説明

ラインヘッド、ラインヘッドの製造方法および画像形成装置

【課題】 レンズアレイの周期的な光量ムラを解消することが可能なラインヘッドを提供する。
【解決手段】 複数の有機EL素子を配列してなり、正立等倍結像する複数のレンズ素子31aが整列配置されたレンズアレイ31を介して被露光部に光を照射するラインヘッド1であって、有機EL素子のレンズ素子31a側に、有機EL素子からの光を集光してレンズ素子31aに入射させるマイクロレンズ13,14が形成され、レンズ素子31aの周辺部に対向配置されたマイクロレンズ14の曲率が、レンズ素子31aの中央部に対向配置されたマイクロレンズ13の曲率より、小さく形成されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置において露光手段として用いられるラインヘッドとその製造方法、及びこのラインヘッドを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタとして、ラインプリンタ(画像形成装置)が知られている。このラインプリンタは、被露光部となる感光体ドラムの周面上に、帯電器、ライン状のプリンタヘッド(ラインヘッド)、現像器、転写器などの装置を近接配置したものである。すなわち、帯電器によって帯電された感光体ドラムの周面上に、ラインヘッドに設けられた発光素子の選択的な発光動作で露光を行なうことにより、静電潜像を形成し、この潜像を現像器から供給されるトナーで現像して、そのトナー像を転写器で用紙に転写するようにしたものである。
【0003】
ところで、前記のようなラインヘッドの発光素子としては、一般に発光ダイオードなどが用いられている。しかし、これは数千個の発光点を精度良く配列することが極めて困難であるという課題がある。そこで、近年では、発光点を精度良く作り込める有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)を発光素子とする発光素子アレイを、露光手段として備えた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、前述したような電子写真方式のラインプリンタでは、通常、ラインヘッドからの放射光を、セルフォック(登録商標)レンズアレイ(日本板硝子社の商品名;以下、セルフォック(登録商標)レンズをSL、セルフォック(登録商標)レンズアレイをSLアレイと記す)を通過させることで感光体ドラム上に結像し、露光する方式が採られている。SLアレイは、正立等倍像する円柱状のSL素子を多数配列したことにより、広範囲の画像の結像を可能にしたものである。
【0005】
ところで、SLアレイの作る像は、1本1本のSL素子の作る像(正立等倍結像)が重なりあってできており、SL素子は、フットボールを半分にしたような光量分布を有している。したがって、SLアレイでは、各SL素子の配列ピッチに伴ない、周期的な光量ムラが生じてしまっている。
しかし、このような周期的な光量ムラがあると、前記のラインヘッドとSLアレイとを組合わせた場合に、SLアレイの光量ムラに起因して主走査方向の光強度の均一性が悪化し、露光精度が低下して、得られるプリントの品質が損なわれてしまう。
【0006】
このような背景のもとに、SLアレイの結像原理に起因する周期的な光量ムラを取り除く技術として、端面発光素子の発光層の厚みを変える技術(例えば、特許文献2参照)、および拡散板を挿入する技術(例えば、特許文献3参照)が提案されている。また、発光素子の駆動制御による光量周期ムラの補正方法としては、予めラインヘッドの光量ムラを測定し、その補正データをメモリに持ち、発光素子の駆動データをその補正データで補正する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平11−198433号公報
【特許文献2】特開平5−330135号公報
【特許文献3】特開平8−197776号公報
【特許文献4】特開平9−314897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、端面発光素子の発光層の厚みを変える技術では、各発光素子の寿命や特性がばらつくなどの問題がある。また、拡散板を挿入する技術では、露光の解像度が低下するという問題がある。さらに、発光素子の駆動制御により補正を行う方法では、新たな回路の形成にコストを要するという問題がある。このように、SLアレイの周期的な光量ムラを解消する技術は確立されておらず、したがってその提供が望まれている。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、レンズアレイの周期的な光量ムラを解消する技術を提供するとともに、このラインヘッドを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のラインヘッドは、複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドであって、前記発光素子の前記レンズ素子側に、前記発光素子からの光を集光して前記レンズ素子に入射させるマイクロレンズが形成され、前記レンズ素子の周辺部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率が、前記レンズ素子の中央部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率より、小さく形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、曲率の小さいマイクロレンズからの出射光は光軸の近傍に絞られるので、レンズ素子の周縁部に対してより多くの光を入射させることができる。これにより、レンズ素子の中央部から周縁部までの光量分布がフラットになり、レンズアレイの周期的な光量ムラを解消することができる。
【0010】
