説明

ライブラリ装置、及びライブラリ装置における複数の冷却ファンの回転数制御方法

【課題】複数のODDを有するライブラリ装置において、複数の冷却ファンの回転に伴う機械的な共振による振動を低減する。
【解決手段】冷却ファン制御部は、複数の冷却ファンの回転数を互いに素とするように制御する。必要に応じて、ODDが有するスピンドルモータの回転数と、複数の冷却ファンの回転数を互いに素とするように制御する。これにより、各回転数の公約数の機械的な共振による振動を防止し、ODDにおける転送速度が低下する問題を解消する。ライブラリ装置の各構成要素の温度に応じて各冷却ファンの回転数を制御し、装置の内部の温度ムラを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の記録媒体ドライブを有するライブラリ装置に係り、特に冷却ファンの回転に伴う機械的な共振を低減したライブラリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば画像処理装置、情報記録再生装置は、内部の温度上昇を抑圧するための冷却装置を有することがある。また、冷却装置は複数の冷却ファンを備えることがある。冷却ファンの回転数に関しても単に一定であるとは限らず、使用する状況に応じて複数の冷却ファンを異なる速度で回転させる例が知られている。
特許文献1においては、温度センサを備え各温度センサが検出した温度と基準値との差に基づいて複数の冷却ファンを異なる回転数で運転し、風量を制御するPDP(Plasma Display Panel)装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−242340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば複数のHDD(Hard Disc Drive)、又はODD(Optical Disk Drive)を搭載した情報記録再生のためのライブラリ装置においては、冷却効果を向上するために複数の冷却ファンが搭載されることが多い。この場合、各冷却ファンにおける回転数の関係に対して特に配慮をせずに回転制御を行うと、各々の回転数に応じた機械的な共振を発生することがある。また、冷却ファンと記録媒体ドライブの回転数に応じた共振も、同様にして発生することがある。これにより、記録媒体ドライブに大きな振動が与えられて情報記録再生の動作が妨害され、転送速度が低下する問題がある。特許文献1は、この問題については特に配慮をしていない。
本発明の目的は前記した問題に鑑み、冷却ファンの回転に伴う機械的な共振を低減したライブラリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明は、複数の記録媒体ドライブを有し、複数の記録媒体を装着する記録媒体格納容器が着脱されるライブラリ装置であって、前記ライブラリ装置の内部を冷却する複数の冷却ファンと、前記記録媒体を前記記録媒体ドライブと前記記録媒体格納容器との間で搬送する記録媒体搬送部と、前記ライブラリ装置の全体の動作を制御する制御部とを有し、当該制御部は、前記複数の冷却ファンの回転数を互いに素であるよう制御することを特徴としている。
【0006】
また本発明は、複数の記録媒体ドライブを有し、複数の記録媒体を装着する記録媒体格納容器が着脱されるライブラリ装置における複数の冷却ファンの回転数制御方法であって、前記複数の冷却ファンの回転数を計測する回転数計測ステップと、前記複数の記録媒体ドライブの温度を所定時間おきに測定する温度測定ステップと、当該温度測定ステップにおける前記複数の記録媒体ドライブの温度測定値に基づき前記複数の冷却ファンの回転数を設定する回転数設定ステップとを有し、前記回転数設定ステップは、前記複数の冷却ファンの回転数を互いに素であるよう設定し、かつ、前記回転数設定ステップで設定された回転数と前記回転数計測ステップで計測された回転数を比較し、回転数が追従しない場合には、前記複数の冷却ファンの回転数を互いに素である他の値に再設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却ファンの回転に伴う機械的な共振を低減したライブラリ装置を提供でき、例えば画像処理装置、情報記録再生装置の基本性能の向上に寄与できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施例におけるライブラリ装置の正面側の概観図である。
