説明

ラクタム化合物の製造方法およびその製造中間体

【課題】本発明は、収率、品質よくラクタム化合物を製造する工業的製法の提供。
【解決手段】上記課題は、式(9)で示される中間体を経由する製造方法によって達成できる。


(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクタム化合物の新規な製造法およびその製造中間体に関する。さらに詳しくは、本発明は、穏和で安全な条件で実施でき、糖尿病治療薬あるいはその製造中間体としてのラクタム化合物の簡便な、効率的な製造法、およびそのような製造法に有用な製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、近年、著しく増加している生活習慣病であり、その治療剤の開発が盛んに行われている。例えば下記式(1)で表される化合物は、優れた糖輸送増強作用、血糖降下作用を有することが報告されている(特許文献1)。
【化1】

【0003】
ところで式(1)を含む、下記一般式(5)で表される化合物類の合成法として下記スキームに示す方法が示されている(例えば、特許文献1、および特許文献2参照)。
【化2】

[式中の記号は、前記特許文献1を参照のこと。]
すなわち式(2)で表されるシクロヘキサン誘導体と芳香族アルデヒド(3)を反応させ環化体(4)を得た後アシル化などを行うことにより化合物(5)を得ている。しかしながら、これらは式(1)の化合物の工業的製造方法とするにはいくつかの課題があることが判明した。
例えば、式(4)においてAが2−メチルベンゾフランを表す化合物である化合物(6)から、化合物(1)を得るには、下記スキームに示すように式(7)で表されるO−保護グリコール酸を例えば1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩のような縮合剤を用いて、化合物(6)と縮合して下記式(8)で表されるアシル化体を得た後に脱保護する方法がある。
【化3】

(式中、RaはC1-6アルキル基を表す。)
しかし、この縮合反応では縮合剤および(7)を大過剰に使用しないと十分な速度で反応が進行せず、工業的規模で製造するにはより安価な効率的な方法が望まれる。
【0004】
また、式(8)で表される化合物は物性的に取り扱いにくく単離精製が困難な化合物でもあり、工業的製造方法の中間体として好適な化合物ではない。
【0005】
一方、上記化合物(6)の製造にも課題があることがわかった。式(1)の化合物を得るための中間体である式(6)で表される(1R,8R,10R)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オンは、特許文献1に記載の方法に従い合成することができる。しかし、下記式(11)で表される(1R,8S,10R)体との立体選択性は良好ではなく、さらに分解反応が進むことから、必要な立体化学構造を有する(1R,8R,10R)体(6)を収率良く得ることは困難であった。
【化4】

【0006】
また、上記化合物(6)の原料となる式(12)で表される化合物の製造にも課題があることがわかった。式(12)で表される2−メチルベンゾフラン−7−カルボアルデヒドは、特許文献1に記載の方法や、特許文献3に従い合成することができる。しかし、低収率であることに加え、250℃という高温や−78℃という低温反応条件、シリカゲルカラム精製など、工業的プロセスとするには相応しくない方法を行う必要があった。
【化5】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/118341号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2002/044180号パンフレット
【特許文献3】国際公開第97/32870号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来方法よりも収率、品質よく式(1)で表されるラクタム化合物を製造する工業的製法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、以下に示すラクタム化合物を製造する工業的製法、およびそれに用いられる新規な中間体に関する。
[1] 下記式(6)
【化6】

の化合物またはその塩を
下記式(9)
【化7】

(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基またはC2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩に変換する工程を含む、下記式(1)
【化8】

の化合物またはその塩を製造する方法。
[2] 式(6)の化合物またはその塩を式(13)
XCOCH2OCOR1 (13)
(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)の化合物
と反応させる工程を含む、前記[1]に記載の方法。
[3] 塩基存在下で反応させる前記[2]に記載の方法。
[4] 式(9)の化合物またはその塩を塩基で処理する工程を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] ワンポットで反応を行うことができる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 下記式(2)
【化9】

の化合物またはその塩と下記式(12)
【化10】

の化合物またはその塩をアルカリ性条件下で縮合環化させ式(6)の化合物を得る工程を含む前記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[6−2] 下記式(2)
【化11】

の化合物またはその塩と下記式(12)
【化12】

の化合物またはその塩をアルカリ性条件下で縮合環化させる式(6)
【化13】

の化合物またはその塩の製造方法。
[7] 式(14)
【化14】

の化合物またはその塩を式(12)に変換する工程を含む、前記[6]に記載の方法。
[8] 下記(15)
【化15】

で表される化合物をパラジウム触媒および酸化剤の存在下で環化し、さらに亜硫酸水素ナトリウムと反応させることにより式(14)の化合物またはその塩を得る工程を含む前記[7]に記載の方法。
[9] 式(15)をパラジウム触媒で処理し、
式(16)
【化16】

