説明

ライムケーキのリサイクルのための処理方法

【課題】ライムケーキから形成された粒状物がその取扱い時に壊れるのを防止すること及び前記粒状物の保管スペースを確保しやすくすること。
【解決手段】ライムケーキのリサイクルのための処理方法は、前記ライムケーキを乾燥させること、乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成することを含む。乾燥させる前の前記ライムケーキの含水率は20%から50%の範囲内にあり、前記ライムケーキの乾燥は、前記ライムケーキの含水率を7%から12%の範囲内にすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライムケーキのリサイクルのための処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甜菜(ビート)から砂糖を製造する過程で、炭酸カルシウムを主成分とするライムケーキが発生する。前記ライムケーキは、水分が30%程度の脱水ケーキとして排出され、10%程度の有機物と、肥料成分である窒素、リン酸及びカリウムとを含む。前記ライムケーキは、肥料や土壌改良材として農地還元されているものの、腐りやすく悪臭を発することから、長期間保存が困難である。このため、北海道において一年間で発生する約20万トンのライムケーキのうち約半分が産業廃棄物として埋立処分されている。
【0003】
従来、前記ライムケーキのリサイクルのための処理方法には、前記ライムケーキを押出し圧縮して粒状物を形成し、その後、前記粒状物を乾燥させるものがある(特許文献1参照)。前記粒状物は肥料や土壌改良剤として土壌に散布される。前記粒状物の形成により、前記ライムケーキの取扱いを容易にすることができる。また、前記粒状物の乾燥により、該粒状物の内部に存在する水の量を減らすことができ、前記粒状物を腐り難くすることができる。これにより前記ライムケーキを長期間保管することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3116024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ライムケーキに多くの水が含まれているため、乾燥前の前記粒状物の内部に多くの水が存在する。前記粒状物の乾燥により、前記粒状物の内部から前記水が除去されて前記粒状物の内部に多くの空隙が生じる。このため、乾燥させた粒状物の圧縮強度は小さく、前記乾燥させた粒状物はその取扱い時に外力を受けて壊れることがある。
【0006】
前記ライムケーキに多くの水が含まれているため、前記粒状物における前記ライムケーキの水以外の成分の密度が低く、前記ライムケーキを処理するために多くの前記粒状物を形成しなければならない。このため、前記粒状物の保管スペースを確保することが困難である。
【0007】
前記ライムケーキをより長い期間保存できるようにすることが望まれている。従来、前記粒状物を焼成して生石灰が製造されているが、より高反応の石灰の製造が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、ライムケーキから形成された粒状物がその取扱い時に壊れるのを防止し、かつ前記粒状物の保管スペースを確保しやすくすることである。
【0009】
また、本発明の目的は、ライムケーキを長期保存できるようにし、かつ、ライムケーキから形成された粒状物の、リサイクルに適した形状や強度を明らかにすることにより、従来のリサイクル品より高付加価値のリサイクル品である高反応石灰を製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成することにより、前記粒状物の内部に存在する水の量が少なくなるようにし、前記ライムケーキの水以外の成分が前記粒状物の内部に密に存在するようにする。これにより、前記粒状物の圧縮強度を高め、前記粒状物がその取扱い時に壊れるのを防止する。また、前記ライムケーキを処理するために形成しなければならない前記粒状物の数を減らし、前記粒状物の保管スペースを確保しやすくする。
【0011】
本発明に係る、ライムケーキのリサイクルのための処理方法は、前記ライムケーキを乾燥させること、乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成することを含む。前記乾燥させたライムケーキを圧縮して前記粒状物を形成するため、前記粒状物の内部に存在する水の量を少なくすることができ、前記粒状物における前記ライムケーキの水以外の成分の密度を高めることができる。これにより、前記粒状物をより強固にすることができ、前記粒状物が該粒状物の取扱い時に外力を受けて壊れるのを防止することができる。また、前記粒状物における前記水以外の成分の密度を高めることにより、前記ライムケーキを処理するために形成しなければならない前記粒状物の数を減らすことができる。これにより前記粒状物の保管スペースを確保しやすくすることができる。