また、複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドであって、前記発光素子の前記レンズ素子側に、前記発光素子からの光を集光して前記レンズ素子に入射させるマイクロレンズが形成され、前記レンズ素子の周辺部に対向配置された前記マイクロレンズの平面積が、前記レンズ素子の中央部に対向配置された前記マイクロレンズの平面積より、大きく形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、平面積の大きいマイクロレンズは発光素子から多くの光を入射させることができるので、レンズ素子の周縁部に対してより多くの光を入射させることができる。これにより、レンズ素子の中央部から周縁部までの光量分布がフラットになり、レンズアレイの周期的な光量ムラを解消することができる。
【0011】
一方、本発明のラインヘッドの製造方法は、複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドの製造方法であって、前記発光素子と前記レンズ素子との間に配置された基板上の、前記発光素子に対応する領域に親液処理を施すとともに、前記親液処理領域以外の領域に撥液処理を施す工程と、前記親液処理領域に、マイクロレンズの形成材料を含む液状体を塗布する工程と、前記液状体を乾燥させて、マイクロレンズを形成する工程と、を有し、前記液状体塗布工程では、体積の異なる液状体を塗布することを特徴とする。
この構成によれば、体積の異なる液状体を塗布することにより、曲率の異なるマイクロレンズを簡単に形成することができる。
【0012】
なお、前記液状体塗布工程は、液滴吐出ヘッドから前記マイクロレンズの形成材料を含む液滴を吐出することによって行うことが望ましい。
この構成によれば、曲率の異なるマイクロレンズを正確に形成することができる。
【0013】
また、複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドの製造方法であって、前記発光素子と前記レンズ素子との間に配置された基板上の、前記発光素子に対応する領域に親液処理を施すとともに、前記親液処理領域以外の領域に撥液処理を施す工程と、前記親液処理領域に、マイクロレンズの形成材料を含む液状体を塗布する工程と、前記液状体を乾燥させて、マイクロレンズを形成する工程と、を有し、前記親液処理工程では、大きさの異なる前記親液処理領域を形成することを特徴とする。
この構成によれば、大きさの異なる前記親液処理領域を形成することにより、曲率の異なるマイクロレンズを簡単に形成することができる。
【0014】
一方、本発明の画像形成装置は、上述したラインヘッド、または上述したラインヘッドの製造方法を使用して製造されたラインヘッドを、露光手段として備えたことを特徴とする。
この構成によれば、レンズアレイの周期的な光量ムラを解消することができるので、描画品質に優れた画像形成装置を提供することができる。
本発明のラインヘッドは、複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドであって、前記発光素子の前記レンズ素子側に、マイクロレンズが形成され、前記レンズ素子の周辺部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率が、前記レンズ素子の中央部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率より、小さく形成されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で参照する各図面においては、図面を見易くするために、各構成要素の寸法等を適宜変更して表示している。
[第1実施形態]
最初に、第1実施形態のラインヘッドにつき、図5等を用いて説明する。第1実施形態のラインヘッドは、有機EL素子からの光を集光してSL素子31aに入射させるマイクロレンズ13,14を備え、SL素子31aの周辺部に対向配置されたマイクロレンズ14の曲率が、SL素子31aの中央部に対向配置されたマイクロレンズ13の曲率より、小さく形成されているものである。
【0016】
(ラインヘッドモジュール)
最初に、画像形成装置の露光手段として用いられるラインヘッドモジュールについて説明する。
図1は、ラインヘッドモジュールの側面断面図である。本実施形態のラインヘッドモジュール101は、複数の有機EL素子(不図示)およびマイクロレンズ12を整列配置したラインヘッド1と、ラインヘッド1からの光を正立等倍結像させるSL素子31aを整列配置したSLアレイ31とを、ヘッドケース52に固定して構成されている。このラインヘッドモジュール101では、ラインヘッド1に整列配置された有機EL素子からの光をマイクロレンズ12で集光し、SLアレイ31を構成するSL素子31aに入射させ、感光体ドラム41の外周面に成立等倍結像させて露光するようになっている。
【0017】
(ラインヘッド)
図2は、ラインヘッドを模式的に示した図であり、図2(a)は底面図であり、図2(b)は側面図である。図2(a)に示すように、ラインヘッド1は、長細い矩形の素子基板2上に、複数の有機EL素子3を配列してなる発光素子列3Aと、有機EL素子3を駆動させる駆動素子4からなる駆動素子群と、これら駆動素子4(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群5とを一体形成したものである。なお、図2(a)では有機EL素子3が1列に配置されているが、千鳥状に2列に配置してもよい。この場合には、ラインヘッド1の長手方向における有機EL素子3のピッチを小さくすることが可能になり、画像形成装置の解像度を向上させることができる。
【0018】
有機EL素子3は、一対の電極間に少なくとも有機発光層を備えたものであり、その一対の電極から発光層に電流を供給することにより発光するようになっている。その有機EL素子3における一方の電極には電源線8が接続され、他方の電極には駆動素子4を介して電源線7が接続されている。この駆動素子4は、薄膜トランジスタ(TFT)や薄膜ダイオード(TFD)等のスイッチング素子で構成されている。駆動素子4にTFTを採用した場合には、そのソース領域に電源線8が接続され、ゲート電極に制御回路群5が接続される。そして、制御回路群5により駆動素子4の動作が制御され、駆動素子4により有機EL素子3への通電が制御されるようになっている。なお、有機EL素子3および駆動素子4の詳細な構造および製造方法については後述する。
