説明

ライニング構造体及びその施工方法

【課題】ライニング構造体における白華現象を抑える。
【解決手段】鉄皮と、鉄皮に固定されるスタッドと、鉄皮に積層されるライニング層とを備えるとともに、ライニング層の厚さ方向の任意の位置に、水の移動を妨げる不透水層が設けられていることを特徴とするライニング構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉、均熱炉、焼却炉等の工業炉、高温流体が流通する配管、ダクト等の煙道、あるいは炉や配管を収容する建築物の壁面等に使用されるライニング構造体及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉、均熱炉、焼却炉等の工業炉、炉に連結する配管のように高温ガスが流通する配管、ダクト等の煙道、あるいは炉や配管を収容する建築物の壁面等では、外表面を鉄皮で構成し、その内側を耐熱性材料でライニングするのが一般的である。
【0003】
例えば、図7は、配管のライニングに使用される円筒状のライニング構造体を示す断面図であるが、内周面に所定間隔でスタッド2と呼ばれる補強材が突設された円筒状の鉄皮1の内面に、スタッド2が隠れるようにライニング層3が形成されている。このようなライニング構造体を製造するには、先ず、スタッド2が突設された円筒状の鉄皮1を垂直に立て、ライニング層3の厚さに相当する外径を有する円筒状の型枠を鉄皮1の内側に同心状に設置する。次いで、鉄皮1と型枠との間に、耐火骨材やセメントを水に混練した混練物を流し込み、養生した後、型枠を取り外すことでライニング層3を形成する。
【0004】
しかしながら、炉設備の施工では、このライニング構造体同士を連結して所定形状の配管を形作り、炉の排気口に接続した後、炉を稼動させて高温のガスを配管全体に流通させてライニング層3を乾燥している。こうした乾燥によりライニング層3に含まれる水分が完全に除去される。最近では炉設備の大型化に伴い配管も長くなっており、それに伴ってライニング層を乾燥するまでの期間が長くなる傾向にある。また、海外での施工増加に伴い、例えば国内で製造したライニング構造体を海外に輸送し、現地で組立てる機会も増えている。このようなライニング構造体の保管期間の長期化により、ライニング層3の表面に、一般に「白華現象」と称されている、地肌とは色の異なる斑点が生成したり、斑点部分が剥離している状態が多く見られるようになってきている。白華現象は、養生の間に混練物が内包する水分が蒸発する際に、水分が表面に移行するのに伴って、骨材やセメントから溶出した金属イオンが移行して空気と接触して酸化し、金属酸化物となって析出することが原因であると考えられている。
【0005】
また、近年では、耐熱性の更なる向上の要求が強く、また、軽量化も要求されるようになってきており、図8に示すような、鉄皮側から順に断熱層10と耐火層11とを積層した2層構造のライニング層3Aを施したライニング構造体も普及している(例えば、特許文献1参照)。断熱層10は、シリカ中空粒子等の軽量骨材を含むため軽量であり、また骨材内部の空気層による断熱作用を有する。一方、耐火層11は、侵食性のある高温流体に直接接するため、耐食性に優れた炭化珪素や、耐熱性に優れたアルミナ、シリカ等の耐火骨材を含む。
【0006】
2層構造のライニング層3Aを有するライニング構造体を製造するには、先ず、内周面にスタッド2が突設された鉄皮1の内側に、例えばスタッド2の中程の厚さに相当する外径を有する円筒状の第1の型枠を設置し、鉄皮1と第1の型枠との間に、軽量骨材やセメントを水に混練した混練物を流し込み、養生した後、第1の型枠を取り外して断熱層10を形成する。次いで、断熱層10の内側に、スタッド2が隠れるような外径を有する円筒状の第2の型枠を設置し、断熱層10と第2の型枠との間に、耐火骨材やセメントを水に混練した混練物を流し込み、養生した後、第2の型枠を取り外して耐火層11を形成する。
【0007】
この2層構造のライニング層3Aを有するライニング構造体も、炉設備の施工においては上記の1層構造のライニング層3を有するライニング構造体と同様に配管を形作った後に高温のガスが流通させて乾燥される。そのため、1層構造のライニング層3を有するライニング構造体と同様、保管期間が長くなるのに伴って耐火層11の白華現象が多く発生することが懸念される。しかも、2層構造のライニング層3Aを有するライニング構造体では、耐火層11の下に水分を多く含む断熱層10が存在するため、耐火層11は自身が内包する水分に断熱層10から移行した水分が加わり、白華現象がより起こりやすくなることが懸念される。なお、断熱層10は多くの水分を含むことにより密度を軽くすることが可能であり、その分空気層が多くなるので断熱性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−261390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後とも設備の大型化や海外での施工が増加し、それに伴う白華現象の抑制は今後益々重要な課題になることが予測されるため、本願発明ではライニング層における白華現象を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、下記のライニング構造体及びその施工方法を提供する。
