説明

ライフサイエンスのための試料貯蔵

実質的に全ての生物活性を回復し、及び冷蔵することのない、生体試料の液体貯蔵のための組成物、及び方法が開示される。また、核酸、及びタンパク質(酵素を含む)を含むこのような液体貯蔵可能な生体試料の自動化された貯蔵、トラッキング、回収、及び解析のための組成物、並びに方法が開示される。液体マトリクスを特徴とするRFIDタグ液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置は、試料データを管理するためのコンピュータ実行システム、及び方法としても開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「ライフサイエンスのための試料貯蔵」の表題の、及び2007年4月24日に出願された、米国仮特許出願第60/913,781号の米国特許法119条(e)の下で利益を主張し、該仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表に関する記述)
本出願に付随する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供してあり、ここで、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、150079_402PC_SEQUENCE_LISTING.txt.である。テキストファイルは、1KBであり、2008年4月23日に作成されており、本明細書の提出と同時に、EFS-Webを介して電子出願されている。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、一般に生体試料貯蔵のための組成物、及び方法に関する。また、本発明は、このような生物材料、及び試料の使用、組織化、貯蔵、トラッキング、回収、及び解析に、並びにこれらの方法の自動化に関する。
【0004】
(関連技術の説明)
生命科学分野における研究は、DNA、RNA、血液、尿、頬側スワブ、細菌、古細菌、ウイルス、ファージ、植物、藻類、酵母、微生物、PCR産物、クローン化DNA、タンパク質、酵素、ペプチド、プリオン、真核生物(例えば、プロトクチスカ(protoctisca)、真菌、植物、及び動物界)、原核生物、細胞、及び組織、胚細胞(例えば、精子、及び卵母細胞)、幹細胞などの生物材料及び試料の、並びにミネラル又は化学物質の解析に基づいている。このような試料は、典型的には適切な供与源から収集され、又は得られて、さらなるプロセシング、及び解析のために、貯蔵庫、及び在庫内に置かれる。しばしば、試料の輸送が必要とされ、それらの保全、無菌、及び安定性を保存するために、注意が払われる。生体試料は、氷、ドライアイス、又はその他の冷凍施設を使用して冷蔵された環境で輸送することができる。しかし、たいてい、国、又は大陸間の輸送のために必要とされるものなど、特に冷蔵装置のためのエネルギー源が欠如する場合、適切な低温を長時間便利に維持することができない。
【0005】
このような試料のための貯蔵容器には、瓶、チューブ、バイアル、バッグ、箱、ラック、マルチウェルディッシュ、及びマルチウェルプレートを含み、これらは、典型的には個々のスクリューキャップ、若しくはスナップキャップ、スナップ、若しくはシール閉じ、蓋、接着ストリップ、若しくはテープ、又はマルチキャップストリップによって封止されている。試料貯蔵、プロセシング、及び生物学的処理の自動化の中から高スループットのための標準的な容器形式は、96、384、若しくは1536のウェルプレート、又はアレイである。容器、及びその中に含まれる試料は、種々の温度にて、例えば外界温度にて、若しくは4℃にて、又は0℃以下の温度にて、典型的には約-20℃にて、又は-70℃〜-80℃にて貯蔵されている。装置に置かれ、及び貯蔵される試料は、液体培地、又は緩衝液に含まれることが最も多く、これらは、サブゼロ温度(例えば、-20℃、又は-70〜-80℃)における貯蔵が必要である。場合によっては、試料を最初に乾燥させ、次いで外界温度にて(例えば、WO 2005/113147、US2005/0276728、US2006/0099567)、又は4℃にて、-20℃にて、若しくは-70〜-80℃にて、貯蔵される。
【0006】
例えば、現在、核酸は、低温にて液体の形態で貯蔵されている。短期貯蔵のためには、核酸は、4℃にて貯蔵することができる。長期貯蔵のためには、特にゲノムDNA、及びRNAの場合、温度は、遺伝形質の分解を防止するために、一般に-20℃〜-70℃に下げられる。また、核酸は、セルロース膜などの固体マトリクス上で、室温にて貯蔵される。両貯蔵装置は、不都合を伴う。低温下での貯蔵には、低温室、フリーザ、発電機バックアップシステムなどの費用のかかる設備が必要であり;このような設備は、予想外の停電の場合、あてにすることができなくなり、又は手近な電気の供与源がないか、若しくは信頼できない電気系を有する領域で使用するのは困難であろう。また、セルロース繊維上の核酸の貯蔵では、定量的に回復可能である代わりに、セルロース繊維にトラップされ、それ故、結合したままであるため、再水和処理の間に、材料の実質的な喪失を生じてしまう。また、セルロース上の核酸乾燥貯蔵には、その後に生物材料からセルロースを分離しないと、セルロース繊維が生体試料を汚染してしまうため、そうすることが必要である。セルロース濾紙からの核酸の分離には、ピペット操作、新たなチューブ、又は容器への試料を移すこと、及び遠心分離の工程を含むさらなる処理が必要であり、これら全てが、回収率の減少、及び/又は望まれない混入物の導入の機会の増加、及び/又は試料分解を促進する条件に対する曝露を生じ得るし、これらはまた、費用、及び労働集約型でもある。
【0007】
タンパク質は、現在、主に溶液(例えば、塩、及び/又は緩衝液を含む適合性の水溶液中)、又は懸濁液(例えば、飽和硫酸アンモニウムスラリー中)として、液体の形態で、典型的には-20℃から液体窒素中の貯蔵までの範囲の冷却、又は凍結環境で扱われる(Wangらの文献、2007 J. Pharm. Sci. 96(1):1-26;Wangの文献、1999 Inter. J. of Pharm. 185:129-188)。いくつかの例外では、タンパク質を凍結乾燥させていてもよく、又はトレハロースの存在下において室温で乾燥して、未処置の表面に直接適用してもよい。(Garcia de Castroらの文献、2000 Appl. Environ. Microbiol. 66:4142;Manzaneraらの文献、2002 Appl. Environ. Microbiol. 68:4328)。タンパク質は、冷却して(4℃)、又は凍結して(-20℃、又は-80℃)貯蔵したときでも、分解し、及び/又は活性を失うことが多い。タンパク質に対する凍結融解ストレスは、特にタンパク質試料の一定分量の繰り返し凍結融解が必要である場合、生理活性(例えば、酵素活性、同族リガンドに対する特異的結合、その他)を減少させる。結果として起こる、生物学的アッセイに必要とされるであろうタンパク質活性の喪失により、連続したアッセイにおいて同等のアッセイを得るために、典型的にはタンパク質濃度の再調整が必要であり、このような試料から生成された実験データ信頼性が損なわれることが多い。
【0008】
タンパク質、及び核酸の乾燥は、標準的な確立された信頼できるプロセスが無いこと、定量的、及び機能的特性の回復が困難なこと、可変性緩衝液、及び溶剤との相容性、及び許容度、並びに核酸、及びタンパク質を扱う需要から生じるその他の困難のため、いまだ科学的、生物医学的、バイオテクノロジー、及びその他の経済産業界の研究に一般に採用されていない。同じ問題は、ウイルス、ファージ、細菌、細胞、及び多細胞生物などのその他の生物材料の取扱い、貯蔵、及び使用にもあてはまる。例えば、トレハロース、又はラクチトール(lactitol)などの二糖類は、タンパク質含有試料の乾燥貯蔵のための添加物として記述されているが(例えば、米国特許第4,891,319号;米国特許第5,834,254号;米国特許第6,896,894号;米国特許第5,876,992号;米国特許第5,240,843号;WO 90/05182;WO 91/14773)、記述された状況におけるこのような化合物の有用性は、これらが望ましくない微生物混入物のためにエネルギー源として役立つことにより、これらが記述されたように使用されたときに安定化効果が限定されことにより、これらが広範な生体試料にわたる一般的適用性を欠如することにより、及びその他の要因により、損なわれてしまった。
【0009】
生体試料の高度に不安定な性質により、長時間にわたってこれらの生物活性を保存することが極めて困難になる。凍結乾燥条件(例えば、凍結乾燥物として)下で核酸、及びタンパク質を貯蔵すると、試料の貯蔵寿命(保存寿命)を延長することができるが、その後の液体での再構成による活性の喪失により、凍結乾燥(例えば、凍結乾燥法)は、あまり理想的な貯蔵技術ではなくなってしまう。その上、乾燥法は、大容量で、又はバイオフィルムコレクションのための表面のスワブとして、又はいくつかのウイルス、細菌、若しくは多細胞生物のために収集されるものなどの、その他の生物材料に対して効率的に使用することができない。例えば、非選択的増殖条件下で液体細菌培養を維持する能力は、特に長期の輸送の間に、特に増殖速度を遅延させて、細菌の生存を維持する環境では望ましいだろうが、このような能力は、現在存在しない。同様に、試料を安定に、かつ液体、又は準液体環境に、外界温度、又は外界温度近く(例えば、約23℃〜37℃)にて長期間貯臓することにより、極端な温度(例えば、約0℃〜-80℃)を回避する能力は、これらが多くの生体分子にとって天然の条件であるため、完全に機能的、及び無傷の生体試料を維持するのに非常に有利であろう。しかし、このような能力は、現在知られていない。
【0010】
また、外国、大陸、海中、又は大気圏外空間などの遠隔地から収集された生体試料の分解も、適切な試料の解析、及び試験がその後に損なわれ、及び/又は遅れるため、現在問題である。従って、生物学的試料のために現在利用できる貯蔵技術は、特に乾燥貯蔵に受け入れられないであろう大量のタンパク質、又は他のタイプの生体分子の調製、又は収集に関して、及び/又は実質的に特定の生物活性を保持しつつ、1年以上の期間の間の貯蔵能を有することが望まれる生体試料種に関しては、適当ではない。例えば、疾患大発生、又はバイオテロリズム研究の場合、特に試料が極度の環境条件下で収集され、次いで解析のための適切な設備まで長い輸送に供される場合、このような生体試料の完全性を維持する能力が必要であり得る。従って、時間のかかる、非実用的な、不便な、及び/又は費用のかかる保存方法を必要とせずに、生体試料を長時間貯臓する能力は、特に冷蔵が必要であるものでは、非常に有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、例えば、極度の環境条件下(例えば、極端な温度(例えば、零下、又は熱帯)、高圧(例えば、海中)、又は低重力(例えば、大気圏外)などの大気条件、紫外線、湿度、その他を含むが、限定されない条件)で収集された試料について、特に長時間にわたって、複雑な調製、及び貯蔵条件を伴わずに、生物活性を維持すると共に、液体形態で、長時間(例えば、1月、6月、9月、1年を上回る、又はより長く)生体試料を貯蔵するための組成物、及び方法に対する明らかな需要が当該技術分野においてある。本開示の実施態様は、これらの需要に対処し、及びその他の関連した利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な概要)
特定の本明細書に提供された実施態様に従って、液体貯蔵可能な生体試料であって、(a)生体試料;(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;及び、(c)少なくとも1つの安定剤;を含み、(a)、(b)、及び(c)は、流体中で、冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間、冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記生体試料が提供される。別の実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料は、少なくとも2つの安定剤を含み、少なくとも1つの安定剤には、トレハラーゼ阻害剤を含み、かつマトリクス材料には、ポリビニルアルコールを含む。別の実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料は、トレハラーゼ阻害剤、キチナーゼ阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤、及びリソソームグリコシダーゼ阻害剤から選択されるグリコシダーゼ阻害剤を含む。さらなる実施態様において、トレハラーゼ阻害剤は、スイダトレスチン(suidatrestin)、バリダマイシンA、バリドキシルアミン(validoxylamine)A、MDL 26537、トレハゾリン(trehazolin)、サルボスタチン(salbostatin)、及びカスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシドからなる群から選択される。
【0013】
別の実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料であって、マトリクス材料が生体適合性溶媒に溶解され、及び少なくとも1つの安定剤は、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である阻害剤を含み、かつ該マトリクス材料は、約0.1%〜約10質量対容量%のポリビニルアルコール、約0.5%〜約5質量対容量%のポリビニルアルコール、約1%〜約5質量対容量%のポリビニルアルコール、又は約0.5%〜約1.5質量対容量%のポリビニルアルコールを含む、液体貯蔵可能な生体試料が提供される。
【0014】
特定のさらなる実施態様において、液体マトリクスが約1質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液、約3質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液、約5質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液、約1質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約5質量対容量%のトレハロースを含む溶液、約1質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約5質量対容量%のバリダマイシンを含む溶液、並びに約1質量対容量%のポリビニルアルコール、約5質量対容量%のトレハロース、及び約5質量対容量%のバリダマイシンを含む溶液から選択される溶液を含む、液体貯蔵可能な生体試料が提供される。
【0015】
その他の実施態様において、液体マトリクスが約1質量対容量%〜約5質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約5%質量対容量%のトレハラーゼ阻害剤を含む溶液、約1質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約1%〜約10質量対容量%のトレハラーゼ阻害剤、並びに約1質量対容量%のポリビニルアルコール、約5質量対容量%のトレハロース、及び約5%質量対容量%のトレハラーゼ阻害剤を含む溶液からなる群から選択される溶液を含む、液体貯蔵可能な生体試料が提供される。特定のさらなる実施態様において、トレハラーゼ阻害剤は、スイダトレスシン、バリダマイシンA、バリドキシルアミンA、MDL 26537、トレハゾリン、サルボスタチン、及びカスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシドからなる群から選択される。
【0016】
その他の実施態様において、マトリクス材料がポリエチレングリコール、アガロース、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリフェニレンオキシド、架橋されたアクリルアミド、ポリメタクリレート、カーボンナノチューブ、ポリ乳酸、ラクチド/グリコライド共重合体、ヒドロキシメタクリル酸共重合体、カルシウムペクチナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート、ヘパリンサルフェートプロテオグリカン、ヒアルロン酸、グルクロン酸、トロンボスポンジン-1 N末端のヘパリン結合ドメイン、フィブロネクチン、ペプチド/水溶性重合体改質剤抱合体、及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、液体貯蔵可能な生体試料が、本明細書に提供される。特定のさらなる実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料は、バリダマイシンを含むトレハラーゼ阻害剤を含む。
【0017】
特定の好ましい実施態様において、生体試料が(i)DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、脂質、炭水化物、複合糖質、オリゴ糖、及び多糖体からなる群から選択される単離された生体分子、(ii)哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、植物細胞、動物細胞、細菌、微生物、酵母細胞、ウイルス、ワクチン、血液、尿、体液、環境試料、及び頬側スワブからなる群から選択される生物材料、並びに(iii)生物活性小分子、の少なくとも1つを含む、液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。
【0018】
特定の本明細書に記述した実施態様に従って、液体貯蔵可能な生体試料であって、(a)生体試料;(b)生体適合性溶媒に溶解されたポリビニルアルコールを含む液体マトリクス;及び(c)バリダマイシンを含む少なくとも1つの安定剤を含み、(a)、(b)、及び(c)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。
【0019】
その他の実施態様において、所望のpHを維持することができる緩衝液を含む液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。さらなる実施態様において、緩衝液は、トリス、シトラート、アセテート、ホスフェート、ボラート、HEPES、MES、MOPS、PIPES、カルボナート、及びバイカルボナートからなる群から選択される化合物を含む。その他の実施態様において、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤が、バリダマイシンA、TL-3、オルトバナジウム酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N-α-トシル-Phe-クロロメチルケトン、N-α-トシル-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルフォニルフルオライド、及びジイソプロピルフルオロ-リン酸から選択される液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。特定の実施態様において、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤は、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、グランザイム阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞分裂阻害剤、細胞周期阻害剤、脂質シグナリング阻害剤、及びプロテアーゼ阻害剤から選択される。その他の特定の実施態様において、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤は、還元剤、アルキル化剤、及び抗菌薬から選択される。
【0020】
別の実施態様に変わって、少なくとも1つの検出可能な指示薬を含む液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。さらなる実施態様において、検出可能な指示薬は、比色指示薬を含む。別の実施態様において、検出可能な指示薬は、1つ以上のGCMSタグ化合物を含む。特定のさらなる実施態様において、検出可能な指示薬は、蛍光指示薬、発光指示薬、リン光の指示薬、放射測定指示薬、色素、酵素、酵素基質、エネルギー移動分子、及びアフィニティー標識から選択される。更にその他の実施態様において、検出可能な指示薬は、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、塩化コバルト、Reichardt色素、及び蛍光発生プロテアーゼ基質から選択される。また、特定の実施態様において、検出可能な指示薬が、アミン、アルコール、アルデヒド、チオール、スルフィド、亜硝酸塩、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na+、K+、Cl-、シアン化物、リン酸、及びセレンの少なくとも1つの存在を検出可能に示すことができる液体貯蔵可能な生体試料が、本明細書に提供される。
【0021】
特定の本明細書に記述された実施態様に従って、液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性が(i)少なくとも1週、(ii)少なくとも1月、(iii)少なくとも6月、(iv)少なくとも9月、(v)少なくとも12月、(vi)少なくとも18月、及び(vii)少なくとも24月からなる群から選択される期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。
【0022】
別の実施態様に変わって、液体貯蔵可能な生体試料であって、(a)生体試料;(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;及び(c)少なくとも1つの安定剤を含み、(a)、(b)、及び(c)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能であり:(I)(b)のマトリクス材料は、共有結合性に自己組織化せず、かつ以下の構造を有する:
-[-X-]n-
式中、Xは、-CH3、-CH2-、-CH2CH(OH)-、置換された-CH2CH(OH)-、-CH2CH(COOH)-、置換された-CH2CH(COOH)-、-CH=CH2、-CH=CH-、C1-C24アルキル、若しくは置換されたアルキル、C2-24アルケニル、若しくは置換されたアルケニル、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、又はこれらの無作為、若しくはブロック共重合体であり;かつ、nは、約1〜100、101〜500、501〜1000、1001〜1500、又は1501〜3000の値を有する整数であり;並びに、(II)安定剤は、重合体に対して共有結合性に連結されておらず、かつトレハロース、トレハラーゼ阻害剤、又はD-(+)-ラフィノース、β-ゲンチオビオース、エクトイン、D-(+)-ラフィノース五水和物、ミオ-イノシトール、ヒドロキシエクトイン、マグネシウムD-グルコナート、2-ケト-D-グルコン酸ヘミカルシウム塩水和物、D(+)-メレチトース、カルシウムラクトビオナート一水和物、β-乳糖、ツラノース、及びD-マルトースからなる群から選択される化合物を含む、液体貯蔵可能な生体試料が本明細書に提供される。
【0023】
特定のさらなる実施態様において、重合体は、少なくとも1つの安定剤で非共有結合性の会合ができる。特定のその他のさらなる実施態様において、重合体は、核酸分子、及びポリペプチドの少なくとも1つと非共有結合性の会合ができる。
【0024】
