ラインおよびチューブ系からバイオフィルムおよびデブリを除去するための洗浄組成物および装置、およびその方法
【課題】潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をラインおよびチューブ系から除去するための洗浄溶液および方法、洗浄装置の提供。
【解決手段】水、1以上の界面活性剤、および好ましくは過酸化水素供給源、場合によっては小さな不活性固体粒子を含む水性洗浄溶液を加圧ガスと共に通し、チューブ系内部でバイオフィルム/デブリを遊離させる乱流を発生させバイオフィルム/デブリを除去する。加圧空気が空気ライン13Aに向かうように三方向バルブ24を使用し、加圧空気にパルス作用を与えるソレノイドバルブ26がライン13Aに挿入され、流出ライン30は混合チャンバー32に接続される。混合チャンバー32は加圧空気ライン13Aおよび洗浄溶液流出ライン30に接続される。洗浄溶液および加圧空気は混合チャンバー32内で混合され、洗浄溶液に対する空気の比に依存して乱流混合物またはフロスを作り出す。
【解決手段】水、1以上の界面活性剤、および好ましくは過酸化水素供給源、場合によっては小さな不活性固体粒子を含む水性洗浄溶液を加圧ガスと共に通し、チューブ系内部でバイオフィルム/デブリを遊離させる乱流を発生させバイオフィルム/デブリを除去する。加圧空気が空気ライン13Aに向かうように三方向バルブ24を使用し、加圧空気にパルス作用を与えるソレノイドバルブ26がライン13Aに挿入され、流出ライン30は混合チャンバー32に接続される。混合チャンバー32は加圧空気ライン13Aおよび洗浄溶液流出ライン30に接続される。洗浄溶液および加圧空気は混合チャンバー32内で混合され、洗浄溶液に対する空気の比に依存して乱流混合物またはフロスを作り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をライン(line)およびチューブ系(tubing)から除去するための洗浄溶液および方法、および、その洗浄溶液をライン及びチューブ系に送り出して洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精製あるいは未精製の通常の流水を歯科ユニットのような設備にデリバリーする小口径のチューブ系は、よく知られたように、その内部表面にバクテリアおよびカビの増殖を発生させる。水中に存在するバクテリアはチューブ系表面に強く付着し、横方向へ増殖し、バイオフィルムとして知られるものを形成する。バイオフィルムは触るとぬるぬるしたフィルムとして理解され、解析の結果バクテリア増殖であることがわかっている。
先行技術において何人かの研究者はこれらのバイオフィルム中に種々のバクテリアを同定し、それらには、フラボバクテリウム(Flavobacteriium)、モラクセラ(Moraxella)、アクロモバクター(Achromobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、ミクロコッカス(Micrococcus)およびレジオネラ(Legionella)のような何種類かの病原性の可能性のあるバクテリアが含まれている。これらのバクテリアは全てヒトに感染症を引き起こす可能性があり、レジオネラは抗生物質に高度に耐性であってその感染は致命的であるため特に関心がある。また、レジオネラのような生物は歯の治療または他の医学的治療の際に汚染した水噴霧から吸入され得る。
【0003】
リンス用水を患者の口に運ぶ歯科ユニットチューブ系は、1週間の使用後に水1mlあたり100万(1x 106)コロニー形成ユニット(1x 106 CFU/ml)を越えるバクテリアを含むことが測定されている。従って、これらの水ラインおよびチューブ系は、感染を防ぐためにチューブ壁上のバイオフイルムの除去を保証すべく定期的に洗浄されなければならない。免疫障害のある患者の感染可能性も大きな関心事である。患者が口中に何らかの開いた傷を持つ場合は、感染の危険性は当然に非常に高い。
しかしながら、バイオフィルムはチューブ系から除去するのが非常に難しい。バイオフィルムは、チューブ系が天然材料から作られていようと、ゴムベースの材料、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンその他のような合成材料で作られていようと、滑らかなチューブ系表面に強固に付着性である。殺菌剤および殺生物剤による処理はバクテリアを殺し、それによりバイオフィルムを除去するであろう。しかしながら、それらの薬剤はチューブ壁に強固に付着するバイオフィルム内へ容易には拡散せず、従って、除去は通常部分的に過ぎずバイオフィルムは極めて迅速に再現する。水デリバリー系中に存在するバクテリアレベルの200 CFU/mlより下への低減がアメリカ歯科協会(American Dental Association)により提案されている。
【0004】
定期的に洗浄すべき小口径のチューブ系を使用する他の応用例には、内視鏡チューブ系、カテーテルチューブ系、滅菌充填ポート(filling port)、および滅菌製造、食品処理その他に使用されるチューブ系が含まれる。これらのチューブ系タイプはバイオフィルムの他に、食物片、組織片、粘液、血液その他を含んでいることがあり、以後本明細書中ではこれらを「デブリ」と呼ぶ。そのようなチューブ系はまた一人の患者から他の患者への感染を防ぐため、各使用の間および各使用毎に完全に洗浄されなければならない。
アメリカ胃腸内視鏡学会によって公布されている胃腸内視鏡ユニットの洗浄ガイドラインには、感染を防ぐための患者間のチューブ系洗浄用の多段階法が含まれている。最初に、使用後直ちに洗浄溶液を用いてブラシによる機械的洗浄が行なわれる。次にチューブ系は水でリンスされ、次にグルタルアルデヒド溶液のような消毒剤を用いて滅菌が行なわれる。次にチューブ系は再び水でリンスされ、通風して乾燥される。
本発明の他の用途は、新生児および成人の両方のための呼吸器であり、これらは約8時間程度ごとに洗浄されなければならない。そのような洗浄は費用がかかるが、必要である。
従って、チューブ系の内部および外部表面からバイオフィルムおよびデブリを費用効果の高いやり方で除去し、かつバイオフィルムの再出現を阻止または遅延させる改良洗浄用組成物、および、それらの洗浄溶液を汚染したラインおよびチューブ系にデリバリーする装置が非常に望まれているであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をライン(line)およびチューブ系(tubing)から除去するための洗浄溶液および方法、および、その洗浄溶液をライン及びチューブ系に送り出して洗浄する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をライン(line)およびチューブ系(tubing)から除去するための混合相洗浄溶液および方法、および、その混合相洗浄溶液を加圧下でライン及びチューブ系に送り出して洗浄する装置が提供される。
本発明により、加圧ガスと適切な水性洗浄溶液の組み合わせが使用され、バイオフィルムまたはデブリをその内部表面または外部表面に有するチューブ上またはその内部において乱流環境(turbulent environment)が作り出され、これがバイオフィルムおよびデブリを完全に除去する。適切な水性洗浄溶液は水と界面活性剤を含む。酸化剤および殺生物剤も添加することができる。こすり落とす作用を与え得る不活性粒子もこの水性洗浄溶液に有利に加えることができる。この水性洗浄組成物は圧縮ガスによって洗浄されるチューブ系に送られ、これにより混合相系が作られ、これがチューブ壁に沿う乱流を与え、バイオフィルムおよびデブリのチューブ表面からの遊離を助け、チューブから遊離した物質のフラッシングを助ける。
本発明はまた上記混合相洗浄溶液を小口径チューブ系およびラインの内部へデリバリーし、圧力下でガスと混合するための装置を含む。圧縮したガス−水性洗浄溶液の組み合わせはチューブ系の内部で乱流を発生させ、これがチューブ系の内部表面からのバイオフィルムの遊離を助け、その結果、バイオフィルムは水によるフラッシングとリンスにより容易に除去できるようになる。
本発明はまた、洗浄溶液−加圧ガス混合物とチューブ系の間の気密シールを提供するアダプターを有する耐圧筒にチューブ系を封じ込めることにより上述の洗浄溶液を小口径のチューブ系およびラインの外部表面にデリバリーするための装置も含んでいる。この装置は水性溶液、場合によっては固体粒子、およびガスを加圧下で混合して洗浄すべきラインおよびチューブ系にデリバリーするための混合室を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書の有用な水性洗浄溶液は水及び界面活性剤を含んでおり、空気のようなガスと加圧下に混合されると、有機残渣を容易に流し落とせるようにチューブ系表面から遊離させるように作用する。本洗浄溶液は水ベースであるため、廃液処理に関する環境問題は低減されるか、または存在しない。
この水性洗浄溶液は水および界面活性剤だけを含んでもよいが、好ましくは、過酸化水素源のような酸化剤を含む。
適切な界面活性剤は非イオン性、陰イオン性または陽イオン性、またはそれらの混合物であってよい。水または水性溶液と共存可能などんな界面活性剤も使用することができ、一般には洗浄溶液の約5質量%までの濃度で使用できる。
適切な陰イオン界面活性剤には、例えばドデシル硫酸ナトリウムのようなアルキル硫酸塩およびスルホン酸塩が含まれる。除去すべき有機物質の湿潤性を増加させるため、および、水性界面活性剤含有溶液が加圧下でガスと混合された場合に作られる泡の質を改善するために非イオン性界面活性剤を添加することができる。