【0019】
図2(b)に示すように、ラインヘッド1の底面には、有機EL素子からの光を集光してSL素子に入射させるため、有機EL素子と同数のマイクロレンズ12が形成されている。
図8(a)は、ラインヘッドの側面断面の拡大図である。後述するように、本実施形態のラインヘッドは、基板2の上面に形成された有機EL素子3から、基板2を通して光を取り出すものである(ボトムエミッション方式)。その基板2の下面には、有機EL素子の形成領域に開口部18aを有するバンク(隔壁)18が形成されている。そして、その開口部18aの内部に、アクリル系樹脂等の光透過性材料からなるマイクロレンズ12が形成されている。
【0020】
マイクロレンズ12を形成するには、まず有機EL素子の形成領域に対応する開口部18aの内部を親液処理するとともに、バンク18の表面を撥液処理する。なお、親液処理は酸素ガスを用いてプラズマ処理することにより、撥液処理はCF4ガスを用いてプラズマ処理することにより、それぞれ行うことができる。次に、液滴吐出ヘッドを用いて、マイクロレンズの形成材料を含む液滴を開口部18aに吐出する。その後、吐出された液状体を硬化させて、マイクロレンズ12を形成する。
【0021】
ここで、液滴吐出ヘッドから吐出された液滴は、撥液処理されたバンク18の表面に付着することなく、親液処理された開口部18aのみに付着する。したがって、大きさの異なる親液処理領域を形成することにより、平面積の異なるマイクロレンズ12を形成することができる。また、開口部18aの体積を越えて液滴が吐出されても、撥液処理されたバンク18の表面に濡れ広がることなく、開口部18aの内側でドーム状に盛り上がる。したがって、液滴の吐出量を異ならせることにより、曲率の異なるマイクロレンズ12を形成することができる。
【0022】
上述した液滴吐出ヘッドとして、通電により機械振動を生じる圧電素子を用いて液室内の圧力を変化させることによりノズルから液滴を吐出する方式の液滴吐出ヘッドを採用することが望ましい。なお、発熱体で液室内を局部的に加熱して気泡を発生させることによりノズルから液滴を吐出する方式の液滴吐出ヘッドを採用してもよい。これ以外にも、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式等を採用することもできる。
【0023】
なお、親液処理領域以外の領域に、バンク18を設ける代わりに、フッ素基を含むSAM膜(自己組織化膜)を形成してもよい。このSAM膜の表面は撥液性を示すので、上記と同様にマイクロレンズを形成することができる。
また、マイクロレンズ12の形成位置は、有機EL素子3の光出射側であればよく、基板2の下面に限られない。特に、有機EL素子からできるだけ多くの光をマイクロレンズに入射させるには、有機EL素子とマイクロレンズとの距離をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0024】
(SLアレイ)
図3は、SLアレイの斜視図である。このSLアレイ31は、日本板硝子株式会社製のSL素子31aを配列したものである。このSL素子31aは、直径0.28mm程度のファイバー状に形成されている。また、各SL素子31aは千鳥状に配置され、各SL素子31aの隙間には黒色のシリコーン樹脂32が充填されている。さらに、その周囲にフレーム34が配置されて、SLアレイ31が形成されている。
【0025】
このSL素子31aは、その中心から周辺にかけて放物線上の屈折率分布を有している。そのため、SL素子31aに入射した光は、その内部を一定周期で蛇行しながら進むようになっている。このSL素子31aの長さを調整すれば、画像を正立等倍結像させることができる。そして、正立等倍結像するSL素子31aを整列配置すれば、隣接するSL素子31aの作る像を重ね合わせることが可能になり、広範囲の画像を得ることができる。したがって、図3のSLアレイは、ラインヘッド全体からの光を精度よく結像させることができるようになっている。
【0026】
(マイクロレンズ)
図4は、ラインヘッドの光束分布およびSLアレイの光量ムラの説明図である。なお、図4(a)はラインヘッドの平面図であり、図4(b)はラインヘッドおよびSLアレイの正面断面図であり、図4(c)はSLアレイの光量分布を示すグラフである。
有機EL素子(不図示)から放射状に照射された光は、図4(b)に示すマイクロレンズ12により集光されて、SL素子31aに出射される。なお、マイクロレンズ12により集光することなくSL素子31aに入射させた場合には、SLアレイの光伝達効率はラインヘッドの全発光量の6%程度であるが、マイクロレンズ12により集光してSL素子31aに入射させることにより、光伝達効率を少なくとも6%以上に向上させることができる。
【0027】
このように、有機EL素子から放射状に照射された光を、マイクロレンズ12により集光するので、マイクロレンズ12からの出射光の光束分布12bは略球状となっている。なお図4(b)では、各マイクロレンズ12が同一形状に形成されているので、各マイクロレンズ12からの光束分布12bは同一形状となっている。一方、複数のマイクロレンズ12に対して、1個のSL素子31aが対向配置されている。そして、1個のSL素子31aからの出射光は、フットボールを半分にしたような光量分布31bを示している。
【0028】
このようなSL素子31aを並べてSLアレイ31が構成されるので、SLアレイ31からの出射光には、図4(c)に示す周期的な光量ムラが発生する。すなわち、各SL素子31aの中央部の光量が大きく周縁部の光量が小さい状態が、SL素子31aの配列方向に沿って周期的に発生することになる。なお、SLアレイ31全体における光量ムラのレベルは±5%程度である。そして、このような光量ムラを伴うラインヘッドモジュールを用いて、図1に示す感光体ドラム41を露光すれば、画像形成装置の描画品質を低下させることになる。