その他の実施態様において、生体試料を貯蔵する方法であって:(a)液体貯蔵可能な生物学的試料を得るために、生体試料と、(i)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料、及び(ii)少なくとも1つの安定剤を含む液体マトリクスとを接触させること;並びに(b)冷蔵することなく少なくとも1日の期間の間液体貯蔵可能な生体試料を維持することを含み、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記方法が、本明細書に提供される。さらなる実施態様において、前記期間の間冷蔵することなく貯蔵後に、生体試料の分解は、マトリクス材料の非存在下で該期間の間冷蔵することなく生体適合性溶媒中に維持された対照生体試料の分解と比較して減少される、方法が、提供される。さらなる好ましい実施態様において、前記期間の間冷蔵することなく貯蔵後に、生体試料の分解は、マトリクス材料、及び安定剤の少なくとも1つの非存在下で該期間の間冷蔵することなく生体適合性溶媒中に維持された対照生体試料の分解と比較して減少される、方法が、提供される。
【0025】
特定の実施態様において、接触させる工程が、溶媒にマトリクス材料を同時に溶解し、若しくは分離することを含むか、又は接触させる工程が、溶媒にマトリクス材料を溶解し、若しくは分離することに先行される、又は接触させる工程が、溶媒にマトリクス材料を溶解し、若しくは分離することに続く、方法が、提供される。
【0026】
特定の実施態様に従って、1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料のための液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造する方法であって:(a)生体試料貯蔵装置の1つ以上の試料ウェルに液体マトリクスを投与する工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)液体マトリクスは、(i)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料;及び(ii)少なくとも1つの安定剤を含む、前記工程;(b)工程(a)と同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、試料ウェルの1つ以上に生体試料を投与する工程;並びに、(c)工程(b)の後に、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく液体マトリクス、及び生体試料を含む生体試料貯蔵装置を維持する工程であって、液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、前記時間後に回復可能である、前記工程を含み、これにより液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造することを含む、方法が、本明細書に記述される。
【0027】
その他の実施態様において、投与する工程が、マトリクス材料、及び溶媒を含む液溶体、又は液体懸濁液を投与することを含む、方法が提供される。その他の実施態様において、少なくともの1つのウェルが少なくとも1つの検出可能な指示薬を含むか、検出可能な指示薬が比色指示薬を含むか、又は検出可能な指示薬が1つ以上のGCMSタグ化合物を含む、方法が、提供される。
【0028】
特定の好ましい実施例において、検出可能な指示薬が、蛍光指示薬、発光指示薬、リン光の指示薬、放射測定指示薬、色素、酵素、酵素基質、エネルギー移動分子、及びアフィニティー標識からなる群から選択される、方法が、提供される。その他の実施態様において、検出可能な指示薬がアミン、アルコール、アルデヒド、チオール、スルフィド、亜硝酸塩、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na+、K+、Cl-、シアン化物、リン酸、及びセレンの少なくとも1つの存在を検出可能に示すことができる、方法が、提供される。さらなる実施態様において、検出可能な指示薬が、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、塩化コバルト、Reichardt色素、及び蛍光発生プロテアーゼ基質から選択される、方法が、提供される。特定のさらなる実施態様において、少なくとも1つのウェルが、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である少なくとも1つの安定剤を含む、方法が、提供される。
【0029】
別の実施態様において、貯蔵した生体試料を回収する方法であって:(a)1つ以上の液体貯蔵可能な生物学的試料を得るために、同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、生体試料貯蔵装置において、1つ以上の生体試料を、生体試料の貯蔵のための液体マトリクスと接触させる工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)マトリクスは、(i)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料、及び(ii)少なくとも1つの安定剤を含む、前記工程;(b)接触工程の後に少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく生体試料貯蔵装置を維持する工程;並びに(c)生体試料貯蔵装置から1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料を除去する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記工程を含み、これにより前記貯蔵した生体試料を回収する、方法が、提供される。特定の好ましい実施態様において、維持する工程後の試料の生物活性が、接触させる工程の前の試料の生物活性と実質的に同じである、方法が、提供される。特定のさらなる実施態様において、生体適合性溶媒が活性緩衝液である、方法が、提供される。
【0030】
別の実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料であって:(a)生体試料;(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;(c)少なくとも1つの安定剤;及び(d)活性緩衝液を含み、(a)、(b)、(c)、及び(d)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触され、かつ該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記生体試料が、本明細書に提供される。特定のさらなる実施態様において、活性緩衝液は、pH緩衝液、フリーラジカルをトラップする薬剤、及び病原体中和剤からなる群から選択される組成物を含む。
【0031】
別の実施態様において、生体試料を貯蔵する方法であって:(a)液体貯蔵可能な生体試料を得るために、生体試料、及び液体マトリクスを接触させる工程であって、該液体マトリクスは、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む、前記工程;及び、(b)冷蔵することなく少なくとも1日の期間の間液体貯蔵可能な生体試料を維持する工程を含み、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、方法が、提供される。特定の好ましい実施態様において、生体試料の分解が、マトリクス材料の非存在下で冷蔵することなく生体適合性溶媒に維持した対照生体試料の分解と比較して減少される、方法が、提供される。
【0032】
さらなる実施態様において、接触させる工程が、溶媒にマトリクス材料を同時に溶解し、若しくは分離することを含むか、又は接触させる工程が、溶媒にマトリクス材料を溶解し、若しくは分離することに先行されるか、又は接触させる工程が、溶媒にマトリクス材料を溶解し、若しくは分離することに続く、方法が、提供される。
【0033】
別の実施態様において、1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料のための液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造する方法であって:(a)液体マトリクスを生体試料貯蔵装置の1つ以上の試料ウェルに投与する工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)該マトリクスは、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む、前記工程;並びに、(b)工程(a)と同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、試料ウェルの1つ以上に生体試料を投与する工程;並びに、(c)工程(b)後に、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく液体マトリクス、及び生体試料を含む生体試料貯蔵装置を維持する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、前記時間後に回復可能である、前記工程を含み、これにより液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造する、方法が、提供される。投与する工程が、マトリクス材料、及び溶媒を含む液溶体を投与することを含む、方法が、更に提供される。
【0034】
別の実施態様に変わって、貯蔵した生体試料を回収する方法であって:(a)1つ以上の液体貯蔵可能な生物学的試料を得るために、同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、生体試料貯蔵装置において、1つ以上の生体試料を、生体試料の貯蔵のための液体マトリクスと接触させる工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)該マトリクスは、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む、前記工程;(b)該接触工程の後に、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく液体マトリクス、及び生体試料を含む生体試料貯蔵装置を維持する工程;並びに、(c)生体試料貯蔵装置から1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料を除去する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記工程を含み、これにより前記貯蔵した生体試料を回収する、方法が、提供される。特定の実施態様において、維持する工程後の試料の生物活性が、接触させる工程の前の試料の生物活性と実質的に同じであり、生体適合性溶媒が活性緩衝液を含み、及びマトリクス材料がポリビニルアルコールを含む、方法が、提供される。
【0035】
本明細書に記述される特定の実施態様に従って、液体貯蔵可能な生体試料であって:(a)生体試料;(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;及び(c)試料処理組成物を含み、(a)、(b)、及び(c)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ては、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。
【0036】
さらなる実施態様において、試料処理組成物が活性緩衝液、細胞溶解緩衝液、フリーラジカルをトラップする薬剤、試料変性剤、及び病原体中和剤からなる群から選択される組成物を含む、液体貯蔵可能な生体試料が、提供される。特定のさらなる実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料は、等張性、高浸透圧性、又は低浸透圧性であるように調合される。
【0037】
別の実施態様において、生体試料の安定剤を同定する方法であって:(a)冷蔵することなく少なくとも1日間、候補薬剤の存在下において生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス中に生体試料を貯蔵する工程;(b)生体試料を回収する工程;(c)生体試料の生物活性を、候補薬剤の非存在下で液体マトリクス中に冷蔵することなく少なくとも1日間貯蔵されている対照試料の生物活性と比較する工程であって、該候補薬剤の存在下に貯蔵されている生体試料による生物活性の実質的に全ての保持、及び候補薬剤の非存在下で貯蔵されている対照試料による生物活性の喪失は、候補薬剤が生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤であることを示す、前記工程を含み、これにより生体試料の安定剤を同定する、方法が、提供される。特定のさらなる実施態様において、安定剤は、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である。
【0038】
これらの、及びその他の本発明の態様は、以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することにより明らかになるであろう。本明細書に開示された全ての参照文献は、それぞれがあたかも個々に組み込まれるかのように、それらの全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】室温で液体貯蔵マトリクスに貯蔵した全血から抽出したゲノムDNAの完全性を示す。(図1、左バー)。QPCR解析を使用して、外界温度にて4ヶ月間、1%のPVAに基づいた液体貯蔵マトリクスに貯蔵した全血から抽出したゲノムDNAの完全性を測定した。対照として、全血を、液体貯蔵マトリクスなしで-20℃に貯蔵した(図1、右バー)。ゲノムDNAの完全性は、全血を室温で液体貯蔵マトリクスに貯蔵したときに、維持されたが、これは、凍結貯蔵した全血に由来する試料では有意に減弱した。
【図2】室温での液体貯蔵マトリクスにおけるRNAの貯蔵が分解を防止したことを示す。臭化エチジウムで染色した0.8%のアガロースゲルは、6日間の室温にて1%PVAに基づいた液体貯蔵マトリクスに貯蔵後のRNA断片の分離後を示している(SM、レーン3)。本質的に、凍結貯蔵した(-20℃、レーン1)同一の試料と比較して、有意な分解は、検出されなかった。また、RNAを室温で水中に貯蔵した(noSM、レーン2)。水に貯蔵したRNAは、1%のPVAに基づいた液体マトリクスに貯蔵し、6日間室温、又は-20℃のいずれかにて維持した試料と比較して、著しく変性された。
【図3】冷蔵することなく液体貯蔵マトリクスに貯蔵したプラスミドDNA(pDNA)は、無傷のままであったことを示す。1ng pUC19の試料を1%のPVAに基づいた液体貯蔵マトリクス、又は水に貯蔵した。試料を70℃にて3日間加熱した。対照pDNAは、-20℃にて水に貯蔵した(Cレーン)。次いで、試料を、PCR増幅反応における鋳型として使用して、10μlのそれぞれの増幅された産物を0.8%のアガロースゲル上で泳動して、次いで解析のために臭化エチジウムで染色した。液体貯蔵マトリクスに貯蔵したプラスミドDNA(SMレーン)は、凍結した対照(Cレーン)と同等の強い増幅を示したが、水に貯蔵したDNAは、増幅することができなかった(H2Oレーン)。NC:鋳型対照なし(NCレーン)。
【図4】冷蔵することなく液体貯蔵マトリクスに貯蔵したTaqポリメラーゼが酵素活性を保持したことを示す。Taqポリメラーゼ(2.5U)を室温(25℃)、又は50℃のいずれかにて21日間、液体貯蔵マトリクスに貯蔵した(SM)。また、同一試料を、水にも貯蔵した。Taqポリメラーゼは、正の対照として-20℃にて保存した。次いで、貯蔵した酵素の一定分量を、鋳型として50ng pUC19でのPCR反応に使用した。10μlのそれぞれの反応生成物の試料を0.8%のアガロースゲル上で泳動し、次いで臭化エチジウムで染色した。25℃(レーン1-4)、又は50℃(レーン5-6)のいずれかにて21日間、液体貯蔵マトリクスに貯蔵したTaqポリメラーゼは、強いPCR増幅を示した。鋳型の増幅は、凍結した対照と同等であった(C:レーンC)。水に貯蔵したTaqポリメラーゼのみが、増幅することができなかった(H2O:レーンH2O)。NC:鋳型対照なし(NC:レーンNC)。これらの結果は、ポリメラーゼを液体貯蔵マトリクスに貯蔵したときに、高温にて21日後でさえも、酵素機能が保持されたことを示す。
【図5】液体貯蔵マトリクスに貯蔵した大腸菌(E. coli)は、室温で生存可能なままであり、プラスミドDNAは、無傷なままであることを示す。pFIV-Cプラスミドを含む大腸菌(E. coli)細胞を、液体貯蔵マトリクス(SM)、又は液体のLuriaブロス(LB)に室温にて2月間貯蔵した。次いで、プラスミドDNAの抽出の前に、貯蔵した試料の一定分量を使用して培養物を一晩培養し、次いでEcoRIで消化した。消化したDNA試料を0.8%のアガロースゲル上で泳動し、臭化エチジウムで染色した。対照DNAをプラスミドを完全性のための参照として使用した(+:レーン3)。室温で液体貯蔵マトリクスに貯蔵した大腸菌(E. coli)は、制限酵素で消化することができるプラスミドDNAを保持したが(SM:レーン1)、LBに貯蔵した細菌は、もはやプラスミドを持たない(LB:レーン2)。
【図6】公知の高周波通信システムの模式図である。
【図7】本発明の一つの実施態様に従って形成されるシステムの模式図である。
【図8】別の本発明の態様に従って形成されるコンピュータ実行システムアーキテクチャのブロック図である。
【図9】特定の実施態様に従ったコンピュータ実行システムアーキテクチャを示す。
【図10】特定の実施態様に従ったコンピュータ実行システムアーキテクチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(詳細な説明)
本発明は、本明細書に記述した特定の実施態様において、特定のマトリクス材料、及び特定のさらなる実施態様において、1つ以上の安定剤の存在下において、生体試料を長期間の間、外界温度にて液体、又は準液体の形態に貯蔵することができ、その結果、実質的に全ての試料の生物学的活性を回復することができるという予想外の発見に基づいて、生体試料の実質的に液体貯蔵のための組成物、及び方法に向けられる。本明細書に記述した、特定の実施態様は、長期の外界温度液体相貯蔵に使用するための、部分的には生体試料の構造、及び/又は活性の保存を両立し得るマトリクス材料の選択によって提供される利点に、及び部分的には抗菌活性を有するトレハラーゼ阻害剤などの安定剤の選択によって提供される驚くべき利点に関する。
【0041】
これらの、及び関連した実施態様により、冷蔵、又は凍結貯蔵を伴わずに、ポリヌクレオチド、酵素、及びその他のタンパク質並びに細胞を含むが、限定されない多種多様な生体試料の効率的な、便利で、かつ経済的な貯蔵が可能になる。試料は、外界温度にて液体マトリクスに貯蔵されてもよく、及び貯蔵後に、試料は、試料の生物活性で妨げないマトリクス材料から試料を分離する必要なく、直ちに使用してもよい。本明細書に提供した実施態様は、微量の関心対象の生体分子を含む試料を調べるための検出感度の増強を含む、貯蔵した生体試料の有利な優れた回収を提供し、臨床面、保健医療、及び診断状況における、生体臨床医学研究、生物調査、及び法科学における、並びに生物学的製剤、及びライフサイエンスのための試料貯蔵、及び管理が望まれるであろうその他の状況における使用が見いだされるであろう。
【0042】
本発明は、液体、又は非液体試料の貯蔵のために、及び外界温度における貯蔵のために使用されてもよく、DNA、RNA、血液、尿、その他の体液(例えば、血清、漿膜液、血漿、リンパ液、脳脊髄液、唾液、分泌組織及び器官の粘膜分泌液、膣分泌物、腹水液、胸膜液、心臓周囲液、腹膜液、腹腔液、及びその他の体腔の液体、細胞、又は器官条件培地を含む細胞、及び器官培養培地、洗浄液液体、その他等)、頬側スワブ、細菌、ウイルス、操作されたウイルスベクター、酵母細胞、ワクチン(例えば、天然、又は合成の、ウイルス、若しくはその他の微生物ワクチンなどの無傷な生物学的粒子の場合、生、若しくは減弱したもの、又は遺伝子工学の産物を含む、天然の、合成の、人工の材料の抽出物)、細胞及び組織、細胞若しくは組織可溶化液、細胞又は組織ホモジネート若しくは抽出物等、又はその他の生体試料の抽出物などの、更に多様な生物材料、及び生体試料の貯蔵のための使用を有し得る。
【0043】
従って、生体試料には、また対象、若しくは生物源からの、血液試料、生検材料、組織外植片、器官培養、体液、又は任意のその他の組織、若しくは細胞標品、又はその、若しくはそこから単離された画分、若しくは誘導体を含んでいてもよい。対象、又は生物源は、哺乳類、及び非哺乳類を含むヒト、又はヒト以外の動物、脊椎動物、及び無脊椎動物であってもよく、また真核生物(植物、及び藻類を含む)、若しくは原核生物、又は古細菌、微生物(例えば、細菌、古細菌、真菌、原生生物、ウイルス)、水生プランクトン、土壌、バイオフィルム、微生物マット若しくはクラスター、初代細胞培養、又は染色体に組み込まれ、若しくはエピソーム組換え核酸配列、若しくは人工染色体を含んでいてもよい遺伝子操作された株化細胞、不死化され、若しくは不滅化された(immortalizable)株化細胞、体細胞雑種株化細胞、分化され、若しくは分化可能な株化細胞、幹細胞、胚細胞(例えば、精子、卵母細胞)、形質転換株化細胞等を含むが限定されない培養適応された株化細胞などの、任意のその他の多細胞生物、又は単細胞生物体でもあってもよい。
【0044】
現在使用される、「生体試料」、「生体分子(biological molecule)」、及び「生体分子(biomolecule)」という用語は、実質的に科学的、診断的、及び/又は薬学的適用のフレームワーク内の関連する特性を有する生物学的起源の任意の物質、及び化合物を包含する。天然の供与源から単離することができるものなどの天然の分子だけでなく、天然の分子の少なくとも1つの特性が存在する限り、それに由来する形態、断片、及び誘導体も、並びに組換え形態、及び人工分子も包含する。好ましい生体試料は、核酸、及びこれらの誘導体(例えば、オリゴヌクレオチド、DNA、cDNA、PCR産物、ゲノムDNA、プラスミド、染色体、人工染色体、遺伝子移入ベクター、RNA、mRNA、tRNA、siRNA、miRNA、hnRNAリボザイム、ペプチド核酸(PNA))、ポリペプチド、及びタンパク質(例えば、酵素、受容体タンパク質、タンパク質複合体、ペプチドホルモン、抗体、リポタンパク質、糖タンパク質、インテイン、プリオン)、並びにこれらの生物学的に活性な断片、炭水化物、及びこれらの誘導体(例えば、糖脂質、グリコシル化されたタンパク質、配糖体、オリゴ糖、単糖、及び多糖類、並びにグリコサミノグリカン)、及び脂質、及びこれらの誘導体(例えば、脂肪、脂肪酸、グリセリド、トリグリセリド、リン脂質、ステロイド、プロスタグランジン、及びロイコトリエン)などの、しかし限定されない、解析、診断、及び/又は薬学的目的に適用することができるものである。
【0045】
本開示に基づいて、本発明によって包含される実施態様に従った組成物、及び方法は、また、細胞組織に、及び完全な細胞に、並びにこのような由来した部分が上記した生体分子の担体である限り、その部分に(例えば、細胞小器官、膜、及び膜断片、ホモジネート、抽出物、細胞成分分画、可溶化液、その他)適用することができることが、当業者には明らかであろう。このために、組織、細胞、及びその部分等は、基本的に「生体試料」という用語によって包含される。
【0046】
従って、「生体試料」という用語は、最も広義に考えて、脊椎動物、若しくは無脊椎動物の細胞、又は組織を、例えば脊椎動物細胞の場合、魚細胞(例えば、ゼブラフィッシュ細胞、又はフグ細胞、その他)、両生類細胞(例えば、カエル細胞)、トリ細胞、爬虫類細胞、哺乳動物細胞、その他をいう。哺乳類の例には、ヒト、又はサル、類人猿、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロ、アンテロープ、雄ウシ、ウマ、ロバ、ラバ、シカ、ヘラジカ、カリブー、水牛、ラクダ、ラマ、アルパカ、ウサギ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、イヌ、ネコ、その他などの非ヒト哺乳類を含む。また、例えば、環形動物、軟体動物、海綿体、刺胞動物、節足動物、両生類、魚、鳥類、及び爬虫類を含む非哺乳類動物、又はそれに由来する器官を含んでいてもよい生体試料が、その他の実施態様において想定される。
【0047】
特定のその他の実施態様において、生体試料は、水生プランクトンに由来する微生物、上記したような動物組織及び器官,
微生物マット、クラスター、スラッジ、フロック、又はバイオフィルムをいってもよい。「水生」プランクトンの微生物には、細菌プランクトン、古細菌プランクトン、ウイルス、及び植物プランクトン並びに動物プランクトンを含む。