の化合物またはその塩を得る工程を含む前記[8]に記載の方法。
[10] パラジウム触媒が、2価のパラジウム触媒である前記[8]または[9]に記載の方法。
[11] 酸化剤がキノン類である前記[8]に記載の方法。
[12] カラム精製を要しない前記[1]〜[11]に記載の方法。
[13] 式(9)
【化17】

(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示す。)
で表される化合物またはその塩。
[14] R1がメチルである前記[13]に記載の化合物またはその塩。
[15] 式(14)
【化18】

で表される化合物またはその塩。
[16] ろ過分離によって、式(6)で表される化合物またはその塩を回収する方法を含む、前記[5]に記載の方法。
[17] 式(6)で表される化合物をアセトキシアセチルクロライドと反応させて式(9)のR1がメチル基を表す化合物とし、該式(9)で表される化合物を単離せずに、金属アルコキシドと反応させて式(1)で表される化合物に変換することを含む、前記[1]に記載の製造方法。
[18] (i)下記式(17)
【化19】

で表される化合物を、下記式(18)
【化20】

で表される化合物に変換する工程;および
(ii)式(18)で表される化合物を式(15)
【化21】

で表される化合物に変換する工程;および
(iii)式(15)で表される化合物を式(12)で表される化合物に変換する工程;
を含む前記[9]に記載の方法。
[19] 工程(i)において、式(17)で表される化合物と、アリルブロミドを反応させることを含む、前記[18]に記載の方法。
[20] アセトニトリルを含む溶媒を用いる、前記[19]に記載の方法。
[21] 塩基存在下で行う、前記[19]に記載の方法。
[22] 工程(ii)を、無溶媒加熱条件下で行う、前記[18]に記載の方法。
[23] 工程(iii)において、式(15)で表される化合物をパラジウム触媒および酸化剤とで反応させることを含む、前記[18]に記載の方法。
[24] 工程(iii)において、エーテル類を含む溶媒を用いる、前記[18]に記載の方法。
[25] 工程(iii)において、式(15)で表される化合物から、パラジウム触媒存在下で式(16)
【化22】

を得てから酸化剤を加える、前記[23]に記載の方法。
[26] エーテル類が、テトラヒドロフランである、前記[24]に記載の方法。
[27] 酸化剤が、ベンゾキノンである、前記[8]または[23]に記載の方法。
[28] 式(12)で表される化合物から式(14)の化合物を経る工程を含む式(12)で表される化合物を精製する方法。
[29] (iv)式(12)で表される化合物を、式(14)で表される化合物に変換する工程;および
(v)式(14)で表される化合物を式(12)で表される化合物に変換する工程;
を含む、前記[8]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[30] 工程(iv)において、式(12)で表される化合物と、亜硫酸水素ナトリウムを反応させることを含む、前記[29]に記載の方法。
[31] 工程(iv)により得られる式(14)で表される化合物の濾過分離による精製工程を含む、前記[29]に記載の方法。
[32] 工程(v)において、酸または塩基と式(14)で表される化合物とを反応させることを含む、前記[29]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明はラクタム誘導体の大量合成に適した製造方法および新規な中間体を提供する。本発明の製造方法を用いることにより、立体選択的に中間体である環化体を得ることができ、ジアシル化体を経由することにより収率よく高純度で目的化合物であるラクタム誘導体を製造することができる。また、原料であるベンゾフラン誘導体の大量合成に適した製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の[1]〜[32]の可能な組み合わせは好ましく、また、本明細書に記載された複数の好ましい実施形態を、組み合わせた実施形態は好ましい。
本発明における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられ、塩素原子または臭素原子が好ましい。
「C1-6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状および分枝鎖状の脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基である。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2,3−ジメチルプロピル基、ヘキシル基などが挙げられる。好ましくはC1-3アルキル基である。
【0012】
「C2-6アルケニル基」は、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基のうち、少なくとも1個の二重結合を有する1価の基である。C2-6アルケニル基としては、具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基(シス、トランスを含む)、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。好ましくはC2-4アルケニル基であり、さらに好ましくはC2-3アルケニル基である。
「C2-6アルキニル基」は、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基のうち、少なくとも1個の三重結合を有する、1価の基である。具体的には、たとえば、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、3−ブチニル基などが挙げられる。好ましくはC2-4アルキニル基、さらに好ましくはC2-3アルキニル基が挙げられる。
「C3-6シクロアルキル基」は、環状の脂肪族炭化水素基を意味し、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。好ましくはC4-6シクロアルキル基である。
【0013】
本発明で用いられる塩としては、化学的に許容されうる酸類との塩と化学的に許容されうる塩基類との塩が含まれる。
本発明に用いられる化学的に許容されうる酸類との塩としては、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸、等)、有機カルボン酸(例えば、炭酸、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸、タンニン酸、酪酸、デカン酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)との塩などが挙げられる。
化学的に許容されうる塩基類との塩としては、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)、金属塩(例えばアルミニウム塩等)などが挙げられる。
化合物(1)の塩は、医学的に許容される塩が好ましい。
医学的に許容される塩としては、無機酸塩、有機酸塩、スルホン酸塩などの酸付加塩;アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、金属塩、アンモニウム塩などの塩基付加塩が挙げられる。無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。有機酸塩としては、例えば、炭酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが挙げられる。スルホン酸塩としては、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。金属塩としては、例えば、アルミニウム塩などが挙げられる。
式(1)で表される化合物またはその塩(以下、「化合物(1)」と称することもある)には、それらの水和物、溶媒和物も含まれる。
式(1)で表される化合物は、塩の形態をとらないものが好ましい。
式(2)、(6)、(9)、(9a)および(11)で示される化合物またはその化学的に許容されうる塩(以下、それぞれ「化合物(2)」等と称することもある)には、それらの水和物、溶媒和物も含まれる。
【0014】
1.ラクタム化合物(1)の製造方法
本発明は式(1)で示される化合物またはその医薬的に許容されうる塩を製造する方法であって、以下の工程(a)および(b)を用いることを特徴とするラクタム化合物の製造方法である。
工程(a)は式(6)で示される化合物またはその塩を式(9)で表される化合物またはその塩に変換する工程である。また、工程(b)は、式(9)で示される化合物またはその塩を式(1)で表される化合物またはその塩に変換する工程である。
すなわち、次式に示すように、工程(a)は、式(6)で表される環化体をアシル化して式(9)で示されるジアシル化体を得る工程であり、工程(b)ではこのジアシル化体を脱アシル化して式(1)で表されるラクタム化合物を得る工程である。
【化23】

