことがあり、光学装置に面する前部表面を清浄に維持するために、チューブを通じて清浄な乾燥空気を吹き付けることがより好ましいことがある。フィルタおよびドライヤーを通過する入射風を使用する簡単な受動的なコンプレッサで、恐らく十分である。そうでない場合、能動的なファンが使用されることができる。塩の堆積が起こる沿岸領域では特に、多くの自動車のヘッドランプを清浄するために頻繁に使用されているものなどの簡単なウォッシュワイプ性能を組み込むことが賢明である。
【0035】
このようにして、風によるハブの回転が、タービンの前方の領域の周囲でライダを走査する。図1に戻って参照すると、円錐走査パターン30が、軸に対してある角度で傾斜された単一のライダによって達成されることがわかる。
【0036】
オフセット角度(ハブ軸に対する)の選択は、突風が、垂直でない角度で到達することが期待される程度に応じる。これは、タービンブレードの前方でのサンプリング位置の選択にも応じる。これらのパラメータは、タービン設計ごとに様々であり、タービンの厳密なサイトでも変化する。望遠鏡における簡単な焦点機構が、設置中、またはタービン動作の間に動的に、ライダプローブ位置が容易に調節されることを可能にする。軸に対してほぼ±15°の角度が、良好な有効範囲を提供する。
【0037】
当業者は、風速を決定することが可能ないかなるライダシステムも使用されることができることを理解されよう。しかし、特に有用なライダシステムが、その内容が、特に5頁25行から7頁16行までに記載されている実施形態を参照することによって、本明細書に組み込まれるWO01/35117に記載されている。
【0038】
大型の風力タービンでは、ハブの回転速度は、毎分10回転にまで低い速度に到達することがあり、より大きなタービンは、さらに遅い回転速度を有することがある。したがって、単一の視方向を有する単一のライダは、一走査を完了するために約6秒間かかる。これは、タービンの制御のために有用な風場データを提供するにははるかに遅すぎることがある。
【0039】
したがって、本発明の別の実施形態では、複数の視方向を備えるライダシステムを提供することが提案される。図2は、3つのライダ視方向を備えるハブの正面図を示している。この例では、3つの視方向が、各視方向によって走査される領域が同一であり、視方向が等間隔に離隔されるように、すべて構成されている。図1に戻って参照すると、このような構成は、1回転ごとに円錐走査領域を3度走査する、言い換えれば、走査の各部分が、2秒ごとに繰り返され、このことは十分な情報を与える。
【0040】
もちろん、これよりも多くの視方向が、必要に応じて使用されることができる。同じ走査を繰り返す6つの視方向は、1秒ごとに更新を提供する。視方向は、より完全な情報を提供するために風場の異なる領域を走査するように構成されることもできる。1つ視方向が、ハブ軸上に、またはハブ軸と平行に配置されることさえもできる。
【0041】
いくつかの視方向を得ることは、異なる方向を指している図3を参照にして説明するような望遠鏡構成をそれぞれ有する、上記に記載したいくつかのライダを提供することによって容易に達成されることができる。
【0042】
しかし、ある状況では、多重化されたライダ装置を使用することが望ましいことがある。多重化されたライダ装置は、2組以上の送信/受信光学装置と接続された単一のレーザ源を有するものである。たとえば、図3のライダヘッド10は、3つの、すなわち異なるように配置された望遠鏡と連結されることができる。
【0043】
図4は、適切な多重化されたライダ装置の概略図を示している。
【0044】
レーザ源11が、光ファイバケーブル42と結合されたレーザビームを放出する。ビームスプリッタ44が設けられ、レーザパワーの小さな部分を、局部発振器信号として光ファイバケーブル46へ方向付け、残りの光パワーを、光ファイバケーブル48へ方向付ける。当業者は、局部発振器信号の光パワーが、有利には、検知器内の最適化されたショットノイズの支配を与えるように調節されることを認識されよう。
【0045】
3方向ビームスプリッタ50が、光ファイバケーブル52a、52bおよび52cの間で光ファイバケーブル48からのレーザパワーの入射を等しく分割し、光ファイバケーブル52a、52b、および52cは、トランシーバ54a、54b、および54cとさらに結合される。各トランシーバ54は、レーザ放射を送信し、また任意の受信された放射(すなわち、物体からそれに戻って反射された放射)を、それぞれの光ファイバケーブル56に出力する。
