説明

ラクタムとジアミン及びジカルボン酸の塩とからコポリアミドを連続的に製造する方法

ラクタム並びにジアミン及びジカルボン酸の塩からコポリアミドを連続的に製造する方法であって、ラクタムを、ジアミン及びジカルボン酸の塩と共にポリアミド形成温度にて垂直式重合管を最上部から下方に通過させ、且つ以下の工程:
a)80〜300℃の温度にて混合装置で生じる混合物の蒸気圧よりも高い圧力下で、ラクタム水溶液と、ジアミン及びジカルボン酸の塩とを激しく混合する工程、
b)得られた混合物を、加熱された蛇管式蒸発器(液相及び気相が140〜300℃の温度で形成する)に供給する工程(水蒸気流及び/又は不活性ガス流も、必要に応じて、蛇管の上流にて混合物に導入される)、
c)工程b)にて形成される気相を液相から除去し、カラム中の気相を、水蒸気と、ジアミン、ジカルボン酸及びラクタムを含む有機成分とに分離させ、有機成分を重合に再循環する工程、
d)工程c)の有機成分と混合された工程b)の蛇管からの液相を、ポリアミド形成温度にて、垂直式重合管を最上部から下方に通過させ、コポリアミドを得る工程
を含むことを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラクタムとジアミン及びジカルボン酸の塩とからコポリアミドを連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DD特許110507号には、カプロラクタムと、ジアミン及びジカルボン酸の塩、例えばAH塩とからコポリアミドを調製するためのプロセスが開示されており、このプロセスでは、カプロラクタム、AH塩及び水がVK管(垂直式縮合管)にその上部から供給され、対応するコポリアミドが下方区域にて引き出される。このプロセスは、VK管の上部にて離散する蒸気と共にジアミンも排出され、失われるという不利益を有する。プロセスはまた、供給されるAH塩溶液と共に放出される水がVK管の上部における精密な温度状態を顕著に損なうという不利益を有する。
【0003】
これらの不利益を避けるために、欧州特許出願公開第0393546A号明細書には、カプロラクタムと、ジアミン及びジカルボン酸の塩とからコポリアミドを調製するための連続プロセスが記載されており、このプロセスにおいて、ジカルボン酸及びジアミンから形成されるポリアミド形成化合物と共にカプロラクタムを、高圧下、ポリアミド形成温度にて垂直式重合管を上部から下方に通過させ、同時に管の予備的な縮合区域により水を蒸発させる。これにより、プレポリマーの融点を超える温度において気相及びプレポリマーを形成させる。気相がプレポリマー溶融物と分離され、カラムに伝導され、そこで水蒸気及びジアミン水溶液が分離され、ジアミンを含む水溶液は重合にリサイクルされる。続いて、プレポリマー溶融物が溶融カプロラクタムと混合され、プレポリマー及びカプロラクタムの混合物を、このようにしてコポリアミドを得るために、垂直式重合管を上部から下方に通過させる。
【0004】
このプロセスの不利益は、予備縮合区域からのプレポリマーが既に、低分子量の縮合ジアミン及びジカルボン酸のブロックからなることであり、さらにまたそれはカプロラクタムとの後続の重合においてブロックのまま保持されることである。構成成分の良好なランダム分布は生じない。故に、所望のコポリマー融点に到達させるためには、ジアミン及びジカルボン酸から形成される塩がさらに必要になる。加えて、こうして調製されたコポリマーは、変色する傾向がより大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DD特許110507号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0393546A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、ラクタム(特にカプロラクタム)とジアミン及びジカルボン酸の塩とからコポリアミドを製造するための連続的な方法であって、この方法においてモノマーユニットのランダム分布が改善される製造方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、ラクタム並びにジアミン及びジカルボン酸の塩からコポリアミドを連続的に製造する方法であって、ラクタムを、ジアミン及びジカルボン酸の塩と共にポリアミド形成温度にて垂直式重合管を最上部から下方に通過させ、以下の工程:
