説明

ライフサイエンスのためのサンプル保存とサンプル管理との統合

生物学的サンプルの自動保存、自動追跡、自動取り出し、および自動分析のための組成物および方法が開示される。この方法は、生物学的に活性な物質の回収を可能にする乾燥保存マトリックスを使用した、核酸、タンパク質(酵素を含む)および細胞の、周囲温度での乾燥保存を包含する。RFIDタグの付いた生物学的サンプル保存デバイスは、溶解可能もしくは分離可能なマトリックスであるという特徴を有し、生物学的サンプルの支持体としての用途のために記載される。このマトリックスは、乾燥され得、その後、サンプル回収のために再水和され得る。サンプルデータを管理するためのコンピュータで実行するシステムおよび方法もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国仮特許出願第60/560,829号(2004年4月8日出願)の利益を主張する。上記仮特許出願は、その全体が本明細書において参考として援用される。
(技術分野)
本発明は、一般的に、生物学的物質およびサンプルが、本発明のシステムに受容されて、収められるプロセスに関する。本発明はまた、このような生物学的物質およびサンプルの使用、組織化、保存、追跡、検索および分析、ならびにこれらのプロセスの自動化に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ライフサイエンス分野における研究は、生物学的物質およびサンプル(例えば、DNA、RNA、血液、尿、口腔スワブ、細菌、ウイルス、PCR産物、クローニングされたDNA、タンパク質、細胞および組織)、ならびに無機物もしくは化学物質の分析に基づく。このようなサンプルは、代表的に、適切な供給源から収集されるかまたは獲得されて、さらなる処理および分析のために、貯蔵庫および保管庫に置かれる。
【0003】
このようなサンプルのための保存容器としては、ボトル、チューブ、バイアル、バッグ、ボックス、ラック、マルチウェルディッシュ、およびマルチウェルプレートが挙げられる。これらの容器は、代表的には、個別のネジ付きキャップまたは止め(snap)キャップ、止め閉鎖部もしくはシール閉鎖部、蓋、接着ストリップもしくは接着テープ、またはマルチキャップストリップによってシールされている。ハイスループットのサンプル保存、処理、および生物学的処置の自動化用の媒体のための標準的な容器の様式は、96ウェル、384ウェル、もしくは1536ウェルのプレートまたはアレイである。この容器およびその中に収容されるサンプルは、種々の温度(例えば、周囲温度、または4℃、または0℃より低い温度、代表的には、約−20℃もしくは−70〜−80℃)で保存される。このデバイスに入れられ、保存されるサンプルは、最も頻繁には、液体媒体または緩衝溶液中に含まれ、そして0℃より低い温度(例えば、−20°Cまたは−70〜−80°C)での保存を必要とする。いくつかの場合、サンプルは、まず乾燥させられ、次いで周囲温度、または4℃、−20℃もしくは−70〜−80°Cで保存される。
【0004】
例えば、現在、核酸は、低温において液体形態で保存される。短期保存に関しては、核酸は、4℃で保存され得る。長期保存に関しては、この温度は、一般的に、−20℃〜−70℃に下げられて、遺伝物質の分解を防止する(特に、ゲノムDNAおよびRNAの場合)。核酸はまた、固体マトリックス(例えば、セルロース膜)上で室温保存される。どちらの保存システムも、欠点を伴う。低温保存は、費用のかかる機器(例えば、低温室、フリーザー、発電器バックアップシステム)を必要とする。このような機器は、予期されない電力供給停止の場合に信頼できない可能性があるか、または電源の準備のない範囲または信頼できる電気系統を有さない地域においては、使用が困難である可能性がある。セルロース繊維上での核酸の保存はまた、再水和プロセスの間に物質の実質的な損失を生じる。なぜなら、核酸は、セルロース繊維によって捕捉されてとどまっており(そしてこれによって会合しており)、定量的に回収可能ではないからである。セルロース上での核酸乾燥保存はまた、生物学的物質からのセルロースの分離を必要とする。なぜなら、そうしない限り、このセルロース繊維が生物学的サンプルを汚染するからである。セルロースフィルターからの生物学的サンプルの分離は、さらなる処理(ピペッティング、新しいチューブもしくは容器へのサンプルの移送、および遠心分離が挙げられる)を必要とする。これらの処理の全ては、回収率を減少させ得、かつ所望されない汚染物の導入もしくはサンプル分解を促進する条件への暴露の機会を増加させ得、そしてこれらにはまた、費用および労力がかかる。
【0005】
タンパク質は、現在では、最初に、冷却環境もしくは冷凍環境(代表的には、−20℃〜液体窒素中での保存)において、液体段階で扱われる。いくつかの例外において、タンパク質は、凍結乾燥されるか、室温においてトレハロースの存在下で乾燥されて、未処理表面に直接的に適用される(非特許文献1;非特許文献2)。タンパク質は、多くの場合、冷却されて(4℃)、冷凍されて(−20℃もしくは−80℃)保存される場合でさえ、分解し、かつ/または活性を失う。タンパク質に対する凍結−融解のストレスは、特に、タンパク質サンプルのアリコートを繰り返し凍結−融解することが必要な場合、生物活性(例えば、酵素活性、同系のリガンドへの特異的結合など)を低下させる。結果として起こる生物学的アッセイにとって必要であり得るタンパク質活性の損失により、代表的には、匹敵するアッセイ結果を得るためにタンパク質濃度を再調整すること、または新しいロットを選んで、費用をかけて問題のあるタンパク質試薬を廃棄することが必要となる。研究室に保存されている酵素試薬を複数回使用する一般的な実施は、特に、異なる使用者によって何回も、標準的でない取扱い手順によって利用されることにより、このような試薬によって生じる実験データの信頼性は、さらに低下する。結果として、タンパク質の半減期は低下し、したがって高価な試薬を、頻繁に交換しなければならない。このことは結局、使用者に多大な金銭的費用をかける。タンパク質の供給元にとっても、最初の低温室作業から始まる、輸送、サンプルの冷凍保存、そして製造から使用者の場所へのタンパク質の冷凍輸送のための、分解させずに冷凍状態での供給の連鎖を維持するために、高額な費用を必要とする。例えば、輸送の間の遅れは、タンパク質の不活性化をもたらし得、次いでこれは、供給元が多大きな費用をかけて交換しなければならない。また、不活性製品を受け取ることで、消費者に不満が生じる可能性がある。
【0006】
タンパク質および核酸の乾燥は、研究科学、医生物学、バイオテクノロジーおよび他の産業ビジネスの社会で、まだ広く採用されていない。なぜなら、標準的に確立され、かつ信頼性のあるプロセスの欠如、定量的かつ機能的特性の回復の困難さ、種々の緩衝液および溶媒への適合性および耐性、ならびに核酸およびタンパク質を扱うことへの要求から生じる他の困難さのためである。同じ問題は、他の生物学的物質(例えば、ウイルス、ファージ、細菌、細胞および多細胞生物)の取扱い、保存および使用にあてはまる。
【0007】
現行のサンプル保存容器は、多数のプラットホームを代表し、これらは、サンプル調製、サンプル保存、サンプル保管、サンプル追跡、サンプル検索およびサンプル分析に対する一元化されたアプローチを備えていない。現行のサンプル処理様式およびサンプル保存様式のいずれも、個々の保存容器、不適切な閉鎖および閉じ込め補助物、サンプル汚染、不適切な組織化、多様な標識システム、広い空間および貯蔵庫の必要性、ならびに温度の制約から生じる問題を解決しないことは明らかである。
【0008】
ヒトおよび多くの他のゲノム、プロテオーム、トランスクリプトームなどのゲノムの熟成および最近の解読は、ライフサイエンス研究の産業化をもたらした。科学的知見を進歩させ、そして製品を開発するために、多数の生物由来の遺伝子および/または遺伝子産物を含む数百万の生物学的サンプルが、分析されている。ハイスループット技術の開発は、情報およびサンプルの広大なプールをもたらした。したがって、サンプル保存、データ編成およびデータ分析を統合する必要性が存在する。無数の生物学的サンプルおよびデータの生成は、結果として、小さな研究室と大きな研究室とに対して、重大な組織的な課題を突きつけている。ライフサイエンスサンプルにとってのこれまでに利用可能なデータ管理の選択肢(例えば、LIMS(研究室情報管理システム(Laboratory Information Management Systems)))は、特定のサンプルに関する情報とサンプル保存デバイスとを統合し得ず、そして代表的に、サンプルデータを、そのサンプル保存デバイスと物理的にも電子的にも接続されていない中央サーバに保存する。さらに、これまでに利用可能なシステムは、不便な保存ラック構成を必要とする。この保存ラック構成は、代表的には、面倒な低温保存、および/または費用のかかる複雑なソフトウェアを含み、この複雑なソフトウェアは、大規模な事業ソフトウェアシステムが購入されて特定の使用者の要求に対して構成されるべきであるか、または代わりに特注のプログラムが独立に開発されるべきかに関わらず、専任のフルタイムの情報技術サポート専門家を必要とする。
【非特許文献1】Garcia de Castroら、Appl.Environ.Microbiol.、2000年、66:4142
【非特許文献2】Manzaneraら、Appl.Environ.Microbiol.、2002年、68:4328
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
明らかに、一般のライフサイエンスサンプルの保存、検索、分析、ならびに情報照合用デバイスおよびシステムに対する、産業上の必要性が存在する。本開示は、複数のライフサイエンスサンプル保存アプリケーションとデータアプリケーションとを提供することによって、このような必要性に対処し、そして他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するためのシステムを提供することは、本発明の一局面である。このシステムは、以下を備える:生物学的サンプルデバイス;上記サンプルデバイスに関するデータを受信、保存、処理および連絡するためのコンピュータ実行システム;ならびに、上記サンプルデバイスと上記コンピュータ実行システムとの間の高周波インターフェースであって、このコンピュータ実行システムとこのサンプルデバイスとの間に通信リンクを提供するための、インターフェース。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態に従って、以下が提供される:1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイスであって、以下を備える、デバイス:(a)蓋;(b)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、このウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備える、サンプルプレート;および、(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス。関連する生物学的サンプル保存デバイスであって、このデバイスにおいて、上記マトリックス材料は、溶媒中で溶解もしくは分離するか、またはこのデバイスは、上記蓋を上記サンプルプレート上で閉めるための閉鎖手段を備える。必要に応じて、さらにこの閉鎖手段は、磁気的閉鎖を含む。関連する生物学的サンプル保存デバイスは、気密閉鎖接続部を備えるか、または各ウェルの周囲に気密閉鎖接続部を備えるか、または各ウェルの周囲に、磁気的閉鎖部および気密閉鎖接続部を備える。特定の実施形態において、関連する生物学的サンプル保存デバイスが提供され、このデバイスにおいて、前記マトリックス材料は、冷蔵することなくサンプルを乾燥保存し得る。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイスを提供する。このデバイスは、以下を備える:(a)蓋;(b)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを含み得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、このウェルの1つ以上は、溶媒中で溶解または分離するマトリックス材料を備える、サンプルプレート;および(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス。上記の生物学的サンプル保存デバイスの特定のさらなる実施形態において、少なくとも1つのウェルは、少なくとも1つの検出可能な指標を備える。ここで、特定のさらなる実施形態においては、比色定量性の指標が包含される。この実施形態の特定の他の実施形態においては、蛍光指標、発光指標、リン光指標、放射性指標、色素、酵素、酵素基質、エネルギー輸送分子、および親和性標識が包含される。特定の他のさらなる実施形態において、上記検出可能な標識は、以下のうちの少なくとも1つの存在を、検出可能に示し得る:アミン、アルコール、アルデヒド、水、チオール、硫化物、亜硝酸塩、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、反応性酸素種、金属イオン、pH、Na、K、Cl、シアニド、リン酸、およびセレン。特定の他のさらなる実施形態において、上記検出可能な指標は、以下からなる群より選択される:フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、塩化コバルト、Reichardt色素、および蛍光原プロテアーゼ基質。
【0013】
特定の他の関連する実施形態に従って、生物学的サンプル保存デバイスは、少なくとも1つのウェルが、少なくとも1種のインヒビターを含有し、このインヒビターは、生物学的インヒビターまたは生化学的インヒビターである。このインヒビターは、以下であり得る:バリダマイシンA、TL−3、オルソバナジン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N−α−トシル−Phe−クロロメチルケトン、N−α−トシル−Lys−クロロメチルケトン、アプロチニン、フッ化フェニルメチルスルホニル、ジイソプロピルフルオロホスフェート、キナーゼインヒビター、ホスファターゼインヒビター、カスパーゼインヒビター、グランザイムインヒビター、細胞接着インヒビター、細胞分裂インヒビター、細胞周期インヒビター、脂質シグナル伝達インヒビター、およびプロテアーゼインヒビター、還元剤、アルキル化剤、および抗微生物剤。特定の実施形態において、上記マトリックス材料は、冷蔵することなくサンプルを乾燥保存し得る。特定の実施形態において、上記マトリックス材料は、ポリビニルアルコールを含む。そして特定の他の実施形態において、上記マトリックス材料は、以下からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む:ポリエチレングリコール、アガロース、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリフェニレンオキシド、架橋アクリルアミド、ポリメタクリレート、カーボンナノチューブ、ポリラクチド、ラクチド/グリコリドコポリマー、ヒドロキシメタクリレートコポリマー、カルシウムペクチネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、硫酸ヘパリンプロテオグリカン、ヒアルロン酸、グルクロン酸、トロンボスポンジン−1 N−末端ヘパリン結合ドメイン、フィブロネクチン、ペプチド/水溶解性ポリマー改質剤結合体、コラーゲン、ヒドロキシエクトイン、ポリスチレン、またはトレハロース。別の実施形態において、本発明は、キットを提供する。このキットは、以下を備える:(I)以下を備える、1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイス:(a)蓋;(b)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、このウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備える、サンプルプレート;および(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス;ならびに(II)1種以上の補助試薬。特定のさらなる実施形態において、上記マトリックス材料は、溶媒中で溶解または分離する。
【0014】
本発明の別の実施形態をみると、1つまたは複数の生物学的サンプルを保存する方法が提供される。この方法は、以下を包含する:1つまたは複数の生物学的サンプルを生物学的サンプル保存デバイスと接触させる工程であって、この生物学的サンプル保存デバイスは、以下:(i)蓋、(ii)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを含み得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、このウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備える、サンプルプレート、および(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス、を備える工程、ならびに、上記工程によって上記生物学的サンプルを保存する工程。特定のさらなる実施形態において、この方法は、上記接触させる工程の後に、冷蔵することなく上記生物学的サンプル保存デバイスを維持する工程を包含する。別の発明の実施形態は、1つまたは複数の生物学的サンプルを保存する方法を提供する。この方法は、以下を包含する:(a)1つまたは複数の生物学的サンプルを生物学的サンプル保存デバイスと接触させる工程であって、この生物学的サンプル保存デバイスは、以下:(i)蓋、(ii)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、このウェルの1つ以上は、溶媒中で溶解または分離するマトリックス材料を備える、サンプルプレート、および(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス、を備える、工程;ならびに、(b)上記サンプルウェルの1つ以上を乾燥させ、これによって上記生物学的サンプルを保存する工程。特定のさらなる実施形態において、この方法は、上記接触させる工程および乾燥させる工程の後に、冷蔵することなく上記生物学的サンプル保存デバイスを維持する工程を包含する。ここで、特定のなおさらなる実施形態において、上記維持する工程後の上記サンプルの生物活性は、上記接触させる工程前のそのサンプルの生物活性と実質的に同じであり、そして特定の他のなおさらなる実施形態において、上記生物学的サンプルの分解は、上記マトリックス材料の非存在下で冷蔵することなく維持されるコントロールの生物学的サンプルの分解に対して、低減される。特定の関連する実施形態において、上記接触させる工程は、上記マトリックス材料を溶媒中で溶解または分離する工程を同時に包含する。一方特定の他の関連する実施形態において、上記接触させる工程が、上記マトリックス材料を溶媒中で溶解または分離する工程に先行され、一方特定の他の関連する実施形態において、上記接触させる工程が、上記マトリックス材料を溶媒中で溶解または分離する工程に続く。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、1つまたは複数の生物学的サンプルのための生物学的サンプル保存デバイスを調製する方法を提供する。この方法は、以下を包含する:(a)溶媒中で溶解または分離するマトリックス材料を、生物学的サンプル保存デバイスの1つまたは複数のサンプルウェルに付与する工程であって、この生物学的サンプル保存デバイスは、以下:(i)蓋、(ii)生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備える、サンプルプレート、および(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス、を備える、工程;ならびに、(b)上記サンプルウェルの1つ以上を乾燥させ、これによって上記生物学的サンプル保存デバイスを調製する工程。特定のさらなる実施形態において、上記付与する工程は、上記マトリックス材料と上記溶媒とを含有する溶液または懸濁液を付与する工程を包含する。一方、特定の他のさらなる実施形態において、少なくとも1つのウェルは、少なくとも1つの検出可能な指標を含有し、一方、特定の他のさらなる実施形態において、少なくとも1つのウェルは、少なくとも1種のインヒビターを含有し、このインヒビターは、生物学的インヒビターまたは生化学的インヒビターである。
【0016】
別の実施形態において、保存される生物学的サンプルを回収する方法が提供される。この方法は、以下を提供する:(a)生物学的サンプル保存デバイス中で、1つまたは複数の生物学的サンプルとマトリックス材料とを、同時に、または連続的かついずれかの順序で、接触させる工程であって、上記生物学的サンプル保存デバイスが、以下:(i)蓋、(ii)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、このウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備え、このマトリックス材料は、第1の溶媒中で溶解または分離される、サンプルプレート、および(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス、を備える、工程;(b)上記サンプルウェルの1つ以上を乾燥させる工程;(c)上記生物学的サンプル保存デバイスを、上記接触させる工程および乾燥させる工程の後に、冷蔵することなく維持する工程;ならびに、(d)上記生物学的サンプルを、第2の溶媒中で懸濁または溶解し、そこから上記保存される生物学的サンプルを回収する工程。ここで、特定のさらなる実施形態において、上記維持する工程後の上記サンプルの生物活性は、上記接触させる工程前のそのサンプルの生物活性と実質的に同じである。一方異なるさらなる実施形態において、上記第2の溶媒は、(i)上記第1の溶媒と同じ溶媒、および(ii)上記第1の溶媒と異なる溶媒、から選択される。特定の関連する実施形態において、上記第1の溶媒および上記第2の溶媒のうちの少なくとも1つは、活性緩衝液である。
【0017】
別に実施形態において、本発明は、生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するためのシステムを提供する。このシステムは、以下を備える:生物学的サンプルデバイス;上記サンプルデバイスに関するデータを受信および送信するためのコンピュータ実行システム;ならびに、上記サンプルデバイスと上記コンピュータ実行システムとの間の高周波インターフェースであって、上記コンピュータ実行システムと上記サンプルデバイスとの間に通信リンクを提供するための、インターフェース。さらなる実施形態において、上記コンピュータ実行システムは、上記サンプルデバイスに付随する生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを維持するためのデータ構造を備える。関連する実施形態において、上記高周波インターフェースは、上記コンピュータ実行システムに結合される高周波インターロゲーター、および上記インターロゲーター器との高周波連絡のために上記サンプルデバイスに付随する少なくとも1つのトランスポンダーデバイスを備える。
