説明

ライトガイド体

【課題】光線の漏洩を抑制して光学模様に光線を十分に伝送することのできるライトガイド体を提供する。
【解決手段】LED1から周面に入射した光線をXY方向に導光する光透過性のコアフィルム層2の表面に、導光された光線をZ方向に照射する光学パターン3を形成したライトガイド体で、コアフィルム層2の表裏面にそれぞれ積層されるクラッド粘着層10・10Aと、各クラッド粘着層10・10Aに積層される遮光層20・20Aとを備える。コアフィルム層2に高屈折率を付与するとともに、クラッド粘着層10・10Aにコアフィルム層2の屈折率よりも低い低屈折率を付与し、コアフィルム層2とクラッド粘着層10・10Aとの屈折率の差を0.1以上とする。クラッド粘着層10・10Aがコアフィルム層2内に光線の大部分を閉じ込めるので、光線が漏洩して損失を増大させたり、操作部以外の部分を発光させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話に代表される携帯機器や情報機器等に使用されるライトガイド体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話は、電話機能やメール機能等の活用の際、筐体表面の操作ボタンが発光するが、この操作ボタンを発光させる場合には、導光機能を発揮する図示しないライトガイド体が使用される。この種のライトガイド体は、様々なタイプがあるが、例えば、LEDと光透過性の導光層とが隣接配置され、導光層の表面に、光線を上方向に照射する操作用の光学模様が形成されている。
このようなライトガイド体は、LEDの光線が導光層の内部に入射してXY方向に反射しながら導光され、導光層の光学模様から上方に光線が照射される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007‐27115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるライトガイド体は、以上のように構成され、LEDの光線が導光層内に照射されてXY方向に単に導光されるに止まるので、導光層の表裏面から光線が漏洩して損失を増大させたり、操作ボタン以外の部分を発光させ、携帯電話の意匠性や体裁を悪化させるおそれがある。
このような弊害を払拭するには、導光層に光吸収層をそれぞれ貼着すれば良いが、光吸収層を単に貼着すると、光線の漏洩を防止して損失を抑制することができるものの、光吸収層に必要な光線までもが過剰に吸収され、LEDから離れた光学模様に光線が十分に届かないおそれがある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、光線の漏洩を抑制して光学模様に光線を十分に伝送することのできるライトガイド体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、光源から周面に入射した光線をXY方向に導光する光透過性のコア層に、導光された光線をZ方向に照射する光学模様を形成したものであって、
コア層の表裏面にそれぞれ積層されるクラッド層と、各クラッド層に積層される遮光層とを含み、コア層に高屈折率を付与するとともに、クラッド層にコア層の屈折率よりも低い低屈折率を付与したことを特徴としている。
【0007】
なお、一方の遮光層に対向する入力センサと、他方の遮光層に対向する視認可能な装飾層とを含むことができる。
また、一の遮光層に光透過性のメンブレン層とシート層とを順次積層し、メンブレン層に、シート層を貫通する接点部を設け、シート層には、接点部をON・OFFするキートップを上下動可能に支持させることができる。
【0008】
また、光学模様の密度を光源から遠ざかるにしたがい高くすることもできる。
また、コア層をポリカーボネートにより形成し、クラッド層をアクリル樹脂により形成することもできる。
また、クラッド層を、シリコーン系粘着剤あるいはアクリル系粘着剤からなる粘着層とすることも可能である。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における光源は、単数複数を特に問うものではない。また、コア層とクラッド層との屈折率の差は、0.1以上であることが好ましい。クラッド層は、光学模様を露出させるよう積層されても良いし、被覆するよう積層されても良い。このクラッド層は、粘着性の粘着層で、空気の侵入を防ぐ観点から遮光層と略面一に揃えられることが好ましい。入力センサは、静電容量方式でも良いし、抵抗膜方式等でも良い。さらに、本発明に係るライトガイド体は、携帯電話に代表される携帯機器、音楽機器、家電機器、情報機器等に適宜使用することができる。
