説明

ラインマーカーとライン引き方法

【課題】ノズルから噴射された塗料がラインの外に飛び散ったり、液垂れやしみ出し、濃淡差などが生じることなく、鮮明なラインを引くことができ、さらに台車は直線部では直進安定性に優れ、且つ曲線部では正確な半径で走行できるラインマーカーとライン引きの方法を提供する。
【解決手段】塗料を貯留するタンクと、塗料を吹き付けるガンと、前記タンクから前記ガンに塗料を供給する供給装置と、前記ガンの両側に設けられて塗装面に接地して回転する一対の規制円板と、前記の一対の規制円板の間の進行方向の前方側に設けられて、前記の規制円板の側面に付着した塗料を除去して前方に流下させるための樋部材と、前記の樋部材を流下した塗料を貯留させるトレイとが台車に搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は競技場のグラウンドやコートに塗料を吹き付けてライン引きを行うためのラインマーカーとライン引き方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、競技場のグラウンドやコートなどの表面に向けてノズルから塗料を吹き付けてライン引きを行うようにした噴射式のラインマーカーが提案されている。例えば特許文献1に記載されているグラウンド用噴射式ラインマーカーは、車輪で移動可能なフレーム上に塗料を貯留するタンクと前記塗料を吸引してノズルから噴出する塗料吸引ポンプとを搭載しており、フレームに取り付けられた手押し棒を手で押してフレームを移動させながら塗料を前記ノズルからグラウンド表面に向けて噴射してライン引きを行う構造になっている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているラインマーカーは、モーターによって駆動される台車上に、塗料タンクと前記塗料タンクから塗料を吸引して噴射装置の噴射ノズルから塗料をスプレー状に噴射させる電動ポンプとを備え、噴射装置は塗料をスプレー状に噴射するための噴射ノズルと、この噴射ノズルの側方に互いに平行に垂下された一対のガイド用方形板とを有し、コート上をモーターで台車を走行させながら塗料を噴射してラインを引く構造になっている。
【0004】
さらに、特許文献3は噴射ノズルが、台車の走行方向と直交する垂直面内で、先端側を下方に向けて少なくとも一対設けられ、これら噴射ノズルの中心軸線の延長線がそれぞれの噴射ノズルの先端下方で互いに交差するように傾斜して設けられていることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−792号公報
【特許文献2】特開平8−71201号公報
【特許文献3】特開2008−154714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような、従来提案されている塗料噴射式のラインマーカーにおいては、何れもノズルから噴射された塗料が飛び散るのを防止するために、噴射ノズルの両側方に一対の飛び散り防止用の板が設けられている。しかしながら、この方法ではグラウンドやコートの表面と飛び散り防止用の板の間に隙間が必要であるために、その隙間から噴射された塗料がはみ出してラインの境界がぼやけてしまい、鮮明なラインを引くことができないという問題があった。
【0007】
さらに、前記飛び散り防止用の板の側面には噴射された塗料が徐々に蓄積されて、やがては垂れて下方に流れ出してグラウンドやコートの表面に滴下し、ラインからの、はみ出しや濃淡差ができてしまう問題もあった。
【0008】
一方、マスキングテープや型枠などを使って飛び散りを防止する方法が一般的であるが、その場合マスキングテープや型枠などの資材を必要とするのみならず、長距離のラインを引く場合には多大な労力と時間を必要とし作業効率が極めて悪い。特に、陸上競技場のトラックにおいては、走路の表面は滑り防止を目的として凹凸加工が施されているために、マスキングテープを使用できないことから型枠などを使わざるを得ないが、曲線部の半径は各レーン毎に異なるために、各レーンの半径に対応する多種類の型枠を大量に必要とする問題もあった。
【0009】
