説明

ラインヘッドおよび画像形成装置

【課題】ガラス基板にレンズを配したレンズアレイの離型性向上を可能とする技術を提供する。
【解決手段】ガラス基板に対して樹脂で形成されたレンズを設けたレンズアレイを備える。レンズアレイでは、複数のレンズを第1方向に並べたレンズ行が、第1方向に直交もしくは略直交する第2方向に複数並んでおり、ガラス基板のうちのレンズが設けられた領域をレンズエリアとしたとき、レンズエリアの第1方向における第1方向幅Wl1と第2方向における第2方向幅Wl2とが次式、Wl1>Wl2を満たす関係にある。結像光学系の光軸を含んだ第1方向のレンズ切断面において、レンズ外周部の曲率は、レンズ中心の曲率と逆の符号を有する、あるいは、レンズ中心の曲率よりも小さい絶対値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス基板に樹脂で形成されたレンズと、発光素子が配設された発光素子基板とを備えたラインヘッド、および該ラインヘッドを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなラインヘッドとしては、複数の発光素子に対して一つのレンズを設けるとともに、発光素子からの光をレンズにより結像して、潜像担持体表面等の像面を露光するラインヘッドが知られている。例えば、特許文献1に記載のラインヘッドでは、複数の発光素子をグループ化した発光素子グループ(同特許文献における発光ダイオード素子アレイに設けられた複数の発光ダイオードに相当)が、長手方向に複数並べられている。そして、レンズアレイでは各発光素子グループ毎にレンズが設けられており、発光素子グループはレンズに向けて光ビームを射出する。
【0003】
【特許文献1】特許第2801838号公報
【特許文献2】特開2005−276849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンズ直径を大きく取ること等を目的として、複数のレンズを長手方向(第1方向)に複数並べたレンズ行を、幅方向(第2方向)に複数並べてレンズアレイを構成することができる。つまり、このレンズアレイでは、複数のレンズが2次元的に配置されている。また、このレンズアレイの作成は、レンズ形状に応じて凹部が形成された、いわゆる金型を用いて行うことができる。例えば特許文献2では、ガラス基板と金型(同文献の型112)とを当接させた状態で凹部に光硬化性樹脂が充填されるとともに、光硬化性樹脂が光照射により固められることで、ガラス基板にレンズが形成される。そして、光硬化性樹脂が固まったところで、金型がレンズおよびガラス基板から離される(離型)。そして、この離型動作は、レンズ形成の際の温度変化により樹脂であるレンズが変形することで、効率的に実行される。つまり、温度変化によりレンズが収縮することでレンズが金型から離れるため、レンズアレイを金型から容易に離型させることができる。
【0005】
しかしながら、ガラス基板を用いたレンズアレイは、離型性の観点から次のような問題があった。つまり、一般的にガラスの線膨張率は低いため、ガラスを基材とするガラス基板は温度変化に対する収縮量が小さい。したがって、上述した温度変化に伴うレンズの収縮がガラス基板に妨げられて、レンズが金型から速やかに離れずに、良好な離型性を実現することが困難である場合があった。そして、その結果、レンズに欠陥が発生したり、レンズ特性がレンズ毎でばらついたりするとの様々な問題が引き起こされる恐れがあった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ガラス基板に樹脂製のレンズを配したレンズアレイの離型性向上を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかるラインヘッドは、上記目的を達成するために、ガラス基板に樹脂で形成された第1のレンズと、第1の方向に発光素子が配設された発光素子基板と、を備え、第1のレンズの光軸を含む第1方向の断面の第1のレンズの形状は、第1のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも第1のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さいことを特徴としている。
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、ガラス基板に樹脂で形成されたレンズ、及び発光素子が第1方向に配設された発光素子基板を有する露光部と、露光部により潜像が形成される潜像担持体と、潜像担持体に形成された潜像を現像する現像と、を備えレンズの光軸を含む第1方向の断面の形状は、レンズの外周部の曲率の絶対値よりレンズの光軸の曲率の絶対値が小さいことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(ラインヘッド、画像形成装置)では、ガラス基板に樹脂でレンズを形成しており、金型をレンズおよびガラス基板から離型する際には第1方向から金型の離型が行われるため、離型時にはレンズおよびガラス基板に対して不均一な応力がかかる。つまり、離型時には第1方向に比較的大きな応力がレンズおよびガラス基板にかかる。そこで、本発明では、レンズの光軸を含む第1方向の断面の第1のレンズは、第1のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも第1のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さいという形状を有している。したがって、第1方向におけるレンズ外周部における接線角度が小さく抑えられており、このレンズ外周部は金型から離れやすい形状を有している。その結果、このようなレンズとガラス基板によりレンズアレイを構成した場合、当該レンズアレイの離型性を向上させることができる。なお、第1のレンズの光軸を含む第1方向の断面形状を、第1のレンズの外周部と光軸とで曲率の符号が反転した形状に仕上げてもよい。
【0010】
また、より高精細な露光動作等を目的として、上記レンズに対して第1方向に樹脂製の第2のレンズを配設したり、上記レンズに対して第3のレンズを第1方向と異なる方向に配設したり、第3のレンズに対して第4のレンズを第1方向に配設してもよく、これらのレンズについても、上記と同様に構成することで、レンズ外周部が金型から離れやすくなり、レンズアレイの離型性が向上する。
【0011】
また、第1方向に長いラインヘッドを得るためには、レンズアレイを第1方向に延設する必要がある。これに対応するために、上記レンズアレイに対して第2のレンズアレイを第1方向に配設してもよい。つまり、複数のレンズアレイを第1方向に配設してラインヘッドの長尺化に対応してもよい。この場合にも、第5のレンズについても、上記と同様に構成することで、レンズ外周部が金型から離れやすくなり、レンズアレイの離型性が向上する。
【0012】
また、第1のレンズが、
【0013】
【数2】

の関係を有するように構成してもよい。
【0014】
また、レンズの直径が0.5[mm]以上であるラインヘッドに対しては、本発明を適用することが特に好適である。なぜなら、このラインヘッドでは、レンズアレイは0.5[mm]以上と比較的大きなレンズを有することとなり、離型性が悪化する可能性がある。そこで、本発明を適用して、レンズアレイの離型性の向上を図ることが好適であるからである。
【0015】
また、レンズでは、第1方向における直径と第2方向における直径とが異なるように構成しても良い。なんとなれば、このようにレンズを構成することで、レンズ設計の自由度が向上して、良好なレンズ特性が容易に得ることが可能となるからである。
【0016】
また、発光素子とレンズとの間に絞りが設けられているように構成しても良い。なんとなれば、レンズに対する不要な光の入射が抑制されて、良好な露光動作が実現可能となるからである。
【0017】
また、レンズは光硬化性樹脂で形成されても良い。なんとなれば、光硬化性樹脂は光を照射することで速やかに硬化させることができる。したがって、簡便にレンズを形成することができるため、レンズアレイの作成工程を簡素化して、レンズアレイのコスト低下可能となるからである。
【0018】
また、ガラス基板が、第1方向の幅が第2方向の幅より長いレンズエリアを有し、レンズエリア内にレンズが配設される場合には、第1方向においてはレンズエリアの温度変化による収縮量は比較的大きい。しかしながら、本発明では、上記したようにレンズエリアの温度変化による収縮量が比較的大きい第1方向において、レンズ外周部は金型から離れやすい形状を有している。その結果、レンズアレイの離型性が向上される。
【0019】
また、発光素子が有機EL素子であるラインヘッドに対しては、本発明を適用することが特に好適である。つまり、発光素子として有機EL素子を用いた場合、LED等を用いた場合と比較して発光素子の光量が少ない。特に、ボトムエミッション型の有機EL素子を発光素子として用いた場合はなおさらである。したがって、十分な光をレンズに取り込むためにレンズ直径を大きくする必要が生じる場合がある。しかしながら、レンズ直径を大きくしたことで、上述のような離型性が悪化する可能性があった。これに対して本発明を適用した場合、レンズ外周部における接線角度が小さく抑えられて、各レンズは金型から離れやすい形状を有することとなる。その結果、レンズ直径を大きくした場合であっても、レンズアレイの離型性の向上が可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、最初に本明細書で用いる用語について説明する(「A.用語の説明」の項参照)。この用語の説明に続いて、本発明の適用対象であるラインヘッドを装備した画像形成装置の基本構成(「B.基本構成」の項参照)、および該ラインヘッドの基本動作(「C.基本動作」の項参照)について説明する。そして、これらの基本構成および基本動作の説明に続いて、本実施形態にかかるラインヘッドのレンズアレイに求められる構成(「D.レンズアレイに求められる構成」の項参照)について説明するとともに、本発明の実施形態におけるレンズアレイが備える構成(「E.本実施形態におけるレンズアレイの構成」の項参照)について説明する。
【0021】
A.用語の説明
図1および図2は、本明細書で用いる用語の説明図である。ここで、これらの図を用いて本明細書において用いる用語について整理する。本明細書では、感光体ドラム21の表面(像面IP)の搬送方向を副走査方向SDと定義し、該副走査方向SDに直交あるいは略直交する方向を主走査方向MDと定義している。また、ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに対応し、その幅方向LTDが副走査方向SDに対応するように、感光体ドラム21の表面(像面IP)に対して配置されている。