【0046】
光ミキサ58が、光ファイバケーブル56のそれぞれの受信された放射を、ビームスプリッタ44によって供給された局所発振器信号と干渉的に混合する。結果としての干渉的に混合された信号が、光ファイバケーブル59に沿って各検知手段27のそれぞれに出力される。パーソナルコンピュータ(または専用のプロセッサ)60が、検知手段27のそれぞれによって供給されたデータを処理し、必要に応じてレンジまたは速度データを生成する。このようにして、装置が、3つのトランシーバに対して、レンジおよび/または速度の3つの同時の測定を提供する。しかし、これは、各トランシーバがそれ自体の検知手段27を必要とすることを代償にしている。
【0047】
別法として、ビームスプリッタ50の代わりに、光スイッチが、光ファイバケーブル48からの放射を受信し、その放射を、各光ファイバケーブル52a、52b、または52cを介して、トランシーバ54a、54b、および54cのいずれか1つに方向付けるために設けられることができる。各トランシーバ54はまた、任意の受信された放射(すなわち任意の戻された放射)を結合して、該当する光ファイバケーブル52へ戻し、次に光スイッチが、この放射を、選択された光ファイバケーブル52から、LO信号および単一の検知器への送信と混合するために光ファイバケーブルへ方向付ける。次にレンジおよび速度情報が、必要に応じて、特定の選択されたトランシーバに対してパーソナルコンピュータ60によって計算されることができる。
【0048】
このようにして、光スイッチが、光パワーを1つのトランシーバへ送り、そのトランシーバによって受信された戻り信号を検知手段27へ送り、それによってレンジまたは速度情報を提供する。光スイッチを切り替えることによって、トランシーバが、次々に作動され、準同時的な測定が行われることを可能にする。
【0049】
光スイッチは、干渉的に情報の顕著な損失なしに光信号を送ることが可能であるいかなる装置であってもよい。このようなスイッチは、通信の分野で通常使用されている。
【0050】
風場測定の結果は、次に、風力タービンの改良された制御を提供するために使用されることができる。上述のように、軸から外れたガストが、検知されることがあり、タービンのブレードは損傷を防止するためにフェザーリングされる。
【0051】
しかし、ブレードによって掃引される円板を横切る異なる風速の測定値は、各個別のブレードのピッチが、回転するにつれて変更されることを可能にする。上述のように、タービンが大きいほど、より遅い回転速度を有し、それが回転するときにブレードのピッチを調節することが可能である。
【0052】
次にブレードのピッチが、ブレードを横切る負荷を制御し、負荷の釣合を達成するために移動されることができる。このことは、伝達装置の過度の摩耗を防止するために上述のように強風中で有用である。強くない風の中で、負荷の釣合が課題とならず、最大の効率が必要であるとき、各ブレードのピッチが、回転全体を通じて最大の効率で機能することを確実にするために変更されることができる。
【0053】
ガストフロントが、風力タービンの前方で数百メートルにわたって、それらのコヒーレンスを維持するかどうか決定することもまた重要である。本発明のライダは、その到達を待つために、タービンにより近いところを走査することによって追従される、ある距離のガストフロントの識別を可能にする。ガストの伝播は、異なる範囲での風速を相関することによって監視されることができる。レンジゲートの設定は、様々な距離にわたって相関関係を調査し、タービンの適切な制御を可能にする到着時間の遅延を測定するために変更されることができる。タービンによって収集されたデータは、タービン設計の改良に至る長期間の解析のためにダウンロードされることもできる。
【0054】
ロータ平面の後方の空気流もまた、タービン製造業者および風力発電地帯の開発業者の関心事である。この後流における流れの詳細な特徴は、タービン性能のモデリングを補助し、最適な動作のためのタービン設定を制御する制御システムで使用されることができる。また、個々のタービンを風力発電地帯に設置するとき、風力タービンのいわゆるシャドーイング効果が評価されなければならない。すなわち、タービンの有する風の流れへの影響が、風下に配置された他のタービンに影響を与える。実際、既存の風力発電地帯では、タービンによる後流の測定が、風力発電地帯の効率を全体として最大化するように、そのタービンまたは他のタービンを制御するのに使用されることができる。このようにして、ライダシステムが、風力タービンの下流側の空気流を測定するように風力タービンに装着されてもよい、すなわち、後側を向いたライダが、風力タービンのナセル内またはナセル上に装着されてもよい。好ましくは、ライダは、たとえば、シャドーイングによって影響されそうな領域を精査するために、タービンの後ろの当該領域を走査するための走査ライダである。別法として、複数のライダ、または複数の視方向を備える1つのライダが、風下領域内のナセルに対して空間内で固定された点を見るために使用されてもよい。
