説明

ラクタム化合物又はその塩及びPPAR活性化剤

【課題】PPAR活性化剤として有用なラクタム骨格を有する化合物又はその塩を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるラクタム化合物又はその塩。


[式中、Rは、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基などを示し、係数aは0〜5の整数を示し、Rはハロゲン原子などを示し、係数bは、0〜4の整数を示し、X及びXはアルキレン基又は酸素原子を示し、Xがアルキレン基であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはアルキレン基であり、Rは水素原子又はアルキル基などを示し、Rは直接結合又はアルキレン基を示し、Rは、水素原子、アルキル基を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキシソーム増殖物質活性化受容体(PPAR)アゴニスト(活性化剤)として有用なラクタム化合物又はその塩(薬理学的に許容可能な塩など)、ラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を含む組成物(医薬組成物など)、PPAR活性化剤、脂肪酸、脂質又は糖の代謝異常及び代謝に比較した過剰摂取に起因する各種疾患(例えば、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、拡張型心筋症、高血圧、高脂血症、低HDL血症、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、肥満など)の予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖物質活性化受容体(peroxisome proliferators-activated receptor:PPAR)は、核内受容体スーパーファミリーに属し、リガンド依存的に転写を制御する核内転写因子である。哺乳動物においては、PPARα,PPARγ及びPPARδの3種類のサブタイプ(アイソフォーム)が知られており、これまで種々の研究が行われてきた。
【0003】
PPARαは、主に肝臓、心筋、小腸のクリプトなどの脂肪酸を代謝する組織に発現し、脂肪酸代謝を調節しており、PPARγは脂肪組織に高発現し、脂肪細胞の分化、リポタンパク質リパーゼやCD36などを誘導することにより脂肪酸の取り込みを促進し、中性脂肪として蓄える機能を有することが明らかとなっている。PPARδは、発現部位に組織特異性は見られず、ほぼ全ての臓器に普遍的に発現し、脂肪酸代謝に関与する転写受容体(調節因子)である。脂肪酸代謝に関して、PPARδは、骨格筋・心筋の脂肪酸取り込み、輸送、酸化、及び脱共役タンパクといった脂肪酸代謝を調節したり、また、単球からマクロファージへと分化する際に、顕著に誘導され、マクロファージの脂質代謝などに関与することが知られている。
【0004】
このように、PPARは脂質や糖質の代謝に関係する種々の因子を遺伝子レベルで制御している。また、PPARは、RXR(レチノイン酸X受容体)ヘテロ二量体型受容体に分類され、レチノイドの核内受容体であるRXRとヘテロダイマーを形成して、DNAのペルオキシソーム増殖剤反応配列(PPRE)に結合し、機能を発揮する。
【0005】
従って、PPARにリガンドを結合させることにより、PPAR(又はヘテロダイマー)を活性化させてPPREとの結合を促進させたり、又はPPAR(又はヘテロダイマー)のPPREとの結合を阻害することにより、ターゲット遺伝子の転写を調節することが可能となる。PPARと結合するリガンドには、内因性リガンド及び非内因性リガンド(外因性リガンド)があるが、内因性リガンドについては、長鎖脂肪酸がすべてのサブタイプのPPARのリガンドとして作用し、PPARαのリガンドとしてエイコサノイド、PPARγのリガンドとして15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンなどが知られているが、詳細については未だ解明されていない部分が多い。外因性リガンドについては、PPARαのリガンド(活性化剤)としてフィブラート系高脂血症治療薬、フェノキシ酢酸類及びフェニルプロピオン酸類、PPARγのリガンド(活性化剤)としてチアゾリジンジオン(TZD)系糖尿病治療薬(ピオグリタゾン、ロシグリタゾンなど)、非TZD系PPARγ活性化剤(TAK−559(武田薬品工業(株))、RG12525(アベンティス社)など)などが知られている。
【0006】
特に、PPARのうち、PPARδについては、PPARα及びγに比べて、その生理的な機能の研究が遅れており、近年、PPARδ受容体(活性化作用を有する物質(又は活性化剤))の薬理活性及び医薬用途に関する知見が得られているところである。
【0007】
例えば、PPAR活性化剤(アゴニスト)について、WO97/28149号(特許文献1)には、血漿中のHDL(高密度リポ蛋白質)量を増加させ、アテローム性冠状動脈硬化症の治療・予防に効果があること、また、HMG−CoA還元酵素阻害剤と併用することでアテローム性冠状動脈硬化症の治療又は予防に効果があること、WO99/28115号(特許文献2)には、糖尿病治療薬及び抗肥満薬として有用であること、WO99/4815号(特許文献3)には、血清コレステロール低下作用及びLDL(低密度リポ蛋白)−コレステロール低下作用があること、WO01/603号(特許文献4)には、HDL−コレステロール上昇作用、フィブリノーゲン低下作用、トリグリセリド低下作用及びインスリンレベル低下作用があること、また、異脂肪血症、X症候群(代謝症候群を含む)、心不全、高コレステロール血症、心血管疾患、II型真性糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、高脂血症、肥満症等の予防又は治療に有効であること、及びWO03/8967号(特許文献5)には、熱産生亢進作用、ミトコンドリアの脱共役呼吸亢進作用及び脂肪酸β酸化亢進作用等を示し、抗糖尿病剤、抗肥満剤又は内臓蓄積脂肪低減化剤、及び内臓脂肪蓄積抑制剤として有用であること等が開示されている。さらに、特許文献4及びProc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.100, p15924-15929, 2003(非特許文献1)には、選択的なPPARδアゴニストとして知られているGW501516(化学名:2−{2−メチル−4−[({4−メチル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−イル}メチル)チオ]フェノキシ}酢酸)について、高脂肪食誘起の肥満動物において肥満及びインスリン抵抗性の改善作用が認められること、遺伝的な肥満動物において血漿中のグルコース及び血中インスリンレベルの低下作用により糖尿病の改善が認められること、さらに、WO06/1092号(特許文献6)には、GW501516が高血糖に反応したグルコース依存性のインスリン分泌促進剤として有用であることが開示されている。なお、GW501516の構造式は下記式で表される。
【0008】
【化1】

【0009】
上記の点などから、PPARδ活性化剤は、脂肪酸又は糖の代謝異常及び/又は脂肪酸又は糖の過剰摂取による代謝とのアンバランスなどに起因又は影響される各種疾患、例えば、肥満、インスリン抵抗性、高脂血症、動脈硬化性疾患(アテローム性動脈硬化症性疾患など)、メタボリックシンドロームなどの予防及び/又は治療薬などとして期待されている。
【0010】
なお、WO96/30014号(特許文献7)には、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害作用を有する化合物として、また、WO04/89897号(特許文献8)には、5−HT2C活性化作用を有する化合物として、さらに、WO05/113501号(特許文献9)には、神経因性疼痛制御剤として有用な化合物として、それぞれ、イソインドール−1−オン誘導体が開示されている。しかし、これらの先行文献には、イソインドール−1−オン誘導体のPPARに対する結合性、結合可能なPPARのサブタイプなどについては何ら開示されていない。
【0011】
WO04/63155号(特許文献10)には、PPARモジュレータとしての縮合ヘテロ環誘導体が開示されているが、ラクタム骨格を有する化合物については開示されていない。また、PPARδ活性化の測定方法が記載されているが、前記縮合ヘテロ環誘導体のPPARδに対する生理活性については何ら具体的に開示されていない。
【0012】
また、WO05/54176号(特許文献11)には、PPARアゴニストとしてジフェニルエーテル化合物が開示されており、実施例には、2−{4−[3−(5−クロロ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルメチル)−5−フルオロ−フェノキシ]−2−メチル−フェノキシ}−2−メチル−プロピオン酸及び2−{4−[3−フルオロ−5−(1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルメチル)−フェノキシ]−2−メチル−フェノキシ}−2−メチル−プロピオン酸の合成例が記載されている。しかし、特許文献11にも、上記化合物のPPARに対する結合特性、結合可能なPPARのサブタイプなどについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO97/28149号
【特許文献2】国際公開WO97/28115号
【特許文献3】国際公開WO99/4815号
【特許文献4】国際公開WO01/603号
【特許文献5】国際公開WO03/8967号
【特許文献6】国際公開WO06/1092号
【特許文献7】国際公開WO96/30014号
【特許文献8】国際公開WO04/89897号
【特許文献9】国際公開WO05/113501号
【特許文献10】国際公開WO04/63155号
【特許文献11】国際公開WO05/54176号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Tanakaら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.100, p15924-15929, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、PPAR活性化剤(PPARα活性化剤、PPARδ活性化剤など)などとしても有用な新規ラクタム化合物(イソインドリン−1−オン誘導体)又はその塩及びその製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、PPAR(PPARα、PPARδなど)を有効に活性化することができるPPAR活性化剤(アゴニスト)及び医薬組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、体内での代謝が調整され、PPAR(PPARα、PPARδなど)と選択的に結合可能なラクタム化合物又はその塩及びその製造方法、並びに前記ラクタム化合物又はその塩を含む医薬組成物及びPPAR活性化剤を提供することにある。
【0018】
本発明の別の目的は、脂肪酸、脂質又は糖の代謝異常及び/又は代謝に比較した過剰摂取に起因又は影響される各種疾患を効果的に予防又は治療可能な予防及び/又は治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ベンゾピロリドン骨格を有する化合物(イソインドリン−1−オン誘導体)が、PPAR(PPARα、PPARβ及び/又はPPARδ)に選択的に結合して、PPAR活性を改善することを見いだし、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明のラクタム化合物(イソインドリン−1−オン誘導体)は、下記式(1)で表され、本発明のラクタム化合物にはその塩も含まれる。
【0021】
【化2】