【0022】
レンズアレイ299が有する複数のレンズLSに一対一の対応関係でヘッド基板293に配置された、複数(図1および図2においては8個)の発光素子2951の集合を、発光素子グループ295と定義する。つまり、ヘッド基板293において、複数の発光素子2951からなる発光素子グループ295は、複数のレンズLSのそれぞれに対して配置されている。また、発光素子グループ295からの光ビームが該発光素子グループ295に対応するレンズLSにより結像されて、像面IPに形成される複数のスポットSPの集合を、スポットグループSGと定義する。つまり、複数の発光素子グループ295に一対一で対応して、複数のスポットグループSGを形成することができる。また、各スポットグループSGにおいて、主走査方向MDおよび副走査方向SDに最上流のスポットを、特に第1のスポットと定義する。そして、第1のスポットに対応する発光素子2951を、特に第1の発光素子と定義する。
【0023】
また、図2の「像面上」の欄に示すように、スポットグループ行SGR、スポットグループ列SGCを定義する。つまり、主走査方向MDに並ぶ複数のスポットグループSGをスポットグループ行SGRと定義する。そして、複数行のスポットグループ行SGRは、所定のスポットグループ行ピッチPsgrで副走査方向SDに並んで配置される。また、副走査方向SDにスポットグループ行ピッチPsgrで且つ主走査方向MDにスポットグループピッチPsgで並ぶ複数(同図においては3個)のスポットグループSGをスポットグループ列SGCと定義する。なお、スポットグループ行ピッチPsgrは、副走査方向SDに互いに隣接する2つのスポットグループ行SGRそれぞれの幾何重心の、副走査方向SDにおける距離である。また、スポットグループピッチPsgは、主走査方向MDに互いに隣接する2つのスポットグループSGそれぞれの幾何重心の、主走査方向MDにおける距離である。
【0024】
同図の「レンズアレイ」の欄に示すように、レンズ行LSR、レンズ列LSCを定義する。つまり、長手方向LGDに並ぶ複数のレンズLSをレンズ行LSRと定義する。そして、複数行のレンズ行LSRは、所定のレンズ行ピッチPlsrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDにレンズ行ピッチPlsrで且つ長手方向LGDにレンズピッチPlsで並ぶ複数(同図においては3個)のレンズLSをレンズ列LSCと定義する。なお、レンズ行ピッチPlsrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つのレンズ行LSRそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、レンズピッチPlsは、長手方向LGDに互いに隣接する2つのレンズLSそれぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0025】
同図の「ヘッド基板」の欄に示すように、発光素子グループ行295R、発光素子グループ列295Cを定義する。つまり、長手方向LGDに並ぶ複数の発光素子グループ295を発光素子グループ行295Rと定義する。そして、複数行の発光素子グループ行295Rは、所定の発光素子グループ行ピッチPegrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDに発光素子グループ行ピッチPegrで且つ長手方向LGDに発光素子グループピッチPegで並ぶ複数(同図においては3個)の発光素子グループ295を発光素子グループ列295Cと定義する。なお、発光素子グループ行ピッチPegrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つの発光素子グループ行295Rそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、発光素子グループピッチPegは、長手方向LGDに互いに隣接する2つの発光素子グループ295それぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0026】
同図の「発光素子グループ」の欄に示すように、発光素子行2951R、発光素子列2951Cを定義する。つまり、各発光素子グループ295において、長手方向LGDに並ぶ複数の発光素子2951を発光素子行2951Rと定義する。そして、複数行の発光素子行2951Rは、所定の発光素子行ピッチPelrで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDに発光素子行ピッチPelrで且つ長手方向LGDに発光素子ピッチPelで並ぶ複数(同図においては2個)の発光素子2951を発光素子列2951Cと定義する。なお、発光素子行ピッチPelrは、幅方向LTDに互いに隣接する2つの発光素子行2951Rそれぞれの幾何重心の、幅方向LTDにおける距離である。また、発光素子ピッチPelは、長手方向LGDに互いに隣接する2つの発光素子2951それぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0027】
同図の「スポットグループ」の欄に示すように、スポット行SPR、スポット列SPCを定義する。つまり、各スポットグループSGにおいて、長手方向LGDに並ぶ複数のスポットSPをスポット行SPRと定義する。そして、複数行のスポット行SPRは、所定のスポット行ピッチPsprで幅方向LTDに並んで配置される。また、幅方向LTDにスポットピッチPsprで且つ長手方向LGDにスポットピッチPspで並ぶ複数(同図においては2個)のスポットをスポット列SPCと定義する。なお、スポット行ピッチPsprは、副走査方向SDに互いに隣接する2つのスポット行SPRそれぞれの幾何重心の、副走査方向SDにおける距離である。また、スポットピッチPspは、主走査方向MDに互いに隣接する2つのスポットSPそれぞれの幾何重心の、長手方向LGDにおける距離である。
【0028】
B.基本構成
図3は本発明の適用対象であるラインヘッドを装備した画像形成装置の一例を示す図である。また、図4は図3の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図3は、カラーモード実行時に対応する図面である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCはエンジンコントローラECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラHCに与える。また、このヘッドコントローラHCは、メインコントローラMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部EGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0029】
画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図3においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0030】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kは、主走査方向MDに所定長さの表面を有する円筒形の感光体ドラム21を設けている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれは、対応する色のトナー像を、感光体ドラム21の表面に形成する。感光体ドラムは、軸方向が主走査方向MDに略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図3において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0031】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
【0032】
ラインヘッド29は、その長手方向が主走査方向MDに対応するとともに、その幅方向が副走査方向SDに対応するように、感光体ドラム21に対して配置されており、ラインヘッド29の長手方向は主走査方向MDと略平行となっている。ラインヘッド29は、長手方向に並べて配置された複数の発光素子を備えるとともに、感光体ドラム21から離間配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に対して光が照射されて、該表面に静電潜像が形成される。
【0033】
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
【0034】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0035】
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0036】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図3において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラ85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラ85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、後に詳述するように、カラーモード実行時は、図3に示すように全ての1次転写ローラ85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラ85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0037】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラ85のうち、カラー1次転写ローラ85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラ85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラ85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0038】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。また、この下流ガイドローラ86は、モノクロ1次転写ローラ85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラ85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0039】
駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラ121のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラ121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラ82と2次転写ローラ121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0040】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0041】
2次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0042】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。したがって、次に説明するようにブレード対向ローラ83が移動する場合は、ブレード対向ローラ83と一緒にクリーナブレード711及び廃トナーボックス713も移動することとなる。
【0043】
図5は、本発明にかかるラインヘッドの概略を示す斜視図である。また、図6は、図5に示したラインヘッドの幅方向断面図である。上述した通り、その長手方向LGDが主走査方向MDに対応するとともに、その幅方向LTDが副走査方向SDに対応するように、ラインヘッド29は感光体ドラム21に対して配置されている。なお、長手方向LGDと幅方向LTDは、互いに直交もしくは略直交している。後述するように、このラインヘッド29では、ヘッド基板293に複数の発光素子が形成されており、各発光素子は感光体ドラム21の表面に向けて光ビームを射出する。そこで、本明細書では、長手方向LGDおよび幅方向LTDに直交する方向であって、発光素子から感光体ドラム表面に向う方向を、光ビームの進行方向Doaとする。この光ビームの進行方向Doaは、後述する光軸OAと平行もしくは略平行である。
【0044】
ラインヘッド29は、ケース291を備えるとともに、かかるケース291の長手方向LGDの両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、かかる位置決めピン2911を、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされた感光体カバー(図示省略)に穿設された位置決め孔(図示省略)に嵌め込むことで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされる。そして更に、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定される。
【0045】
ケース291の内部には、ヘッド基板293、絞り板298および2枚のレンズアレイ299(299A,299B)が配置されている。ヘッド基板293の表面293−hにはケース291の内側が当接する一方、ヘッド基板293の裏面293−tには裏蓋2913が当接している。この裏蓋2913は、固定器具2914によりヘッド基板293を介してケース291内部に押圧されている。つまり、固定器具2914は、裏蓋2913をケース291内部側(図6における上側)に押圧する弾性力を有しており、かかる弾性力により裏蓋が押圧されることで、ケース291の内部が光密に(換言すれば、ケース291内部から光が漏れないように、及び、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉される。なお、固定器具2914は、ケース291の長手方向LGDに複数箇所設けられている。
【0046】
ヘッド基板293の裏面293−tには、複数の発光素子をグループ化した発光素子グループ295が設けられている。ヘッド基板293はガラス等の光透過性部材で形成されており、発光素子グループ295の各発光素子が射出した光ビームは、ヘッド基板293の裏面293−tから表面293−hへと透過可能である。この発光素子はボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子であり、封止部材294により覆われている。
【0047】
ヘッド基板293に対しては、絞り板298が台座296Aを介して対向配置される。この絞り板298には発光素子グループ295毎に絞り開口2981が穿設されており、発光素子グループ295から射出された光ビームは、この絞り開口2981により絞られる。また、絞り板298の光ビームの進行方向Doa側には、2枚のレンズアレイ299が並んで配置されている。つまり、レンズアレイ299Aが台座296Bを介して絞り板298に対向配置されており、さらに、レンズアレイ299Bが台座296Cを介してレンズアレイ299Aに対向配置されている。これら2枚のレンズアレイ299A,299Bそれぞれには、発光素子グループ295毎にレンズLSが設けられており、発光素子グループ295からの光ビームはレンズLSに入射する。このように、ラインヘッド29では、ヘッド基板293、絞り板298、レンズアレイ299Aおよびレンズアレイ299Bの各部材が、この順番で光ビームの進行方向Doaに並んで配置されており、各部材の間に台座296が設けられている。
【0048】
図7はレンズアレイの斜視図である。また、図8はレンズアレイの平面図であり、光ビームの進行方向Doaから見た場合に相当する。レンズアレイ299はガラスで構成されたガラス基板2991を有している。このガラス基板2991は、長手方向LGDに長尺な形状を有している。ガラス基板2991の裏面2991−tにはレンズエリアLAが設けられており、このレンズエリアLAに対して上記レンズLSが複数形成されている。このレンズエリアLAの長手方向LGDにおける長手方向幅Wl1(第1方向幅)と、幅方向LTDにおける幅方向幅Wl2(第2方向幅)とは、次式
Wl1>Wl2
とを満たす関係にあり、レンズエリアLAは長手方向LGDに長尺な形状を有している。また、幅方向LTDにおいて、レンズアレイLAの外側には、座面突起2993,2995およびアライメントマーク2997が取り付けられている。このアライメントマーク2997は、ラインヘッド29を組み立てる際に、レンズアレイ299と他の部材との位置合わせに用いられる。また、座面突起2993の幅方向LTDの端部には、当接面2993Fが形成されている。そして、レンズアレイ299がケース291に取り付いた状態において、座面突起2993の当接面2993Fがケース291の内部に当接する。これにより、レンズアレイ299がケース291に対して位置決めされる。また、レンズアレイ299をケース291に取り付ける前に、座面突起2993より高さの低い座面突起2995に開口絞りを接着などの方法により取り付けて、レンズアレイと開口絞りを一体部品とすることで、レンズと開口絞りを精度良く配置することが可能となり、ラインヘッド29の高精度な組立てが可能となる。なお、本実施形態では、複数のレンズアレイ299が長手方向LGDに並んでいる。つまり、例えば、日本工業規格A3の用紙に対応する画像形成装置に搭載するラインヘッド29は、長手方向LGDにおいて300[mm]程度の長さが必要となる。しかしながら、レンズ金型加工寸法の制限等によりレンズエリアLAの長さが300[mm]のレンズアレイを製造することは困難である。そこで、この実施形態では、複数のレンズアレイ299が長手方向LGDに並べて配置されている。
【0049】
このようなレンズアレイ299は、例えば図9に示す方法により形成することができる。つまり、ガラス基板(光透過性基板)2991の裏面(レンズ形成面)2991−t上に光硬化性樹脂91が供給される。この供給量はレンズLSに対応した量に調整されている。これに続いて、レンズLSの形状に応じた凹部92を有する金型93がガラス基板2991の裏面2991−tに対して当接し、さらに押圧される。これによって、金型93とガラス基板2991との間には光硬化性樹脂91が充填される。そして、ガラス基板2991の表面2991−h側からUV光線が照射されて光硬化性樹脂91が硬化して、ガラス基板2991にレンズLSが形成される(同図(b))。
【0050】
次に、レンズアレイ299から金型93が離型される。この実施形態で採用しているガラス基板2991は、長手方向LGDの幅が幅方向LTDの幅よりも長い、いわゆる長尺形状を有している。したがって、ガラス基板2991の裏面2991−tから金型93を均等に離間させて離型を行うことは事実上不可能であるため、同図(c)に示すように、まず最初に長手方向LGDにおける金型93の一方端(同図の左手端部)をガラス基板2991の裏面2991−tから剥がし、その一方端をさらにガラス基板2991の裏面2991−tから離間させることで長手方向LGDの一方側(同図の左手側)から他方側(同図の右手側)に順番に離型させている。そして、金型93の他方端(同図の右手端部)がガラス基板2991の裏面2991−tから離間することで離型処理が完了する(同図(d))。このようにしてレンズアレイ299を形成しているため、離型時にはレンズLSおよびガラス基板2991に対して不均一な応力がかかってしまう。つまり、離型時には長手方向LGDに比較的大きな応力がレンズLSおよびガラス基板2991にかかる。
【0051】
図10はヘッド基板の裏面の構成を示す図であり、ヘッド基板の表面から裏面を見た場合に相当する。また、図11は、ヘッド基板裏面に設けられた発光素子グループの構成を示す図である。なお、図10において、レンズLSが二点鎖線で示されているが、これはレンズLSに対して発光素子グループ295が一対一で設けられていることを示すためのものであり、レンズLSがヘッド基板裏面に配置されていることを示すものではない。図10に示すように、発光素子グループ295は8個の発光素子2951をグループ化して構成されている。そして、各発光素子グループ295において、8個の発光素子2951は次のように配置されている。つまり、図11に示すように、発光素子グループ295では、長手方向LGDに沿って4個の発光素子2951を並べて発光素子行2951Rが構成されるとともに、2個の発光素子行2951Rが幅方向LTDに発光素子行ピッチPelrで並んで設けられている。また、各発光素子行2951Rは長手方向LGDに相互にずれており、各発光素子2951の長手方向LGDにおける位置は互いに異なる。そして、このように構成された発光素子グループ295は、長手方向LGDに長手発光素子グループ幅W295gmを有するとともに、幅方向LTDに幅発光素子グループ幅W295gsを有しており、長手発光素子グループ幅W295gmは、幅発光素子グループ幅W295gsよりも大きい。