【0010】
本発明によれば、光源が発光すると、光線は、コア層に照射され、コア層とクラッド層との境界面を反射しながらXY方向に導光され、光学模様からZ方向に照射される。この際、光線は、コア層からクラッド層に臨界角よりも小さい角度で入射する場合には、コア層の屈折率よりもクラッド層の屈折率が低いので、コア層とクラッド層との境界面で全反射し、クラッド層に漏れることが少ない。これに対し、コア層からクラッド層に臨界角よりも大きい角度で入射する場合には、クラッド層の外側の遮光層に吸収されるので、クラッド層から外部に漏れることが少ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コア層の表裏面にそれぞれ積層されるクラッド層と、各クラッド層に積層される遮光層とを含み、コア層に高屈折率を付与するとともに、クラッド層にコア層の屈折率よりも低い低屈折率を付与するので、光線の漏洩を抑制して光学模様に光線を十分に伝送することができるという効果がある。
【0012】
また、一方の遮光層に対向する入力センサ、特に静電容量方式の入力センサを使用すれば、温度、圧力、粉塵等の影響を受けることなく、入力時の応答速度や分解能を向上させることができる。また、他方の遮光層に対向する装飾層を用いれば、ライトガイド体を装飾して意匠性を向上させることができる。
また、光学模様の密度を光源から遠ざかるにしたがい高くすれば、光学模様の光源からの距離にかかわらず、光学模様から照射される光線の輝度等を均等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るライトガイド体の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係るライトガイド体の第2の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態におけるライトガイド体は、図1に示すように、横方向のLED1から入射した光線を導光する透明のコアフィルム層2の表面に、コアフィルム層2に導光された光線を上方向に照射する光学パターン3を必要数形成し、コアフィルム層2に表裏一対の透明のクラッド粘着層10・10Aをそれぞれ積層するとともに、各クラッド粘着層10・10Aには暗色の遮光層20・20Aを積層しており、携帯電話の筐体に内蔵される。
【0015】
LED1は、例えば発光効率に優れる小電力タイプからなり、図示しない携帯電話の筐体の周縁部付近に設置され、コアフィルム層2の周面に僅かな隙間を介して対向しており、携帯電話の電話機能やメール機能の使用に伴い、コアフィルム層2の周面に矢印で示す光線を照射するよう機能する。
【0016】
コアフィルム層2は、高屈折率を有する所定の材料を使用して0.2〜0.4mm程度の厚さを有する光透過性の平面矩形に成形され、LED1から入射した光線をXY方向に導光するよう機能する。このコアフィルム層2の所定の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば屈折率が1.59のポリカーボネート、屈折率が1.49のアクリル樹脂、屈折率が1.48のポリウレタン樹脂等があげられる。コアフィルム層2の周面のうち、LED1に対向しない周面は、必要に応じ、黒色を着色して不要な光線を吸収することができる。
【0017】
光学パターン3は、例えばレーザにより切削加工されたり、白色インクによりスクリーン印刷されたり、ドット印刷され、コアフィルム層2に導光されて来た光線をZ方向、すなわち上方向に透過して照射するよう機能する。この光学パターン3は、携帯機器の操作に必要な文字、図形、記号等の操作部として形成され、操作者の指に接触される。光学パターン3のパターン密度は、LED1からの距離にかかわらず、光線を均等に照射することができるよう、LED1から遠ざかるにしたがい徐々に高くなるよう調整される。
【0018】
クラッド粘着層10・10Aは、コアフィルム層2の屈折率よりも低い低屈折率を有する所定の材料を使用して25〜50μm程度の厚さを有する光透過性の平面矩形に成形され、コアフィルム層2の表裏面に粘着剤を介しそれぞれ粘着されており、コアフィルム層2内の光線を全反射して閉じ込める。
【0019】