【0018】
別の実施形態において、生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するための方法が提供される。この方法は、以下を包含する:1つ以上の生物学的サンプルを保存するためのサンプルデバイスを提供する工程;上記サンプルデバイスまたは上記生物学的サンプルまたは両方に関するデータを受信、保存および送信するためのコンピュータ実行システムを提供する工程;上記サンプルデバイスと上記コンピュータ実行システムとの間に高周波連絡インターフェースを提供する工程。さらなる実施形態において、上記方法は、上記コンピュータ実行システムから制御シグナルを発生して、上記高周波インターフェースに上記サンプルデバイスからのデータを検索させる工程を包含する。別のさらなる実施形態において、上記方法は、上記コンピュータ実行システムによって制御シグナルを発生し、上記高周波インターフェースを介して上記サンプルデバイスにデータを送信する工程を包含する。
【0019】
別の実施形態に従って、本発明は、生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するためのシステムを提供する。このシステムは、以下を備える:生物学的サンプル保存デバイスであって、このサンプル保存デバイスは、以下:蓋;生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備える、サンプルプレート;および、少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス、を備える、デバイス;上記サンプル保存デバイスに関するデータを受信および送信するためのコンピュータ実行システム;ならびに、上記サンプルデバイスと上記コンピュータ実行システムとの間の高周波インターフェースであって、上記コンピュータ実行システムと上記サンプルデバイスとの間に通信リンクを提供するための、インターフェース。特定のさらなる実施形態において、上記コンピュータ実行システムは、ウェブブラウザ、ウェブサーバプログラム、およびデータベースサーバを有する3層アーキテクチャ、ならびに前記高周波インターフェースの動作を制御するクライアント側アプリケーションを備える。そして特定のなおさらなる実施形態において、上記システムは、上記ウェブブラウザとRFIDリーダとの間にUSBインターフェースを備える。別の関連する実施形態において、上記コンピュータ実行システムは、クライアント側におけるエクセル(登録商標)マクロプログラム、およびデータベースサーバを有する、2層アーキテクチャを備える。別の関連する実施形態において、上記コンピュータ実行システムは、スタンドアロン型クライアントアプリケーション、およびこのクライアントアプリケーションと連絡するデータベースサーバを有する、2層アーキテクチャを備える。特定のさらなる実施形態において、上記クライアントアプリケーションは、コンパイルされたアプリケーションである。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイスを提供する。このデバイスは、以下を備える:(a)蓋;(b)生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備える、サンプルプレート;および(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス。さらなる実施形態において、上記生物学的サンプル保存デバイスは、上記蓋を上記サンプルプレート上で閉めるための閉鎖手段を備え、そして特定のさらなる実施形態において、上記閉鎖手段は、磁気的閉鎖を含む。別の実施形態において、上記生物学的サンプル保存デバイス、これは気密閉鎖接続部を備え、そして別の実施形態において、上記保存デバイスは、各ウェルの周囲に気密閉鎖接続部を備える。別の実施形態において、上記生物学的サンプル保存デバイスは、各ウェルの周囲に、磁気的閉鎖部および気密閉鎖接続部を備える。
【0021】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面への参照によって明らかになる。本明細書において開示される全ての参照は、あたかも各々が個別に参照されているように、それらの全体が本明細書によって参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本明細書において記載されるような、生物学的サンプルおよび生物学的物質、鉱物および化学物質の、単離、精製、保存(preservation)、保存(storage)、追跡、検索、データ照合、モニタリング、および/または分析のための、複数構成要素のシステムおよび方法に関する。本発明は、乾燥サンプルの保存のためおよび周囲温度での保存のために使用され得、そしてまた、多様な生物学的物質および生物学的サンプルの保存のための用途を有し得る。これらの生物学的物質および生物学的サンプルとは、例えば、限定ではないが、DNA、RNA、血液、尿、他の生物学的流体(例えば、血清、漿膜液、血漿、リンパ、脳脊髄液、唾液、分泌組織および分泌器官の粘膜分泌物、膣分泌物、腹水液、胸膜、心膜、腹膜、腹部および他の体腔の流体、細胞培地および組織培地(細胞もしくは組織の馴化培地を含む)、洗浄液など)、口腔スワブ、細菌、ウイルス、PCR産物、クローニングされたDNA、タンパク質、細胞および組織、または他の生物学的サンプルである。したがって、生物学的サンプルとしては、被験体または生物学的供給源由来の、血液サンプル、生検標本、組織外植片、器官培養物、生物学的流体、または任意の他の組織調製物もしくは細胞調製物、またはそれらの画分および誘導体もしくはそれらから単離された画分および誘導物が挙げられ得る。被験体または生物学的供給源は、ヒトまたは非ヒト動物、初代細胞培養物もしくは培養に適応した細胞株であり得、これらの細胞株としては、染色体に組み込まれているかまたはエピソームの組換え核酸配列を含み得る、遺伝子操作された細胞株、不死化されているかまたは不死化可能な細胞株、体細胞ハイブリッド細胞株、分化しているかまたは分化可能な細胞株、形質転換された細胞株などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
したがって特定の実施形態において、本発明は、生物学的物質、化学的物質、および生化学的物質の、乾燥条件下における、水和後(例えば、再水和により)すぐに使用できる様式での長期保存に関する。本明細書において記載されるように、以下を包含する実施形態が提供される:a)特別な溶解可能(もしくは分離可能)な保存マトリックス、b)長期保存条件の耐久性を高める、化学物質による保存マトリックスの調製および最適化、c)水和後に物質をすぐに活性かつ有用にさせる、乾燥プロセス前での、種々の生物学的物質の調製、ならびにd)乾燥保存された生物学的に活性な物質の使用を介して、複雑な生化学的プロセスを単純化するプロセス。したがって、これらの実施形態および関連する実施形態は、生物学的物質の冷蔵されない乾燥保存に関係する驚くべき利点を提供する。これらの利点としては、以下が挙げられる:生物学的サンプルの生物学的活性の安定化および保存の改善、室温における乾燥形態での保存の間の、(そして特に、保護マトリックスの使用を介する)生物学的サンプルの分解の低減、ならびにこのようなサンプルの、時間のかかる再較正およびアリコート化の必要性を低下もしくは除外することによる、さらなる使用のために生物学的サンプルを調製するためのプロセスの単純化。
【0024】
本発明は、DNA、RNA、細胞、細胞成分および他の生物学的物質、鉱物、化学物質、または生物学的サンプルもしくは他のライフサイエンス関連サンプルに由来する組成物の、精製およびサイズ分画化を可能にする。したがって、本発明は、例えば、1つまたは複数の生物学的物質および/または生物学的サンプルの、1つの一元化され、統合され、かつ使用が容易なプラットホームにおける、分子生物学的手順の実施での使用を容易に可能にする。上記手順としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:PCR、バイオポリマー(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチドもしくは他のバイオポリマー)の配列決定、オリゴヌクレオチドプライマー伸長、ハプロタイプ決定(例えば、DNAハプロタイプ決定)、および制限酵素マッピング。本発明はまた、例えば、そして特定の実施形態において、タンパク質結晶学の実施のための、1つまたは複数の生物学的サンプルおよび/または生物学的物質の使用を容易に可能にする。他の実施形態において、以下の使用、試験または検出(診断用途を含む)のためのプラットホームが提供される:抗体または小分子(天然に存在するものもしくは人工のもの)あるいは他の生物学的分子(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、もしくはそれらの誘導体;脂質、脂肪酸など、もしくはそれらの誘導体;炭水化物、糖など、もしくはそれらの誘導体;核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン、ピリミジンもしくは関連分子、またはそれらの誘導体など;または生物学的サンプルの構成要素である別の生物学的分子)。
【0025】
(生物学的サンプル保存デバイス)
本発明の生物学的サンプル保存デバイス(「保存デバイス」)は、サンプルプレートおよび蓋から構成される。保存デバイスの寸法は、高さ約2mm〜約25mm、長さ約80mm〜約200mm、そして幅約60mm〜約150mmであり得る。好ましくは、この保存デバイスは、約3mm〜約15mmの高さ、約100mm〜約140mmの長さ、そして約60mm〜約100mmの幅を有する。この保存デバイスは、多彩なポリプロピレンから作製され得、そして96ウェル、384ウェル、1536ウェルもしくはそれより多くの程度のサンプル保管(deposit)ウェルを保持し得る。各保存デバイスは、それ自身の密封蓋を有する。この保存デバイスは、射出成形によって製造され得、そして一体にまたは複数の部品に作製され得る。
【0026】
好ましい実施形態において、そして本明細書において記載されるように、生物学的サンプル保存デバイスは、サンプルデータを処理するためのシステムにおける使用のために構成される。このシステムは、保存デバイスとコンピュータ実行システムとの間に、データを受信、保存および/もしくは送信するための高周波インターフェースを備える。このデータは、保存デバイスおよび/またはその中に含まれる1つ以上の生物学的サンプルに関係し得る。したがって、特定の関連する実施形態において、生物学的サンプル保存デバイスは、少なくとも1つの本明細書において記載されるような高周波トランスポンダーデバイスを備える。このデバイスは、この保存デバイスの不可欠な構成要素であり得、そして/またはこの保存デバイスの内面もしくは外面に取り付けられ得る。さらに、またはあるいは、この保存デバイスは、バーコード標識され得、そして/または必要に応じて、消すことのできないマーカーペンを使用してコード付けするための、1つ以上の領域を含み得、そして/または必要に応じて、刷り込まれた取り扱いプロトコールを含み得る。サンプルプレートのプラスチック材料は、約1/10mm〜約2mm厚であり得、熱を即座に伝達し、そして約100°Cまでの耐熱性がある。
【0027】
サンプルプレートは、保持領域またはウェルを含む。この保持領域またはウェルは、好ましくは円形の形状であるが、正方形、長方形、長円形または任意の他の形状でもあり得る。このウェルの底部は、平坦な形状、円錐形、円筒形もしくは丸い形状、または任意の他の形状であり得る。このウェルの縁は、円筒形、円錐形、または他の形状であり得る。ウェルの数は、サンプルプレートあたり1ウェル程度の少なさであってよく、そして数千程度の多さであってもよい。最も好ましくは、サンプルプレートに、約96〜約384ウェルが配置されている。サンプルウェルはまた、本明細書に記載される標準的なサンプルプレートに適合し得る、1ウェル、4ウェルおよび8ウェルの群に分けられ得る。このウェルは、プレート上に列を成して配置される。96ウェルを備えるプレートについては、一列は8ウェルを含む。独特な局面は、サンプルプレートが、種々の複数のウェルを有する多数の個別のサンプルスライドを受容するトレイであり得ることである。各々のスライドは、このトレイにはまり、単一のプレートでの種々の数のウェルの保存を可能にする。ウェルの下面は薄く、好ましくは、約1/10mm〜約2mmの厚さを有する。
【0028】
本発明が、ハイスループットスクリーニング(すなわち、多数の生物学的サンプルの、自動化された試験またはスクリーニング)に主な価値を有するということが企図される。これは、例えば、合成生成物または天然生成物のライブラリを、活性化合物についてスクリーニングすることにおいて、特に価値を有する。したがって、本発明の装置および方法は、自動化された、費用効率のよい、ハイスループットな生物学的サンプル試験または薬物スクリーニングを受け入れることができ、そして広範囲の薬学的薬物開発プログラムにおける即時的用途を有する。本発明の好ましい実施形態において、ウェルは、ハイスループットスクリーニング形式(例えば、96ウェルプレート形式または他の規定の2次元アレイ(例えば、1536ウェル形式もしくは384ウェル形式))に組織化される。したがって、ハイスループットスクリーニングのために、この形式は、好ましくは自動化を受け入れることができる、好ましくは、例えば、本発明のハイスループットスクリーニング実施形態に従う使用のための自動化された装置は、コンピュータまたは他のプログラム可能なコントローラの制御下にある。このコントローラは、プロセスの各工程の結果を継続的にモニタリングし得、そしてそれらの結果に応じて試験プログラムを自動的に変更し得る。
【0029】
代表的に、そして特定の好ましい実施形態(例えば、ハイスループット薬物スクリーニング)において、候補薬剤は、化合物、組成物、または分子の「ライブラリ」または集合として提供される。このような分子は、代表的に、「小分子」として当該分野で公知の化合物を含み、そして10ダルトン未満(好ましくは、10ダルトン未満、そしてさらにより好ましくは、10ダルトン未満)の分子量を有する。候補薬剤は、コンビナトリアルライブラリのメンバーとしてさらに提供され得る。このライブラリは、好ましくは、本開示に従う保存デバイス中のウェルとして提供される複数の反応容器中で行われる、複数の所定の化学反応に従って調製される合成薬剤を含む。例えば、種々の開始化合物は、所与の構成要素が、追跡可能に、反応条件の複数の順列および/もしくは組み合わせを受けることを可能にする、固相合成、記録される無作為混合法(recorded random mix methodology)および記録される反応分割技術(recorded reaction split technique)の1つ以上を利用して調製され得る。得られる生成物は、ライブラリを含み、このライブラリは、スクリーニングされ得、次いで選択手順および合成手順が繰り返され得る(例えば、ペプチドの合成コンビナトリアルライブラリ(例えば、PCT/US91/08694およびPCT/US91/04666を参照のこと)、または本明細書において提供されるような小分子を含み得る他の組成物の合成コンビナトリアルライブラリ(例えば、PCT/US94/08542、EP0774464、米国特許第5,798,035号、同第5,789,172号、同第5,751,629号を参照のこと)。当業者は、本明細書において記載されるような保存デバイスを使用する確立された手順に従って調製され得る、および/または本開示に従うデバイスおよび方法を使用して試験され得る、このようなライブラリの多様な取り合わせが調製され得ることを理解する。例えば、試験化合物のライブラリのメンバーは、本明細書において提供されるようなハイスループットスクリーニングアレイとして使用される、サンプル保存デバイス中の複数のウェルの各々の中の、複数の生物学的サンプルに付与され得る
このウェルは、液体物質または乾燥物質または両方のいずれかの形態である生物学的サンプルまたは生物学的物質に適応し得る。固体マトリックス材料(例えば、限定ではなく、スポンジ様材料、シリカ、シリカ粉末、シリカ濾紙、粉末吸着剤、もしくは濾紙)、または本明細書において記載される他のマトリックス材料が、限定的な理論に従うことなく、吸収、吸着、特異的もしくは非特異的な結合、または他の結合機構(非共有もしくは/および共有化学結合、およびまたは分子間会合性相互作用(例えば、疎水性相互作用および/もしくは親水性相互作用、水素結合形成、静電相互作用など)の形成に関与する機構が挙げられる)によって、このウェルに添加され得、生物学的物質の導入を可能にする。マトリックス材料は、サンプルプレートユニットの生成プロセス中に組み込まれ得るか、または接着性相互作用もしくはウェルへの詰め込まれ(wedge)得るか、または後で、1種以上の生物学的サンプルを1つ以上のウェルに導入する前、導入と同時、もしくは導入後に、ウェルに導入される。ウェルの縁は、真っ直ぐであっても、突出した縁を含んでいてもよい。突出した縁は、特定の実施形態において、接着性相互作用によるか、それによらないで、ウェル内部に材料マトリックスを保持し得る。液体保存は、底部プレートの表面上に小さな開口部を有する逆円錐形のウェルを介して達成され得る。逆円錐形は、溢流を防ぐ(spill−proof)様式で、液体をウェル内部に保持する。
【0030】
蓋は、平坦であるか、または底部サンプルプレートのウェルに嵌める突出を有するかのいずれかであり得る。蓋およびサンプルプレートは、サンプルプレートおよび蓋のすべりばめを介して閉じられるか、または気密閉鎖接合部もしくは圧縮可能な材料のクッションが提供されるかのいずれかである。この接合部は、サンプルプレートと蓋との周縁の周りに配置され得るか、または単一のウェル各々の周りに配置され得るかのいずれかである。この接合部は、サンプルプレートまたは蓋に取り付けられ得る。好ましくは、この接合部は、縁に配置されるか、または接着材料を使用して蓋に接着される。気密性のはめ合いは、蓋からの突出を、精密なシールとしてサンプルプレートウェルに挿入することによって達成され得る。
【0031】
サンプルプレートは、保存ユニットの一方に配置されるヒンジシステム(これはしかし、2つの向かい合う側に配置されてもよい)を介して、蓋に接続され得る。このヒンジは、2つのユニットを接続し、保存ユニットの開閉を可能にする。デバイスは、プラスチック材料から作製され得るが、このプラスチックの型は、その用途に依存して決定され得る。ヒンジは、サンプルプレートからの蓋の取り外しを可能にする。
【0032】
生物学的物質の長期保存のための蓋およびサンプルプレートの閉鎖は、特定の好ましい実施形態において、磁気的接着を介して達成され得るが、プレート上で蓋を閉めるための他の手段もまた、本開示に従って企図される他の実施形態において利用され得る。上記他の手段としては、非限定的な例として以下が挙げられる:スナップ、シール、接着剤、フックとループ、ねじ切り閉鎖、ソレノイド、切頭円錐閉鎖(frustroconical closure)、バヨネット、ピンチ閉鎖、止め金など、または他の閉鎖手段。したがって、保存ユニットのサンプルプレートおよび蓋は、好ましい実施形態において、磁石を備える。この磁石は、保存デバイスのサンプルプレートおよび蓋の内部に位置する、磁気シートの形態であっても、小さな磁石の形態であってもよい。サンプルプレートと蓋との間の磁気引力は、保存プレートの密閉を可能にするに十分に強いが、蓋を開く場合のサンプルプレートの簡便な開放、ねじりもしくは変形を妨げるほどには強くない。磁気的閉鎖は、生物学的物質の処理を、保存ユニットへの沈積の前に可能にする他のデバイスを保存ユニットに取り付けるために使用され得る。保存ユニットの磁気引力は、保存デバイスを、そのユニットの下のさらなるデバイスに取り付けるために使用され得る。磁性は、基本ユニットの、他のデバイスもしくはユニットへの接続機構である。
【0033】
保存デバイスは、好ましくは、本明細書において記載される生物学的サンプル保存デバイスとコンピュータ実行システムとの間の高周波連絡インターフェースの一部として使用するための、少なくとも1つの識別用タグおよびデータ保存用タグ(例えば、高周波トランスポンダーデバイスまたは「RFタグ」)を備える。特定の実施形態により、保存デバイス内部または保存デバイス上に複数のRFタグを含むことが企図される。保存デバイスはまた、特定の実施形態に従って、視認部分を備え得る。種々の壁は、例えば、サンプルプレート上への数字および文字の彫り込みを介してか、または印刷プロセスの適用を介して番号付けされ、印を付けられ得る。必要に応じて、サンプルプレートの少なくとも一側は、その表面に取り付けられているかまたは彫り込まれている、バーコードを有し得る。保存デバイスの蓋は、任意の種類の注記またはコメントの記載のための領域を有し得る。さらに、蓋の上面はまたバーコードを有し得、サンプルプレートのバーコードの複製である。二重のバーコード付けは、生物学的物質の固有の識別、およびサンプルプレートと蓋との関連付けを可能にする。複数のRFタグおよび/または複数のバーコード付け部位は、これらの識別/データ保存デバイスのうちの1つが剥がれる場合、破損する場合、または他の方法で読み取り不可能になる場合の、安全機構を提供し得る。
【0034】
(乾燥保存デバイス)
乾燥保存デバイスは、本発明において記載されるような保存デバイスの適用であり、これは、生物学的サンプルまたは生物学的物質(例えば、血液、細菌、細胞、ウイルス、化学化合物(天然に存在するにせよ人工的に作製されるにせよ)、プラスミドDNA、DNAフラグメント、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛍光原基質、ゲノムDNA、PCR産物、クローン化DNA、タンパク質、RNA、ミネラルまたは化学物質であるが、これらに限定されない)の長期保存のため、乾燥保存マトリックス物質としての使用のための、処理されたマトリックス物質(例えば、スポンジ様物質、シリカ、シリカ粉末、シリカ濾紙、吸収性粉末、綿、羊毛、リネン、ポリエステルまたは濾紙であるがこれらに限定されない)を含み、そしてまた、本明細書中に記載されるように溶解または分離するマトリックス物質を含む。生物学的サンプルまたは生物学的物質の安定した長期の乾燥保存は、それらサンプルまたは物質が適切なマトリックス物質(例えば、本明細書中に記載されるものであって、溶解可能なマトリックス物質(または分離可能なマトリックス物質)上に載せられる場合に冷却なしに達成され得ることという驚くべき観察から、これらの実施形態および関係する実施形態が得られた。従って、本発明は、本明細書中に記載されるサンプルデータ処理方法およびサンプルデータ処理システムにおける使用のため、一般の屋内周囲室温(例えば、代表的に、20〜27℃であるが、地理、季節および物理的プラントの関数として、約15〜19℃から約28〜32℃まで変動する)における、生物学的サンプルの安定な長期乾燥保存のためのデバイスを提供する。