(式中、R1の定義は前記の通りである。)
ここで、化合物(6)、(9)はそれぞれ塩の形態をとらないものが好ましい。
以下、好ましい実施形態について更に詳細に記載する。
【0015】
(工程(a))
工程(a)では、好ましくは塩基の存在下で式(13)で表されるO−保護グリコール酸ハロゲン化物(XCOCH2OCOR1;式中、XおよびR1の定義は前記の通りである。)を環化体(6)に対して2当量以上用いてアシル化することにより式(9)で表されるジアシル化体が選択性よく得られる。
式(9)で表される化合物は物性的に取り扱い易く単離精製が容易であり良好な収率および品質で得ることができる。例えば、本化合物(9)は濾過分離により固体として取得することにより単離精製こともできる。
式(13)で表されるO−保護グリコール酸ハロゲン化物のR1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示し、C1-6アルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。またXはハロゲン原子を示すが、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられ、塩素原子が好ましい。
【0016】
酸ハロゲン化物は環化体に対して2当量以上用いられるが収率、副生物の抑制、経済的な観点から2.30〜2.80当量が最も好ましい。
塩基としてはトリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミンなどの置換アミン、またはピリジン等が用いられるが、好ましくは置換アミンであり、トリエチルアミンが最も好ましい。
塩基は、用いられる酸ハロゲン化物に対して1当量以上を用いるのが好ましい。酸ハロゲン化物が環化体に対して、2.30〜2.80当量用いられる場合、塩基は環化体に対して2.50当量〜3.00当量用いられるのが最も好ましい。
【0017】
アシル化の反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、およびこれらの混合物が用いられる。
エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素と炭化水素の混合溶媒が好ましい。
原料および試薬の投入順序については特に限定はしないが式(13)の酸ハロゲン化物、式(6)の環化体、塩基の順に投入する方が収率、副反応の抑制の観点から好ましい。
【0018】
反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行なわれる。10℃以上が好ましく、エステル類が溶媒の場合は15℃〜25℃、ケトン類ならびに芳香族炭化水素と炭化水素の混合溶媒の場合は55℃〜65℃が最も好ましい。
塩基の滴下時間は1時間以上が好ましい。反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね1〜24時間である。
反応終了後は水を加えて過剰の酸塩化物を不活性化させ反応を停止させる。
反応を芳香族炭化水素と炭化水素の混合溶媒中でおこなった場合は、式(9)の化合物が析出するため、これを濾過分離して目的物の結晶を得ることが可能である。
反応をエステル類またはケトン類でおこなった場合、反応生成物は反応溶媒によって抽出される。抽出溶媒をアルコール類を含む溶媒に置換して、目的物を単離精製することなく工程(b)に使用される。この方法は、遠心分離機による固体の単離精製などの煩雑な操作を一切必要としないことから、工業プロセスとして有用である。酢酸エチル、2−ブタノンはこの観点からも反応溶媒として好ましい。
【0019】
なお、上記のようにして得られる式(9)で表される化合物は新規であり、式(1)で表される最終生成物を製造する中間体として有用である。したがって、本発明は、このような中間体として式(9)の化合物を提供するものである。なお、式(9)中、R1は、メチルである化合物((1R,8R,10R)−5,9−ビス(2−アセトキシアセチル)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン)が好ましい。
【0020】
(工程(b))
つぎに、工程(b)について説明する。
工程(a)で得られるジアシル化体(9)について塩基で処理を行うと9位に導入されたアシルオキシアセチル基の末端のアシル基が除去されるのと同時に、5位に導入されたアシルオキシアセチル基全体も除去され、式(1)で表されるラクタム化合物が得られる。すなわち(6)から(9)を経由することにより良好な収率および品質で簡便に化合物(1)を製造することができる。
塩基処理における溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、水、アルコール類と水の混合物、トルエン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、アルコール類とトルエン等の芳香族炭化水素やヘキサン、ヘプタン等の炭化水素との混合物等が用いられる。アルコール類と水の混合物が特に好ましい。
【0021】
塩基として、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属ヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属カルボネート、などが挙げられるが、金属ヒドロキシドが好ましく特に水酸化カリウムが好ましい。また、金属アルコキシドも好ましく特にナトリウムメトキシドが好ましい。ナトリウムメトキシドはそのメタノール溶液を用いてもよい。
塩基の量は特に限定はないが、塩基として金属ヒドロキシドを用い反応溶媒としてアルコール類を含有する溶媒を用いた場合、ジアシル化体(9)に対して1〜10当量が好ましく、副反応の抑制の観点および経済的な観点から3〜5当量が最も好ましい。
【0022】
原料および試薬の投入順序については特に限定はない。
反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行なわれる。25〜60℃が好ましく45℃〜55℃が最も好ましい。
反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね1〜24時間である。
反応終了後、室温から0℃に冷却し、析出物を濾過分離して化合物(1)を固体として得ることが可能である。
【0023】
2.環化体(6)の製造方法
本発明における式(6)で表される環化体の製造方法について説明する。この製造方法は、次式に示すように、環化反応によって(6)と(11)の異性体混合物を生成し、晶析によって(6)のみを選択的に固体として取得するものである。
【化24】