又、ラインを引くには、予め引かれたケガキ線に沿って正確に引く必要がある。例えば陸上競技場のトラックでは精度をmm単位で保つ必要があるが、特に直線部では3〜5mm程度の僅かな蛇行やズレでも斜め方向に見れば判別できてしまうことから、極めて精度の高い直線性が要求されるが、従来そのような高い精度でラインを引くことができる装置は実用化されていなかった。
【0010】
そこで本発明では前記の問題点を解消し、ノズルから噴射された塗料がラインの外に飛び散ったり、液垂れやしみ出し、濃淡差などが生じることなく、鮮明なラインを引くことができ、さらに台車は直線部では直進安定性に優れ、且つ曲線部では正確な半径で走行できるラインマーカーとライン引きの方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係わるラインマーカーは、塗料を貯留するタンクと、塗料を吹き付けるガンと、前記タンクから前記ガンに塗料を供給する供給装置と、前記ガンの両側に設けられて塗装面に接地して回転する一対の規制円板と、前記の一対の規制円板の間の進行方向の前方側に設けられて、前記の規制円板の側面に付着した塗料を除去して前方に流下させるための樋部材と、前記の樋部材を流下した塗料を貯留させるトレイとが、台車に搭載されているものである。
【0012】
また本発明に係わるラインマーカーにおいて、前記台車は、少なくとも一対の操舵用車輪と一対の固定車輪と操舵装置からなり、前記の一対の操舵用車輪と一対の固定車輪は各々が車軸に装着されており、且つ前記車軸に設けた各々のクラッチの操作によって、各々の一対の車輪同士が回転自由、または剛結の何れかに切り替え可能になっている。
【0013】
本発明に係わるライン引き方法は、上記に記載するラインマーカーを使って直線のラインを引く際は、操舵ハンドルを直線方向の位置に合わせ、且つ前記クラッチの操作によって、一対の操舵用車輪同士と一対の固定車輪同士を剛結した状態で走行しながら行い、曲線のラインを引く際は、操舵ハンドルを曲線の半径に対応した角度の位置に合わせ、且つ前記クラッチの操作によって、一対の操舵用車輪同士と一対の固定車輪同士を回転自在に切り替えた状態で走行しながら行うことを特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、ガンから吹き付けられた塗料がラインの外に飛び散るのを防止するためにガンの両側に設けられた規制板が、塗装面に接地して回転する一対の円板であることから、グラウンドやコートなどの塗装面との間に隙間が無くなり、塗料がラインの外に飛び散るのを防止できる。さらに、前記規制円板の内側側面に付着した塗料は、規制円板の間の進行方向の前方側に設けられた樋部材によって、一回転毎に規制円板の側面に付着した塗料が前記の樋部材のブレード部で除去されて、除去された塗料は前記の樋部材を流下して前方に設けた貯留トレイまで流下して貯留されるので、規制円板の側面に付着した塗料が徐々に蓄積し、やがて下に垂れて流れ出したり、滴下したり、ラインからはみ出したり、濃淡差などが発生することなどを防止できる。
【0015】
また請求項2記載の本発明に係わるラインマーカーを使用すれば、直線のラインを引く際は操舵ハンドルを直線方向の位置に合わせると同時に、一対の操舵用車輪と一対の固定車輪の両方を、各々のクラッチの操作によって各々の車輪同士を剛結することで、走行時のふらつきや蛇行が生じ難くなり極めて高い精度で直線に走行させながらラインを引くことができる。また、曲線のラインを引く際は操舵ハンドルを曲線の半径に対応した角度に合わせ、且つ前記の各々のクラッチの操作によって前記の各々の車輪を回転自在に切り替えれば、内周側と外周側の車輪の回転差を解消できてスムーズ、且つ正確な半径で曲線走行させながらラインを引くことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
前記のとおり、本発明のラインマーカーとライン引き方法によれば、ノズルから噴射された塗料がラインの外に飛び散ったり、液垂れやしみ出し、濃淡差などが生じることなく鮮明なラインを引くことができ、さらに台車は直線部では直進安定性に優れ、且つ曲線部では正確な半径で走行できるラインマーカーとライン引きの方法を提供でき、ライン引き作業の効率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わるラインマーカーの1実施形態の側面図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係わるライン引きユニットの正面図である。