【0035】
乾燥保存デバイスを使用する好ましい実施形態において、サンプルの積載は乾燥保存を生じ、例えば、これによって液体サンプルが、マトリックス物質によって吸収されるか、マトリックス物質に対して吸収されるか、またはそれ以外にマトリックス物質によって取り込まれ(entrap)、その結果、積載後、遊離の液体は、そのマトリックス物質中もしくはそのマトリックス物質上で容易に識別できないか、またはそのマトリックス物質から容易に取り出せない。そしてそのマトリックス物質は、特定の他の実施形態において、溶解可能なマトリックス物質または分離可能なマトリックス物質であり得、その溶解可能または分離可能なマトリックス物質は、乾燥保存を提供するためにサンプルと接触される前、接触される間、または接触された後に乾燥され得る。従って、関連する好ましい実施形態は、本明細書中に記載されるようなサンプル保存デバイスの使用を包含し、このデバイスは、マトリックス物質を備え、このマトリックス物質は、冷却なしに、例えば、周囲温度で生物学的サンプルまたは生物学的物質の乾燥保存を可能にする。特定の関連する実施形態において、乾燥工程は、例えば、風乾によるか、高温における乾燥によるか、またはサンプルが積載されたマトリックス物質の、減圧した大気圧もしくは窒素のような適合性ガスの穏やかな流動に対する曝露を介した溶媒の揮発(例えば、凍結乾燥、または他の減圧乾燥方法)による、乾燥保存のためのマトリックス物質へのサンプルの効果的な積載へと達成され得る。これらのサンプルは、好ましくは、そのサンプルを安定化させる条件下で乾燥保存される。すなわち、保存されるサンプルの性質の要因として変動し、そしていずれにせよ当業者に周知の基準に従って、分解、またはそのサンプルの所望されない化学的改変もしくは物理的改変がほとんど検出されないか(例えば、統計上有意には)全く検出されない。
【0036】
特定の実施形態は、生物学的物質(ゲノムDNA、プラスミドDNA、DNAフラグメント、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、蛍光発生基質、細胞、ウイルス、化学化合物、など)をマトリックス上で保管するための、組成物および方法を提供し、このマトリックスは、溶媒中で溶解または分離する物質から構成され、その溶媒は、そのサンプルの水和、再水和または他の溶媒再構築の後、乾燥サンプル物質の完全な回収または実質的な回収(例えば、少なくとも50%の回収率、好ましくは少なくとも60%の回収率、より好ましくは少なくとも70%の回収率、より好ましくは少なくとも80%の回収率、そして代表的にはより好ましい実施形態において少なくとも85%の回収率、より好ましくは少なくとも90%の回収率、より好ましくは少なくとも95%の回収率、さらにより好ましくは97%、98%または99%を超える回収率)を可能にする。例えば、溶解可能なマトリックスは、適切な溶媒中で溶解されることが可能であり得、この適切な溶媒は、使用される特定の方法論に依存して、そしてサンプルの1つ以上の所望の構造特性または機能特性(例えば、生物学的活性)の回復を可能にする様式で、マトリックス物質の特性および/またはサンプルの特性に基づき選択され得る。同様に、別の例として、マトリックス物質は溶媒中で分離し得、そして、必要でないが、完全に溶解されるようになり得、その結果、分散物、懸濁物、コロイド、ゲル、サップ(sap)、スラリー、シロップ、などが得られ得る。
【0037】
これらの実施形態および関連する実施形態において、乾燥サンプル保存のための乾燥工程前にマトリックス物質および/または生物学的サンプルを生物学的サンプル保存デバイスに導入するために使用される第1の溶媒は、続いて、この乾燥サンプル/マトリックスの組合せを水和、再水和、再構築または再懸濁するために使用される第2の溶媒と同じであり得る。そして他の実施形態において、第2の溶媒は第1の溶媒と異なり得る。マトリックス物質および/または生物学的サンプルを溶解または分離するための適切な溶媒の選択のための基準は、例えば、使用される特定のマトリックス物質の物理化学的特性および特定のサンプルの物理化学的特性、ならびに望ましくは乾燥保存およびその後の再構築の間に保持される構造機能特性(例えば、生物活性)、ならびに他の要因(例えば、他の保存デバイス物質との適合性、または液体操作用装備、安全性、など)に基づいて、当業者に公知である。溶媒は、例えば、溶媒極性/分極率(SPP)スケール値に基づき、Catalanら(例えば、1995 Liebigs Ann.241;またCatalan,2001: Handbook of Solvents,Wypych(編),Andrew Publ.,NYおよびこれに記載される参考文献)も参照のこと)の系を使用して選択され得、例えばこれに従うと、水は0.962のSPP値、トルエンは0.655のSPP値、そして2−プロパノールは0.848のSPP値を有する。2−N,N−ジメチル−7−ニトロフルオレン/2−フルオロ−7−ニトロフルオレンのプローブ/同形対の紫外測定に基づき溶媒のSPP値を決定するための方法が、記載されている(Catalanら、1995)。特定のマトリックス物質の溶解特性に基づく、所望のSPP値を有する溶媒(純粋な単独成分の溶媒としてにせよ、または2種、3種、4種もしくはそれ以上の溶媒の溶媒混合物としてにせよ;溶媒混和性に関しては、例えば、Godfrey 1972 Chem.Technol.2:359を参照のこと)は、本開示の参照により、当業者によって容易に識別され得る。
【0038】
従って、非限定的な理論に従い、溶解可能または分離可能なマトリックス物質は、マトリックスを形成することにより三次元空間を創出するポリマー構造であり得、この三次元空間は、生物学的サンプルの生物学的物質がこのマトリックスと会合するのを可能にする。溶解可能または分離可能なマトリックス物質は、安脱水された条件(例えば、乾燥された条件または実質的に溶媒の除かれた条件)の下で、定化剤(例えば、塩、および緩衝剤)を導入するために使用され得る。マトリックスはまた、任意の乾燥または保存条件のためにpHまたは他のパラメータの調整を可能にし、そして本明細書中に提供される1つまたは複数の検出可能な指示薬(例えば、色素ベースのpH指示薬、および/または色素ベースの湿度指示薬)を含み得る。特定の好ましい実施形態において、マトリックス物質は、溶解可能なマトリックス物質であるポリビニルアルコール(PVA)を含む。
【0039】
特定の他の実施形態に従って、溶解可能または分離可能なマトリックス物質は、所望の構造特性および/または機能特性を満足ゆくように維持する様式で、特定の型の生物学的サンプルを保存するすることに関して適合性の特徴を有する任意の適切な物質であり得、この特徴としては、マトリックスの隙間内で目的の生物学的サンプルが沈着されるマトリックスを形成する様式で乾燥する能力が挙げられ、そしてまた、適切な溶媒(例えば、生物学的緩衝剤)適合性が挙げられ、そのマトリックス分子がサンプル中の1つ以上の目的の生物学的活性を妨害しない様式で乾燥保存に続いて再溶解されるかまたは再懸濁される能力がさらに挙げられる。溶媒中で溶解または分離するマトリックス物質のさらなる非限定的な例としては、ポリエチレングリコール、アガロース、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリフェニレンオキシド、可逆的に架橋されたアクリルアミド、ポリメタクリレート、カーボンナノチューブ(例えば、Dykeら,2003 JACS 125:1156;Mitchellら,2002 Macromolecules 35:8825;Dagani,2003 C&EN 81:5)、ポリ乳酸、乳酸/グリコリドコポリマー、ヒドロキシメタクリレートコポリマー、カルシウムペクチネート(calcium pectinate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(例えば、Langer,1990 Science 249:1527;Langer,1993 Accounts Chem.Res.26:537−542)、ヘパリン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、グルクロン酸(例えば、Kirn−Safranら,2004 Birth Defects Res.C.Embryo Today 72:69−88)、トロンボスポンジン−1 N末端ヘパリン結合ドメイン(例えば、Elzieら,2004 Int.J.Biochem.Cell Biol.36:1090;Pavlovら,2004 Birth Defects Res.C.Embryo Today 72:12−24)、フィブロネクチン(例えば、Wierzbicka−Patynowskiら,2003 J Cell Sci.116(Pt 16):3269−76)、ペプチド/水溶性ポリマーモディファイアー結合体(例えば、Yamamotoら,2002 Curr Drug Targets 3(2):123−30)、および基底膜コラーゲンペプチドを含むコラーゲンまたはコラーゲンフラグメント(例えば、Ortegaら,2002 J Cell Sci.115(Pt 22):4201−14)が挙げられる。
【0040】
他の検出可能な指示薬としては、生物学的サンプルにおける、条件、プロセス、経路、誘導、活性化、阻害、調節、動的構造、状態、汚染、分解、または他の活性変化もしくは機能変化もしくは構造変化に直接的に関係する任意の検出可能なパラメータの検出(適切なコントロールに対して統計上有意であり、当業者に公知であるようなもの)または同様の決定を可能にする組成物が挙げられ、生物学的サンプルにおける改変された酵素活性(タンパク質分解活性および/または核酸分解活性が挙げられる)、呼吸活性、代謝活性、異化活性、結合活性、触媒活性、アロステリック活性、構造活性、または他の生物学的活性もしくは生物物理学的活性を含み、そしてまた、このような活性の結果として形成され得る中間体(代謝物、異化産物、基質、前駆体、補因子などを含む)の間の相互作用を含む。
【0041】
広範な種々の検出可能な指示薬は、当該分野で公知であり、そして特定のサンプル保存用途における特定の生物学的サンプルに対して有益であり得る特定のパラメータ(単数または複数)に依存して、現在開示される組成物および方法に包含するために、選択され得る。このような検出可能な指示薬によって検出され得るパラメータの非限定的な例としては、1つ以上のアミン、アルコール、アルデヒド、水、チオール、硫化物、亜硝酸物、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na、K、Cl、シアン化物、リン酸化物、セレン、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、および微生物汚染、など他のもの存在の検出が挙げられる。
【0042】
特定の目的のために選択され得る広範な検出可能な指示薬(比色定量試薬を含む)の例としては、Haugland,2002 Handbook of Fluorescent Probes and Research Products−第9版,Molecular Probes,Eugene,OR;Mohr,1999 J.Mater.Chem.,9:2259−2264;Suslickら,2004 Tetrahedron 60:11133−11138;および米国特許第6,323,039号に記載される。(例えば、Fluka Laboratory Products Catalog,2001 Fluka,Milwaukee,WI;およびSigma Life Sciences Research Catalog,2000,Sigma,St.Louis,MOもまた参照のこと)。検出可能な指示薬は、蛍光指示薬、発光指示薬、リン光指示薬、放射性指示薬、色素、酵素、酵素の基質、エネルギー転移分子、またはアフィニティー標識であり得る。特定の好ましい実施形態において、検出可能な指示薬は、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ(例えば、部位特異的または配列特異的制限エンドヌクレアーゼのような制限ヌクレアーゼとして使用される制限酵素)、塩化コバルト(水分存在時の青色から乾燥時のピンクまで変化する湿度指示薬)、Reichardt’s色素、(Aldrich Chemical)、および蛍光原プロテアーゼ基質のうちの1つ以上であり得る。
【0043】
特定の実施形態における検出可能な指示薬は、ポリヌクレオチドポリメラーゼおよび/または適切なオリゴヌクレオチドを含み得、それらの一方または両方が指示薬として使用され得るか、または特定の他の実施形態において、本明細書中に記載される組成物および方法の他の核酸ベースの用途の成分として、それらの一方または両方が使用され得る。本発明の特定の実施形態に従って有用であるポリメラーゼ(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermologa neopolitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENTTM)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENTTMDNAポリメラーゼ、Pyrococcus woosii(Pwo)DNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bca)DNAポリメラーゼ、Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)DNAポリメラーゼ、Thermus flavus(Tfl/Tub)DNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)DNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYME.TM.)DNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)DNAポリメラーゼ、mycobacterium DNA ポリメラーゼ(Mtb、Mlep)、ならびにこれらの変異体、改変体および誘導体。RNAポリメラーゼ(例えば、T3、T5およびSP6、ならびにこれらの変異体、改変体および誘導体)もまた、本発明に従って使用され得る。
【0044】
本発明に従って使用されるポリメラーゼは、核酸テンプレート(代表的には5’から3’の方向)から核酸を合成し得る、任意の酵素であり得る。本発明において使用される核酸ポリメラーゼは、好中温性または好熱性であり得、そして好ましくは好熱性である。好ましい好中温性cDNAポリメラーゼとしては、T7 DNA ポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウフラグメントDNAポリメラーゼ、DNA ポリメラーゼIIIなどが挙げられる。本発明の方法において使用され得る好ましい熱安定性DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffelフラグメント、VENTTM DNAポリメラーゼおよびDEEPVENTTM DNAポリメラーゼ、ならびにそれらの変異体、改変体および誘導体(米国特許第5,436,149号;同第4,889,818号;同第4,965,188号;同第5,079,352号;同第5,614,365号;同第5,374,553号;同第5,270,179号;同第5,047,342号;同第5,512,462;WO92/06188;WO92/06200;WO96/10640;Barnes,W.M.,Gene 112:29−35(1992);Lawyerら、PCR Meth.Appl.2:275−287(1993);Flamanら,Nucl.Acids Res.22(15):3259−3260(1994))が挙げられる。
【0045】
本明細書中で企図される特定の実施形態における使用のための他の検出可能な指示薬としては、抗体、レクチン、免疫グロブリンFcレセプタータンパク質(例えば、Staphylococcus aureasのプロテインA、プロテインGまたは他のFcレセプター)、アビジン、ビオチン、他のリガンド、レセプターもしくは対応物、またはそれらのアナログ、模倣物、などのような、親和性試薬が挙げられる。このような親和性方法論のために、免疫計量(immunometric)測定のための試薬(例えば、適切に標識した抗体またはレクチン)が調製され得、これら試薬としては例えば、放射性核種で標識されたもの、フルオロフォアで標識されたもの、親和性タグで標識されたもの、ビオチン配列またはビオチン模倣配列で標識されたもの、または抗体−酵素結合体として調製されたもの(例えば、Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Boston;Scouten,W.H.,Methods in Enzymology 135:30−65,1987;HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988;Haugland,2002 Handbook of Fluorescent Probes and Research Products−第9版,Molecular Probes,Eugene,OR;Scopes,R.K.,Protein Purification:Principles and Practice,1987,Springer−Verlag,NY;Hermanson,G.T.ら,Immobilized Affinity Ligand Techniques,1992,Academic Press,Inc.,NY;Luoら,1998 J.Biotechnol.65:225およびこれらに引用される参考文献を参照のこと)が挙げられる。
【0046】
溶解可能(または分離可能)なマトリックスは、例えば、本明細書中に記載されるように、溶媒中に溶解または分離されるマトリックス物質を保存デバイスの1つまたは複数のサンプルウェルに接触させるかまたは与えることによって、生物学的サンプルの容器を保存するために適用され得る。例えば、溶解可能なマトリックス物質は、ガラス製またはプラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、または他の物質)製のチューブまたはプレートに容易に接着し得る。この溶解可能な物質は乾燥され、非限定的な例として、これは周囲温度(代表的に、20℃〜30℃の範囲内、例えば22℃、23℃、24℃、25℃)の下および/または適切な高温の下、および/または減圧雰囲気下(例えば、部分的真空または完全真空)および/または適切なガス流(例えば、濾過空気の流れ、COの流れまたは窒素もしくは他の適切な乾燥性ガスのような不活性ガスの流れ)の下、または他の乾燥手段による、風乾によって達成され得る。乾燥工程(この工程は完全に乾燥していてよい(例えば、統計上有意な、全ての検出可能な溶媒または実質的に全ての検出可能な溶媒が除去されている)し、部分的に乾燥していてもよい)の後、溶解可能/分離可能なマトリックス物質は、保存されるべき生物学的サンプルを容易に受容する。
【0047】
生物学的サンプルにおいて提供されるかまたは生物学的サンプルに由来する生物学的物質もまた、液体形態において保存マトリックスと組合わせてウェルまたはチューブに添加されて(例えば、このサンプルウェルとそのサンプルおよび溶媒中に溶解または分離されたマトリックスとを接触させることにより)、その生物学的物質およびそのマトリックス物質の乾燥を同時に進ませ得る。好ましい実施形態において、溶解可能なマトリックスは、生物学的反応を妨害せず、その結果、精製工程は、その生物学的サンプルのさらなる処理の前(例えば、アッセイなどのような生化学反応を実施する前)に、そのサンプル保存デバイスのウェル中で、そのサンプルからマトリックスを分離することを必要としなくてよい。
【0048】
溶解可能なマトリックスにおける緩衝剤条件は、少なくとも90%より大きく、好ましくは95%より大きく、より好ましくは96%、97%、98%または99%より大きい、生物学的サンプルの生物学的活性(例えば、酵素的活性または親和性活性、または構造の完全性または本明細書中に記載されそして当該分野に公知の他の生物学的活性)が、溶媒再構築(例えば、水による再水和)の際に維持されて、実験室的にサンプルを保存容器から取り出し、そしてそれを別の容器中の反応緩衝剤に移す必要性を排除する。同様に、このような発明の特定の実施形態は、個別のアリコート作製する(aliquot)必要性、および/または保存されたサンプルがアッセイされるべき各々の時間で特定の生物学的試薬を較正する必要性を排除する、予想外の利点を提供する。
【0049】
溶解可能/分離可能なマトリックスはまた、1つ以上のウェルが少なくとも1つのインヒビター(すなわち、生物学的インヒビターまたは生化学的インヒビター)を含むような様式で、サンプル保存デバイスにおいて調製され得る。ここで、このようなインヒビターとしては、望ましくは、生物学的サンプルの生物学的サンプル保存デバイスからの回収率を保存するか、安定化するか、維持するか、保護するかまたはそれ以外にに貢献するために含まれ得る、任意の試薬が挙げられ、その生物学的サンプルは、そのサンプルとサンプル保存デバイスとの接触工程の前に存在した生物学的活性と同じ生物学的活性を実質的に有する。従って、特定の好ましい実施形態において、この生物学的サンプル保存デバイスは、少なくとも1つのインヒビター(例えば、抗微生物剤(例えば、細菌または真菌の増殖を抑制して長期保存の間のウェルおよび保存サンプルの微生物汚染を防止し得る、抗真菌剤および/または抗細菌剤(しかし、これに限定されない))を含む。
【0050】
特定の関連する実施形態において、インヒビターは還元剤、アルキル化剤、抗微生物剤、キナーゼインヒビター、ホスファターゼインヒビター、カスパーゼインヒビター、グランザイムインヒビター、細胞接着インヒビター、細胞分裂インヒビター、細胞周期インヒビター、脂質シグナルインヒビター、および/またはプロテアーゼインヒビターであり得る。当業者は、生物学的サンプルの性質および目的の特定の生物活性に依存して選択され得る、容易に利用可能な広範なインヒビターを知っている。例えば、Calbiochem(登録商標)Inhibitor SourceBookO (2004,EMD Biosciences,La Jolla,CA)を参照のこと。抗微生物剤に関しては、例えば、Pickering,LK編 2003 Red Book:Report of the Committee on Infectious Diseases,第26版 Elk Grove Village,IL,pp.695−97;American Academy of Pediatrics,1998,Pediatrics,101(1),補遺;Disinfection Sterilization and Preservation,Seymour S.Block(編)2001 Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia;Antimicrobial Inhibitors,A.I.LaskinおよびH.A.Lechevalier(編)1988 CRC Press,Boca Raton,FL;Principles and Practice of Disinfection,Preservation and Sterilization,A.D.Russellら、編、1999,Blackwell Science,Malden,MA;Antimicrobial/anti−infective materials,S.P.Sawanら、編、2000 Technomic Pub.Co.,Lancaster,PA;Development of novel antimicrobial agents:emerging strategies,K.Lohner,(編),2001 Wymondham,Norfolk,UK;Conte,J.E.Manual of antibiotics and infectious diseases(第9版),2001,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphiaを参照のこと。