【0055】
風下を向いたライダシステムによって収集された情報は、上述のように、将来より良いタービンを設計するのに使用されることができる風力タービンの性能の解析のために有用である。風力タービンからの後流を理解することは、風力発電地帯の設置を理解するのにも有用であり、それらが環境にもたらす効果は、風力発電地帯内への個々のタービンの設置も同様に改善する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】風力タービンのハブ内の軸からずらして装着されたライダの概略図である。
【図2】3つのライダ視方向を備える風力タービンのハブおよびブレードの正面図である。
【図3】風力タービンのハブ内に装着されたライダ装置の概略図である。
【図4】複数の視方向を有する多重化されたライダ装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風速を決定するためのライダ手段を有する風力タービンであって、ライダ手段が、タービンのハブ内に装着され、ハブが回転するときライダ手段がタービンの前方の領域を走査するように、回転軸に対して傾斜された少なくとも1つの視方向を有する、風力タービン。
【請求項2】
ライダ手段が、複数の異なる視方向を有する、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
ライダ手段が、単一の視方向をそれぞれ有する複数の個別のライダを備える、請求項2に記載の風力タービン。
【請求項4】
ライダ手段が、2つ以上の視方向を有する少なくとも1つの多重化されたライダ装置を備える、請求項2または3に記載の風力タービン。
【請求項5】
少なくとも1つの視方向が、回転軸の5°〜20°の範囲内の角度で傾斜されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項6】
少なくとも1つの視方向が、回転軸の10°〜20°の範囲内の角度で傾斜されている、請求項5に記載の風力タービン。
【請求項7】
ロータブレードのピッチを制御するための、ライダ手段の出力に応答する制御手段をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項8】
制御手段が、入射するウインドガストが検知されたとき、ロータブレードをフェザーリングするように構成されている、請求項7に記載の風力タービン。
【請求項9】
制御手段が、ブレードが回転するとき、各ブレードのピッチを個別に変更するように構成されている、請求項7または8に記載の風力タービン。
【請求項10】
制御手段が、エネルギー抽出を最大化するために各ブレードのピッチを変更するように構成されている、請求項9に記載の風力タービン。
【請求項11】
制御手段が、負荷の釣合を提供するために、各ブレードのピッチを変更するように構成されている、請求項9に記載の風力タービン。
【請求項12】
複数の視方向でタービンの前方の領域を走査するように構成されたライダ手段を有する風力タービン。
【請求項13】
ライダ手段が、多重化されたライダ装置である、請求項12に記載の風力タービン。
【請求項14】
ライダ手段が、風力タービンのナセル上に装着されている、請求項12または13に記載のタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−519334(P2006−519334A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502337(P2006−502337)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000841
【国際公開番号】WO2004/077068
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】