【0022】
[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
係数aは0〜5の整数を示し、
は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
係数bは、0〜4の整数を示し、
及びXは、それぞれ、アルキレン基又は酸素原子を示し、Xがアルキレン基であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはアルキレン基であり、
は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
は、直接結合又はアルキレン基を示し、
は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を示す]。
【0023】
前記式(1)で表される化合物において、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)、直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基(例えば、ハロC1−4アルキル基)、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基)、又は直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルコキシ基(例えば、ハロC1−4アルコキシ基)であってもよく、係数aは1〜3(例えば、1〜2、特に1)の整数であってもよい。Rは、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基)であってもよく、係数bは、0又は1の整数であってもよい。
【0024】
及びXは、それぞれ、C1−4アルキレン基(例えば、C1−3アルキレン基)又は酸素原子であってもよく、XがC1−4アルキレン基(例えば、C1−3アルキレン基)であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはC1−4アルキレン基(例えば、C1−3アルキレン基)であってもよい。
【0025】
は、水素原子又はC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基)であってもよく、Rは、C1−4アルキレン基(例えば、C1−3アルキレン基)であってもよく、Rは、水素原子;C1−6アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)であってもよい。
【0026】
代表的な式(1)で表されるラクタム化合物は、下記式(1a)で表すことができる。
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基)、直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−4アルキル基(例えば、フルオロC1−3アルキル基)、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基(例えば、C1−3アルコキシ基)、又は直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−4アルコキシ基(例えば、フルオロC1−3アルコキシ基)を示し、
及びXは、それぞれ、C1−3アルキレン基(例えば、C1−2アルキレン基)又は酸素原子を示し、XがC1−3アルキレン基(例えば、C1−2アルキレン基)であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはC1−3アルキレン基(例えば、C1−2アルキレン基)であり、
は、水素原子又はC1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基)であり、
は、C1−4アルキレン基(例えば、C1−3アルキレン基)であり、
は、水素原子、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(例えば、C1−3アルキル基)を示す]。
【0029】
前記式(1)のラクタム化合物(イソインドリン−1−オン誘導体)又はその塩は、代表的には、下記式(3)
【0030】
【化4】

【0031】
[式中、Lは脱離基又は脱離原子を示し、X、R及び係数aは前記に同じ]
で表される化合物(ラクタム化合物)又はその塩と、下記式(4)
【0032】
【化5】

【0033】
[式中、Lは脱離原子又は脱離基を示し、R、係数b、X、R、R、及びRは前記に同じ]
で表される化合物又はその塩とを反応させることにより製造できる。
【0034】
本発明には、前記式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法、例えば、下記式(3)
【0035】
【化6】

【0036】
[式中、Lは脱離基又は脱離原子を示し、X、R及び係数aは前記に同じ]
で表される化合物(ラクタム化合物)又はその塩と、下記式(4b)
【0037】
【化7】

【0038】
[式中、Lは脱離原子又は脱離基を示し、Zは、下記式(5a)、(5b)又は(5c)
【0039】
【化8】

【0040】
(式中、Proは保護基を示し、R、R、及びRは前記に同じ)で表される部分構造を示し、R、係数b、及びXは前記に同じ]
で表される化合物又はその塩とを反応させ、式(1b)
【0041】
【化9】

【0042】
[式中、X、X、R、係数a、R、係数b、Zは前記に同じ]
で表されるラクタム化合物又はその塩を製造する方法であって、
式(1b)又は式(4b)で表される化合物において、部分構造Zが式(5a)で表される部分構造であるとき、式(3)で表される化合物又はその塩と、式(4b)で表される化合物又はその塩とを反応させ、
部分構造Zが式(5b)で表される部分構造であるとき、式(1b)又は式(4b)で表される化合物の保護基Proを脱保護反応に供して、下記式(6b)
【0043】
【化10】

【0044】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、R及びRは前記に同じ]
で表される化合物とを反応させ、
部分構造Zが式(5c)で表される部分構造であるとき、式(1b)又は式(4b)で表される化合物と、下記式(6c)
【0045】
【化11】

【0046】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは前記に同じ]
で表される化合物とを反応させ、
前記式(1b)で表され、かつ前記式(5a)で表される部分構造Zを有する化合物を製造する(又は式(5a)で表される部分構造Zを形成する)方法も包含する。
【0047】
本発明には、前記式(1)で表されるラクタム化合物又はこれらの薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有するPPAR活性化剤も含まれる。PPAR活性化剤は、PPARα、PPARγ及びPPARδから選択された少なくとも一種を活性化するための活性化剤であってもよい。
【0048】
また、本発明の医薬組成物は、前記式(1)で表されるラクタム化合物(イソインドリン−1−オン誘導体)又はこれらの薬理学的に許容可能な塩を含有し、担体を含有していてもよい。本発明の予防又は治療剤は、(i)脂肪酸、脂質(油脂、りん脂質を含む)又は糖の代謝異常に起因する疾患、及び/又は(ii)脂肪酸、脂質又は糖の代謝に比較して、脂肪酸、脂質又は糖の過剰摂取に起因する疾患の予防又は治療剤であって、前記式(1)で表されるラクタム化合物又は前記式(1)で表されるラクタム骨格を有する化合物若しくはこれらの薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する。前記疾患としては、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、拡張型心筋症、高血圧、高脂血症、低HDL血症、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病及び肥満からなる群より選択される疾患が挙げられる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の新規ラクタム化合物又はその塩は、高いPPAR活性を示す。また、PPAR活性化剤又は医薬組成物を、特定のラクタム化合物又はその塩で構成するため、PPARに選択的に結合して、PPARを有効に活性化することができる。さらに、前記ラクタム化合物又はその塩は、体内での代謝が調整され、PPARと選択的に結合可能である。また、本発明の予防及び/又は治療剤では、特定のラクタム化合物又はその塩を用いるので、脂肪酸、脂質(油脂、りん脂質を含む)又は糖の代謝異常及び/又は代謝に比較した過剰摂取などに起因又は影響される各種疾患を効果的に予防又は治療することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(ラクタム化合物又はその塩)
本発明のラクタム化合物は、新規化合物であり、下記式(1)で表される。
【0051】
【化12】