a)80〜300℃の温度にて混合装置で生じる混合物の蒸気圧よりも高い圧力下で、ラクタム水溶液と、ジアミン及びジカルボン酸の塩とを激しく混合する工程、
b)得られた混合物を、加熱された蛇管式蒸発器(helical tube evaporator)に供給する工程(当該蒸発器中で液相及び気相が140〜300℃の温度で形成し、水蒸気流及び/又は不活性ガス流も、必要に応じて、蛇管の上流にて混合物に導入される)、
c)工程b)にて形成される気相を液相から除去し、カラム中の気相を、水蒸気と、ジアミン、ジカルボン酸及びラクタムを含む有機成分とに分離させ、有機成分を重合に再循環する工程、
d)工程c)の有機成分と混合された工程b)の蛇管からの液相を、ポリアミド形成温度にて、垂直式重合管を最上部から下方に通過させ、コポリアミドを得る工程
を含むことを特徴とする製造方法によって達成される。
【0008】
本発明に従う製造方法は、公知の製造方法によって可能になる程度よりも、コモノマーユニットがポリマー鎖においてより顕著にランダムに分配されるコポリアミドを提供するという利点を有する。このことにより、ジアミン及びジカルボン酸の塩割合を従来の製造方法に比べて低減できる。さらに、新規な製造方法は、こうして調製されたコポリアミドが、改善された製品特性(例えば固有色が少ない)に関して優れているという利点を有する。
【0009】
ポリマーの調製及び後処理において蛇管式蒸発器の使用は、それ自体は公知である。国際公開第2008/049786号パンフレットには、ポリアミドの調製に蛇管式蒸発器の使用が記載されている。蛇管式蒸発器は、ナイロン−6に基づくポリアミドの抽出から抽出物水溶液を濃縮するために使用される。
【0010】
欧州特許第1113848B号明細書は、熱可塑性ポリマーのポリマー溶液を濃縮するための製造方法に関する。この製造方法において、5〜20質量%のポリマー含有量を有するポリマー溶液は、下流セパレーターを有する下流管束熱交換器を有する一連のコイル状管式蒸発器にて濃縮される。
【0011】
欧州特許第1173264B号明細書は、熱可塑性ポリマーのポリマー溶液を濃縮するための製造方法及び装置に関する。5〜20質量%のポリマー含有量を有するポリマー溶液は、同様に、下流セパレーター及び下流セパレーターを有する後続の管束熱交換器を有する一連のコイル状管式蒸発器にて濃縮される。
【0012】
欧州特許第1007582B号明細書は、流動気相の存在下でプレ重合が行われるポリアミドプレポリマーを調製するための製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、使用されるラクタム構成成分は、好ましくは、6〜12員環を有するもの、例えばバレロラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリラクタム又はラウリルラクタム、好ましくはカプロラクタム、及びこれらの混合物である。
【0014】
本発明によれば、使用されるコポリアミド構成成分は、水溶液中、好ましくは等モル量のジアミン及びジカルボン酸の塩である。
【0015】
好ましいジアミンは、式Iで表される。
2N−R1−NH2
[但し、式中、R1は、4〜16個の炭素原子、特に4〜8個の炭素原子を有し、及びシクロアルキレン基を有していても良いアルキレン基、又は1,3−もしくは1,4−フェニレン基を表す。]
好適な化合物は、例えば、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、又は1,3−フェニレンジアミンもしくは1,4−フェニレンジアミンである。特に産業上の重要性は、R1が4〜8個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を示す式Iのジアミンによって得られる。特に産業上の重要性は、ヘキサメチレンジアミンによって得られる。
【0016】
好ましいジカルボン酸は式IIで表される。
HOOC−R2−COOH II
[但し、式中、R2は、4〜12個の炭素原子、特に4〜8個の炭素原子を有し、シクロアルキレン基を有していても良いアルキレン基、又は1,3−もしくは1,4−フェニレン基を表す。]