4級アミンのような陽イオン性界面活性剤はバイオフィルム内に存在する糖タンパク質およびバクテリア細胞壁と強く相互作用し、従って、バイオフィルム内のバクテリア性およびカビ性物質を可溶化する。陽イオン性界面活性剤はまた消毒特性を有していることが知られている。
【0008】
これらの界面活性剤は水性溶液に発泡作用を与え、これは洗浄されるチューブ系に乱流を与える助けとなり、また、チューブ系表面からバイオフィルムまたはデブリを遊離させる助けとなる。特に、4級アミン界面活性剤は溶液中に、洗浄の際にガス-洗浄液混合物中に乱流を形成する更なる助けとなる小さな泡を作り出し、その効果および効率的な除去の助けとなるバイオフィルムに対するこすり落とし作用が加わる。
また、酸化剤の存在はチューブ系およびラインの内部壁および外部壁からのバイオフィルムの遊離の助けとなると考えられている。適切な酸化剤には、水性溶液中でin situに過酸化水素を発生させる水性過酸化水素溶液または過ホウ酸塩、過ヨウ素酸塩およびペルオキシカルボン酸などの過酸化化合物が含まれる。ペルオキシカーボネートその他のような固体過酸化物も更なるこすり落とし作用を与えることがある。
更に、酸化剤はチューブ系の壁からのバクテリア性物質の効果的低減の助けとなるだけでなく、バイオフィルムの再出現を低下させる殺生物特性を有している。過酸化物-界面活性剤溶液を圧縮空気と混合すると、過酸化物によって増強された厚いフロス(froth)をチューブ系内に発生させ、水と空気だけよりも効率的にバイオフィルムを除去する。酸化剤は、水性溶液の約15質量%までの量で存在するのが適切であり、好ましくは約3〜15質量%で存在する。
【0009】
チューブ系の壁に対してこすり落とし作用を更に与えるために不活性粒子を本発明の水性洗浄溶液に添加することは有利であり得る。シリカ、アルミナおよびチタニア粒子のような固い不溶性粒子は界面活性剤泡とともに最も効果的なこすり落とし作用を与えるであろう。炭酸カルシウムのような不溶性の柔らかい不活性粒子、好ましくは10-300マイクロメートルのような小さな粒子サイズの不活性粒子は有利に使用することができる。これらの物質は既に歯の洗浄または歯垢の除去および歯および歯ぎんを磨くための研磨剤として通常使用されている。炭酸水素ナトリウムのような水可溶性粒子を添加することもできる。本発明によりバイオフィルムの除去は迅速に起こるため、水可溶性粒子によるある程度のこすり落とし作用が粒子の溶解前に得られる。粒子が水可溶性であるとは、粒子がリンスまたはフラッシュ工程の際に溶解することを意味し、その結果粒子はチューブ系表面から溶液として除去され、従って、洗浄後にチューブ系から洗い流さなければならない固体粒子の数を低下させる。
乱流環境において、洗浄されるチューブ系の壁に対する粒子の衝撃によってバイオフィルムのエロージョンを増加させるために上述の洗浄溶液に十分な量の不活性な不溶性粒子が添加されてもよい。しかしながら、バイオフィルムを除去するために、不活性粒子の粒子サイズは10-300ミクロンの桁でなければならず、これは例えば歯磨きに使用される粒子よりもいくぶん大きいかもしれない。粒子の形状は決定的でないが、本方法の効力を最大化すべく調製されることがある。例えば、滑らかな壁の粒子については、混合物のこすり落とし作用を増加させるために不規則形状の粒子が好まれるかもしれない。好ましい粒子は気泡によって洗浄溶液中で運ばれ得るように疎水性のものである。例えば、一般には洗浄溶液に約20質量%までの不活性粒子が添加されるのが適切である。本発明の洗浄用混合物の使用温度は約0〜50℃で変動し得る。
【0010】
ここで使用する洗浄溶液および不活性粒子は安全で非毒性である。成分の大部分は現在既に歯科業務で使用されており、従って患者に対する危険性は全く存在しない。本洗浄溶液は都市の下水道に捨てることができる。本洗浄溶液はまた安全、すなわち非毒性であり非発癌性であり、ポリビニルクロリド、ポリオレフィンおよびポリテトラフルオロエチレンチューブ系のような現在一般に入手し得るプラスチックに対して非腐食性である。
本洗浄溶液はチューブ系内部で洗浄溶液の乱流を与える加圧ガスと共に使用される。本発明は以後空気をガスとして使用するとして記載されるが、酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンその他のような希ガスのような他のガスで置き変えることができる。そのようなガスはシリンダー内で加圧して保存してよく、あるいは自家供給源から得ることができる。
洗浄すべきチューブ系に装填される混合物は水性溶液中でバブル(bubble)またはフロスを作りだす界面活性剤、水性溶液に対して発泡作用を与える界面活性剤、および加圧ガスを含んでいる。この混合相混合物は短時間、すなわち、約3〜10分間でバイオフィルムを遊離させ除去するために十分な体積でチューブ系に充填される。混合相洗浄溶液の体積は種々の応用について最大化させる。
上記混合物のこすり落とし作用を更に増大させるため、加圧空気はパルス化することができる。
【0011】
空気または他の加圧ガスは約172kPa(25psi)より大きい圧力でデリバリーされ、歯科用チューブ系については約207kPa(30psi)から414kPa(60psi)の圧力が好ましい。しかしながら、圧力範囲は決定でなく、チューブ系直径によってより高く調整することができる。
小口径チューブ系がバイオフィルムおよび/またはデブリを緩ませた後、チューブ系からすべての固体物質を除くために水のみを圧縮空気と共に使用することができる。このフラッシュステップは一般に更に3分間からそれ以上を要する。
本発明は、実施例において、加圧洗浄水を供給する洗浄歯科チューブ系についてまず記載される。圧力は、552kPa(80psi)〜689kPa(100psi)の圧縮空気を連続的に供給可能なエアーコンプレッサーによって供給される。この圧力は歯科医によって使用される手動洗浄シリンジへ洗浄用組成物が入る前に約207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)まで段階的に下げられる。これに対して、一般に市水系では水は約172kPa(25psi)の圧力でデリバリーされる。
【0012】
図1は歯科医による使用のための改変冷却洗浄装置である。従来型のシステムはエアーコンプレッサー12、空気ライン13、圧力調整器14、ライン13の圧縮空気に水または他の水性溶液を加えるための水ライン16、歯科医がハンドヘルド器具22にデリバリーされるライン20中の空気およびライン21中の水の体積を調整できるための空気アダプター18および水アダプター19を有している。
本発明により、従来型装置は本発明の洗浄溶液を水ライン21に、これを洗浄するためにデリバリーするように改変される。
加圧空気が空気ライン13Aに向かうように三方向バルブ24が使用される。加圧空気にパルス作用を与えるためにソレノイドバルブ26がライン13Aに挿入される。
再充填可能な加圧コンテナ28は本発明の洗浄溶液を保存する。密封キャップ(示していない)により洗浄溶液が置き換えられることができ、ライン13Aは加圧空気がコンテナ28に入ることを可能にする。流出ライン30は混合チャンバー32に接続されている。
混合チャンバー32は加圧空気ライン13Aおよび洗浄溶液流出ライン30に接続されている。洗浄溶液および加圧空気は混合チャンバー32内で混合され、洗浄溶液に対する空気の比に依存して(この比は調整可能)乱流混合物またはフロスを作り出す。
【0013】
さらなる加圧コンテナを装備することも可能である。図1に示すように、コンテナ34は水ライン16に接続され、例えば殺生物剤を含むことができる。コンテナ34からの出口は水ライン16に直接に接続されることも可能であり、または、洗浄溶液混合物への添加のために混合チャンバー32に接続されている。
水供給源は、本発明の洗浄溶液による洗浄に続いて歯科水ライン21を水でフラシュするため、水ライン16または混合チャンバー32に接続することができる。
このシステムにおける空気圧を制御するため、圧縮空気にパルス作用を与えるためにソレノイドバルブ26を回すため、溶液の温度を制御するため、通常の歯科ユニット操作、洗浄およびフラッシュ操作の際に3方向バルブを制御するため、チャンバー34から殺生物溶液を添加するため、その他のために、従来型のコントロールパネル(示していない)を使用することができる。歯科チューブ系を洗浄するときであると注意を警告する警報灯を備えることも可能である。所望であれば、上記のシステムは適切な収納箱に入れることができる。
【0014】
このように洗浄サイクルのあいだ、トップ水ライン36はバルブV1により閉じられ、圧縮空気はバルブV2によりコンテナ28に向かわされる。ソレノイドバルブ26が作動し、コンテナ28、および必要であれば追加のコンテナ34へと通過する圧縮空気にパルス作用を作り出す。混合チャンバー32内でフロスが形成され歯科ユニットアダプター19から歯科チューブ系水ライン21へ押し出される。
リンスまたはフラッシュサイクルの間、洗浄溶液はバルブV3によってライン30において止められ、殺生物剤またはアルカリ過酸化物溶液および水はライン13Aを通してパルス化された圧縮空気と共に混合チャンバー32へ向かうことができる。加圧された水は歯科チューブ系21を通過して洗浄溶液をフラッシュし、遊離したバイオフィルムおよびチューブ系21に残っているどんな固体粒子またはデブリをもフラッシュする。殺生物剤および/または過酸化物の添加はバイオフィルムが再形成されるまでの経過時間を増加させることがある。