【0048】
その他の実施態様に従って、「生体試料」という用語には、対象、又は生物源などの任意の供与源(動物、植物、細菌、ウイルス、その他)から、並びに生物学的、及び環境試料から得られる検体、又は培養を含んでいてもよい。生体試料は、任意の脊椎動物、又は非脊椎動物から得てもよく、及び液体、固体、組織、及び気体を包含してもよい。環境試料には、表面物質、土壌、水、バイオフィルム、微生物マット、産業試料、その他などの環境物質を含む。
【0049】
本明細書に使用される、「土壌」は、土の表面上に堆積する無機ミネラル、及びバイオマスに対して作用する地質学的、及び生物学的プロセスの複合産物である。これには、リサイクル、及びバイオミネラル化有機物に作用して、高等植物を固着させ、及び養う基層として役立つ地球上の大部分の生物多様性を含む(Whitmanらの文献、(1998)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95(12,6578-83)。
【0050】
バイオフィルムは、微生物が水和された重合体マトリクスに包埋された「水性環境」の表面上の微生物の集団である。このマトリクスは、接着剤のように作用して、微生物を共に保持し、表面にこれらを付着して、これらを有害な外部影響から保護する。これらには、いくつかの分類学上異なる種(例えば、細菌、真菌、藻類、及び原虫)を含んでいてもよく、金属、ガラス、プラスチック、組織、ミネラル、及び土壌粒子などの多様な組成物の固体、又は液体表面上に形態し得る。微生物マット、及びクラスターは、必然的に組成物のバイオフィルムに類似した微生物集団/凝集体であるが、固体表面ほどとして確実に付着される必要はない。
【0051】
特定の実施態様は、単離された生体分子を含み得る生体試料に関し、この場合、「単離された」という用語は、材料がその本来の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然の環境)から除去されることを意味する。例えば、生菌、若しくは生動物に存在する天然に存在する核酸、又はポリペプチドは、単離されていないが、天然の系に共存する材料のいくつかの、又は全部から分離された、同じ核酸、又はポリペプチドは、単離されている。このような核酸は、ベクターの一部であることができ、及び/又はこのような核酸、又はポリペプチドは、組成物の一部であることができ、このようなベクター、又は組成物がその天然の環境の一部でないという点で、なおも単離されている。
【0052】
特定の本明細書に記述された実施態様は、生体試料の安定化、及び/又は保存に関し、これには、生体試料(分子、多分子、又はオリゴマー、細胞小器官、細胞下、細胞、多細胞性、又はより高度な組織的レベルの生物構造、及び/若しくは機能を含む)の、及びこれに基づいた生物学的性質の、構造的、及び/若しくは機能的完全性の維持、保持、又は再構成を含む。詳細な実施態様において、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドなどの、巨大分子、若しくは生体高分子、又は同様のものを含む生物学的試料の生物活性には、例えば、その一次、二次、及び/又は三次構造の広範な維持を含み得る。核酸プローブの活性には、例えば、生物学的配列特異的様式でプローブに相補的である核酸標的とハイブリダイゼーション複合体(例えば、二重鎖)を形成する、その特性を含む。抗体の生物活性は、例えば、その同族抗原と特異的に結合する相互作用を含む。
【0053】
本明細書に記述した、物質の生物活性は、例えばウイルス、細菌、バクテリオファージ、プリオン、昆虫、真菌、植物、動物、及びヒトを含むが、限定されない、生物体に関する生物系、経路、分子、又は相互作用の任意の物理的、又は生化学的特性に影響を及ぼすことができる任意の活性を意味する。生物活性をもつ物質の例には、ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、酵素、抗体、小分子(例えば、生物活性小分子)、医薬組成物(例えば、薬物)、ワクチン、炭水化物、脂質、ステロイド、ホルモン、ケモカイン、成長因子、サイトカイン、リポソーム、及び毒素、リポソームを含むが、限定されない。関連した技術の当業者は、生物系の物理的、又は生化学的特性、例えば以下を含み得るが、限定されない1つ以上の生物活性に影響を及ぼす物質の生物活性を決定するために適したアッセイ、及び方法を認識するであろう:遺伝子発現(例えば、Asubel, FMらの文献(編).2007. Current Protocols in Molecular Biology, Wiley and Sons、Inc. Hoboken、NJを参照されたい)、受容体-リガンド相互作用(例えばEisenthal and Hanson (編), Enzyme Assays, Second Edition. Practical Approaches series, No. 257. 2002, Oxford University Press, Oxford, UK; Kaplan and Colowick (編), Preparation and Assay of Enzymes, Methods in Enzymology, (1、2、及び6巻). 1955、及び1961, Academic Press, Ltd., Oxford, UKを参照されたい)、サイトカイン、ホルモン、及び生理活性ペプチド活性、並びにその他の細胞増殖(例えば、分裂促進的)、及び/又は分化活性(例えばColiganらの文献(編). 2007 Current Protocols in Immunology, Wiley and Sons, Inc. Hoboken, NJを参照されたい)、シグナル伝達(例えば、Bonifacinoらの文献(編) 2007 Current Protocols in Cell Biology, Wiley and Sons, Inc. Hoboken, NJを参照されたい)、並びに細胞毒性(例えば、細胞障害性、興奮毒性)(例えば、Bus JSらの文献(編) 2007 Current Protocols in Toxicology, Wiley and Sons, Inc. Hoboken, NJを参照されたい)、アポトーシス、及び壊死(Green、及びReed, 1998 Science 281(5381): 1309-12; Green DR, 1998 Nature Dec 17: 629; Green DR, 1998 Cell 94(6): 695-69; Reed, JC (Ed.), 2000 Apoptosis, Methods in Enzymology (vol. 322), Academic Press Ltd., Oxford, UK)。
【0054】
特定の実施態様において、本発明は、実質的に液体条件下で生物学的、化学物質、及び生化学的材料の、及び即時使用の準備ができている様式の、長期貯蔵に関する。本明細書に記述したとおり、以下を含む実施態様が提供される:a)液体貯蔵マトリクス、b)特定の実施態様において、長期貯蔵条件の耐久性を増加させる液体試料と組成物のマトリクスの調製、及び最適化、例えば、生物学的、又は生化学的阻害剤であり得る安定剤、例えば抗菌活性を有するトレハラーゼ阻害剤などの安定剤の使用、及びc)液体貯蔵マトリクスの使用により生物学的に活性な材料の複雑な生化学的プロセスを単純化するプロセス。
【0055】
従って、これら、及び関連した実施態様は、生体試料の生物活性の安定化、及び保存の改善、液体又は準液体形態(例えば、ヒドロゲル)の室温における貯蔵の間の生体試料の分解の減少(及び特に保護薬マトリクスを用いることによる)、並びに時間のかかる再調整、及びこのような試料の分注の必要性を減少させ、又は無くすことにより、及びさらなる使用のための生体試料を調製するための過程の簡略化、及び貯蔵媒体から試料を物理的に分離する必要を無くすことにより、冷蔵することなく貯蔵した生体試料の液体、又は準液体貯蔵に付随する利点を提供する。本明細書に記述した実施態様に加えて、試料容器表面上の試料の吸着による望まれない試料変性、及び/又は試料喪失などの、さもないと試料回収率を減少させ得る要因を減少させ、又は除去することによる、優れた生体試料回収を提供する。
【0056】
本明細書に使用される「ヒドロゲル」は、水を含むがゲルに限定されるものとはみなされず、水の非存在下での有機非ポリマー成分を含むものを含む、一般に全ての親水性ゲル、及びゲルコンポジットに拡張される。ゲルは、固体と液体との間の中間体であり、三次元ネットワーク内の溶媒からなる物質の状態である。
【0057】
特定の実施態様に従って、本発明は、DNA、RNA、タンパク質、及びその他の生体分子、細胞、細胞の成分、及びその他の生物材料、ミネラル、化学物質、又は生体試料、若しくはその他の生命科学関連試料に由来する組成物の精製、並びにサイズ分画が可能である。特定の実施態様において、本発明は、従って、例えば、1つの一体化され、組み込まれ、及び使いやすいプラットフォームの、ポリメラーゼ連鎖反応法、又はPCR(RT-PCRを含む)、生体高分子(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、オリゴ糖、又はその他の生体高分子)、シーケンシング、オリゴヌクレオチドプライマー伸長、ハプロタイピング(例えば、DNAハプロタイピング)、及び制限マッピングを含むが、限定されない、分子生物学手法の実施における一つ、又は複数の生物材料、及び/又は生体試料の使用を容易に可能にする。また、本発明は、例えば、及び特定の実施態様において、タンパク質結晶学の実施のための一つ、又は複数の生体試料、及び/又は生物材料の使用を容易に可能にする。その他の実施態様において、抗体、若しくは小分子(生物活性小分子などの、天然に存在するか、又は人工であるかにかかわらない)、又はその他の生体分子(例えば、「生体分子」)、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、又はその誘導体;脂質、脂肪酸、若しくはその他、又はその誘導体;炭水化物、サッカライド、若しくはその他、又はその誘導体、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、プリン、ピリミジン、若しくは関連した分子、又はその誘導体、又はその他;又は生体試料の成分である別の生体分子の使用、試験、若しくは検出(診断の適用を含む)のためのプラットフォームが提供される。
【0058】
(生体試料の液体貯蔵)
本明細書に記述した組成物、及び方法は、生体試料の液体、及び/又は実質的に液体の貯蔵に関し、例えば液体貯蔵装置を含む、任意の適切な容器の使用を含んでいてもよい。液体貯蔵装置は、本明細書に開示したとおりの生体試料貯蔵装置の適用であり、これには、特定の好ましい実施例において、血液、尿、及びその他の体液、細菌、寄生虫、細胞、組織、ウイルス、及びウイルスベクター、化学化合物(天然に存在し、又は人工的に産生されるかにかかわらない)、プラスミドDNA、DNA断片、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛍光発生基質、ゲノムDNA、PCR産物、クローン化DNA、人工染色体、RNA、タンパク質、酵素、ポリペプチド、プリオン、ワクチン、植物、及び藻類、ミネラル、及び化学物質、並びに本明細書に開示したとおりのその他の生体試料などの、しかし限定されない、生体試料、又は生物材料の長期貯蔵のための、本明細書に記述したとおりの溶媒に溶解し、又は分離するマトリクス材料を含む、液体、又は実質的に液体(例えば、ヒドロゲル)の試料マトリクスとしての使用のためのマトリクス材料を含む。
【0059】
生体試料、又は生物材料のその安定な、長期の液体貯蔵の観察に由来するこれらの、及び関連した実施態様は、このような試料、又は材料が、液体マトリクス材料を含む、本明細書に記述したものなどのマトリクス材料に貯蔵されるときに、冷蔵することなく行ってもよい。非限定的な理論に従って、生体試料に存在する生物材料は、特異的、若しくは非特異的な結合、又は非共有結合性、及び/若しくは共有結合性化学結合の形成を含むもの、及び/若しくは疎水性の、及び/又は親水性相互作用、水素結合形成、静電的相互作用等などの分子間結合相互作用を含むその他の付着のメカニズムによりマトリクス材料と相互作用してもよい。従って、本発明は、本明細書に記述した試料データ処理方法、及びシステムに使用するための、一般的な屋内周囲室温(例えば、典型的には20〜27℃、しかし、地理学、季節、及び物理的プラントの関数として、約15〜19℃、又は約18〜23℃、又は約22〜29℃、又は約28〜32℃で変化する)にて、生体試料の安定な、長期の液体、又は準液体貯蔵のための装置を提供する。
【0060】
好ましい実施態様には、冷蔵することなく、例えば周囲室温にて生体試料、又は生物材料の液体、若しくは準液体貯蔵ができる液体マトリクス材料を含む、本明細書に記述したとおりの試料貯蔵装置の使用を含む。特定の好ましい実施態様において、液体貯蔵可能な生体試料が維持される条件によって、蒸散させることができる生体適合性溶媒(例えば、水)の蒸発がほとんど、又は全くない。試料は、好ましくは試料を安定化する液体、又は実質的に液体の条件下で貯蔵され、すなわち貯蔵される試料の性質の因子によって変化するであろうし、及び関連した技術の当業者によく知られている任意の減少であろう任意の基準に従って、試料の検出可能な(例えば、統計的有意性での)分解、又は望ましくない化学物質、又は物理的修飾が、ほとんど、又は全く生じない。従って、特定の好ましい実施態様に従う本開示から、1つ以上の試料、マトリクス材料、及び安定剤は、例えば、生体適合性溶媒などの共通の液相に存在する液体中で互いに接触されるであろうことが認識されるだろう。
【0061】
試料貯蔵装置の非限定的な例には、瓶、チューブ、バイアル、バッグ、箱、ラック、マルチウェルディッシュ、及びマルチウェルプレートを含んでいてもよく、これらは、典型的には個々のスクリューキャップ、若しくはスナップキャップ、スナップ、若しくはシール閉じ、蓋、接着ストリップ、若しくはテープ、又はマルチキャップストリップによって封止されている。本明細書に記述したとおりの液体貯蔵可能な生体試料のための適切なその他の容器、及び器は、例えば検体収集コンテナなど、当業者に公知であるだろう。特定の実施態様において、試料貯蔵、プロセシング、及び生物学的処理の自動化の中から高スループットのための標準的な容器形式は、96、384、若しくは1536のウェルプレート、又はアレイである。一般の生体試料貯蔵装置に関するその他の情報は、例えば、その中の引例を含むUS/20050276728、及びUS/20060099567において見いだされるであろう。
【0062】
特定の好ましい実施態様では、試料材料を完全に回収し、又は実質的に(例えば、少なくとも50パーセントの回収、好ましくは少なくとも60パーセント、より好ましくは、少なくとも70パーセントは、より好ましくは少なくとも80パーセントにて、及び典型的には、より好ましい実施態様において少なくとも85パーセント、より好ましくは少なくとも90、91、92、93、又は94パーセント、より好ましくは少なくとも95パーセント、さらにより好ましくは96、97、98、又は99パーセントを超えて)回収することができる溶媒に溶解され、又は解離された材料で構成されるマトリクス上の生物材料(例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、DNA断片、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、蛍光発生物質、細胞、ウイルス、細菌、化学化合物、ワクチン、その他)、又は本明細書に提供したその他の生体試料貯蔵のための組成物、及び方法を提供する。例えば、液体マトリクスは、使用される特定の方法論に応じて、及び試料(例えば、生物活性)の1つ以上の所望の構造的、又は機能的な特性を回復することができる様式で、マトリクス材料の、及び/又は試料の特性に基づいて選択してもよい。同様に、別の例として、マトリクス材料は、適切な溶媒に分離してもよく、分散、懸濁液、コロイド、ゲル、ヒドロゲル、樹液、スラリー、シロップ、又はその他同様のものが得られるように、完全に可溶化してもよいが、そうする必要はない。
【0063】
特定の好ましい実施態様において、本明細書に開示した組成物、及び方法に使用するための少なくとも1つ溶媒は、水性の、例えばその生体分子のために構造、及び/又は機能に寄与する好ましい化学物質環境を保存することにより、生体分子の生物構造、及び/又は機能を補助するように選択した、体液、生理溶液、又は水性生物学的緩衝液などの生体適合性溶媒であろう。このような生体適合性溶媒の非限定的な例には、生理食塩水(例えば、およそ145mM NaCl)、リンゲル液、ハンクス平衡塩類溶液、ダルベッコリン酸緩衝整理食塩水、エルレ平衡塩類溶液、並びに当業者に公知であろうその他の緩衝液、及び溶液等を含み、関心対象の特定の生体分子のために望まれるであろう添加物を含むものを含む。
【0064】
しかし、その他の実施態様に従って、本発明は、このように限定される必要はなく、その他の溶媒を、例えばCatalanらの文献の系を使用する溶媒極性/分極率(SPP)スケール値に基づいて選択してもよく(例えば、1995 Liebigs Ann. 241;Catalanらの文献 2001 In:Handbook of Solvents, Wypych(編)Andrew Publ., NY、及びその中で引用された参照文献も参照されたい)、これに従えば、例えば、水は、0.962のSPP値を有し、トルエンは、0.655のSPP値、及び2-プロパノールは、0.848のSPP値を有する。2-N,N-ジメチル-7-ニトロフルオレン/2-フルオロ-7-ニトロフルオレンプローブ/ホモモルフ対の紫外線測定に基づいた溶媒のSPP値を決定するための方法が記述されている(Catalanらの文献、1995)。所望のSPP値をもつ溶媒を(純粋な単一の成分溶媒として、又は2、3、4つ以上の溶媒の混合溶媒としてであるかどうかにかかわらず;溶媒混和性については、例えば、Godfreyの文献 1972、Chem. Technol. 2:359を参照されたい)、特定のマトリクス材料の溶解度特性に基づいて、当業者が本開示を考慮して、容易に同定することができる。
【0065】
(液体マトリクス)
非限定的な理論に従って、本明細書に記述したとおりの液体マトリクスは、好ましい実施態様において、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含んでいてもよく、マトリクス(例えば、空間的に組織化された支持体、又は足場)を形成することにより、生体試料の組成要素の生物材料をマトリクスと結合させることができる三次元空間を作製する重合体構造を含んでいてもよい。さらなる非限定的な理論に従って、溶解可能、又は分離可能なマトリクス材料は、また特定の想定された実施態様において、塩、糖、阻害剤、緩衝液、及び/又はその他の安定剤などの安定化剤の空間的に組織された導入のために使用してもよい。また、マトリクスは、pH調整のための成分(例えば、緩衝液)、及び最適な貯蔵条件のためのその他のパラメーターを包含することができ、本明細書に提供したとおり、色に基づいたpH指示薬、及び/又はその他の化学指示薬などの、一つ、又は複数の検出可能な指示薬を任意に含んでいてもよい。
【0066】
特定の好ましい実施例において、マトリクス材料は、溶解可能マトリクス材料であるポリビニルアルコール(PVA)を含む。PVAは、種々の市販の供与源から得てもよく(例えば、Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo;Fluka, Milwaukee, WI)、特定の別々の分子量で、又は或いは、可変の重合度に基づいて、いくつかの規定された分子量範囲内の重合体の多分散系標品として利用できる。例えば、PVA製品のMowiol(登録商標)シリーズは、Flukaから、16、27、31、47、55、61、67、130、145、又は195kDaの範囲のおおよその分子量で得られるであろうし、添付の実施例で使用したように、30-70kDaの平均分子量を有する標品(Sigma番号P 8136)などの、その他のPVA製品も知られている。本開示に基づいて、当業者であれば、本明細書に記述したとおり、液体条件下で貯蔵される生体試料に存在する関心対象の特定の生体分子の生理化学的性質(例えば、分子量、疎水性、表面電荷分布、溶解度、その他)に応じて、本組成物、及び方法に従って使用するために、これらの、若しくはその他のPVA製品、又は溶媒に溶解し、又は分離するその他の適切なマトリクス材料を容易に、かつ過度の実験をせずに、同定することができることを認識するであろう。
【0067】
本明細書に記述したとおり、生体試料の実質的液体貯蔵のためのマトリクスは、特定の実施態様に従って、約0.1%〜約10%の重量のPVAを含む溶液から調製してもよく、特定の関連した実施態様において、約0.5%〜約5%、約1%〜約5%、約0.5%〜約1.5%、約1%、約3%、又は約5%質量対容量のPVAを含んでいてもよく、この場合「約」は、詳述した量よりも、50%、より好ましくは40%、より好ましくは30%、及びより好ましくは20%、15%、10%、又は5%多く、又は少なくてもよい量的変異を表すことが理解されるであろう。同様の質量対容量率、及び寛容性は、マトリクス材料がPVA以外である少なくともいくつかの異なる実施態様において、その他の液体マトリクス材料のためにも適するであろう。
【0068】
特定のその他の実施態様に従って、液体マトリクス材料は、所望の構造的、及び/又は機能的な特性を満足に保存する様式で特定のタイプの生体試料を貯蔵するために適合した特徴を有する任意の適切な材料であってもよく、前記特徴には、関心対象の生体分子が堆積する間隔内にマトリクスを形成することにより、マトリクス分子が試料中の関心対象の1つ以上の生物活性を妨げない能力を含む。
【0069】
液体マトリクス材料のさらなる非限定的な例には、以下を含む:ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルセルロース(C2H6O2x、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)[-N(COC2H5)CH2CH2-]n、ポリビニルアルコール、トレハロース、ポリエチレングリコール、アガロース、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリフェニレンオキシド、可逆的に架橋されたアクリルアミド、ポリメタクリレート、カーボンナノチューブ(例えば、Dykeらの文献、2003 JACS 125:1156;Mitchellらの文献、2002 Macromolecules 35:8825;Daganiの文献,2003C&EN 81:5)、ポリ乳酸、ラクチド/グリコライド共重合体、ヒドロキシメタクリル酸共重合体、カルシウムペクチナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(例えば、Langerの文献、1990 Science 249:1527;Langerの文献、1993 Accounts Chem. Res. 26:537-542)、ヘパリンサルフェートプロテオグリカン、ヒアルロン酸、グルクロン酸(例えば、Kirn-Safranらの文献、2004 Birth Defects Res. C. Embryo Today 72:69-88)、トロンボスポンジン-1 N末端ヘパリン結合ドメイン(例えば、Elzieらの文献、2004 Int. J. Biochem. Cell Biol. 36:1090;Pablovraらの文献、2004 Birth Defects Res. C. Embryo Today 72:12-24)、フィブロネクチン(例えば、Wierzbicka-Patynowskiらの文献、2003 J Cell Sci. 116(Pt 16):3269-76)、ペプチド/水溶性重合体改質剤抱合体(例えば、Yamamotoらの文献、2002 Curr Drug Targets 3(2):123-30)、及び基底膜コラーゲンペプチドを含むコラーゲン、又はコラーゲン断片(例えば、Ortegaらの文献、2002 J Cell Sci. 115(Pt 22):4201-14)。
【0070】