(1)鉄皮と、
鉄皮に固定されるスタッドと、
鉄皮に積層されるライニング層とを備えるとともに、
ライニング層の厚さ方向の任意の位置に、水の移動を妨げる不透水層が設けられていることを特徴とするライニング構造体。
(2)ライニング層が、鉄皮に積層され、密度0.2〜1.7g/cmの断熱層と、断熱層に積層され、密度2.0〜6.0g/cmの耐火層とを備えるとともに、
断熱層と耐火層との境界、または耐火層の厚さ方向の任意の位置に不透水層が設けられていることを特徴とする上記(1)記載のライニング構造体。
(3)不透水層が、合成樹脂を含むことを特徴とする上記(1)または(2)記載のライニング構造体。
(4)湾曲状または円筒状の鉄皮にスタッドを固定する工程と、
スタッドが固定された鉄皮を垂直に配置し、鉄皮の内側に設置した第1の型枠を設置する工程と、
鉄皮と第1の型枠との間に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生した後、第1の型枠を外して第1のライニング層を形成する工程と、
第1のライニング層の表面に水の移動を妨げる不透水層を形成する工程と、
不透水層の内側に第2の型枠を設置する工程と、
不透水層と第2の型枠との間に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生した後、第2の型枠を外して第2のライニング層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするライニング構造体の施工方法。
(5)平板状の鉄皮にスタッドを固定する工程と、
スタッドが固定された鉄皮を水平に配置し、鉄皮を囲むように型枠を設置する工程と、
型枠内に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生して第1のライニング層を形成する工程と、
第1のライニング層の表面に水の移動を妨げる不透水層を形成する工程と、
不透水層が形成された型枠内に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生した後、型枠を外して第2のライニング層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするライニング構造体の施工方法。
(6)第1のライニング層を形成する工程において、軽量骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込むとともに、
第2のライニング層を形成する工程において、耐火骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込むことを特徴とする上記(4)または(5)記載のライニング構造体の施工方法。
(7)合成樹脂を含むコーティング液を塗布し、乾燥して不透水層を形成することを特徴とする上記(4)〜(6)の何れか1項に記載のライニング構造体の施工方法。
(8)合成樹脂製のシートを貼り付けて不透水層を形成することを特徴とする上記(4)〜(6)の何れか1項に記載のライニング構造体の施工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ライニング層において、不透水層により表面への水分の移行が妨げられるため、白華現象の発生を抑えることができる。特に、断熱層と耐火層との2層構造のライニング層において、水分を多く含む断熱層からの耐火層への水分の移行が妨げられるため白華現象の防止効果が顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1層構造のライニング層を有するライニング構造体の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示すライニング構造体の製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の2層構造のライニング層を有するライニング構造体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の2層構造のライニング層を有するライニング構造体の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の平板状の鉄皮を有するライニング構造体を示す断面図である。
【図6】平板のライニング構造体の製造方法を説明するための図である。
【図7】従来の1層構造のライニング層を有するライニング構造体の一例を示す断面図である。
【図8】従来の2層構造のライニング層を有するライニング構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明に係る、1層構造のライニング層を有するライニング構造体の一例を示す断面図であるが、図7の部分Aに対応して拡大して示している。