以下、好ましい実施形態について更に詳細に記載する。
環化反応は、式(2)で表されるシクロヘキサン誘導体またはその塩、式(12)で表される化合物、メタノール等の溶媒を用いて行われ、環化体を式(6)で表される(1R,8R,10R)体と式(11)で表される(1R,8S,10R)体の混合物として与えるか、または選択的に高収率の式(6)で表される(1R,8R,10R)体として与える。
式(2)で表されるシクロヘキサン誘導体はフリー体であっても塩であってもよいが、取り扱いやすさからは、化学的に許容されうる酸類との塩が好ましく、特に塩酸塩が好ましい。
本環化反応は、化学的に許容されうる酸類との塩を用いて行う場合には、アルカリ性条件下で行うのが好ましい。アルカリ性条件下で行うと、式(6)で表される(1R,8R,10R)体を選択的に高収率(例えば、85%以上)で得ることができる。
【0024】
ここでアルカリ条件とは、用いられる化合物(2)が化学的に許容されうる酸類との塩である場合に、該酸類に対してやや過剰量の塩基を反応混合物に加えた条件を意味する。やや過剰量の塩基としては、1.02〜1.08当量が好ましく、特に1.04〜1.06当量の塩基が好ましい。また、pH値としては、pH10.0〜13.5が好ましく、特にpH12.2〜12.8が好ましい。使用できる塩基としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属ヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属カルボネート、などが挙げられるが、金属ヒドロキシドが好ましく特に水酸化カリウムが好ましい。また、金属アルコキシドも好ましく特にナトリウムメトキシドが好ましい。ナトリウムメトキシドはそのメタノール溶液を用いてもよい。さらに、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミンなどを用いることもできる。
【0025】
式(2)で表される化合物が酸類との塩である場合に中和する塩基としては、例えば上述の塩基が挙げられるが、金属ヒドロキシドが好ましく特に水酸化カリウムが好ましい。また、金属アルコキシドも好ましく特にナトリウムメトキシドが好ましい。
式(2)で表される化合物と式(12)で表される化合物の比率には特に限定はないが、経済的観点からはモル比1:0.8〜1:1.2が好ましく、さらに好ましくはモル比1:0.95〜1:1.05である。
反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行なわれる。好ましくは40℃〜反応混合物の沸点、さらに好ましくは55℃〜65℃が用いられる。
反応時間は温度等に依存するが、概ね1〜24時間である。
【0026】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n-、t−ブタノール等のアルコール性溶媒が用いられ、メタノールを含有する溶媒が好ましく、特にメタノールが好ましい。
【0027】
環化反応後は貧溶媒、例えば水等を加えた後に室温〜0℃まで冷却後、析出した結晶を濾過分離して式(6)で表される化合物を選択的に固体として得ることが可能である。
【0028】
3.ベンゾフラン(12)の製造方法
本発明は式(12)で示される化合物を製造する方法であって、以下の工程(c)、(d)、(e)、(f)および(g)を用いることを特徴とするベンゾフラン誘導体の製造方法である。
工程(c)は式(17)で示される化合物を式(18)で表される化合物に変換する工程である。工程(d)は、式(18)で示される化合物を式(15)で表される化合物に変換する工程である。工程(e)は、式(15)で示される化合物を式(16)で示される化合物を経由して式(12)で表される化合物に変換する工程である。工程(f)は、式(12)で示される化合物を式(14)で表される化合物に変換し、結晶として単離生成する工程である。工程(g)は、式(14)で示される化合物を式(12)で表される化合物に変換する工程である。
【0029】
すなわち、次式に示すように、工程(c)は、式(17)で表されるフェノールをアルキル化して式(18)で示されるO−アリル化体を得る工程であり、工程(d)ではこのアリル化体を転移させて式(15)で表されるC−アリル化体を得る工程である。工程(e)は、このC−アリル化体をパラジウム触媒存在下で内部オレフィンへと異性化させた後に酸化的環化反応を行ってベンゾフラン(12)を得る工程である。工程(f)では、このベンゾフランを亜硫酸水素ナトリウム付加体へと変換し、単離精製する工程である。工程(g)は、この付加体を酸性またはアルカリ性条件下で処理し、式(12)で表されるベンゾフランを得る工程である。
【化25】