本発明の特定の実施態様は、本明細書に記述した実施態様のその他の成分の非存在下で、例えば、米国特許第5,240,843号、米国特許第5,834,254号、米国特許第5,556,771号、米国特許第4,891,319号、米国特許第5,876,992号、WO 90/05182、及びWO 91/14773の1つ以上の、乾燥タンパク質貯蔵について開示したように二、又は三糖安定剤(例えば、トレハロース、ラクチトール(lactitol)、乳糖、マルトース、マルチトール、スクロース、ソルビトール、セロビオース、イノシトール、又はキトサン)と共に、使用したときに、可溶性陽イオン性重合体(例えば、DEAE-デキストラン)、又はアニオン重合体(例えば、デキストランサルフェート)、又はアガロースなどの液体マトリクス材料を明白に除くことが想定されるが、本発明の特定のその他の実施態様は、液体マトリクス材料、及び少なくともこのような第1の二、又は三糖安定剤のこのような組み合わせを、本明細書に記述したようなトレハラーゼ阻害剤であってもよい生物学的、又は生化学的阻害剤を含み、かつ抗菌活性を有する第2の安定剤(例えば、バリダマイシンA、スイダトレスチン、バリドキシルアミンA、MDL 26537、トレハゾリン、サルボスタチン、及び/又はカスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシドと共に、使用することを想定し、該組み合わせは、引用した文書では、示唆されていない。本発明の特定のその他の実施態様は、タンパク質以外の生体試料、例えば、DNA、RNA、合成オリゴヌクレオチド、ゲノムDNA、天然、及び組換え核酸プラスミド、並びに構築物等などのポリヌクレオチドの実質的に液体貯蔵のための、溶解可能、又は解離可能なマトリクス材料、及び少なくともこのような二、又は三糖安定剤のこのような組み合わせの使用を想定する。
【0071】
本明細書に開示した特定の実施態様において、生体試料の液体、又は実質的に液体貯蔵のためのマトリクスは、重合体、及び安定剤を含む少なくとも1つマトリクス材料を含み、該重合体は、共有結合性に自己組織化せず、かつ以下の構造を有する:
-[-X-]n-
式中、Xは、-CH3、-CH2-、-CH2CH(OH)-、置換された-CH2CH(OH)-、-CH2CH(COOH)-、置換された-CH2CH(COOH)-、-CH=CH2、-CH=CH-、C1-C24アルキル、若しくは置換されたアルキル、C2-24アルケニル、若しくは置換されたアルケニル、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、又はこれらのランダム、若しくはブロック共重合体であり;かつ、nは、約1〜100、101〜500、501〜1000、1001〜1500、又は1501〜3000の値を有する整数である。このような重合体の合成は、市販されている試薬(例えば、上で議論したようにPVA、又はSigmaAldrich、若しくはFlukaからのその他の試薬、又はNoveon, Inc., Cleveland、OHからのCarbopol(登録商標)重合体、その他)を使用して、及び有機合成のためのFiesersの試薬(Fiesers' Reagents for Organic Synthesis)(T.-L. Ho(編)Fieser、L.F.、及びFieser, M., 1999の文献、John Wiley & Sons, NY)において見いだしたものなどの、確立された手順に従って達成してもよい。
【0072】
「アルキル」とは、直鎖、又は分枝した、非環状、又は環状の、1〜10炭素原子を含む不飽和、又は飽和脂肪族炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖アルキルには、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等を含むが;飽和分枝アルキルには、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル等を含む。代表的な飽和環状アルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含むが;不飽和環状アルキルには、シクロペンテニル、及びシクロヘキセニル等を含む。また、環状アルキルは、本明細書において、「ホモサイクル」、又は「単素環」ともいわれる。不飽和アルキルは、隣接する炭素原子の間に少なくとも1つの二重、又は三重結合を含む(それぞれ、「アルケニル」、又は「アルキニル」といわれる)。代表的な直鎖、及び分枝アルケニルには、エチレニル、プロピルエニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチルエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル等を含むが;代表的な直鎖、及び分枝アルキニルには、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ブチニル等を含む。
【0073】
「アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ等などの酸素ブリッジを介して付着したアルキル部分(すなわち、-O-アルキル)を意味する。
【0074】
「アルキルチオ」は、メチルチオ、エチルチオ等などの硫黄ブリッジを介して付着したアルキル部分(すなわち、-S-アルキル)を意味する。
【0075】
「アルキルスルホニル」は、メチルスルホニル、エチルスルホニル等などのスルホニルブリッジを介して付着したアルキル部分(すなわち-SO2-アルキル)を意味する。
【0076】
「アルキルアミノ」、及び「ジアルキルアミノ」は、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等などの、窒素ブリッジを介して付着された1つ、又は2つのアルキル部分(すなわち、-N-アルキル)を意味する。
【0077】
「アリール」は、フェニル、又はナフチルなどの芳香族炭素環式の部分を意味する。
【0078】
「アリールアルキル」は、ベンジル、-(CH22フェニル、-(CH23フェニル、-CH(フェニル)2等などの、アリール部分で置換された少なくとも1つのアルキル水素原子を有するアルキルを意味する。
【0079】
「ヘテロアリール」は、5〜10員の芳香族複素環を意味し、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも1つヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素原子を含み、一及び二環式の環系を含む。代表的なヘテロアリールは、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、アザインドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、及びキナゾリニルである。
【0080】
「ヘテロアリールアルキル」は、-CH2ピリジニル、-CH2ピリミジニル等などの、ヘテロアリール部分で置換された少なくとも1つアルキル水素原子を有するアルキルを意味する。
【0081】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを意味する。
【0082】
「ハロアルキル」は、トリフルオロメチル等などの、ハロゲンで置換された少なくとも1つ水素原子を有するアルキルを意味する。
【0083】
「複素環」(また「複素環式環」ともいわれる)は、4〜7員を有する単環、又は7〜10員を有する二環式の複素環を意味し、これは、飽和、不飽和、又は芳香族のいずれでもあり、かつこれは、独立して窒素、酸素、及び硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含み、窒素、及び硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されていてもよく、上記複素環のいずれかがベンゼン環に融合されている二環式の環を含む。複素環は、任意のヘテロ原子、又は炭素原子を介して付着されていてもよい。複素環は、上記記載のようなヘテロアリールを含む。従って、上に収載したヘテロアリールに加えて、複素環は、またモルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル等を含む。
【0084】
「ヘテロシクロアルキル」は、-CH2モルホリニル等などの、複素環で置換された少なくとも1つアルキルを有する水素原子アルキルを意味する。
【0085】
「ホモサイクル」(また、本明細書において「単素環」ともいわれる)は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロヘキセン等などの、3〜7炭素原子を含む飽和、又は不飽和の(しかし、芳香族ではない)環状炭素を意味する。
【0086】
本明細書に使用される「置換された」という用語は、少なくとも1つ水素原子が置換基で置換された上記の基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ホモサイクル)のいずれかを意味する。ケト置換基(「-C(=O)-」)の場合、2つの水素原子が置換される。置換される上の基の1つ以上が置換されるときに、本発明の状況の範囲内の「置換基」には、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環、及び複素環アルキル、並びに-NRaRb、-NRaC(=O)Rb-、NRaC(=O)NRaNRb、-NRaC(=O)ORb、-NRaSO2Rb、-C(=O)Ra、-C(=O)NRa、-C(=O)NRaRb、-OC(=O)NRaRb、-ORa、-SRa、-SORa、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2Ra、及び-S(=O)2ORaを含む。加えて、上の置換基は、置換基が置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたアリールアルキル、置換された複素環、又は置換された複素環アルキルであるように、上の置換基の1つ以上で更に置換してもよい。この文脈におけるRa、及びRbは、同じでも、又は異なってもよく、独立して、水素、アルキル、ハロアルキル、置換されたアリール、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、複素環、置換された複素環、複素環アルキル、又は置換された複素環アルキルであってもよい。
【0087】
重合体には、好ましくは同じでも、又は異なってもよい複数の水素結合部分であって、それぞれの水素結合部分が、生体試料中の関心対象の生体分子に存在するであろう、同じか、又は異なる部分と水素結合を形成することができる1つ以上の基を有する水素結合部分を含む。それぞれの水素結合部分は、水素結合形成ドナー、及び/又はアクセプター基を有していてもよい。好ましくは、それぞれの水素結合部分は、ドナー、及びアクセプター基の両方を有する。しかし、水素結合部分がドナー、又はアクセプター基のみを有することも可能である。従って、例えば、単にドナー基のみをもつ水素結合部分を有する重合体を、単にアクセプター基のみをもつ水素結合部分を有する重合体と共に使用してもよい。また、例えば、1つの重合体が、完全にドナー基である水素結合部分、及び完全にアクセプター基である水素結合部分を含んでいてもよい。
【0088】
加えて、好ましい重合体は、1つの水素結合基のみを有するいくつかの単量体単位を有する。このような一官能性単量体は、連鎖停止剤として存在し、重合体の分子量を制御するために使用することができる。これらの一官能性単量体は、重合体を含む単量体材料の総数の10%以下、より好ましくは5%未満にて存在する場合が好ましい。また、1つ以上の水素結合基を含む、本発明に従った重合体は、「少なくとも1つ水素結合を形成することができる」といわれ、その他のポリマー分子と、少なくとも1つの安定剤と、及び/又は生体試料に存在する少なくとも1つの関心対象の生体分子、例えば核酸分子、又はポリペプチド分子と、そうすることができる。それぞれの水素結合の強度は、含まれるドナー、及びアクセプターの性質、並びに官能性に応じて、好ましくは1〜40kcal/molで変化する。好ましくは、同じ、又は異なる部分と水素結合を形成することができる水素結合部分の基は、「置換されたX」部分の形態で提供され、例えば、>C=O、-COO-、-COOH、-O-、-O-H、-NH2、>N-H、>N-、-CONH-、-F、-C=N-基、及びこれらの混合物から適切に選択してもよい。好ましくは、基は、>C=O、-O-H、-NH2、>NH、-CONH-、-C=N-、及びこれらの混合物から選択される。
【0089】
好ましくは、重合体分子は、重合体-重合体水素結合形成に優先的な様式で生体試料の成分と少なくとも1つの水素結合を形成することができてもよいが、これらの発明実施態様は、重合体が共有結合性に自己組織化しない限り、このように限定されない。非限定的な理論に従って、生体試料、マトリクス、及び/又は安定剤の間の相互作用の安定化は、水素結合相互作用により生じる。しかし、その他の非共有結合力は、例えばイオン結合、静電力、ファンデルワールス力、金属配位、疎水性力、及び水素結合部分が1つ以上の芳香環を含むときは、π-πスタッキングなどの結合形にも寄与し得る(Russell, JB.の文献、1999.一般化学(General Chemistry)。第2版。McGraw-Hill, Columbus, OH; Lodish らの文献(編) 2000.分子細胞生物学(Molecular Cell Biology.) 第4版 W. H. Freeman
)。
【0090】
本明細書に記述したとおり、特定の実施態様に従って、重合体は、1つ以上の安定剤と非共有結合性結合ができ、特定のその他の非限定的な実施態様に従って、重合体は、液体貯蔵可能な生体試料に存在し、かつ対象、又は生物源に起源を有する1つ以上の分子種(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、天然に存在するオリゴ糖、天然に存在する脂質等などの生体分子)と非共有結合性結合ができる。このような成分間の非共有結合性結合の決定のための方法論、及び計測手段は、本開示を考慮して、当業者に公知であろうし、エレクトロスプレーイオン化質量分析(Loo らの文献、1989 Anal. Biochem. Jun;179(2): 404-412; Di Tullioらの文献、2005 J. Mass Spectrom. Jul;40(7): 845-865)、拡散NMR分光法(Cohenらの文献、2005 Angew Chem Int Ed Engl. Jan 14;44(4): 520-554)、又は関心対象の分子種間の非共有結合性の会合が容易に、かつ過度の実験なしに証明することができるその他のアプローチ(例えば、生体高分子の円二色性分光法、走査プローブ顕微鏡観察、分光光度法、及び分光蛍光分析、並びに核磁気共鳴などの技術を含み得る;例えば、 Schalley CA らの文献(編)超分子の分析化学(Analytical Methods in Supramolecular Chemistry)、2007, Wiley Publishers, Hoboken, NJ; Sauvage、及びHosseiniの文献(編)、包括的超分子化学(Comprehensive Supramolecular Chemistry)、1996 Elsevier Science, Inc., New York, London, Tokyo; Cragg, PJの文献(編)、超分子化学につての実務ガイド(A Practical Guide to Supramolecular Chemistry)、2005 Wiley & Sons, Ltd., West Sussex, UK; Jamesらの文献(編)、2001及び2005,巨大分子の核磁気共鳴:酵素学における方法(Nuclear Magnetic Resonance of Macromolecules: Methods in Enzymology)(vols. 338, 399 and 394) Academic Press, Ltd., London, UKを参照されたい。
【0091】
(安定剤)
また、液体試料マトリクスは、特定の好ましい実施態様に従って、1つ以上のウェルが少なくとも1つの安定剤、並びに特定の実施態様において、試料を液体マトリクスと接触させる工程の前に存在したのと実質的に同じ生物活性を有する生物学的試料の(例えば、生体試料貯蔵装置からの)回復を安定化し、維持し、保護し、又はさもなければ寄与するように、望ましくはに含まれ得る任意の薬剤を含んでいてもよい少なくとも2つの安定剤を含むような様式で(例えば、試料貯蔵装置において)調製してもよい。安定剤は、特定の実施態様において、本明細書に提供したとおり、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である薬剤を含む。従って、特定の好ましい実施態様において、液体マトリクスは、このような阻害剤、例えば長期貯蔵の間、貯蔵した試料の微生物汚染を阻害するための、細菌、若しくは真菌の成長、生存度、及び/又は定着を阻害し、又は抑制することができる抗真菌薬、及び/又は抗菌薬などの(限定されないが)抗菌薬である少なくとも1つの安定剤を含む。また、本発明の方法に有用であろう安定剤には、ポリカチオン(例えば、Slitaらの文献、J Biotechnol. 2007 Jan 20;127(4): 679-93. Epub 2006 Jul 27を参照されたい)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール;Scopes, R.K.の文献、1994 タンパク質精製:原理、及び実務(Protein Purification: Principals and Practices.)第3版、Springer, Inc., New York)、立体安定剤(アルキル基、PEG鎖、多糖体、アルキルアミンなど;米国特許第7,098,033号)、小分子、及びアミノ酸(例えば、米国特許第7,011,825号を参照されたい)、並びに緩衝液(Scopes, R.Kの文献、1994 タンパク質精製:原理、及び実務(Protein Purification: Principals and Practices.)第3版, Springer, Inc., New York; 現在のプロトコル、タンパク質科学、細胞生物学(Current Protocols, Protein Sciences, Cell Biology)、Wiley and Sons, 2003)を含む。特定の実施態様において、安定剤には、塩、グリセロール、界面活性剤、ポリオール、浸透圧調節物質、カオトロープ、有機溶媒、静電試薬、金属イオン、リガンド、阻害剤、補因子、又は基質、シャペロニン、レドックス緩衝液、ジスルフィドイソメラーゼ、又はプロテアーゼ阻害剤を含み、これらは、タンパク質などの特定の生体試料の溶解を促進してもよい(例えば、米国特許6,057,159号:Scopes, R.Kの文献、1994 タンパク質精製:原理、及び実務(Protein Purification: Principals and Practices.)第3版, Springer, Inc., New York; 現在のプロトコル、タンパク質科学、細胞生物学(Current Protocols, Protein Sciences, Cell Biology)、Wiley and Sons, 2003を参照されたい。
【0092】
本明細書に記述した特定の実施態様に従った好ましい安定剤には、Asanoの文献(2003 Glycobiol. 13(10): 93R-104R)、Knueselらの文献(1998 Comp. Biochem. Physiol. B Biochem. Mol. Biol. 120:639)、Dongらの文献(2001 J. Am. Chem. Soc. 123(12): 2733)、及びKamedaらの文献(1980 J. Antibiot. (Tokyo) 33(12): 1573)によって記述されたトレハラーゼ阻害剤(例えば、スイダトレスチン、バリダマイシンA、バリドキシルアミンA、MDL 26537、トレハゾリン、サルボスタチン、カスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシド)などの、グリコシダーゼ阻害剤である生物学的、又は生化学的阻害剤を含む。これらの発明実施態様におけるこのような阻害剤の使用に関連した予想外の利点は、非限定的な理論に従って、阻害剤と生体試料、マトリクス材料、及び/又は溶媒における1つ以上の生体分子との間の水素結合などの、非共有結合性相互作用に由来すると考えられるこれらの生体分子安定化効果に加えて、これらの阻害剤の抗菌特性に由来する。
【0093】
その他の実施態様において、安定剤は、キチナーゼ阻害剤(例えば、アロサミジン、アルギフィン(argifin)、アルガジン(argadin))、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、バリオラミン、ボグリボース、ノジリマイシン、1-デオキシノジリマイシン、ミグリトール、サラシノール(salacinol)、コタラノール(kotalanol)、NB-DNJ、NN-DNJ、グリコビル(glycovir)、カスタノスペルミン)、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤(例えば、D-ABI、イソファゴミン(isofagomine)、ファゴミン(fagomine))、ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、DANA、FANA、4-アミノ-4-デオキシ-DANA、ザナミビル、BCX 140、GS 4071、GS 4104、ペラミビル)、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤、又はリソソームグリコシダーゼ阻害剤などの別のグリコシダーゼ阻害剤であってもよく、グリコシダーゼ阻害剤の全ての非限定的な例は、Asanoの文献(2003 Glycobiol. 13(10): 93R-104R)によって記述されている。
【0094】
特定の関連した実施態様において、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤を含む安定剤は、還元剤、アルキル化剤、抗菌薬、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、グランザイム阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞分裂阻害剤、細胞周期阻害剤、小分子阻害剤、脂質シグナリング阻害剤、及び/又はプロテアーゼ阻害剤であってもよい。当業者であれば、生体試料の性質、及び関心対象の特定の生理活性に応じて選択され得る広範囲にわたる容易に利用できる阻害剤を知っているだろう。例えば、Calbiochem(登録商標)Inhibitor SourceBook(商標)(2004(第1版)、及び2007(第2版)(EMD Biosciences, La Jolla, CA)を参照されたい。抗菌薬については、例えば、Pickering, LKの文献、編、2003 レッドブック:感染症についての委員会の報告(Red Book: Report of the Committee on Infectious Diseases)第26版、Elk Grove Village, IL, pp. 695-97.;American Academy of Pediatrics, 1998, Pediatrics, 101(1), supplement;消毒滅菌、及び保存(Disinfection Sterilization and Preservation)、Seymour S. Block (編), 2001 Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia;抗菌阻害剤(Antimicrobial Inhibitors)、A.I.Laskin and H. A. Lechevalier, (編), 1988 CRC Press, Boca Raton, FL;消毒、保存、及び滅菌の原理、及び実務(Principles and Practice of Disinfection, Preservation and Sterilization)、A.D.Russellらの文献 (編), 1999, Blackwell Science, Malden, MA;抗菌剤/消毒剤材料(Antimicrobial/ anti-infective materials)、S.P.Sawanらの文献 (編), 2000 Technomic Pub. Co., Lancaster, PA;新規抗菌因子の開発:新興ストラテジー(Development of novel antimicrobial agents:emerging strategies)、K. Lohner,(編), 2001 Wymondham, Norfolk, UK;Conte, J.E.抗生物質、及び感染症のマニュアル(Manual of antibiotics and infectious diseases)(第9版), 2001, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia.を参照されたい。