【0015】
図示されるように、スタッド2が固定された鉄皮1の内側にライニング層3が形成されたものであるが、ライニング層3の厚さ方向の任意の位置に、水の移行を妨げるための不透水層20が形成されている。
【0016】
このようなライニング構造体を作製するには、先ず、図2(a)に示すように、スタッド2が固定された鉄皮1を垂直に配置し、その内側に、スタッド2の突出長Hよりも低い任意の位置Lに相当する外径を有する第1の型枠40を設置する。そして、鉄皮1と第1の型枠40との間に、ライニング層3の形成材料を含む混練物を流し込み、養生する。この養生により、図2(b)に示すように、第1のライニング層3aが形成される。次いで、図2(c)に示すように、第1のライニング層3aの表面に不透水層20を形成する。そして、図2(d)に示すように、スタッド2の先端よりも内側に第2の型枠41を設置し、不透水層20と第2の型枠41との間に、第1のライニング層3aの形成に使用した混練物を流し込み、養生する。この養生により第2のライニング層3bが形成される。尚、第1のライニグ層3aと第2のライニング層3bとで、ライニング層3を構成する。
【0017】
不透水層20の形成には、合成樹脂を含有するコーティング液を刷毛やローラ、スプレーを用いて塗布し、乾燥させる方法が簡便で好ましいが、合成樹脂製のシートを貼り付けてもよい。また、合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートといった汎用樹脂、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、生分解性樹脂、繊維素系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂といった熱硬化性樹脂などが挙げられるが、容易に入手できることからポリエチレン、ポリプロピレン、不飽和ポリエステルが適当である。また、不透水層の膜厚には特に制限はないが、第2のライニング層3bを形成するための混練物を流し込む際に破れないように1μm〜10mm、好ましくは1μm〜1mmが適当である。
【0018】
また、不透水層20は上述した樹脂に限定されることなく、水の動きを抑制できれば特に問題はなく、例えば、ガラスなどのセラミックスや、ステンレス箔やアルミニウム箔といった金属であってもよい。
【0019】
ライニング層3a,3bを形成するための混練物は、耐熱性や耐火性を有するものであれば制限されるものではなく、骨材やセメントを主成分とし、水と混練したものである。例えば、骨材70〜90質量部、セメント10〜30質量部、水5〜200質量部とを混練した混練物を使用できる。また、後述する断熱層を形成しようとする場合には、水の添加量を好ましくは10〜200質量部、より好ましくは15〜200質量部、特に好ましくは30〜200質量部とすることもでき、後述する耐火層を形成しようとする場合には、水の量を好ましくは5〜30質量部、より好ましくは5〜25質量部、特に好ましくは5〜20質量部とすることもできる。
【0020】
骨材は、バーミキュライト、パーライト、中空シリカなどの多孔質軽量骨材、シャモット、セルベン、珪石、シンターアルミナ、耐火レンガ粉砕物といった軽量骨材や、炭化珪素、アルミナ質骨材、ムライト質骨材、アンダリューサイトやバン土頁岩などのシリカ・アルミナ質骨材、シリカ質骨材といった耐火骨材が挙げられる。
【0021】
こうした骨材の粒径は、期待される効果が得られるのであれば特に制限はないが、例えば、0.1〜6.5mm、好ましくは0.5〜4mmの粗粒とすることができ、0.15〜1.18mmの中粒、150μm未満の微粒とすることもでき、こうした粗粒、中粒、微粒を組み合わせてもよい。
【0022】
また、こうした骨材とは別に、必要に応じて粒径0.01〜20μm、好ましくは0.07〜10μmのアルミナ超微粉末、シリカ超微粉末、珪石粉、珪藻土、粘土といった無機超微粉末を添加してもよい。こうした無機超微粉末によれば、ライニング層を更に緻密にすることができる。こうした無機超微粉末の配合量は、骨材およびセメントの合計100質量部に対してそれぞれ0.01〜0.10質量部であればよい。
【0023】
セメントは、結合材として機能するものであれば特に制限されないが、例えば、ポルドラントセメント、白色セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント等の水硬性セメント等を挙げることができる。本発明においては、耐熱性の高いアルミナセメントを好適に使用できる。ここで、アルミナセメントとは、CaO・Alを主成分とするセメントで、例えば、Al比率が40質量%以上、好ましくは50質量%以上であればよい。
【0024】
また、必要に応じて、例えば、ナフタレンスルホン酸系、燐酸塩系、カルボン酸系、アクリル酸系、リグニンスルホン酸系、ポリアルコール系等の有機物及び塩類等といった分散剤や、例えば、ポリカルボン酸塩等といった硬化遅延剤、金属アルミニウム、オキシカルボン酸塩、有機繊維等といった乾燥爆裂防止剤等を添加してもよい。こうした分散剤や硬化遅延剤、乾燥爆裂防止剤の配合量は、骨材およびセメントの合計100質量部に対してそれぞれ0.01〜0.10質量部であればよい。