以下、好ましい実施形態について更に詳細に記載する。
【0030】
(工程(c))
工程(c)では、塩基の存在下でアリルハライド(XCH2CHCH2;Xは前記の通りである。)を用いてアリル化することにより式(18)で表されるO−アリル化体が得られる。
アリルハライドのXはハロゲン原子を示す。
アリルハライドはサリチルアルデヒド(17)に対して1当量以上用いられるが、収率、経済的な観点から、1.0〜1.3当量が最も好ましい。
塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属ヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属カルボネートなどが挙げられるが、金属カルボネートが好ましく、特に炭酸カリウムが好ましい。さらに、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミンなどを用いることもできる。
【0031】
アリル化の溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、およびこれらの混合物が用いられる。このうちニトリル類が好ましく、特にアセトニトリルが好ましい。
【0032】
原料および試薬の投入順序については特に限定はしないがサリチルアルデヒド(17)を最後に投入するのが操作性、収率、副反応の抑制の観点から好ましい。
反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行なわれる。10℃以上が好ましく、50℃〜70℃が最も好ましい。
サリチルアルデヒド(17)の投入時間は1時間以上が好ましい。反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね1〜24時間である。
反応終了後は、析出物を濾過し、濃縮することにより目的物を得ることが可能である。
【0033】
(工程(d))
つぎに、工程(d)について説明する。
工程(c)で得られるO−アリル化体(18)について熱処理を行うと、転移反応が起こりC−アリル化体(15)が得られる。
反応温度は100℃以上で行われ、160℃から210℃が好ましい。
転移反応の溶媒はジメチルスルホキシド、N,N−ジエチルアニリン、テトラリンなどの高沸点溶媒か、無溶媒条件が用いられ、無溶媒条件が最も好ましい。
反応終了後は減圧蒸留で精製し、C−アリル化体(15)を油状物として得る。
【0034】
(工程(e))
つぎに、工程(e)について説明する。
工程(d)で得られるC−アリル化体(15)をパラジウム触媒で処理すると異性化が進行し、内部オレフィン(16)が得られる。これを単離することなくパラジウム触媒と酸化剤で処理すると酸化的環化反応が進行し、ベンゾフラン(12)が得られる。すなわち、(15)から(16)を経由することにより、良好な収率および品質で簡便にベンゾフラン(12)へと変換することができる。
【0035】
異性化と酸化的環化反応の一連の溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、およびこれらの混合物が用いられる。このうちエーテル類が好ましく、特にテトラヒドロフランが好ましい。
【0036】
異性化と酸化的環化反応の一連のパラジウム触媒としては、酢酸パラジム、塩化パラジウムビスアセトニトリル錯体、塩化パラジウムビスベンゾニトリル錯体、塩化パラジウムビストリフェニルホスフィン錯体等の2価パラジウム触媒が用いられるが、このうち塩化パラジウムビスアセトニトリル錯体が最も好ましい。
パラジウム触媒はC−アリル化体に対して0.005当量〜0.5当量用いられるが、経済的な観点から0.005当量〜0.02当量が好ましい。
【0037】
異性化反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行われる。10℃以上が好ましく、35℃〜45℃が最も好ましい。反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね10〜60時間である。
【0038】
酸化的環化反応で用いる酸化剤としては酸素ガス、ベンゾキノン、クロラニル等のキノン類、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、二酸化マンガン、クロム酸などの金属酸化剤などが挙げられるが、キノン類が好ましく、1,4−ベンゾキノンが最も好ましい。
酸化剤はC−アリル化体に対して1当量以上用いられるが、収率、副生成物の抑制、経済的な観点から1.0当量〜1.3当量が好ましい。
酸化的環化反応では添加剤として酢酸ナトリウムや塩化リチウム等の無機塩が用いられるが、塩化リチウムが好ましい。
添加剤はC−アリル化体に対して0.2当量〜5当量用いられるが、収率、経済的な観点から1.2当量〜1.6当量が好ましい。
【0039】
酸化的環化反応の温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行われる。10℃以上が好ましく、60℃以上が最も好ましい。反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね10〜40時間である。