【0052】
式(1)で表される化合物において、Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−16アルキル基などが例示できる。アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基)である場合が多い。
【0053】
で表されるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−16アルコキシ基などが例示できる。アルコキシ基は、通常、直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルコキシ基)である場合が多い。
【0054】
前記アルキル基及びアルコキシ基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子);メチル、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(Rで表されるアルコキシ基に対して);メトキシ基、エトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基(Rで表されるアルキル基又はアルコキシ基に対して)などが例示できる。これらの置換基のうち、ハロゲン原子が好ましい。すなわち、Rは、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子のうち、フッ素原子、塩素原子、特にフッ素原子が好ましい。
【0055】
このようなハロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、パーフルオロプロピル基などの直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基などが例示できる。ハロアルキル基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状ハロアルキル基(特に、フルオロC1−4アルキル基)、さらに好ましくは特にハロC1−3アルキル基(特に、フルオロC1−3アルキル基)である。
【0056】
ハロアルコキシ基としては、例えば、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、トリフルオロエトキシ、パーフルオロエトキシ、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基などが例示できる。ハロアルキル基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状ハロアルコキシ基(特に、フルオロC1−4アルコキシ基)、さらに好ましくは特にハロC1−3アルコキシ基(特に、フルオロC1−3アルコキシ基)である。
【0057】
係数aは、0〜5の整数、好ましくは1〜3の整数、さらに好ましくは1又は2(例えば、1)であってもよい。すなわち、好ましい化合物は、少なくとも1つの置換基Rを有している。
【0058】
置換基Rの置換位置は特に制限されず、係数aが1である場合、ベンゼン環の2−,3−,4−位のいずれであってもよく、係数aが2以上である場合、複数の置換基Rの置換位置は、2,6−位、2,4−位、3,5−位、3,4−位、3,4,5−位などであってもよい。係数aが1である場合、置換基Rの置換位置は4−位である場合が多い。
【0059】
で表されるハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。Rで表される置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、前記Rで表されるのと同様の置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアルコキシ基が例示できる。Rは、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基である場合が多い。
【0060】
係数bは、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1の整数である。係数bは、通常、0である場合が多い。すなわち、Rは置換していなくてもよい。
【0061】
及びXはそれぞれアルキレン基又は酸素原子を示す。X及びXで表されるアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、ジメチルメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3,3−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキレン基などが例示できる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基(例えば、C1−4アルキレン基)、特にC1−3アルキレン基(例えば、C1−2アルキレン基)である。
【0062】
なお、Xがアルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基)であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはアルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基)である。
【0063】
で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、前記Rと同様の置換基を有していてもよいアルキル基(例えば、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基など)が例示できる。アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基など)、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、特に直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基である場合が多い。
【0064】
は、通常、水素原子又はアルキル基(C1−4アルキル基など)である。
【0065】
は、直接結合又はアルキレン基であり、Rで表されるアルキレン基としては、X及びXで表されるアルキレン基と同様の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基(直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキレン基)が例示できる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキレン基)、特に直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキレン基(例えば、メチレン基などのC1−2アルキレン基)である。
【0066】
で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、前記Rと同様の置換基を有していてもよいアルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基)が例示できる。Rは、水素原子、アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基)である場合が多く、特に水素原子又は直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基など)である場合が多い。アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基であってもよい。
【0067】
好ましいRは、水素原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基である。
【0068】
好ましいラクタム化合物は、下記式(1a)で表すことができる。
【0069】
【化13】

【0070】
(式中、R、X、X、R、R及びRは前記に同じ)。
【0071】
前記ラクタム化合物は、酸又は塩基と塩を形成してもよい。ラクタム化合物と塩を形成可能な酸としては、有機酸[有機カルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのアルカンカルボン酸;(メタ)アクリル酸などのアルケンカルボン酸;酒石酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、コハク酸、サリチル酸、フェノールフタリン、タンニン酸などのヒドロキシカルボン酸;トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのハロアルカンカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの多価カルボン酸;有機スルホン酸(メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジフェニルジスルホン酸などのアレーンスルホン酸;アスパラギン酸などのアミノ酸など)、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸などのハロゲン化水素酸;硫酸、硝酸、リン酸など)などが例示でき、ラクタム化合物と酸との塩は、混酸塩(例えば、塩酸−硫酸塩など)であってもよい。ラクタム化合物と塩を形成可能な塩基としては、有機塩基(アミン類、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのモノ乃至トリアルキルアミン;エタノールアミンなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのアルキレンポリアミンなど)、無機塩基[水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物(アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物など);炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;アンモニアなど]などが挙げられる。ラクタム化合物は、これらの塩基のうち1種の塩基と塩を形成してもよく、2種以上の塩基と塩を形成してもよい。
【0072】
なお、ラクタム化合物又はその塩は、溶媒和物(水和物、エタノールなどの有機溶媒などによる有機溶媒和物など)などであってもよく、無水物であってもよい。ラクタム化合物又はその塩には、互変異性体、不斉炭素原子を有する光学活性体((R)体,(S)体、ジアステレオマーなど)、ラセミ体、又はこれらの混合物なども含まれる。また、前記ラクタム化合物又はその塩は、この化合物又は塩の官能基が修飾され、生体内で活性を発現するプロドラッグ体又は活性代謝物などであってもよい。
【0073】
(ラクタム化合物の製造方法)
反応工程(A):
式(1)で表される化合物又はその塩は、下記式(3)で表される化合物又はその塩と、下記式(4)で表される化合物又はその塩とを反応させる反応工程(A)により得ることができる。
【0074】
【化14】

【0075】
(式中、L及びLはそれぞれ脱離基又は脱離原子を示し、X、R、係数a、R、係数b、X、R、R、及びRは前記に同じ)
前記脱離基としては、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニルオキシ基が例示でき、脱離原子としては、水素原子、ハロゲン原子などが例示できる。置換基を有していてもよいアルキルスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基(CHSO−)、フルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基などのハロゲン原子などの置換基を有していてもよいC1−6アルキルスルホニルオキシ基などが挙げられ、特にC1−4アルキルスルホニルオキシ基又はハロC1−4アルキルスルホニルオキシ基などが好ましい。ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれ、ハロゲン原子のうち、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子(特に臭素原子及びヨウ素原子)が好ましい。
【0076】
とLとの組み合わせとしては、例えば、(i)ハロゲン原子とヒドロキシル基との組み合わせ[詳細には、(i-1)脱離原子Lがハロゲン原子であり、脱離原子Lがヒドロキシル基の水素原子である組み合わせ、(i-2)脱離原子Lがヒドロキシル基の水素原子であり、脱離原子Lがハロゲン原子である組み合わせ]、(ii)ヒドロキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ[詳細には、(ii-1)脱離基Lがヒドロキシル基であり、脱離原子Lがヒドロキシル基の水素原子である組み合わせ、(ii-2)脱離原子Lがヒドロキシル基の水素原子であり、脱離基Lがヒドロキシル基である組み合わせ]などが例示できる。
【0077】
式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応は、前記脱離基及び脱離原子の組み合わせに応じて選択できる。
【0078】
反応工程(A-1):LとLとの組み合わせがハロゲン原子とヒドロキシル基との組み合わせ(前記態様(i))である場合、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物とを、塩基の存在下で、反応させることにより式(1)の化合物を得ることができる。
【0079】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩などが例示できる。これらの塩基は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。塩基としては、炭酸セシウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩を用いる場合が多い。塩基の使用量は、ハロゲン原子(L又はL)を有する化合物1モルに対して、0.9〜10モル程度の範囲から選択でき、通常、1〜5モル(例えば、1.05〜5モル)、さらに好ましくは1〜3モル(例えば、1.1〜2モル)程度であってもよい。
【0080】
反応は溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、反応に不活性な種々の有機溶媒、例えば、炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエンなどの芳香族炭化水素など)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテル)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAA)など)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類、N−メチルピロリドン(NMP)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は混合して使用できる。溶媒は非プロトン性溶媒(例えば、ケトン類、ニトリル類、アミド類などの非プロトン性極性溶媒)である場合が多い。
【0081】
反応は、不活性雰囲気又は空気中で行うことができ、反応系の還流温度以下、例えば、加熱下(例えば、30〜100℃程度)又は室温(例えば、15〜25℃)で行うことができる。反応は、常圧、減圧又は加圧下のいずれで行ってもよい。
【0082】
反応工程(A-2):LとLとの組み合わせが、ヒドロキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(前記態様(ii))である場合、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物とを、光延反応条件下で反応させることにより、式(1)で表される目的化合物を得ることができる。光延反応については、文献:SYNTHESIS,1981,1(1981年)などを参照できる。
【0083】
光延反応(Mitsunobu reaction)は、ヒドロキシル基を活性化するための活性化成分、例えば、アゾジカルボン酸エステル類及びトリフェニルホスフィン類の存在下、又は(シアノメチレン)ホスホラン試薬の存在下で行うことができる。アゾジカルボン酸エステル類としては、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)などのアゾジカルボン酸アルキルエステルなどが例示でき、トリフェニルホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン(PPh)などが例示できる。また、(シアノメチレン)ホスホラン試薬としては、例えば、(シアノメチレン)トリメチルホスホラン、(シアノメチレン)トリエチルホスホラン、(シアノメチレン)トリブチルホスホランなどが例示できる。これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの活性化成分の使用量は、例えば、式(3)で表される化合物(又は式(4)で表される化合物)1モルに対して、0.7〜5モル程度の範囲から選択でき、通常、1〜2.5モル(例えば、1〜1.5モル)程度であってもよい。
【0084】
反応は溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、反応に不活性な種々の有機溶媒、例えば、炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素など)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル、1,4−ジオキサン、THFなどの環状エーテル)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アミド類(DMF、DMAA、ヘキサメチルリン酸トリアミドなど)、スルホキシド類(DMSOなど)、N−メチルピロリドン(NMP)、ピリジンなどの第三級アミン類、リン酸トリメチルなどのリン酸エステル類などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は混合して使用できる。溶媒は非プロトン性溶媒(例えば、ケトン類、ニトリル類、アミド類などの非プロトン性極性溶媒)である場合が多い。
【0085】
反応は、不活性雰囲気又は空気中で行うことができ、反応系の還流温度以下、例えば、加熱下(例えば、30〜100℃程度)又は室温(例えば、15〜25℃)で行うことができる。反応は、常圧、減圧又は加圧下のいずれで行ってもよい。
【0086】
なお、前記式(1)で表される化合物又はその塩は、例えば、下記反応工程式により得ることもできる。すなわち、下記式(3)で表される化合物(ラクタム化合物)又はその塩と、下記式(4b)で表される化合物又はその塩とを反応させ、式(1b)で表されるラクタム化合物又はその塩を製造する方法において、
【0087】
【化15】