フラッシュサイクルの終わりに、水道水単独またはコンテナ34に保存された殺生物剤を含む水道水を用いた歯科ユニットの通常の操作が再開される。
洗浄、フラッシュ、通常操作サイクルは製造業者または歯科医が定める一定期間の間それぞれ続く。
混合チャンバー32内の乱流は、空気:液体:粒子の比および洗浄溶液及び圧縮空気の流速を操作することによりバブルまたはフロスを与える。圧縮空気は液体小滴を作り出し、または、洗浄溶液中でいかなる固体粒子も懸濁させ、従って、溶液およびフロスまたは不活性粒子のチューブ系壁への力学的衝撃により効果的にバイオフィルムをエロージョンさせる方法を生み出す。
【0015】
例として、1.8mm直径のチューブ系を通して、207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の空気圧を用いて押し出される空気は9700から15,000の間のレーノルズ数を有し、管型幾何学構造においては乱流と考えられる。洗浄溶液に不活性粒子または液滴を加えることは溶液の洗浄効果をさらに増加させる。バイオフィルムが5〜10μmの厚さを有する場合は、適用する空気圧と摩擦力との関係は既知の一次元エネルギー式によって評価できる。
直径1.8mm、長さ2.44m(8フィート)の歯科チューブ系において計算値と測定された速度は互いによく一致した。
更に、ある種の歯科チューブ系が連続的にカールしているということは、それがチューブ系壁に対して空気、固体粒子および溶液のランダムな衝撃を与え、バイオフィルムを迅速かつ完全に遊離または侵食させるので、本洗浄法にとって優れた幾何学構造である。
本発明は、洗浄歯科チューブ系についての以下の実施例1〜6において説明されるが、本発明はそこで記載される細部に限定することを意図していない。実施例中、%は特に記載のない限り質量%である。
【0016】
本発明を具体的な実施態様によって記載しているが、本発明はそのように限定されることを意図していない。本発明は添付の請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【実施例1】
【0017】
実施例1
内部表面に1年経過したバイオフィルムを有する歯科チューブ系の一部を図2に示した。バイオフィルムはチューブ系の内部表面を完全に被覆しており約200,000コロニー/cmのバクテリアからなっている。
このチューブ系の0.9m(3フィート)の部分を本発明に従って、大きさ50-100μmの炭酸カルシウム不活性粒子5質量%、および約2%の陰イオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム、約1%の非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤を含有する3%過酸化水素水溶液の洗浄溶液を用いて処理した。この洗浄溶液を図1の混合チャンバー28に添加し、この混合チャンバーに207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)に制御した1HPエアーコンプレッサーから空気を加え、空気は連続パルス化した。成分の混合およびチューブ系内で作られる乱流を最適化するべく空気量とパルス速度を制御した。混合物を歯科チューブ系に通し乱流がチューブ系を洗浄できるようにした。
次にチューブ系を蒸留水でフラッシュした。洗浄したチューブ系の内部表面を図3に示した。バイオフィルムが完全に除去されていることが明らかである。
洗浄したチューブ系の2.5cmの長さ部分の内部表面をこすり、チューブ系のその部分の水を集めることによりバクテリアについて以下のようにチューブ系をテストした。チューブ系を半分に、約1.25cmの長さに切り、3つの小片を4℃で保存した。各小片の管腔をスカルペルの刃先で15回こすり、一切のバクテリアを剥離し、存在する一切のバクテリアを懸濁するためスカルペルおよびチューブ系を水中で1分間激しく揺すった。得られた懸濁液を蒸留水で10倍に希釈し、希釈ペプトン寒天プレート上に広げた。チューブ系内の水も希釈してプレーティングした。このプレートを25℃にて2週間インキュベーションし、グラム染色カリトース(calitose)反応、オキシダーゼとグルコース発酵テストを含む通常のやり方に従ってバクテリアコロニーを計測および同定した。バクテリアの総数および生存バクテリアの総数をHobbeら、Applied & Environmental Microbioloy, 1977年5月号、1225−1228頁、およびKogureら、Can. J. of Microbiology, vol.25, 415-420(1979)の方法に従って計測した。
洗浄したチューブ系はわずかに280コロニー/(チューブ系cm)しか有しなかったが、未処理のチューブ系は約200,000コロニー/(チューブ系cm)を有していた。このように、1000倍のバクテリア数減少が得られた。図4の大きい白い粒子は水の硬度のせいで長期間の間に蓄積した沈着と考えられる。
【実施例2】
【0018】
実施例2
10〜100μmの大きさの粒子を有する50gの炭酸カルシウム粒子を、3質量%の過酸化水素水溶液、2質量%の界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムおよび、1%の非イオン界面活性剤を含む溶液450ml中に混合することにより洗浄溶液を作製した。
上記混合物を図4に示すようなバイオフィルムをその表面上に有する0.9m(3フィート)長、直径1.8mmの使用済み歯科チューブ系内に207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーによって供給される空気と共に上記混合物を導入した。洗浄用組成物を約3分間チューブ系を通してフラッシュした。
次にチューブ系を200mlの蒸留水でフラッシュした。
チューブ系内のバクテリアコロニー数はチューブ系の直線cmあたりの初期値7.15x105から洗浄後には0に低下した。チューブ内を流れる水のCFU/mlは初期値3.19x106から洗浄後に0に低下した。
図5のSEM写真は処理後のチューブ系の内部壁の全体像である。図5はチューブ系の管腔内のバイオフィルムの完全な除去を示している。チューブ系の裸の表面にはいかなるデブリまたはバイオフィルムも存在しなかった。
【実施例3】
【0019】
実施例3
576mlの3質量%過酸化水素水溶液を2質量%のドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤と混和した。この洗浄剤を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーによって供給される空気と共に使用済み歯科チューブ系へ導入した。3分間の処理後、このチューブ系を200mlの水でフラッシュした。
チューブ系1cmあたりの培養後のバクテリア数は初期値1x105から0まで減少した。水のCFU/mlは初期値3.01x106から0に減少した。
図6は処理前のチューブ系の内部壁の写真である。図7は処理後のチューブ系の内部壁の写真である。
このように、過酸化水素、界面活性剤と所定の圧力の空気の存在下で、固体粒子の非存在下であっても完全な洗浄が達成された。
【実施例4】
【0020】
実施例4
実施例2の手順を行なったが、但し、過酸化水素溶液を蒸留水に置き換えた。
CFU/cmは初期値4x105から0まで低下した。従って、水、界面活性剤、研磨粒子および所定の圧力の空気はチューブ系からバイオフィルムを除くのに十分であった。
図8は処理前のチューブ系の内部表面の写真である。
図9は、この実施例による処理後のチューブ系の内部表面の写真である。
【実施例5】
【0021】
実施例5
193mlの3質量%の過酸化水素、3質量%のドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤および50-100gの水可溶性炭酸水素ナトリウム粒子から洗浄溶液を作製した。この溶液を蒸留水で600gにした。
この洗浄溶液を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーからの空気と共に使用済み歯科チューブ系内へ3分間導入した。このチューブ系を次に蒸留水でフラッシュした。
CFU/cmは初期値5.5x104から0まで減少し、CFU/mlは初期値3x106から0まで低下した。図10のSEM写真は処理前のバイオフィルムの存在を示し、図11から分かるように、処理後のチューブ系管腔内からのバイオフィルムの完全な除去を示している。
【実施例6】
【0022】
実施例6
5%ドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤およびペルオキシカルボネートおよび1%のポリリン酸塩の混合物と水とを総量600mlに混合した。この混合物を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーから供給される圧力下で空気と共に使用済み歯科チューブ系内へ3分間導入した。このチューブ系を次に200mlの水でフラッシュした。
CFU/cmは初期値1.25x105から0まで低下し、CFU/mlは初期値3x106から0まで低下した。
【0023】
対照
対照として、水だけを207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーからの空気と共に混合し、使用済み歯科チューブ系に3分間通した。
CFU/cmは初期値7.5x104から3.5x104へ低下した。しかしながら、水のCFU/mlは2.5x106から処理後に2.38x106に低下しただけであった。