【0095】
上記の如く、特定の好ましい実施態様において、安定剤は、ファンギジド(fungizide)バリダマイシンAなどのトレハラーゼ阻害剤であってもよく(例えば、Kamedaらの文献、1980 J. Antibiot. (Tokyo) 33(12): 1573;Dongらの文献、2001 J. Am. Chem. Soc. 123(12): 2733;Research Products International Corp., Mt. Prospect, IL, catalog no. V21020から入手可能)、及び特定のその他の実施態様において、安定剤、例えば、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である阻害剤を含む安定剤は、TL-3などのプロテアーゼ阻害剤(Leeらの文献、1998 Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95:939;Leeらの文献、1999 J. Amer. Chem. Soc. 121: 1145;Buhlerらの文献、2001 J. Virol. 75:9502)、N-α-トシル-Phe-クロロメチルケトン、N-α-トシル-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルフォニルフルオライド、又はジイソプロピルフルオロリン酸、又はオルトバナジウム酸ナトリウム、若しくはフッ化ナトリウムなどのホスファターゼ阻害剤であってもよい。
【0096】
本明細書に記述したとおり、液体マトリクスのさらなる利点は、貯蔵容器を反応室として直接使用することができることである。液体状態におけるタンパク質の安定性、及び活性は、pH、塩濃度、及び補因子などの活性要求に依存的であろう。
【0097】
生体試料中に提供され、又は生体試料に由来する生物材料は、(例えば、試料ウェルを、溶媒に溶解され、又は解離された試料、及びマトリクスと同時に接触させることによって)液体状態中の液体マトリクスと組み合わせて、ウェル、又はチューブに添加してもよい。液体マトリクスは、好ましい実施態様において、生化学反応を妨げず、その結果、試料貯蔵装置のウェルにおいて、試料のさらなるプロセシングの前に、例えば、アッセイ、又はその他などの生化学反応の実行前に、マトリクスを生体試料から分離するために精製工程が必要とされない。しかし、精製が必要とされる場合、液体マトリクスは、濾過、遠心分離、イオン交換、サイズ排除、クロマトグラフィー、若しくは相分離、又は当業者に公知のその他の精製法などの当業者に周知の技術を使用して試料から除去することができる。
【0098】
従って、本発明の特定の実施態様では、試料ウェルの、又はマトリクス材料の成分としてトレハロースを含まない生体試料貯蔵装置を明白に想定し、同じように特定の実施態様では、試料ウェル、又はマトリクス材料から、ポリスチレンの、及び/又はヒドロキシエクトインの存在を明白に除外してもよい。しかし、本明細書に開示した予想外の利点からみて、これらは、生体試料貯蔵装置における阻害剤としてのバリダマイシン(例えば、バリダマイシンA、又は本明細書に記述したその他のトレハラーゼ阻害剤)などのトレハラーゼ阻害剤の包含に関連するので、本明細書に想定される特定のその他の実施態様には、以下を含んでいてもよい:トレハロース、ラクチトール、乳糖、マルトース、マルチトール、マンニトール、スクロース、ソルビトール、セロビオース、イノシトール、キトサン、ヒドロキシエクトイン、及び/又はポリスチレンの任意の1つ以上であってもよい第1の安定剤、本明細書に提供したとおりのトレハラーゼ阻害剤、例えばスイダトレスチン、バリダマイシンA、バリドキシルアミンA、MDL 26537、トレハゾリン、サルボスタチン、カスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシドから選択されるトレハラーゼ阻害剤である提供される第2の安定剤が存在する。非限定的な理論に従って、殺真菌薬(例えば、バリダマイシンA)として農業技術において知られているトレハラーゼ阻害剤は、本明細書に開示したように、生体試料貯蔵装置における液体マトリクスと組み合わせて使用したときに、驚くべき安定効果を提供する。或いは、又は溶解可能マトリクスとともにバリダマイシン(又は別のトレハラーゼ阻害剤)の本明細書に開示した使用に加えて、トレハラーゼの阻害剤、又は活性化因子としての活性を有するその他の小分子は、天然の二糖、カルバ糖としても知られる偽糖(pseudo-sugars)、及び/又はトレハラーゼのその他の阻害剤/活性化因子を含む、マトリクス材料に対する、及び/若しくは試料に対するさらなる安定剤として、又は添加物として貯蔵装置に有用に含まれていてもよい。加えて、バリダマイシンなどのトレハラーゼ阻害剤は、これらが長期貯蔵培地を真菌、細菌、又はその他のタイプの望ましくない微生物汚染から保護するという点で、本明細書に開示した特定の実施態様に従った利点を提供する。
【0099】
本発明の特定のその他の実施態様に従った使用が想定されるさらなる安定剤は、本明細書に開示されるように、液体試料マトリクスに存在してもよいが、重合体マトリクス材料に共有結合性に連結されず、また構造(i)-(xv)を含む小分子を含んでいてもよく、以下などのいくつかの公知のアミノ酸側鎖、及び一、二、及び多糖体を含む:
【0100】
【化1】

式中、Rは、-H、-OH、-CH2OH、-NHAc、及び-OAcから選択される。このような組成物は、当該技術分野において公知であり、販の供給元から容易に利用できる。また、本発明の特定のその他の実施態様に従った使用が想定されるさらなる安定剤には、D-(+)-ラフィノース、β-ゲンチオビオース、エクトイン、D-(+)-ラフィノース五水和物、ミオイノシトール、ヒドロキシエクトイン、マグネシウムD-グルコナート、2-ケト-D-グルコン酸ヘミカルシウム塩水和物、D(+)-メレチトース、カルシウムラクトビオナート一水和物、β-乳糖、ツラノース、及びD-マルトースを含んでいてもよい。
【0101】
(検出可能な指示薬)
検出可能な指示薬は、生体試料における酵素(タンパク質分解性、及び/又は核分解性を含む)、呼吸性、代謝性、異化性、結合性、触媒性、アロステリック、高次構造上、又はその他の生化学的、若しくは生物物理学的活性の変化を含むが、限定されず、更に、代謝産物、異化産物、基質、前駆体、補因子等を含むこのような活性の結果として形成されるであろう中間体の間の相互作用を含む、生体試料における、条件、プロセス、経路、誘導、活性化、阻害、制御、動的構造、状態、混入、分解、又はその他の活性、若しくは機能的、若しくは構造的変化に直接関連する任意の検出可能なパラメーターの検出(例えば、当業者に公知であろう適切な対照と比較して、統計的有意性で)、又は同様の決定を可能にする組成物を含む。
【0102】
多種多様な検出可能な指示薬が、当該技術分野において公知であり、特定の試料貯蔵適用における特定の生体試料にとって重要なものであろう特定のパラメーター、又はパラメーター群に応じて、本開示の組成物、及び方法に包含のために選択することができる。このような検出可能な指示薬によって検出してもよいパラメーターの非限定的な例には、アミン、アルコール、アルデヒド、チオール、スルフィド、亜硝酸塩、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na+、K+、Cl-、シアン化物、リン酸、セレン、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、及び微生物の混入物、その他の1つ以上の存在の検出を含む。
【0103】
特定の目的のために選択してもよい検出可能な指示薬(比色の指示薬を含む)の広範な例は、Hauglandの文献、2002 蛍光プローブ、及び研究製品のハンドブック(Handbook of Fluorescent Probes and Research Products)- 第9版、 Molecular Probes, Eugene, OR; in Mohr, 1999 J. Mater. Chem., 9: 2259-2264に;Suslick等の文献、2004 Tetrahedron 60:11133-11138に;、及び米国特許第6,323,039号に記述されている(また、例えば、Fluka Laboratory Products Catalog, 2001 Fluka, Milwaukee, WI; and Sigma Life Sciences Research Catalog, 2000, Sigma, St. Louis, MOも参照されたい)。検出可能な指示薬は、蛍光指示薬、発光指示薬、リン光の指示薬、放射測定指示薬、色素、酵素、酵素基質、エネルギー移動分子、又はアフィニティー標識であってもよい。特定の好ましい実施態様において、検出可能な指示薬は、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ(例えば、部位、又は配列特異的制限エンドヌクレアーゼなどの制限ヌクレアーゼとして使用される制限酵素)、塩化コバルト(水が存在するときの青色から乾燥のときのピンクに変化する湿気指示薬)、Reichardt色素(Aldrich Chemical)、及び蛍光発生プロテアーゼ基質の1つ以上であってもよい。
【0104】
特定の実施態様における検出可能な指示薬には、ポリヌクレオチドポリメラーゼ、及び/又は適切なオリゴヌクレオチドを含んでいてもよく、これらのいずれか、又は両方は、指示薬として、又は特定のその他の実施態様において、本明細書に記述した組成物、及び方法のその他の核酸に基づいた適用の成分として使用してもよい。本発明の特定の実施態様に従った有用なポリメラーゼ(DNAポリメラーゼ、及びRNAポリメラーゼを含む)には、高度好熱菌(Thermus thermophilus:Tth)DNAポリメラーゼ、サームス・アクアチカス(Thermus aquaticus:Taq)DNAポリメラーゼ、サーモロガ・ネオポリタナ(Thermologa neopolitana:Tne)DNAポリメラーゼ、サーモトーガ・マリチマ(Thermotoga maritima:Tma)DNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis:Tli、又はVENT(商標))DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus:Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENT(商標)DNAポリメラーゼ、パイロコッカス・ウォーシイ(Pyrococcu )woosii:Pwo)DNAポリメラーゼ、バシラス・ステロサーモフィルス(Bacillus sterothermophilus:Bst)DNAポリメラーゼ、バシラス・カルドフィルス(Bacillus caldophilus:Bca)DNAポリメラーゼ、スルフォロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius(Sac)DNAポリメラーゼ、サーモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum:Tac)DNAポリメラーゼ、サームス・フラブス(Thermus flavus:Tfl/Tub) DNAポリメラーゼ、サームス・ルバー(Thermus ruber:Tru)DNAポリメラーゼ、サームス・ブロッキアヌス(Thermus brockianus:DYNAZYME(商標))DNAポリメラーゼ、メタノバクテリウム・ サーモオートトロピカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)(Mth)DNAポリメラーゼ、ミコバクテリアDNAポリメラーゼ(mycobacterium:Mtb、Mlep)、並びにこれらの突然変異体、及び変異体、及び誘導体を含むが、限定されない。また、T3、T5、及びSP6、並びにこれらの突然変異体、変異体、及び誘導体などのRNAポリメラーゼも、本発明に従って使用してもよい。
【0105】
本発明に従って使用されるポリメラーゼは、典型的には5'から3'方向に、核酸鋳型から核酸分子を合成することができる任意の酵素であってもよい。本発明に使用される核酸ポリメラーゼは、中温性でも、又は好熱性であってもよく、好ましくは好熱性である。好ましい中温性DNAポリメラーゼは、T7 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノーフラグメントDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIII等を含む。本発明の方法に使用してもよい好ましい耐熱性DNAポリメラーゼは、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffel断片、VENT(商標)、及びDEEPVENT(商標)DNAポリメラーゼ、並びにこれらの突然変異体、変異体、及び誘導体を含む(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,188号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;WO 92/06188;WO 92/06200;WO 96/10640;Barnes, W. M.の文献、Gene 112:29-35 (1992); Lawyerらの文献、PCR Meth. Appl. 2:275-287 (1993); Flamanらの文献、Nucl. Acids Res. 22(15): 3259-3260 (1994))。
【0106】
本明細書において想定される特定の実施態様に使用するためのその他の検出可能な指示薬には、抗体、レクチン、免疫グロブリンFc受容体タンパク質(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインA、プロテインG、又はその他のFc受容体)、アビジン、ビオチン、その他のリガンド、受容体、若しくは反受容体、又はこれらの類似体、若しくは擬態等などの親和性試薬を含む。このような親和法については、例えば放射性核種で、フルオロフォアで、親和性タグで、ビオチン、又はビオチン擬態配列で標識されたもの、又は抗体-酵素抱合体として調製されたものを含む、適切に標識された抗体、又はレクチンなどの免疫計量測定のための試薬を調製してもよい(例えば、Weir, D.M.の文献、実験免疫学のハンドブック(Handbook of Experimental Immunology)、1986, Blackwell Scientific, Boston; Scouten, W.H.の文献、1987 酵素学における方法(Methods in Enzymology)135:30-65; HarlowよびLaneの文献、(Antibodies: A Laboratory Manual, 1988 Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY;Hauglandの文献、蛍光プローブ、及び研究製品のハンドブック(Handbook of Fluorescent Probes and Research Products)- 第9版、2002 Molecular Probes, Eugene,OR;Scopes, R.K.の文献、タンパク質精製:原理、及び実務(Protein Purification:Principles and Practice)、1987, Springer-Verlag, NY;Hermanson, G.T.らの文献、固定されたアフィニティーーリガンド技術(Immobilized Affinity Ligand Techniques)、1992, Academic Press, Inc., NY;Luoらの文献、1998 J. Biotechnol.65:225並びにこれらに引用された参照文献を参照されたい)。
【0107】
本発明の特定のその他の実施態様は、)における生体試料の液体貯蔵のための組成物、及び方法であって、マトリクスが少なくとも1つ、及び特定の関連された実施態様において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の検出可能な指示薬を含み、そのそれぞれが独特かつ容易に定義可能なガスクロマトグラフィー/質量分析(GCMS)タグ分子を含む、組成物、及び方法に関する。多数のこのようなGCMSタグ分子が当該技術分野において知られており、例えば異なる試料貯蔵装置ウェルの別々の貯蔵マトリクスに対して独特のGCM分光測定のプロフィールをコードするための検出可能な識別子部分として、単独で、又は組み合わせて使用するために選択してもよい。例えば、及び限定ではないが、1つ、2つ、又はそれ以上のこのようなGCMSタグの種々の異なる組み合わせを、それぞれのウェルをその中のGCMS「サイン」に基づいて同定することができる様式で、個々のウェルに添加してもよく、これにより、その後に貯蔵装置ウェルから除去される任意の試料を、同定目的のために元のそのウェルまでさかのぼることができる。GCMタグの例には、α,α,α-トリフルオロトルエン、α-メチルスチレン、o-アニシジン、任意の多数の異なるコカイン類似体、又は定義された条件下で容易に定義可能なGCMSサインを有するその他のGCMSタグ化合物、例えばSupelco 2005ガスクロマトグラフィーカタログに記述されたSupelco製品を含む、SPEX CertiPrep Inc. (Metuchen, NJ) から、又はSigmaAldrich(St. Louis, Mo)から入手可能であるものを含む。
【0108】
溶解可能な(又は分離可能な)マトリクスは、例えば、本明細書に記述したような貯蔵装置の一つ、又は複数の試料ウェルに、溶媒中に溶解し、又は分離するマトリクス材料を接触させ、又は投与することにより、生体試料のための貯蔵容器を適用してもよい。生体試料中に提供され、又は生体試料に由来する生物材料は、(例えば、試料ウェルを、溶媒に溶解され、又は解離された試料、及びマトリクスと同時に接触させることによって)液体状態中の液体マトリクスと組み合わせて、ウェル、又はチューブに添加してもよい。溶解可能マトリクスは、好ましい実施態様において、生化学反応を妨げず、その結果、試料貯蔵装置のウェルにおいて、試料のさらなるプロセシングの前に、例えば、アッセイ、又はその他などの生化学反応の実行前に、マトリクスを生体試料から分離するために精製工程が必要とされない。
【0109】
溶解可能マトリクスにおける緩衝液条件は、生体試料の生物活性(例えば、酵素活性、若しくは親和性活性、又は構造保全、又は本明細書に記述し、及び当該技術分野において公知のその他の生物活性)が少なくとも90パーセントを超えて、好ましくは95パーセントを超えて、より好ましくは96、97、98、又は99パーセントを超えて維持されて、苦労して貯蔵容器から試料を除去して、それを別々の容器の反応緩衝液に移す必要を無くすように調整してもよい。特定のこのような発明実施態様は、対応して、貯蔵した試料がアッセイされるたびには特定の生物学的試薬を別々に分注し、及び/また較正する必要が無くなるという予想外の利点を提供する。
【0110】
マトリクス材料は、生物材料の貯蔵、及び保存のために処理してもよい。緩衝液条件の調整,並びに化学物質、及び酵素、及びその他の試薬の添加により、酵素、プロテアーゼ、及び環境要因からの分解に対し、DNA、及びRNA(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E. F.、及びManiatis, T.の文献(1989)分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York; Current Protocols, Nucleic Acid Chemistry, Molecular Biology, Wiley and Sons, 2003)、並びに/又はタンパク質、酵素、及び/若しくはその他の生物材料(例えば、血液、組織、体液)を安定化することができることは、文書で十分に裏付けられている(例えば、現在のプロトコル、タンパク質科学、細胞生物学(Current Protocols, Protein Sciences, Cell Biology)、Wiley and Sons, 2003)。液体貯蔵のためのマトリクス組成物、及び生体試料に対して有益効果をもたらすように特定の化学物質成分を組み合わせるこれらの使用のための方法も想定され、特定の試料、及びその使用に従って変化してもよい。
【0111】
種々のこのような化学物質成分には、当業者が選択し得る所望のpHレベルを維持することができる緩衝液、例えばTris、シトラート、アセテート、ホスフェート、ボラート、HEPES、MES、MOPS、PIPES、カルボナート、及び/若しくはバイカルボナートを含む緩衝液、又はその他の緩衝液(例えば、Calbiochem(登録商標)Biochemicals & Immunochemicals Catalog 2004/2005, pp. 68-69 、及びその中に引用されるページ、EMD Biosciences, La Jolla, CAを参照されたい)、並びに1つ以上の生体試料成分(例えば、生体分子)を維持し、保存し、増強し、保護し、又はさもなければ促進するための塩(例えば、KCl、NaCl、CaCl2、MgCl2、その他)などの適切な溶質、或いは核酸ハイブリダイゼーション特異的な生体分子の特定の活性、又は酵素、抗体、若しくはその他のタンパク質の活性に関して選択され、及び最適化され得る活性緩衝液、又はその他の緩衝液、例えば、トリス緩衝液(THAM、トロメタノール(Trometanol)、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)、Tris-EDTA緩衝液(TE)、塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)、MOPS/酢酸ナトリウム/EDTA緩衝液(MOPS)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、生理学的pHの酢酸ナトリウム緩衝液等を含み得るが、限定されない。
【0112】
液体貯蔵可能な生体試料からの生物活性の回復を有利に増強し得るさらなる化学物質成分には、液体マトリクスが構成される(マトリクス材料とともに)生体適合性溶媒に含まれ得る溶質を含むが、限定されず、このような溶質は、当業者に選択されるであろう所望の等張性、高浸透圧性、又は低浸透圧性の環境、例えば細胞膜の破壊を防止するための等張食塩水液を提供する。それ故、本開示を考慮した当業者であれば、理解できるとおり、液体状態で貯蔵される特定の生体試料、及びこのような試料から回復される特定の生物活性に応じて、試料に関して等張性、高浸透圧性、又は低浸透圧性である生体適合性溶媒と共に液体マトリクスを調合することが望ましいであろう。
【0113】
背景として、浸透圧ショックは、異なる浸透圧溶液に対する細胞の曝露により生じ、この場合、浸透現象には、水に対して両方向に浸透するが、溶質に対しては様々に浸透する選択的浸透性の膜を越える水の総拡散を含み、水は、ある溶液からより低い水ポテンシャルの別の方に拡散する。溶液の浸透圧は、半透膜(すなわち、全ての溶質に対して不浸透性であるが、溶媒に自由に対しては浸透する膜)を越えてその中へ蒸留水が通過するのを防止するために、それによって及ぼされなければならない圧力であり、たいていパスカル(1Pa=1 Newton/m2)で測定される。逆に、水ポテンシャルは、任意の系が、水をその環境に明け渡す正味の傾向である。大気圧における純水の水ポテンシャルは、定義上、0圧力単位であるので、純水に任意の溶質を添加すると、その水ポテンシャルが減少して、その値は負になる。従って、水移動は、より高い(すなわち、あまりネガティブではない)水ポテンシャルである系からより低い(すなわち、よりネガティブの)水ポテンシャルであるものまでがある。