【0052】
また、ヘッド基板293の裏面293−tでは、このように構成された発光素子グループ295が複数配置されている。つまり、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に3個の発光素子グループ295を配置した発光素子グループ列295Cが、長手方向LGDに沿って複数並んでいる。換言すれば、長手方向LGDに複数の発光素子グループ295を並べて発光素子グループ行295Rが構成されるとともに、3行の発光素子グループ行295Rが幅方向LTDに設けられている。また、各発光素子グループ行295Rは長手方向LGDに互いにずらして配置されており、各発光素子グループ295の長手方向LGDにおける位置PTEは互いに異なる。このように本実施形態では、ヘッド基板293において複数の発光素子グループ295が2次元的に配置されている。なお、同図においては、発光素子グループ295の位置は発光素子グループ295の重心位置で代表されており、発光素子グループ295の長手方向LGDにおける位置PTEは、発光素子グループ295の位置から長手方向軸LGDに下ろした垂線の足で表されている。
【0053】
このようにしてヘッド基板293に形成された各発光素子2951は、例えばTFT(Thin Film Transistor)回路等からの駆動を受けて、互いに等しい波長の光ビームを射出する。この発光素子2951の発光面はいわゆる完全拡散面光源であり、発光面から射出される光ビームはランバートの余弦則に従う。
【0054】
図12は、レンズアレイの平面図であり、像面側(図6における上側)からレンズアレイを見た場合に相当する。レンズアレイ299では、発光素子グループ295毎にレンズLSが設けられている。つまり、同図が示すように、レンズアレイ299では、幅方向LTDの異なる位置に配された3個のレンズLSからなるレンズ列LSCが、長手方向LTDに複数並んでいる。換言すれば、レンズアレイ299では、長手方向LGDに複数のレンズLSを並べてレンズ行LSRが構成されるとともに、3行のレンズ行LSRが幅方向LTDに設けられている。また、各レンズ行LSRは長手方向LGDに互いにずらして配置されており、各レンズLSの長手方向LGDにおける位置PTLは互いに異なる。このように、レンズアレイ299において複数のレンズLSは2次元的に配置されている。なお、同図においては、レンズLSの位置は、レンズLSのレンズ面LSFの中心で代表されており、レンズLSの長手方向LGDにおける位置PTLは、レンズLSの中心から長手方向軸LGDに下ろした垂線の足で表されている。
【0055】
図13は、レンズアレイおよびヘッド基板等の長手方向の断面図であり、レンズアレイに形成されたレンズLSの光軸を含む長手方向断面を示している。上述の通り、レンズアレイ299は長手方向LGDに長尺であるガラス基板2991を有しており、このガラス基板表面2991−hは平坦な形状である一方、ガラス基板裏面299−tには発光素子グループ295毎にレンズLSが形成されている。したがって、裏面299−tには、レンズLSが形成されて有限の曲率を有する部分と、レンズLSが形成されずに無限大の曲率を有する平端部PLとが存在することになる。
【0056】
このラインヘッド29では、このような構成を有するレンズアレイ299が2枚(299A,299B)光ビームの進行方向Doaに並べて配置されており、光の進行方向Doaに並ぶ2枚のレンズLS1,LS2が発光素子グループ295毎に配置されることとなる(図5、図6、図13)。また、互いに同じ発光素子グループ295に対応する第1レンズLS1および第2レンズLS2それぞれのレンズ中心を通る光軸OA(図13二点鎖線)は、ヘッド基板293の裏面293−tに直交もしくは略直交している。ここで、光ビームの進行方向Doaの上流側のラインヘッド299AのレンズLSが第1レンズLS1であり、光ビームの進行方向Doaの下流側のラインヘッド299AのレンズLSが第2レンズLS2である。このように、本実施形態では、複数のレンズアレイ299が光ビームの進行方向Doaに並べて配置されているため、光学設計の自由度を向上させることが可能となっている。
【0057】
また、光ビームの進行方向Doaにおいてレンズアレイ299A,299Bの上流側には、絞り板298が設けられており、この絞り板298には絞り開口2981が発光素子グループ295毎に穿設されている。なお、絞り板298において、絞り開口2981およびその周縁部分を「絞り2982」と称することとする。つまり、この絞り2982は発光素子グループ295毎に設けられる。このように絞り2982を設けることで、レンズLSに対する不要な光ビームの入射が抑制されている。
【0058】
このように、ラインヘッド29は、絞り板298、第1・第2レンズLS1,LS2を有する結像光学系を備えている。したがって、発光素子グループ295から射出された光ビームのうち、絞り開口2981を通過した光ビームが、第1レンズLS1および第2レンズLS2により結像される。こうして、光ビームは第1・第2レンズLS1,LS2により結像されて、感光体ドラム表面(像面)にスポットSPが形成される。一方、上述のとおり、感光体ドラム表面は、スポット形成に先立って帯電部23により帯電されている。したがって、スポットSPが形成された領域は除電されて、スポット潜像Lspが形成される。そして、このように形成されたスポット潜像Lspは感光体ドラム表面に担持されながら、副走査方向SDの下流側へと搬送される。そして、次の「C.基本動作」の項で説明するように、スポットSPは感光体ドラム表面の移動に応じたタイミングで形成されて、主走査方向MDに並ぶ複数のスポット潜像Lspが形成される。
【0059】
C.基本動作
図14はラインヘッドにより形成されるスポットを説明するための斜視図である。なお、図14においてレンズアレイ299の記載は省略されている。図14に示すように、各発光素子グループ295は、主走査方向MDにおいて互いに異なる露光領域ERにスポットグループSGを形成可能である。ここで、スポットグループSGは、発光素子グループ295の全発光素子2951が同時発光して形成される複数のスポットSPの集合である。同図に示すように、主走査方向MDに連続する露光領域ERにスポットグループSGを形成可能である3個の発光素子グループ295は、幅方向LTDに相互にずらして配置されている。つまり、例えば、主走査方向MDに連続する露光領域ER_1,ER_2,ER_3にスポットグループSG_1,SG_2,SG_3を形成可能である3個の発光素子グループ295_1,295_2,295_3は、幅方向LTDに相互にずらして配置されている。これら3個の発光素子グループ295は発光素子グループ列295Cを構成し、複数の発光素子グループ列295Cが長手方向LGDに沿って並ぶ。その結果、図7の説明の際にも述べたが、3行の発光素子グループ行295R_A,295R_B,295R_Cが幅方向LTDに並ぶとともに、各発光素子グループ行295R_A等は、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置にスポットグループSGを形成する。
【0060】
つまり、このラインヘッド29では、複数の発光素子グループ295(例えば、発光素子グループ295_1,295_2,295_3)は、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に配置されている。そして、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に配置された各発光素子グループ295は、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置にスポットグループSG(例えば、スポットグループSG_1,SG_2,SG_3)を形成する。
【0061】
換言すれば、このラインヘッド29では、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に複数の発光素子2951が配置されている(例えば、発光素子グループ295_1に属する発光素子2951と、発光素子グループ295_2に属する発光素子2951とは、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に配置されている)。そして、幅方向LTDにおいて互いに異なる位置に配置された各発光素子2951は、副走査方向LTDにおいて互いに異なる位置にスポットSPを形成する(例えば、スポットグループSG_1に属するスポットSPと、スポットグループSG_2に属するスポットSPとは、副走査方向SDにおいて互いに異なる位置に形成される)。
【0062】
このように、発光素子2951によって副走査方向SDにおけるスポットSPの形成位置が異なる。したがって、複数のスポット潜像Lspを主走査方向MDに並べて形成するためには(つまり、複数のスポット潜像Lspを副走査方向SDにおいて同じ位置に形成するためには)、かかるスポット形成位置の違いを考慮する必要がある。そこで、このラインヘッド29では、各発光素子2951は感光体ドラム表面の移動に応じたタイミングで発光する。
【0063】
図15は、上述のラインヘッドによるスポット形成動作を示す図である。以下に、図10、図14、図15を用いてラインヘッドによるスポット形成動作を説明する。概略的には、感光体ドラム表面(潜像担持体表面)が副走査方向SDに移動するとともに、ヘッド制御モジュール54(図4)が感光体ドラム表面の移動に応じたタイミングで発光素子2951を発光させることで、主走査方向MDに並ぶ複数のスポット潜像Lspが形成される。
【0064】
まず、幅方向LTDに最上流の発光素子グループ295_1,295A4等に属する発光素子行2951R(図14)のうち、幅方向LTDの下流側の発光素子行2951Rを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、レンズLSにより結像されて、感光体ドラム表面にスポットSPが形成される。なお、レンズLSは倒立特性を有し、発光素子2951からの光ビームは倒立して結像される。こうして、図15の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポット潜像Lspが形成される。なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポット潜像を表す。また、同図において、符号295_1〜295_4でラベルされたスポット潜像は、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループ295により形成されるスポット潜像であることを示す。