【0025】
尚、混練物を流し込む方法には制限はないが、バイブレーター等の振動を与えることなく重力によるセルフフローで型枠内に流し込む方法、ポンプ圧送により流し込む方法等が挙げられる。セルフフローの施工方法によれば、バイブレーター等の設備が不要でありコストが削減できる。また、ポンプ施工を併用することにより、施工効率は向上し、施工時間の短縮と作業者の削減が可能となる。
【0026】
本発明において、ランニング構造体を、図8に示したように断熱層10と耐火層11との2層構造のライニング層3Aとすることもできる。即ち、図3に図8の部分Bに対応する拡大図を示すが、スタッド2が突設された鉄皮1に積層される断熱層10の表面に不透水層20を形成し、不透水層20の上に耐火層11を形成したライニング構造体とすることができる。尚、断熱層10の密度は、耐火層11の密度より小さければ特に制限はないが、例えば0.2〜1.7g/cmであればよい。また、耐火層11の密度は、断熱層の密度より大きければ特に制限はないが、例えば2.0〜6.0g/cmであればよい。断熱層10の密度が小さくなるほど、空気層が増えるのでその分断熱性が向上する。
【0027】
製造方法は、図2に示した工程に従うことができ、(a)において第1のライニング層3aを形成する混練物を流し込むの代わりに後述する断熱層10を形成する混練物を流し込み、(d)において第2のライニング層3bとしての後述する耐火層11を形成する混練物を流し込めばよい。
【0028】
断熱層10を形成する混練物に制限はないが、例えば、上述した軽量骨材70〜80質量部、セメント20〜30質量部、水5〜200質量部とを混練した混練物を使用できる。また、軽量骨材のほかに必要に応じて耐火骨材を含んでいてもよい。その場合、配合量は、軽量骨材60〜70質量部、耐火骨材1〜10質量部、セメント20〜30質量部、水5〜200質量部とを混練した混練物を使用できる。ここで、水の添加量を好ましくは10〜200質量部、より好ましくは15〜200質量部、特に好ましくは30〜200質量部とすることもできる。
【0029】
耐火層11を形成する混練物に制限はないが、例えば、上述した耐火骨材80〜90質量部、セメント10〜20質量部、水5〜200質量部とを混練した混練物を使用でき、好ましくは、上述した耐火骨材80〜90質量部、セメント10〜20質量部、無機超微粉末1〜10質量部、水5〜200質量部とを混練した混練物を使用できる。また、耐火骨材のほかに必要に応じて軽量骨材を含んでいてもよい。その場合、配合量は、耐火骨材70〜80質量部、軽量骨材1〜10質量部、セメント20〜30質量部、水5〜200質量部とを混練した混練物を使用できる。ここで、水の添加量を好ましくは5〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部、特に好ましくは5〜25質量部とすることもできる。
【0030】
また、2層構造のライニング層3Aを有するライニング構造体において、図4に示すように、不透水層20を耐火層11の任意の位置に形成してもよい。即ち、断熱層10の上に所定の厚さで第1の耐火層11aを形成し、第1の耐火層11aの表面に不透水層20を形成し、不透水層20の表面に第2の耐火層11bを、本来の耐火層厚となるように形成する。尚、図中の符号30は断熱層10と耐火層11との境界である。
【0031】
上記のライニング構造体は円筒体を呈しているが、図5に示すように平板のライニング構造体とすることもできる。即ち、一層構造のライニング層の場合は、スタッド2が突設された平板の鉄皮1の上に第1のライニング層3aを積層し、第1のライニング層3aの表面に不透水層20を形成し、不透水層20の上に第2のライニング層3bを積層したものである、また、2層構造のライニング層の場合は、スタッド2が突設された平板の鉄皮1の上に断熱層10を積層し、断熱層10の表面に不透水層20を形成し、不透水層20の上に耐火層11を積層したものである。尚、この平板のライニング構造体は、例えば、断熱を要する建物の壁面を構成する材料として使用できる。
【0032】
図6に2層構造のライニグ層を有する平板のライニング構造体を作製する工程を示すが、先ず(a)に示すように、スタッド2が突設された平板の鉄皮1を包囲するように例えば四辺形の型枠43を設置し、型枠内に断熱層10を形成する混練物を流し込み、養生する。次いで(b)に示すように、断熱層10の表面に不透水層20を形成する。次いで(c)に示すように、不透水層20の上に耐火層11を形成する混練物を流し込み、養生する。そして、最後に型枠43を取り外す。
【0033】
図2に示したような円筒状のライニグ構造体を製造するには、第1の型枠40と第2の型枠41が必要であったが、平板のライニング構造体を製造する場合は、型枠43が1つで済むという利点がある。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0035】
(実施例1〜2、比較例1)