【0114】
それ故、特定の本明細書に開示した実施態様に従って、液体貯蔵可能な生体試料には、液溶体に存在する細胞内部のものよりも高い溶質濃度を有し、従って、水を細胞害に散在する生体適合性溶媒と共に調合されたものなどの、高浸透圧性の液体マトリクス中の細胞の懸濁液を含んでいてもよい。これらの、及び関連した実施態様において、高浸透圧性の液体マトリクスは、細胞内のものなどの膜で境界が定められた(boundaried)液体コンパートメントの溶質濃度と比較したときに、相対的に大きな溶質濃度を有して提供される(例えば、サイトゾルは、液体マトリクスと比較して低浸透圧性である)。このような高張液は、それに対して低浸透圧性であり、かつ対応してより高い浸透圧を有する溶液よりも、低い水ポテンシャルを有する。従って、例えば、低張液は、その溶液に懸濁された細胞内部の溶質濃度よりも低い溶質濃度を有し、従って、水を細胞に散在させる。低張液は、別の溶液よりも低い相対的溶質濃度(すなわち、より高い水ポテンシャル)を有する。特定のその他の実施態様は、細胞内溶質濃度(すなわち、これらの浸透圧によって示されるもの)と同じである溶質濃度を有する等張液であってもよい液体マトリクス製剤に関する。選択的浸透性膜(例えば、細胞膜)による等張液の分離では、溶液が同じ水ポテンシャルを有するので、細胞膜を越えていずれの方向にも水の正味の通過を生じない。
【0115】
液体貯蔵マトリクスに含まれていてもよいその他の化学物質成分には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒト胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、ウシリボヌクレアーゼ阻害剤、ブタリボヌクレアーゼ阻害剤、ピロ炭酸ジエチル、エタノール、ホルムアミド、グアニジウムチオシアナート、バナジル-リボヌクレオシド複合体、マカロイド(macaloid)、プロテイナーゼK、ヘパリン、ヒドロキシルアミン-酸素-第2銅イオン、ベントナイト、硫酸アンモニウム、ジチオスレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール、又は特異的阻害抗体を含む。
【0116】
従って、特定の発明実施態様は、溶媒に溶解し、又は解離するマトリクス材料、少なくとも1つの安定剤、及び試料処理組成物を含む、生体試料の液体貯蔵のためのマトリクスを想定する。試料処理組成物には、後述するような活性緩衝液を含んでいてもく、及び/又は試料処理組成物は、細胞溶解緩衝液、フリーラジカルトラップ薬、試料変性剤、及び病原体-中和剤のうちの1つ以上を含んでいてもよい。これらの実施態様によって提供したとおり、液体貯蔵マトリクスには、従って、例えばマトリクスと試料を接触させる工程を緩衝液にマトリクス材料を溶解し、若しくは解離するのと同時に、又は直後に行う実施態様において、試料がマトリクスに導入されるときに、生体試料に対して所望の処理を行うように調製された成分のセットを含んでいてもよい。
【0117】
活性緩衝液には、試料の1つ以上の成分の機能的、又は構造的特性などの、液体マトリクスに貯蔵された生体試料の所望の用途に適した、濃縮物を含む、液体形態の溶媒、又は溶液を含んでいてもよい。
このような用途の非限定的な例には、1つ以上の酵素活性を決定すること、分子間結合相互作用を決定すること、特異的ポリヌクレオチド、若しくはアミノ酸配列の、又は免疫学的に定義されたエピトープの、又は定義されたオリゴ糖構造の存在を検出すること、特定のウイルスの、又は微生物細胞の、又はヒト、若しくは動物細胞の検出、特定の代謝産物、又は異化産物を決定すること、その他を含んでいてもよく、これらの全ては、適切な活性緩衝液と試料を接触させることによって提供することができる適切な条件を含む、関連した技術において、定義され、及び当業者に公知の条件を使用して達成することができる。
【0118】
細胞溶解緩衝液は、細胞、又は細胞小器官を溶解する(すなわち、境界膜を崩壊させる)ために選択される任意の組成物であってもよく、界面活性剤(例えば、Triton(登録商標)X-100、Nonidet(登録商標)P-40、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコレート、オクチル-グルコピラノシド、ベタイン、又はその他)、及び/又は溶質(例えば、尿素、塩酸グアニジン、グアニジウムイソチオシアナート、高塩濃度)系などの界面活性物質を使用することにより、原形質膜などの細胞膜の浸透圧ショック(例えば、低浸透圧ショック)、及び/又は破壊の原理に基づいた、多くのこのような製剤が当該技術分野で公知である。。多数の細胞溶解緩衝液が知られており、生体試料の、及び生体分子(群)、望ましく回復される生物活性、又は生物構造の、性質の機能として適切に選択することができ、またこれには、いくつかの実施態様において、適切なpH緩衝液、生物学的、又は生化学的阻害剤の選択、及び検出可能な指示薬を含む。
【0119】
試料変性剤は、同様に生体試料、及び液体貯蔵マトリクスの機能として変動してもよいが、試料における関心対象の生体分子の三次元高次構造、四次、三次、及び/若しくは二次構造、溶媒和の程度、表面電荷プロフィール、表面疎水性プロフィール、又は水素結合形成能の少なくとも1つを非共有結合的に変化させる(例えば、未処置の試料などの適切な対照と比較して、統計的有意性をもつ)薬剤を含んでいてもよい。試料変性剤の例には、カオトロープ(例えば、尿素、グアニジン、チオシアナート塩)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、高塩条件、又は変性条件を促進するその他の薬剤、若しくは薬剤の組み合わせを含む。
【0120】
特定の実施態様に使用するためのフリーラジカルトラップ薬には、活性酸素種(ROS)、例えばスーパーオキシド、パーオキシナイトライト、又は水酸基などの、反応性化合物、及び潜在的にその他の反応性種から安定に不対フリーラジカル電子を吸収することができる任意の薬剤を含んでいてもよく、抗酸化剤は、例示的なフリーラジカルをトラップする薬剤である。従って、多種多様な公知のフリーラジカルをトラップする薬剤が、市販されており、本開示の組成物、及び方法の特定の実施態様に含めるために選択してもよい。例には、例えばHalliwell、及びGutteridgeの文献(生物学、及び医薬におけるフリーラジカル(Free Radicals in Biology and Medicine)、1989 Clarendon Press, Oxford, UK, Chapters 5 and 6);Vaninの文献(1999 Meth. Enzymol. 301:269);Marshallの文献(2001 Stroke 32:190);Yangらの文献(2000 Exp. Neurol. 163:39);Zhaoらの文献(2001 Brain Res. 909: 46)、及び他に記載されているように、アスコルベート、βカロチン、ビタミンE、リコピン、tert-ニトロソブタン、α-フェニル-tert-ブチルニトロン、5,5-ジメチルピロリン-N-オキシド、及びその他を含む。
【0121】
上記の如く、特定の実施態様は、本開示の組成物、及び方法における病原体-中和剤の包含を想定し、これは、それが完全に、又は部分的に、しかし、いずれにしても適切な対照と比較して統計的有意性を有する様式で、ヒト、若しくは脊椎動物において疾患、又は障害を生じさせる細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、プリオン、酵母、原生動物、感染因子、又はその他の任意の微生物学的因子などの、病原体の任意の病原性効果を中和し、障害し、妨げ、阻害し、遮断し、予防し、反対に作用し、減少し、減少させ、又はさもなければ遮断することができる任意の薬剤を含む。関連した技術の当業者であれば、本開示に従った使用のために適した病原体-中和剤を認識するであろう。例示的な薬剤には、アジ化ナトリウム、ボラート、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、又はその他の酸化剤、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、エタノール、イソプロパノール、抗生物質、殺真菌薬、ヌクレオシド類似体、抗ウイルス薬化合物、及びその他の殺菌剤を含み;これら、又はその他は、関心対象の特定の生体試料の特性に従って選択され得る。
【0122】
本明細書に記述したような生体試料貯蔵装置を、所望の用途のために選択された1つ以上の付属の試薬と共に含むキットに向けられる実施態様が、本明細書に提供される。任意に、キットは、また、箱、ケース、ジャー、ドラム、引き出し、キャビネット、カートン、担体、ハンドル、ラック、トレー、パン、タンク、バッグ、エンベロープ、スリーブ、筐体、又はその他、任意のその他の適切な容器などを含んでいてもよい。付属の試薬には、本明細書に記述され、及び当該技術分野において公知の1つ以上の溶媒、又は緩衝液を含んでいてもよく、特定の実施態様において活性緩衝液を含んでいてもよい。
【0123】
本発明は、高スループットスクリーニングにおいて、すなわち多数の生体試料の自動化された試験、又はスクリーニングにおいて、主に価値があると考えられる。例えば、活性化合物について、合成、又は天然物ライブラリーをスクリーニングする際に、特に価値を有する。従って、本発明の装置、及び方法は、自動化された、費用効果的な高スループット生体試料試験、又は薬物スクリーニングに受け入れられ、製薬開発計画の広範囲において即時の適用がある。典型的には、及び高スループット薬物スクリーニングなどの、特定の好ましい実施例において、候補薬剤は、化合物、組成物、若しくは分子の「ライブラリー」、又はコレクションとして提供される。このような分子は、典型的には、「小分子」として当該技術分野において公知であり、かつ105ダルトン未満、好ましくは104ダルトン未満、及び更に好ましくは、103ダルトン未満の分子量を有する化合物を含む。候補薬剤は、コンビナトリアルライブラリーのメンバーとして更に提供してもよく、これは、好ましくは、複数の反応器において行われる複数の予め定められた化学反応に従って調製される合成の薬剤を含み、これは、本開示に従った貯蔵装置のウェルとして提供してもよい。例えば、種々の出発化合物は、所与の成分に、複数の反応条件の順列、及び/又は組み合わせを跡をたどって受けさせることができる、固相合成、記録されたランダムミックス法、及び記録された反応分裂技術の1つ以上を使用して調製してもよい。生じる生成物には、ペプチド(例えば、PCT/US91/08694、及びPCT/US91/04666を参照されたい)、又は本明細書に提供したような小分子を含んでいてもよいその他の組成物(例えば、PCT/US94/08542、EP 0774464、US5,798,035、US 5,789,172、US 5,751,629を参照されたい)の合成コンビナトリアルライブラリーを含む、スクリーニングに続いて、反復選択、及び合成手順ができるライブラリーを含む。
【0124】
(生物材料に関連したデータを貯蔵し、トラッキングし、及び回収するためのシステム)
上記の種々の実施態様における前述の貯蔵装置は、ライフサイエンス応用のために、試料貯蔵、及び試料管理の統合を提供するためのその他の技術と組み合わせることができる。本発明の本実施態様は、生体試料貯蔵、位置、トラッキング、プロセシング、及び試料データ管理の統合を可能にする。試料に関するデータは、試料貯蔵装置とデータの直接の物理的関連によって、試料の位置と関連付けることができる。貯蔵した情報は、多段階生物調査プロトコル、生産プロセス、スクリーニング、バイオアッセイ、患者歴、臨床試験データ、及び発生した情報のその他の供与源と組み合わせて、在庫、及び試料のトラッキングによって生じるさらなるデータと共に更新することができる。試料に関連したデータは、マルチユーザー、マルチサイト環境のインターフェースをとることができる安全な階層的ソフトウェア、及びネットワーク建築を介して、伝達し、及び共有することができる。
【0125】
理想的には、試料についての情報は、無線自動識別(RFID)トランスポンダなどの関連する電子インターフェース、好ましくは無線インターフェースにより、試料貯蔵装置と共に組み込まれる。バーコードは、試料を同定するために過去に使用されてきたが、この技術は、それを本発明に使用するために適さなくなってしまうという限界を有する。これらの限界には、情報の伝達のためのバーコードへ照準線を接近させることが必要なこと、限定された情報容量、及びダスト、湿気等の環境要因による干渉を含む。無線自動識別技術は、これらの不利な点を克服する。
【0126】
無線設備を利用する遠隔通信は、典型的には高周波(RF)技術に依存しており、多くの産業で使用されている。RF技術の1つの適用は、動物、在庫、及び媒体など、対象の位置を決め、同定し、及び追跡することである。RF認識タグシステムを開示する刊行物の例には、米国特許第6,696,028号;第6,380,858号;及び第5,315,505号の開示を含む。
【0127】
RF認識(RFID)タグシステムは、遠隔の対象のモニタリングを促進するために開発された。図6に示したように、基本RFIDシステム10は、2つの構成要素:質問機、又は読み取り装置12、及びトランスポンダ(一般に、RFタグと呼ばれる)14を含む。質問機12、及びRFタグ14は、それぞれアンテナ16、18を含む。作動の際に、質問機12は、そのアンテナ16を介して、RFタグ14のアンテナ18に高周波質問シグナル20を伝達する。質問シグナル20を受けることに応答して、RFタグ14は、振幅変調された応答信号22を生じ、後方散乱として知られるプロセスによってタグアンテナ18により質問機12へ伝達し戻される。
【0128】
従来のRFタグ14には、タグアンテナ18と接地点との間に接続された、MOSトランジスタなどの、スイッチ26をもつ振幅変調器24を含む。RFタグ14が、質問シグナル20によって稼働されると、ドライバ(図示せず)は、情報コード、典型的には識別コードに基づいて、変調断続信号27を生じ、RFタグ14の不揮発性メモリ(図示せず)に貯蔵される。変調シグナル27は、スイッチ26の制御端子に適用されて、これによりスイッチ26を交替に開閉させる。スイッチ26が開いているときは、タグアンテナ18が、応答信号22の部分28として質問機12に戻る質問シグナル20の一部を反射する。スイッチ26が閉じているときは、質問シグナル20が、反射されることなくスイッチ26を介して接地点に移動して、これにより応答信号22のヌル部分29を生じる。言い換えると、質問シグナル20は、貯蔵した情報コードの特徴である変調シグナル27に従って質問シグナル20を交互に反射し、及び吸収することによって、応答信号22を生じるように振幅変調される。また、RFタグ14は、スイッチ26が閉じているときに質問シグナルが反射され、スイッチ26が開いているときに吸収されるように、修正することもできる。応答信号22を受けると、質問機12は、応答信号22を復調して、応答信号によって表される情報コードを復号化する。従って、従来のRFIDシステムは、RFタグ14がRF搬送周波数を調整して、RFタグ14が存在する質問機12に指標を提供する単一の頻度発振器で作動する。
【0129】
RFIDシステムの実質的利点は、非接触、非照準線の技術能力である。質問機12は、質問シグナル20を、その電力出力、及び使用される高周波に応じて、1インチから100フィート以上までの範囲で放出する。タグは、バーコード、又はその他の光学的に読み込む技術が役立たないであろう場合、匂い、霧、氷、ペイント、ほこり、及びその他の視覚的、及び環境的に曝露する条件などの種々の物質を介して読み込むことができる。また、RFタグは、際立った速度で読み込むことができ、ほとんどの場合、100ミリ秒未満で反応する。
【0130】
典型的なRFタグシステム10は、たいてい多数のRFタグ14、及び質問機12を含む。RFタグは、3つの主なカテゴリーに分けられる。これらのカテゴリーは、ビームで動く受動的タグ、バッテリ供給される準受動的タグ、及びアクティブタグである。それぞれ、基本的に異なる方法で作動する。
【0131】
ビームで動くRFタグは、それがそれに放射された質問シグナルからその操作のために必要とされるエネルギー引き出すので、受動的装置と呼ばれることが多い。該タグは、電界を整流し、タグそれ自体の反射特徴を変えて、反射率の変化を生じ、これが質問機にて見られる。バッテリ供給される準受動的RFタグも、同じように作動して、通信リンクを発展するように質問機にデルタを反射するために、そのRF横断面を調整する。ここでは、バッテリが、タグの操作力の供与源である。最後に、アクティブRFタグでは、バッテリによって電力供給されるそれ自体の無線周波数エネルギーを作製するためにトランスミッタが使用される。
【0132】
本発明の好ましい実施実施態様において、本システムは、消耗品ハードウエア装置、在庫及び管理ソフトウェア、並びにハードウエア装置及びソフトウェアとの間のRFIDインターフェースの3つの部分からなる。図7を参照して、その中には、上記の貯蔵装置102、好ましくはコンピュータシステム106において実行される在庫、及び管理ソフトウェア構成要素104、並びに貯蔵装置102とソフトウェア106とを結合する無線自動識別インターフェース108を含むように、本発明の一つの実施態様に従って形成されたシステム100を示してある。好ましくは、RFIDインターフェース108は、コンピュータ実行システム106に結合された、貯蔵装置102、及び質問機112と結合されたトランスポンダ100を含む。
【0133】
本実施態様において、トランスポンダ110は、トランスポンダ110を貯蔵装置102の外面に添付することなどにより、試料貯蔵装置102と結合される。しかし、トランスポンダ110は貯蔵装置102が維持されるチューブ、プレート、ラック、又は更に部屋に取り付け、又は結合することができることが理解される。単一のトランスポンダ110を単一の貯蔵装置102と結合することが好ましいが、貯蔵装置102に貯蔵されたそれぞれの特定の試料が、それと結合されたトランスポンダ110を有することもできる。
【0134】
結合は、貯蔵装置102の生産の間にトランスポンダ110が貯蔵装置102に包埋されるように、又は貯蔵装置102に対する接着による貼り付けによってなど、貯蔵装置102が生産された後に、いずれでも達成することができる。磁気は、その種々の実施態様で試料貯蔵装置102に使用される好ましい接続メカニズムであるがゆえに、トランスポンダ110に貯蔵した情報を意図的でなく変化させるのを防止するために、及びトランスポンダ110と質問機112との間の高周波連絡の干渉を防止するために、適切な遮蔽が必要であろうことが本技術の当業者には理解されるであろう。
【0135】
トランスポンダ110は、所有権情報、位置情報、解析情報、生産プロセス、臨床試験行為、合成過程、試料収集、及び試料を管理する際に価値があるであろう当業者に公知のその他の情報を含む、貯蔵装置102に関するデータ、及び貯蔵装置102に貯蔵した試料と共に予めプログラムすることができる。このようなデータを予めプログラムすることに加えて、トランスポンダ110は、そのメモリ内のデータの修正、及び更新を可能にするように構成することができる。加えて、トランスポンダ110は、データの型につき正確なアクセス条件を定義するセキュリティアーキテクチャを含み、読み込み、書き込み、及び更新することを、これにより制限するであろう。例えば、RFIDインターフェース108構成要素は、本明細書に下記に記述したソフトウェアアプリケーションなどの、特定のコンピュータ実行データ処理システムか制御信号を受け、及び反応するように構成することができる。加えて、トランスポンダ110に書き込まれるデータは、認証、及びセキュリティ目的のために暗号化することができる。
【0136】
RFIDトランスポンダ、又はチップの使用は、機能を喪失することなく、広い温度領域(-25℃〜+85℃)の利益を提供する。加えて、トランスポンダ110は、トランスポンダ110と関連する対象を警告し、及び位置を決めるためのシグナリングライト、又は音響音の発生装置などの、遠隔装置に利用することができる。また、トランスポンダ110における情報の貯蔵は、ダメージを受けて、又は失われるであろうコンピュータ実行システム106のデータのさらなるバックアップを提供する。
【0137】
質問機112は、コンピュータ実行システム106に結合された従来の無線自動識別リーダーである。コマンド、及び制御信号がシステム106によって作成されて、1つ以上のトランスポンダ110の質問を開始し、及びそこから反応を受けとり、これがプロセスコンピュータ実行システム106のソフトウェア104によって処理される。1つの配置において、トランスポンダ110は、質問機112からの連絡によってその中に貯蔵されたデータを置き換え、又はアップデートすることにより再プログラムすることができる。
【0138】
一実施例において、1つ以上の質問機112は、トランスポンダ110と共に、マイクロ波信号などの無線周波信号を経て通信するために十分な範囲で施設内に位置する。複数の質問機112を、複数種のトランスポンダ110のために、又は個々のトランスポンダ110と共に使用することができる。或いは、公知の技術を利用する1つの質問機を、経時的様式で、又は同時に複数周波数で複数のトランスポンダ110と通信することができる。試料貯蔵装置102、又は個々の試料を処理する適用において、構造内の種々の位置にて、又は貨物輸送便、電車等などの、コンベアシステム、若しくは輸送システムなどの移動の経路に沿って位置する複数の質問機を使用して、試料の位置、及び状態を追跡することができる。これには、検体、又は貯蔵装置102が位置する温度、湿度、圧力等などの、環境要因を調べることを含む。
【0139】
従って、RFIDインターフェース108は、モニターに拡大すること、及び生物生産プロセス、又は実験工程の実行の間など研究室ロボット等によって操作することにより、研究室に位置する試料、又は貯蔵装置102の動作、及び解析に関連したデータを処理することができる。また、これは、品質管理において、及び自動化、又は半自動化研究プロトコルによって生体試料をプロセシングするのを助ける。
【0140】
上で述べたように、試料貯蔵、及びトラッキングは、試料貯蔵装置上のRFトランスポンダと本明細書に記述したコンピュータ実行システムとの間にRFインターフェースを用いることにより試料の位置を決めることによって促進され、これは、貯蔵架、貯蔵部屋、冷蔵庫、研究室ベンチ、机、又は本棚などの貯蔵位置のタギング、及びモニタリングによって達成される。
【0141】
特定の貯蔵装置102、又は試料を追跡するためには、トランスポンダ110は、貯蔵装置上に位置する瞬く光、貯蔵装置と結合された音響装置、又は人によって、若しくは自動化されたシステムによって認識することができる貯蔵装置の色変化などの遠隔装置を稼働するように構成されて、試料の迅速な回収を可能にする。加えて、トランスポンダ110は、温度、圧力、及び湿度を含むが、限定されない環境条件が予め定められた環境範囲を上回ったときに、遠隔警報を稼働するように構成される。一つの実施態様において、トランスポンダ110は、質問シグナルによって稼働される受動的装置であり、そこから、操作力を引き出す。トランスポンダ110を使用して遠隔装置を稼働し、又は通信範囲を増加させるときに、トランスポンダは、上記の通りに半能動的であり得る。或いは、大量のデータがトランスポンダ110から読み込まれ、又はに書き込まれる、又は所望の通りの範囲を増加するときに、稼働中のトランスポンダを使用することができる。また、範囲は、当技術分野において公知のとおり、周波数による影響を受け、当業者であれば、環境、及び機能的目的に従って適切な周波数レンジを選択するであろう。例えば、特定の検体は、無線信号の特定の周波数に感受性であろうし、このような周波数は、システム100を設計するときに、回避されるか、又は適切に保護された検体であることを必要とするであろう。
【0142】