【0065】
次に、同発光素子グループ295_1,295A4等に属する発光素子行2951Rのうち、幅方向LTDの上流側の発光素子行2951Rを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームはレンズLSにより結像されて、感光体ドラム表面にスポットSPが形成される。こうして、図15の「2回目」のハッチングパターンの位置にスポット潜像Lspが形成される。ここで、幅方向LTDの下流側の発光素子行2951Rから順番に発光させたのは、レンズLSが倒立特性を有することに対応するためである。
【0066】
次に、幅方向上流側から2番目の発光素子グループ295_2等に属する発光素子行2951Rのうち幅方向LTDの下流側の発光素子行2951Rを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームはレンズLSにより結像されて、感光体ドラム表面にスポットSPが形成される。こうして、図15の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポット潜像Lspが形成される。
【0067】
次に、幅方向上流側から2番目の発光素子グループ295_2等に属する発光素子行2951Rのうち幅方向LTDの上流側の発光素子行2951Rを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームはレンズLSにより結像されて、感光体ドラム表面にスポットSPが形成される。こうして、図15の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポット潜像Lspが形成される。
【0068】
次に、幅方向上流側から3番目の発光素子グループ295_3等に属する発光素子行2951Rのうち幅方向LTDの下流側の発光素子行2951Rを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームはレンズLSにより結像されて、感光体ドラム表面にスポットSPが形成される。こうして、図15の「5回目」のハッチングパターンの位置にスポット潜像Lspが形成される。
【0069】
そして最後に、幅方向上流側から3番目の発光素子グループ295_3に属する発光素子行2951Rのうち幅方向LTDの上流側の発光素子行2951Rを発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームはレンズLSにより結像されて、感光体ドラム表面にスポットSPが形成される。こうして、図15の「6回目」のハッチングパターンの位置にスポット潜像Lspが形成される。このように、1〜6回目までの発光動作を実行することで、副走査方向SDの上流側のスポットSPから順番にスポットSPが形成されて、主走査方向MDに並ぶ複数のスポット潜像Lspが形成される。
【0070】
D.レンズアレイに求められる構成
上述の通り、レンズアレイ299では、複数のレンズLSが2次元的に配置されている。そこで、このようなレンズアレイ299に求められる構成について考える。一般的に知られているように、光の回折の影響から、エアリーディスク強度がゼロとなる直径aは、次式、
a=1.22×λ/NAimg
=1.22×λ/sin(θ) …式1
に従って決まる。ここで、λは光ビームの波長であり、NAimgは像側開口数であり、θは開口角(半角)である。よって、像面でのスポットSPの形状には、光源としての発光素子2951の形状および光学系の収差から決まる形状に加えて、回折の影響による太りが生じる。この式1によると、開口角(半角)が8[°]かつ波長が630[nm]の場合における、スポットSPの太りは5.5[μm]程度となる。これは解像度が1200dpi(dots per inch)の場合における画素ピッチ(換言すれば隣接して形成されるスポット潜像Lsp間のピッチ)の25%以上に相当する。したがって、高解像度の光書込を行なうとの観点からは、スポット形状に対する回折の影響が、これ以上大きくならないことが望まれる。すなわち、像側開口角(半角)を8[°]程度よりも大きくすることで、回折によるスポットSPの太りを抑制することが好適である。
【0071】
また、ラインヘッド29は、像面(被照射面)に近接して使用されるが、部品の干渉や放電等の不具合を避けるために、最低限のクリアランスS(ラインヘッド29と像面との間隔)が必要となる。感光体ドラム21の表面の振れ等により生じるクリアランスSの変動により書込位置変動(感光体ドラム表面におけるスポットSPの位置の変動)が発生し難いように像側テレセントリックな光学系を採用した場合、次式
Wlpm≧2×S×tan(θ)×m/(m−1) …式2
が満たされる必要がある。ここで、mはレンズ行LSRの個数(行数)である。また、Wlpmは、光学系最終面での光線通過領域LPの主走査方向MD(長手方向LGD)における幅である。なお、光学系最終面とは最も非像面側にある光学面であり、図11に示した光学系においてはレンズアレイ299Bのガラス基板表面2991−hが光学系最終面に相当する。また、光線通過領域LPとは、注目する光学面において光ビームが通過する範囲である。なお、式2の導出については後述する。
【0072】
実際のレンズアレイ製造時において、レンズ外周近傍は面の精度が出しづらい傾向にある。したがって、レンズ直径DMは、光線通過領域幅LPに数10[μm]程度の余裕を持たせた大きさであることが望まれる。ここで、レンズ直径の余裕をαとすると、主走査方向MD(長手方向LGD)におけるレンズ直径DMm(主走査レンズ直径DMm)は、次式、
DMm=Wlpm+α …式3
で与えられる。さらに、レンズアレイ299において隣接するレンズLS間での干渉を抑制するためには、主走査レンズ直径DMmに対して、主走査方向MDにおけるスポットグループSGの幅Wsgm(主走査スポットグループ幅Wsgm)は、次式、
Wsgm>DMm/m …式4
で定められる範囲に設定される必要がある。したがって、像側開口角θが8[°]であり、クリアランスSが1[mm]であり、レンズ直径の余裕αが0.1[mm]であるとすると、レンズ直径および主走査スポットグループ幅Wsgmは次のようになる。すなわち、レンズ行LSRの行数m=2の場合は、DMm>0.66[mm]、かつ、Wsgm>DMm/2=0.33[mm]となる必要がある。また、レンズ行LSRの行数m=3の場合は、DMm>0.52[mm]、かつ、Wsgm>DMm/3=0.173[mm]となる必要がある。また、レンズ行LSRの行数m=4の場合は、DMm>0.47[mm]、かつ、Wsgm>DMm/4=0.1175[mm]となる必要がある。このように、レンズ直径は0.5[mm]程度以上のレンズを2次元的に配置した構成を、レンズアレイ299は備える必要がある。
【0073】
ここで、式2を導出しておく。この式2は、スポットグループとレンズ径とが満たすべき関係から導出される。そこで、図16を用いてスポットグループに関する量について説明した後に、図17、図18を用いて式2の導出を行なう。図16は、像面に形成されるスポットグループを示す図である。図16に示すように、スポットグループSGは、主走査方向MDに主走査スポットグループ幅Wsgmを有するとともに、副走査方向SDに副走査スポットグループ幅Wsgsを有する。図16に示すように、この主走査スポットグループ幅Wsgmは、隣接する露光領域ERに形成される2つのスポットグループSG(例えば、図12におけるスポットグループSG1、SG2)それぞれの第1スポットSP1の間のピッチとして求めることができる。ここで、第1スポットSP1は、各スポットグループSGにおいて主走査方向MDの最上流にあるスポットSPである。
【0074】
図17は、スポットグループとレンズ径等との関係を示す図であり、図18は、スポットグループと光線通過領域との関係を示す図である。図17の「レンズアレイ」の欄では、レンズLSと、レンズLSにおける光線通過領域LPとの関係が示されている。また、レンズLSの主走査方向MD(長手方向LGD)における直径が主走査レンズ径DMmとして表されるとともに、レンズLSの副走査方向SD(幅方向LTD)における直径が副走査レンズ径DMsとして表されている。さらに、光線通過領域LPの主走査方向MD(長手方向LGD)における幅が主走査通過領域幅Wlpmとして表されるとともに、光線通過領域LPの副走査方向SD(幅方向LTD)における幅が副走査通過領域幅Wlpsとして表されている。なお、図11に示したように、発光素子グループ295において、長手発光素子グループ幅W295gmは幅発光素子グループ幅W295gsよりも大きい。したがって、これに対応して、主走査通過領域幅Wlpmは副走査通過領域幅Wlpsよりも大きい。また、図17の「感光体ドラム表面」の欄では、感光体ドラム表面(像面)に形成されるスポットグループSGが表される。なお、同欄の二点鎖線は、各スポットグループを形成するレンズLSを感光体ドラム表面に投影したものである。
【0075】
レンズ行SGRにおいて隣接するレンズLS間のピッチ(行内レンズピッチ)は、(m×Wsgm)と表せる。レンズLSを配列するためには、この行内レンズピッチは、各レンズにおける光線通過領域LPの主走査方向MDの幅Wlpmよりも大きい必要があるので、次式
L≦m×Wsgm …式5
が満たされる必要がある。また、像面(被照射面)とラインヘッド29との距離の変動に起因した、スポットSPの形成位置(ビームスポットSPの入射位置)の変動を抑制するために、像側が略テレセントリックとなるように光学系を構成した場合、次式、
Wlpm/2≧Wsgm/2+S×tan(θ)
が成立する。この式の両辺を2倍すると、次式、
Wlpm≧Wsgm+2×S×tan(θ) …式6
が得られる。横軸Wsgm、縦軸Wlpmとして式5と式6をプロットすると、図18に示すようになり、両式を満たすのは図16の斜線範囲となる。そして、図18における2線の交点を求め、斜線部に対応するWlpmの取りうる範囲を求めると、次式、
Wlpm≧2×S×tan(θ)×m/(m−1) …式2
が導出される。
【0076】
E.本実施形態におけるレンズアレイの構成
上記したようにレンズアレイ299を製造するために金型93を用いており、その離型時には長手方向LGDに比較的大きな応力がレンズLSおよびガラス基板2991にかかってしまう。したがって、レンズ外周部を金型93から離れやすい形状に仕上げることがレンズアレイ299の離型性を向上させる上で重要となる。
【0077】