【0029】
図5は、第1実施形態に係るラインヘッドの光束分布およびSLアレイの光量ムラの説明図である。なお、図5(a)はラインヘッドの平面図であり、図5(b)はラインヘッドおよびSLアレイの正面断面図であり、図5(c)はSLアレイの光量分布を示すグラフである。
第1実施形態のラインヘッドでは、図5(b)に示すように、各マイクロレンズの曲率を連続的に変化させている。すなわち、SL素子31aの周縁部に対向配置されたマイクロレンズ14の曲率を、SL素子31aの中央部に対向配置されたマイクロレンズ13の曲率より小さくしている。なお、曲率の異なるマイクロレンズは、マイクロレンズの形成材料を含む液滴の吐出量を異ならせることによって形成することが可能である。
【0030】
図7(a)は、マイクロレンズの曲率と集光作用との関係の説明図である。図7(a)に示すように、マイクロレンズ14の曲率R2は、マイクロレンズ13の曲率R1より小さくなっている。この場合、マイクロレンズ14からの出射光は、マイクロレンズ13からの出射光に比べて、光軸の近傍に絞られている。そのため、図5(b)に示すように、マイクロレンズ13からの出射光の光束分布13bが略真球状であるのに対して、マイクロレンズ14からの出射光の光束分布14bは略楕円球状となっている。これにより、各マイクロレンズの曲率が等しい場合と比べて、SL素子31aの周縁部に対してより多くの光を入射させることができる。したがって、SL素子31aの周縁部からの出射光の光量を、SL素子31aの中央部からの出射光の光量と同等にすることが可能になる。その結果、図5(c)に示すように、SLアレイ31全体の光量分布がフラットになり、周期的な光量ムラを解消することができる。そして、このような光量ムラのないラインヘッドモジュールを用いて、図1に示す感光体ドラム41を露光することにより、画像形成装置の描画品質を向上させることができる。
【0031】
なお、図5(b)に示す1個のSL素子31aの光読み込み角は±11°程度である。したがって、ラインヘッド1から出射した光が上記角度範囲を超えてSL素子31aに入射した場合には、その光は結像に寄与しないことになる。そこで、上述したようにマイクロレンズ14からの出射光を光軸の近傍に絞れば、上記角度範囲内でSL素子31aに入射する光を格段に増加させることができる。そして、SLアレイ31全体における光量ムラのレベルは±5%程度であるから、本実施形態の構成によってこの光量ムラを十分に解消することができるのである。
【0032】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のラインヘッドにつき、図6等を用いて説明する。
図6は、第2実施形態に係るラインヘッドの光束分布およびSLアレイの光量ムラの説明図である。なお、図6(a)はラインヘッドの平面図であり、図6(b)はラインヘッドおよびSLアレイの正面断面図であり、図6(c)はSLアレイの光量分布を示すグラフである。第2実施形態のラインヘッドは、SL素子31aの周辺部に対向配置されたマイクロレンズ16の平面積が、SL素子31aの中央部に対向配置されたマイクロレンズ15の平面積より、大きく形成されているものである。
【0033】
第2実施形態のラインヘッドでは、図6(a)および図6(b)に示すように、各マイクロレンズの平面積を連続的に変化させている。すなわち、SL素子31aの周縁部に対向配置されたマイクロレンズ16の平面積を、SL素子31aの中央部に対向配置されたマイクロレンズ15の平面積より大きくしている。なお、平面積の異なるマイクロレンズは、親液処理領域の面積を異ならせることによって形成することが可能である。
【0034】
図7(b)は、マイクロレンズの平面積と集光作用との関係の説明図である。図7(b)に示すように、マイクロレンズ16の平面積S2は、マイクロレンズ15の平面積S1より大きくなっている。この場合、マイクロレンズ16では、マイクロレンズ15に比べて、有機EL素子3から多くの光を入射させることができる。したがって、図6(b)に示すように、マイクロレンズ15からの出射光の光束分布15bに比べて、マイクロレンズ16からの出射光の光束分布16bは、面積が広く(光が強く)なっている。これにより、各マイクロレンズの平面積が等しい場合と比べて、SL素子31aの周縁部に対してより多くの光を入射させることができる。したがって、SL素子31aの周縁部からの出射光の光量を、SL素子31aの中央部からの出射光の光量と同等にすることが可能になる。その結果、図6(c)に示すように、SLアレイ31全体の光量分布がフラットになり、周期的な光量ムラを解消することができる。そして、このような光量ムラのないラインヘッドモジュールを用いて、図1に示す感光体ドラム41を露光することにより、画像形成装置の描画品質を向上させることができる。
【0035】
(有機EL素子および駆動素子)
次に、ラインヘッドにおける有機EL素子や駆動素子等の詳細な構成について、図8(a)、(b)を参照して説明する。
発光層60で発光した光を画素電極23側から出射する、いわゆるボトムエミッション型である場合には、素子基板2側から発光光を取り出す構成であるので、素子基板2としては透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。
【0036】
また、発光層60で発光した光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型である場合には、この素子基板2の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成となるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
本実施形態では、ボトムエミッション型が採用され、したがって素子基板2には透明なガラスが用いられるものとする。
【0037】