【0012】
ところで、粒状物の形成後に該粒状物を乾燥させる従来の場合、前記粒状物の表面が空気に触れているものの前記粒状物の内部が空気に触れていないため、前記粒状物の表面は乾燥しやすいが、前記粒状物の内部は乾燥しにくい。このため、前記粒状物の全体を乾燥させるために非常に多くの時間を要する。これに対して、前記粒状物の形成前に前記ライムケーキを乾燥させた場合、前記ライムケーキの乾燥により、前記ライムケーキが粉末状になり、粉末状になったライムケーキを構成する微細な粒子が空気に触れるため、前記ライムケーキの全体を短時間で乾燥させることができる。これにより前記ライムケーキの処理を効率的に行うことができる。
【0013】
乾燥させる前の前記ライムケーキの含水率は20%から50%の範囲内にあり、前記ライムケーキの乾燥は、前記ライムケーキの含水率を7%から12%の範囲内にすることを含む。前記粒状物の圧縮強度は、前記乾燥させたライムケーキの含水率により変化する。前記粒状物の圧縮強度を調べるために行った破壊試験の結果によれば、前記乾燥させたライムケーキの含水率を7%から12%の範囲内にすることにより、前記粒状物の圧縮強度をより大きくすることができる。
【0014】
また、前記破壊試験の結果によれば、前記乾燥させたライムケーキの含水率が7%未満である場合、破壊荷重が非常に小さく、前記粒状物がその取扱い時に壊れるのを確実に防止することができない。前記乾燥させたライムケーキの含水率が12%より高い場合、前記粒状物は、該粒状物から水がにじみ出る程度に多くの水を含み、前記粒状物が腐る可能性がある。このため、前記乾燥させたライムケーキの含水率を7%から12%の範囲内にすることにより、前記粒状物がその取扱い時に壊れるのを確実に防止することができ、かつ、前記粒状物が腐るのを確実に防止することができる。
【0015】
前記乾燥させたライムケーキの圧縮は、前記乾燥させたライムケーキにロール式圧縮造粒機により3tf/cm以上8tf/cm以下の線圧を加えることを含む。前記乾燥させたライムケーキの内部に存在する水の量は比較的少なく、前記乾燥させたライムケーキの圧縮時に前記水により前記水以外の成分の圧縮が妨げられることはない。このため、前記乾燥させたライムケーキに加える圧力の大きさに応じて前記水以外の成分をより密に圧縮することができる。このため、前記乾燥させたライムケーキに3tf/cm以上8tf/cm以下という比較的高い線圧を加えることにより、前記粒状物における前記水以外の成分の密度をより高いものにすることができる。
【0016】
本発明に係る、ライムケーキのリサイクル方法は、前記ライムケーキを乾燥させること、乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成すること、前記粒状物を土壌に散布することを含む。これにより前記粒状物は肥料や土壌改良剤として利用される。
【0017】
本発明に係る、ライムケーキのリサイクル方法は、前記ライムケーキを乾燥させること、乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成すること、前記粒状物を焼成して生石灰を生成することを含む。前記生石灰は、肥料や土壌改良剤として使用されてもよいし、消石灰を生成するために使用されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成するため、前記粒状物の内部に存在する水の量をより少なくすることができ、前記粒状物における前記ライムケーキの水以外の成分の密度を高めることができる。これにより、前記粒状物の圧縮強度を高めることができ、前記粒状物が該粒状物の取扱い時に外力を受けて壊れるのを防止することができる。また、前記ライムケーキを処理するために形成しなければならない前記粒状物の数を減らすことができ、前記粒状物の保管スペースを容易に確保することができる。
【0019】
ライムケーキを、その含水率が7%から10%の範囲内になるように乾燥させた後、前記ライムケーキにロール式圧縮造粒機により3tf/cm以上8tf/cm以下の線圧を加えて成形された粒状物(ブリケット)は、結合剤を要することがなく、リサイクル品としての取扱いに耐える強度を確保することができ(前記ブリケットの破壊強度は最大で110kgfを超える。)、腐敗することなく1年以上の長期保存ができる。従来、長期保存の障害となっていた、前記ライムケーキ中の、重量比で約10%(乾燥状態)の有機物(非糖分)は、前記ライムケーキの含水率が7%から10%の範囲内にある状態で前記ライムケーキを高圧成形するとき、結合剤を要しないブリケット化を可能にする役目を果たす。このような前記有機物のバインダ特性は、圧縮力を主体として、一部、せん断力とそれによる摩擦熱を伴う高圧成形時のレオロジー的性質に深く関係する。特にブリケット化特性と深く係るレオロジー的性質は、前記有機物の水分、圧力及び温度に大きく依存し、前記ブリケットの焼成特性をもたらす。前記ブリケットを比較的低い温度(800℃から900℃)で焼成して得られた生石灰(CaO)やこの生石灰から製造された消石灰(Ca(OH))は高反応石灰となる。