また、上記した検討より、グループ化された発光素子グループ295毎に1つのレンズLSを設けるとともに、このレンズLSを2次元的に配置したレンズアレイ299を構成するためには、レンズ直径は0.5[mm]程度以上とする必要がある。つまり、レンズアレイ299においては、0.5[mm]というマイクロレンズとしては比較的大きなレンズ直径を有するレンズLSが2次元的に配置されこととなり、凹凸形状が密に並ぶこととなる。このように、凹凸形状が密に並んだレンズアレイ299は、レンズアレイ形成に際して金型の離型性が低下する傾向にある。特に、上記実施形態のように、ガラス基板2991に対してンズLSを樹脂で形成したレンズアレイ299は、離型性の観点から次のような問題があった。つまり、一般的にガラスの線膨張率は低いため、ガラスを基材とするガラス基板2991は温度変化に対する収縮量が小さい。したがって、温度変化に伴うレンズLSの収縮がガラス基板2991に妨げられて、レンズLSが金型から速やかに離れずに、良好な離型性を実現することが困難である場合があった。そして、その結果、レンズLSに欠陥が発生したり、レンズ特性がレンズLS毎でばらついたりするとの様々な問題が引き起こされる恐れがあった。
【0078】
そこで、本実施形態では、結像光学系の光軸OAを含んだ長手方向LGDのレンズ切断面において、レンズ外周部OCの曲率は、レンズ中心CTの曲率と逆の符号を有する、あるいは、レンズ中心CTの曲率よりも小さい絶対値を有する。したがって、長手方向LGDにおけるレンズ外周部OCにおける接線角度が小さく抑えられており、このレンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。しかも、ガラス基板2991のうちのレンズが設けられた領域をレンズエリアLAとしたとき、レンズエリアLAの長手方向における長手方向幅Wl1と幅方向LTDにおける幅方向幅Wl2とが次式、
Wl1>Wl2
を満たす関係にある。したがって、長手方向LGDにおいては、ガラス基板2991に設けられたレンズエリアLAの温度変化による収縮量は比較的大きい。つまり、この実施形態では、レンズエリアLAの温度変化による収縮量が比較的大きい長手方向LGDにおいて、レンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。その結果、レンズアレイ299の離型性の向上が可能となっている。これらの内容について以下に詳述する。なお、特に断らない限り、「レンズ切断面」、「レンズ断面」、および「レンズの断面」とは何れも、光軸OAを含むレンズLSの断面を表すものとする。
【0079】
図19は、レンズのレンズ中心を含む長手方向断面を示す図であり、レンズLSの光軸OAを含んでいる。同図に示すレンズLSbあるいはレンズLScが、本発明にかかるレンズに相当する。レンズLSaは、本発明にかかるレンズとの比較のために記載されている。レンズレンズLSa,LSb,LScは、いずれもガラス基板表面2991−tに形成されている。同図において、レンズLSa,LSb,LScは、それぞれのレンズ中心が一致するように重ねて記載されており、レンズLSa,LSb,LScは互いに等しい大きさのサグを有する。また、各レンズLSa,LSb,LScは、レンズ中心CTにおいて互いに等しい曲率半径Raを有する。
【0080】
同図において、レンズLSaの曲率中心CCは曲率中心CCaとして表されており、レンズLSbの曲率中心CCは曲率中心CCbとして表されており、レンズLScの曲率中心CCは曲率中心CCcとして表されている。また、本明細書における曲率CVは、次のように定義できる(図19の四角囲み参照)。つまり、曲率CV(CVa,CVb,CVc)の絶対値は曲率半径R(Ra,Rb,Rc)の逆数である。また、レンズLSのレンズ面よりも光ビームの進行方向Doaの先の空間(方向Doaの下流側)に曲率中心CCある場合は、該曲率中心CCで与えられる曲率CVは正である。一方、レンズLSのレンズ面よりも光ビームの進行方向Doaの手前側(方向Doaの上流側)に曲率中心CCある場合は、該曲率中心CCで与えられる曲率CVは負である。
【0081】
さらに、同図において、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズLSaの外周部OCには符合OCaが付されており、レンズLSbの外周部OCには符合OCbが付されており、レンズLScの外周部OCには符合OCcが付されている。なお、本明細書において、レンズLSの外周部OCは、次のように定義される。つまり、平端部PLを含む平坦な平坦面PLSとレンズLSとの境界がレンズ外周部である。換言すれば、本実施形態では、ガラス基板2991に対してレンズLSとしての樹脂が形成されているため、樹脂とガラス基板2991との境界がレンズ外周部OCに相当する。なお、後にレンズ外周部における接線角度を用いた説明を行なう。そこで、この接線角度について定義しておく。
【0082】
図20は、レンズ外周部における接線角度の定義図面であり、レンズ中心を含む断面を示している。まず、レンズ外周部OCにおけるレンズ面LSFに対する接線をTLとする。次に、レンズTLと平坦面PLSとが交差してできる角度のうち、レンズ側にできる角度を角度β1、β2とする。そして、これらの角度β1,β2のうち、レンズ中心側にできる角度β1が接線角度である。このとき、角度β1は、次式、
0°<β1<90°
の範囲の値をとりうる。また、接線傾きはtan(β1)で与えられるものとする。
【0083】
図19が示すように、レンズLSaでは、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ中心CTにおける曲率とレンズ外周部OCaにおける曲率は何れも曲率CVa=1/Raである。これに対して、レンズLSbでは、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCbの曲率CVb=1/Rbは、レンズ中心CTの曲率CVa=1/Raよりも小さい絶対値を有する。また、レンズLScでは、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCcの曲率CVc=−1/Rcは、レンズ中心の曲率CVa=1/Raと逆の符号を有する。このように、レンズLSb、LScは構成されているため、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCb,OCcにおける接線角度は、レンズLSaのレンズ外周部OCaの接線角度よりも小さく抑えることが可能となっている。つまり、ガラス基板2991に設けられたレンズエリアLAの温度変化による収縮量が比較的大きい長手方向LGDにおいて、レンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。その結果、このようなレンズLSb,LScを配列したレンズアレイは良好な離型性を有することとなる。
【0084】
ところで、上記実施形態では、発光素子2951として有機EL素子が用いられており、この有機EL素子はLED(Light Emitting Diode)等と比較して光量が少ないため、レンズLSに取り込める光量は少なくなる傾向にある。特にボトムエミッション型の有機EL素子を用いた場合、有機EL素子から射出された光ビームの一部はヘッド基板293に吸収されるため、レンズLSに取り込める光量がなおさら少なくなる。このような場合、十分な光をレンズLSに取り込むためにレンズ直径を大きくすることが考えられる。しかしながら、従来では、レンズ直径を大きくすることで離型性が悪化するおそれがあった。これに対して、上記実施形態では、各レンズLSb,LScは金型から離れやすい形状を有しているため、離型性を悪化させること無く容易にレンズ直径を大きくすることができる。よって、レンズLSに十分な光ビームを取り込んで良好な露光が実行可能となっている。
【0085】
ここで、上記のような曲率を有するレンズLSb,LScのレンズ面について考察する。レンズ面を特定する上で例えば図21に示すような曲座標系を用いるのが有効である。つまり、光軸OAからの距離rと光軸OA周りの回転角度θからrθ座標における光軸方向のレンズ面高さzは
z=f(r,θ)
となる。この場合に、レンズ面上の座標r,θにおける曲率c(r,θ)は、以下の式で表される。
【0086】
【数3】

【0087】
ある角度θ1における光軸OA上の曲率は、光軸上でr=0であるため、
【0088】
【数4】

として表され、その断面の周辺部の曲率はr≠0に対して
【0089】
【数5】

として表される。
【0090】
したがって、ある光軸OAを通る断面において、レンズ面の外周部の曲率が光軸OA上の曲率と逆符号を有する条件は、r≠0として
【0091】
【数6】

で表され、光軸OA上の曲率よりも表面周辺部の曲率の方が小さい絶対値を有する条件は、
【0092】
【数7】

で表される。
【0093】
F.その他
このように上記実施形態では、長手方向LGDおよび主走査方向SDが本発明の「第1方向」に相当し、幅方向LTDおよび副走査方向SDが本発明の「第2方向」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当している。
【0094】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、ガラス基板裏面2991−tにレンズLSが形成されたレンズアレイ299を用いて光学系が構成されている。しかしながら、光学系の構成態様はこれに限られない。
【0095】
図22は、別の光学系における長手方向の断面図である。つまり、図22は、レンズアレイに形成されたレンズLSの光軸を含む長手方向断面図であり、レンズLSの光軸OAを含んでいる。なお、以下の説明では、別の光学系の特徴部分について述べることとし、既に上述した光学系との共通部分については相当符号を付して説明を省略する。図22に示すように、別の光学系においては、ガラス基板の表面2991−hにレンズLSが形成されている。したがって、表面2991−hには、レンズLSが形成されて有限の曲率を有する部分と、レンズLSが形成されずに無限大の曲率を有する平端部PLとが存在することになる。
【0096】
同図に示す光学系では、このような構成を有するレンズアレイ299が、2枚(299A,299B)光ビームの進行方向Doaに並べて配置されており、光の進行方向Doaに並ぶ2枚のレンズLS1,LS2が各発光素子グループ295毎に配置されることとなる。また、互いに同じ発光素子グループ295に対応する第1レンズLS1および第2レンズLS2それぞれのレンズ中心を通る光軸OA(図22二点鎖線)は、ヘッド基板293の裏面293−tに直交もしくは略直交している。また、光ビームの進行方向Doaにおいて、レンズアレイ299Aとレンズアレイ299Bとの間には、絞り板が設けられており、この絞り板298には絞り開口2981(絞り2982)が発光素子グループ295毎に設けられている。このように絞り2982を設けることで、レンズLSに対対する不要な光ビームの入射が抑制されている。