【0088】
[式中、Zは、下記式(5a)、(5b)又は(5c)
【0089】
【化16】

【0090】
(式中、Proは保護基を示し、R、R、及びRは前記に同じ)で表される部分構造を示し、L、L、X、X、R、係数a、R、及び係数bは前記に同じ]
(A)式(1b)又は式(4b)の部分構造Zが式(5a)で表される部分構造であるとき、式(3)で表される化合物又はその塩と、下記式(4b)で表される化合物又はその塩とを反応させ[反応工程(A)]、
(B)部分構造Zが式(5b)で表される部分構造であるとき、式(1b)又は式(4b)で表される化合物の保護基Proを脱保護して、下記式(6b)
【0091】
【化17】

【0092】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、R及びRは前記に同じ]
で表される化合物とを反応させ[反応工程(B)]、
(C)部分構造Zが式(5c)で表される部分構造であるとき、式(1b)又は式(4b)で表される化合物と、下記式(6c)
【0093】
【化18】

【0094】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは前記に同じ]
で表される化合物とを反応させ[反応工程(C)]、
前記式(1b)で表され、かつ前記式(5a)で表される部分構造Zを有する化合物を製造する方法も包含する。
【0095】
なお、前記式(3)で表される化合物と(4b)で表される化合物との反応は、前記反応工程(A)と同様にして行うことができる。
【0096】
前記反応工程(B)及び(C)は下記反応式で表すことができ、これらの反応により、式(5a)で表される部分構造Zが形成される。
【0097】
【化19】