在庫、及び管理ソフトウェア104は、無線通信システム、及びライフサイエンスに関連したデータの処理で使用するための目的に合わせられる。これは、一つの実施態様においてカ、スタマイズされたユーザインタフェース、及び所定のデータベーステーブルのセットからなる。ユーザは、試料に関連するデータを入力すること、又は外部の供与源から情報を移入することができる。システムの準備を促進するために、所定の表がデータベースに提供されるが、ユーザは、表の中の領域をカスタマイズする選択肢を有することができる。リレーショナルデータベースには、DNA試料、クローン、オリゴヌクレオチド、PCR断片、cDNA、化学化合物、タンパク質、代謝産物、脂質、細胞画分、ウイルス、細菌、又は多細胞生物などの種々の生物体からの生体試料、血液、尿、及び頬側スワブなどの患者試料についての表を含むことができる。詳述した試料情報、及び試料関連データは、表内にプログラムされる。試料情報には、例えば試料源、クローン名、遺伝子挿入名、挿入サイズ、挿入配列、修飾、ベクター名、ベクターサイズ、抗生物質選択、誘導、ターミネーター、クローニング部位、5'-タグ、3'-タグ、精製タグ、オリゴヌクレオチド名、精製、品質管理、フォワードプライマー、リバースプライマー、Tm値、及びサイズ選択を含むことができる。臨床的患者情報には、例えば、年齢、性、位置、人種集団、肥満度指数、家族歴、薬物療法、症状発現のデータ、疾患の期間、及び診断であることができる。試料関連データは、例えばDNA配列決定装置からの配列情報、マイクロアレイチップからの転写プロファイリング情報、ウエスタンブロット法又はインサイチューハイブリダイゼーションからのタンパク質データ、創薬のための生物検定データ、高スループット薬物スクリーニングデータ、化学物質ライブラリー合成データ等などの種々の供与源からの研究データからなることができる。データは、テキスト、数、表、又はイメージの形態で供給することができる。
【0143】
また、ソフトウェアは、その他のデータに供与源をリンクすることができ、GenBank、SwissProt、及びその他の同様のドメインなどのパブリックドメイン、又は専売の供与源からの情報を組み込むことができる。理想的には、ソフトウェアは、プロセス内の試料を追跡するためのロボット設備とインターフェースすることができ、プロセスの追跡は、試料装置内の貯蔵、並びにRFIDトランスポンダ110における貯蔵などのデータベースに対する累積的試料歴として示すことができる。
【0144】
ソフトウェアは、単一のユーザがこれらのデータ、及び情報セットを作成する情報科学基盤を作製するようにデザインされ、これは、最初に局部データベース形式で局所的ワークステーションに貯蔵される。しかし、ソフトウェアは、階層的環境で複数のユーザをリンクすることができる。単一のユーザによって蓄積された情報は、サーバ上の集中データベースシステムに、最適にアップロードすることができる。また、ネットワーク環境の相互作用は、ウェブブラウザインターフェースであることができる。マルチユーザー環境は、マルチサイト環境に拡大することができ、ソフトウェア、及びデータベースは、パーソナルコンピュータ上に、イントラネット内のサーバ上に、又はe-コマースサイトなどのインターネット上に位置することができる。また、アクセス制御、及びログ調節システムも、ソフトウェアにおいて提供される。
【0145】
アプリケーションプロセッサ118を1つ以上の遠隔RFIDタグ122と通信する1つ以上の質問機120とインターフェースするために、ローカルエリアネットワーク116を利用するためのコンピュータ実行システムアーキテクチャ114を、図8に示してある。アプリケーションプロセッサ118は、データベース124に結合される。ローカルエリアネットワークは、インターネットなどの、その代わりに全体的ネットワークであることができることが理解され、この場合、ウェブ基盤のアプリケーションが利用されるであろう。
【0146】
理想的には、一つの実施態様において、在庫、及び管理ソフトウェア104は、フロントエンドソフトウェア構成要素、ミドルウェア構成要素、及びバックエンドソフトウェア構成要素の3つの構成要素を有する。
【0147】
フロントエンドソフトウェアは、「ユーザインタフェース」を作成するために利用されることが想像される。これは、例えば、ウェブブラウザ、Microsoft Excel、又は同様の格子構成要素であることができる。ウェブブラウザソフトウェアは、ウェブ基盤のシステム100のために使用されるであろうが、Microsoft Excelソフトウェアは、デスクトップシステムのために使用されるだろう。選択肢は、複数のユーザ、ネットワークを提供し、何千ものユーザを収容するように拡大することができる。デスクトップ選択肢は、ネットワークを介してデータ、及び試料情報の共有を予想しない単一ユーザにとっては十分である。
【0148】
ミドルウェアには、デスクトップ選択肢としての使用のために開発されたMicrosoft Excelマクロ、若しくは格子構成要素、又は例えばPHPなどのウェブ基盤のシステムの用途に適したプログラム言語によって作成されたカスタムソフトウェアを含むことができる。ミドルウェアは、ユーザの入力、及び問い合わせを受けることができ、かつプリンタ、ディスプレイ、又は音響出力などの、公知の出力を経てユーザにデータベース情報を戻すことができるである一まとまりのプログラムとして構成される。
【0149】
バックエンドソフトウェアは、好ましくは、Microsoft Corporationによって提供され、及びMicrosoft Excelによってホストされる専売データベースソフトであるMicrosoft Accessである。この特定のプログラムは、50,000の記録、及び実行効率低下のレベルを増加すると最高100,000の記録までの記録をサポートするのに十分なデータベース能力を提供する。別の選択肢は、MySQLであり、これは、協力して開発され、Windows、及びLinuxプラットフォームに基づいたものを含む全ての主要なサーバ上で実行する無料で利用可能なフリーウェアデータベースソフトである。このデータベースは、何百万もの記録を扱うことができ、政府機関、大学、及び多国籍企業などの大組織のユーザに適しているであろう。
【0150】
ソフトウェア104は、RFIDインターフェース108に、及びインターフェース108からの受信データ、及び情報に、制御信号を提供するように構成される。加えて、情報がトランスポンダに供給される時に、ソフトウェア104は、当該技術分野において公知で、かつ容易に市販される方法、及び設備を使用して、トランスポンダ110に質問機112を介してデータの書き込みを開始するように構成される。
【0151】
図9は、データベース130がウェブサーバ134を介して複数のデスクトップコンピュータ132に連結される別のシステムアーキテクチャ128を図示する。サーバ134上に常駐するのは、ユーザ、データベース130、及びデスクトップコンピュータ132上に常在するデスクトップソフトウェア136との間の通信層を提供するソフトウェアである。ウェブブラウザインターフェース138により、ユーザは、標準的なUSB接続140を介して、RFIDリーダー142に接続することができる。次いで、ユーザは、高周波通信によって提供される無線接続146を使用して、RFIDリーダー142の読込み、及び書き込み操作、及び遠隔RFIDタグ144を制御することができる。
【0152】
次に図10を参照し、その中には、ウェブサーバ152上のウェブサーバミドルウェア156を介してバックエンドデータベース154にリンクされたフロントエンドのウェブブラウザ158と共にデスクトップコンピュータ150を有する3段アーキテクチャ148を利用する本発明のさらなる実施態様を示してある。ユーザに対するミドルウェアの検索、探索、及びディスプレイ能力。より詳細には、事務論理は、ウェブサーバ152上のミドルウェアプログラム156に含まれる。加えて、(任意に)デスクトップコンピュータ150上のクライアント側プログラム164にUSB接続162を介して接続されたRFIDリーダー160がある。リーダー160を経てRFIDタグ166に読込み、及び書込みを行うクライアント側アプリケーションは、ウェブブラウザ158から稼働される。
【0153】
このアーキテクチャ148の代わりの2段の配置では、デスクトップコンピュータ150上のExcelフロントエンドプログラムがあり、これは、バックエンドにてデータベース154と直接通信する。ここでの事務論理は、Excelマクロプログラムにおいて実施される。この方法は、特に複写、ドラッグ、その他などのExcel機能を利用するために、データ(例えば、プレートのそれぞれのウェルに対応する96列のデータ)をデータベースにロードする際に効率的である。
【0154】
アーキテクチャ148のさらなる代わりの2段配置では、フロントエンドにて独立型クライアントアプリケーション170が、バックエンドにてデータベース154と直接通信する。事務論理は、独立型クライアントアプリケーション内に含まれ、RFIDタグ166からの読み、及び書き込みのためのモジュールは、またこのアプリケーション170内に含まれていてもよい。ここでは、アプリケーショが編集され(ソースコードは、見えない)、及びサードパーティソフト(Excel、ウェブサーバ)が必要でないという利点がある。欠点は、それが、上記の3段アーキテクチャほどネットワーク適合性ではないことである。
【0155】
以下の実施例は、例証によって示され、限定ではない。
【実施例】
【0156】
(実施例1)
(血液の貯蔵)
本実施例は、液体貯蔵可能な生体試料の調製、及び特性付けを記述する。この、及び以下の実施例において、標準的な細胞、及び分子生物学技術を使用し、本質的に公知の方法論に従った(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E. F.、及びManiatis, T.の文献(1989) 分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York; 現在のプロトコル、核酸化学、文政生物学(Current Protocols, Nucleic Acid Chemistry, Molecular Biology)、Wiley and Sons, 2003; 現在のプロトコル、タンパク質科学、細胞生物学(Current Protocols, Protein Sciences)、Cell Biology, Wiley and Sons, 2003)。この、及び以下の実施例における全ての試薬は、特に明記しない限りSigma-Aldrich(St. Louis, Mo)からのものであった。
【0157】
血液の室温貯蔵のためには、10mM Tris pH 8.0を、1%のポリビニルアルコール(PVA、Sigma-Aldrich no. P8136)に基づいた液体貯蔵マトリクスの調製のために使用した。重合体の濃度は、0.1%〜10%(w/v)の範囲で試験した。マトリクスのpHは、pH 5〜8の範囲で試験した。生体試料の簡便な検出のために、フェノールレッドを、0.002%(w/v)で液体マトリクスに添加した。20μlの全血試料を、50μlの1%のPVAに基づいた液体貯蔵マトリクスを調合し、封着し、及び周囲(部屋)温度にてポリプロピレン96ウェルプレートに貯蔵した。同量の全血をマトリクスを含まない封をしたポリプロピレン96ウェルプレートに-20℃にて貯蔵した。4月後、ゲノムDNAを、フェノール/クロロホルムを使用して、凍結、及び室温貯蔵した試料から抽出した。5μlの抽出したDNAの一定分量を、三通りの定量的PCR(QPCR)のために使用した。QPCRは、ABI7300配列検出システム(ABI)でSYBR緑(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA; 「ABI」)技術を使用して行い、ヒトβ-アクチンのためのプライマーは、Primer Express 3.0でデザインした。ヒトβ-アクチンフォワードプライマーのための配列は、5'ACCGAGCGCGGCTACAG[配列番号:1] であり、ヒトβ-アクチンリバースプライマーは、5'CTTAATGTCACGCACGATTTCC[配列番号:2]であった。それぞれの試料には、25μlの総最終的な容量で、5μlの鋳型、6.5μlのPower SYBR緑PCRマスター混合物(ABI)、及び0.5μlのそれぞれのプライマー(10μM終濃度)を含んだ。使用したサイクリングパラメーターは、95℃にて10分間の初期変性、続いて95℃15秒、及び60℃にて1分間の40サイクルであった。結果を図1に示してある。液体貯蔵マトリクスに室温にて貯蔵した血液に由来するゲノムDNAは、貯蔵マトリクスなしの凍結貯蔵血液と比較すると、無傷なゲノムDNAの有意な量を保持したことがQPCRによってアッセイされた。
【0158】
(実施例2)
(RNAの貯蔵)
1μgの一本鎖RNAラダーの試料(New England Biolabs Inc., Beverly、MA;「NEB」)を10μlの1% PVAに基づいた液体貯蔵マトリクスに懸濁し(実施例1において上記の通りに調製した)、同量の対照試料を水に懸濁し両方の標品を周囲(部屋)温度にて実験台の上部に貯蔵した。基本液体貯蔵マトリクス中のさらなる試料を、-20℃にて凍結貯蔵した。6日後、試料には10μlのRNAゲル充填色素(NEB)を補充して、0.8%のアガロースゲル上で電気泳動で分離し、次いで、これを臭化エチジウムで染色してRNAを視覚化した。結果を図2に示してある。水に貯蔵したRNAは、-20℃、又は室温のいずれにおいて保持した液体貯蔵マトリクス中の試料と比較しても、有意に分解された。
【0159】
(実施例3)
(プラスミドDNAの貯蔵)
1ngのpDNA(pUC19)試料(NEB)を1%のPVAに基づいた液体貯蔵マトリクス(実施例1において上記の通りに調製した)に、又は水に再懸濁した。試料を3日間70℃の乾燥器に置いた。対照試料は、-20℃にて水に貯蔵した。PCR解析のために、それぞれの反応を、2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(New England Biolabs, Inc.)、3μlの10×反応緩衝液(NEB)0.5μlのdNTP(それぞれ、10μMのヌクレオチド)、pUC19フォワードプライマー(5'-accgcacagatgcgtaaggag)[配列番号:3]、及びpUC19リバースプライマー(5'-ttcattaatgcagctggcacg)[配列番号:4]をそれぞれ0.2Mの終濃度にて、30μlの最終容量で含んだ。サイクリングパラメーターは、94℃を5分間の初期変性、続いて94℃を15秒間、55℃を30秒間、及び72℃を30秒間の30サイクルであった。PCR反応(10μl)を、0.8%のアガロースゲル電気泳動、続く臭化エチジウム染色によって解析した。結果を図3に示してある。室温で水に貯蔵したプラスミドDNAの完全性は、材料を増幅することができなかったので、明らかに損なわれた。しかし、液体貯蔵マトリクスに維持されるプラスミドDNAの完全性は、十分であり、その結果、貯蔵した材料は、対照試料と比較して、増幅効率が有意に喪失することなく、増幅することができた。
【0160】
(実施例4)
(酵素の貯蔵)
2.5UのTaqポリメラーゼ(NEB)の試料を、10μlの1% PVAに基本液体貯蔵マトリクス(実施例1において上記の通りに調製した)、又は10μl水を添加し、21日間25℃、又は50℃(急速老化条件)にて貯蔵した。Taqポリメラーゼのさらなる試料を、正の対照として-20℃に保存した。PCR解析のために、それぞれの反応を、50ng pUC19プラスミドDNA、3μlの10×反応緩衝液(NEB)、0.5μlのdNTP(それぞれ10μMのヌクレオチド)、pUC19フォワードプライマー(5'-accgcacagatgcgtaaggag)[配列番号:3]、及びpUC19リバースプライマー(5'-ttcattaatgcagctggcacg)[配列番号:4]をそれぞれ0.2Mの終濃度にて、30μlの最終容量で含んだ。サイクリングパラメーターは、94℃を5分間の初期変性、続いて94℃を15秒間、55℃を30秒間、及び72℃を30秒間の30サイクルであった。PCR反応(10μl)を、0.8%のアガロースゲル電気泳動、続く臭化エチジウム染色によって解析した。結果を図4に示してある。室温(25℃)、又は50℃のいずれにて液体貯蔵マトリクスに貯蔵したTaqポリメラーゼも、PCR反応において酵素活性があったが、一方で、水に貯蔵した酵素は、核酸を増幅することができず、酵素機能、及び完全性の喪失を示した。
【0161】
(実施例5)
(細菌細胞の貯蔵)
pFIV-Cプラスミド(13kb)を収容するStbl2大腸菌(E. coli)(Invitrogen、Carlsbad, CA)の液体の一晩培養物を使用した。5μl培養の試料を、チューブに20μlの1%のPVA基本液体貯蔵マトリクス(実施例1において上記の通りに調製した)、又は液体Luriaブロス(LB)と混合して、2月間室温で貯蔵した。次いで、試料を3mlのLB/アンピシリン(10mg/ml)に播種するために使用し、37℃にて18時間シェーカー上で一晩培養した。プラスミドDNAは、アルカリ法を使用して抽出した(Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)。次いで、精製したプラスミドDNAをEcoRI(NEB)で消化して、0.8%のアガロースゲル上で対照プラスミドDNAと一緒に泳動し、次いでこれを臭化エチジウムで染色した。結果を図5に示してある。予想されるサイズのプラスミドDNAが、グリセロール株(正の対照)から、又は室温で液体マトリクス貯蔵に維持した細胞に由来する細菌から検出された。正確なサイズのバンドは、室温で、LBに貯蔵した細胞に由来する試料にはなく、細菌がこのような条件下で維持されたときに、プラスミドの喪失を示した。
【0162】
上記のことから、いうまでもなく、本発明の具体的実施態様は、例証のために本明細書に記述されており、種々の修正を本発明の精神と範囲から逸脱せずに行ってもよい。従って、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、本発明は、限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯蔵可能な生体試料であって:
(a)生体試料;
(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;及び、
(c)少なくとも1つの安定剤、
を含み、
(a)、(b)、及び(c)は、流体中で、冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ
該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間、冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項2】
少なくとも2つの安定剤を含む、請求項1の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項3】
前記少なくとも1つの安定剤がトレハラーゼ阻害剤を含む、請求項1の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項4】
前記マトリクス材料が、ポリビニルアルコールを含む、請求項1の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項5】
前記少なくとも1つの安定剤が、
(i)トレハラーゼ阻害剤、
(ii)キチナーゼ阻害剤、
(iii)α-グルコシダーゼ阻害剤、
(iv)グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、
(vi)ノイラミニダーゼ阻害剤、
(vi)セラミドグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤、及び、
(vii)リソソームグリコシダーゼ阻害剤、
からなる群から選択されるグリコシダーゼ阻害剤を含む、請求項1の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項6】
前記トレハラーゼ阻害剤がスイダトレスシン、バリダマイシンA、バリドキシルアミンA、MDL 26537、トレハゾリン、サルボスタチン、及びカスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシドからなる群から選択される、請求項3、又は請求項5記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項7】
前記マトリクス材料が、前記生体適合性溶媒に溶解される、請求項1〜5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項8】
少なくとも1つの安定剤が生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である阻害剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項9】
前記マトリクス材料がポリビニルアルコールを含む、請求項1〜3、及び5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項10】
前記液体マトリクスが約0.1%〜約10質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項11】
前記液体マトリクスが約0.5%〜約5質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液を含む、請求項10の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項12】
前記液体マトリクスが約1%〜約5質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液を含む、請求項10の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項13】
前記液体マトリクスが約0.5%〜約1.5質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液を含む、請求項10の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項14】
前記液体マトリクスが:
(i)約1質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液、
(ii)約3質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液、
(iii)約5質量対容量%のポリビニルアルコールを含む溶液、
(iv)約1質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約5質量対容量%のトレハロースを含む溶液、
(v)約1質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約5質量対容量%のバリダマイシンを含む溶液、並びに、
(vi)約1質量対容量%のポリビニルアルコール、約5質量対容量%のトレハロース、及び約5質量対容量%のバリダマイシンを含む溶液、
からなる群から選択される溶液を含む、請求項10の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項15】
前記液体マトリクスが:
(i)約1質量対容量%〜約5質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約5%質量対容量%のトレハラーゼの阻害剤を含む溶液、
(ii)約1質量対容量%のポリビニルアルコール、及び約1%〜約10質量対容量%のトレハラーゼ阻害剤、並びに、
(iii)約1質量対容量%のポリビニルアルコール、約5質量対容量%のトレハロース、及び約5%質量対容量%のトレハラーゼ阻害剤を含む溶液、
からなる群から選択される溶液を含む、請求項10の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項16】
前記トレハラーゼ阻害剤がスイダトレスシン、バリダマイシンA、バリドキシルアミンA、MDL 26537、トレハゾリン、サルボスタチン、及びカスアリン-6-O-α-D-グルコピラノシドからなる群から選択される、請求項15記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項17】