素子基板2上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123(駆動素子4)などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。
【0038】
ここで、有機EL素子3および駆動用TFT123(駆動素子4)を図2(a)に対応した模式図で示すと、図8(b)に示すようになる。図8(b)において、電源線7は駆動素子4のソース/ドレイン電極に接続し、電源線8は有機EL素子3の陰極50に接続している。
そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、図8(a)に示すように、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0039】
また、本実施形態においては、画素電極23上にSiO2等の親液性の絶縁材料からなる無機隔壁25が形成されており、この無機隔壁25には開口25aが形成されている。ここで、無機隔壁25は絶縁材料からなっているので、後述するように前記開口25a内に臨むようにして設けられた機能層においては、この無機隔壁25で覆われた箇所には電流が流れず、したがって発光する領域、すなわち発光面積は、この無機隔壁25の開口25aによって決定されるようになっている。
【0040】
陽極として機能する画素電極23は、特にボトムエミッション型である場合、透明導電材料によって形成され、具体的にはITOが好適に用いられる。
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0041】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。
【0042】
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0043】
陰極50は、前記発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
また、この陰極50上には接着層を介して封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0044】
また、このような有機EL素子3の下方には、前述したように回路部11が設けられている。この回路部11は素子基板2上に形成されたものである。すなわち、素子基板2の表面にはSiO2を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0045】
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0046】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0047】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化膜284が形成されている。この平坦化膜284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、駆動用TFT123(駆動素子4)やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0048】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化膜284の表面上に形成されるとともに、該平坦化膜284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0049】
画素電極23が形成された平坦化膜284の表面には、画素電極23と、前述した無機隔壁25とが形成されており、さらに無機隔壁25上には、有機隔壁221が形成されている。そして、画素電極23上には、無機隔壁25に形成された前記開口25aと、有機隔壁221に形成された開口221aとの内部、すなわち画素領域に、前記の正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層され、これによって機能層が形成されている。
【0050】
一方、素子基板2の下面には、有機EL素子の形成領域に開口部18aを有するバンク(隔壁)18が形成されている。そして、その開口部18aの内部に、アクリル樹脂等の光透過性材料からなるマイクロレンズ12が形成されている。
【0051】
(ラインヘッドの製造方法)
次に、このような構成のラインヘッドの製造方法について説明する。
まず、図9(a)に示すように、素子基板2の表面に、下地保護層281を形成し、さらにこの下地保護層281上にポリシリコン層等を形成して、このポリシリコン層等から回路部11を形成する。
次いで、素子基板2の全面を覆うように画素電極23となる透明導電膜を、ITO等によって形成する。そして、この導電膜をパターニングすることにより、平坦化膜284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成する。
【0052】
次いで、画素電極23上および平坦化膜284上に、SiO2等の絶縁材料をCVD法等で成膜して隔壁層(図示せず)を形成し、続いて、公知のホトリソグラフィー技術、エッチング技術を用いて隔壁層をパターニングする。これにより、図9(b)に示すように、形成する各有機EL素子の画素領域毎に開口25aを形成すると同時に、無機隔壁25を形成する。
【0053】
次いで、図9(c)に示すように、無機隔壁25の所定位置、詳しくは画素領域を囲む位置に樹脂等によって有機隔壁221を形成する。
次いで、素子基板2の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成するものする。具体的には、該プラズマ処理は、予備加熱工程と、有機隔壁221の表面および開口221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、無機隔壁25の表面をそれぞれ親液性にする親液化工程と、有機隔壁221の上面および開口221aの壁面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とで構成する。