図12のSEM写真は対照処理前のバイオフィルムの存在を示し、図13は処理後のバイオフィルムのわずか約30%の低下しか示していない。
このように、空気と水の物理的力はチューブ系からバイオフィルムを除去するのに十分でない。
歯科用および医療用チューブ系を実質的なバイオフィルム蓄積無しに十分に維持するために、上記処理は少なくとも約100時間ごとに繰り返されなければならない。
バイフォフィルムは時間が経つとバクテリアコロニーが増えるだけでなく、チューブ系の表面により接着性になる。従って、処理が頻繁に繰り返される場合、例えば、4〜5日ごとの場合、バイオフィルムは本発明の組成物及び方法で比較的除去が容易なままに止まる。
本洗浄溶液および方法はまたチューブ系からバイオフィルムに加えて、有機物フィルム、粘液性または固体デブリ、例えば組織、遊離細胞(loose cell)、食品粒子その他のような、チューブ系壁に接着する他の汚染物を除去するためにも使用することができる。
このような洗浄の主たる適用物は内視鏡チューブ系であり、これは本発明により内部および外部壁の両方について洗浄できる。図14-1は内視鏡チューブの内部壁および外部壁の両方を洗浄するために使用され得る洗浄装置の概略図である。
エアーコンプレッサー100はライン102内の空気を圧縮空気パルスコントロールノズル104を通して混合チャンバー106に送る。圧力調節器108は空気流を制御する。洗浄溶液保存用チャンバー110はライン112を通して洗浄溶液を混合チャンバー106へ送る。得られた加圧空気と洗浄溶液の乱流混合物は、内視鏡チューブ120のポート118への気密適合性を与えるアダプター116(図14-2(A)を見よ)へライン114によって送られる。図14-2(A)はアダプター116と内視鏡ポート118の拡大図である。
図14-2(B)は、洗浄溶液を運ぶライン115を内視鏡チューブの外部表面に適合させるためアダプター126によって気密スリーブ124を締めつける外部ポート122の拡大図である。スリーブ124はセルロース材料、ポリオレフィンおよびポリエステルのような、どんな柔軟なプラスチックで製造することもできる。
内視鏡チューブの洗浄を行なうため、図14-1、図14-2(A)および図14-2(B)の装置を使用して、以下の実施例を行なった。
【実施例7】
【0024】
実施例7
約1.8m(6フィート)の長さと約0.110cmの内径を有する柔軟なチューブ系を部分的に炭水化物(デンプン)、タンパク質および糖を含む食品デブリ混合物で満たし、一晩乾燥させた。この残渣は内視鏡処置後に残るデブリをシミュレートすべく意図されたものである。低倍率図である図15においてこのデブリが明瞭に見える。
第1段階において、デブリ残渣を柔らかくするため5〜10分間水で内部チャンネルを満たした。
0.05%のオクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド、0.025%のジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、および0.025%のジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよび、4%の過酸化水素と混合された約1%の非イオン性および陰イオン性界面活性剤の混合物を洗浄溶液として使用した。この溶液500mlを552kPa(80psi)までの空気と混合し、5分間にわたってチャンネルに通した。
次に1リットルの水で通路をフラッシュした。
次にチャンネルを加圧空気と一緒に200mlの3〜7%過酸化水素溶液を用いて消毒した。次にチャンネルを5分間風乾した。チューブ系の内部壁は図16に示されるように、全てのデブリが洗い落とされていた。
【実施例8】
【0025】
実施例8
実施例7の方法を繰り返したが、洗浄溶液は陰イオン性と非イオン性界面活性剤の両方を3%過酸化水素溶液中に2%濃度まで含むものとした。全てのデブリは除去された。
【実施例9】
【0026】
実施例9
実施例7の方法を繰り返したが、洗浄溶液は最初に界面活性剤を蒸留水に溶かすことによって作製した。全てのデブリは除去された。
【実施例10】
【0027】
実施例10
実施例7の方法を繰り返したが、粒子サイズ50〜200μmの5%の炭酸カルシウム粒子を洗浄溶液に分散させた。全てのデブリは除去された。
【実施例11】
【0028】
実施例11
実施例8の方法を繰り返したが、粒子サイズ50〜200μmの5%の炭酸カルシウム粒子を洗浄溶液に分散させた。全てのデブリは除去された。
炭酸水素ナトリウムなどの可溶性粒子を水不溶性炭酸カルシウム粒子と置換することができる。
【実施例12】
【0029】
実施例12
約2.1m(7フィート)、直径1.1cmの内視鏡チューブの外部表面を実施例7のデブリ混合物に浸漬し一晩乾燥させた。図17の写真はチューブ系の外部表面に付着したデブリを明瞭に示している。
チューブのステムを直径1.4cmの柔軟なセルロースポリマースリーブ内に挿入した。スリーブとチューブを密閉アダプターによって一緒に接続した。実施例7の洗浄溶液(500ml)を689kPa(100psi)までの圧力の空気と混合し、スリーブ中へ5分間通した。水フラッシュサイクル、消毒サイクル、および乾燥サイクルを実施例7のように行った。全てのデブリは図18にみられるようにチューブ系の外部表面から除去された。
本洗浄溶液は、補綴インプラントおよび成人および新生児ケアの双方のための呼吸器のような洗浄すべき表面へ加圧下で撒布することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の水性洗浄組成物デリバリーシステムの概略図である。
【図2】図2は内部壁にバイオフィルムを有する歯科ユニットに使用されるチューブ系の高倍率顕微鏡写真である。このバイオフィルムは約1年たったものである。
【図3】図3は本発明により洗浄した歯科用チューブ系の内部壁の全体像写真である。
【図4】図4は本発明による処理前の別の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図5】図5は本発明による処理後の、図4の歯科用チューブ系の内部壁の全体像写真である。
【図6】図6は本発明による処理前の別の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図7】図7は本発明による処理後の、図6の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図8】図8は本発明による処理前のさらに別の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図9】図9は本発明による処理後の、図8の壁の写真である。
【図10】図10は処理前の歯科用チューブ系の別の部分の拡大写真である。
【図11】図11は本発明による処理後の図10のチューブ系の拡大写真である。
【図12】図12は処理前の更に別の歯科用チューブ系の別の内部壁の写真である。
【図13】図13は対照洗浄溶液で処理後の図12の内部壁の写真である。
【図14−1】図14-1は内視鏡チューブ系の内部および外部表面からのバイオフィルムおよびデブリの除去に使用する装置の概略図である。図中14Aは図14−2のAに、14Bは図14−2のBに対応する。
【図14−2】Aは内視鏡チューブ系の内部へ導くポートの拡大図である。Bは内視鏡チューブ系の外部壁をスリーブと接続するポートの拡大図である。
【図15】図15は洗浄前の内視鏡チューブ系内部の写真である。
【図16】図16は本発明による洗浄後の内視鏡チューブ系の内部の写真である。
【図17】図17は洗浄前の内視鏡チューブ系の外部の写真である。
【図18】図18は本発明による洗浄後の内視鏡チューブ系の外部の写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をライン(line)およびチューブ系(tubing)から除去するための洗浄溶液および方法、および、その洗浄溶液をライン及びチューブ系に送り出して洗浄する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精製あるいは未精製の通常の流水を歯科ユニットのような設備にデリバリーする小口径のチューブ系は、よく知られたように、その内部表面にバクテリアおよびカビの増殖を発生させる。水中に存在するバクテリアはチューブ系表面に強く付着し、横方向へ増殖し、バイオフィルムとして知られるものを形成する。バイオフィルムは触るとぬるぬるしたフィルムとして理解され、解析の結果バクテリア増殖であることがわかっている。
先行技術において何人かの研究者はこれらのバイオフィルム中に種々のバクテリアを同定し、それらには、フラボバクテリウム(Flavobacteriium)、モラクセラ(Moraxella)、アクロモバクター(Achromobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、ミクロコッカス(Micrococcus)およびレジオネラ(Legionella)のような何種類かの病原性の可能性のあるバクテリアが含まれている。これらのバクテリアは全てヒトに感染症を引き起こす可能性があり、レジオネラは抗生物質に高度に耐性であってその感染は致命的であるため特に関心がある。また、レジオネラのような生物は歯の治療または他の医学的治療の際に汚染した水噴霧から吸入され得る。
【0003】