【図4】同上の側面図である。
【図5】同上の平面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係わる樋部材の断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係わる台車の側面図である。
【図8】同上の平面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係わる車輪ユニットの断面図である。
【図10】同上の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係わるラインマーカーの1実施形態を示す側面図、図2はその平面図であって、これらの図に示すように、ラインマーカー1は、競技場のトラックやコートなどの上を移動自在な台車2の床板3の上に、塗料を貯留するタンク102と、前記タンク内の塗料をトラックやコートの表面に向けて吹き付けて線引きを行うための吹き付けガンを装備したライン引きユニット50と、タンク102内の塗料を前記吹き付けガンに供給するための空気供給機103と、発電機などの電源装置101を搭載している。
【0019】
図3は本発明の実施形態1に係わる前記ライン引きユニット50の正面図、図4は前記ライン引きユニット50の側面図、図5は前記ライン引きユニット50の平面図である。尚、図4は規制円板51を除去した状態の図である。図4において、52は塗料を吹き付けるためのガンであるが、本図では低圧エアー吹き付け式のガンの例を示している。53は低圧エアーを供給するホース、54は貯留タンク102の底から塗料を供給するホース、55はガン内の空気圧力と密閉された貯留タンク102内の圧力を同一にするために接続されるホースである。56はガン52に設けられた引き金である。尚、引き金はワイヤーやレバーなどの手段(図示せず)を利用して、上部で遠隔操作できるようにすれば操作が簡単である。
【0020】
図4において、ガン52は、一対の規制円板51、51‘の間において、垂直支持棒60の下端に設けられたヒンジ59部において回転可能に支持されており、前記垂直支持棒60は水平方向の水平支持棒62の左側先端部に設けたクランプ61に上下方向にスライド可能に保持されており、例えば蝶ボルト61‘を締め付けることで任意の位置に固定することができる。同様に水平方向の支持棒62は可動フレーム64に取り付けたクランプ63に水平方向にスライド可能に保持されており、蝶ボルト63‘を締め付けることで任意の位置に固定することができる。このようにすれば、ガン52を任意の位置に、且つ任意の角度に容易に調整することが可能となる。
【0021】
図3において、68は軸受けであり、シャフト67を回転自在に支持している。シャフト67には規制円板51、51‘を備えたシャフトホルダー65,66が嵌装されており、例えば蝶ボルト65’、66‘を締め付けることで任意の位置に固定することができる。すなわち、ラインの幅になる規制円板51と51’の間の幅を自由に調整することができる。前記軸受け68は前記可動フレーム64に固定されており、可動フレーム64はスライドガイド70を介して固定フレーム69に、上下方向にスライド自在に取り付けられている。71は支持棒であって下端部において可動フレーム64に固定されており、上方では固定フレーム69に取り付けられたホルダー69aに嵌装されている。72は前記支持棒71の上端に取り付けられた取っ手であり、これを上方に引き上げると、可動フレーム64が引き上げられる。ラインを引かずに、台車2を移動させるだけの場合には、例えば支持棒71に設けた穴71‘と前記ホルダー69aに設けた穴を一致させて、ピン(図示せず)を差し込めば、可動フレーム64を引き上げた状態で保持できる。尚、固定フレーム69は、その水平部69‘において前記台車2に取り付けられている。
【0022】
図4において、73は樋部材、74は前記樋部材73を流下してきた塗料を受けて貯留するトレイ、75は前記可動フレーム64に取り付けられ、前記トレイ74と樋部材73を保持するブラケットである。
【0023】