好適なジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、又はテレフタル酸もしくはイソフタル酸である。特に好ましいものとしては、アジピン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸が挙げられる。特に産業上の重要性は、アジピン酸/ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン及びイソフタル酸/ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸/ヘキサメチレンジアミン及びドデカン二酸/ヘキサメチレンジアミンの塩、又は2つ以上のこれらの塩の混合物によって得られる。
【0017】
本発明に従う製造方法において、等モル量のジアミン及びジカルボン酸を使用できる。所望により、過剰のジアミン及びジカルボン酸を用いて作用させることも可能である。多くの場合、ジアミンはジカルボン酸よりも揮発性であり、製造方法の過程でジアミンの損失が生じ得るので、少し過剰のジアミンを使用する。本発明によれば、蛇管の下流における気相を分離し、有機構成成分を重合にリサイクルでき、モノマーが損失するのを実質的に妨げる。このため、およそ化学量論の範囲のジアミン及びジカルボン酸にて作用させるのが好ましい。化学量論からの約5%、好ましくは約2.5%、特に約1%の偏差が、本発明に従って可能である。
【0018】
等モル量のジアミン及びジカルボン酸を用いるのが好ましい。使用される水溶液は一般に、30〜70質量%、特に50〜65質量%の前述の塩の含有量を有する。水溶液は、一般に、20℃にて7.7のpHを有する。有利なことには、出発材料は、80〜100℃の温度を有する水溶液である。
【0019】
有利なことには、ジアミン及びジカルボン酸の塩に加えて、ラクタム、特にカプロラクタムが使用される。例えば60〜90質量%の(カプロ)ラクタムを含み、得られたコポリアミドを水を用いて抽出し、好ましくは抽出ラクタムに基づいて0.5〜2倍の量の新たなラクタムを添加して水性抽出物を濃縮することによって得られた(カプロ)ラクタムの水溶液を使用することも可能である。好適な溶液は、例えばDE−A2501348に記載される製造方法によって得られる。ジアミン及びジカルボン酸の塩の量は、モノマーの総量に基づいて、好ましくは0.2〜40モル%、より好ましくは0.5〜20モル%である。
【0020】
本発明に従って、段階a)において、ラクタムの水溶液を、80〜300℃の温度、好ましくは130〜200℃の温度にて、混合装置中に生じる混合物の蒸気圧よりも高い高圧下、ジアミン及びジカルボン酸の塩と激しく混合させる。ジアミン及びジカルボン酸の等モル量を用いるのが好ましい。「高圧」は、標準圧力よりも高く、生じる混合物の蒸気圧よりも高い圧力を意味するものと理解される。0.25〜5MPa(2.5〜50bar)、好ましくは0.5〜2MPa(5〜20bar)の圧力範囲内において作用させるのが好ましい。混合装置は、特に液体用のいずれかの好適な混合装置から選択されてもよい。これらの装置は、好ましくは連続ミキサー、特に静的ミキサーである。ミキサー内部は、モノマー溶液の粘度範囲において、非常に実質的で均質な混合が短時間の間に生じるように選択できる。
【0021】
「激しい」混合は、水性出発モノマー混合物の実質的又は完全な均質化を導く混合を意味するものと理解される。
【0022】
本発明に従って、好ましくは等モル量のジアミン及びジカルボン酸の塩並びにラクタムの水溶液を、水の同時蒸発を伴って、高圧下で段階(b)において蛇管式蒸発器を通過させて気相及び液相を形成させる。等モル量のジアミン及びジカルボン酸の塩並びにラクタムの水溶液は、蛇管式蒸発器に導入する前に、所望のコポリマー組成に従って、適切な場合、静的ミキサーにおいて事前に混合される。好ましい静的ミキサー中の温度は、80〜300℃、好ましくは130〜200℃であるべきである。
【0023】
適切な場合、蛇管の上流の混合物に水蒸気及び/又は不活性ガスを導入できる。不活性ガスは、例えば窒素、二酸化炭素、又はアルゴンである。
【0024】