マトリクス材料が、ポリエチレングリコール、アガロース、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリフェニレンオキシド、架橋されたアクリルアミド、ポリメタクリレート、カーボンナノチューブ、ポリ乳酸、ラクチド/グリコライド共重合体、ヒドロキシメタクリル酸共重合体、カルシウムペクチナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート、ヘパリンサルフェートプロテオグリカン、ヒアルロン酸、グルクロン酸、トロンボスポンジン-1 N末端のヘパリン結合ドメイン、フィブロネクチン、ペプチド/水溶性重合体改質剤抱合体、及びコラーゲンからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1〜3、及び5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項18】
前記トレハラーゼ阻害剤がバリダマイシンを含む、請求項13、及び5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項19】
前記生体試料が:
(i)DNA、RNA、タンパク質、ポリペプチド、脂質、炭水化物、複合糖質、オリゴ糖、及び多糖体からなる群から選択される単離された生体分子、
(ii)哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、植物細胞、動物細胞、細菌、微生物、酵母細胞、ウイルス、ワクチン、血液、尿、体液、環境試料、及び頬側スワブからなる群から選択される生物材料、並びに、
(iii)生物活性小分子、
の少なくとも1つを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項20】
液体貯蔵可能な生体試料であって:
(a)生体試料;
(b)生体適合性溶媒に溶解されたポリビニルアルコールを含む液体マトリクス;及び、
(c)バリダマイシンを含む少なくとも1つの安定剤、
を含み、
(a)、(b)、及び(c)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項21】
所望のpHを維持することができる緩衝液を更に含む、請求項の1〜5、及び20いずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項22】
前記緩衝液がトリス、シトラート、アセテート、ホスフェート、ボラート、HEPES、MES、MOPS、PIPES、カルボナート、及びバイカルボナートからなる群から選択される化合物を含む、請求項21の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項23】
前記生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤が、バリダマイシンA、TL-3、オルトバナジウム酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N-α-トシル-Phe-クロロメチルケトン、N-α-トシル-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルフォニルフルオライド、及びジイソプロピルフルオロリン酸からなる群から選択される、請求項8の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項24】
前記生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤が、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、グランザイム阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞分裂阻害剤、細胞周期阻害剤、脂質シグナリング阻害剤、及びプロテアーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項8の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項25】
前記生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤が還元剤、アルキル化剤、及び抗菌薬からなる群から選択される、請求項8の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項26】
少なくとも1つの検出可能な指示薬を含む、請求項1〜5、及び20のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項27】
前記検出可能な指示薬が比色指示薬を含む、請求項26の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項28】
前記検出可能な指示薬が1つ以上のGCMSタグ化合物を含む、請求項26の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項29】
前記検出可能な指示薬が蛍光指示薬、発光指示薬、リン光指示薬、放射測定指示薬、色素、酵素、酵素基質、エネルギー移動分子、及びアフィニティー標識からなる群から選択される、請求項26の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項30】
前記検出可能な指示薬がアミン、アルコール、アルデヒド、チオール、スルフィド、亜硝酸、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na+、K+、Cl-、シアン化物、リン酸、及びセレンの少なくとも1つの存在を検出可能に示すことができる、請求項26の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項31】
前記検出可能な指示薬が、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、塩化コバルト、Reichardt色素、及び蛍光発生プロテアーゼ基質からなる群から選択される、請求項26の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項32】
前記液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性が(i)少なくとも1週、(ii)少なくとも1月、(iii)少なくとも6月、(iv)少なくとも9月、(v)少なくとも12月、(vi)少なくとも18月、及び(vii)少なくとも24月からなる群から選択される期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、請求項1〜5、及び20のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項33】
液体貯蔵可能な生体試料であって:
(a)生体試料;
(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;及び
(c)少なくとも1つの安定剤、
を含み、
(a)、(b)、及び(c)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ
液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能であり:
(I)(b)のマトリクス材料は、共有結合性に自己組織化せず、かつ以下の構造を有する:
-[-X-]n-
式中、Xは、-CH3、-CH2-、-CH2CH(OH)-、置換された-CH2CH(OH)-、-CH2CH(COOH)-、置換された-CH2CH(COOH)-、-CH=CH2、-CH=CH-、C1-C24アルキル、若しくは置換されたアルキル、C2-24アルケニル、若しくは置換されたアルケニル、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、又はこれらの無作為、若しくはブロック共重合体であり;
かつ、nは、約1〜100、101〜500、501〜1000、1001〜1500、又は1501〜3000の値を有する整数であり;
並びに、
(II)該安定剤は、該重合体に対して共有結合性に連結されておらず、かつトレハロース、トレハラーゼ阻害剤、又はD-(+)-ラフィノース、β-ゲンチオビオース、エクトイン、D-(+)-ラフィノース五水和物、ミオ-イノシトール、ヒドロキシエクトイン、マグネシウムD-グルコナート、2-ケト-D-グルコン酸ヘミカルシウム塩水和物、D(+)-メレチトース、カルシウムラクトビオナート一水和物、β-乳糖、ツラノース、及びD-マルトースからなる群から選択される化合物を含む、前記液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項34】
前記重合体が、少なくとも1つの安定剤と非共有結合性の結合ができる、請求項33の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項35】
前記重合体が、核酸分子及びポリペプチドの少なくとも1つと非共有結合性の結合ができる、請求項33の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項36】
生体試料を貯蔵する方法であって:
(a)液体貯蔵可能な生物学的試料を得るために、生体試料と、(i)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料、及び(ii)少なくとも1つの安定剤を含む液体マトリクスとを接触させること;並びに、
(b)冷蔵することなく少なくとも1日の期間の間、該液体貯蔵可能な生体試料を維持すること、
を含み、
該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記方法。
【請求項37】
前記期間の間冷蔵することなく貯蔵後に、前記生体試料の分解が、前記マトリクス材料の非存在下で該期間の間冷蔵することなく前記生体適合性溶媒中に維持された対照生体試料の分解と比較して減少される、請求項36の方法。
【請求項38】
前記期間の間冷蔵することなく貯蔵後に、前記生体試料の分解が、前記マトリクス材料、及び前記安定剤の少なくとも1つの非存在下で該期間の間冷蔵することなく前記生体適合性溶媒中に維持された対照生体試料の分解と比較して減少される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
前記接触させる工程が、前記溶媒に前記マトリクス材料を同時に溶解し、又は分離することを含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
前記接触させる工程が、前記溶媒に前記マトリクス材料を溶解し、又は分離することに先行される、請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記接触させる工程が、前記溶媒に前記マトリクス材料を溶解し、又は分離することに続く、請求項36記載の方法。
【請求項42】
1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料のための液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造する方法であって:
(a)生体試料貯蔵装置の1つ以上の試料ウェルに液体マトリクスを投与する工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)該液体マトリクスは、(i)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料;及び(ii)少なくとも1つの安定剤を含む、前記工程;
(b)工程(a)と同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、該試料ウェルの1つ以上に生体試料を投与する工程;並びに、
(c)工程(b)の後に、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく該液体マトリクス、及び該生体試料を含む生体試料貯蔵装置を維持する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、前記時間後に回復可能である、前記工程を含み、これにより液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記投与する工程が、前記マトリクス材料、及び前記溶媒を含む液溶体、又は液体懸濁液を投与することを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
少なくともの1つのウェルが、少なくとも1つの検出可能な指示薬を含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
前記検出可能な指示薬が比色指示薬を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記検出可能な指示薬が1つ以上のGCMSタグ化合物を含む、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記検出可能な指示薬が、蛍光指示薬、発光指示薬、リン光の指示薬、放射測定指示薬、色素、酵素、酵素基質、エネルギー移動分子、及びアフィニティー標識からなる群から選択される、請求項44記載の方法。
【請求項48】
前記検出可能な指示薬が、アミン、アルコール、アルデヒド、チオール、スルフィド、亜硝酸塩、アビジン、ビオチン、免疫グロブリン、オリゴ糖、核酸、ポリペプチド、酵素、細胞骨格タンパク質、活性酸素種、金属イオン、pH、Na+、K+、Cl-、シアン化物、リン酸、及びセレンの少なくとも1つの存在を検出可能に示すことができる、請求項44記載の方法。
【請求項49】
前記検出可能な指示薬が、フェノールレッド、臭化エチジウム、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、塩化コバルト、Reichardt色素、及び蛍光発生プロテアーゼ基質からなる群から選択される、請求項44記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1つのウェルが、生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である少なくとも1つの安定剤を含む、請求項42記載の方法。
【請求項51】
貯蔵した生体試料を回収する方法であって:
(a)1つ以上の液体貯蔵可能な生物学的試料を得るために、同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、生体試料貯蔵装置において、1つ以上の生体試料を、生体試料の貯蔵のための液体マトリクスと接触させる工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)該生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)該マトリクスは、(i)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料、及び(ii)少なくとも1つの安定剤を含む、前記工程;
(b)前記接触工程の後に少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく該生体試料貯蔵装置を維持する工程;並びに、
(c)該生体試料貯蔵装置から1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料を除去する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記工程を含み、これにより前記貯蔵した生体試料を回収する、前記方法。
【請求項52】
前記維持する工程後の試料の生物活性が、前記接触させる工程の前の試料の生物活性と実質的に同じである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記生体適合性溶媒が活性緩衝液である、請求項51記載の方法。
【請求項54】
液体貯蔵可能な生体試料であって:
(a)生体試料;
(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;
(c)少なくとも1つの安定剤;及び
(d)活性緩衝液、
を含み、
(a)、(b)、(c)、及び(d)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触され、
該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記生体試料。
【請求項55】
前記活性緩衝液が、pH緩衝液、フリーラジカルをトラップする薬剤、及び病原体中和剤からなる群から選択される組成物を含む、請求項54記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項56】
生体試料を貯蔵する方法であって:
(a)液体貯蔵可能な生体試料を得るために、生体試料、及び液体マトリクスを接触させる工程であって、該液体マトリクスは、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む、前記工程;及び、
(b)冷蔵することなく少なくとも1日の期間の間、該液体貯蔵可能な生体試料を維持する工程を含み、
液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記方法。
【請求項57】
前記生体試料の分解が、前記マトリクス材料の非存在下で冷蔵することなく前記生体適合性溶媒に維持した対照生体試料の分解と比較して減少される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記接触させる工程が、前記溶媒に前記マトリクス材料を同時に溶解し、又は分離することを含む、請求項56記載の方法。
【請求項59】
前記接触させる工程が、前記溶媒に前記マトリクス材料を溶解し、又は分離することに先行される、請求項56記載の方法。
【請求項60】
前記接触させる工程が、前記溶媒に前記マトリクス材料を溶解し、又は分離することに続く、請求項56記載の方法。
【請求項61】
1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料のための液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造する方法であって:
(a)液体マトリクスを生体試料貯蔵装置の1つ以上の試料ウェルに投与する工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)該マトリクスは、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む、前記工程;並びに、
(b)工程(a)と同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、試料ウェルの1つ以上に生体試料を投与する工程;並びに、
(c)工程(b)後に、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく液体マトリクス、及び該生体試料を含む生体試料貯蔵装置を維持する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、前記時間後に回復可能である、前記工程を含み、これにより液体貯蔵可能な生体試料貯蔵装置を製造する、前記方法。
【請求項62】
前記投与する工程が、前記マトリクス材料、及び前記溶媒を含む液溶体を投与することを含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
貯蔵した生体試料を回収する方法であって:
(a)1つ以上の液体貯蔵可能な生物学的試料を得るために、同時に、又は連続して、及びいずれかの順序で、生体試料貯蔵装置において、1つ以上の生体試料を、生体試料の貯蔵のための液体マトリクスと接触させる工程であって、(1)前記生体試料貯蔵装置は、(i)蓋、及び(ii)該生体試料を含むことができる1つ以上の試料ウェルを含む試料プレートを含み、かつ(2)該マトリクスは、生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む、前記工程;
(b)該接触工程の後に、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく該液体マトリクス、及び該生体試料を含む生体試料貯蔵装置を維持する工程;並びに、
(c)該生体試料貯蔵装置から1つ以上の液体貯蔵可能な生体試料を除去する工程であって、該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ての生物活性は、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記工程を含み、これにより前記貯蔵した生体試料を回収する、前記方法。
【請求項64】
前記維持する工程後の試料の生物活性が、前記接触させる工程の前の試料の生物活性と実質的に同じである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記生体適合性溶媒が活性緩衝液を含む、請求項63記載の方法。
【請求項66】
前記マトリクス材料がポリビニルアルコールを含む、請求項36、42、51、56、61、及び63のいずれか1項記載の方法。
【請求項67】
液体貯蔵可能な生体試料であって:
(a)生体試料;
(b)生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス;及び
(c)試料処理組成物、
を含み、
(a)、(b)、及び(c)は、流体中で冷蔵することなく少なくとも1日間、互いに接触されており、かつ
該液体貯蔵可能な生体試料の実質的に全ては、少なくとも1日の期間の間冷蔵することなく貯蔵後に回復可能である、前記液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項68】
前記試料処理組成物が、活性緩衝液、細胞溶解緩衝液、フリーラジカルをトラップする薬剤、試料変性剤、及び病原体中和剤からなる群から選択される組成物を含む、請求項67の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項69】
等張性、高浸透圧性、又は低浸透圧性であるように調合される、請求項1、20、33、及び54並びに67のいずれか1項記載の液体貯蔵可能な生体試料。
【請求項70】
前記液体貯蔵可能な生体試料が等張性、高浸透圧性、又は低浸透圧性であるように調合される、請求項36、42、51、56、61、及び63のいずれか1項記載の方法。
【請求項71】
生体試料の安定剤を同定する方法であって:
(a)冷蔵することなく少なくとも1日間、候補薬剤の存在下において生体適合性溶媒に溶解され、又は解離されたマトリクス材料を含む液体マトリクス中に生体試料を貯蔵する工程;
(b)該生体試料を回収する工程;
(c)該生体試料の生物活性を、該候補薬剤の非存在下で液体マトリクス中に冷蔵することなく少なくとも1日間貯蔵されている対照試料の生物活性と比較する工程であって、該候補薬剤の存在下に貯蔵されている生体試料による生物活性の実質的に全ての保持、及び該候補薬剤の非存在下で貯蔵されている対照試料による生物活性の喪失は、該候補薬剤が生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤であることを示す、前記工程を含み、これにより該生体試料の安定剤を同定する、前記方法。
【請求項72】
前記安定剤が生物学的阻害剤、又は生化学的阻害剤である、請求項71記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−524505(P2010−524505A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506462(P2010−506462)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/061332
【国際公開番号】WO2009/009210
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509294092)ビオマトリカ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】