反応終了後はヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素およびそれらの混合溶媒に置換し、水と水酸化ナトリウム水溶液で洗浄を行う。有機層を濃縮し、目的物のベンゾフラン(12)の粗生成物を得ることができる。有機層は濃縮せずにそのまま工程(f)に使用しても良い。
【0040】
(工程(f))
つぎに、工程(f)について説明する。
工程(e)によって得られるベンゾフラン(12)の粗生成物を亜硫酸水素ナトリウム水溶液で処理することにより付加反応が進行し、式(14)に示される化合物を得る。
付加反応の溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、およびこれらの混合物が用いられる。このうちアルコール類と炭化水素の混合物が好ましく、特にエタノールとヘプタンの混合物が好ましい。
【0041】
亜硫酸水素ナトリウムはベンゾフラン(12)に対して1当量以上用いられるが、収率、経済的な観点から1.0当量〜1.3当量が最も好ましい。
付加反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行われる。10℃以上が好ましく、25℃〜35℃が最も好ましい。反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね5時間未満である。
反応終了後は析出物を濾過分離して化合物(14)を固体として得ることが可能である。ベンゾフラン(12)は油状物であるため精製が困難であるが、このように付加体(14)に変換し、固体として単離精製することが可能である。
【0042】
(工程(g))
つぎに、工程(g)について説明する。
工程(f)によって得られる付加体(14)を、酸性またはアルカリ性条件下で加水分解することによりベンゾフラン(12)が得られる。
加水分解反応の溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、水およびこれらの混合物が用いられる。このうち水が最も好ましい。
【0043】
酸としては無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸等)、有機酸(例えば、酢酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、安息香酸、ピバリン酸、マロン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸等)が挙げられるが、硫酸、塩酸、酢酸が好ましく、塩酸が最も好ましい。
塩基としてはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属ヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属カルボネート、などが挙げられるが、金属ヒドロキシドが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。ナトリウムメトキシドはそのメタノール溶液を用いてもよい。
【0044】
加水分解反応温度は0℃から反応混合物の沸点までの間で行われる。10℃以上が好ましく、45℃〜55℃が最も好ましい。反応時間は、溶媒の種類や温度に依存するが、概ね1時間未満である。
反応終了後は有機溶媒によって抽出を行う。抽出溶媒としては酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロペンチルメチルエーテル用いられる。このうちエステル類が好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。抽出溶媒を濃縮することで目的物であるベンゾフラン(12)の精製品を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明の詳細を述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(分析条件)
以下の実施例における分析は、下記の測定装置を用いて、常法に従って行った。
(1)1H−NMRおよび13C−NMR
装置:ブルカー(BRUKER) AVANCE400
(2)ESI−MS
装置:サーモクエスト(Thermo Quest)TSQ700、あるいは、日本ウォーターズZQ2000
(3)HPLC
カラム:資生堂製 CAPCELL PAK C18 MGII 4.6mmID X 150mm、5μm
カラム温度:40℃
検出波長:UV254nm
流量:1.0mL/min
分析条件1
移動相:A液 10mMリン酸(ナトリウム)水溶液[Na2HPO4,NaH2PO4各5mM,pH7]、B液 アセトニトリル
グラジエント条件:A液/B液 初期75/25、5分後75/25、30分後15/85
分析条件2
移動相:A液 10mMリン酸(ナトリウム)水溶液[Na2HPO4,NaH2PO4各5mM,pH7]、B液 アセトニトリル
グラジエント条件:A液/B液 初期80/20、5分後80/20、30分後15/85
なお、合成の各工程において、取得した目的物の含量値(%)はHPLCのエリア面積を標品のものと比較することによって得た。
【0046】
(実施例1)
化合物(1)((1R,8R,10R)−9−(2−ヒドロキシアセチル)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン)の合成
(工程1)
2−アリルオキシベンズアルデヒド(18)の合成
【化26】