【0051】
特定の実施形態において、インヒビターは、殺真菌性(fungizide)バリダマイシン(validamycin)A(Research Products International Corp.,Mt.Prospect,IL,カタログ番号V21020)、プロテアーゼインヒビターTL−3(Leeら,1998 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95:939;Leeら,1999 J.Amer.Chem.Soc.121:1145;Buhlerら,2001 J.Virol.75:9502)、オルトバナジン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N−a−トシル−Phe−クロロメチルケトン、N−a−トシル−Lys−クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、またはフルオロリン酸ジイソプロピルであり得る。
【0052】
本明細書中に記載されるように、溶解可能なマトリックスのさらなる利点は、そのマトリックスの溶解およびその物質の再水和の後、保存容器が反応チャンバとして直接使用され得ることである。液体形態におけるタンパク質の安定性および活性は、pH、塩濃度および補因子のような活性要件に依存し得る。多くのタンパク質の安定性は、いくつかの場合において、より高温では非常に不安定であり得、従って周囲温度(例えば、室温)におけるタンパク質の乾燥は、安定化環境を提供し得る。
【0053】
また、本明細書中の実施例において記載されるように、トレハロースの存在は、生物学的サンプルの安定性に寄与すると考えられており(例えば、Garcia de Castroら、2000 Appl.Environ.Microbiol.66:4142;Manzaneraら,2002 Appl.Environ.Microbiol.68:4328)、このトレハロースの存在は特定の条件下では、乾燥保存後にタンパク質における酵素活性の回復を支持するのに十分でない。簡潔な背景としては、トレハロースは、二糖類を切断する酵素であるトレハラーゼ天然の基質である。トレハロースは、タンパク質のような有機物を安定化することが公知であるが、至適以下の条件で存在する場合に、周囲温度におけるタンパク質の長期保存に不利であり得る。なぜなら、このトレハロースは、真菌および細菌にとっての天然のエネルギー供給源であるからである。細菌または真菌による、至適より低い乾燥保存条件においてトレハロースの存在下で保存された生物学的サンプルの汚染は、微生物の増殖を引き起こし、そして保存サンプルの所望されない微生物汚染が起こり得る。バリダマイシンは、トレハロースの化学構造とわずかに異なる化学構造を有するトレハラーゼインヒビターである。バリダマイシンは、トレハラーゼの酵素活性をブロックすることにより真菌の増殖を阻害する、無毒性の殺真菌剤である。驚くべきことに、そして本明細書中の実施例において開示されるように、バリダマイシンAは、周囲温度において生物学的物質を安定化し得る。生物学的物質の長期保存に関する保護効果に加え、バリダマイシンはまた、微生物由来の汚染から保存サンプルを保護する。
【0054】
従って、本発明の特定の実施形態は、サンプルウェルの構成成分またはマトリックス材料の構成成分としてトレハロースを含まない生物学的サンプル保存デバイスを明示的に企図し、そして同様に、特定の実施形態は、サンプルウェルまたはマトリックス材料からポリスチレンおよび/またはヒドロキシエクトインの存在を明示的に排除し得る。しかし、本明細書中に開示される予想外の利点を考慮すると、それらが生物学的サンプル保存デバイスにおけるインヒビターとしてバリダマイシン(例えば、バリダマイシンA)の含有に関連するように、本明細書中に企図される特定の他の実施形態は、トレハロース、ヒドロキシエクトイン、および/またはポリスチレンのいずれか1つ以上を含有し得る。非限定的な理論によれば、殺真菌剤として農業技術分野には公知のトレハロースインヒビターであるバリダマイシンAは、本明細書中に開示されるように、生物学的サンプル保存デバイスに溶解可能なマトリックスと組合せて使用される場合、驚くべき安定化効果を提供する。あるいは、または本明細書中に開示される、溶解可能なマトリックスとともにバリダマイシンを使用することに加えて、トレハロースのインヒビターまたは活性化剤としての活性を有する他の低分子は、インヒビターとして、またはマトリックス材料および/またはサンプルへの添加剤としてこの生物学的サンプル保存デバイスに有用に含有され得る。このような低分子としては、天然の二糖類、カルバ糖としても公知の擬似糖および/またはトレハラーゼの他のインヒビター/活性化剤が挙げられる。さらに、バリダマイシンは、それが真菌、細菌または他のタイプの汚染から長期の保存媒体を保護するという点で、本明細書中に開示される特定の実施形態に従う利点を提供する。
【0055】
乾燥保存マトリックス材料として使用され得るマトリックス材料の他の非限定的な例としては、ポリカーボネート、セルロース(例えば、FTATM紙、Whatman Corp.,Florham Park,NJのようなセルロース紙)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ニトロセルロース、アガロース、架橋アガロース(例えば、2,3−ジブロモプロパノール架橋アガロース)、3,6−無水−L−ガラクトース、デキストランおよび他の多糖(エピクロロヒドリン架橋デキストランまたはN,N’−メチレンビスアクリルアミド架橋デキストランのような、化学的に架橋された多糖を含む)、ケイホウ酸ガラスミクロファイバー、ガラス繊維、アスベスト、ポリマーおよびプラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレンおよびこれらの物質の誘導体(例えば、米国特許第5,496,562号)、ならびに当該分野で公知であるか、もしくは本開示に基づき本明細書中に開示されるデバイスおよび方法における使用に適していることが容易に判定され得るような他の類似の材料が挙げられる。また、例えば、米国特許第5,089,407号、同第4,891,319号、同第4,806,343号および同第6,610,531号を参照のこと。
【0056】
上記マトリックス材料は、生物学的材料の保存(storage)および保存(preservation)のために処理され得る。緩衝条件の調整ならびに化学物質および酵素および他の試薬の添加により、DNAおよびRNA(例えば、Sambrookら、1989;Current Protocols,Nucleic Acid Chemistry,Molecular Biology,Wiley and Sons,2003)ならびにタンパク質および他の生物学的材料(例えば、血液、組織、体液)を、酵素、プロテアーゼおよび環境因子(例えば、Current Protocols,Protein Sciences,Cell Biology,Wiley and Sons,2003)による分解に対して安定化させ得ることが十分に記載される。特定の化学成分と恩恵的な効果を組合わせる方法が適用され得る。種々の化学成分としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ジエチルピロカーボネート、Tris緩衝液、Tris−EDTA緩衝液(TE)、塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)、MOPS/酢酸ナトリウム/EDTA緩衝液(MOPS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、生理学的pHにおける酢酸ナトリウム緩衝液、グアニジウムチオシアネート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒト胎盤リボヌクレアーゼインヒビター、ウシリボヌクレアーゼインヒビター、ブタリボヌクレアーゼインヒビター、ジエチルピロカーボネート、エタノール、ホルムアミド、グアニジウムチオシアネート、バナジル−リボヌクレオシド複合体、マカロイド(macaloid)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、プロテイナーゼK、ヘパリン、ヒドロキシアミン−酸素−銅(II)イオン、ベントナイト、硫酸アンモニウム、ジチオトレイトール(DTT)、β−メルカプトエタノールまたは特異的阻害性の抗体が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0057】
各ウェルは、約5μl〜約100μlの液体サンプル材料、好ましくは約10μl〜約30μlの液体サンプル物質を保持する。サンプル量は、約0.01μg〜約1000μgのDNA、RNA、タンパク質、血液、尿、ウイルス、細菌、細胞、組織、細胞抽出物、組織抽出物、代謝産物、化学物質、または他の物質により変動し得る。サンプルの適用は、直接スポッティングにより、自動化され得る。スポットを付けたウェルには、色を変化させて占有されたウェルを示す色インジケーターが提供されてもよい。色変化は、着色剤を添加することにより達成され得る。例えば、poncoレッド色素、ニトラジン(Nitrazine)イエロー、ブロムチモールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルオレンジ、コンゴーレッド、ブロモクロロフェノールが、サンプル材料と一緒に、またはその前に、またはその後に保管され得るか、あるいはサンプル材料をウェルに保管する前か保管した後にこのマトリックス材料を処理することにより保管され得る。ウェル内のマトリックス上に6.5〜8.5の生理学的pHを有するサンプルを置いた後に色を変化させるpH依存性着色試薬が適用され得る。スポットを付けたウェルは、周囲温度で約1〜20分以内に、または高温では約0.1〜約10分以内に乾燥する。DNAは、約50倍まで〜約80倍に対するウェルの再水和によって、回収され得る。再水和試薬は、6.5〜8.5の生理学的pHを有する溶液またはサンプル緩衝液であり得る。Tris緩衝液、Tris−EDTA緩衝液(TE)、塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)、MOPS/酢酸ナトリウム/EDTA緩衝液(MOPS)、酢酸ナトリウム緩衝液。乾燥保存デバイス設計は、細菌由来、酵母由来、ヒト由来、動物由来、植物由来および他の供給源由来の精製されたゲノムDNAの保存のために、さらなる改変なしに、適用可能である。さらなる改変(例えば、上記繊維をプロテアーゼについての変性剤でコーティングすることが挙げられるが、これに限定されない)を加えて、この乾燥保存デバイスはまた、細菌、頬スワブ、生検組織、精液、尿、血液、タンパク質および他のサンプルに対して使用され得る。
【0058】
関連する実施形態は、所望の用途に対して選択され得る1つ以上の補助試薬とともに、本明細書中に開示されるような生物学的サンプル保存デバイスを備えるキットに関する。必要に応じて、このキットはまた、箱、ケース、ジャー、ドラム、引き出し、キャビネット、カートン、キャリア、ハンドル、ラック、トレイ、パン(pan)、タンク、バッグ、封筒、スリーブ、ハウジングなど、例えば任意の他の適切な容器を備え得る。補助試薬としては、本明細書中に記載されかつ当該分野で公知の1種以上の溶媒または緩衝液が挙げられ得、そして特定の実施形態では、活性緩衝液を含み得る。
【0059】
活性緩衝液は、溶媒または液体形態の溶液(濃縮物、または意図された用途のために適切である場合に1種以上の適切な溶媒(例えば、代表的には水、あるいはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのようなアルコール、またはジメチルスルホキシド、アセトニトリル、フェノール、クロロホルムなどのような有機溶媒、または他の溶媒)で再構成されるか、それらに溶解されるか、そして/またはそれらで希釈されると、上記生物学的サンプルの所望の使用(例えば、そのサンプルの1種以上の成分の機能的または構造的特徴付け)に適した液体を生じる1種以上の乾燥成分を含む)を含み得る。
【0060】
このような使用の非限定的な例としては、1種以上の酵素活性を判定すること、分子間結合性相互作用の判定、特異的ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の存在の検出、あるいは免疫学的に定義されたエピトープの存在の検出あるいは明確なオリゴ糖構造の存在の検出、特定のウイルスの検出、微生物細胞の検出、あるいはヒト細胞または動物細胞の検出、特定の代謝産物および異化物質の判定などが挙げられ得、これらのすべては、定義されかつ関連分野の当業者には公知の条件を使用して達成され得る。その条件としては、上記サンプルを適切な活性緩衝液と接触させることを通して提供され得る適切な条件が挙げられる。
【0061】
(湿式ストレージデバイス)
ストレージデバイスは、ウェルの設計に対する1以上の変更を通じて、サンプルを湿式保管するために改変され得る。ウェルを開いたり閉じたりする間に流出によってウェルを超えて交差汚染することは、表面張力によってウェル中の液体を保持しながらウェルの上部において小さな開口部を提供する設計によって回避される。
【0062】
ウェルの上部における小さな開口部は、逆円錐型の設計またはウェルの上部からオープンスペースに突き出して各ウェルの全体の開口部を小さくする可塑性のフラップによって提供され得る。湿式ストレージデバイスは、射出成形によって製造され、ストレージデバイスと同様に1つの部品または2つの部品で作製され得る。湿式ストレージデバイスは、約−80℃〜約100℃の範囲の温度に耐える。
【0063】
(ストリップウェルモジュール)
本発明において記載されるすべてのデバイスおよび適用は、1、4または8個のいずれかのウェルストリップを備えるストリップウェル形式で使用され得る。ストリップウェルモジュールは、ストレージデバイスと同一かまたは同様の基礎フットプリントを有する。これは、96ウェルプレートユニットよりも少ないサンプル数の保管を可能にする。このモジュール設計は、薄い基板プラットホームへのウェルストリップの取付けを可能にする。1つのストリップは、1、4または8個のいずれかのウェルを備え得る。ストリップは、磁気相互作用またはストリップの端部に存在するクリップのいずれかによって、薄い基板に取付けられ得る。1つのストリップの高さは、基板の厚さを含めて、ユニットのふたがデバイスを閉じることを可能にするように、通常の基本的なストレージユニットと等しい。
【0064】
(加圧デバイス)
本発明の加圧デバイスは、数個のモジュールからなり、これらのモジュールは、前に記載されたサンプルストレージデバイス、フィルターユニット、加圧プレートユニット、および加圧気体システムを備える。すべてのユニットは、寸法が等しく、標準的な96ウェル生物学的サンプルプレート、384ウェル生物学的サンプルプレートまたは1535ウェル生物学的サンプルプレートと同等である。加圧デバイスの寸法は、高さが約2mm〜約25mm、長さが約80mm〜200mm、そして幅が約60mm〜約150mmである。好ましくは、加圧デバイスは、約3mm〜約20mmの高さ、約100mm〜約140mmの長さ、そして約60mm〜約100mmの幅を有するが、少ないサンプル数またはより小さいサンプルシステムに適応するためにより小さい寸法も有し得る。すべてのモジュールは、サンプルストレージデバイスの寸法のサイズに依存して、寸法が変わり得るが、ウェルの数は、1つのサンプルプレートあたり1個と少なかったり何千個と多かったりし得る。最も好ましくは、96個または384個のウェルがサンプルプレートに提供され、各々の加圧プレートユニットによって加工され得る。各加圧デバイスのサンプルウェルの数はまた、1、4および8個のウェルのグループに分割され得、これらのウェルのグループは、本明細書に記載される標準的なサンプルデバイスに適合され得る。加圧デバイスは、カラフルな可塑性材料または金属あるいは両方を組み合わせたもので作製される。加圧デバイスの本体およびそのモジュールは、射出成形または工作機械あるいは両方の組み合わせによって作製される。
【0065】
フィルターユニットは、磁力によって本明細書中に記載されるサンプルストレージデバイスおよび任意の他のデバイスに取付けられる。付加的なクラスプが、作動中に空気圧に耐えるのを補助するために提供され得る。フィルターユニットは、ポリプロピレン、アクリルのようなカラフルな固形材料で作製され得、濾過のために紙または固体マトリックスを含む。好ましくは、フィルターユニットは、濾過に使用される基板に依存して、約1mm〜約15mmの厚さを有する。フィルターユニットは、サンプルストレージデバイスに適合する適切な数の穴/スロットを有し、96、384、または1536またはより多くのサンプル貯蔵穴を保持する。各フィルターユニットは、それ自体のぴったりとした密閉ふたを有する。穴のリムは、直線または突出した端部でのいずれかで有り得る。突出した端部は、粘着性相互作用を介して、または粘着性相互作用を介さずにマトリックス材料を穴の内部に保持し得る。
【0066】
フィルターユニット内の各穴は、マトリックス材料(例えば、スポンジ様材料、シリカ、吸収性粉末であるが、これらに限定されない)、および生物学的物質(例えば、血液、細菌、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、PCR産物、クローン化DNA、タンパク質、RNA、タンパク質、鉱物または化学物質であるが、これらに限定されない)を含み得る。マトリックスは、生物学的サンプルを処理(例えば、例示のためかつ限定せずに、DNA精製、PVR増幅、サンプルサイズの分割(例えば、分子のサイズまたは細胞のサイズに基づいて))、血清を処理、血液を処理、タンパク質精製および細胞の分類をするのを補助するように選択され得る。マトリックス材料は、サンプルプレートユニットの製造プロセスで組み込まれるか、あるいは接着性相互作用によって取付けられるか、または穴に押し込まれる。マトリックスは、望ましくない生物学的画分を分解または保持するために、サイズ分割フィルターを作製するのに必要な標準的な技術、または処理された材料を用いて調製される(例えば、Current Protocols, Molecular Biology, Wiley and Sons, 2003)。マトリックス材料はまた、抗体、レクチン、または他の親和性分子、電荷選択性分子、イオン選択性分子、基選択性(例えば、アミノ基もしくはカルボキシル官能基)分子、疎水性分子、親水性分子、または他の選択性分子などで処理されて、サンプル材料の画分を保持し得、そして/あるいは小さな化学物質で処理されて望ましい生物学的機能もしくは機能性または化学的機能もしくは機能性が与えられる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons, 2003;Scopes,R.K.,Protein Purification:Principles and Practice,1987,Springer−Verlag,NY;Weir,D.M.,Handbookof Expwrimental Immunology,1986,Blackwell Scientific,Boston;およびHermanson,G.T.ら、Immobilized Affinity Ligand Techniques,1992,Academic Press,Inc.,Californiaを参照のこと)。マトリックス材料は、緩衝液の条件の調節によって、および化学的添加剤、安定剤または分解試薬の改変によって生物学的物質を保存するために前処理され得る(例えば、Sambrookら,1989;Current Protocols,Nucleic Acid Chemistry,Protein Science,Molecular Biology,Cell Biology,Wiley and Sons,2003)。各穴は、約5μl〜約1000μlのサンプル容積を処理し得る。サンプルの量は、約0.1μgのDNA〜約1000μgのDNA、RNA、タンパク質、血液、尿、ウイルス、細菌、細胞、組織、細胞抽出物、組織抽出物、代謝産物、化学物質、または他の物質まで変化し得る。サンプルの適用は、直接スポットすることにより、自動化され得る。
【0067】
加圧プレートユニットは、頂部からフィルターに空気圧を適用し、サンプルをマトリックスを通して下に位置するストレージデバイスのウェルに押し進める。圧力は、加圧研究室空気システムまたは加圧空気キャニスターから適用され得る。加圧ユニットは、頂部圧力によって試薬をサンプルストレージデバイス、PCRデバイス、シークエンシングデバイス、制限分析デバイス、タンパク質結晶学デバイス、診断デバイス、およびストリップウェルデバイスのウェルに導入するように適用され得る。加圧プレートユニットは、穴とともに提供され、この穴は、すべての穴を空気取り入れ口に接続させる。空気取り入れ口は、バルブに取付けられ、このバルブは、加圧プレートユニットを加圧空気供給源に接続する気密シールを有する。加圧ユニットは、バルブを回して固定することによって、空気供給源に取付けられる。バルブはまた、圧力ゲージに取付けられ、この圧力ゲージは、各々特定のフィルターユニットに必要とされる圧力を示す。
【0068】
本明細書中に記載される加圧デバイスのためのすべてのデバイスは、好ましくは、サンプルをフィルターシステムを通してストレージウェルに押し進めるのに必要な圧力に耐えるシールを達成するように気密である。各モジュールは、平坦であり得るか、または隣接するモジュールに正確に適合する突出部を有する。気密適合は、圧縮性のジョイントまたはクッションの使用によってなされる。ジョイントは、各ユニットの周囲に配置されるか、または各単一のウェルの周りに配置されるかのいずれかである。好ましくは、ジョイントは、リムに位置づけられるか、または接着性材料を用いてふたに取付けられる。気密適合は、精密なシールとして各ユニットからの突出部を、その下に取付けられるユニットに挿入することによって達成され得る。
【0069】