リンス用水を患者の口に運ぶ歯科ユニットチューブ系は、1週間の使用後に水1mlあたり100万(1x 106)コロニー形成ユニット(1x 106 CFU/ml)を越えるバクテリアを含むことが測定されている。従って、これらの水ラインおよびチューブ系は、感染を防ぐためにチューブ壁上のバイオフイルムの除去を保証すべく定期的に洗浄されなければならない。免疫障害のある患者の感染可能性も大きな関心事である。患者が口中に何らかの開いた傷を持つ場合は、感染の危険性は当然に非常に高い。
しかしながら、バイオフィルムはチューブ系から除去するのが非常に難しい。バイオフィルムは、チューブ系が天然材料から作られていようと、ゴムベースの材料、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンその他のような合成材料で作られていようと、滑らかなチューブ系表面に強固に付着性である。殺菌剤および殺生物剤による処理はバクテリアを殺し、それによりバイオフィルムを除去するであろう。しかしながら、それらの薬剤はチューブ壁に強固に付着するバイオフィルム内へ容易には拡散せず、従って、除去は通常部分的に過ぎずバイオフィルムは極めて迅速に再現する。水デリバリー系中に存在するバクテリアレベルの200 CFU/mlより下への低減がアメリカ歯科協会(American Dental Association)により提案されている。
【0004】
定期的に洗浄すべき小口径のチューブ系を使用する他の応用例には、内視鏡チューブ系、カテーテルチューブ系、滅菌充填ポート(filling port)、および滅菌製造、食品処理その他に使用されるチューブ系が含まれる。これらのチューブ系タイプはバイオフィルムの他に、食物片、組織片、粘液、血液その他を含んでいることがあり、以後本明細書中ではこれらを「デブリ」と呼ぶ。そのようなチューブ系はまた一人の患者から他の患者への感染を防ぐため、各使用の間および各使用毎に完全に洗浄されなければならない。
アメリカ胃腸内視鏡学会によって公布されている胃腸内視鏡ユニットの洗浄ガイドラインには、感染を防ぐための患者間のチューブ系洗浄用の多段階法が含まれている。最初に、使用後直ちに洗浄溶液を用いてブラシによる機械的洗浄が行なわれる。次にチューブ系は水でリンスされ、次にグルタルアルデヒド溶液のような消毒剤を用いて滅菌が行なわれる。次にチューブ系は再び水でリンスされ、通風して乾燥される。
本発明の他の用途は、新生児および成人の両方のための呼吸器であり、これらは約8時間程度ごとに洗浄されなければならない。そのような洗浄は費用がかかるが、必要である。
従って、チューブ系の内部および外部表面からバイオフィルムおよびデブリを費用効果の高いやり方で除去し、かつバイオフィルムの再出現を阻止または遅延させる改良洗浄用組成物、および、それらの洗浄溶液を汚染したラインおよびチューブ系にデリバリーする装置が非常に望まれているであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をライン(line)およびチューブ系(tubing)から除去するための洗浄溶液および方法、および、その洗浄溶液をライン及びチューブ系に送り出して洗浄する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、潜在的病原性のあるバクテリア、および他の微生物、破砕物、組織、食物小片その他をライン(line)およびチューブ系(tubing)から除去するための混合相洗浄溶液および方法、および、その混合相洗浄溶液を加圧下でライン及びチューブ系に送り出して洗浄する装置が提供される。
本発明により、加圧ガスと適切な水性洗浄溶液の組み合わせが使用され、バイオフィルムまたはデブリをその内部表面または外部表面に有するチューブ上またはその内部において乱流環境(turbulent environment)が作り出され、これがバイオフィルムおよびデブリを完全に除去する。適切な水性洗浄溶液は水と界面活性剤を含む。酸化剤および殺生物剤も添加することができる。こすり落とす作用を与え得る不活性粒子もこの水性洗浄溶液に有利に加えることができる。この水性洗浄組成物は圧縮ガスによって洗浄されるチューブ系に送られ、これにより混合相系が作られ、これがチューブ壁に沿う乱流を与え、バイオフィルムおよびデブリのチューブ表面からの遊離を助け、チューブから遊離した物質のフラッシングを助ける。
本発明はまた上記混合相洗浄溶液を小口径チューブ系およびラインの内部へデリバリーし、圧力下でガスと混合するための装置を含む。圧縮したガス−水性洗浄溶液の組み合わせはチューブ系の内部で乱流を発生させ、これがチューブ系の内部表面からのバイオフィルムの遊離を助け、その結果、バイオフィルムは水によるフラッシングとリンスにより容易に除去できるようになる。
本発明はまた、洗浄溶液−加圧ガス混合物とチューブ系の間の気密シールを提供するアダプターを有する耐圧筒にチューブ系を封じ込めることにより上述の洗浄溶液を小口径のチューブ系およびラインの外部表面にデリバリーするための装置も含んでいる。この装置は水性溶液、場合によっては固体粒子、およびガスを加圧下で混合して洗浄すべきラインおよびチューブ系にデリバリーするための混合室を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書の有用な水性洗浄溶液は水及び界面活性剤を含んでおり、空気のようなガスと加圧下に混合されると、有機残渣を容易に流し落とせるようにチューブ系表面から遊離させるように作用する。本洗浄溶液は水ベースであるため、廃液処理に関する環境問題は低減されるか、または存在しない。
この水性洗浄溶液は水および界面活性剤だけを含んでもよいが、好ましくは、過酸化水素源のような酸化剤を含む。
適切な界面活性剤は非イオン性、陰イオン性または陽イオン性、またはそれらの混合物であってよい。水または水性溶液と共存可能などんな界面活性剤も使用することができ、一般には洗浄溶液の約5質量%までの濃度で使用できる。
適切な陰イオン界面活性剤には、例えばドデシル硫酸ナトリウムのようなアルキル硫酸塩およびスルホン酸塩が含まれる。除去すべき有機物質の湿潤性を増加させるため、および、水性界面活性剤含有溶液が加圧下でガスと混合された場合に作られる泡の質を改善するために非イオン性界面活性剤を添加することができる。
4級アミンのような陽イオン性界面活性剤はバイオフィルム内に存在する糖タンパク質およびバクテリア細胞壁と強く相互作用し、従って、バイオフィルム内のバクテリア性およびカビ性物質を可溶化する。陽イオン性界面活性剤はまた消毒特性を有していることが知られている。
【0008】
これらの界面活性剤は水性溶液に発泡作用を与え、これは洗浄されるチューブ系に乱流を与える助けとなり、また、チューブ系表面からバイオフィルムまたはデブリを遊離させる助けとなる。特に、4級アミン界面活性剤は溶液中に、洗浄の際にガス-洗浄液混合物中に乱流を形成する更なる助けとなる小さな泡を作り出し、その効果および効率的な除去の助けとなるバイオフィルムに対するこすり落とし作用が加わる。
また、酸化剤の存在はチューブ系およびラインの内部壁および外部壁からのバイオフィルムの遊離の助けとなると考えられている。適切な酸化剤には、水性溶液中でin situに過酸化水素を発生させる水性過酸化水素溶液または過ホウ酸塩、過ヨウ素酸塩およびペルオキシカルボン酸などの過酸化化合物が含まれる。ペルオキシカーボネートその他のような固体過酸化物も更なるこすり落とし作用を与えることがある。
更に、酸化剤はチューブ系の壁からのバクテリア性物質の効果的低減の助けとなるだけでなく、バイオフィルムの再出現を低下させる殺生物特性を有している。過酸化物-界面活性剤溶液を圧縮空気と混合すると、過酸化物によって増強された厚いフロス(froth)をチューブ系内に発生させ、水と空気だけよりも効率的にバイオフィルムを除去する。酸化剤は、水性溶液の約15質量%までの量で存在するのが適切であり、好ましくは約3〜15質量%で存在する。
【0009】
チューブ系の壁に対してこすり落とし作用を更に与えるために不活性粒子を本発明の水性洗浄溶液に添加することは有利であり得る。シリカ、アルミナおよびチタニア粒子のような固い不溶性粒子は界面活性剤泡とともに最も効果的なこすり落とし作用を与えるであろう。炭酸カルシウムのような不溶性の柔らかい不活性粒子、好ましくは10-300マイクロメートルのような小さな粒子サイズの不活性粒子は有利に使用することができる。これらの物質は既に歯の洗浄または歯垢の除去および歯および歯ぎんを磨くための研磨剤として通常使用されている。炭酸水素ナトリウムのような水可溶性粒子を添加することもできる。本発明によりバイオフィルムの除去は迅速に起こるため、水可溶性粒子によるある程度のこすり落とし作用が粒子の溶解前に得られる。粒子が水可溶性であるとは、粒子がリンスまたはフラッシュ工程の際に溶解することを意味し、その結果粒子はチューブ系表面から溶液として除去され、従って、洗浄後にチューブ系から洗い流さなければならない固体粒子の数を低下させる。
乱流環境において、洗浄されるチューブ系の壁に対する粒子の衝撃によってバイオフィルムのエロージョンを増加させるために上述の洗浄溶液に十分な量の不活性な不溶性粒子が添加されてもよい。しかしながら、バイオフィルムを除去するために、不活性粒子の粒子サイズは10-300ミクロンの桁でなければならず、これは例えば歯磨きに使用される粒子よりもいくぶん大きいかもしれない。粒子の形状は決定的でないが、本方法の効力を最大化すべく調製されることがある。例えば、滑らかな壁の粒子については、混合物のこすり落とし作用を増加させるために不規則形状の粒子が好まれるかもしれない。好ましい粒子は気泡によって洗浄溶液中で運ばれ得るように疎水性のものである。例えば、一般には洗浄溶液に約20質量%までの不活性粒子が添加されるのが適切である。本発明の洗浄用混合物の使用温度は約0〜50℃で変動し得る。