クラッド粘着層10・10Aの所定の材料としては、粘着性を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば屈折率が1.49のアクリル樹脂、屈折率が1.42のフッ素樹脂、屈折率が1.41のシリコーン樹脂等があげられる。コアフィルム層2の表面側に位置するクラッド粘着層10Aは、光学パターン3と遮光層20Aとの間に凹凸が生じて空気の侵入を招かないよう、光学パターン3を被覆する。
【0020】
コアフィルム層2とクラッド粘着層10・10Aとの屈折率の差は、光線を適切に全反射させる観点から、0.1以上であることが好ましい。光線は、コアフィルム層2からクラッド粘着層10・10Aに到達すると、これらコアフィルム層2とクラッド粘着層10・10Aとの境界面で大部分が全反射するが、この全反射する際の入射角、すなわち臨界角は、69〜73°、好ましくは69.5〜70°、より好ましくは69.5〜69.7°が良い。
【0021】
なお、光線は、臨界角よりも小さい角度で入射する場合には、全反射するが、臨界角よりも大きい角度で入射する場合には、放射モードとしてクラッド粘着層10・10Aの外部に放射され、導光されないこととなる。
【0022】
遮光層20・20Aは、例えば38〜70μm程度の厚さを有する黒色の薄いフィルム、具体的には黒色が着色された安価なポリエチレンテレフタレート製のフィルム等からなり、各クラッド粘着層10・10Aの表面に粘着剤を介しそれぞれ粘着されており、コアフィルム層2からクラッド粘着層10・10Aに漏れ出た光線を吸収する。
【0023】
コアフィルム層2の裏面側に位置する遮光層20には、光学パターン3に対する指の接近でON・OFF機能を発揮するタッチセンサ層30が選択的に対設され、表面側の遮光層20Aには、視覚的に把握される装飾用の表面装飾層31が選択的に積層されて視認可能に露出しており、この表面装飾層31には光透過性や光沢等が適宜付与される。
【0024】
タッチセンサ層30は、図示しないが、支持基板上に、光学パターン3に対応するランドを備えた導電パターン、コンデンサを形成する絶縁誘電フィルム、遮光層20に接着される絶縁性の保護フィルムが順次多層構造に積層されることにより、導電体である指の近接で生じる静電容量の変化を検出する静電容量タイプに形成され、応答速度や分解能を向上させるよう機能する。また、コアフィルム層2の表面側に位置する遮光層20Aは、光学パターン3に対応するよう部分的に切り欠かれ、光学パターン3を被覆するクラッド粘着層10Aの膨らんだ被覆部11と面一に揃えられる。
【0025】
上記構成において、携帯電話の筐体の開放、あるいは電話機能やメール機能の活用に連動してLED1が発光すると、光線は、LED1からコアフィルム層2に照射され、コアフィルム層2とクラッド粘着層10・10Aとの境界面を連続的に反射しながらXY方向に導光され、その後、光学パターン3から上方向に照射されて光学パターン3自体を照光する。この光学パターン3の照光により、光学パターン3を正確に把握して操作することができ、コアフィルム層2の下方に位置するタッチセンサ層30をON・OFFすることができる。
【0026】
これらの際、光線は、コアフィルム層2からクラッド粘着層10・10Aに臨界角よりも小さい角度で入射する場合には、コアフィルム層2の屈折率よりもクラッド粘着層10・10Aの屈折率が低いので、コアフィルム層2とクラッド粘着層10・10Aとの境界面で全反射することとなり、クラッド粘着層10・10Aに漏れることがない。これに対し、コアフィルム層2からクラッド粘着層10・10Aに臨界角よりも大きい角度で入射する場合には、クラッド粘着層10・10Aに漏れることになるが、クラッド粘着層10・10Aの外側の遮光層20・20Aに吸収されるので、クラッド粘着層10・10Aから外部に漏れることがない。
【0027】
上記構成によれば、クラッド粘着層10・10Aがコアフィルム層2内に光線の大部分を閉じ込めるので、コアフィルム層2の表裏面から光線が漏洩して損失を増大させたり、操作部以外の部分を発光させることがない。したがって、携帯電話の意匠性や体裁を悪化させるおそれを有効に排除することができるとともに、小数のLED1でコアフィルム層2の広範囲に亘って光線を効率的に導光することができる。また、ライトガイド体とタッチセンサ層30や表面装飾層31との光漏れのない一体化が大いに期待でき、LED1とコアフィルム層2の周面との間に光伝送用の小型ガイドを敢えて設ける必要もない。
【0028】