すべてのモジュール(加圧ユニット、フィルターユニットおよびストレージデバイスを含む)の取付けは、好ましくは、磁気接着によって達成される(しかし、代替的に、これらのデバイスの実施形態および以下の他のデバイスの実施形態において、本明細書中に記載されるような他の密閉手段を使用する)。各ユニットは、磁気シートの形態または小さな磁石の形態のいずれかの磁石を備える。各ユニット間の磁力は、サンプルストレージデバイスもしくは他のデバイスに蓄積される前に生物学的物質を処理するための密封を可能にするのに十分に強い。3つの独立したモジュール(加圧ユニット、フィルターユニットおよびストレージデバイス)の磁力は、クラスプによってさらに確実にされ得る。クラスプは、この3つのモジュールを一緒に押し込み磁力の機構を強化するように形成される金属または可塑性材料で作製され得る。クラスプは、好ましくは、濾過ユニットの側面よりも小さい寸法を有する。クラスプは、クラスプを開く外圧の適用によって取付けられ得るか、またはクラスプは、フィルターモジュールの外側にわたってスライドするように設計され得る。2以上のクラスプが使用されて、フィルターユニットが固定され得る。
【0070】
各モジュールは、視覚的認識部位を有する。異なるウェルは、番号付けされ、サンプルプレートの上に番号および文字を彫ることによってか、または印刷プロセスを適用することによって印が付けられ得る。
【0071】
(ポータブルPCRデバイス)
サンプルプレートは、磁力によってサーモサイクルユニット(PCRデバイス)に取付けられ得る。サンプルプレートおよびPCRデバイスは、磁気シートの形態かまたは小さい磁石の形態のいずれかの磁石を備え、この磁石は、サンプルプレートの内側に置かれる。サンプルプレートとPCRデバイスとの間の磁力は、PCRデバイスに対するサンプルプレートの正確な配置および密着を可能にする。
【0072】
PCRデバイスは、ストレージデバイスのフットプリントを有する温度プラットホームを備える。PCRデバイスは、約4℃〜約100℃の範囲で温度を発生させる。PCRデバイスは、コンピュータ部品を備え、このコンピュータ部品は、繰り返しサイクルプロトコル用にプログラム化され得、この繰り返しサイクルプロトコルは、複数の温度、変化された温度の保持時間、および複数の温度変化を含み、この複数の温度変化は、4℃から100℃の範囲であり得、かつ標準的なPCR増幅条件およびホットスタートPCR増幅条件(例えば、Qiagen「Taq PCR Handbook」、Qiagen「Critical Factors for Successful PCR」)の要件に適応する。PCRユニットは、一体型の加熱ふたまたはカバーを備え得、このふたまたはカバーは、恒温を約100℃まで持続し、生じる。このふたまたはカバーは、金属または類似の材料で作製され得、磁力を介してサンプルプレートの頂部に配置され、定位置に保持される。このPCRユニットに提供されるエネルギーは、標準的な110/220Vの電気コンセント、バッテリーパック、または太陽駆動式エネルギー源に由来し得る。
【0073】
(PCR試薬モジュール)
PCR試薬モジュールは、PCR増幅に必要なすべての試薬を備える。このモジュールは、限定はされないが緩衝液、プライマー、ポリメラーゼ酵素、およびデオキシヌクレオチドのような試薬を備える(例えば、Qiagen「Taq PCR Handbook」、Qiagen「Critical Factors for Successful PCR」)。これらの試薬は、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルあるいはサンプルプレートの形式および寸法に適合するそれ以上の形式に提供される。PCR試薬モジュールの寸法は、高さが約2mm〜約25mm、長さが約80mm〜約200mm、そして幅が約60mm〜約150mmである。好ましくは、PCR試薬モジュールは、約3mm〜約15mmの高さ、約100mm〜約140mmの長さ、そして約60mm〜約100mmの幅を有する。PCR試薬モジュールは、カラフルなポリプロピレンで作製され、96個、384個、1536個またはそれ以上のサンプル保管ウェルを保持する。PCR試薬モジュールは、射出成形によって製造される。
【0074】
磁性は、PCR試薬モジュールに対するサンプルプレートの接続機構である。サンプルプレートおよびPCR試薬モジュールは、好ましくはサンプルプレートの内側に置かれる磁気シートの形態または小さい磁石の形態で磁石を備える。サンプルプレートとPCR試薬モジュールとの間の磁力は、PCRプレートに対するサンプルプレートの正確な配置および密着を可能にする。
【0075】
PCR試薬モジュールは、さまざまな設計を有し得る。各サンプルウェルは、サンプルプレートのウェルに到達する突出した端部を有しても有さなくてもよい。試薬をPCR試薬モジュールからサンプルプレートに移すために加圧デバイスによって適用される空気圧の適用が必要とされる。
【0076】
(配列決定試薬モジュール)
配列決定試薬モジュールは、DNA配列決定またはDNAサイクル配列決定のために必要な全ての試薬を備える。このモジュールは、緩衝剤、プライマー、配列決定酵素、デオシキヌクレオチドおよびジデオキシヌクレオチド(例えば、Nucleic Acid Chemistry,Molecular Biology,Wiley and Sons,2003)のような試薬を含み得るが、これらに限定されない。これらの試薬は、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルの形式またはそれより大きい形式で提供され、この形式は、サンプルプレートの形式および寸法に適合する。この配列決定試薬モジュールの寸法は、高さ約2mm〜約25mm、長さ約80mm〜約200mm、および幅約60mm〜約150mmである。好ましくは、この配列決定試薬モジュールは、高さ約3mm〜約15mm、長さ約100mm〜約140mm、および幅約60mm〜約100mmを有する。この配列決定試薬モジュールは、色彩豊かなポリプロピレンから作製され、そして96個、384個、1536個またはそれ以上のサンプル保管ウェルを有する。この配列決定試薬モジュールは、射出成形によって製造され得る。
【0077】
磁気は、配列決定試薬モジュールに対するサンプルプレートの連絡機構である。このサンプルプレートおよび配列決定試薬モジュールは磁石を備え、この磁石は、好ましくは磁気シートの形態でかまたはそのサンプルプレートの内側に配置される小さな磁石の形態である。サンプルプレートと配列決定試薬との間の磁気引力は、配列決定試薬モジュールに対するサンプルプレートの正確な配置および密接な接着を可能にする。
【0078】
配列決定試薬モジュールは、異なる設計を有し得る。各々のサンプルウェルは、そのサンプルプレートのウェルの中に届く突出端を有していてもよいし、有さなくてもよい。配列決定試薬モジュールからサンプルプレートの中へと試薬を移送することは、圧力デバイスにより適用される空気圧の適用を必要とし得る。
【0079】
(プライマー伸長試薬モジュール)
プライマー伸長試薬モジュールは、プライマー伸長のために必要とされる全ての試薬を備え得る。これは、緩衝剤、プライマー、ポリメラーゼ酵素、デオキシヌクレオチドおよびジデオキシヌクレオチド(例えば、Current Protocols,Nucleic Acid Chemistry,Molecular Biology,Wiley and Sons,2003)のような試薬含み得るが、これに限定されない。これらの試薬は、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルの形式またはそれ以上の形式で提供され、サンプルプレートの形式および寸法に適合する。プライマー伸長試薬モジュールの寸法は、高さ約2mm〜約25mm、長さ約80mm〜約200mm、および幅約60mm〜約150mmである。好ましくは、このプライマー伸長試薬モジュールは、高さ約3mm〜約15mm、長さ約100mm〜約140mm、および幅約60mm〜約100mmを有する。このプライマー伸長試薬モジュールは、色彩豊かなポリプロピレンから作製され、そして96個、384個、1536個またはそれ以上のサンプル保管(deposit)ウェルを有する。このプライマー伸長試薬モジュールは、射出成形によって製造され得る。
【0080】
磁気は、プライマー伸長試薬モジュールに対するサンプルプレートの連絡機構である。サンプルプレートおよびプライマー伸長試薬モジュールは磁石を備え、この磁石は、好ましくは磁気シートの形態でかまたはそのサンプルプレートの内側に配置される小さな磁石の形態である。サンプルプレートとプライマー伸長試薬モジュールとの間の磁気引力は、このプライマー伸長試薬モジュールに対するサンプルプレートの正確な配置および密接な接着を可能にする。
【0081】
プライマー伸長試薬モジュールは、異なる設計を有し得る。各々のサンプルウェルは、そのサンプルプレートのウェルの中に届く突出端を有していてもよいし、有さなくてもよい。プライマー伸長試薬モジュールからサンプルプレートの中へと試薬を移送することは、圧力デバイスにより適用される空気圧の適用を必要とし得る。
【0082】
(ハプロタイプ決定試薬モジュール)
ハプロタイプ決定(haplotyping)試薬モジュールは、DNAハプロタイプ決定に必要とされる全ての試薬を備える。この試薬は、緩衝剤、プライマー、配列決定酵素、デオキシヌクレオチドおよびジデオキシヌクレオチドを含み得るが、これに限定されない(例えば、Current Protocols,Nucleic Acid Chemistry,Molecular Biology,Wiley and Sons,2003)。これらの試薬は、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルの形式またはそれ以上の形式で提供され、サンプルプレートの形式および寸法に適合する。ハプロタイプ決定試薬モジュールの寸法は、高さ約2mm〜約25mm、長さ約80mm〜約200mm、および幅約60mm〜約150mmである。好ましくは、このハプロタイプ決定試薬モジュールは、高さ約3mm〜約15mm、長さ約100mm〜約140mm、および幅約60mm〜約100mmを有する。このハプロタイプ決定試薬モジュールは、色彩豊かなポリプロピレンから作製され、そして96個、384個、1536個またはそれ以上のサンプル保管ウェルを有する。このハプロタイプ決定試薬モジュールは、射出成形によって製造され得る。
【0083】
磁気は、ハプロタイプ決定試薬モジュールに対するサンプルプレートの連絡機構である。サンプルプレートおよびハプロタイプ決定試薬モジュールは磁石を備え、この磁石は、好ましくは磁気シートの形態でかまたはそのサンプルプレートの内側に配置される小さな磁石の形態である。サンプルプレートとハプロタイプ決定試薬モジュールとの間の磁気引力は、このハプロタイプ決定試薬モジュールに対するサンプルプレートの正確な配置および密接な接着を可能にする。
【0084】
ハプロタイプ決定試薬モジュールは、異なる設計を有し得る。各々のサンプルウェルは、そのサンプルプレートのウェルの中に届く突出端を有していてもよいし、有さなくてもよい。ハプロタイプ決定試薬モジュールからサンプルプレートの中へと試薬を移送することは、圧力デバイスにより適用される空気圧の適用を必要とし得る。
【0085】
(制限分析試薬モジュール)
制限分析試薬モジュールは、DNA制限分析に必要とされる全ての試薬を備える。この試薬は、緩衝剤、制限酵素、および塩を含むが、これに限定されない(例えば、Sambrookら、1989;Current Protocols,Nucleic Acid Chemistry,Molecular Biology,Wiley and Sons,2003)。これらの試薬は、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルの形式またはそれ以上の形式で提供され、サンプルプレートの形式および寸法に適合する。制限分析試薬モジュールの寸法は、高さ約2mm〜約25mm、長さ約80mm〜約200mm、および幅約60mm〜約150mmである。好ましくは、この制限分析試薬モジュールは、高さ約3mm〜約15mm、長さ約100mm〜約140mm、および幅約60mm〜約100mmを有する。この制限分析試薬モジュールは、色彩豊かなポリプロピレンから作製され、そして96個、384個、1536個またはそれ以上のサンプル保管ウェルを有する。この制限分析試薬モジュールは、射出成形によって製造され得る。
【0086】
磁気は、制限分析試薬モジュールに対するサンプルプレートの連絡機構である。サンプルプレートおよび制限分析試薬モジュールは磁石を備え、この磁石は、好ましくは磁気シートの形態でかまたはそのサンプルプレートの内側に配置される小さな磁石の形態である。サンプルプレートと制限分析試薬モジュールとの間の磁気引力は、この制限分析試薬モジュールに対するサンプルプレートの正確な配置および密接な接着を可能にする。
【0087】
制限分析試薬モジュールは、異なる設計を有し得る。各々のサンプルウェルは、そのサンプルプレートのウェルの中に届く突出端を有していてもよいし、有さなくてもよい。制限分析試薬モジュールからサンプルプレートの中へと試薬を移送することは、圧力デバイスにより適用される空気圧の適用を必要とし得る。
【0088】
(診断デバイス)
基本的なサンプル保存デバイスは、ホルモンレベル、生理学的状態、ヒトの疾患、動物の疾患および植物の疾患についての検出において使用される分析デバイスとして機能するように、変更され得る。診断デバイスは、サンプル保存デバイスの上端における円筒形の診断デバイスの配置を含み得る。この診断デバイスは、2つの方法で作製され得る:1)独立した生産プロセスであり得、そしてサンプル保存デバイス中で完全なデバイスとして加えられるか、または2)サンプル保存デバイスの各々のウェル内で独立した単位として積層される。
【0089】
診断デバイスは、このデバイス内に、少なくとも1つの特異的抗体または特異的診断試薬を有する区域を備える。これらの試薬は、抗体−抗原複合体が形成される場合、視覚上検出可能な反応を生じ得る。
【0090】
(出荷用スリーブ)
出荷用スリーブは、生物学的物質を安全に輸送するかまたは郵送するために使用される。この出荷用スリーブは、サンプル保存デバイスおよび情報記憶媒体(例えば、その物質に関する情報を含むコンパクトディスク(CD))を保持するように設計される。危険な物質または感染性の物質が出荷される場合、ウェルはサンプル保存デバイスの封鎖の前に、接着性フィルムによりシールされ得る。この出荷スリーブは、2つの部分、底部またはサンプル保存デバイスホルダ、およびエンクロージャーを有する。底部は、段ボール、プラスチックまたは発泡体物質から作製され得、サンプル保存デバイスの正確なフットプリントを有し、そしてソフトウェアCDまたは他の情報記憶媒体の正確なフットプリントを有する。生物学的物質の出荷または移送のため、サンプルは、サンプル保存デバイスのウェルにスポットされ、そして蓋が閉じられ、そして磁力によるリッドクロージャーを介して密封される。サンプル保存デバイスは出荷用スリーブ底部の密着ばめに入れられる。CDが加えられてもよい。
【0091】
サンプル保存デバイスホルダの大きさは、サンプル保存デバイスのサイズによって決定され得、このホルダはサンプル保存デバイスよりも小さくなく、10個の重ねられたサンプル保存デバイスよりも大きくてよい。周囲の詰め入れ物質は好ましくは、少なくとも約5mmであって約10cmまでのさらなる詰め物からなる。このサンプルデバイスホルダはまた、情報デバイスの固定ばめのための空間を備え得る。輸送スリーブ内の情報デバイスホルダの位置は、情報デバイスの型に依存する。これは、1つまたは複数のCDまたはメモリカード/メモリスティックのためのとまりばめを提供するように設計される。サンプル保存デバイスホルダは、好ましくは、成型可能な材料(例えば、段ボールまたは発泡体ベースの材料)から作製される。詰め物物質を備えるサンプル保存デバイスホルダは、外側エンクロージャーにより囲まれるか、または開口蓋を含む6面全てからサンプル保存デバイスおよび情報保存デバイスを囲むかもしくは5面からそのサンプル保存デバイスホルダを囲むエンクロージャーの中に組み込まれる。このサンプル保存デバイスホルダが開口蓋を備える場合、この蓋はそのサンプル保存デバイスホルダのうちの1面に取り付けられ、そのサンプル保存デバイスの面のうちの1つを覆い、そして反対の面と接続し、そして輸送スリーブを密に閉鎖する。5面のサンプル保存デバイスホルダに関して、6つ目の面の閉鎖を囲むホルダは、閉鎖ボックスを介して提供され、サンプル保存デバイスホルダ全体にわたって滑り動く。このエンクロージャーは、そのサンプル保存デバイスホルダに硬性を提供する包材であり得る。住所ラベルおよび郵便切手のための空間は、輸送スリーブの外側に提供される。
【0092】
(タンパク質結晶学モジュール)
結晶学モジュールは、異なるタンパク質結晶化溶液で満たされ得、そして脱水され得るウェルを備える。基本的な保存デバイスは、明るい透明なプラスチックから作製され得、そして個々のウェルは各々、約4.6〜約9.4のpH範囲にわたるタンパク質結晶化条件を含む。各々のウェルは、異なる緩衝液(例えば、アセテート、タータラート、ホスフェート、Tris、シトレート、HEPES、イミダゾール、ホルメート、カルコレート、MES、Bicine、Tris、シトレート、HEPES、アセテート)、および異なる沈殿性塩(例えば、タータラート、ホスフェート、硫酸アンモニウムおよび硫酸リチウム、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛および酢酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、蟻酸ナトリウムおよび蟻酸マグネシウム、塩化マグネシウムおよび塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、蟻酸アンモニウム、硫酸リチウムおよび硫酸アンモニウム、イミダゾール、CTAB)、および沈殿性有機溶媒(MPD、2−プロパノール、エチレングリコール、ジオキサン、エタノール、1,6−ヘキサンジオール、など)を含み得るが、これらに限定されない。これらはまた、PEG400、PEG6000、PEG1000。PEG8000、PEG10000およびPEG20000、PEG MME550、PEG MME2000、PEG MME5000およびPEG MME2000、Jeffamine M−600または他の添加物(tert−ブタノール、グリセロール、Co2+イオン、Cd2+イオン、Fe3+イオン、Ni2+イオンおよびZn2+イオン、ジオキサン、エチレングリコール、ポリエチレンイミンなど)を含み得る。ウェルは、異なる濃度の上記の溶液で満たされ得る。ウェルは脱水され、そのウェルの壁上に物質を保持する。このウエルは直ちに使用でき、水により再水和され得、そしてタンパク質が添加され得る。
【0093】
(スタッキング棚)
ここのサンプル保存ユニットは、特別に設計された保存ラックにおいて、室温または凍結のいずれかで保存され得る。このラック(図を参照のこと)は、異なる量のサンプル保存ユニットを保持し得、好ましくは、バーコードが視認可能であり、そしてそのユニットはプラスチックのトラック上を容易にスライドされ得る。この保存ラックは、プラスチックボックスにおいて、密封ドアによって開口であっても閉鎖されていてもよい。
【0094】
スタッキングラックは、プラスチックまたは金属から作製され得る。これは、10個、25個または50個のサンプル保存デバイスを保持し得る。これらのサンプル保存デバイスは、トラック上をスタッキングラックの中へとスライドする。ロック化機構は、この積み重ねラックからカードが欠落することを防止する。積み重ねラックは、開口であっても、保護物質およびその積み重ねラックの前面におけるヒンジ付きドアによって完全に封鎖されていても、いずれでもよい。
【0095】
(生体物質に関連するデータを保存、追跡、および検索するためのシステム)
上述された様々な実施形態における前述の保存デバイスは、他の技術と組み合わされ得、生命科学の応用にとっての、サンプル保存およびサンプル管理の統合を提供する。本発明のこの実施形態によって、生物学的サンプル保存、位置、追跡、処理、およびサンプルデータ管理の統合を可能にする。サンプルに関するデータは、そのデータとサンプル保存デバイスとの直接的な物理的関連を介して、サンプルの位置に関連付けられ得る。保存された情報は、在庫目録、ならびに、多段階の生物学的リサーチプロトコル、生産過程、スクリーニング、バイオアッセイ、患者履歴、臨床試験データ、および開発情報の他のソースと組み合わせたサンプルの追跡に由来する追加のデータを用いて更新され得る。サンプルに関連するデータは、マルチユーザ、マルチサイト環境をインターフェースすることを可能にする、安全な階層型ソフトウェアおよびネットワーク構築を解して送信および共有され得る。
【0096】
理想的には、サンプルについての情報は、関連される電気的なインターフェースによって、好適には、無線周波数識別(RFID)中継器などのワイヤレスインターフェースによって、サンプル保存デバイスと一体化される。従来、バーコードがサンプルを識別するために用いられる一方で、この技術は、本発明における使用に対して不適切にさせる制限を有する。これらの制限は、情報を送信するためのバーコードへの必要とされる視野方向(line−of−sight)のアクセス、限定された情報量、および、埃や湿気などの環境的要因を介した障害を含む。無線周波数識別技術はこれらの不利益を克服する。
【0097】
リモート通信を利用したワイヤレス器具は、通常、多くの産業活動において用いられている無線周波数(RF)技術に依存する。RF技術の一つの応用は、動物、在庫目録、および車両などの対象物の位置を見出し、識別し、および追跡することである。RF識別タグシステムを開示する刊行物の例は、米国特許第6,696,028号明細書、同第6,380,858号明細書、および同第5,315,505号明細書の開示を含む。
【0098】
遠隔にある対象物を監視することを容易にするRF識別(RFID)タグシステムが開発されている。図9に示されるように、基本的なRFIDシステム10は、インターロゲーターまたは読取り装置12、および中継器(通常、RFタグと呼ばれる)14の二つの構成要素を含む。インターロゲーター12およびRFタグ14は、個々のアンテナ16、18を含む。動作において、インターロゲーター12は、無線周波数呼び掛け信号20を、そのアンテナ16を介してRFタグ14のアンテナ18に送信する。その呼び掛け信号20を受信することに応答して、RFタグ14は、バックスキャッタとして知られるプロセスによって、タグアンテナ18を介して、インターロゲーター12に送信される、振幅変調応答信号22を生成する。
【0099】
従来のRFタグ14は、MOSトランジスタなどのスイッチ26を有する振幅変調器24を含み、タグアンテナ18と接地との間において接続される。RFタグ14は呼び掛け(インターロゲーション)信号20によって稼動されると、ドライバ(図示されず)は、RFタグ14の不揮発性メモリ(図示されず)に保存された情報コード、典型的には識別コードに基づき、変調オン/オフ信号27を作成する。変調信号27はスイッチ26の制御端末に適用され、スイッチ26を交互に開閉させる。スイッチ26が開いている場合、タグアンテナ18は、呼び掛け信号20の一部を、その応答信号22の一部28としてのインターロゲーター12に反射させる。スイッチ26が閉じている場合、呼び掛け信号20は、反射されることなくスイッチ26を介して接地に移動し、それによって、応答信号22の無効部分29を作成する。すなわち、呼び掛け信号20は、振幅変調され、保存された情報コードに特有の変調信号27に従い、呼び掛け信号20を交互に反射および吸収することによって、応答信号22を生成する。RFタグ14はまた、修正され得、呼び掛け信号は、スイッチ26が閉じられている場合には反射され、開いている場合には吸収される。応答信号22を受信すると、インターロゲーター12は応答信号22を復調し、その応答信号によって表される情報コードをデコードする。したがって、従来のRFIDシステムは、RFタグ14がRFキャリア周波数を変調する単一の周波数発振器上において動作し、RFタグ14が存在するという指示をインターロゲーター12に提供する。