【0098】
[式中、R、R及びR、X、X、及びProは前記に同じ]
及びXで表されるハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれ、ハロゲン原子のうち、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子(特に臭素原子及びヨウ素原子)が好ましい。
【0099】
反応工程(A):
式(1b)又は式(4b)の化合物において、部分構造Zが式(5a)で表される部分構造であるとき、式(3)で表される化合物又はその塩と、下記式(4b)で表される化合物又はその塩との反応は、前記脱離基又は脱離原子L及びLの組み合わせに応じて、前記反応工程(A-1)又は(A-2)と同様にして反応させることができる。なお、部分構造Zが式(5a)で表される化合物の調製には、下記の合成例2、WO 2001/00603、WO 1997/23216などを参照できる。
【0100】
反応工程(B):
部分構造Zが式(5b)で表される部分構造(保護基Proを有する部分構造)であるとき、式(1b)又は式(4b)で表される化合物の保護基Proを脱保護して、前記式(6b)で表される化合物と反応させ、式(1b)又は式(4b)で表される化合物において部分構造Zを形成する。式(5b)で表される部分構造において、Rは通常アルキル基である。
【0101】
なお、部分構造(5b)を有し、かつRがアルキル基、Lがハロゲン原子(臭素原子など)である化合物(4b)は、公知の方法、例えば、J. Med. Chem., 2009, 52 (1), pp 33-47、WO 2006/104280などに記載の方法に従って又はこれらの方法を参考にして容易に調製できる。また、部分構造(5b)を有し、かつRがアルキル基、Lがヒドロキシル基である化合物(4b)も、公知の方法、例えば、J. Med. Chem., 2009, 52 (1), pp 33-47、WO 2002/006189などに記載の方法に従って又はこれらの方法を参考にして容易に調製できる。
【0102】
保護基としては、アミノ基(又はイミノ基)の保護基、例えば、t−ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基(Z(OMe))、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル基(Npys)などが例示できる。保護基の脱保護は、慣用の方法、例えば、酸処理(無水フッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)などが利用でき、具体的には、塩酸−1,4−ジオキサン、塩酸−酢酸エチル、塩化アセチル−メタノール、トリフルオロ酢酸−チオフェノール、トリフルオロ酢酸−ジクロロメタン、硫酸−ジオキサン、ヨウ化トリメチルシリル−クロロホルム、ヨウ化トリメチルシリル−アセトニトリルなどの溶媒系を利用して行うことができる。なお、保護基と保護基の脱離については、「protective group in organic synthesis」(JOHN WILEY & SONS, INC)などを参照できる。
【0103】
保護基の脱保護は、通常、溶媒中で行われ、溶媒としては、慣用の溶媒、例えば、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテル)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAA)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド(DMSO)など)などが例示できる。保護基の脱保護反応は、加熱(例えば、30〜100℃)又は室温(例えば、15〜25℃)で行うことができる。
【0104】
脱保護した式(1b)又は式(4b)で表される化合物(保護基Proが水素原子となった化合物)と、前記式(6b)で表される化合物(ブロモ酢酸エステルなど)との反応は、前記反応工程(A)と同様にして、例えば、塩基(炭酸セシウム、炭酸カリウムなど)の存在下、溶媒(アセトニトリル、DMF、アセトンなど)中で行うことができる。
【0105】
化合物(6b)としては、ハロアルカンカルボン酸又はそのエステル、例えば、ブロモ酢酸又はそのエステル、ブロモプロピオン酸又はそのエステル、ブロモ酪酸又はそのエステル、ブロモイソ酪酸又はそのエステルなどのハロC1−10アルカンカルボン酸又はそのエステル(例えば、ハロC1−6アルカンカルボン酸又はそのエステル)が例示できる。
【0106】
反応工程(C):
部分構造Zが式(5c)で表される部分構造であるとき、式(1b)又は式(4b)で表される化合物と、式(6c)で表される化合物(アルキルハライド)と反応させ、式(1b)又は式(4b)で表される化合物において部分構造Zを形成する。なお、式(5c)で表される部分構造において、イミノ基(=N−H)の水素原子は、前記反応工程(B)での保護基の脱保護と同様にして、保護基で保護されたイミノ基を脱保護することにより生成させてもよい。
【0107】
化合物(6c)としては、アルキルハライド、例えば、ヨウ化メチル、臭化メチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化イソブチルなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキルハライド(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキルハライド)などが例示できる。
【0108】
式(1b)又は式(4b)で表される化合物と、式(6c)で表される化合物(アルキルハライド)との反応は、前記反応工程(A)と同様にして、例えば、塩基(炭酸セシウム、炭酸カリウムなど)の存在下、溶媒(アセトニトリル、DMF、アセトンなど)中で行うことができる。
【0109】
なお、前記化合物において、Rが水素原子である化合物は、Rがアルキル基である化合物を慣用の加水分解反応に供し、カルボキシル基に遊離化させることにより調製できる。加水分解は、慣用の方法、例えば、塩基を用いて行うことができ、通常、溶媒中で行われる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが汎用される。溶媒としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、水溶性エーテル類(1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、水溶性ケトン類(アセトンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、アミド類(DMF、DMAAなど)、スルホキシド類(DMSOなど)などが例示できる。通常、水と水溶性溶媒との混合溶媒を用いてもよい。
【0110】
得られたラクタム化合物とその塩は、相互に変換可能である。例えば、ラクタム化合物を、有機酸、無機酸による酸処理、有機塩基、無機塩基による塩基処理することによりラクタム化合物の塩を生成でき、ラクタム化合物の塩を、塩基(例えば、水酸化ナトリウムなどの強塩基)又は酸(塩酸、硫酸、フッ化水素酸などの強酸)で処理することにより塩を遊離化してラクタム化合物を生成させることができる。
【0111】
得られた式(1)で表されるラクタム化合物又はその塩は、必要により、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法、例えば、ろ過、転溶、塩析、蒸留、溶媒除去、析出、晶析、再結晶、デカンテーション、抽出、乾燥、洗浄、クロマトグラフィー、及びこれらの組み合わせなどにより、分離又は精製してもよい。
【0112】
なお、中間体としての化合物(3)、化合物(4)又は(4a)は公知の慣用の方法又は類似の方法で調製できるとともに、市販品として購入できる。また、これらに中間体の調製には、下記の合計例も参照できる。
【0113】
例えば、−X−Lがアルコキシカルボニル基である化合物(3)は、2−メチルイソフタル酸ジアルキルエステルを、ハロゲン源(ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−クロロコハク酸イミドなど)と、反応開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイルなどのラジカル発生源)とでハロゲン化して、2−ハロメチルイソフタル酸ジアルキルエステルを調製し、この2−ハロメチルイソフタル酸ジアルキルエステルとアニリン誘導体とを反応させて環化させることにより調製できる。前記ハロゲン化反応の溶媒としては,四塩化炭素,ベンゼンなどが使用でき、反応温度は,加熱条件、好ましくは還流条件下で行われることが多い。環化反応は、溶媒(DMFなど)中で行うことができ、適当な温度、例えば、室温〜200℃[好ましくは100〜150℃程度(例えば、120℃前後)]で加熱撹拌することにより行うことができる。
【0114】
なお、2−メチルイソフタル酸ジアルキルエステルは、2,6−ジシアノトルエンを酸又はアルカリにより加水分解して、ジカルボン酸を生成させ[例えば、新実験化学講座(丸善株式会社),実験化学講座4版,実験化学講座5版などのニトリルからの加水分解によるカルボン酸の合成を参照]、生成したジカルボン酸をエステル化することにより得ることができる[例えば、新実験化学講座(丸善株式会社),実験化学講座4版,実験化学講座5版等のカルボン酸からのエステル類の合成の項、「protective group in organic synthesis」(JOHN WILEY & SONS, INC)などを参照]。
【0115】
また、化合物(3)において、−X−Lがカルボキシル基である化合物は、−X−Lがアルコキシカルボニル基である化合物を、アルカリの存在下、加水分解することにより調製できる。加水分解は、溶媒中、室温〜加熱下で行うことができ、溶媒としては、水、水と水溶性有機溶媒[アルコール(メタノール,エタノール)、ジオキサンなど]との混合溶媒が使用できる。
【0116】
−X−Lがカルボキシル基である化合物は、慣用の方法により、還元剤を用いて還元することにより、−X−Lがヒドロキシメチル基である化合物に誘導できる。還元剤の詳細は、例えば、「MARCH’S ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY」(JOHN WILEY&SONS)を参照できる。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム−塩化アルミニウム、ボラン−THF錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン、水素化リチウムアルミニウム、水素化アルミニウムナトリウム、トリメトキシ水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムなどが例示できる。好ましい還元剤には、ボラン−THF錯体などが含まれる。反応は、例えば、溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、n−ヘキサン又はこれらの混合溶媒など)中で行うことができ、反応温度は、例えば、−100℃〜加熱(好ましくは0℃〜室温)程度で行うことができる。
【0117】
−X−Lがヒドロキシメチル基である化合物は、慣用の方法でハロゲン化することにより、−X−Lがハロメチル基である化合物を誘導できる。ハロゲン化の条件には、一般的な方法が採用でき、例えば、新実験化学講座(丸善株式会社),実験化学講座4版,実験化学講座5版などのハロゲン化物の項を参照できる。ハロゲン化剤としては、例えば、「トリフェニルホスフィンとN−ブロモコハク酸イミド又はN−クロロコハク酸イミド」、「トリフェニルホスフィンと四塩化炭素又は四臭化炭素」、「塩化チオニルとDMF又はピリジン」、「光延条件下において塩化リチウム、臭化リチウム、塩化亜鉛又は臭化亜鉛」などが挙げられる。反応は溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、THFなど)中で行うことができ、反応温度は、例えば、0℃〜室温で行うことができる。
【0118】
(PPAR活性化剤及び医薬組成物)
前記式(1)で表されるラクタム骨格を有する化合物又はその塩は、PPAR(PPARα、PPARγ及び/又はPPARδ)に対して高い結合特性を有しており、PPAR活性化剤として有用である。
【0119】
本発明のPPAR活性化剤は、少なくとも前記式(1)で表されるラクタム化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を含有すればよく、前記ラクタム化合物又はその薬理学的に許容可能な塩単独で構成してもよい。PPAR活性化剤は、通常、前記ラクタム化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する。また、本発明のPPAR活性化剤は、前記ラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩と、所望により担体(薬理学的又は生理学的に許容可能な担体など)などとを組み合わせた医薬組成物(又は製剤)で構成してもよい。