【0054】
すなわち、基材(バンクなどを含む素子基板2)を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親液化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0055】
なお、このCF4プラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび無機隔壁25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび無機隔壁25の構成材料であるSiO2、TiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0056】
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70を形成する。この正孔輸送層形成工程では、液滴吐出法として、特にインクジェット法が好適に採用される。すなわち、このインクジェット法により、正孔輸送層形成材料を電極面23c上に選択的に配し、これを塗布する。その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層70の形成材料としては、例えば前記のPEDOT:PSSをイソプロピルアルコールなどの極性溶媒に溶解させたものが用いられる。
【0057】
ここで、このインクジェット法による正孔輸送層70の形成にあたっては、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔輸送層形成材料を充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを無機隔壁25に形成された前記開口25a内に位置する電極面23cに対向させ、インクジェットヘッドと基材(素子基板2)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面23cに吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
【0058】
このとき、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、無機隔壁25の開口25a内に満たされて該開口25a内に臨むようになる。その一方で、撥液処理された有機隔壁221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からずれて、液滴の一部が有機隔壁221の表面にかかったとしても、該表面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が無機隔壁25の開口25a内に引き込まれる。
なお、この正孔輸送層形成工程以降では、各種の形成材料や形成した要素の酸化・吸湿を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0059】
次いで、図10(a)に示すように、発光層形成工程による発光層60の形成を行う。発光層形成工程では、前記の正孔輸送層70の形成と同様に、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機隔壁221に形成された開口221a内、すなわち画素領域上に発光層60を形成する。
以上の正孔輸送層70の形成工程と発光層60の形成工程とにより、本発明における機能層を形成することができる。
【0060】
次いで、図10(b)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50を形成する。この陰極50については、EL素子を効率よく発光させるため、電子注入層と導電層のような積層構造を採用するのが一般的であり、例えばアルミニウムなどの金属材料が使用可能である。なお、この陰極50の形成では、前記正孔輸送層70や発光層60の形成とは異なり、蒸着法やスパッタ法等で行うため、画素領域にのみ選択的に形成材料を配するのでなく、素子基板2のほぼ全面に形成材料が設けられることになる。そこで、本実施形態では、素子基板2と図示しないメタルマスクを位置合わせして蒸着法やスパッタ法で陰極50を成膜することにより、図10(b)に示したように基板周辺部に陰極50が形成されないようにする。
【0061】
その後、図10(c)に示すように、封止工程によって封止基板30を接着する。この封止工程では、透明な封止基板30と素子基板2との間に、透明な接着剤40を塗布し、気泡が入らないようにして封止基板30と素子基板2とを貼り合わせる。
なお、前記実施形態では、本発明のラインヘッド1に形成されるEL素子として、有機EL素子を用いた例を示したが、これに代えて無機EL素子を用いてもよいのはもちろんである。
【0062】
次いで、図8(a)に示すように、素子基板2の下面に、有機EL素子の形成領域に開口部18aを有するバンク(隔壁)18を形成する。そして、その開口部18aの内部に、液滴吐出法によりマイクロレンズ12を形成する。なお、素子基板2の下面に対するバンク18およびマイクロレンズ12の形成は、素子基板2の上面に回路部11等を形成する前に行ってもよい。
【0063】
(ラインヘッドモジュールの使用形態)
次に、本実施形態のラインヘッドモジュールの使用形態について説明する。
本実施形態のラインヘッドモジュールは、画像形成装置における露光装置として使用される。その場合、ラインヘッドモジュールは感光体ドラムに対向配置され、ラインヘッドからの光をSLアレイにより感光体ドラム上に正立等倍結像させて使用する。
【0064】
(タンデム方式の画像形成装置)
まず、タンデム方式の画像形成装置について説明する。