撹拌機を備えた300Lグラスライニング反応槽に、アセトニトリル89.8kgと炭酸カリウム22.8kg(165mol)、アリルブロミド20.0kg(165mol)を加え、60℃に昇温した。サリチルアルデヒド16.8kg(138mol)を1時間半かけて滴下し、アセトニトリル2.6kgで洗いこみを行った。3時間反応を行った後、25℃に冷却し、固体を吸引ろ過で分離後、アセトニトリル26.4kgで洗浄した。濾過液を減圧濃縮して表題化合物21.8kgを得た(収率98%)。
【0047】
(工程2)
2−アリルサリチルアルデヒド(15)の合成
【化27】

工程1で得られる化合物をコルベンに加え、加熱する操作を3バッチ行った(1バッチ目:化合物8.73kg、10Lコルベン、170℃〜200℃、12.5時間、2バッチ目:化合物8.73kg、10Lコルベン、170℃〜180℃、20.5時間、3バッチ目:化合物4.37kg、5Lコルベン、170℃〜180℃、18.5時間)。反応液を合わせて減圧蒸留精製を行い、表題化合物15.1kg得た(含量89.0%、収率62%)。
【0048】
(工程3)
(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−メタンジオールアリルサリチルアルデヒドハイドロジェンサルファイト ナトリウム塩(14)の合成
【化28】

工程2で得た化合物 13.0kg(含量89.0%、71.3mol)とテトラヒドロフラン128kg、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム109gを加えて昇温し、35℃〜44℃で5時間撹拌した。パラジウム触媒109gを加えてテトラヒドロフラン1kgで洗いこみ、36℃〜45℃で23時間撹拌した。パラジウム触媒11gを加えてテトラヒドロフラン0.1kgで洗いこみ、さらに36℃〜45℃で42時間撹拌した。26℃に冷却後、塩化リチウム5.3kgと1,4−ベンゾキノン10.9kgを加えて昇温し、60℃〜66℃で15時間撹拌した。反応液を全量50Lまで濃縮し、水37kgを加えた後に全量50Lになるまで濃縮した。ヘプタン71kgと9.2%水酸化ナトリウム水溶液150kgを加えて50℃で40分間弱く撹拌した後に15分静置し、メタノール4.8kgを弱く撹拌しながら30分かけて滴下した。水層を除去後、有機層に7.5%水酸化ナトリウム水溶液26kgを加え、50℃で30分間弱く撹拌した後に15分静置した。水層を除去後、有機層に水23kgを加え、50℃で30分間弱く撹拌した後に15分静置した。水層を除去後に冷却し、有機層を濾過し、ヘプタン11kgで洗いこみを行った。全量35Lまで濃縮後、エタノール119kgを加え、さらに4M亜硫酸水素ナトリウム水溶液20kgを25℃〜31℃で30分かけて滴下した。30℃で3時間撹拌した後に析出物を減圧濾過し、エタノール31kgで洗いこみを行った。湿固体を60℃で減圧乾燥し、表題化合物14.5kgを得た(含量97.5%、収率75%)。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ7.48 (dd, 1H), 7.37 (dd, 1H), 7.11, (dd, 1H), 6.53 (d, 1H), 6.18 (d, 1H), 5.57 (d, 1H), 2.43 (s, 3H)
13C NMR(100MHz, DMSO-d6): δ154.99, 152.62, 128.22, 123.38, 122.65, 122.07, 118.99, 103.01, 79.10, 14.09
【0049】
(工程4)
2−メチルベンゾフラン−7−カルボアルデヒド(12)の合成
【化29】

工程3で得た化合物 184g(含量97.6%、0.681mol)を2M水酸化ナトリウム水溶液409mLに溶解させ、50℃で10分間撹拌した後、30℃に冷却した。酢酸エチル218mLを加え、抽出分離を行った後、取得した有機層を水109mLで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、15KPa、50℃(バス温)の条件で濃縮を行った後、さらに、室温下、真空ポンプで14時間乾燥させ、106gの表題化合物(油状)を得た(収率97%)。
【0050】
(工程5)
(1R,8R,10R)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン(6)の合成
【化30】

メタノール820mLに水酸化カリウム30.8g(含量96.2%、529mmol)を溶解し、4−[(1R、2R)−2−アミノシクロヘキシルアミノ]−3−ピロリン−2−オン塩酸塩133.6g(含量88.8%、512mmol)を加えた。25℃で撹拌、中和の後、20%水酸化カリウム−メタノール溶液を滴下してpHを12.33に調整した。工程4で得られる化合物82.0g(512mmol)のメタノール287 mL溶液を加えて60℃に昇温し、22時間撹拌した。45℃に冷却後、水492 mLを約1時間かけて滴下し、溶媒を462g濃縮した。水246 mLを10分で加えて一晩撹拌保存の後に溶媒を154g濃縮し、水164 mLと30%メタノール水溶液100gを順次加えて10℃に冷却した。一晩撹拌の後に分離し、湿結晶を60℃で減圧乾燥して表題化合物160gを得た(含量98.0%、収率 90.8%)。
【0051】
(工程6)
(1R,8R,10R)−9−(2−ヒドロキシアセチル)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン(1)の合成
【化31】