また、クラッド粘着層10・10Aから漏れた光線のみを黒色の遮光層20・20Aが吸収するので、導光に必要な光線までもが吸収されることがない。したがって、例えLED1から光学パターン3が離れている場合でも、光学パターン3に光線を十分に伝送することができ、携帯電話の操作に支障を来たすことが全くない。さらに、コアフィルム層2としてポリカーボネートを使用するとともに、クラッド粘着層10・10Aとしてアクリル樹脂を使用し、黒色の遮光層20・20Aを用いれば、ライトガイド体の明るさや均斉度を著しく安価に向上させることが可能になる。
【0029】
次に、図2は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、コンピュータのキーボードに内蔵されるコアフィルム層2を備え、このコアフィルム層2の表面側に位置する遮光層20Aの表面にメンブレン層40とシート層41とを順次積層し、メンブレン層40に光透過性を付与してその表面にはシート層41の孔を貫通して露出する接点部42を取り付けており、シート層41には、接点部42を上方からON・OFFする操作用のキートップ43をパンタグラフ形のリンク機構44を介し上下動可能に支持させるようにしている。
【0030】
キートップ43は、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール等の成形材料により中空の角錐台形に成形され、表面に文字、図形、記号、これらの組み合わせの模様が形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、キーボードの意匠性や体裁を悪化させるおそれを有効に排除することができるのは明らかである。
【0031】
なお、上記実施形態ではコアフィルム層2の表面に必要数の光学パターン3を形成したが、コアフィルム層2の裏面に必要数の光学パターン3を形成したり、コアフィルム層2の表裏面に必要数の光学パターン3をそれぞれ形成しても良い。また、コアフィルム層2の屈折率は、一定化しても良いし、光線の歪みを改善する観点から滑らかに分布させても良い。
【0032】
また、光学パターン3をクラッド粘着層10Aにより被覆せず、光学パターン3と遮光層20Aとの間に光透過性の樹脂を充填することもできる。また、タッチセンサ層30、表面装飾層31、メンブレン層40の遮光層20・20Aに対向する対向面に、黒色を塗布して漏れ出る光線を吸収することもできる。さらに、コアフィルム層2の表面側に位置する遮光層20Aにタッチセンサ層30を選択的に対設することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 LED(光源)
2 コアフィルム層(コア層)
3 光学パターン(光学模様)
10 クラッド粘着層(クラッド層)
10A クラッド粘着層(クラッド層)
11 被覆部
20 遮光層
20A 遮光層
30 タッチセンサ層(入力センサ)
31 表面加飾層(加飾層)
40 メンブレン層
41 シート層
42 接点部
43 キートップ
44 リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から周面に入射した光線をXY方向に導光する光透過性のコア層に、導光された光線をZ方向に照射する光学模様を形成したライトガイド体であって、
コア層の表裏面にそれぞれ積層されるクラッド層と、各クラッド層に積層される遮光層とを含み、コア層に高屈折率を付与するとともに、クラッド層にコア層の屈折率よりも低い低屈折率を付与したことを特徴とするライトガイド体。
【請求項2】
一方の遮光層に対向する入力センサと、他方の遮光層に対向する視認可能な装飾層とを含んでなる請求項1記載のライトガイド体。
【請求項3】
一の遮光層に光透過性のメンブレン層とシート層とを順次積層し、メンブレン層に、シート層を貫通する接点部を設け、シート層には、接点部をON・OFFするキートップを上下動可能に支持させた請求項1記載のライトガイド体。
【請求項4】
光学模様の密度を光源から遠ざかるにしたがい高くした請求項1、2、又は3記載のライトガイド体。
【請求項5】
クラッド層を、シリコーン系粘着剤あるいはアクリル系粘着剤からなる粘着層とした請求項1ないし4いずれかに記載のライトガイド体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−70865(P2011−70865A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219869(P2009−219869)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】