図11は、タンデム方式の画像形成装置の概略構成図であり、図11中符号80は画像形成装置である。この画像形成装置80は、本発明のラインヘッドモジュール101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K、41C、41M、41Yの露光装置にそれぞれ配置したもので、タンデム方式のものとして構成されたものである。
【0065】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図11中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっている。
【0066】
ここで、前記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図11中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0067】
各感光体ドラム41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体ドラム41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明のラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0068】
また、このラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体ドラム41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0069】
ここで、各ラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)は、有機EL素子の配列方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各ラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
【0070】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0071】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0072】
なお、図11中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
【0073】
(4サイクル方式の画像形成装置)
次に、4サイクル方式の画像形成装置について説明する。
図12は、4サイクル方式の画像形成装置画の概略構成図である。図12において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、像書込手段(露光手段)として機能する本実施形態のラインヘッドモジュール167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0074】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢印A方向に回転するよう構成されたものである。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢印B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢印C方向に回転するトナ−供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0075】
図12中符号165は、前記のように像担持体として機能する感光体ドラム、166は一次転写部材、168は帯電器である。また、167は像書込手段(露光手段)として機能する本実施形態のラインヘッドモジュールである。感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより、現像ローラ162aとは逆の方向となる矢印D方向に回転駆動されるようになっている。
【0076】
中間転写ベルト169は、駆動ローラ170aと従動ローラ170bとの間に張架されたものである。駆動ローラ170aは、前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されたもので、中間転写ベルト169に動力を伝達するようになっている。すなわち、該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆の方向となる矢印E方向に回動するようになっている。
【0077】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙が搬送されるようになっている。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写されるようになっている。二次転写ローラ171は、クラッチによって中間転写ベルト169に離当接されるようになっており、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接され、用紙に画像が転写されるようになっている。
【0078】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータHを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢印G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。
【0079】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータとしては、例えば低速のブラシレスモータが用いられている。また、中間転写ベルト169については、色ずれ補正などが必要となるためステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略した制御手段からの信号によって制御されるようになっている。
【0080】