【0020】
所定の水分及び粒径を有する、乾燥され、分級されたライムケーキについて所定の圧力下で高圧ロール式の連続成形を行うことにより、以下の特性を有するブリケットが得られる。(1)炭酸カルシウム原料として石灰石と同様に種々の形状及び寸法を有するブリケットを一年を通して供給できる。(2)高圧ブリケット化により、ライムケーキ中の有機物の腐敗による悪臭を防止することができ、ブリケットに、貯蔵や取扱いに耐える強度や耐水性を付与することができ、さらに、一定の形状、寸法及び重量のブリケットを形成することにより、貯蔵時、輸送時等における省スペース化を実現できる。(3)バインダレスで、すなわち結合剤を用いないで、ロール式圧縮成形によりブリケットを量産することは、炭酸カルシウム原料としての利用のための前処理のコストを低減することができる。(4)ブリケットは、有機物や軽質炭酸カルシウムの微粒子の高圧密化による多孔質構造を有することから、石灰石と比較して低い温度で、かつ迅速に生石灰を焼成することを可能にし、その反応性に優れる。(5)上記の構造に起因する焼成特性に加えて、ライムケーキ中の有機物の発熱量(300から350kcal/kg(乾燥状態))が、炭酸カルシウムからの生石灰への脱炭酸に要する吸熱量を、一部、補うことも可能であり、ブリケットは、石灰石と比較して生石灰の収率が小さいものの、焼成時の省エネルギーに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ライムケーキのリサイクルのための処理方法のフローチャート。
【図2】ライムケーキの乾燥時間に対するライムケーキの含水率の変化を示すグラフ。
【図3】ライムケーキの乾燥特性曲線を示すグラフ。
【図4】乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成していることを示す図。
【図5】粒状物の形状及び寸法を示す図。
【図6】破壊試験において供試体に荷重を加えている状態を示す図。
【図7】乾燥させたライムケーキの含水率と粒状物の圧縮強度との関係を調べるために行った破壊試験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
甜菜から砂糖を製造する製糖工場からライムケーキが産出される。前記ライムケーキは、表1に示す例では、重量比で、前記ライムケーキの全体の10%の有機物と、0.54%の全窒素と、1%のリン酸と、0.02%のカリウムと、45%の石灰と、0.85%のマグネシウムと、43%の水とを含む。前記ライムケーキのPHは11.3である。
【0023】
【表1】

【0024】
一般に、前記ライムケーキの含水率は20%から50%の範囲内にある。前記ライムケーキの含水率W(%)は、W=(ma−mb)/(ma−mc)×100により求められる。ここに、maは、乾燥させる前のライムケーキの重量と容器の重量との合計(g)であり、mbは、乾燥させた後のライムケーキの重量と容器の重量との合計(g)であり、mcは容器の重量(g)である。表1に示した例では、前記ライムケーキの含水率は43%である。
【0025】
前記ライムケーキのリサイクルのための処理を行うとき、図1に示すように、まず、前記ライムケーキを用意し、次に、前記ライムケーキを乾燥させる。このとき、前記ライムケーキの含水率を7%から12%、好ましくは7%から10%の範囲内にする。図2に示すように、5.0gの前記ライムケーキを110℃の温度で乾燥させたとき、前記ライムケーキの含水率を43%から10%にするのに要した乾燥時間は約13分である。前記ライムケーキの乾燥中に、前記ライムケーキは粉末状になり、粉末状になったライムケーキを構成する微細な粒子が空気に触れる。このため、前記ライムケーキの全体を比較的短時間で乾燥させることができる。前記ライムケーキの乾燥後、前記ライムケーキの解砕及び分散を行う。これにより前記ライムケーキの粒径を0.25mm以下にする。
【0026】
その後、図4に示すように、乾燥させたライムケーキ10を圧縮して粒状物(ブリケット)12を形成する。このとき、乾燥させたライムケーキ10にロール式圧縮造粒機14(例えば、大塚鉄工(株)製、K−123A型)により圧力を加える、すなわち高圧成形を行う。これにより、乾燥させたライムケーキ10に比較的高い圧力を加えることができる。前記圧力は、例えば、3tf/cm以上8tf/cm以下の線圧である。粒状物12の形状は、円筒状、板状等である。粒状物12の形状は、例えば、ほぼ円筒状であり、粒状物12は、その直径が約20mmであり、その長さが約40mmである。