【0120】
また、本発明の医薬組成物は、前記式(I)で表されるラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩と、必要により担体とで構成できる。
【0121】
式(1)及び(1a)で表される化合物又はその薬理学的に許容可能な塩は、PPARα、PPARγ及びPPARδから選択された少なくとも一種を活性化可能であり、好ましくはPPARα及び/又はPPARδ(特に、PPARδ)に対して高い活性を有している。
【0122】
前記PPAR活性化剤を構成する医薬組成物及び本発明の医薬組成物において、担体は、医薬組成物(又は製剤)の形態(すなわち、剤形)、投与形態、用途などに応じて、適宜選択される。剤形は特に制限されず、固形製剤(粉剤、散剤、粒剤(顆粒剤、細粒剤など)、丸剤、ピル、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、座剤など)、半固形製剤(クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、グミ剤など)、液剤(溶液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、ローション剤、注射剤など)などであってもよい。また、前記粉剤及び/又は液剤などのスプレー剤、エアゾール剤なども含まれる。なお、カプセル剤は、液体充填カプセルであってもよく、顆粒剤などの固形剤を充填したカプセルであってもよい。また、製剤は凍結乾燥製剤であってもよい。さらに、製剤は、薬剤の放出速度が制御された製剤(徐放性製剤、速放性製剤)であってもよい。なお、吸入剤などで利用されるエアゾール剤において、エアゾールの発生方法は、特に制限されず、例えば、同一密封容器に医薬有効成分と代替フロン等の噴射剤とを充填し、スプレーする方法であってもよく、また、医薬有効成分と別の容器に充填した二酸化炭素や窒素等の圧縮ガスを用いたネブライザーやアトマイザーなどの形態による方法であってもよい。さらに、製剤は経口投与製剤であってもよく、非経口投与製剤(点鼻剤、吸入剤、経皮投与製剤など)であってもよい。さらに、製剤は局所投与製剤(注射剤(水性注射剤、非水性注射剤など)などの溶液剤、懸濁剤、軟膏剤、貼付剤、パップ剤など)であってもよい。本発明の製剤は固形製剤(特に経口投与製剤)である場合が多い。
【0123】
前記担体は、例えば、局方の他、(1)医薬品添加物ハンドブック、丸善(株)、(1989)、(2)「医薬品添加物辞典2000」(薬事日報社、2002年3月発行)、(3)「医薬品添加物辞典2005」(薬事日報社、2005年5月発行)、(4)薬剤学、改訂第5版、(株)南江堂(1997)、及び(5)医薬品添加物規格2003(薬事日報社、2003年8月)に収載されている成分(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤など)の中から、投与経路及び製剤用途に応じて適宜選択できる。例えば、固形製剤の担体としては、賦形剤、結合剤及び崩壊剤から選択された少なくとも一種の担体を使用する場合が多く、脂質などの添加剤を用いてもよい。
【0124】
前記賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類又は糖アルコール類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウムなどの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。結合剤としては、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン;寒天、アラビアゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールなどの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩(カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメースナトリウムなど)、架橋ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)、クロスコポビドンなど)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0125】
なお、前記コーティング剤としては、例えば、糖類、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、オイドラギット(メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などが用いられる。コーティング剤は、セルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体などの腸溶性成分であってもよく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどの塩基性成分を含むポリマー(オイドラギットなど)で構成された胃溶性成分であってもよい。また、製剤は、これらの腸溶性成分や胃溶性成分を剤皮に含むカプセル剤であってもよい。
【0126】
液剤の担体のうち油性担体としては、動植物系油剤(ホホバ油、オリーブ油、やし油、綿実油などの植物系油剤;スクアランなどの動物系油剤など)、鉱物系油剤(流動パラフィン、シリコーンオイルなど)などが例示できる。水性担体としては、水(精製又は無菌水、注射用蒸留水など)、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、水溶性有機溶媒[エタノール、イソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール;(ポリ)アルキレングリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなど);グリセリンなど]、ジメチルイソソルビド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。また、半固形剤の担体は、前記固形製剤の担体及び/又は液剤の担体から選択してもよい。さらに、半固形剤の担体は、脂質を含んでいてもよい。
【0127】
脂質としては、ワックス類(蜜ろう、カルナバろう、ラノリン、パラフィン、ワセリンなど)、長鎖脂肪酸エステル(飽和又は不飽和脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸と多価アルコール[ポリC2−4アルキレングリコール、グリセリン又はポリグリセリンなど)とのエステル(グリセライドなど)など]、硬化油、高級アルコール(ステアリルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールなど)、高級脂肪酸(リノール酸、リノレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸など)、金属石鹸類(例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩など)などが例示できる。
【0128】
製剤においては、投与経路や剤形などに応じて、公知の添加剤を適宜使用することができる。このような添加剤としては、例えば、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)、崩壊補助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、乳化剤(例えば、非イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤など)、分散剤、懸濁化剤、溶解剤、溶解補助剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、pH調整剤又は緩衝剤(クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝剤など)、安定剤、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤(安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類など)、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤(例えば、甘味剤など)、着色剤(ベンガラなどの染顔料など)、矯臭剤又は香料(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0129】
例えば、注射剤では、通常、前記添加物として、溶解剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤、保存剤などを使用する場合が多い。なお、投与時に溶解あるいは懸濁して使用するための粉末注射剤では、粉末注射剤で使用される慣用の添加剤が使用できる。
【0130】
また、吸入剤、経皮吸収剤などの局所投与剤では、上記添加物として、通常、溶解補助剤、安定剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、保存剤などが使用される場合が多い。
【0131】
前記ラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩とともに、必要により、作用の増強、投与量の低下及び副作用の低減等を目的として、その効果に悪影響を及ぼさない1種以上の他の薬剤を併用してもよい。併用可能な薬剤としては、低分子(例えば、低分子の薬剤)、ポリペプチド、抗体又はワクチン等であってもよく、例えば、「糖尿病治療薬」、「糖尿病合併症治療薬」、「抗肥満薬」、「高血圧治療薬」、「高脂血症治療薬」、「利尿剤」、「抗血栓剤」、「アルツハイマー病治療薬」、「抗うつ剤」、「抗狭心症薬」、「抗不整脈薬」、「血管拡張薬」、「抗炎症剤」、「抗腫瘍剤」などが挙げられる。
【0132】
本発明のPPAR活性化剤及び医薬組成物は、それぞれ、前記式(I)で表されるラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩の他、担体成分、必要により添加剤などを用いて、慣用の製剤化方法、例えば、第十五改正日本薬局方記載の製造法又はこの製造方法に準じた方法により調製できる。
【0133】
本発明のPPAR活性化剤及び医薬組成物は、安全性が高く、ヒト及び非ヒト動物、通常、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サルなど)、特にヒトに対し、安全に用いられる。
【0134】
本発明のPPAR活性化剤及び医薬組成物の投与量は、投与対象、投与対象の年齢、体重、性別及び状態(一般的状態、病状、合併症の有無など)、投与時間、剤形、投与方法等により、適宜選択することができる。また、投与方法も同様にこれらの要件を考慮して選択できる。
【0135】
(予防及び/又は治療剤)
前記式(1)又は(1a)で表される化合物又はその薬理学的に許容可能な塩は、PPARに対して特異的な結合特性を示し、PPARを効果的に活性化できるため、脂肪酸、脂質(油脂、りん脂質を含む)及び/又は糖などの代謝を促進することができる。そのため、前記ラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩(若しくは前記PPAR活性化剤又は前記医薬組成物)は、(i)脂肪酸、脂質又は糖の代謝異常に起因する疾患、及び/又は(ii)脂肪酸、脂質又は糖の代謝に比較して、脂肪酸、脂質又は糖の過剰摂取に起因する疾患の予防又は治療剤として有効である。なお、このような予防又は治療剤は、通常、前記ラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する。
【0136】
また、前記疾患(i)及び(ii)としては、例えば、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、拡張型心筋症、高血圧、高脂血症、低HDL血症、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病及び肥満からなる群より選択される疾患などが例示できる。
【0137】
前記PPAR活性化剤、医薬組成物、予防及び/又は治療剤において、前記ラクタム骨格を有する化合物又はその薬理学的に許容可能な塩のヒトに対する投与量は、1日当たり、通常、0.01〜1000mg程度、好ましくは0.1〜750mg程度、さらに好ましくは0.1〜500mg(例えば、0.1〜300mg)程度の範囲から選択できる。前記PPAR活性化剤、医薬組成物、予防及び/又は治療剤は、1日当たり、1回又は複数回(2〜6回程度)投与できる。
【実施例】
【0138】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0139】
合成例1(N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ酢酸メチルの合成)
【0140】
【化20】