【図2】一実施例におけるライブラリ装置の背面側の概観図である。
【図3】一実施例におけるライブラリ装置のブロック図である。
【図4】一実施例におけるライブラリ装置の第1のフロー図である。
【図5】一実施例におけるライブラリ装置の第2のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例につき図面を用いて説明する。
まず、ライブラリ装置の構造と動作の概要を説明する。本実施例において、ライブラリ装置が有する記録媒体ドライブとしては、前記したようなHDD、ODDのみならず、半導体メモリを記録媒体とするSDD(Solid State Drive)をはじめ、多用なドライブを使用することができる。ここでは、一例としてODDを使用する場合を説明する。
【0010】
周知のとおり、ODDが使用する記録媒体は、ドライブに対して着脱できる光ディスクである。光ディスクには、例えばCD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disk)がある。また光ディスクには、データの読出しのみができるROM型(例えばCD−ROM)、一回のみデータの書込みができるR型(例えばBD−R)、データの書換えができるRE、RAM、又はRW型(例えばBD−RE)がある。本実施例においては、これら全ての光ディスクを使用できるライブラリ装置であっても良く、また一部の光ディスクを使用するライブラリ装置であっても良い。
以下の説明では、光ディスクを単にディスクと記載する。
【0011】
図1は、一実施例におけるライブラリ装置1の正面側の概観図である。ここでは、ライブラリ装置1の一部の外装を除去し、正面斜め上側から見た状態を示している。ここで言う正面側とは、ディスク格納容器の出入口151のある側を指している。
ライブラリ装置1に対して着脱できるディスク格納容器15は、ディスク格納容器の出入口151からライブラリ装置1の奥行方向に挿入され、また排出される。挿入と排出の動作はユーザが手動で行っても良く、ライブラリ装置1がある程度の電動アシスト動作を行っても良い。ディスク格納容器15には、ディスク152を複数(例えば数百枚程度)搭載することができる。図1では一例として、複数のディスク152が互いにレーベル面と記録面を対向させながら、略垂直に立てて搭載される場合を示している。光ディスクは片面記録ディスクに限らず、両面記録ディスクであっても良い。この場合、ディスク格納容器15の内部の底面には、ディスク152を位置決めするためのスリット(図示せず)を設けると良い。
【0012】
ここでは、後記するディスク搬送部132を挟んで左右両側に2個のディスク格納容器15が使用される例を示している。これは一例であって、例えば1個であっても良い。また2個の場合では、いずれか一方のみを挿入した状態であっても、ライブラリ装置1は目的とした動作を行うことができる。
ディスク格納容器15がライブラリ装置1に装着されると、その奥行側の先端はディスク記録再生部12の近辺に位置する。
【0013】
ディスク記録再生部12は、ディスク格納容器15と同様に、ディスク搬送部132を挟んで左右両側に2個設けられている。ディスク記録再生部12はODDを有する。各ディスク記録再生部12が有するODDは1個でも良いが、動作速度を高めるためには複数(例えば数個程度)であると良い。各ODDは周知のとおり、装着されたディスク152をスピンドルモータ(図示せず)で回転させ、光ピックアップを用いてデータを記録し、又は再生する。
【0014】
ディスク移動部131、ディスク搬送部132、及びディスク搬送部の移動部133は、ディスク記録再生部12とディスク格納容器15との間でディスク152を搬送するための構成要素である。ディスク搬送部の移動部133は、例えばモータとギア(図示していないが、場所、形状とも特に限定されない)を介してディスク移動部131とディスク搬送部132を移動させる。
まず、ディスク152をディスク格納容器15からディスク記録再生部12へ搬送する場合を述べる。
【0015】
後記するディスク搬送制御部13からの指示に基づき、ディスク搬送部の移動部133は前記指示に対応するディスクが格納されたディスク格納容器15のスリットの位置に、ディスク移動部131とディスク搬送部132を移動させる。次いでディスク移動部131が、例えばモータとギア(図示していないが、ディスク搬送部132が有しても良い)を介して移動されることにより、前記指示に対応したディスクをディスク格納容器15からディスク搬送部132の内部に移動する。