蛇管式の蒸発器は、好ましくは加熱媒体が加熱ジャケット内で伝導し、温度制御のために作用するジャケット付き管である。本発明に従って好ましく使用される産業上のジャケット付き管は、20〜100m、より好ましくは40〜80mの範囲の高さを有すると共に、好ましくは10〜150mm、特に15〜60mmの内部直径を有する。蛇管式蒸発器では、等モル量のジアミン及びジカルボン酸の塩並びにラクタムの本発明の水溶液において水の蒸発が生じ、体積膨張をもたらす。通常、蛇管式蒸発器の下流領域において、ガス(水蒸気)のコアフローがあり、一方で壁膜が液相として存在する。必要により、蛇管の入口又は「上部」において、不活性ガスは、例えば蒸気、N2、Ar、CO2又はそれらを含むガス混合物、例えば1.6MPa(16bar)の水蒸気として、コアフローを発生又は向上させるために、計量できる。これは、例えばジアミン及び等モル量のジカルボン酸の塩並びにカプロラクタムの水溶液に不十分な水しか存在しない場合、例えば有機構成成分の総濃度が98%を超える場合に必要なことがある。この場合添加されたガスはキャリアガスとして作用する。蛇管式反応器の端部においては、通常、気相及び液相との間に相分離が生じる。ガスのコアフローは、例えば蛇管の断面積に基づいて、15〜35%、特に約25%の面積割合を構成し得る一方で、壁膜、すなわち液相は、65〜85%、特に約75%の断面積を構成してもよい。本発明に従う製造方法において、例えば0.5〜2MPa(5〜20bar)の高圧が、蒸発器入口に存在するので、蛇管式蒸発器がバルブとして作用し得る一方で、圧力は、反応器の出口においては大気圧程度である。こうして圧力は、蛇管の長さにわたって連続的に低下する。蛇管式蒸発器は、国際公開第2008/049786号パンフレットに記載されるように構成できる。
【0025】
反応混合物が蛇管式蒸発器を通過するとき、140〜300℃、好ましくは160〜200℃、有利なことには175〜195℃の温度が確立される。同時に、好ましくは大気圧(0.1MPa(1bar))程度への減圧及び液相を得るためのガス相の除去が生じる。このように、大気圧程度への反応混合物の減圧は、蛇管を通過させることによって行われる。ガス相は、主に水蒸気を含み、それは蛇管式蒸発器を通過した後に有機構成要素から分離される。気相は、例えばカラムが水でパージできる場合にカラムによって除去できる。
【0026】
「大気圧程度」という表現は、−0.05〜+0.1MPa(−0.5〜+1bar)、特に±0.05MPa(±0.5bar)の偏差を有する大気圧(0.1MPa(1bar))を表す。
【0027】
蛇管操作の有利なモードに関して、滞留時間は、好ましくは40〜120秒の範囲である。3〜10分間のより長い滞留時間が使用される場合、蛇管式蒸発器は、有利なことには、大きな表面積を達成するために、内部、例えばランダムパッキング、ラシヒリング又はポールリング、特にワイア・メッシュ・リングを備えている。
【0028】
好ましくは、例えば重合のような化学反応は蛇管式蒸発器では生じず、むしろ気相/ガス相と液相との分離だけが生じる。蒸気形態の混合物から水を除去するのが好ましい。
【0029】
等モル量のジアミン及びジカルボン酸の塩並びにラクタムからなり、又はそれらを含む蛇管から出た気相及び液相の二相混合物が続いて分離される。分離は、一般に、容器における物理的な相違に基づいて自発的に進行する。有利なことには、気相及び液相の二相混合物は、垂直式重合管(VK管)の管状重合区域の上部にて気相空間に入り、そこで分離が行われる。
【0030】
得られた気相は、有利なことには、カラム中で水蒸気、ジアミン、ジカルボン酸及びカプロラクタムに分離され、全ての有機構成成分が重合、好ましくは段階d)にリサイクルされる。気相は、有利なことには、カラム中で精留を伴って分離される。好適なカラムは、例えばランダムパッキングを有するカラム、構造化パッキングを有するカラム、又はバブル−キャップトレイ、バルブトレイ又はシーブ・トレイ・カラムであり、5〜15個の理論段を有する。カラムは、適宜、例えば0.05〜0.25MPa(0.5〜2.5bar)絶対圧にて、又は重合区域の圧力下、気相及び液相の分離におけるものと同一の条件下で操作される。有利なことには、水蒸気1kgあたり0.1〜0.51lの水が、分離作用を改善するために、カラムの上部に導入される。得られたカラム流出物が、ジアミン、ジカルボン酸及びラクタムを含む、又はこれらからなる。水蒸気は、カラムの上部にて得られる。
【0031】
操作の好ましいモードにおいて、分離がVK管の上部で行われる場合、ジアミン、ジカルボン酸及びラクタムを含む、又はこれらからなる液相は、VK管の上部に戻される。
【0032】
ジアミン及び(およそ)等モル量のジカルボン酸の塩並びにラクタムを含む又はこれらからなる蛇管からの有機相、及び分離カラムからの還流は、好ましくは垂直式重合管(VK管)の上部において撹拌することによって混合される。