【0141】
N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン(1.67g,10.0mmol)の塩酸−メタノール(50mL)溶液を一夜加熱還流した。炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、溶媒を留去した後、ジクロロメタンで抽出し、N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ酢酸メチル(1.55g,85%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:3.77(3H,s),3.87(2H,s),6.50−6.56(2H,m),6.68−6.74(2H,m)。
【0142】
合成例2(N−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチルの合成)
(i)N−(4−メトキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチルの合成
【0143】
【化21】

【0144】
4−メトキシ−N−メチルアニリン(137mg,1.00mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液に水素化ナトリウム(44mg,1.10mmol)を加え、室温で20分間撹拌した。ブロモ酢酸エチル(184mg,1.10mmol)を加え、室温で一夜撹拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、油状のN−(4−メトキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(142mg,64%)を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.24(3H,t,J=7.3Hz),3.02(3H,s),3.75(3H,s),4.00(2H,s),4.16(2H,q,J=7.3Hz),6.65−6.71(2H,m),6.80−6.86(2H,m)。
【0145】
(ii)N−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチルの合成
【0146】
【化22】

【0147】
氷冷下、上記(i)で得られたN−(4−メトキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(130mg,0.58mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液に、三臭化ほう素ジクロロメタン溶液(0.58ml,0.58mmol)を加え、室温で1日間撹拌した。さらに三臭化ほう素ジクロロメタン溶液(0.58ml,0.58mmol)を加え、室温で1日間撹拌した。トリエチルアミンで中和し、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、油状のN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(53mg,44%)を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.23(3H,t,J=7.3Hz),3.00(3H,s),3.99(2H,s),4.16(2H,q,J=7.3Hz),4.40(1H,brs),6.59−6.65(2H,m),6.71−6.77(2H,m)。
【0148】
合成例3(N−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチルの合成)
【0149】
【化23】

【0150】
4−(メチルアミノ)フェノール硫酸塩(5.00g,14.5mmol)のアセトニトリル(100mL)溶液に炭酸水素ナトリウム(4.88g,58.1mmol)とブロモ酢酸エチル(4.85g,29.0mmol)を加え、室温で一夜撹拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、油状のN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(4.60g,76%)を得た。
【0151】
合成例4(4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
(i)2−メチルイソフタル酸の合成
【0152】
【化24】

【0153】
2,6−ジシアノトルエン(2.84g,20.0mmol)のエチレングリコール(20mL)懸濁液に14N水酸化ナトリウム水溶液(7mL,0.10mol)を加え、150℃で一夜撹拌した。濃塩酸を加え、生じた結晶をろ取し、乾燥して2−メチルイソフタル酸(3.61g,quant)の結晶を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:2.58(3H,s),7.35(1H,t,J=7.9Hz),7.80(2H,d,J=7.9Hz),13.14(2H,brs)。
【0154】
(ii)2−メチルイソフタル酸ジメチルの合成
【0155】
【化25】

【0156】
上記(i)で得られた2−メチルイソフタル酸(3.59g,19.9mmol)の塩酸−メタノール(40mL)懸濁液を一夜加熱還流した。炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、生じた結晶をろ取し、乾燥して2−メチルイソフタル酸ジメチル(3.61g,87%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:2.69(3H,s),3.91(6H,s),7.29(1H,t,J=7.9Hz),7.87(2H,d,J=7.9Hz)。
【0157】
(iii)4−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0158】
【化26】

【0159】
上記(ii)で得られた2−メチルイソフタル酸ジメチル(1.67g,8.00mmol)の四塩化炭素(25mL)溶液にブロモコハク酸イミド(1.42g,8.00mmol)と過酸化ベンゾイル(75% in Water,143mg)を加え、8時間加熱還流した。放冷後、不溶物をろ別し、溶媒を留去して、2−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルを得た。
【0160】
2−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルと1−アミノ−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.29g,8.00mmol)のジメチルホルムアミド(25mL)溶液を60℃で2時間、120℃で1時間半撹拌した.放冷後、得られた結晶をろ取し、乾燥して4−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(1.84g,69%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:4.02(3H,s),5.22(2H,s),7.65(1H,t,J=7.6Hz),7.70(2H,d,J=8.9Hz),8.10(2H,d,J=8.9Hz),8.14(1H,d,J=7.6Hz),8.28(1H,d,J=7.6Hz)。
【0161】
(iv)4−カルボキシ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0162】
【化27】

【0163】
上記(iii)で得られた4−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(671mg,2.00mmol)のメタノール(10mL)、水(2mL)懸濁液に2N水酸化ナトリウム水溶液(1.5mL,3.00mmol)を加え、70分間加熱還流した。1N塩酸を加え、生じた結晶をろ取し、乾燥して4−カルボキシ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(604mg,94%)を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:5.32(2H,s),7.72(1H,t,J=7.6Hz),7.83(2H,d,J=8.9Hz),8.07(1H,dd,J=1.0Hz,7.6Hz),8.17(2H,d,J=8.9Hz),8.23(1H,dd,J=1.0Hz,7.6Hz),13.60(1H,br)。
【0164】
(v)4−ヒドロキシメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0165】
【化28】

【0166】
上記で得られた(iv)4−カルボキシ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(574mg,1.79mmol)のテトラヒドロフラン(35mL)溶液に氷冷下でボラン・テトラヒドロフラン錯体(2.16mL,2.14mmol)を滴下し、0℃で45分間、室温で一夜撹拌した。さらに、ボラン・テトラヒドロフラン錯体(0.90mL,0.90mmol)を追加し、室温で4時間半撹拌した。メタノールを加え、溶媒を留去した。水を加え、ジクロロメタンで抽出し、4−ヒドロキシメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(520mg,95%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.98(1H,t,J=5.6Hz),4.90(2H,d,J=5.6Hz),4.97(2H,s),7.48(1H,t,J=7.3Hz),7.53(1H,dd,J=1.0Hz,7.3Hz),7.68(2H,d,J=8.9Hz),7.85(1H,dd,J=1.0Hz,7.3Hz),8.05(2H,d,J=8.9Hz)。
【0167】
(vi)4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0168】
【化29】

【0169】
上記(v)で得られた4−ヒドロキシメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(2.00g,6.51mmol)の塩化メチレン(30mL)溶液に、N−ブロモコハク酸イミド(1.74g,9.76mmol)とトリフェニルホスフィン(2.56g,9.76mmol)を氷冷下加え、室温にて2.5時間攪拌した。反応終了後、メタノール(2mL)を加え、室温にて20分攪拌した。反応液は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水にて洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下に溶媒留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(2.00g,83%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:4.60(2H,s),4.97(2H,s),7.53(1H,d,J=9.1Hz),7.61(1H,dd,J=1.2Hz,7.5Hz),7.70(2H,d,J=8.7Hz),7.91(1H,dd,J=1.2Hz,7.5Hz),8.07(2H,d,J=8.7Hz)。
【0170】
合成例5(4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
(i)4−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0171】
【化30】

【0172】
合成例4(ii)で得られた2−メチルイソフタル酸ジメチル(5.00g,8.00mmol)の四塩化炭素(75mL)溶液にブロモコハク酸イミド(4.27g,24.01mmol)と過酸化ベンゾイル(75% in Water,400mg)を加え、2時間加熱還流した。放冷後、不溶物をろ別し、溶媒を留去して、2−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルを得た。
【0173】
2−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルと1−アミノ−4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(4.25g,24.01mmol)のジメチルホルムアミド(75mL)溶液を60℃で1時間半、120℃で1時間半撹拌した。放冷後、反応液をメタノール次いで水にて希釈した。得られた結晶をろ取、水洗し、乾燥して4−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(7.17g,85%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:4.01(3H,s),5.19(2H,s),7.30(2H,d,J=9.1Hz),7.64(1H,t,J=7.5Hz),7.98(2H,d,J=9.1Hz),8.13(1H,dd,J=0.8Hz,7.5Hz),8.27(1H,dd,J=0.8Hz,7.5Hz)。
【0174】
(ii)4−カルボキシ−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0175】
【化31】

【0176】
上記(i)で得られた4−メトキシカルボニル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(7.11g,20.23mmol)のジオキサン(50mL)溶液に2N水酸化ナトリウム水溶液(15.2mL,30.4mmol)を加え、17時間室温にて攪拌した。反応液に1N塩酸(30.4mL)を加え、氷水にて希釈し、生じた結晶をろ取した。得られた結晶は水洗後、乾燥して4−カルボキシ−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(6.63g,97%)を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:5.28(2H,s),7.48(2H,d,J=9.2Hz),7.71(1H,t,J=7.6Hz),8.00−8.10(3H,m),8.22(1H,d,J=7.6Hz),13.57(1H,br)。
【0177】
(iii)4−ヒドロキシメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0178】
【化32】