断熱層と耐火層との2層構造のライニング層を有する、円筒状のライニング構造体を作製した。その際、実施例1、2では、図3に示したような断熱層と耐火層との境界に不透水層を形成したが、実施例1ではポリエチレン樹脂を含むコーティング液を塗布して厚さ0.03mmの樹脂層を形成し、実施例2では厚さ0.03mmのポリエチレン製シートを使用した。
【0036】
また、実施例及び比較例とも、断熱層はニチアス株式会社製「トンボライトキャスター L−100」と水とを混練した混練物を流し込み養生したものであり、養生後の密度は0.4g/cmであった。一方、耐火層はニチアス株式会社製「トンボ耐火キャスター L−165」と水とを混練した混練物を流し込み養生したものであり、養生後の密度は2.2g/cmであった。
【0037】
そして、気温25℃、相対湿度50%の暗室で所定期間保管したのち、実施例及び比較例のライニング構造体の耐火層の表面を観察し、白華現象の発生の有無を調べた。結果を表1に示すが、不透水層を形成することにより、白華現象が抑えられることが確認された。
【0038】
【表1】

【符号の説明】
【0039】
1 鉄皮
2 スタッド
3、3A ライニング層
10 断熱層
11、11a、11b 耐火層
20 不透水層
30 境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄皮と、
鉄皮に固定されるスタッドと、
鉄皮に積層されるライニング層とを備えるとともに、
ライニング層の厚さ方向の任意の位置に、水の移動を妨げる不透水層が設けられていることを特徴とするライニング構造体。
【請求項2】
ライニング層が、鉄皮に積層され、密度0.2〜1.7g/cmの断熱層と、断熱層に積層され、密度2.0〜6.0g/cmの耐火層とを備えるとともに、
断熱層と耐火層との境界、または耐火層の厚さ方向の任意の位置に不透水層が設けられていることを特徴とする請求項1記載のライニング構造体。
【請求項3】
不透水層が、合成樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2記載のライニング構造体。
【請求項4】
湾曲状または円筒状の鉄皮にスタッドを固定する工程と、
スタッドが固定された鉄皮を垂直に配置し、鉄皮の内側に設置した第1の型枠を設置する工程と、
鉄皮と第1の型枠との間に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生した後、第1の型枠を外して第1のライニング層を形成する工程と、
第1のライニング層の表面に水の移動を妨げる不透水層を形成する工程と、
不透水層の内側に第2の型枠を設置する工程と、
不透水層と第2の型枠との間に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生した後、第2の型枠を外して第2のライニング層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするライニング構造体の施工方法。
【請求項5】
平板状の鉄皮にスタッドを固定する工程と、
スタッドが固定された鉄皮を水平に配置し、鉄皮を囲むように型枠を設置する工程と、
型枠内に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生して第1のライニング層を形成する工程と、
第1のライニング層の表面に水の移動を妨げる不透水層を形成する工程と、
不透水層が形成された型枠内に、骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込み、養生した後、型枠を外して第2のライニング層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするライニング構造体の施工方法。
【請求項6】
第1のライニング層を形成する工程において、軽量骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込むとともに、
第2のライニング層を形成する工程において、耐火骨材、セメント及び水を含む混練物を流し込むことを特徴とする請求項4または5記載のライニング構造体の施工方法。
【請求項7】
合成樹脂を含むコーティング液を塗布し、乾燥して不透水層を形成することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のライニング構造体の施工方法。
【請求項8】
合成樹脂製のシートを貼り付けて不透水層を形成することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のライニング構造体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−179750(P2011−179750A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44243(P2010−44243)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】