【0016】
次いで前記したディスク搬送制御部13からの指示に基づき、ディスク搬送部の移動部133は、ディスク記録再生部12が有するODDのうち前記指示に対応するODDの位置に、ディスク移動部131とディスク搬送部132を移動させる。さらに、ディスク搬送部132内部の図示しないディスク移動機構が、例えばモータとギアを介して移動されることにより、搬送するディスクをディスク搬送部132から前記ODDの内部に移動する。これにより、ディスク記録再生部12は、新たに搬送されたディスクに対してデータの記録又は再生を行うことができる。
【0017】
次に、ディスク152をディスク記録再生部12からディスク格納容器15へ搬送する場合を述べる。
ディスク搬送制御部13からの指示に基づき、ディスク搬送部の移動部133は前記指示に対応するディスクが格納されたディスク記録再生部12のODDの位置に、ディスク移動部131とディスク搬送部132を移動させる。次いでディスク搬送部132内部の図示しないディスク移動機構が、例えばモータとギアを介して移動されることにより、前記指示に対応したディスクを前記ODDからディスク搬送部132の内部に移動する。
【0018】
次いで前記したディスク搬送制御部13からの指示に基づき、ディスク搬送部の移動部133は、ディスク格納容器15が有するスリットのうち前記指示に対応するスリットの位置に、ディスク移動部131とディスク搬送部132を移動させる。さらに、ディスク搬送部132内部の図示しないディスク移動機構が、例えばモータとギアを介して移動されることにより、搬送するディスクをディスク搬送部132からディスク格納容器15の内部に移動する。これにより、ディスク記録再生部12での動作を終えたディスクは、ディスク格納容器15の内部に再び収納される。
【0019】
以上のように動作することによりライブラリ装置1は、多数のディスクに対して高速のアクセスを行うことができ、大容量のデータを取扱うユーザに対する使い勝手を向上している。
なお、図1において例えば向かって右側のディスク格納容器15に収納されたディスクがディスク搬送部132によりディスク記録再生部12に搬送された際、左右いずれのディスク記録再生部12のODDに装着されるかは任意に設定できる。また、各ディスクに対するディスク格納容器15における格納位置を任意に設定することもでき、逆に一箇所に固定することもできる。これは、先のディスク搬送制御部13の指示により決定される。
【0020】
図2は、一実施例におけるライブラリ装置1の背面側の概観図である。ここではライブラリ装置1の一部の外装を除去し、図1とは異なり、背面斜め上側から見た状態を示している。
図1で既に述べた構成要素については、説明を繰返さない。
ライブラリ装置1の背面には、複数の冷却ファン141が設けられている。ここでは8個の冷却ファン141が示されているが、もちろんこれは本実施例の限定条件ではない。また、外部装置接続端子16は後記する上位制御装置(ホスト装置)2とのインタフェースである。電源端子17はライブラリ装置1を動作させるための商用電源、又は直流電源の供給端子であり、安全のための回路開閉器を伴うことが多い。
【0021】
ライブラリ装置1は前記したように複数のディスク記録再生部12を有し、また多様な動作を制御するためのCPU(Central Processing Unit)、高度な信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)を有する。このため、ディスク記録再生部12のほか、多くの回路部品が設けられる背面側には、これらが発生した熱を外部に放出するための冷却ファン141が設けられる。また、回路基板、及びディスク記録再生部12の各ODDは、冷却ファン141が起こす冷却風が効率良く巡るように配置される。
【0022】
冷却ファン141が複数備えられた場合、その回転数に対する配慮を行わない場合には、機械的な共振を引き起こすことがあり、ライブラリ装置1の全体が振動してディスク記録再生部12の動作を妨害し、転送速度を低下させる問題がある。さらに、ディスク記録再生部12の各ODDがディスクを回転させる際のスピンドルモータの回転数と、冷却ファン141の回転数の関係により、同様な機械的な共振を引き起こすこともある。
【0023】