【0097】
このように、別の光学系では、光ビームの進行方向Doaにおいて、第1レンズLS1、絞り2982および第2レンズLS2が並んで配置されている。したがって、発光素子グループ295から射出された光ビームは、第1レンズLS1を通過した後、絞り2982(絞り板298)により絞られて、第2レンズに入射する。こうして、光ビームは結像される。
【0098】
そして、別の光学系においても、結像光学系の光軸OAを含んだ長手方向LGDのレンズ切断面において、レンズ外周部OCの曲率は、レンズ中心CTの曲率と逆の符号を有する、あるいは、レンズ中心CTの曲率よりも小さい絶対値を有する。したがって、長手方向LGDにおけるレンズ外周部OCにおける接線角度が小さく抑えられており、このレンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。しかも、ガラス基板2991のうちのレンズが設けられた領域をレンズエリアLAとしたとき、レンズエリアLAの長手方向における長手方向幅Wl1と幅方向LTDにおける幅方向幅Wl2とが次式、
Wl1>Wl2
を満たす関係にある。つまり、レンズエリアLAの温度変化による収縮量が比較的大きい長手方向LGDにおいて、レンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。その結果、レンズアレイ299の離型性の向上が可能となっている。これらの内容について以下に詳述する。
【0099】
図23は、レンズのレンズ中心を含む長手方向における断面を示す図であり、レンズLSの光軸OAを含んでいる。図23は、ガラス基板2991の表面2991−tにレンズLSが形成されている点においてのみ図19と異なり、その他の部分については、図23は図19と同様である。したがって、以下では、図19との差異点について主に説明することとし、共通部分については説明を省略する。
【0100】
図19の場合と同様に、図23に示すレンズLSbあるいはレンズLScが本発明にかかるレンズに相当し、レンズLSaは本発明にかかるレンズとの比較のために記載されている。レンズLSaでは、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ中心CTにおける曲率とレンズ外周部OCaにおける曲率は何れも曲率CVa=−1/Raである。これに対して、レンズLSbでは、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCbの曲率CVb=−1/Rbは、レンズ中心CTの曲率CVa=−1/Raよりも小さい絶対値を有する。また、レンズLScでは、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCcの曲率CVc=1/Rcは、レンズ中心の曲率CVa=−1/Raと逆の符号を有する。このように、レンズLSb、LScは構成されているため、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCb,OCcにおける接線角度は、レンズLSaのレンズ外周部OCaの接線角度よりも小さく抑えることが可能となっている。つまり、ガラス基板2991に設けられたレンズエリアLAの温度変化による収縮量が比較的大きい長手方向LGDにおいて、レンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。その結果、このようなレンズLSb,LScを配列したレンズアレイは良好な離型性を有することとなる。
【0101】
また、上述の実施形態では、レンズLSは、ガラス基板2991の表面2991−hあるいは裏面2991−tのいずれか一方面にのみ設けられているが、ガラス基板2991の両面にレンズLSが形成されるように構成しても良い。
【0102】
また、上記実施形態では、2枚のレンズアレイ299が用いられているが、レンズアレイ299の枚数はこれに限られない。
【0103】
また、上記実施形態では、3個の発光素子グループ行295Rが幅方向LTDに並んでいる。しかしながら、発光素子グループ行295Rの個数は3個に限られず、2個以上であれば良い。
【0104】
また、上記実施形態では、発光素子グループ295は、2個の発光素子行2951Rから構成されている。しかしながら、発光素子グループ295を構成する発光素子行2951Rの個数は2個に限られず、例えば1個であっても良い。
【0105】
また、上記実施形態では、発光素子行2951Rは4個の発光素子2951から構成されている。しかしながら、発光素子行2951Rを構成する発光素子2951の個数は4個に限られない。
【0106】
また、上記実施形態では、発光素子2951として有機EL素子が用いられている。しかしながら、有機EL素子以外のものを発光素子2951として用いても良く、例えば、LED(Light Emitting Diode)を発光素子2951として用いても良い。
【0107】
また、上記実施形態では、単一のレンズアレイ299を設けているが、レンズアレイの枚数はこれに限定されるのではなく、例えば図24に示すように、4枚のレンズアレイ2991−1〜2991−4を長手方向LGDに配設してもよい。すなわち、この実施形態では、レンズフレーム2991−aの中央部に開口部2991−bが形成されるとともに、その開口部2991−bを跨ぐようにレンズアレイ2991−1〜2991−4の上端部および下端部がそれぞれレンズフレーム2991−aの上端部および下端部に当接している。これらのレンズアレイ2991−1〜2991−4は長手方向LGDに一直線状に配列されるとともに、接着剤などにより接合される。各レンズアレイ2991−1〜2991−4の基本構成は上記実施形態と同様にレンズエリアに樹脂製のレンズLSが設けられている。もちろん、離型性を向上させるために、各レンズLSはレンズで構成された結像光学系の光軸OAを含む長手方向LGDの断面で、レンズの外周部の曲率がレンズの光軸OA上の曲率と逆の符号を有する、あるいはレンズの光軸OA上の曲率よりも小さい絶対値を有している。
【実施例】
【0108】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0109】
図25は、実施例における光学系のデータを示す図である。図25において、主走査方向座標xは主走査方向MDにおける座標軸であり、副走査方向座標yは副走査方向SDにおける座標軸であり、x−y座標の原点は光軸OAを通過する。図26は、実施例における光学系の主走査方向(長手方向)における断面図であり、図27は、実施例における副走査方向(幅方向)における断面図であり、図26および図27はいずれもレンズLSの光軸OAを含んでいる。図25は、図26および図27に示す光路をシミュレーションにより求めるにあたり用いた条件を示す図である。図26、図27が示すように、物体面S1はガラス基材の裏面に相当しており、この実施例はボトムエミッション型の有機EL素子を発光素子2951として用いた場合に相当する。また、第1レンズLS1および第2レンズLS2は何れもガラス基材の裏面に形成されている。
【0110】
図28に示すように、実施例において主走査スポットグループ幅Wsgmは0.582[mm]である。これに対応して、図26では、像IMm0,IMm1,IMm2を結ぶ光路が示されている。つまり、像IMm0は、光軸上にできる(換言すれば主走査方向MDにおける像高が0[mm]である)像であり、像IMm1は、主走査方向MDにおける像高が0.291[mm](=Wsgm/2)にできる像であり、像IMm2は、主走査方向MDにおける像高が−0.291[mm](=−Wsgm/2)にできる像である。また、図28に示すように、実施例において副走査スポットグループ幅Wsgsは0.058[mm]である。これに対応して、図27では、像IMs1,IMs2を結ぶ光路が示されている。つまり、像IMs1は、副走査方向SDにおける像高が0.029[mm](=Wsgs/2)にできる像であり、像IMm2は、副走査方向SDにおける像高−0.029[mm](=−Wsgs/2)にできる像である。
【0111】
図29は、第1レンズの長手方向(主走査方向)におけるレンズ中心を含むレンズ断面形状を示すレンズデータであり、図30は、第1レンズの幅方向(副走査方向)におけるレンズ中心を含むレンズ断面形状を示すレンズデータである。図29に示すように、第1レンズLS1では、長手方向LGDにおけるレンズ直径は1.66[mm](=主走査通過領域幅Wlpm+0.11[mm])であり、幅方向LTDにおけるレンズ直径は1.74[mm](=副走査通過領域幅Wlps+0.25[mm])である。このように、第1レンズLS1では、長手方向LGDにおける直径と幅方向LTDにおける直径とが異なる。こうして、レンズ設計の自由度の向上が図られており、良好なレンズ特性が容易に得ることが可能となっている。
【0112】
図31は、第2レンズの長手方向(主走査方向)におけるレンズ中心を含むレンズ断面形状を示すレンズデータであり、図32は、第2レンズの幅方向(副走査方向)におけるレンズ中心を含むレンズ断面形状を示すレンズデータである。図31に示すように、第1レンズLS1では、長手方向LGDにおけるレンズ直径は1.66[mm](=主走査通過領域幅Wlpm+0.20[mm])であり、幅方向LTDにおけるレンズ直径は1.65[mm](=副走査通過領域幅Wlps+0.65[mm])である。このように、第2レンズLS2では、長手方向LGDにおける直径と幅方向LTDにおける直径とが異なる。こうして、レンズ設計の自由度の向上が図られており、良好なレンズ特性が容易に得ることが可能となっている。
【0113】
ここで、例えば、レンズLS(第1レンズLS1または第2レンズLS2)を複数配置したレンズアレイ299を、3個のレンズ行LSRで構成した場合について考える。この場合、幅方向LTDにおけるレンズLSの幅方向LTDにおける直径は1.65〜1.74[mm]程度であるので、レンズエリアLAの幅方向LTDにおける幅Wl2は5[mm]程度となる。一方、ラインヘッド29の長手方向LGDにおける幅は通常、印字領域幅より長く設定される。したがって、日本工業規格A3の用紙に対応する画像形成装置に搭載するラインヘッド29は、長手方向LGDにおいて300[mm]程度の長さが必要となる。
【0114】