【0010】
ここで使用する洗浄溶液および不活性粒子は安全で非毒性である。成分の大部分は現在既に歯科業務で使用されており、従って患者に対する危険性は全く存在しない。本洗浄溶液は都市の下水道に捨てることができる。本洗浄溶液はまた安全、すなわち非毒性であり非発癌性であり、ポリビニルクロリド、ポリオレフィンおよびポリテトラフルオロエチレンチューブ系のような現在一般に入手し得るプラスチックに対して非腐食性である。
本洗浄溶液はチューブ系内部で洗浄溶液の乱流を与える加圧ガスと共に使用される。本発明は以後空気をガスとして使用するとして記載されるが、酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンその他のような希ガスのような他のガスで置き変えることができる。そのようなガスはシリンダー内で加圧して保存してよく、あるいは自家供給源から得ることができる。
洗浄すべきチューブ系に装填される混合物は水性溶液中でバブル(bubble)またはフロスを作りだす界面活性剤、水性溶液に対して発泡作用を与える界面活性剤、および加圧ガスを含んでいる。この混合相混合物は短時間、すなわち、約3〜10分間でバイオフィルムを遊離させ除去するために十分な体積でチューブ系に充填される。混合相洗浄溶液の体積は種々の応用について最大化させる。
上記混合物のこすり落とし作用を更に増大させるため、加圧空気はパルス化することができる。
【0011】
空気または他の加圧ガスは約172kPa(25psi)より大きい圧力でデリバリーされ、歯科用チューブ系については約207kPa(30psi)から414kPa(60psi)の圧力が好ましい。しかしながら、圧力範囲は決定でなく、チューブ系直径によってより高く調整することができる。
小口径チューブ系がバイオフィルムおよび/またはデブリを緩ませた後、チューブ系からすべての固体物質を除くために水のみを圧縮空気と共に使用することができる。このフラッシュステップは一般に更に3分間からそれ以上を要する。
本発明は、実施例において、加圧洗浄水を供給する洗浄歯科チューブ系についてまず記載される。圧力は、552kPa(80psi)〜689kPa(100psi)の圧縮空気を連続的に供給可能なエアーコンプレッサーによって供給される。この圧力は歯科医によって使用される手動洗浄シリンジへ洗浄用組成物が入る前に約207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)まで段階的に下げられる。これに対して、一般に市水系では水は約172kPa(25psi)の圧力でデリバリーされる。
【0012】
図1は歯科医による使用のための改変冷却洗浄装置である。従来型のシステムはエアーコンプレッサー12、空気ライン13、圧力調整器14、ライン13の圧縮空気に水または他の水性溶液を加えるための水ライン16、歯科医がハンドヘルド器具22にデリバリーされるライン20中の空気およびライン21中の水の体積を調整できるための空気アダプター18および水アダプター19を有している。
本発明により、従来型装置は本発明の洗浄溶液を水ライン21に、これを洗浄するためにデリバリーするように改変される。
加圧空気が空気ライン13Aに向かうように三方向バルブ24が使用される。加圧空気にパルス作用を与えるためにソレノイドバルブ26がライン13Aに挿入される。
再充填可能な加圧コンテナ28は本発明の洗浄溶液を保存する。密封キャップ(示していない)により洗浄溶液が置き換えられることができ、ライン13Aは加圧空気がコンテナ28に入ることを可能にする。流出ライン30は混合チャンバー32に接続されている。
混合チャンバー32は加圧空気ライン13Aおよび洗浄溶液流出ライン30に接続されている。洗浄溶液および加圧空気は混合チャンバー32内で混合され、洗浄溶液に対する空気の比に依存して(この比は調整可能)乱流混合物またはフロスを作り出す。
【0013】
さらなる加圧コンテナを装備することも可能である。図1に示すように、コンテナ34は水ライン16に接続され、例えば殺生物剤を含むことができる。コンテナ34からの出口は水ライン16に直接に接続されることも可能であり、または、洗浄溶液混合物への添加のために混合チャンバー32に接続されている。
水供給源は、本発明の洗浄溶液による洗浄に続いて歯科水ライン21を水でフラシュするため、水ライン16または混合チャンバー32に接続することができる。
このシステムにおける空気圧を制御するため、圧縮空気にパルス作用を与えるためにソレノイドバルブ26を回すため、溶液の温度を制御するため、通常の歯科ユニット操作、洗浄およびフラッシュ操作の際に3方向バルブを制御するため、チャンバー34から殺生物溶液を添加するため、その他のために、従来型のコントロールパネル(示していない)を使用することができる。歯科チューブ系を洗浄するときであると注意を警告する警報灯を備えることも可能である。所望であれば、上記のシステムは適切な収納箱に入れることができる。
【0014】
このように洗浄サイクルのあいだ、トップ水ライン36はバルブV1により閉じられ、圧縮空気はバルブV2によりコンテナ28に向かわされる。ソレノイドバルブ26が作動し、コンテナ28、および必要であれば追加のコンテナ34へと通過する圧縮空気にパルス作用を作り出す。混合チャンバー32内でフロスが形成され歯科ユニットアダプター19から歯科チューブ系水ライン21へ押し出される。
リンスまたはフラッシュサイクルの間、洗浄溶液はバルブV3によってライン30において止められ、殺生物剤またはアルカリ過酸化物溶液および水はライン13Aを通してパルス化された圧縮空気と共に混合チャンバー32へ向かうことができる。加圧された水は歯科チューブ系21を通過して洗浄溶液をフラッシュし、遊離したバイオフィルムおよびチューブ系21に残っているどんな固体粒子またはデブリをもフラッシュする。殺生物剤および/または過酸化物の添加はバイオフィルムが再形成されるまでの経過時間を増加させることがある。
フラッシュサイクルの終わりに、水道水単独またはコンテナ34に保存された殺生物剤を含む水道水を用いた歯科ユニットの通常の操作が再開される。
洗浄、フラッシュ、通常操作サイクルは製造業者または歯科医が定める一定期間の間それぞれ続く。
混合チャンバー32内の乱流は、空気:液体:粒子の比および洗浄溶液及び圧縮空気の流速を操作することによりバブルまたはフロスを与える。圧縮空気は液体小滴を作り出し、または、洗浄溶液中でいかなる固体粒子も懸濁させ、従って、溶液およびフロスまたは不活性粒子のチューブ系壁への力学的衝撃により効果的にバイオフィルムをエロージョンさせる方法を生み出す。
【0015】
例として、1.8mm直径のチューブ系を通して、207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の空気圧を用いて押し出される空気は9700から15,000の間のレーノルズ数を有し、管型幾何学構造においては乱流と考えられる。洗浄溶液に不活性粒子または液滴を加えることは溶液の洗浄効果をさらに増加させる。バイオフィルムが5〜10μmの厚さを有する場合は、適用する空気圧と摩擦力との関係は既知の一次元エネルギー式によって評価できる。
直径1.8mm、長さ2.44m(8フィート)の歯科チューブ系において計算値と測定された速度は互いによく一致した。
更に、ある種の歯科チューブ系が連続的にカールしているということは、それがチューブ系壁に対して空気、固体粒子および溶液のランダムな衝撃を与え、バイオフィルムを迅速かつ完全に遊離または侵食させるので、本洗浄法にとって優れた幾何学構造である。
本発明は、洗浄歯科チューブ系についての以下の実施例1〜6において説明されるが、本発明はそこで記載される細部に限定することを意図していない。実施例中、%は特に記載のない限り質量%である。
【0016】
本発明を具体的な実施態様によって記載しているが、本発明はそのように限定されることを意図していない。本発明は添付の請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【実施例1】
【0017】
実施例1
内部表面に1年経過したバイオフィルムを有する歯科チューブ系の一部を図2に示した。バイオフィルムはチューブ系の内部表面を完全に被覆しており約200,000コロニー/cmのバクテリアからなっている。
このチューブ系の0.9m(3フィート)の部分を本発明に従って、大きさ50-100μmの炭酸カルシウム不活性粒子5質量%、および約2%の陰イオン界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム、約1%の非イオン性界面活性剤を含む界面活性剤を含有する3%過酸化水素水溶液の洗浄溶液を用いて処理した。この洗浄溶液を図1の混合チャンバー28に添加し、この混合チャンバーに207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)に制御した1HPエアーコンプレッサーから空気を加え、空気は連続パルス化した。成分の混合およびチューブ系内で作られる乱流を最適化するべく空気量とパルス速度を制御した。混合物を歯科チューブ系に通し乱流がチューブ系を洗浄できるようにした。
次にチューブ系を蒸留水でフラッシュした。洗浄したチューブ系の内部表面を図3に示した。バイオフィルムが完全に除去されていることが明らかである。