本実施例においては後記するように、各冷却ファンの回転数を互いに素となるよう設定することを一つの特徴としている。これにより、各冷却ファンの回転数の公約数に対応した周期での機械的な共振を防止するようにしている。冷却ファンの回転数は、一般の機械的な振動に比べれば遥かに周波数が高いため、回転数の絶対値が振動として問題となることは少ない。しかし、複数の冷却ファンの回転数が公約数を有する場合、その値が機械的な振動として問題となる周波数であるならば、前記した共振の大きな原因となる。本実施例では、特に公約数を有することによる機械的な共振を低減するようにしている。
また、ODDが有するスピンドルモータの回転数は転送速度に応じて上位制御装置2が指示するが、これに応じて複数の冷却ファン141の回転数との関係を互いに素とすれば、冷却ファンとODDとの間に起因する機械的な共振も低減することができる。
【0024】
以上述べた冷却ファンの回転数は、後記する冷却ファン制御部14が冷却ファン141の回転数を制御することで決定される。冷却ファン制御部14は、前記したディスク搬送制御部13、後記する下位制御部11(上位制御装置2から制御を受けるので下位制御部と称し、ライブラリ装置1の全体を制御する。以下、単に制御部と呼ぶこともある。)とともに、ライブラリ装置の背面側に設けられることが多い。このため、図1と図2では背面側外装に3個の制御部の符号を付した。ディスク搬送制御部13と冷却ファン制御部14は、下位制御部11により統括されて制御される。
なお、これら3個の制御部は同じ半導体チップ上に集積されても良い。実際には図1と図2に示した構成要素では、図示する以外にも固有の制御部を有することがある。いずれの制御部も下位制御部11により統括されて制御されるが、やはり下位制御部11と同じ半導体チップ上に集積されても良い。
【0025】
次に、ライブラリ装置1の全体の電気回路的な構成について説明する。
図3は、一実施例におけるライブラリ装置1のブロック図である。先の図1と図2に示した構成要素に対応する構成要素には、同じ符号を付している。
ライブラリ装置1は、ライブラリ装置1の全体の動作を制御する下位制御部11を有する。下位制御部11は、先の外部装置接続端子16を介して上位制御装置2に接続されており、上位制御装置2から動作指令が与えられる。当該動作指令に応じて、例えばディスク記録再生部12で再生されたデータを上位制御装置2に供給する。或いは上位制御装置2から供給されたデータをディスク記録再生部12においてディスクに記録する。上位制御装置2と下位制御部11の間は、イーサネット(登録商標)をはじめとするネットワークを介して接続されることが多い。この場合に上位制御装置2は、離れた位置にある複数のライブラリ装置1を統括するホスト装置として機能することができる。
【0026】
下位制御部11は、ディスク搬送制御部13に指示して、ディスク移動部131、ディスク搬送部132、及びディスク搬送部の移動部133を動作させ、ディスク記録再生部12とディスク格納容器15との間でディスク152を搬送する。その動作の詳細は、既に図1を用いて説明済みであるので繰返さない。
また下位制御部11は、冷却ファン制御部14に指示して冷却ファン141を回転させる。また、冷却ファン141の回転数を計測するための回転数計測部142が設けられている。冷却ファン制御部14は、回転数計測部142から供給された回転数の計測値が下位制御部11からの指示に適合するよう、冷却ファン141の回転数を制御する。冷却ファン制御部14における複数の冷却ファンに対する回転数の設定方法については、回転数が互いに素であることを特徴としているが、既に述べたのでここでは繰返さない。
【0027】
さらに下位制御部11は、上位制御装置2から与えられた指示に応じ、前記したようにディスク記録再生部12を制御する。また、ディスク記録再生部12が備える温度測定部121からディスク記録再生部12の内部温度の測定値が供給されている。さらに下位制御部11も温度測定部111を備えており、自分自身の温度の測定値が供給されている。これら温度の測定値に基づき、下位制御部11は冷却ファン制御部14への指示を生成し、後記するように冷却効果を適宜調整する。例えば、温度測定部111と121での温度の測定結果に基づき、冷却ファン制御部14は、温度の高い構成要素に対する冷却効果を上げるよう、各冷却ファン141の位置に応じた回転数の制御を行う。
【0028】
次に、ライブラリ装置1の全体の動作フローについて説明する。