図6は図4における樋部材73を右側から見た断面図であって、樋部材73のエッジ部73aが規制円板51,51‘の内側側面に接触している。73b部は除去した塗料を流下させる樋部である。樋部材73は適度な反発力で規制円板51,51‘の内側側面に接触して塗料を除去できるものであれば良く、例えば、厚さが0.5mm程度の鋼板やステンレス板製が良い。
【0024】
次に、本発明に係わる上述のライン引きユニット50の作用について説明する。まず、貯留タンク102に必要量の塗料を投入して密閉する。次に電源装置101と空気供給機103を起動させ、前記吹き付けガン52に設けられた引き金56を引くと、貯留タンク102内の塗料がホース54を通ってガン52内に供給される。同時に低圧エアーもホース53を通ってガン52内に供給されて、先端ノズル57から塗料と低圧エアーが同時に噴出し、塗料は58に示すように霧または粒状になって下面に吹きつけられる。尚、吹き付け作業に先立って、予め前記可動フレーム64を上下方向にスライド自由な状態にして規制円板51,51‘を塗装面に接地させておく。
【0025】
この時、トラックやコートなどの塗装面に接地している規制円板51と51‘の間で吹き付けが行われるため、吹き付けられた塗料は規制円板51と51’に規制されて横に飛び散らないため、鮮明なラインを引くことができる。尚、円板は接地点の前後の隙間から塗料が横に飛び散らない程度の充分な大きさ、例えば外径が300から400mm程度とし、また、ガン52の吹き付け角度は図4に示すように進行方向(図4においては右方向)に対して若干後方に傾け、且つ規制円板の中心軸の真下すなわち接地点に向けて吹き付けるのが良い。尚、吹き付け条件は、塗料が遠くに飛び散り難く、且つ粗い仕上がりにならない程度の粒径になるように、塗料の粘性やノズル径、吹き付けエアー量、ノズルと塗装面との距離などを調整すると良い。本実施例では、塗料が比較的飛散し難い低圧エアー吹き付け式のガンの例を示したが、一般的な高圧エアースプレーガンやエアーレススプレーガンを使うことも可能である。
【0026】
前述の吹き付けを開始すると同時に台車2を移動させると、塗料が飛び散ってラインからはみ出したりすること無く、規制円板51と51‘の間の幅のラインを鮮明に連続的に引くことができる。しかしながら、連続的にラインを引き続けると、飛び散り規制用の規制円板51と51’の内側側面には、吹き付けられた塗料が付着して徐々に蓄積されて、やがては垂れて下方に流れ出してグラウンドやコートの表面に滴下し、ラインからの、はみ出しや、濃淡差ができることがある。また、規制円板51と51’の内側側面で塗料が硬化してラインの幅が徐々に狭くなってしまうこともある。
【0027】
前記樋部材73は、前述の規制円板51と51‘の側面に付着した塗料を除去するものである。台車2の移動に伴って、塗装面に接地している規制円板51と51‘は回転するので、規制円板51,51‘の内側側面に接触している前記樋部材のエッジ部73aが、付着した塗料を連続的に除去し、除去された塗料は樋部73bを流下して貯留トレイ74に貯留される。それによって本発明のラインマーカーを使用すれば、ノズルから噴射された塗料がラインの外に飛び散ったり、液垂れやしみ出し、濃淡差などの無い鮮明なラインを引くことができる。尚、規制円板51と51‘の側面に接触している樋部材のエッジ部73aの押し付け力が大きい場合や、塗料の粘性が高くなって塗料を除去する抵抗力が大きくなる場合に、規制円板51,51’が接地部でスリップして回転が停止することがあるが、その場合には可動フレーム64にウエイト(図示せず)を搭載するか、固定フレーム69と可動フレーム64の間に圧縮バネ(図示せず)を介在させるなどの方法で接地荷重を大きくすれば解決できる。
【0028】
次に、本発明の実施形態2に係わる台車2について説明する。図7は台車2の側面図、図8は台車2の平面図である。図7において、3は台車のフレームであり、その上には床板3‘が貼られている。図8は床板3’を除去した状態を示している。これらの図において、4は台車を人力で押す際の手押しバーである。6は台車を操舵するためのハンドルであって、これを回転させるとハンドル6に連結した垂直シャフト7からベベルギヤボックス8に伝わり、さらに水平方向のシャフト9にまで回転が伝達される。10はシャフトを保持する軸受けであり、11はシャフト10の先端側に設けられたオスネジ部である。12は前記オスネジ部11に嵌装されるメスネジ部を有したブロックであって、その上面においてリンク13の支点部13aが回転自在に嵌められでいる。前記リンク13の他方の支点部13bは、後述の車輪ユニット20にピンを介して回転自在に繋がれている。