【0027】
粒状物12の形成により、ライムケーキの取扱いを容易にすることができる。乾燥させたライムケーキ10の内部に存在する水の量は比較的少なく、粒状物12の内部に存在する水の量は比較的少ない。このため、粒状物12は腐り難く、粒状物12を長期間保管することができる。
【0028】
粒状物12の内部に存在する水の量が比較的少ないため、粒状物12におけるライムケーキの水以外の成分の密度を高くすることができる。これにより、粒状物12をより強固にすることができ、粒状物12が該粒状物の取扱い時に外力を受けて壊れるのを防止することができる。また、粒状物12における前記水以外の成分の密度を高くすることにより、ライムケーキを処理するために形成しなければならない粒状物12の数を減らすことができ、粒状物12の保管スペースを容易に確保することができる。
【0029】
乾燥させたライムケーキ10の内部に存在する水の量が比較的少ないため、乾燥させたライムケーキ10の圧縮時に前記水により前記水以外の成分の圧縮が妨げられることはなく、乾燥させたライムケーキ10に加える圧力の大きさに応じて前記水以外の成分をより密に圧縮することができる。このため、乾燥させたライムケーキ10に3tf/cm以上5tf/cm以下という比較的高い線圧を加えることにより、粒状物12における前記水以外の成分の密度をより高いものにすることができる。
【0030】
ところで、粒状物の形成後に該粒状物を乾燥させる従来の場合、前記粒状物の表面が空気に触れているものの前記粒状物の内部が空気に触れていないため、前記粒状物の表面は乾燥しやすいが、前記粒状物の内部は乾燥しにくい。このため、前記粒状物の全体を乾燥させるために非常に多くの時間を要する。これに対して、粒状物の形成前にライムケーキを乾燥させた場合、前記ライムケーキの乾燥により、前記ライムケーキが粉末状になり、粉末状になったライムケーキを構成する微細な粒子が空気に触れるため、前記ライムケーキの全体を短時間で乾燥させることができる。これにより前記ライムケーキの処理を効率的に行うことができる。
【0031】
仮に、乾燥させたライムケーキ10の含水率が7%未満である場合、結合剤(バインダ)として機能する、ライムケーキ10の中の前記有機物は、高圧力下であっても、炭酸カルシウムの微粒子を圧密化して強度の大きいブリケット12を形成するために必要な可塑的性質が損なわれる。乾燥させたライムケーキ10の含水率が10%より高い場合、水分の増加により成形性が良くなるものの、得られたブリケット12は、貯蔵時に、乾燥亀裂、腐敗臭発生等により品質が劣化し、炭酸カルシウム原料としての使用が難しい。
【0032】
乾燥させたライムケーキ10は、微粒子集合体の凝塊状物であるため、ロール式の高圧成形では強度の大きいブリケット12を得るための粒度調整が重要である。このため、高圧成形に先立ち、ライムケーキ10の粒径が0.25mm以下になるように、ライムケーキ10を解砕し、分散させることが望ましい。これにより均一な品質のブリケット12を形成することができる。
【0033】
仮に、ロール式圧縮造粒機14によりライムケーキ10に加えられる線圧が3tf/cm未満である場合、ライムケーキ10の含水率及び粒径が所定の範囲内であっても、結合剤を用いないで良好なブリケット12を得ることは難しい。前記線圧が8tf/cmより大きい場合、圧力の増大に比べてブリケット12の強度の増大が少なく、生産性向上のためのロール回転数の増加に伴う消費動力等の増大が問題となる。
【0034】
乾燥させたライムケーキ10の含水率により粒状物12の圧縮強度が変化する。乾燥させたライムケーキ10の含水率と粒状物12の圧縮強度との関係を調べるために行った破壊試験では、図4、表2に示すように、まず、含水率が異なるライムケーキを圧縮成形することにより得られた4つの供試体を用意する。前記供試体には、含水率が3.6%であるライムケーキから得られた第1供試体と、含水率が8.6%であるライムケーキから得られた第2供試体と、含水率が11.4%であるライムケーキから得られた第3供試体と、含水率が14.7%であるライムケーキから得られた第4供試体とがある。
【0035】
【表2】

【0036】
前記供試体を用意した後、図6に示すように、前記供試体に、該供試体が破壊するまで荷重を加える。各供試体が破壊したときの荷重、すなわち破壊荷重は、前記第1供試体、前記第2供試体、前記第3供試体及び前記第4供試体において、それぞれ、15.3kgf、110.2kgf、77.0kgf及び46.3kgfである。このように前記第2供試体及び前記第3供試体は、前記第1供試体及び前記第4供試体と比べて破壊荷重が大きく、大きい圧縮強度を有する。このため、乾燥させたライムケーキ10の含水率を7%から12%の範囲内にすることにより、粒状物12の圧縮強度をより大きくすることができ、粒状物12をより強固にすることができる。また、乾燥させたライムケーキ10の含水率を7%から12%の範囲内にすることにより、粒状物12をより強固にすることができるため、粒状物12の形成に結合剤を要しない。