【0033】
続いて、VK管の上部からの混合物は、ポリアミド形成温度にて垂直式重合管(VK管)を上部から下方に通過し、コポリアミドが得られる。重合管の上部3分の1において、好ましくは250〜285℃、特に255〜275℃の温度が一般に維持される。重合管の過程において、溶融物の温度は、好ましくは240〜260℃での溶融物が下方端部にて得られるように制御される。重合管中の滞留時間は、好ましくは8〜24時間である。こうして得られたコポリアミドは、2.0〜3.0の相対粘度、及び3.5〜12質量%、特に5〜11質量%の抽出可能な水の含有量を有する。こうして得られたコポリアミド溶融物は、一般に、押出成形物にキャスティングされ、固化され、造粒される、又は流動水ストリーム中での水中造粒によって直接造粒される。好適な製造方法は、当業者に公知である。
【0034】
こうして得られた顆粒は、次いで好ましくは80〜120℃の温度にて水と逆流して連続的に抽出されることができる。こうして得られた水性抽出物は、次いで有利なことには、抽出カプロラクタムに基づいて0.5〜2倍の量の新たなカプロラクタムの添加後に濃縮される。好適な製造方法の例は、DE−A2501348に記載されている。
【0035】
一般に、抽出されたコポリアミドは、後に乾燥される。有利なことには、これは、例えば150〜185℃の温度にて、所望の粘度まで逆流する加熱キャリアとして、不活性ガス、例えば窒素又は過熱された水蒸気を用いてそれを加熱することを含む。
【0036】
本発明の製造方法によって得ることができるコポリアミドは、一般に60〜99質量%、特に70〜98質量%のナイロン−6ユニットを有し、射出成形又は押出成形による成形物の製造のため、及びさらにスレッド、繊維及びフィルムを製造するために好適である。
【0037】
本発明は、以降の実施例を参照して詳細に例示される。
【実施例1】
【0038】
ナイロン−6及びナイロン−6,6ユニットで構成されるコポリアミドは、62質量%のAH塩水溶液及びカプロラクタムから進行する一連のプロセスにおいて調製される。AH塩溶液を95℃に加熱し、静的ミキサー中で200℃まで別に加熱されていたカプロラクタムと混合する。混合物を約0.9MPa(9bar)の圧力及び約180℃の温度にて、蛇管式蒸発器に至る圧力コントロールバルブに通す。同時に、水蒸気を蛇管式蒸発器の入口にて計量する。蛇管式蒸発器の入口における圧力は約0.5MPa(5bar)である。蛇管下流を通して混合物を吹き込むために、水蒸気を導入して、モノマー混合物にエネルギーを導入する。蛇管式蒸発器は、加熱媒体が加熱ジャケット内で伝導され、温度制御のために作用するジャケット付き管である。長さは20〜100mの範囲であり、内部直径は好ましくは15〜60mmである。蒸発器管は、スクリュー又は螺旋の形態で配置される。蛇管式蒸発器は、水性混合物中の水の蒸発を生じ、結果として体積が膨張する。同時に、圧力は、蛇管式蒸発器にわたって連続的に低下する。多量の水蒸気が形成されるので、蛇管式蒸発器には高流速が存在する。多量の水蒸気の形成は、非常に短い滞留時間を導き、蛇管の自己洗浄をもたらす。195℃の温度で、大気圧程度にて蛇管式蒸発器を離れる混合物は、VK管の上部に供給される。VK管の上部において、温度は約258℃である。カラムによってVK管の上部にて気相を除去し、縮合後に放出する。残ったモノマー混合物はVK管を通過し、セグメント中で加熱され、温度はVK管の出口から265℃の温度及び約270℃を介して段階的に、VK管の出口において約250℃まで低下する。VK管は確立された静水システム圧力において操作される。VK管の出口において、ナイロン−6/6,6溶融物が得られ、それは押出成形物の造粒又は後続の抽出段階を有する水中での造粒に直接放出ポンプによって供給され、続いて再び乾燥される。乾燥の後は後縮合が行われる。
【0039】
蛇管式蒸発器における滞留時間は、数分の範囲であるが、VK管での滞留時間は約12時間である。
【0040】
静的ミキサー及び蛇管において反応は生じない。ポリアミドを生じる反応は、VK管内まで生じない。
【0041】
管束蒸発器のような慣用の蒸発器に比べて、蛇管式蒸発器では、モノマー混合物における熱応力が低下するように、低温にて穏やかな混合及び水の蒸発が可能である。
【0042】