レンズ金型加工寸法の制限等によりレンズエリアLAの長さが300[mm]のレンズアレイを製造することは困難であるため、複数のレンズアレイ299を長手方向LGDに接合して、長尺化する方法などが考えられる。しかしながら、高精度のレンズピッチを確保するためにレンズエリアを50[mm]程度に抑えた場合であっても、レンズアレイ299の長手方向LGDにおける長さと幅方向LTDにおける幅との比は10:1程度となり、結果、レンズアレイ299は非常に細長い形状を有することとなる。良好な組立性を実現するとの観点からは、接合前の個々のレンズアレイ299の長手方向LGDにおける長さは、なるべく長く取ることが望まれるが、その場合、長手方向LGDにおける長さと幅方向LTDにおける幅との比率はさらに大きくなり、レンズアレイ299はより細長い形状を有することとなる。そして、ガラス基板2991に対して光硬化性樹脂で凹凸を形成する方法でレンズアレイ299を製造する場合、ガラス基板の線膨張率が低いために、温度変化に伴う樹脂の収縮がガラス基板に妨げられて、良好な離型性を実現することが困難である場合があった。特に、先ほどの比率が10倍以上となる場合には、離型タイミングのばらつきが大きくなって、レンズ欠陥が発生してしまう場合があった。
【0115】
これに対して、この実施例では、レンズLSのレンズ中心CTを含む長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCの曲率は、レンズ中心CTの曲率よりも小さい絶対値を有する。したがって、長手方向LGDにおけるレンズ外周部OCにおける接線傾きが小さく抑えられており、このレンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。つまり、第1レンズLS1では、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCの曲率(=0.448)は、レンズ中心CTの曲率(=0.674)よりも小さい絶対値を有している。したがって、長手方向LGDにおけるレンズ外周部における接線傾き(=0.555)が小さく抑えられている。また、第2レンズLS2では、長手方向LGDにおけるレンズ断面において、レンズ外周部OCの曲率(=0.047)は、レンズ中心CTの曲率(=0.785)よりも小さい絶対値を有している。したがって、長手方向LGDにおけるレンズ外周部における接線傾き(=0.534)が小さく抑えられている。このように、この実施例では、ガラス基板2991に設けられたレンズエリアLAの温度変化による収縮量が比較的大きい長手方向LGDにおいて、レンズ外周部OCは金型から離れやすい形状を有している。その結果、レンズアレイ299の離型性の向上が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本明細書で用いる用語の説明図。
【図2】本明細書で用いる用語の説明図。
【図3】本発明にかかる画像形成装置の一例を示す図。
【図4】図3の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図5】本発明にかかるラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図6】図5に示したラインヘッドの幅方向断面図。
【図7】レンズアレイの斜視図。
【図8】レンズアレイの平面図。
【図9】レンズアレイの製造方法を示す図。
【図10】ヘッド基板の裏面の構成を示す図。
【図11】ヘッド基板裏面に設けられた発光素子グループの構成を示す図。
【図12】レンズアレイの平面図。
【図13】レンズアレイおよびヘッド基板等の長手方向の断面図。
【図14】ラインヘッドにより形成されるスポットを説明するための斜視図。
【図15】上述のラインヘッドによるスポット潜像形成動作を示す図。
【図16】像面に形成されるスポットグループを示す図。
【図17】スポットグループとレンズ径等との関係を示す図。
【図18】スポットグループと光学系最終面の光線通過領域との関係を示す図。
【図19】レンズのレンズ中心を含む断面を示す図。
【図20】レンズ外周部における接線角度の定義図面。
【図21】レンズ面をrθ座標系で定義した図。
【図22】別の光学系における長手方向の断面図。
【図23】レンズのレンズ中心を含む断面を示す図。
【図24】レンズアレイの変形例を示す図。
【図25】実施例1における光学系のデータを示す図。
【図26】実施例1における光学系の主走査方向における断面図。
【図27】実施例1における副走査方向における断面図。
【図28】図26および図27に示す光路を求めるにあたり用いた条件を示す図。
【図29】第1レンズの長手方向におけるレンズ断面形状を示すレンズデータ。
【図30】第1レンズの幅方向におけるレンズ断面形状を示すレンズデータ。
【図31】第2レンズの長手方向におけるレンズ断面形状を示すレンズデータ。
【図32】第2レンズの幅方向におけるレンズ断面形状を示すレンズデータ。
【符号の説明】
【0117】
21Y、21K…感光体ドラム(潜像担持体)、 29…ラインヘッド、 293…ヘッド基板、 295…発光素子グループ、 2951…発光素子、 299,299A,299B…レンズアレイ、 LS…レンズ、 CT…レンズ中心、 OC…レンズ外周部、 SP…スポット、 Lsp…スポット潜像、 MD…主走査方向(第1方向), SD…副走査方向(第2方向)、 LGD…長手方向(第1方向)、 LTD…幅方向(第2方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板に樹脂で形成された第1のレンズと、
第1の方向に発光素子が配設された発光素子基板と、を備え、
前記第1のレンズの光軸を含む前記第1方向の断面の前記第1のレンズの形状は、前記第1のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも前記第1のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さいことを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記ガラス基板に、前記第1のレンズと、樹脂製の第2のレンズとが、前記第1方向に配設されたレンズアレイを有し、
前記第1レンズの前記光軸を含む前記第1方向の断面の前記第2のレンズの形状は、前記第2のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも前記第2のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さい請求項1記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記ガラス基板は、前記第1のレンズに対して、前記第1方向とは異なる方向に配設された樹脂製の第3のレンズを有し、
前記第3のレンズの光軸を含む前記第1方向の断面の前記第3のレンズの形状は、前記第3のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも前記第3のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さい請求項1または2に記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記ガラス基板は、前記第3のレンズの前記第1方向に配設された樹脂製の第4のレンズを有し、
前記第4のレンズの光軸を含む前記第1方向の断面の前記第4のレンズの形状は、前記第4のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも前記第4のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さい請求項3記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記ガラス基板の前記第1の方向に配設された第2のガラス基板に樹脂製の第5のレンズを有し、
前記第5のレンズの光軸を含む前記第1方向の断面の前記第5のレンズの形状は、前記第5のレンズの外周部の曲率の絶対値よりも前記第5のレンズの光軸の曲率の絶対値が小さい請求項1ないし4のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記第1のレンズの光軸を含む前記第1方向の断面形状は、前記第1のレンズの外周部と光軸とで曲率の符号が反転している請求項1ないし5のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項7】
前記第1のレンズは、
【数1】

の関係を有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項8】
前記第1のレンズの直径は、0.5[mm]以上である請求項1ないし7のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項9】
前記第1のレンズは、前記第1方向における直径と前記第2方向における直径とが異なる請求項1ないし7のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項10】
前記発光素子と前記第1のレンズとの間に絞りが設けられている請求項1ないし9のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項11】
前記第1のレンズは光硬化性樹脂で形成されている請求項1ないし10のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項12】
前記ガラス基板は、前記第1方向の幅が前記第2方向の幅より長い請求項1ないし11のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項13】
前記発光素子は、有機EL素子である請求項1ないし12のいずれか一項に記載のラインヘッド。
【請求項14】
前記有機EL素子は、ボトムエミッション型である請求項13記載のラインヘッド。
【請求項15】
ガラス基板に樹脂で形成されたレンズ、及び発光素子が前記第1方向に配設された発光素子基板を有する露光部と、
前記露光部により潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像と、を備え
前記レンズの光軸を含む前記第1方向の断面の形状は、前記レンズの外周部の曲率の絶対値より前記レンズの光軸の曲率の絶対値が小さいことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2009−196345(P2009−196345A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294708(P2008−294708)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】