図12に示した状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ162aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが矢印A方向に90度回転する。
【0081】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次に、シアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0082】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後さらに回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレイ178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
なお、本発明のラインヘッドモジュールを備えた画像形成装置は上記に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】ラインヘッドモジュールの側面断面図である。
【図2】ラインヘッドを模式的に示した図である。
【図3】SLアレイの斜視図である。
【図4】ラインヘッドの光束分布およびSLアレイの光量ムラの説明図である。
【図5】第1実施形態に係るラインヘッドの光束分布およびSLアレイの光量ムラの説明図である。
【図6】第2実施形態に係るラインヘッドの光束分布およびSLアレイの光量ムラの説明図である。
【図7】マイクロレンズの曲率および平面積と集光作用との関係の説明図である。
【図8】有機EL素子および駆動素子の説明図である。
【図9】ラインヘッドの製造工程の説明図である。
【図10】ラインヘッドの製造工程の説明図である。
【図11】タンデム方式の画像形成装置の概略構成図である。
【図12】4サイクル方式の画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1‥ラインヘッド 13‥マイクロレンズ 14‥マイクロレンズ 31‥レンズアレイ 31a‥レンズ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドであって、
前記発光素子の前記レンズ素子側に、前記発光素子からの光を集光して前記レンズ素子に入射させるマイクロレンズが形成され、
前記レンズ素子の周辺部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率が、前記レンズ素子の中央部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率より、小さく形成されていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドであって、
前記発光素子の前記レンズ素子側に、前記発光素子からの光を集光して前記レンズ素子に入射させるマイクロレンズが形成され、
前記レンズ素子の周辺部に対向配置された前記マイクロレンズの平面積が、前記レンズ素子の中央部に対向配置された前記マイクロレンズの平面積より、大きく形成されていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項3】
複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドの製造方法であって、
前記発光素子と前記レンズ素子との間に配置された基板上の、前記発光素子に対応する領域に親液処理を施すとともに、前記親液処理領域以外の領域に撥液処理を施す工程と、
前記親液処理領域に、マイクロレンズの形成材料を含む液状体を塗布する工程と、
前記液状体を硬化させて、マイクロレンズを形成する工程と、を有し、
前記液状体塗布工程では、体積の異なる液状体を塗布することを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記液状体塗布工程は、液滴吐出ヘッドから前記マイクロレンズの形成材料を含む液滴を吐出することによって行うことを特徴とする請求項3に記載のラインヘッドの製造方法。
【請求項5】
複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドの製造方法であって、
前記発光素子と前記レンズ素子との間に配置された基板上の、前記発光素子に対応する領域に親液処理を施すとともに、前記親液処理領域以外の領域に撥液処理を施す工程と、
前記親液処理領域に、マイクロレンズの形成材料を含む液状体を塗布する工程と、
前記液状体を硬化させて、マイクロレンズを形成する工程と、を有し、
前記親液処理工程では、大きさの異なる親液処理領域を形成することを特徴とするラインヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のラインヘッド、または請求項3ないし請求項5のいずれかに記載のラインヘッドの製造方法を使用して製造されたラインヘッドを、露光手段として備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
複数の発光素子を配列してなり、複数のレンズ素子を介して被露光部に光を照射するラインヘッドであって、
前記発光素子の前記レンズ素子側に、マイクロレンズが形成され、
前記レンズ素子の周辺部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率が、前記レンズ素子の中央部に対向配置された前記マイクロレンズの曲率より、小さく形成されていることを特徴とするラインヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−56175(P2006−56175A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241930(P2004−241930)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】