総モノマーに基づいて、20質量%以下のAH塩が使用される。プロセスの1つの利点は、少量のナイロン−6,6を用いて、例えば欧州特許出願公開第0393546号明細書に記載されるような慣用のプロセスによって調製されるコポリアミドと同じ融点を得ることであり、さらに黄色化が生じ難いことである。同じナイロン−6,6含有量での融点の低下及び黄色化の低減は、コポリアミド中のナイロン−6,6ユニットの良好なランダム分布に起因する。
【実施例2】
【0043】
種々の製造及び試験ラインにおいて、様々な相対粘度を有するナイロン−6/6,6コポリマーを調製した。蛇管での圧力は、0.5MPa(5bar)及び温度は195℃であった。滞留時間は、約1分であった。VK管中の重合が、240〜290℃の温度、0.03MPa(300mbar)の圧力及び12時間の滞留時間にて行われた。比較として、欧州特許出願公開第0393546号明細書に記載される操作パラメーターを使用した。アミノ末端基及びカルボキシル末端基(AEG及びCEG)は、国際公開第95/01389号パンフレット、第6頁35行〜第7頁40行に記載される方法によって決定された。相対粘度(RV)は、25℃の温度及び96質量%の硫酸100mlあたり1gのポリマー濃度にて決定した。
【0044】
以下の表1には、生成物の組成及び特性を報告する。比較は、本発明の技術によって及び公知の技術(欧州特許第393546号明細書を参照のこと)によって調製された、相対粘度RV=3.3及びRV=4.0を有するナイロン−6/6,6コポリマーである。RV=3.3の相対粘度に関して、ナイロン−6,6含有量を、両方の技術に関して融点が196℃に上昇するように調節した。RV=4.0の相対粘度に関して、公知の技術の場合のナイロン−6,6含有量は、192℃の融点になるように調節した。本発明の技術に関して、ナイロン−6,6含有量は、189℃の融点になるように調節した。公知の技術に関して、これは、>20質量%の非常に高いナイロン−6,6含有量によってのみ達成可能である。
【0045】
【表1】

【0046】
表1は、RV=3.3の相対粘度を用いる本発明の技術によって調製されたナイロン−6/6,6コポリマーは、ナイロン−6の融点降下の範囲内で、196℃の融点を達成するために、非常に少量のナイロン−6,6含有量を必要とすることを示している。
【0047】
RV=4.0の粘度に関して、同程度のナイロン−6,6含有量にて本発明の技術によって調製されたナイロン−6/6,6コポリマーは、192℃に比べて189℃の非常に低い融点を有することが明らかである。
【0048】
考慮された両方の粘度に関して固有の色(α値)は低い値を示し、故に、本発明の技術に関してさらなる利点を示す。コポリマーの残留生成物特性、例えばアミノ末端基又は結晶化ピークの最大温度(DSC分析から)も同程度である。これらの改善されたナイロン−6/6,6コポリマーの生成物特性は、さらなる処理過程における改善、例えばフィルム製造において、より透明なフィルムを導く。
【0049】
本発明の技術によって調製されるナイロン−6/6,6コポリマーの改善された特性をさらに理解するために、以下の表2に示される13C NMR分析を行った。
【0050】
【表2】

【0051】
命名:CPL=カプロラクタム
HMD=ヘキサメチレンジアミン
ADA=アジピン酸
【0052】
13C NMR分析は、ポリマー鎖における個々の化学結合の割合を示す。特に興味深いのは、アジピン酸(ADA)とヘキサメチレンジアミン(HMD)との間の直接化学結合の発生であり、それは、ポリマー鎖においてナイロン6,6ブロック構造の存在を示す。
【0053】
表2は、相対粘度がRV=3.3であり、本発明の技術によって調製されたナイロン6/6,6コポリマーは、ナイロン−6,6ブロック構造(3.2モル%に比べて0.8モル%)の顕著に低い含有量を有する。これは、欧州特許第393546号明細書に記載されるプロセスに比べて新規なプロセスの上述の利点を示す。
【0054】
RV=4.0の粘度に関して、5モル%に比べて3.2モル%において、本発明の技術によって調製されたナイロン−6/6,6コポリマーは、同様に、ナイロン−6,6ブロック構造の含有量が顕著に低い。故に本発明に従うプロセスの利点は、最終ポリマーの粘度に独立している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクタム並びにジアミン及びジカルボン酸の塩からコポリアミドを連続的に製造する方法であって、ラクタムを、ジアミン及びジカルボン酸の塩と共にポリアミド形成温度にて垂直式重合管を最上部から下方に通過させ、且つ以下の工程:
a)80〜300℃の温度にて混合装置で生じる混合物の蒸気圧よりも高い圧力下で、ラクタム水溶液と、ジアミン及びジカルボン酸の塩とを激しく混合する工程、
b)得られた混合物を、加熱された蛇管式蒸発器に供給する工程(当該蒸発器中で液相及び気相が140〜300℃の温度で形成し、水蒸気流及び/又は不活性ガス流も、必要に応じて、蛇管の上流にて混合物に導入される)、
c)工程b)にて形成される気相を液相から除去し、カラム中の気相を、水蒸気と、ジアミン、ジカルボン酸及びラクタムを含む有機成分とに分離させ、有機成分を重合に再循環する工程、
d)工程c)の有機成分と混合された工程b)の蛇管からの液相を、ポリアミド形成温度にて、垂直式重合管を最上部から下方に通過させ、コポリアミドを得る工程
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
等モル量の式I:
2N−R1−NH2
[但し、式中、R1は、4〜16個の炭素原子を有し、及びシクロアルキレン基を有していても良いアルキレン基、又は1,3−もしくは1,4−フェニレン基を表す]で表されるジアミン、及び式II:
HOOC−R2−COOH II
[但し、式中、R2は、4〜12個の炭素原子を有するアルキレン基、又は1,3−もしくは1,4−フェニレン基を表す]で表されるジカルボン酸の水溶液が使用される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
使用される前記ラクタムが6〜12員環を有する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
使用される前記ラクタムがカプロラクタムである請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記コポリアミドを水で抽出し、続いて当該水性抽出物を、新たなラクタムを添加して濃縮することによって得られたラクタムが、工程(a)において更に使用される請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(a)において、130〜200℃の温度が維持される請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(a)において、0.5〜2MPa(5〜20bar)の圧力が維持される請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記蛇管を通って流れるときに混合物から形成される前記気相が、前記垂直式重合管の最上部において前記液相から分離される請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記重合管の最上部からの前記気相が、カラムにおいて水蒸気と、ジアミン、ジカルボン酸及びラクタムを含む有機相とに分離され、当該有機相が、前記垂直式重合管の最上部再循環される請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記蛇管からの前記液相が、前記重合管の最上部における前記カラムの還流からの前記有機相/前記有機成分と混合される請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記蛇管式蒸発器の温度が、160〜300℃である請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
ジアミン及びジカルボン酸の塩の量が、モノマーの総量に基づいて、0.2〜40モル%である請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法によって得られるコポリアミド。

【公表番号】特表2012−511604(P2012−511604A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540065(P2011−540065)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066692
【国際公開番号】WO2010/066769
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】