酢酸エチル936mLとアセトキシアセチルクロリド105mL(979mmol)を混合し、15℃で(1R,8R,10R)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン(6)123g(含量98.0%、356mmol)を2回に分けて投入した。20℃にてトリエチルアミン147mL(1.05mol)を2時間10分かけて滴下し、2時間撹拌した。水360mL、5%重曹水360mL、水120mLで順次洗浄し、酢酸エチル層を濃縮、メタノールに置換して438gとした。メタノール528mLと水192mLの混合溶液に水酸化カリウム83.0g(含量96.2%、1.42mol)を溶解し、50℃にて置換濃縮液を1時間10分かけて滴下した。50℃で5時間撹拌後、10℃に冷却し、析出した結晶をろ過した。60℃で真空乾燥後、表題化合物115gを得た(含量100%、収率82.0%)。
【0052】
(実施例2)
化合物(1)((1R,8R,10R)−9−(2−ヒドロキシアセチル)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン)の合成 その2
2−ブタノン936mLとアセトキシアセチルクロリド114.6g(836mmol)を混合し、25℃で(1R,8R,10R)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン(6)123g(含量97.9%、356mmol)を2回に分けて投入した。60℃に昇温してトリエチルアミン92.3g(907mmol)を2時間20分かけて滴下し、2時間撹拌した。25℃に冷却後、水360mL、5%重曹水360mL、水240mLで順次洗浄し、2−ブタノン層を濃縮、メタノールに置換して濾過を行い、濾過液を432gに濃度調整した。メタノール528mLと水192mLの混合溶液に水酸化カリウム83.0g(含量96.2%、1.42mol)を溶解し、50℃にて濃度調整した濾過液を1時間かけて滴下した。50℃で2時間撹拌後、10℃に冷却し、析出した結晶をろ過した。60℃で真空乾燥後、表題化合物118gを得た(含量100%、収率84.0%)。
【0053】
(実施例3)
化合物(9a)((1R,8R,10R)−5,9−ビス(2−アセトキシアセチル)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン)の合成
トルエン270mLとアセトキシアセチルクロリド14.7mL(137mmol)および(1R,8R,10R)−8−(2−メチルベンゾフラン−7−イル)−2,5,9−トリアザトリシクロ[8.4.0.03,7]テトラデカ−3(7)−エン−6−オン(6)20.53g(含量97.4%、59.3mmol)を混合し、60℃に昇温してトリエチルアミン20.7mL(148mmol)を1時間10分かけて滴下し、その後2時間撹拌した。水100mLを加えたのちに濃縮し、10℃に冷却した。析出した結晶をろ過し、60℃で真空乾燥後、表題化合物25.9gを得た(含量89.0%、収率72.3%)。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ7.80 (s, 1H), 7.51 (d, 1H), 7.16 (dd, 1H), 7.06 (d, 1H), 6.62 (s, 1H), 5.93 (brs, 1H), 5.47 (d, 1H), 5.04 (d, 1H), 4.99 (d, 1H), 4.87 (d, 1H), 4.33 (d, 1H), 4.25 (d, 1H), 4.06 (m, 1H), 2.96 (m, 1H), 2.47 (d, 3H), 2.35 (m, 1H), 2.11 (s, 3H), 2.08 (s, 3H), 2.06 (m, 1H), 1.47 (m, 1H), 1.38 (m, 1H), 1.05 (m, 2H), 0.61 (m, 2H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(6)
【化1】

の化合物またはその塩を
下記式(9)
【化2】

(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示す。)で表される化合物またはその塩に変換する工程を含む、下記式(1)
【化3】

の化合物またはその塩を製造する方法。
【請求項2】
式(6)の化合物またはその塩を式(13)
XCOCH2OCOR1 (13)
(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)の化合物またはその塩
と反応させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基存在下で反応させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(9)の化合物またはその塩を塩基で処理する工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ワンポットで反応を行うことができる請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
下記式(2)
【化4】

の化合物またはその塩と下記式(12)
【化5】

の化合物またはその塩をアルカリ性条件下で縮合環化させ式(6)の化合物を得る工程を含む請求項1乃至5に記載の方法。
【請求項7】
式(14)
【化6】

の化合物またはその塩を式(12)に変換する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
下記(15)
【化7】

で表される化合物またはその塩をパラジウム触媒および酸化剤の存在下で環化し、さらに亜硫酸水素ナトリウムと反応させることにより式(14)の化合物またはその塩を得る工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(15)をパラジウム触媒で処理し、
式(16)
【化8】

の化合物またはその塩を得る工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パラジウム触媒が、2価のパラジウム触媒である請求項8乃至9に記載の方法。
【請求項11】
酸化剤がキノン類である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
カラム精製を要しない請求項1乃至11に記載の方法。
【請求項13】
式(9)
【化9】

(式中、R1はC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、またはC3-6シクロアルキル基を示す。)
で表される化合物またはその塩。
【請求項14】
1がメチルである請求項13に記載の化合物またはその塩。
【請求項15】
式(14)
【化10】

で表される化合物またはその塩。

【公開番号】特開2012−180282(P2012−180282A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158271(P2009−158271)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】