図4は、一実施例におけるライブラリ装置1の第1のフロー図であり、ディスク記録再生部12とディスク格納容器15との間でディスク152を搬送する際のフロー図である。
フローは、ライブラリ装置1に電源が投入されることで開始される(ステップS401:以下、“ステップ”を省略し“S”と番号のみを記載する)。
【0029】
下位制御部11は、ライブラリ装置の各構成要素に初期化を指示する。これにより、上位制御装置2からの指示があり次第、これに応じた動作を行える状態でライブラリ装置1が待機する(S402)。
次いで下位制御部11は、上位制御装置2からの命令があるか否かの判定を行う(S403)。S403での判定の結果、命令がないと判定された場合には(図中のno)、下位制御部11はS403での判定を繰返す。S403での判定の結果、命令があると判定された場合には(図中のyes)、下位制御部11は当該命令を受信し(S404)、さらに当該命令がディスク記録再生部12とディスク格納容器15との間でディスクを搬送するための要求であるか否かを判定する(S405)。
【0030】
S405での判定の結果、ディスクを搬送するための要求ではないと判定された場合には(図中のno)、当該要求に対応した動作を行うよう、下位制御部11は関係する構成要素を制御する(S406)。例えば記録再生部12からデータを読取るための要求であれば、下位制御部11は記録再生部12にその要求に応じた指示を行い、S403に戻って上位制御装置2からの次の命令を待つ。
S405での判定の結果、ディスクを搬送するための要求であると判定された場合には(図中のyes)、下位制御部11はディスク搬送制御部13に指示して、ディスク搬送部の移動部133を起動させ、ディスク移動部131とディスク搬送部132を上位制御装置2が指示する位置に移動させる(S407)。以下、ここでは上位制御装置2が発生した要求が、ディスク格納容器15の内の所定位置に格納されたディスク152を、ディスク記録再生部12が有する所定のODDに搬送するための要求である場合を主に説明する。逆の場合は同様な動作であるので、簡単に説明する。前者の場合、S407ではディスク移動部131とディスク搬送部132は、ディスク格納容器15の所定位置に移動する。
【0031】
次に、ディスク移動部131は、所定位置に格納されたディスク152を、ディスク格納容器15のスリットからディスク搬送部132に移動する(S408)。さらに、下位制御部11はディスク搬送制御部13に指示して、ディスク移動部131とディスク搬送部132を、ディスク記録再生部12が有し上位制御装置2が指示する所定のODDの位置に移動させる(S409)。
次いで、ディスク移動部131は、搬送されたディスク152を、ディスク搬送部132から所定のODDに移動する(S410)。ディスク記録再生部12が有する所定のODDは、下位制御部11の指示に基づきディスク152にデータを記録する。又は、ディスク152からデータを再生し、下位制御部11を介して上位制御装置2に供給する(S411)。
【0032】
上位制御装置2からの要求が、S411に引続きディスク152を所定のODDを取外してディスク格納容器15の内の所定位置に戻して格納するための要求を含む場合、S412以下の動作が引続き行われる。
ディスク移動部131は、ディスク152を、所定のODDからディスク搬送部132に移動する(S412)。次いで、ディスク移動部131とディスク搬送部132を、ディスク格納容器15の所定位置に移動する(S413)。 さらに、ディスク移動部131は、搬送されたディスク152を、ディスク搬送部132からディスク格納容器15の所定位置のスリットに移動する(S414)。
その後S403に戻り、上位制御装置2からの次の指示を待つ。
以上述べた第1の動作フローにより、下位制御部11の指示に応じてディスク152がディスク記録再生部12とディスク格納容器15との間で搬送され、データの記録又は再生の動作が行われる。
【0033】
図5は、一実施例におけるライブラリ装置1の第2のフロー図であり、ライブラリ装置1が備える冷却ファン141の回転数の制御方法を示すフロー図である。
フローは、ライブラリ装置1に電源が投入されることで開始される(S501)。S501のタイミングは、先のS401と同様である。
【0034】
先のS402において、下位制御部11がライブラリ装置の各構成要素に初期化を指示することに応じて、冷却ファン制御部14が初期化される(S502)。