【0100】
RFIDシステムの実質的な利点は、その技術の無接点、無視野方向(non−line−of−sight)性能である。インターロゲーター12は、その出力および使用される無線周波数に依存し、1インチから100フィートまたはそれ以上の範囲にて、呼び掛け信号20を発する。タグは、匂い、霧、氷、ペンキ、ほこりなどの様々な物質を貫いて、ならびに、バーコードまたは他の光学的読出し技術が役に立たない他の視覚的および環境的に困難な状況を介しても読み出され得る。RFタグはまた、並外れたスピードにて読み出され得、多くの場合、100ミリ秒以下で応答する。
【0101】
典型的なRFタグシステム10は、しばしば複数のRFタグ14およびインターロゲーター12を含む。これらのカテゴリーは、ビーム出力の受動タグ、バッテリー電源の半受動タグ、およびアクティブタグである。それぞれは、基本的に異なる方法において動作する。
【0102】
ビーム出力のRFタグはしばしば受動素子と呼ばれる。というのは、その動作に必要とされるエネルギーを、そこで発せられる呼び掛け信号から引き出すからである。そのタグは、フィールドを整流し、そのタグ自体の反射特性を変化させ、インターロゲーターにおいて見られる反射率における変化を生成する。バッテリー電源の半受動RFタグも同様の方法において動作し、デルタをインターロゲーターに反射させるためにそのRFのクロスセクションを変調し、通信リンクを生じさせる。ここで、バッテリーはタグの動作電力源である。最後に、アクティブRFタグにおいて、送信器は、そのバッテリーによって電力供給されるそれ自体の無線周波数エネルギーを生成するために使用される。
【0103】
本発明の好適な実施形態において、システムは、消耗品のハードウェアデバイス、在庫目録および管理ソフトウェア、ならびにハードウェアデバイスとソフトウェアとの間のRFIDインターフェースの3つの部分からなる。図10を参照すると、本発明の一実施形態に従って形成されたシステム100が示され、システム100は、上述の保存デバイス102、在庫目録および管理ソフトウェア構成要素104(好適には、コンピュータシステム106において実施される)、および保存デバイス102とソフトウェア106とを結合させる無線周波数識別インターフェース108を含む。好適には、RFIDインターフェース108は、保存デバイス102およびインターロゲーター112に繋がれた中継器100を含み、インターロゲーター112はコンピュータに実施されたシステム106に結合される。
【0104】
この実施形態において、中継器110は、その中継器110を保存デバイス102の外部表面に固定することなどによって、サンプル保存デバイス102に繋がれる。しかしながら、中継器110は、管、プレート、ラック、または保存デバイス102が保持されている部屋に添付または関連付けられ得ることが理解される。信号中継器110は単一の保存デバイス102に関連付けられることが好適である一方で、その保存デバイス102に保存されたそれぞれの特定のサンプルが、それに繋げられた中継器110を有し得ることも可能である。
【0105】
繋がりは、中継器110が保存デバイス102に組み込まれるという保存デバイス102の製造過程、または保存デバイス102への接着剤による固定を介してなどの保存デバイス102が製造された後のいずれかにおいて達成され得る。様々な実施形態におけるサンプル保存デバイス102において使用される好適な接続メカニズムが磁気であるので、適切な遮蔽が、中継器110に保存された情報の意図されていない変更を防ぎ、中継器110とインターロゲーター112との間における無線周波数通信における障害を防ぐために必要とされ得ることは当業者によって理解される。
【0106】
中継器110は、所有者情報、位置情報、分析情報、生産過程、臨床実験の実施、合成過程、サンプル収集、およびサンプルを管理する上で価値のある、当業者にとって公知である他の情報を含む、保存デバイス102とその保存デバイス102に保存されたサンプルとについてのデータで事前にプログラムされ得る。そのようなデータを事前にプログラムすることに付け加えて、中継器110は、メモリ内にてそのデータを修正および更新することを可能にするように構成され得る。さらに、中継器110はデータのタイプに従った正確なアクセス条件を規定するセキュリティ構造を含み、それによって、読出し、書込み、および更新を制限する。例えば、RFIDインターフェース108の構成要素は、以下に記載されるソフトウェアアプリケーションなどの、特定のコンピュータに実装されたデータ処理システムから制御信号を受信し、および、そのデータ処理システムに応答するように構成され得る。さらに、中継器110へ書き込まれたデータは、認証およびセキュリティ目的のために暗号化され得る。
【0107】
RFID中継器またはチップの使用は、機能性を損失することなく、広範な温度範囲(−25℃〜85℃)の利点を提供する。さらに、警告し、中継器110に関連される対象物の位置を見出すための信号灯または可聴音生成器などのように、中継器110は、リモートデバイスを制御するために用いられ得る。中継器110における情報の保存はまた、コンピュータに実装されたシステム106におけるデータが損傷するかまたは損失した場合の追加のバックアップを提供する。
【0108】
インターロゲーター112はコンピュータに実装されたシステム106に結合される従来の無線周波数識別読取り装置である。コマンドおよび制御信号はシステム106によって生成され、一つ以上の中継器110の呼び掛けを開始し、コンピュータによって実施されるシステム106におけるソフトウェア104によって処理される、中継器110からの応答を受信する。一つの構成において、中継器110はインターロゲーター112からの通信を介して事前にプログラムされ得、インターロゲーター112に保存されたデータを置き換えまたは更新する。
【0109】
一つの実施において、一つ以上のインターロゲーター112は、マイクロ波信号などの無線周波数信号を介して中継器110と通信するのに十分な範囲の設備内に配置される。多数のインターロゲーター112は、中継器110の多数のクラスに対して、または個々の中継器110とともに使用され得る。あるいは、公知技術を利用する一つのインターロゲーターは、連続的な方法または同時に、多数の周波数上において多数の中継器110と通信することができる。サンプル保存デバイス102または個々のサンプルが処理される応用において、建造物内、あるいは、貨物線、列車などの運搬システムまたは輸送システムなどの移動経路に沿って、様々な位置において配置された多数のインターロゲーターは、サンプルの位置および状態を追跡するために用いられ得る。これは、標本または保存デバイス102が位置される場所の温度、湿度、気圧などの環境的な要因をチェックすることを含む。
【0110】
したがって、RFIDインターフェース108は、生物学的な生産過程または実験段階の実行などの間に、研究室内に配置され、研究室ロボットによって操作される、サンプルまたは保存デバイス102の移動および分析に関連されたデータを監視および処理するように拡張され得る。これはまた、品質管理、および自動または半自動のリサーチプロトコルを介した生物学的サンプルを処理するのに役立つ。
【0111】
上述したように、サンプル保存および追跡は、本明細書において記載されたサンプル保存デバイス上のRF中継器とコンピュータによ実装されたシステムとの間におけるRFインターフェースの使用を介してサンプルを配置することによって容易にされ、保存ラック、保存部屋、冷蔵庫、実験台の椅子、机、または本棚などの、保存位置のタグ付けおよび監視を通して達成される。
【0112】
特定の保存デバイス102またはサンプルを追跡するために、中継器110は、保存デバイス上に配置される点滅ライト、保存デバイスに関連される可聴デバイス、人間によって、または自動化されたシステムによって認識され得る保存デバイスの色の変化など、リモートデバイスを起動するように構成され、サンプルの迅速な検索を可能にする。さらに、中継器110は、環境的条件が所定の環境的領域(温度、気圧、および湿度を含むがそれらに限定されるわけではない)を超える場合、リモートアラームを起動するように構成される。一実施形態において、中継器110は、呼び掛け信号によって起動される受動デバイスであり、中継器110は、この呼び掛け信号から動作電力を引き出す。中継器110がリモートデバイスを稼動させるか、または通信領域を増加させるために使用される場合、中継器110は上述されたように、半能動であり得る。あるいは、大量のデータが所望の増加された領域から読み出され、またはそこに書き込まれる場合に、アクティブな中継器は使用され得る。領域はまた、当該分野で公知のように、周波数によって影響を受け、当業者は、その環境および機能的目的に従って、適切な周波数領域を選択する。例えば、特定の標本は、無線信号の特定の周波数に対して敏感であり、そのような周波数は避ける必要があり、またはその標本はシステム100を設計する場合に、適切にシールドされる。
【0113】
在庫目録および管理ソフトウェア104は、ワイヤレス通信システムおよび生命科学に関連するデータの処理の使用のために調整される。一実施形態においては、カスタマイズされたユーザインターフェースおよび所定のデータベーステーブルのセットからなる。ユーザは、外部ソースからサンプル関連のデータまたはインポート情報を入力することができる。所定のテーブルはシステムのセットアップを容易にするために、データベースにおいて提供されるが、ユーザはそのテーブル内の領域をカスタマイズするためのオプションを有し得る。リレーショナルデータベースは、DNAサンプル、クローン、オリゴヌクレオチド、PCRフラグメント、cDNA、化学物質、タンパク質、代謝物、脂質、細胞画分、ウィルス、バクテリア、または多細胞組織などの異なる有機体からの生物学的サンプル、血液、尿、および口腔綿棒などの患者サンプルのテーブルを含むことができる。詳細なサンプル情報およびサンプル関連データは、そのテーブルにプログラムされる。サンプル情報は、例えば、サンプルソース、クローン名、遺伝子挿人物名、挿入サイズ、挿入配列、改変、ベクター名、ベクターサイズ、抗生物質選択、誘導、ターミネータ、クローニング部位、5’−タグ、3’−タグ、精製タグ、オリゴヌクレオチド名、精製、品質管理、順方向プライマー、逆方向プライマー、T値、およびサイズ選択を含み得る。臨床患者情報は、例えば、年齢、性別、居住区、民族、ボディーマス指数、家系、処方、症状の発病のデータ、疾患の期間、および医療試験などであり得る。サンプル関連データは、例えば、DNAシーケンサーの配列情報、マイクロアレイチップからの転写プロファイリング情報、ウエスタンブロット法またはインサイチュハイブリダイゼーションからのタンパク質データ、創薬のためのバイオアッセイデータ、高スループット薬物スクリーニングデータ、化学ライブラリー合成データなど、様々なソースからのリサーチデータからなり得る。データは、テキスト、数字、表、または画像の形式において供給され得る。
【0114】
ソフトウェアはまた、他のデータソースへとリンクすることができ、Genbank、SwissProt、および他の類似するドメインなどの、パブリックドメインまたは私設ソースからの情報を統合することができる。理想的には、ソフトウェアは、プロセス内におけるサンプルを追跡するためのロボット装置とインターフェースすることが可能であり、そのプロセスの追跡は、サンプルデバイスおよびRFID中継器110における保存などのデータベース内の保存のための累計的なサンプル履歴として表示され得る。
【0115】
ソフトウェアは、インフォマティクスのインフラストラクチャーを作成するように設計されており、ここで、単独のユーザはそれらのデータおよび情報のセットを生成し、そのセットはまず、ローカルデータベースフォーマットにおいて、ローカルワークステーションにおいて保存される。しかしながら、ソフトウェアは階層的環境において、複数のユーザをリンクすることが可能である。単独のユーザによって蓄積された情報は、サーバ上の集中型データベースに首尾良くアップロードされ得る。ネットワーク環境の遣り取りはまた、ウェブブラウザインターフェースでもあり得る。マルチユーザ環境はマルチサイト環境に拡張され得、ソフトウェアおよびデータベースは、パーソナルコンピュータ上、イントラネット内のサーバ上、またはeコマースサイトなどのインターネット上に配置され得る。アクセス制御およびログ制御システムもまたソフトウェアにおいて提供される。
【0116】
図11において、一つ以上のリモートRFIDタグ122と通信する一つ以上のインターロゲーター120を用いて、アプリケーションプロセッサ118とインターフェースするローカルエリアネットワーク116を利用する、コンピュータによって実施されるシステム構造114が示される。アプリケーションプロセッサ118は、データベース124に結合される。ローカルエリアネットワークは、代わりに、インターネットなどのグローバルネットワークでもあり得、その場合、ウェブベースのアプリケーションが用いられることが理解されるべきである。
【0117】
理想的には、一実施形態において、在庫管理および管理ソフトウェア104は、フロントエンドソフトウェア構成要素、ミドルウェア構成要素、およびバックエンドソフトウェア構成要素の3つの構成要素を有する。
【0118】
フロンドエンドソフトウェアは「ユーザインターフェース」を作成するために利用されることが構想される。これは、例えば、ウェブブラウザまたはMicrosoft Excel(登録商標)であり得る。ウェブブラウザソフトウェアはウェブベースシステム100に対して用いられ、これに対して、Microsoft Excel(登録商標)ソフトウェアはデスクトップシステムに対して用いられる。ウェブベースのオプションは、複数のユーザにネットワーキングを提供し、何千ものユーザを収容するように拡張され得る。デスクトップオプションは、データの共有およびネットワークを介したサンプル情報を望まない単独のユーザにとっては十分である。
【0119】
ミドルウェアは、デスクトップオプションとしての使用のために開発されたMicrosoft Excelマクロ、およびPHPなどのウェブベースシステムを用いた使用に適切なプログラミング言語によって作成されるカスタムソフトウェアを含み得る。ミドルウェアは、ユーザの入力やクエリを受信し、プリンタ、ディスプレイ、または可聴出力などの既知の出力を介してユーザにデータベース情報を戻すことが可能である、プログラムの集合体として構成される。
【0120】
バックエンドソフトウェアは、好ましくはMicrosoft Access(登録商標)であり、それは、Microsoft Corporationによって提供され、Microsoft Excel(登録商標)によってホストされる、私設のデータベースソフトウェアである。この特定のプログラムは、50,000件の記録をサポートするのに十分なデータベース容量を提供し、最大100,000件をサポートするが、性能の低下のレベルを増加させる。別のオプションはMySQLであり、それは共同にて開発されたフリーウェアのデータベースソフトウェアであり、無料で利用可能であり、Windows(登録商標)およびLinux(登録商標)のプラットフォームに基づくものを含め、あらゆる主だったサーバ上にて実行される。このデータベースは数百万の記録を扱うことができ、例えば、政府機関、大学、および多国籍団体などの、大きな施設におけるユーザに適している。
【0121】
ソフトウェア104は、制御信号をRFIDインターフェース108に提供し、そのインターフェース108からデータおよび情報を受信するように構成される。さらに、情報が中継器に供給される場合、ソフトウェア104は、技術的に公知であり、容易に商業的に利用可能である方法および装置を用いて、インターロゲーター112を介して中継器110へデータの書込みを開始するように構成される。
【0122】
図12は、データベース130がウェブサーバ134を介して複数のデスクトップコンピュータ132にリンクされる別のシステム構造128を示す。ユーザと、データベース130と、デスクトップコンピュータ132上に常駐するデスクトップソフトウェア136との間の通信層を提供するソフトウェアはサーバ134上に常駐する。ウェブブラウザインターフェース138を用いて、ユーザは標準のUSB接続140を介してRFID読出し器142に接続することができる。そのユーザは次いで、無線周波数通信によって提供されるワイヤレス接続146を用いて、RFID読出し器142およびリモートRFIDタグ144の読出し動作および書込み動作を制御することができる。
【0123】
図13を次に参照すると、ウェブサーバ152上のウェブサーバミドルウェア156を介してバックエンドデータベース154にリンクされたフロントエンドウェブブラウザ158を用いたデスクトップコンピュータ150を有する、3層(tier)構造148を利用する発明のさらなる実施形態が示される。そのミドルウェアは、検索、情報の引出し、および表示性能をユーザに提供する。より具体的には、ビジネスロジックはウェブサーバ152上のミドルウェアプログラム156に含まれる。さらに、USB接続162を介して、デスクトップコンピュータ150上のクライアント側プログラム164に結合されるRFID読出し器160が存在する(必要に応じて)。クライアント側アプリケーション(読出し器160を介してRFIDタグ166へ読み出し、書き込む)は、ウェブブラウザ158から始められる。
【0124】
この構造148の代替的な2段階配置において、バックエンドにおけるデータベース154と直接に通信するデスクトップコンピュータ150上のExcelフロントエンドプログラムが存在する。ここでのビジネスロジックは、Excelマクロプログラムにおいて実体化される。この方法は特に、例えば、コピー、ドラッグなどのExcel機能を利用するために、データ(例えば、プレート内の各ウェルに対応するデータの96行)をデータベースにロードするのに効果的である。
【0125】
構造148のさらなる代替の2層配置において、フロントエンドにおける独立型クライアントアプリケーション170は、バックエンドにおけるデータベース154と直接に通信する。ビジネスロジックは、独立型クライアントアプリケーション内に含まれ、RFIDタグ166からの読出しおよびRFIDタグ166への書込みのためのモジュールはまた、このアプリケーション170内に含まれ得る。ここで、その利点は、そのアプリケーションがコンパイルされ(ソースコードは不可視である)、サードパーティのソフトウェア(Excel、ウェブサーバ)を必要としないことである。不利な点は、上述の3段階構造とネットワーク互換がないことである。
【0126】
以下の実施例は例示のためであって限定のためではない。
【実施例】
【0127】
(実施例1)
(生物学的サンプル保存デバイスのためのマトリックスの調製)
本実施例は、溶解可能なマトリックス材料を使用する生物学的サンプル保存デバイスの調製を説明する。特定の例において保存される生物学的物質に依存して、異なる保存緩衝剤を用いてこのマトリックスを調製した。これらの実施例において、全ての試薬は、他に記されない限り、Sigma(St.Louis,MO)製であった。核酸の乾燥保存のためには、20mMのTris pH6.5を、1%のポリビニルアルコール(PVA、Sigma no.P8136)基本の保存マトリックスの調製のために使用した。このポリマーの濃度を、0.1〜10%(v/w)の範囲内で試験した。このマトリックスのpHを、pH5〜pH8の範囲内で試験した。生物学的サンプルの簡便な検出のために、0.0002%(w/v)のフェノールレッドを、液体マトリックスに加えた。
【0128】
液体形態のマトリックスを、96ウェルプレートのサンプルウェルに適用し、減圧槽中で標準気圧下または減圧下のいずれかにおいて、室温で完全に乾燥させた。容積50μlのマトリックスのための乾燥時間は一晩であり、減圧下においては、必要とされる時間はより短かった。次いで、これらのプレートを、生物学的物質の保存のために準備した。
【0129】
さらなる保存添加物(例えば、以下の一種以上:EDTA、NaCl、MgCl、KCl、(NH)SO、MgSO、CaCl、Zn−アセテート、Na−アセテート、システイン、ジチオトレイトール(DTT、Cleland製試薬)、酢酸カリウム、Tris−アセテート、酢酸マグネシウム、KPO、グリセロール、Triton X−100(登録商標)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、アジ化ナトリウム、プロテアーゼインヒビター(PMSF、フッ化アミノエチルベンゼンスルホニル、ペプスタチン、E64、ベスタチン、ロイペプチン、アプロチニン)、2−メルカプトエタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ニコチン性アデニンジヌクレオチド(NAD)、ATP)を、試験されるべき生物活性に依存して、再水和後の安定化および活性化のために、保存マトリックス中に直接的に加えてもよい。生物学的活性を伴う生物学的物質(例えば、酵素)のためには、反応条件を、この保存マトリックス中で直接的に調整してもよい。いくつかの場合において、活性反応の前に水和のために加えられるべき唯一の物質は、水である。このマトリックスはまた、一種以上のインヒビター(例えば、抗菌剤/抗真菌剤)を含んでもよい。このマトリックスを個々の保存ウェルに等分する前に、滅菌濾過またはオートクレーブによって滅菌してもよい。オートクレーブしたマトリックスを、単独のチューブ中またはマルチウェルプレート中の保存ウェルに、96ウェルプレートの場合は1ウェル当たり10μl〜100μlの液量で、等分で付与する。
【0130】
(実施例2)
(核酸の乾燥保存)
生物学的サンプル保存デバイスを、実施例1に記載されるように調製した。記載されるように、一般的な分子生物学的物質および分子生物学的方法を使用した(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NY,2001;Ausubelら、1993年、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,Boston,MA)。プラスミド、オリゴヌクレオチド、1kBラダーの形態のDNAフラグメント、PCR生成物、(ネコおよびヒトの)ゲノムDNA、およびRNAについて、安定性試験を行った。ゲルベースの分析、PCR分析、および形質転換率分析を使用して、回収試験および安定性試験を行った。
【0131】
(A.プラスミド保存)