洗浄したチューブ系の2.5cmの長さ部分の内部表面をこすり、チューブ系のその部分の水を集めることによりバクテリアについて以下のようにチューブ系をテストした。チューブ系を半分に、約1.25cmの長さに切り、3つの小片を4℃で保存した。各小片の管腔をスカルペルの刃先で15回こすり、一切のバクテリアを剥離し、存在する一切のバクテリアを懸濁するためスカルペルおよびチューブ系を水中で1分間激しく揺すった。得られた懸濁液を蒸留水で10倍に希釈し、希釈ペプトン寒天プレート上に広げた。チューブ系内の水も希釈してプレーティングした。このプレートを25℃にて2週間インキュベーションし、グラム染色カリトース(calitose)反応、オキシダーゼとグルコース発酵テストを含む通常のやり方に従ってバクテリアコロニーを計測および同定した。バクテリアの総数および生存バクテリアの総数をHobbeら、Applied & Environmental Microbioloy, 1977年5月号、1225−1228頁、およびKogureら、Can. J. of Microbiology, vol.25, 415-420(1979)の方法に従って計測した。
洗浄したチューブ系はわずかに280コロニー/(チューブ系cm)しか有しなかったが、未処理のチューブ系は約200,000コロニー/(チューブ系cm)を有していた。このように、1000倍のバクテリア数減少が得られた。図4の大きい白い粒子は水の硬度のせいで長期間の間に蓄積した沈着と考えられる。
【実施例2】
【0018】
実施例2
10〜100μmの大きさの粒子を有する50gの炭酸カルシウム粒子を、3質量%の過酸化水素水溶液、2質量%の界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウムおよび、1%の非イオン界面活性剤を含む溶液450ml中に混合することにより洗浄溶液を作製した。
上記混合物を図4に示すようなバイオフィルムをその表面上に有する0.9m(3フィート)長、直径1.8mmの使用済み歯科チューブ系内に207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーによって供給される空気と共に上記混合物を導入した。洗浄用組成物を約3分間チューブ系を通してフラッシュした。
次にチューブ系を200mlの蒸留水でフラッシュした。
チューブ系内のバクテリアコロニー数はチューブ系の直線cmあたりの初期値7.15x105から洗浄後には0に低下した。チューブ内を流れる水のCFU/mlは初期値3.19x106から洗浄後に0に低下した。
図5のSEM写真は処理後のチューブ系の内部壁の全体像である。図5はチューブ系の管腔内のバイオフィルムの完全な除去を示している。チューブ系の裸の表面にはいかなるデブリまたはバイオフィルムも存在しなかった。
【実施例3】
【0019】
実施例3
576mlの3質量%過酸化水素水溶液を2質量%のドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤と混和した。この洗浄剤を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーによって供給される空気と共に使用済み歯科チューブ系へ導入した。3分間の処理後、このチューブ系を200mlの水でフラッシュした。
チューブ系1cmあたりの培養後のバクテリア数は初期値1x105から0まで減少した。水のCFU/mlは初期値3.01x106から0に減少した。
図6は処理前のチューブ系の内部壁の写真である。図7は処理後のチューブ系の内部壁の写真である。
このように、過酸化水素、界面活性剤と所定の圧力の空気の存在下で、固体粒子の非存在下であっても完全な洗浄が達成された。
【実施例4】
【0020】
実施例4
実施例2の手順を行なったが、但し、過酸化水素溶液を蒸留水に置き換えた。
CFU/cmは初期値4x105から0まで低下した。従って、水、界面活性剤、研磨粒子および所定の圧力の空気はチューブ系からバイオフィルムを除くのに十分であった。
図8は処理前のチューブ系の内部表面の写真である。
図9は、この実施例による処理後のチューブ系の内部表面の写真である。
【実施例5】
【0021】
実施例5
193mlの3質量%の過酸化水素、3質量%のドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤および50-100gの水可溶性炭酸水素ナトリウム粒子から洗浄溶液を作製した。この溶液を蒸留水で600gにした。
この洗浄溶液を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーからの空気と共に使用済み歯科チューブ系内へ3分間導入した。このチューブ系を次に蒸留水でフラッシュした。
CFU/cmは初期値5.5x104から0まで減少し、CFU/mlは初期値3x106から0まで低下した。図10のSEM写真は処理前のバイオフィルムの存在を示し、図11から分かるように、処理後のチューブ系管腔内からのバイオフィルムの完全な除去を示している。
【実施例6】
【0022】
実施例6
5%ドデシル硫酸ナトリウム界面活性剤およびペルオキシカルボネートおよび1%のポリリン酸塩の混合物と水とを総量600mlに混合した。この混合物を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーから供給される圧力下で空気と共に使用済み歯科チューブ系内へ3分間導入した。このチューブ系を次に200mlの水でフラッシュした。
CFU/cmは初期値1.25x105から0まで低下し、CFU/mlは初期値3x106から0まで低下した。
【0023】
対照
対照として、水だけを207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の間に設定したコンプレッサーからの空気と共に混合し、使用済み歯科チューブ系に3分間通した。
CFU/cmは初期値7.5x104から3.5x104へ低下した。しかしながら、水のCFU/mlは2.5x106から処理後に2.38x106に低下しただけであった。
図12のSEM写真は対照処理前のバイオフィルムの存在を示し、図13は処理後のバイオフィルムのわずか約30%の低下しか示していない。
このように、空気と水の物理的力はチューブ系からバイオフィルムを除去するのに十分でない。
歯科用および医療用チューブ系を実質的なバイオフィルム蓄積無しに十分に維持するために、上記処理は少なくとも約100時間ごとに繰り返されなければならない。
バイフォフィルムは時間が経つとバクテリアコロニーが増えるだけでなく、チューブ系の表面により接着性になる。従って、処理が頻繁に繰り返される場合、例えば、4〜5日ごとの場合、バイオフィルムは本発明の組成物及び方法で比較的除去が容易なままに止まる。
本洗浄溶液および方法はまたチューブ系からバイオフィルムに加えて、有機物フィルム、粘液性または固体デブリ、例えば組織、遊離細胞(loose cell)、食品粒子その他のような、チューブ系壁に接着する他の汚染物を除去するためにも使用することができる。
このような洗浄の主たる適用物は内視鏡チューブ系であり、これは本発明により内部および外部壁の両方について洗浄できる。図14-1は内視鏡チューブの内部壁および外部壁の両方を洗浄するために使用され得る洗浄装置の概略図である。
エアーコンプレッサー100はライン102内の空気を圧縮空気パルスコントロールノズル104を通して混合チャンバー106に送る。圧力調節器108は空気流を制御する。洗浄溶液保存用チャンバー110はライン112を通して洗浄溶液を混合チャンバー106へ送る。得られた加圧空気と洗浄溶液の乱流混合物は、内視鏡チューブ120のポート118への気密適合性を与えるアダプター116(図14-2(A)を見よ)へライン114によって送られる。図14-2(A)はアダプター116と内視鏡ポート118の拡大図である。
図14-2(B)は、洗浄溶液を運ぶライン115を内視鏡チューブの外部表面に適合させるためアダプター126によって気密スリーブ124を締めつける外部ポート122の拡大図である。スリーブ124はセルロース材料、ポリオレフィンおよびポリエステルのような、どんな柔軟なプラスチックで製造することもできる。
内視鏡チューブの洗浄を行なうため、図14-1、図14-2(A)および図14-2(B)の装置を使用して、以下の実施例を行なった。
【実施例7】
【0024】
実施例7
約1.8m(6フィート)の長さと約0.110cmの内径を有する柔軟なチューブ系を部分的に炭水化物(デンプン)、タンパク質および糖を含む食品デブリ混合物で満たし、一晩乾燥させた。この残渣は内視鏡処置後に残るデブリをシミュレートすべく意図されたものである。低倍率図である図15においてこのデブリが明瞭に見える。
第1段階において、デブリ残渣を柔らかくするため5〜10分間水で内部チャンネルを満たした。
0.05%のオクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド、0.025%のジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、および0.025%のジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよび、4%の過酸化水素と混合された約1%の非イオン性および陰イオン性界面活性剤の混合物を洗浄溶液として使用した。この溶液500mlを552kPa(80psi)までの空気と混合し、5分間にわたってチャンネルに通した。
次に1リットルの水で通路をフラッシュした。
次にチャンネルを加圧空気と一緒に200mlの3〜7%過酸化水素溶液を用いて消毒した。次にチャンネルを5分間風乾した。チューブ系の内部壁は図16に示されるように、全てのデブリが洗い落とされていた。