次いで冷却ファン制御部14は、冷却ファン141に電源を投入して回転させる(S503)。さらに冷却ファン制御部14は、回転数計測部142に指示して冷却ファン141の回転数を計測させ、計測結果を供給させる(S504)。前記したように冷却ファン141は複数であるので、各冷却ファンに応じて複数の計測結果が供給される。これにより、破損して動作しない冷却ファンがあれば、冷却ファン制御部14は破損情報を得ることができる。
【0035】
次に冷却ファン制御部14は、下位制御部11に依頼して温度測定部111,121での温度測定値を入手する(S505)。この温度は、ディスク記録再生部12をはじめとする温度の上昇が問題となる構成要素の温度を示しており、必要に応じてライブラリ装置1の複数の構成要素から温度測定値を得ると良い。
さらに冷却ファン制御部14は、例えば自身が記憶する温度の設定目標値(例えば保証する動作温度範囲内で設定される)と前記した温度計測値を比較し、ほぼ一致するか否かを判定する(S506)。
【0036】
S506での判定の結果、双方がほぼ一致すると判定された場合には、S508に到る。S506での判定の結果、双方が異なると判定された場合には、S507を経由した後、S508に到る。
S507において冷却ファン制御部14は冷却ファンの回転数につき、温度係数を考慮して上昇または下降する制御を行う。温度測定値が設定目標値とは大きく異なる場合は、冷却ファン141の構成要素に塗布されるグリスの粘性をはじめとする要因が設計値と異なる恐れがある。基本的には温度測定値が設定目標値よりも高い場合には回転数を上昇させ、また低い場合には回転数を下降する制御を行うが、さらに前記した要因を加えて制御を行っている。
【0037】
動作中にライブラリ装置1の温度が変化することは、当然ながら考えられる。従って、S506からS508へ到るステップは、所定の時間間隔で繰返されることが望ましい。このため、冷却ファン制御部14は例えば1分と所定時間を定め、前回の温度測定から現在までの時間を測定し、前記時間が所定時間とほぼ一致するか否かを判定する(S508)。
S508での判定の結果、前回の温度測定から現在までの時間が前記所定時間とほぼ一致した場合には、S505へ戻り再び温度測定を行う。S508での判定の結果、前回の温度測定から現在までの時間が前記所定時間と異なる場合には、S509に到り本実施例で一つの特徴とする冷却ファンの回転数制御を行う。
【0038】
まず、冷却ファン制御部14は複数の冷却ファン141に対し、互いに素な関係の回転数の目標値を設定する(S509)。冷却ファン141が8個であれば、1分当たりの回転数で例えば1997,1019,1453,1877,1307,1201,1777,1571と目標値を設定する。温度測定部111,121で測定された温度が高い構成要素の近くに位置する冷却ファンに対しては、回転数を高く設定すると装置の内部の温度ムラを低減できる。この例は各回転数が素数である場合であるが、公約数を持たない互いに素な関係であれば良い。これにより、前記公約数に係る機械的な共振に伴う振動を防止することができる。
また、これら冷却ファンの回転数を、ディスク記録再生部12が有するスピンドルモータの回転数に対しても互いに素とすれば、冷却ファンとスピンドルモータの回転に伴う機械的な共振を防止することができる。
【0039】
次に、冷却ファン制御部14は回転数計測部142に指示して、実際の冷却ファン141の回転数を計測させ計測値を供給させる(S510)。さらに、冷却ファン制御部14は当該計測値が前記目標値と一致するか否かを判定する(S511)。
例えば全ての回転数の目標値が高過ぎ、又は低すぎてこれらが一致しない場合は、回転数の目標値を設定し直す必要がある。そこで、S511での判定の結果、全ての回転数の計測値と目標値が一致しない場合にはS508を経てS509へ戻り、改めて回転数の目標値を設定する。S511での判定の結果、回転数の計測値と目標値が多くの冷却ファンでほぼ一致する場合には、S512に到る。
【0040】
次に、冷却ファン制御部14は複数の冷却ファンにおいて、異常動作をする冷却ファンがあるか否か、即ちS511において計測値が目標値と一致しない冷却ファンがあるか否かを判定する(S512)。S512での判定の結果、全ての冷却ファンの動作が正常な場合にはS508に戻り、冷却ファン制御部14は冷却ファンの回転数制御を繰返す。