二回蒸留水(ddHO)中10ng/μlの濃度での、全体で50ngの環状プラスミド(puc19)(New England Biolabs Inc.,Beverly,MA)を、96ウェルポリプロピレンプレートの各々のウェル中の乾燥した溶解可能マトリックス上に滴下(spot)した。このサンプルを、室温で乾燥させて保存した。コントロールプラスミドを、液体形態で−20℃の冷凍庫中で保存した。
【0132】
回収のために、50μlのddHOを、上記の乾燥サンプルウェルに付与した。このサンプルを、15分間再水和し、10μlのアリコートを使用し、DH5−αコンピテント細菌細胞を形質転換させた。形質転換された細胞を、LB寒天プレート上に平板培養し、一晩37℃でインキュベートした。各々のプレート上の細胞を、計数した。DNA回収率を、コントロールDNA(−20℃で保存された10ngのpuc19)の形質転換に基づいて算出した。8ヶ月を超える保存の後で、5%のPVAマトリックス上で、DNA回収は50%より高かった。1%のPVAマトリックスを、1ヶ月の時点で試験し、冷凍庫保存されたDNAより高いかまたは等価の回収を得た。
【0133】
長期保存についてのトランスフェクション率は安定であり、回収は、5%のPVAマトリックスについては60%、1%のマトリックスについては100%であった。6ヶ月間の保存の後で、回収の低下が観察されなかった。5%のPVAは、完全には溶液にならなかった。
【0134】
再水和サンプルのPCR分析によって、記載される条件下においてサンプルの安定性の持続を実証した。puc19プラスミドの480bpの伸長物を増幅する、2種のPCRプライマー(順方向および逆方向)を設計した。5ngの再水和サンプルを、5ngのコントロールプラスミドと比較して、増幅反応のために使用した。このPCR反応を、少ないサイクル数で、不飽和条件下において行った。検出可能な増幅効率の損失なしに、乾燥保存された材料を8ヶ月後に増幅することが出来た。
【0135】
(B.オリゴヌクレオチド保存)
puc19の増幅のための2種のオリゴヌクレオチド(順方向および逆方向のPCRプライマー)を、10μlの容量で、各々10μMおよび20μMの総濃度で、96ウェルプレートの各々のウェル中の1%のPVA乾燥保存マトリックス上に滴下した。これらのオリゴヌクレオチドを、一晩室温で乾燥させ、このプレートを、室温で保存した。コントロールオリゴヌクレオチドを、液体形態で−20℃の冷蔵庫中で保存した。
【0136】
回収のために、両方のオリゴヌクレオチド(PCRプライマー)を含有するウェルを、1×PCR緩衝剤、5ngのpuc19プラスミド、およびdNTPを含有するPCR試薬を使用して、15分間再水和した。この再水和された反応混合物を、PCRチューブ中に移して、Taqポリメラーゼを加えた。反応を25サイクルにわたり繰り返し(cycle)、1%のアガロースゲル上で、電気泳動によって分析した。
【0137】
このゲル分析によって、予測されたサイズのPCR生成物の増幅を明らかにした。コントロールと比較して、同じ量の増幅物を得るために、液体保存されたプライマーに比較して2倍の量のプライマーが必要であった。1%のPVAマトリックスからの回収率は、液体保存コントロールより低かった。マトリックス中のPVAの濃度を下げることによって、回収率は改善された。
【0138】
(C.DNAフラグメント保存)
1kbのDNAラダーのサイズ標準の形態のDNAフラグメント(Invitrogen)(0.5μg)を、フェノールレッドまたは他の発色剤と50%のグリセロールとを含有するDNAローディング緩衝液の存在下において、1%のPVAベースの乾燥保存マトリックス上に滴下した。電気泳動のアガロースゲルの一つのウェル中のラダーの可視化のために使用される新たなDNAラダーの容量と等価になるように、各々のウェルに、10μlのDNAラダーと色素とを滴下した。ローディング色素を含んだDNAフラグメントを、一晩再水和し、室温で保存した。
【0139】
回収のために、1kBのDNAのラダーサイズ標準およびローディング緩衝液を含むセルを、10μlのddHOで再水和した。電気泳動ゲル上への10μlの1kBラダーのローディングの前の再水和時間は、各々5分間および10分間であった。
【0140】
分析のために、液体形態でローディング緩衝液の存在下において−20℃で保存された10μlのコントロールラダーを、5分間および10分間再水和された乾燥保存サイズ標準と、臭化エチジウム染色を使用して蛍光強度で比較した。種々のサイズのDNAのバンドに蛍光強度の差異は観察されなかった。室温での乾燥保存によるDNA分解を示したバンドはなかった。
【0141】
(D.ゲノムDNA保存)
a)ネコのゲノムDNA
10μlのTE pH8緩衝液中の、全体で20ngの量のネコの全ゲノムDNAを、96ウェルプレートの1ウェルごとに、5%のPVAベースの乾燥保存マトリックス上に滴下した。このゲノムDNAを、室温で一晩乾燥させて保存した。コントロールDNAを、−20℃で凍結して保存した。
【0142】
回収のために、ネコのゲノムDNAを含有するウェルを、1×PCR緩衝剤、2種の10μMの濃度のネコ特異的プライマー、およびdNTPを含有するPCR試薬を使用して、15分間再水和した。これらのプライマーは、ネコDNAの600bpのフラグメントを増幅した。この再水和反応混合物を、PCRチューブへ移し、Taqポリメラーゼを加えた。反応を35サイクルにわたって繰り返し、1%のアガロースゲル上で分析した。
【0143】
PCR分析を、乾燥保存の1週間後および3.5ヶ月後に行った。両方の時点で、凍結保存されたゲノムDNAと比較して、増幅率の減少なしに予測されたサイズのDNAフラグメントを増幅することが出来た。
【0144】
b)ヒトのゲノムDNA
10μlのTE pH8緩衝液中の、全体で20ngの量のヒトの全ゲノムDNAを、96ウェルプレートの各々のウェルに、1%のPVAベースの乾燥保存マトリックス上に滴下した。このゲノムDNAを、室温で一晩乾燥させて保存した。コントロールDNAを、−20℃で凍結して保存した。
【0145】
ヒトのゲノムDNAを含有するウェルを、1×PCR緩衝剤、2種の10μMの濃度のヒト成長因子13(hFGF13)特異的プライマー、およびdNTPを含有するPCR試薬を使用して、15分間再水和した。この再水和反応混合物を、PCRチューブへ移し、Taqポリメラーゼを加えた。反応を35サイクルにわたって繰り返し、1%のアガロースゲル上で分析した。
【0146】
PCR分析を、乾燥保存の1ヵ月後に行った。凍結保存されたゲノムDNAと比較して、増幅率を低下させることなく、予測されたサイズのヒト成長因子のフラグメントを増幅した。
【0147】
(実施例3)
(タンパク質の乾燥保存)
生物学的サンプル保存デバイスを、実施例1において記載されるように調製した。本実施例は、活性の完全な回復を伴う環境温度でのタンパク質の乾燥保存が、液体サンプルとして凍結されてのタンパク質の保存と比較して、非常に大きな利点を提供することを示す。
【0148】
種々のシークエンシング酵素(sequenase)、熱安定性ポリメラーゼ、制限酵素、リガーゼ、プロテアーゼについての安定性試験および活性試験を行い、溶解可能マトリックスの保護的性質を実証した。活性分子としてのタンパク質の安定化およびそれらのタンパク質の回収を、上記の長期溶解可能マトリックスを使用して達成した。このマトリックスを、TRIS pH5〜8、pH指示薬としてのフェノールレッド、および1%のPVAの存在下において調製した。このマトリックスを、脱水によって固体化し、上記のタンパク質を、液体形態のトレハロース(Fluka、カタログ番号90210)またはバリダマイシンA(Research Products International Corp.、カタログ番号V21020)の存在下または非存在下において、この乾燥マトリックス上にスポットした。このタンパク質溶液中の水が、PVAを水和して可溶化した。このタンパク質混合物を、可溶化されたマトリックス中へ浸漬させ、周囲温度で乾燥させた。バリダマイシンAを、0.5〜10%(w/v)の濃度で、生物学的物質に加えた。バリダマイシンAの存在する生物学的サンプルの混合物を、溶解可能PVAサンプルマトリックスに付与した。
【0149】
(実施例4)
(溶解可能PVAマトリックスを使用したタンパク質の長期保存)
本実施例は、先の実施例において記載されるように調製される溶解可能PVAマトリックス上での長期乾燥保存後の活性タンパク質の回収を説明する。
【0150】
(A.ポリメラーゼ)
1)SEQUENASETM−−SequenaseTM(USB,Cleveland,OH)は、通常−20℃で保存され、繰り返される凍結融解によって冷凍庫中にある時間とともに活性を失い、読み取りの長さの短縮およびシークエンシング反応の質の低下を生じる。最終濃度5%のトレハロースまたはバリダマイシンAの存在下において、SequenaseTMを、1×シークエンシング緩衝液中の溶解可能マトリックスに付与した。USB SequenaseTM バージョン2.0、DNAシークエンシングキット(製品番号70770)を、供給者のプロトコルに従って使用した。96ウェルプレート中のウェルごとの濃度は、一回のシークエンシング反応のために使用される凍結保存SequenaseTMの濃度と等価であった。コントロールのSequenaseTMを、従来的に、−20℃の冷凍庫中で保存した。回収のために、完成したウェルを、20μlの1×シークエンシング緩衝液で、5〜45分間水和した。
【0151】
活性分析のために、S35標識を使用してシークエンシング反応物を調製し、この反応物を、アクリルアミドのシークエンシングゲル上で電気泳動した。凍結保存されたシークエンシング酵素の配列と乾燥保存されたシークエンシング酵素の配列とを、シークエンスラダーを読むことによって比較した。両方の配列は、同じ読み取り品質を有していた。
【0152】
2)TAQ POLYMERASE−−PCR反応のためのTaqポリメラーゼを、−20℃で保存すると、繰り返される凍結融解によって時間とともに活性を失い、より低い増幅効率を生じる。Taqポリメラーゼ(ウェル当たり5U)を、最終濃度5%のトレハロースまたはバリダマイシンAの存在下において、1×PCR緩衝液中の溶解可能マトリックスに付与した。96ウェルプレート中の1ウェルごとの濃度は、一回のPCR反応のために使用される凍結保存されたTaqポリメラーゼの濃度と等価であった。コントロールのTaqポリメラーゼを、従来どおりに−20℃の冷凍庫中で保存した。回収のために、完成したウェルを、20μlの1×PCR緩衝液で5〜45分間水和した。
【0153】
活性分析のために、PCR反応物を、標準PCRプロトコルを使用して調製し、そしてそのPCR生成物を、アガロースゲル上で電気泳動した。上記の凍結保存されたポリメラーゼのPCR生成物と乾燥保存されたポリメラーゼのPCR生成物とを、目視検査によって比較した。両方のPCR生成物の強度は等価であった。
【0154】
3)DEEP VENTTM HIGH FIDELITY POLYMERASE(New England Biolabs Inc,Beverly,MA.)。PCR反応のためのDeep VentTMポリメラーゼは、ドライアイスに載せて出荷されて、−20℃で保存された。輸送の凍結の連鎖が中断された場合、この酵素は活性を失った。このタンパク質は、繰り返される凍結融解によって、時間と共に活性を失い、酵素活性の低下を生じた。完全に活性なDeep VentTMポリメラーゼを、最終濃度5%のバリダマイシンAの存在下において、1×PCR緩衝液中の溶解可能PVAマトリックスに適用した。96ウェルプレート中の1ウェルごとの濃度は(ウェルあたり5U)、一回のPCR反応のために使用される凍結保存されたDeep VentTMポリメラーゼの濃度と等価であった。コントロールのDeep VentTMポリメラーゼを、−20℃の冷凍庫中で保存した。完成したウェルを、20μlの1×PCR緩衝液で5〜45分間水和した。PCR反応物を、標準的なPCRプロトコルを使用して調製し、そしてこのPCR生成物を、アガロースゲル上で電気泳動した。図14に示すように、これらの凍結保存シークエンシング酵素のPCR生成物と乾燥保存シークエンシング酵素のPCR生成物とを、目視検査によって比較した。両方のPCR生成物の臭化エチジウム強度は等価であった。5分間の再水和時間と60分間の再水和時間との間に、量的な差異は検出できなかった。
【0155】
(B.制限酵素)
HindIIIを、最終濃度5%のトレハロースまたはバリダマイシンAの存在下において、1ウェルあたり20Uおよび40Uで、1×消化緩衝液中の溶解可能マトリックスに付与した。96ウェルプレート中の1ウェルごとの濃度は、一回のPCR反応のために使用される凍結保存されたTaqポリメラーゼの濃度と等価であった。コントロールのHindIIIを、従来どおりに−20℃の冷凍庫中で保存した。完成したウェルを、20μlの1×制限酵素緩衝液中で、5〜45分間水和した。1ugのpuc19プラスミドを、再水和された制限酵素で消化し、消化されたプラスミドを、アガロースゲル上で電気泳動した。凍結保存されたHindIIIおよび乾燥保存されたHindIIIのDNAバンド形成パターンを、目視検査によって、未消化のプラスミドと比較した。凍結保存された酵素および乾燥保存された酵素は、等価の活性を示した。
【0156】
(C.BIG DYETM CYCLE SEQUENCING)
サイクルシークエンシングのためのABI Big DyeTM(Applied Biosystems Inc.,Foster City,CA)酵素は、繰り返される凍結融解プロセスの後で時間とともに活性を失い、シークエンシング反応の読み取りの長さの短縮および読み取りの質の低下を生じた。
【0157】
新たな、適切に保存された活性Big DyeTM(ABI)を、最終濃度5%のトレハロース(Fluka#90210)の存在下において、1×反応緩衝液中の溶解可能PVAマトリックスに付与した。Big DyeTM酵素を、プラスミドおよびシークエンシング用プライマーの存在下において活性を失うことなしに脱水できるか否かを試験するために、Big DyeTMを、M13順方向プライマーおよびpuc19の存在下において滴下した。96ウェルプレート中の1ウェルごとの濃度は、一回のシークエンシング反応のために使用される凍結保存されたSequenaseTM(USB)の濃度と等価であった。コントロールのSequenaseTMを、従来どおりに−20℃の冷凍庫中で保存した。完成したウェルを、20μlの1×反応緩衝液で30分間水和した。PCR反応を、35サイクルについての供給者の推奨に従って行った。このサイクルシークエンシング反応のPCR生成物を、精製し、そして、製造者の指示書に従ってABIキャピラリーシークエンシング装置を使用して分析した。プラスミドおよびシークエンシングプライマーの存在下および非存在下における凍結乾燥保存されたBig DyeTMの配列と乾燥保存されたBig DyeTMの配列とを、Mac Vectorシークエンス分析プログラムを使用して比較した。このシークエンスの質は、最初の700塩基において同一であった。図15に示すように、乾燥Big Dye試薬を使用して、より長い読み取りを得た。
【0158】
(D.プロテアーゼ)
プロテアーゼは、主要な薬物標的である。近年、プロテアーゼは、ウイルス疾患(たとえば、HIV)に対する新規薬物を開発するための小分子のスクリーニングのために使用されている。プロテアーゼアッセイは、しばしば、行うことが難しい。なぜならば、プロテアーゼ活性は、精緻な酵素反応であって、保存されるプロテアーゼの基底の活性は、各々のアッセイの前に調節されなければならないからである。この反応の動態は、各々の凍結−融解の後のプロテアーゼ活性の変化に基づいて変化する。本節は、溶解可能マトリックスの存在下において乾燥されたプロテアーゼが、どのくらい失活から保護され、再水和後に活性プロフィールの変化なしに活性化され得、酵素の任意の用途(例えば、低分子スクリーニングプロジェクト)のための時間の著しい節約をもたらすかを実証する。
【0159】
1)HIVプロテアーゼ−−HIVプロテアーゼを、トレハロースまたはバリダマイシンAを2.5〜10%(w/v)の最終濃度で含有する活性緩衝液(0.5M MES、25%グリセロール、1M NaCl、pH5.25)の存在下において、溶解可能PVAマトリックスとともに予熱された96ウェルプレートの1ウェル当たり25nM濃度で滴下した。コントロールとして、トレハロースまたはバリダマイシンの存在下において、PVAマトリックスの非存在下において、HIVプロテアーゼをポリプロピレンプレートのウェルに滴下した。乾燥されたHIVプロテアーゼを、150mMの塩酸グアニジンの存在下において、1×活性緩衝液中で回収した。再水和の一時間後に、完全な回収を達成した。20分間の時間経過にわたるFRETアッセイにおいて2種の蛍光分子を含有する蛍光原性ペプチドを使用する速度論研究において、酵素反応活性を追跡した。この反応物を、製造者の指示書に従って、Packard Fusionマイクロタイタープレート蛍光計で分析した。
【0160】
溶解可能PVAマトリックスの非存在下においてトレハロースまたはバリダマイシンA単独とともに滴下されたHIVプロテアーゼを使用して、酵素活性を回復することはできなかった。対照的に、トレハロースの存在下においてPVAマトリックス上に滴下された酵素を使用して、100%のHIVプロテアーゼ活性を回復し、付加的な安定剤なしに溶解可能マトリックス単独(PVA)を使用して乾燥された酵素から、70%の活性を回復した。
【0161】
2)FIVプロテアーゼ−−FIV(ネコ免疫不全ウイルス)は、HIVに近縁のレンチウイルスである。FIVプロテアーゼを、ペプチドベースのインヒビターであるTL−3(Leeら、1998年、PNAS 95:939)の存在下または非存在下において、1ウェル当たり0.5μgの濃度で、乾燥された溶解可能マトリックスで前処理されたウェルに滴下した。これらのマトリックス、プロテアーゼ、およびインヒビターTL−3を含有するウェルを、室温で完全に乾燥させて保存した。乾燥されたHIVプロテアーゼを、1×活性緩衝液中で、150mMの塩酸グアニジンの存在下において、1時間再水和した。20分間の時間経過にわたるFRETアッセイにおいて2種の蛍光分子を含有する蛍光原性ペプチドを使用する動態研究において、酵素反応活性を追跡した。この反応を、Packard Fusionマイクロタイタープレート蛍光計で分析した。FIVプロテアーゼ活性を、再水和プロセス後に完全に回復させた。この酵素活性は、TL−3によって遮断され、このプロテアーゼおよびそのインヒビターは、周囲温度での乾燥保存後に、完全に活性であることを実証した。
【0162】
トレハロースおよびバリダマイシンをまた、上記のように、しかし、溶解可能保存マトリックス上での環境温度におけるこのプロテアーゼの長期乾燥マトリックス保存の間の酵素活性の保護についてのプロテアーゼアッセイにおいて、FIVプロテアーゼに対するこれらの影響について、比較した。どちらの添加物も、この酵素を保護的に安定化し、この酵素の保護について差異は検出できなかった(図17)。
【0163】
E.リガーゼ
T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA,#M0202L)を1ウェル当たり400Uで、1×ライゲーション緩衝液中で最終濃度5%のバリダマイシンAの存在下において、上記のように調製された溶解可能PVAマトリックスに付与した。コントロールのリガーゼを、−20℃の冷凍庫中で保存した。完成したウェルを、20μlの1×ライゲーション緩衝液で5〜45分間再水和した。50ngの、SalIで分解されて仔ウシ腸ホスファターゼで脱リン酸化されたpuc19プラスミドを、再水和したリガーゼを用いて一晩ライゲーションさせ、並行して、凍結保存されたリガーゼを用いて一晩ライゲーションさせた。ライゲーション反応物の半分を、DH5αコンピテント細菌細胞内で形質変換させた。これらの細胞を、LB寒天プレート上で平板培養し、形質転換率をコロニー計数によって分析した。再ライゲーションしたプラスミドのみが、これらの条件下においてコロニーを形成できた。乾燥保存されたリガーゼは、凍結保存されたリガーゼより5倍高いコロニー数を有した。
【0164】
F.再構成可能HIVプロテアーゼアッセイ
現行では、HIVプロテアーゼアッセイは、プロテアーゼの解凍、活性緩衝液中での再懸濁、その緩衝液系中での蛍光原性基質の再懸濁、溶液の混合、および、解凍された酵素の活性を前もって試験するための特別な蛍光96ウェルプレートへの混合物の付与を必要とする。プロテアーゼ活性の決定の後阻害性化合物のスクリーニングのためのアッセイを開始することが出来、このアッセイは、通常は96ウェルフォーマットにおいて行われる。上記のピペッティングの工程を包含する同じ手順を繰り返さねばならない。本節は、本願の組成物および方法に従って供給されるプロテアーゼを乾燥形態の溶解可能マトリックス上で使用して、前もって試験を行う必要のない方法を示す。これは、HIVプロテアーゼ活性は乾燥条件下で安定であり続けるからである。
【0165】
上記のように調製された溶解可能PVAマトリックスを使用して、HIVプロテアーゼおよびFIVプロテアーゼを、それらの各々の活性緩衝液中で適切な反応濃度で、滴下して乾燥させた。蛍光原性プロテアーゼ基質ウェル、およびプロテアーゼインヒビターを含有する陰性のコントロールウェルをまた、それらの緩衝液中に、乾燥形態で、96ウェルプレート上に供給した。このスクリーニングの操作者は、水のみまたは試験インヒビタースクリーニング化合物を含有する水を加えてプロテアーゼ含有ウェルを再水和し、蛍光基質ウェルに水を加えて再水和するだけでよい。従って、数種のFIVプロテアーゼウェルを再水和するためには、上記のTL−3インヒビターを含める。このアッセイの処理時間は、10分の1未満に短縮された。代表的な結果を、図18に示す。他の生化学的アッセイ、スクリーニング、または実験プロトコルについて、同様の時間の節約を得ることができる。
【0166】
(実施例5)
(溶解可能PVAマトリックスを使用する細胞の長期保存)
本実施例は、溶解可能マトリックス材料上でのE.coli細胞の周囲温度での長期乾燥保存を説明する。
【0167】
等しい数のEscherichia coli(DH5α)細菌を、LB増殖培地中で再懸濁し、96ウェルプレートのウェル中に滴下した:a)増殖培地中に溶解可能マトリックスが含有されていない、b)乾燥された溶解可能PVAマトリックスが含有されている、およびc)5%のバリダマイシンAと混合し、乾燥された溶解可能マトリックス上に滴下する。これらのプレートを、一晩乾燥させ、周囲温度で保存した。3種の異なる条件を有するウェルを、増殖培地で一時間再水和し、ウェルの内容物を、細菌培養LBプレート上へ平板培養した。これらのプレートを、37℃で一晩インキュベートした。E.coli回収率を、図19に示すように、細菌のコロニーの計数によって分析した。
【0168】
上記の溶解可能マトリックスはまた、細胞(他の細菌細胞、植物細胞、動物細胞またはヒトの細胞が挙げられる)の乾燥長期保存のため、およびファージ、ウイルス(例えば、レンチウイルス、バキュロウイルスなど)の乾燥保存のためにも調製されて使用される。
【0169】
本発明の乾燥マトリックス保存用の組成物および方法の実施形態はまた、抗体、RNA、酵素、および本明細書において提供されるような他の生物学的サンプルとともに使用するために企図される。
【0170】