【0037】
前記第1供試体は、破壊荷重が非常に小さく、前記第1供試体では、前記粒状物が該粒状物の取扱い時に外力を受けて壊れる可能性がある。このため、乾燥させたライムケーキ10の含水率が7%未満である場合、前記粒状物がその取扱い時に壊れるのを確実に防止することができない。前記第4供試体は、該第4供試体から水がにじみ出る程度に多くの水を含んでおり、前記第4供試体では、粒状物12が腐る可能性がある。このため、乾燥させたライムケーキ10の含水率が12%より高い場合、粒状物12が腐るのを確実に防止することができない。これにより、乾燥させたライムケーキ10の含水率を7%から12%の範囲内にすることにより、前記粒状物がその取扱い時に壊れるのをより確実に防止することができ、かつ、前記粒状物が腐るのをより確実に防止することができる。
【0038】
前記供試体に用いたライムケーキは、製糖プロセスからの圧搾脱水物であり、含水率が約30%、含水比が約45%である(含水率W(%)は、W=(ma−mb)/(ma−mc)×100により求められ、含水比w(%)は、W=(ma−mb)/(mb−mc)×100により求められる。ここに、maは乾燥前のライムケーキの重量と容器の重量との合計(g)であり、mbは乾燥後のライムケーキの重量と容器の重量との合計(g)であり、mcは容器の重量(g)である。)前記ライムケーキは、その乾燥特性曲線(図3)が示すように、通常の有機汚泥と比較して乾燥しやすい。前記第1供試体、前記第2供試体、前記第3供試体及び前記第4供試体には、前記乾燥特性曲線に従って、外熱式乾燥炉(実証試験炉)により、含水率がそれぞれ3.6%、8.6%、11.4%及び14.7%となるように乾燥させたライムケーキを使用した。
【0039】
なお、前記乾燥特性曲線は、ライムケーキ(含水率が約30%、重量が約5g)の水分を水分計(Kett FD-240 株式会社ケツト科学研究所製)を用いて測定した結果である。Kett FD-240は、外径130mm、400Wの赤外線ランプによる赤外線加熱乾燥・質量測定方式であり、加熱設定温度は110℃である。前記乾燥特性曲線を右方から見て、乾量含水率Wdが0.44から0.38になるまでの期間は、材料予熱期間であり、乾燥速度が一定ではないが、恒率乾燥期間と判断することができる。その後、乾量含水率Wdが0.05になるまでの期間は、質量乾燥速度が含水率に比例して直線的に減少しているので、減率乾燥第1段である。乾量含水率Wdが0.05から0になるまで(材料全部が乾燥条件と平衡になるまで)の期間は、減率乾燥第2段であり、上に凸である。これは、吸着水を保有する活性アルミナ粒子層の乾燥曲線と同じである。
【0040】
前記供試体の形成には、図4に示したように、粉状のライムケーキ10を、ブリケット形状のポケットが刻み込まれた2つのロールタイヤ16の間に、該ロールタイヤの上方に配置されたスクリュー18で押し込みながら、圧縮力を主体として、一部、せん断力と発熱も伴う条件下で連続的に高圧成形を行う試験用成形機14を使用した。前記供試体の形成前に、含水率が異なるライムケーキのそれぞれを、粒径が0.25mm以下になるように解砕する。前記供試体の形成時にライムケーキ10に加えた線圧は5tf/cmであり、ロール回転数は3から5回/分である。前記供試体として、図5に示すように、アーモンド型及びマーブル型の2種類の形状のブリケットを得た。
【0041】
表2は、得られたブリケットのうち、アーモンド型のブリケットに関する、ライムケーキの含水率と破壊荷重との関係である。前記破壊荷重はライムケーキの含水率に影響され、ライムケーキの含水率を7%から12%の範囲内にすることにより、前記ブリケットに、強度とともに、耐久性や腐敗しにくさのような長期保存性に優れる高反応石灰原料としての特性を与えることができる。
【0042】
上記のようにして得られた、ライムケーキの含水率が8.6%である場合におけるアーモンド型及びマーブル型のブリケットの焼成特性及び反応性について、表3、4に示す。表3によれば、焼成時間は、比較対象である石灰石では60分であるのに対して、アーモンド型のブリケットでは30分であり、マーブル型のブリケットでは20分である。アーモンド型又はマーブル型のブリケットと石灰石とを比較すると、アーモンド型のブリケットは、焼成時間が石灰石の1/2であり、マーブル型のブリケットは、焼成時間が石灰石の1/3であり、これらのブリケットは、焼成時間が非常に短く、石灰の収率が低いものの、省エネルギーである。これは、従来の石灰工業において、原料である約80mmの塊状石灰石を1000から1050℃で約20時間焼成していることを考慮すると、経済面及び環境面での利点が大きい。