【実施例8】
【0025】
実施例8
実施例7の方法を繰り返したが、洗浄溶液は陰イオン性と非イオン性界面活性剤の両方を3%過酸化水素溶液中に2%濃度まで含むものとした。全てのデブリは除去された。
【実施例9】
【0026】
実施例9
実施例7の方法を繰り返したが、洗浄溶液は最初に界面活性剤を蒸留水に溶かすことによって作製した。全てのデブリは除去された。
【実施例10】
【0027】
実施例10
実施例7の方法を繰り返したが、粒子サイズ50〜200μmの5%の炭酸カルシウム粒子を洗浄溶液に分散させた。全てのデブリは除去された。
【実施例11】
【0028】
実施例11
実施例8の方法を繰り返したが、粒子サイズ50〜200μmの5%の炭酸カルシウム粒子を洗浄溶液に分散させた。全てのデブリは除去された。
炭酸水素ナトリウムなどの可溶性粒子を水不溶性炭酸カルシウム粒子と置換することができる。
【実施例12】
【0029】
実施例12
約2.1m(7フィート)、直径1.1cmの内視鏡チューブの外部表面を実施例7のデブリ混合物に浸漬し一晩乾燥させた。図17の写真はチューブ系の外部表面に付着したデブリを明瞭に示している。
チューブのステムを直径1.4cmの柔軟なセルロースポリマースリーブ内に挿入した。スリーブとチューブを密閉アダプターによって一緒に接続した。実施例7の洗浄溶液(500ml)を689kPa(100psi)までの圧力の空気と混合し、スリーブ中へ5分間通した。水フラッシュサイクル、消毒サイクル、および乾燥サイクルを実施例7のように行った。全てのデブリは図18にみられるようにチューブ系の外部表面から除去された。
本洗浄溶液は、補綴インプラントおよび成人および新生児ケアの双方のための呼吸器のような洗浄すべき表面へ加圧下で撒布することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の水性洗浄組成物デリバリーシステムの概略図である。
【図2】図2は内部壁にバイオフィルムを有する歯科ユニットに使用されるチューブ系の高倍率顕微鏡写真である。このバイオフィルムは約1年たったものである。
【図3】図3は本発明により洗浄した歯科用チューブ系の内部壁の全体像写真である。
【図4】図4は本発明による処理前の別の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図5】図5は本発明による処理後の、図4の歯科用チューブ系の内部壁の全体像写真である。
【図6】図6は本発明による処理前の別の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図7】図7は本発明による処理後の、図6の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図8】図8は本発明による処理前のさらに別の歯科用チューブ系の内部壁の写真である。
【図9】図9は本発明による処理後の、図8の壁の写真である。
【図10】図10は処理前の歯科用チューブ系の別の部分の拡大写真である。
【図11】図11は本発明による処理後の図10のチューブ系の拡大写真である。
【図12】図12は処理前の更に別の歯科用チューブ系の別の内部壁の写真である。
【図13】図13は対照洗浄溶液で処理後の図12の内部壁の写真である。
【図14−1】図14-1は内視鏡チューブ系の内部および外部表面からのバイオフィルムおよびデブリの除去に使用する装置の概略図である。図中14Aは図14−2のAに、14Bは図14−2のBに対応する。
【図14−2】Aは内視鏡チューブ系の内部へ導くポートの拡大図である。Bは内視鏡チューブ系の外部壁をスリーブと接続するポートの拡大図である。
【図15】図15は洗浄前の内視鏡チューブ系内部の写真である。
【図16】図16は本発明による洗浄後の内視鏡チューブ系の内部の写真である。
【図17】図17は洗浄前の内視鏡チューブ系の外部の写真である。
【図18】図18は本発明による洗浄後の内視鏡チューブ系の外部の写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ系内部表面からバイオフィルムおよびデブリを除去する方法であって、
(a)水および1以上の界面活性剤から洗浄溶液を形成すること、
(b)前記洗浄溶液を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の圧力および9700から15,000の間のレーノルズ数を有する空気と混合し、前記チューブ系の内部表面に混合相混合物を、バイオフィルムおよびデブリを遊離させるに十分な時間供給すること、および、
(c)前記チューブ系内部表面をフラッシングして前記バイオフィルムおよびデブリを除去すること、
を含む、前記方法
【請求項2】
チューブ系が内視鏡チューブ系を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チューブ系が水ラインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
洗浄溶液が更に1以上の酸化剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酸化剤が過酸化水素である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
1以上の界面活性剤が、1以上の陽イオン界面活性剤、1以上の非イオン性界面活性剤、または1以上の陰イオン界面活性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
洗浄溶液が更に固体粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
固体粒子が水溶性である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
固体粒子が水不溶性である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の圧力を有する空気がパルス化されている、請求項1記載の方法。
【請求項1】
チューブ系内部表面からバイオフィルムおよびデブリを除去する方法であって、
(a)水および1以上の界面活性剤から洗浄溶液を形成すること、
(b)前記洗浄溶液を207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の圧力および9700から15,000の間のレーノルズ数を有する空気と混合し、前記チューブ系の内部表面に混合相混合物を、バイオフィルムおよびデブリを遊離させるに十分な時間供給すること、および、
(c)前記チューブ系内部表面をフラッシングして前記バイオフィルムおよびデブリを除去すること、
を含む、前記方法
【請求項2】
チューブ系が内視鏡チューブ系を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チューブ系が水ラインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
洗浄溶液が更に1以上の酸化剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酸化剤が過酸化水素である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
1以上の界面活性剤が、1以上の陽イオン界面活性剤、1以上の非イオン性界面活性剤、または1以上の陰イオン界面活性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
洗浄溶液が更に固体粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
固体粒子が水溶性である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
固体粒子が水不溶性である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
207kPa(30psi)〜414kPa(60psi)の圧力を有する空気がパルス化されている、請求項1記載の方法。
【図1】
【図14−1】
【図14−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図14−1】
【図14−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−302231(P2008−302231A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152801(P2008−152801)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【分割の表示】特願平11−504478の分割
【原出願日】平成10年6月11日(1998.6.11)
【出願人】(502216875)プリンストン トレード アンド テクノロジー インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【分割の表示】特願平11−504478の分割
【原出願日】平成10年6月11日(1998.6.11)
【出願人】(502216875)プリンストン トレード アンド テクノロジー インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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