【0029】
図9は車輪ユニット20の断面図、図10は車輪ユニット20の平面図である。図9において、21は車輪であって、車軸23に対して回転できないようにキー21aを使って結合されている。他方の車輪22は車軸23に対して回転可能なようにベアリング22aを介して装着されていると同時に、車軸23に装着されたクラッチ24にも接続されている。前記クラッチ24は一般産業用部品として広く使用されているものを使用でき、例えば小倉クラッチ株式会社製のVCE型の乾式単板電磁クラッチである。クラッチ24が非通電の状態では、車輪22は車軸23に対して回転可能にベアリング22aを介して装着された状態であって自由に回転できる。クラッチ24に通電、即ちONの状態にすると、クラッチの電磁力の作用によって車輪22は車軸23と結合されて回転できない、即ち実質的に車輪22と車軸23は一体化された状態になる。尚車輪22,23の接地面に使用する素材は、スリップし難く、且つ耐摩耗性能が優れたウレタンなどを使用するのが良い。
【0030】
前記車軸23は、フレーム26に取り付けたベアリングユニット25と25‘に保持されて自由に回転することができる。車輪ユニット20を構成するフレーム26は、前記台車2のフレーム3の下面に取り付けられる。図8に示す台車2の平面図において、左側ではフレーム26はボルト16を使って固定されて固定車輪を形成しており、一方、右側ではフレーム26は支点14を中心に揺動できるように取り付けられて操舵車輪を形成している。15は揺動用のガイド穴である。
【0031】
図10は、前述の車輪ユニット20の平面図であるが、前記操舵車輪側の例を示しており、支点14を中心に揺動できるように取り付けられたフレーム26は、図の左側において前記リンク13の支点部13bとピンを介して回転自在に繋がれている。従って、前述のハンドル6を回転させると水平シャフト9にまで回転が伝達され、その先端のオスネジ部11に嵌装されるメスネジを有したブロック12が、オスネジ11の回転に応じて前進または後退することから、図10において仮想線で示すように車輪ユニット20は支点14を中心に揺動する。
【0032】
次に、本発明に係わる上述の台車2の作用について説明する。ラインを直線に引く場合は、操舵車輪と固定車輪が平行になるように前記ハンドル6の位置を調整し、同時に前記クラッチ24をON、即ち通電状態にして、操舵車輪と固定車輪の両方ともに、車輪21、22と車軸23とを結合した状態とする。そのようにすれば、鉄道車両の車輪と同様に、車軸に車輪が剛結された状態になり、一対の車輪は両方とも完全に同一回転するため、走行のふらつきや蛇行が無く、極めて安定して直進走行させることができる。
【0033】
一方、陸上競技場のトラックなどの曲線部においては、蛇行の無い正確な半径のラインを引く必要がある。本発明に係わる上述の台車2を使用すれば、曲線部においては、操舵車輪が曲線の半径に対応する角度になるようにハンドル6を調整すると同時に、前記クラッチ24をOFF、即ち非通電状態にして、操舵車輪と固定車輪の両方ともに、車輪21と22が互いに回転自由な状態にする。そのようにすれば、曲線部を走行時の内周側の車輪と外周側の車輪の速度差、即ち回転差を解消することができ、スムーズに滑らかな曲線のラインを引くことができる。
【0034】
例えば、陸上競技場のトラックの曲線の半径が35mとし、本発明の前記台車2の車輪のホイルベース、即ち車輪間のピッチを0.9mと仮定すると、操舵車輪と固定車輪の車軸どうしの角度は約1.5°にする必要がある。その場合、本実施例においては、前記ハンドル6を回転させて前記ブロック12を約10mm前進あるいは後退させれば良い。例えば、前記オスネジ11のピッチが2mmと仮定すると前記ハンドル6を5回転すればよく、微妙な調整を簡単且つ正確に行うことができる。尚、前記オスネジ11のピッチはラインを引く曲線の半径に応じて、適当なピッチの品にすれば良い。また、ハンドル6の回転数や回転位置を容易に判別できるように、回転計や回転数のインジケーター、或いは回転数をカーブの半径に換算した目盛などを適宜設置すれば良い。