上記から、本発明の特定の実施形態が説明の目的のために本明細書において記載されるが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、生物学的物質の乾燥保存のためのサンプルプレートの模式図である。
【図2】図2は、空気圧ユニットおよびその連結モジュールの模式図である。
【図3】図3は、空気圧ユニットの空気チャネルの模式図である。
【図4】図4は、空気圧ユニットおよびその空気調節弁の模式図である。
【図5】図5は、サンプルプレートに試薬を提供するための携帯型PCRデバイスの模式図である。
【図6】図6は、輸送用スリーブの模式図である。
【図7】図7は、積み重ねラックの模式図である。
【図8】図8は、サンプル保存ストリップウェルプレートの模式図である。
【図9】図9は、公知の高周波連絡システムの模式図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に従って形成されたシステムの模式図である。
【図11】図11は、本発明の別の局面に従って形成された、コンピュータ実行システムアーキテクチャのブロック図である。
【図12】図12は、特定の発明の実施形態に従う、コンピュータ実行システムアーキテクチャを示す。
【図13】図13は、特定の発明の実施形態に従う、コンピュータ実行システムアーキテクチャを示す。
【図14】図14は、Deep VentOポリメラーゼのPCR産物を有するゲルを示す。Deep VentOポリメラーゼを、周囲温度で保存し(D)、そして反応緩衝液、テンプレート、dNTPおよびプライマーの存在下で、60分間(D60’)もしくは5分間(D5’)のいずれかの間、水和した。凍結保存されたDeep VentOポリメラーゼ(F)をコントロールとして使用した。矢印は、PCR産物の予測サイズを示す。
【図15A】図15Aは、凍結保存Big DyeO酵素、および周囲温度にて溶解可能なマトリックスにおいて乾燥保存されたBig DyeO酵素を使用して増幅された、PCR反応産物についての読みの長さ(塩基数)を示す。
【図15B】図15Bは、凍結保存Big DyeO酵素、および周囲温度にて溶解可能なマトリックスにおいて乾燥保存されたBig DyeO酵素を使用したサイクルシークエンシング結果を示す。
【図16】図16は、溶解可能なマトリックスにおける乾燥保存後の、HIVプロテアーゼの反応速度を示す。
【図17】図17は、溶解可能なマトリックスにおける乾燥保存後の、FIVプロテアーゼ活性を示す。
【図18】図18は、乾燥保存後のHIVプロテアーゼ活性を示す。
【図19】図19は、溶解可能なマトリックスにおける乾燥保存後の、E.coli形質転換速度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイスであって、以下:
(a)蓋;
(b)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを含み得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、該ウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備える、サンプルプレート;および
(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記マトリックス材料が、溶媒中で溶解または分離する、請求項1に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項3】
前記蓋を前記サンプルプレート上で閉めるための閉鎖手段を備える、請求項1に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項4】
前記閉鎖手段が、磁気的閉鎖を包含する、請求項3に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項5】
気密閉鎖接続部を備える、請求項1に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項6】
各ウェルの周囲に気密閉鎖接続部を備える、請求項1に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項7】
各ウェルの周囲に、磁気的閉鎖部および気密閉鎖接続部を備える、請求項1に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項8】
前記マトリックス材料は、冷蔵することなくサンプルを乾燥保存し得る、請求項1に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項9】
1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイスであって、以下:
(a)蓋;
(b)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、該ウェルの1つ以上は、溶媒中で溶解または分離するマトリックス材料を備える、サンプルプレート;および
(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、デバイス。
【請求項10】
少なくとも1つのウェルが、少なくとも1つの検出可能な指標を備える、請求項1または9に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項11】
前記検出可能な指標が、比色定量性の指標を包含する、請求項10に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項12】
前記検出可能な指標が、蛍光指標、発光指標、リン光指標、放射性指標、色素、酵素、酵素基質、エネルギー転移分子、および親和性標識からなる群より選択される、請求項10に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項13】
請求項10に記載の生物学的サンプル保存デバイスであって、前記検出可能な指標が、アミン、アルコール、アルデヒド、水、チオール、硫化物、亜硝酸塩、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na、K、Cl、シアニド、リン酸、およびセレンのうち少なくとも1つの存在を、検出可能に示し得る、デバイス。
【請求項14】
前記検出可能な指標が、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、塩化コバルト、Reichardt色素、および蛍光原プロテアーゼ基質からなる群より選択される、請求項10に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項15】
少なくとも1つのウェルが、少なくとも1種のインヒビターを含有し、該インヒビターが、生物学的インヒビターまたは生化学的インヒビターである、請求項1または9に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の生物学的サンプル保存デバイスであって、前記インヒビターが、バリダマイシンA、TL−3、オルソバナジン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N−α−トシル−Phe−クロロメチルケトン、N−α−トシル−Lys−クロロメチルケトン、アプロチニン、フッ化フェニルメチルスルホニル、およびジイソプロピルフルオロホスフェートからなる群より選択される、デバイス。
【請求項17】
請求項15に記載の生物学的サンプル保存デバイスであって、前記インヒビターが、キナーゼインヒビター、ホスファターゼインヒビター、カスパーゼインヒビター、グランザイムインヒビター、細胞接着インヒビター、細胞分裂インヒビター、細胞周期インヒビター、脂質シグナル伝達インヒビター、およびプロテアーゼインヒビターからなる群より選択される、デバイス。
【請求項18】
前記インヒビターが、還元剤、アルキル化剤、および抗微生物剤からなる群より選択される、請求項15に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項19】
前記マトリックス材料は、冷蔵することなくサンプルを乾燥保存し得る、請求項9に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項20】
前記マトリックス材料が、ポリビニルアルコールを含む、請求項9に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項21】
請求項9に記載の生物学的サンプル保存デバイスであって、前記マトリックス材料が、以下:ポリエチレングリコール、アガロース、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリフェニレンオキシド、架橋アクリルアミド、ポリメタクリレート、カーボンナノチューブ、ポリラクチド、ラクチド/グリコリドコポリマー、ヒドロキシメタクリレートコポリマー、カルシウムペクチネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、硫酸ヘパリンプロテオグリカン、ヒアルロン酸、グルクロン酸、トロンボスポンジン−1 N−末端ヘパリン結合ドメイン、フィブロネクチン、ペプチド/水溶解性ポリマー改質剤結合体、およびコラーゲンからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、デバイス。
【請求項22】
前記マトリックス材料が、ヒドロキシエクトイン、ポリスチレン、およびトレハロースからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項9に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項23】
キットであって、以下:
(I)以下を備える、1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイス:
(a)蓋;
(b)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、該ウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備える、サンプルプレート;および
(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス;
ならびに
(II)1種以上の補助試薬
を備える、キット。
【請求項24】
前記マトリックス材料が、溶媒中で溶解または分離する、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
1つまたは複数の生物学的サンプルを保存する方法であって、以下:
1つまたは複数の生物学的サンプルを生物学的サンプル保存デバイスと接触させる工程であって、該生物学的サンプル保存デバイスは、以下:
(i)蓋、
(ii)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを含み得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、該ウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備える、サンプルプレート、および
(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、工程、ならびに、
該工程によって該生物学的サンプルを保存する工程、
を包含する、方法。
【請求項26】
前記接触させる工程の後に、冷蔵することなく前記生物学的サンプル保存デバイスを維持する工程を包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
1つまたは複数の生物学的サンプルを保存する方法であって、以下:
(a)1つまたは複数の生物学的サンプルを生物学的サンプル保存デバイスと接触させる工程であって、該生物学的サンプル保存デバイスは、以下:
(i)蓋、
(ii)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、該ウェルの1つ以上は、溶媒中で溶解または分離するマトリックス材料を備える、サンプルプレート、および
(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、工程;ならびに
(b)該サンプルウェルの1つ以上を乾燥させ、これによって該生物学的サンプルを保存する工程
を包含する、方法。
【請求項28】
前記接触させる工程および乾燥させる工程の後に、冷蔵することなく前記生物学的サンプル保存デバイスを維持する工程を包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記維持する工程後の前記サンプルの生物活性が、前記接触させる工程前の該サンプルの生物活性と実質的に同じである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記生物学的サンプルの分解が、前記マトリックス材料の非存在下で冷蔵することなく維持されるコントロールの生物学的サンプルの分解に対して、低減される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記接触させる工程が、前記マトリックス材料を溶媒中で溶解または分離する工程を同時に包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記接触させる工程が、前記マトリックス材料を溶媒中で溶解または分離する工程に先行される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記接触させる工程が、前記マトリックス材料を溶媒中で溶解または分離する工程に続く、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
1つまたは複数の生物学的サンプルのための生物学的サンプル保存デバイスを調製する方法であって、以下:
(a)溶媒中で溶解または分離するマトリックス材料を、生物学的サンプル保存デバイスの1つまたは複数のサンプルウェルに付与する工程であって、該生物学的サンプル保存デバイスは、以下:
(i)蓋、
(ii)生物学的サンプルを含み得る1つまたは複数のサンプルウェルを備える、サンプルプレート、および
(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、工程;ならびに
(b)該サンプルウェルの1つ以上を乾燥させ、これによって該生物学的サンプル保存デバイスを調製する工程
を包含する、方法。
【請求項35】
前記付与する工程が、前記マトリックス材料と前記溶媒とを含有する溶液または懸濁液を付与する工程を包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つのウェルが、少なくとも1つの検出可能な指標を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのウェルが、少なくとも1種のインヒビターを含有し、該インヒビターが、生物学的インヒビターまたは生化学的インヒビターである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
保存される生物学的サンプルを回収する方法であって、以下:
(a)生物学的サンプル保存デバイス中で、1つまたは複数の生物学的サンプルとマトリックス材料とを、同時に、または連続的かついずれかの順序で、接触させる工程であって、該生物学的サンプル保存デバイスが、以下:
(i)蓋、
(ii)サンプルプレートであって、生物学的サンプルを含み得る1つまたは複数のサンプルウェルを備え、該ウェルの1つ以上は、マトリックス材料を備え、該マトリックス材料は、第1の溶媒中で溶解または分離される、サンプルプレート、および
(iii)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、工程;
(b)該サンプルウェルの1つ以上を乾燥させる工程;
(c)該生物学的サンプル保存デバイスを、該接触させる工程および乾燥させる工程の後に、冷蔵することなく維持する工程;ならびに
(d)該生物学的サンプルを、第2の溶媒中で懸濁または溶解し、そこから該保存される生物学的サンプルを回収する工程
を包含する、方法。
【請求項39】
前記維持する工程後の前記サンプルの生物活性が、前記接触させる工程前の該サンプルの生物活性と実質的に同じである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の溶媒が、(i)前記第1の溶媒と同じ溶媒、および(ii)該第1の溶媒と異なる溶媒、からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の溶媒および前記第2の溶媒のうちの少なくとも1つが、活性緩衝液である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するためのシステムであって、該システムは、以下:
生物学的サンプルデバイス;
該サンプルデバイスに関するデータを受信および送信するためのコンピュータ実行システム;ならびに
該サンプルデバイスと該コンピュータ実行システムとの間の高周波インターフェースであって、該コンピュータ実行システムと該サンプルデバイスとの間に通信リンクを提供するための、インターフェース
を備える、システム。
【請求項43】
前記コンピュータ実行システムが、前記サンプルデバイスに付随する、生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを維持するためのデータ構造を備える、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記高周波インターフェースが、前記コンピュータ実行システムに結合される高周波インターロゲーター、および該インターロゲーターとの高周波連絡のために前記サンプルデバイスに付随する少なくとも1つのトランスポンダーデバイスを備える、請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するための方法であって、該方法は、以下:
1つ以上の生物学的サンプルを保存するためのサンプルデバイスを提供する工程;
該サンプルデバイスまたは該生物学的サンプルまたは両方に関するデータを受信、保存および送信するためのコンピュータ実行システムを提供する工程;
該サンプルデバイスと該コンピュータ実行システムとの間に高周波連絡インターフェースを提供する工程
を包含する、方法。
【請求項46】
前記コンピュータ実行システムから制御シグナルを発生して、前記高周波インターフェースに前記サンプルデバイスからデータを検索させる工程を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記コンピュータ実行システムによって制御シグナルを発生し、前記高周波インターフェースを介して前記サンプルデバイスにデータを送信する工程を包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
生物学的サンプルの保存、組織化、追跡、検索および分析に関するデータを処理するためのシステムであって、該システムは、以下:
生物学的サンプル保存デバイスであって、該サンプル保存デバイスは、
蓋;
生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備える、サンプルプレート;および
少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、デバイス;
該サンプル保存デバイスに関するデータを受信および送信するためのコンピュータ実行システム;ならびに
該サンプルデバイスと該コンピュータ実行システムとの間の高周波インターフェースであって、該コンピュータ実行システムと該サンプルデバイスとの間に通信リンクを提供するための、インターフェース
を備える、システム。
【請求項49】
前記コンピュータ実行システムが、ウェブブラウザ、ウェブサーバプログラム、およびデータベースサーバを有する3層アーキテクチャ、および前記高周波インターフェースの動作を制御するクライアント側アプリケーションを備える、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記ウェブブラウザとRFIDリーダとの間にUSBインターフェースをさらに備える、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記コンピュータ実行システムが、クライアント側におけるエクセル(登録商標)マクロプログラム、およびデータベースサーバを有する2層アーキテクチャを備える、請求項48に記載のシステム。
【請求項52】
前記コンピュータ実行システムが、スタンドアロン型クライアントアプリケーション、および該クライアントアプリケーションと連絡するデータベースサーバを有する2層アーキテクチャを備える、請求項48に記載のシステム。
【請求項53】
前記クライアントアプリケーションが、コンパイルされたアプリケーションである、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
1つまたは複数の生物学的サンプルのための、生物学的サンプル保存デバイスであって、以下:
(a)蓋;
(b)生物学的サンプルを収容し得る1つまたは複数のサンプルウェルを備える、サンプルプレート;および
(c)少なくとも1つの高周波トランスポンダーデバイス
を備える、デバイス。
【請求項55】
前記蓋を前記サンプルプレート上で閉めるための閉鎖手段を備える、請求項54に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項56】
前記閉鎖手段が、磁気的閉鎖を備える、請求項55に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項57】
気密閉鎖接続部を備える、請求項54に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項58】
各ウェルの周囲に気密閉鎖接続部を備える、請求項54に記載の生物学的サンプル保存デバイス。
【請求項59】
各ウェルの周囲に、磁気的閉鎖部および気密閉鎖接続部を備える、請求項54に記載の生物学的サンプル保存デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−532886(P2007−532886A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507550(P2007−507550)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/012084
【国際公開番号】WO2005/113147
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506333912)バイオマトリカ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】