【0043】
表4は、20℃の純水200mlに、ブリケットを焼成して得られた生石灰の粉末50gを加えてから、これにより発生した熱の温度が最高温度に達するまでの時間を示す。表4によれば、前記ブリケットからの石灰は、市販石灰の優良品種に比べて発熱の反応性が高く、特に、アーモンド型のブリケットからの石灰は、反応性が非常に高く、広い市場における付加価値の高い用途への使用が期待できる。ライムケーキの焼成特性及び反応性は、ブリケットの有機質微粒子からなる、高圧造粒化による緻密な構造による。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
ライムケーキのリサイクルのため、粒状物12を土壌に散布する。前記ライムケーキに、肥料の三要素である窒素、リン酸及びカリウムが含まれているため、粒状物12は、前記土壌で生育させる植物に栄養を与えることができる。また、粒状物12により前記土壌のPHを調整することができる。このように粒状物12を肥料や土壌改良剤として利用することができる。
【0047】
粒状物12を土壌に散布する上記の例に代え、前記したように、粒状物12を焼成して生石灰を生成してもよい。前記生石灰を肥料や土壌改良剤として使用してもよし、前記生石灰に水を加えて消石灰を生成してもよい。前記消石灰は、例えば、ごみ焼却炉から出る有害物質を除去するために使用される。
【0048】
粒状物12の焼成時、該粒状物を数mの高さまで積み上げることがある。このため、仮に、粒状物12の圧縮強度が小さい場合、粒状物12を積み上げたときに粒状物12が圧縮されて壊れる恐れがある。乾燥させたライムケーキ10を圧縮して粒状物12を形成することにより、粒状物12の圧縮強度を大きくすることができるため、粒状物12を積み上げたときに粒状物12が圧縮されて壊れるのを防止することができる。
【0049】
先行技術文献では、乾燥粒状物(ペレット)を焼成して生石灰又は消石灰に利用する場合、熱間強度が小さいため、焼成プロセスにおいて品質、製品歩留まり等の生産管理上の難点がある。これに対して、本発明では、ライムケーキから高反応性石灰資材を製造するための原料化前処理のブリケット化技術により、先行技術における焼成特性と比較して、上記の難点を解決し、優れた特性を有する焼成物を製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 乾燥させたライムケーキ
12 粒状物
14 ロール式圧縮造粒機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライムケーキのリサイクルのための処理方法であって、
前記ライムケーキを乾燥させること、
乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成することを含む、処理方法。
【請求項2】
乾燥させる前の前記ライムケーキの含水率は20%から50%の範囲内にあり、
前記ライムケーキの乾燥は、前記ライムケーキの含水率を7%から12%の範囲内にすることを含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記乾燥させたライムケーキの圧縮は、前記乾燥させたライムケーキにロール式圧縮造粒機により3tf/cm以上8tf/cm以下の線圧を加えることを含む、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
ライムケーキのリサイクル方法であって、
前記ライムケーキを乾燥させること、
乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成すること、
前記粒状物を土壌に散布することを含む、ライムケーキのリサイクル方法。
【請求項5】
ライムケーキのリサイクル方法であって、
前記ライムケーキを乾燥させること、
乾燥させたライムケーキを圧縮して粒状物を形成すること、
前記粒状物を焼成して生石灰を生成することを含む、ライムケーキのリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−16041(P2011−16041A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160746(P2009−160746)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(595107656)
【出願人】(500430903)株式会社ヒューエンス (7)
【出願人】(506209086)環テックス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】