1個でも異常動作をする冷却ファンがある場合には、冷却ファン制御部14は該冷却ファンの回転を停止して、出火などの不慮の事態を未然に防ぐ。さらに冷却ファン制御部14は、冷却ファンの回転数に動作付加係数を考慮して、再度回転数を設定する(S513)。冷却ファン141が4個である場合、1個が異常であれば残る3個の冷却ファンの回転数を例えば1.33倍に、2個が異常であれば残る2個の冷却ファンの回転数を例えば2倍に設定し、前記した一部の冷却ファンの回転停止に伴う冷却効果の低下を防止する。その後、S508に戻り、冷却ファン制御部14は冷却ファンの回転数制御を繰返す。
ここまで示した実施形態は一例であって、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨に基づきながら異なる実施形態を考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0041】
1:ライブラリ装置、2:上位制御装置、11:下位制御部、12:ディスク記録再生部、13:ディスク搬送制御部、14:冷却ファン制御部、15:ディスク格納容器、16:外部装置接続端子、17:電源供給端子、111,121:温度測定部、131:ディスク移動部、132:ディスク搬送部、133:ディスク搬送部の移動部、141:冷却ファン、142:回転数計測部、151:ディスク格納容器の出入口、152:ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録媒体ドライブを有し、複数の記録媒体を装着する記録媒体格納容器が着脱されるライブラリ装置であって、
前記ライブラリ装置の内部を冷却する複数の冷却ファンと、
前記記録媒体を前記記録媒体ドライブと前記記録媒体格納容器との間で搬送する記録媒体搬送部と、
前記ライブラリ装置の全体の動作を制御する制御部と
を有し、
当該制御部は、
前記複数の冷却ファンの回転数を互いに素であるよう制御する
ことを特徴とするライブラリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のライブラリ装置において、
前記記録媒体ドライブはディスク記録媒体を回転駆動するスピンドルモータを有し、
前記複数の冷却ファンの回転数と前記スピンドルモータの回転数を互いに素であるよう制御する
ことを特徴とするライブラリ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のライブラリ装置において、
前記複数の記録媒体ドライブは当該記録媒体ドライブ各々の温度を測定する温度測定部を有し、
前記制御部は、前記複数の温度測定部から供給された温度測定値に基づき前記複数の冷却ファン各々の回転数を制御する
ことを特徴とするライブラリ装置。
【請求項4】
複数の記録媒体ドライブを有し、複数の記録媒体を装着する記録媒体格納容器が着脱されるライブラリ装置における複数の冷却ファンの回転数制御方法であって、
前記複数の冷却ファンの回転数を計測する回転数計測ステップと、
前記複数の記録媒体ドライブの温度を所定時間おきに測定する温度測定ステップと、
当該温度測定ステップにおける前記複数の記録媒体ドライブの温度測定値に基づき前記複数の冷却ファンの回転数を設定する回転数設定ステップと
を有し、
前記回転数設定ステップは、
前記複数の冷却ファンの回転数を互いに素であるよう設定し、かつ、
前記回転数設定ステップで設定された回転数と前記回転数計測ステップで計測された回転数を比較し、回転数が追従しない場合には、前記複数の冷却ファンの回転数を互いに素である他の値に再設定する
ことを特徴とするライブラリ装置における複数の冷却ファンの回転数制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のライブラリ装置における複数の冷却ファンの回転数制御方法において、
前記記録媒体ドライブはディスク記録媒体を回転駆動するスピンドルモータを有し、
前記回転数設定ステップは、
前記複数の冷却ファンの回転数と前記スピンドルモータの回転数を互いに素であるよう設定する
ことを特徴とするライブラリ装置における複数の冷却ファンの回転数制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−114735(P2013−114735A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263537(P2011−263537)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】