【0035】
本発明のラインマーカーを使った本発明に係わるライン引き方法は、例えば直線部から曲線部に移行する瞬間に、直ちにクラッチ24のスイッチをOFFにすると共に、ハンドル6を所定の半径に対応する位置まで急速回転させれば、ラインマーカーを殆ど停止させる必要がなく、連続的にラインを引くことができる。一方、曲線部から直線部に移行する場合は、クラッチ24のスイッチをONにし、ハンドル6は直線に対応する位置に戻せば良い。尚、クラッチ24のスイッチや、ハンドル6の回転位置の表示装置などは、手押しバー4の近くに設置した操作盤5に集約すれば使い勝手が良い。このようにすれば、例えば陸上競技場のトラックのラインを一周連続して引く場合にも、連続的に正確に直線と曲線を引くことが可能となる。
【0036】
前記のとおり、本発明のラインマーカーとライン引き方法によれば、ノズルから噴射された塗料がラインの外に飛び散ったり、液垂れやしみ出し、濃淡差などが生じることなく鮮明なラインを引くことができ、さらに台車は直線部では直進安定性に優れ、且つ曲線部では正確な半径で走行することが可能となり、作業効率が大幅に向上する
【符号の説明】
【0037】
1 ラインマーカー
2 台車
3 台車のフレーム
3‘ 床板
4 手押しバー
5 操作盤
6 操舵ハンドル
7 垂直シャフト
8 ベベルギヤボックス
9 水平シャフト
10 軸受け
11 オスネジ部
12 ブロック
13 リンク
14 支点
15 ガイド穴
16 ボルト
20 車輪ユニット
21 車輪
22 車輪
23 車軸
24 クラッチ
25 ベアリングユニット
26 フレーム
50 ライン引きユニット
51 規制円板
52 ガン
53 低圧エアーホース
54 塗料供給ホース
55 タンク接続ホース
56 引き金
57 先端ノズル
58 粒状の塗料
59 ヒンジ
60 垂直支持棒
61 クランプ
62 水平支持棒
63 クランプ
64 可動フレーム
65 シャフトホルダー
66 シャフトホルダー
67 シャフト
68 軸受け
69 固定フレーム
70 スライドガイド
71 支持棒
72 取っ手
73 樋部材
74 塗料貯留トレイ
75 保持ブラケット
101 電源装置
102 塗料貯留タンク
103 空気供給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を貯留するタンクと、塗料を吹き付けるガンと、前記タンクから前記ガンに塗料を供給する供給装置と、前記ガンの両側に設けられて塗装面に接地して回転する一対の規制円板と、前記の一対の規制円板の間の進行方向の前方側に設けられて、前記の規制円板の側面に付着した塗料を除去して前方に流下させるための樋部材と、前記の樋部材を流下した塗料を貯留させるトレイとが、台車に搭載されていることを特徴とするラインマーカー。
【請求項2】
前記台車は、少なくとも一対の操舵用車輪と一対の固定車輪と操舵装置からなり、前記の一対の操舵用車輪と一対の固定車輪は各々が車軸に装着されており、且つ前記車軸に設けた各々のクラッチの操作によって、各々の一対の車輪同士が回転自由、または剛結の何れかに切り替え可能になっていることを特徴とする請求項1記載のラインマーカー。
【請求項3】
請求項2に記載するラインマーカーを使って直線のラインを引く際は、操舵ハンドルを直線方向の位置に合わせ、且つ前記クラッチの操作によって、一対の操舵用車輪同士と一対の固定車輪同士を剛結した状態で走行しながら行い、曲線のラインを引く際は、操舵ハンドルを曲線の半径に対応した角度の位置に合わせ、且つ前記クラッチの操作によって、一対の操舵用車輪同士と一対の固定車輪同士を回転自在に切り替えた状態で走行しながら行うことを特徴とするライン引き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−407(P2011−407A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163162(P2009−163162)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(501468828)有限会社インテス (20)
【Fターム(参考)】