【0179】
上記(ii)で得られた4−カルボキシ−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(4.00g,11.86mmol)のテトラヒドロフラン(250mL)溶液に氷冷下でボラン・テトラヒドロフラン錯体(38.8mL,41.13mmol)を滴下し、0℃で1時間、室温で17.5時間撹拌した。反応液に氷冷下メタノールを加え、溶媒を留去した。残渣に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液は、硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下に溶媒留去した。得られた残渣をジエチルエーテル−ヘキサンにて洗浄し、4−ヒドロキシメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(3.32g,87%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:2.05(1H,t,J=5.2Hz),4.88(2H,d,J=5.2Hz),4.92(2H,s),7.25−7.32(3H,m),7.42−7.53(2H,m),7.83(1H,dd,J=1.5Hz,7.1Hz),7.88−7.96(2H,m)。
【0180】
(iv)4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0181】
【化33】

【0182】
氷冷下、上記(iii)で得られた4−ヒドロキシメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(1.29g,4.00mmol)のジクロロメタン(24mL)溶液にトリフェニルホスフィン(1.57g,6.00mmol)、N−ブロモスクシンイミド(1.07g,6.00mmol)を加え、0℃で30分間、室温で50分間撹拌した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(1.48g,96%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:4.58(2H,s),4.93(2H,s),7.28−7.31(2H,m),7.51(1H,t,J=7.6Hz),7.58(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.88(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.91−7.97(2H,m)。
【0183】
合成例6(4−ブロモメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
(i)4−メトキシカルボニル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0184】
【化34】

【0185】
合成例4(ii)で得られた2−メチルイソフタル酸ジメチル(2.00g,9.61mmol)の四塩化炭素(30mL)溶液にブロモコハク酸イミド(1.71g,9.61mmol)と過酸化ベンゾイル(75% in Water,150mg)を加え、3時間半加熱還流した。放冷後、不溶物をろ別し、溶媒を留去して、2−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルを得た。
【0186】
2−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルと1−アミノ−4−メチルベンゼン(1.03g,9.61mmol)のジメチルホルムアミド(30mL)溶液を60℃で3時間、120℃で2時間撹拌した。放冷後、反応液をメタノール次いで水にて希釈した。得られた結晶をろ取、水洗し、乾燥して4−メトキシカルボニル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(2.14g,79%)の結晶を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:2.33(3H,s),3.95(3H,s),5.22(2H,s),7.27(2H,d,J=8.6Hz),7.72(1H,t,J=7.7Hz),7.81(2H,d,J=8.6Hz),8.05(1H,dd,J=1.0Hz,7.7Hz),8.22(1H,dd,J=1.0Hz,7.7Hz)。
【0187】
(ii)4−カルボキシ−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0188】
【化35】

【0189】
上記(i)で得られた4−メトキシカルボニル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(2.00g,7.11mmol)のジオキサン(20mL)溶液に2N水酸化ナトリウム水溶液(5.3mL,10.6mmol)を加え、17時間半室温にて攪拌した。反応液に1N塩酸(5.3mL)を加え、氷水にて希釈し、生じた結晶をろ取した。得られた結晶は水洗後、乾燥して4−カルボキシ−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(1.84g,97%)を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:2.32(3H,s),5.22(2H,s),7.27(2H,d,J=8.6Hz),7.72(1H,t,J=7.7Hz),7.81(2H,d,J=8.6Hz),8.05(1H,dd,J=1.0Hz,7.7Hz),8.22(1H,dd,J=1.0Hz,7.7Hz)。
【0190】
(iii)4−ヒドロキシメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0191】
【化36】

【0192】
上記(ii)で得られた4−カルボキシ−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(1.30g,4.86mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に氷冷下でボラン・テトラヒドロフラン錯体(6.9mL,7.30mmol)を滴下し、0℃で1時間、室温で25.5時間撹拌した。反応液に氷冷下メタノールを加え、溶媒を留去した。残渣に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液は、硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下に溶媒留去した。得られた残渣をジエチルエーテル−ヘキサンにて洗浄し、4−ヒドロキシメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(1.01g,82%)の結晶を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:2.31(3H,s),4.69(2H,d,J=5.5Hz),5.00(2H,s),5.39(1H,t,J=5.5Hz),7.25(2H,d,J=8.4Hz),7.52(1H,t,J=7.4Hz),7.64(2H,t,J=7.4Hz),7.80(2H,d,J=8.4Hz)。
【0193】
(iv)4−ブロモメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0194】
【化37】

【0195】
氷冷下、上記(iii)で得られた4−ヒドロキシメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(963mg,3.80mmol)のジクロロメタン(40mL)懸濁液にトリフェニルホスフィン(1.50g,5.70mmol)、N−ブロモスクシンイミド(1.01g,5.70mmol)を加え、0℃で30分間、室温で2時間撹拌した。水を加え、ジクロロメタンで抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−ブロモメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(650mg,54%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:2.37(3H,s),4.58(2H,s),4.91(2H,s),7.23−7.26(2H,m),7.50(1H,t,J=7.6Hz),7.56(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.73−7.78(2H,m),7.88(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz)。
【0196】
実施例1(4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0197】
【化38】

【0198】
合成例4で得られた4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(1.36g,3.66mmol)と合成例1で得られたN−(4−ヒドロキフェニル)アミノ酢酸メチル(730mg,4.03mmol)のアセトニトリル(40mL)懸濁液に炭酸セシウム(1.31g,4.03mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。水を加え、得られた結晶を1,4−ジオキサンで再結晶し、乾燥して4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(1.19g,69%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:3.78(3H,s),3.89(2H,s),4.10(1H,br),4.97(2H,s),5.17(2H,s),6.57−6.63(2H,m),6.85−6.91(2H,m),7.54(1H,t,J=7.6Hz),7.61(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.68(2H,d,J=8.6Hz),7.91(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),8.04(2H,d,J=8.6Hz)。
【0199】
実施例2(4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0200】
【化39】

【0201】
合成例5で得られた4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1オン(3.00g,7.77mmol)と合成例1で得られたN−(4−ヒドロキフェニル)アミノ酢酸メチル(1.41mg,7.77mmol)のアセトニトリル(60mL)懸濁液に炭酸セシウム(2.78g,8.55mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液は不溶物を濾過後、減圧下に溶媒留去し黄色固体状残渣を得た。本残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製後、メタノールにて洗浄し、乾燥して4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(0.50g,13%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:3.78(3H,s),3.89(2H,s),4.11(1H,br),4.94(2H,s),5.16(2H,s),6.56−6.63(2H,m),6.84−6.91(2H,m),7.27−7.32(2H,m),7.50−7.62(2H,m),7.88−7.95(3H,m)。
【0202】
実施例3(4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0203】
【化40】

【0204】
合成例2で得られたN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(169mg,0.81mmol)のアセトニトリル(15mL)溶液に炭酸セシウム(254mg,0.78mmol)と合成例4で得られた4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(222mg,0.60mmol)を加え、室温で一夜撹拌した。水を加え、得られた結晶をエタノールとジクロロメタンで再結晶し、乾燥して4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(177mg,59%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.24(3H,t,J=7.3Hz),3.03(3H,s),4.02(2H,s),4.17(2H,q,J=7.3Hz),4.97(2H,s),5.17(2H,s),6.65−6.71(2H,m),6.88−6.94(2H,m),7.53(1H,t,J=7.6Hz),7.61(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.67(2H,d,J=8.6Hz),7.90(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),8.04(2H,d,J=8.6Hz)。
【0205】
実施例4(4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0206】
【化41】

【0207】
実施例1で得られた4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(188mg,0.40mmol)のジメチルホルムアミド(7mL)溶液に炭酸カリウム(61mg,0.44mmol)とヨウ化メチル(62mg,0.44mmol)を加え、50℃で一夜撹拌した。さらに、炭酸カリウム(111mg,0.80mmol)とヨウ化メチル(113mg,0.80mmol)を追加し、50℃で8時間撹拌した。水を加え、得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(86mg,44%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:3.03(3H,s),3.71(3H,s),4.04(2H,s),4.97(2H,s),5.17(2H,s),6.65−6.71(2H,m),6.88−6.95(2H,m),7.54(1H,t,J=7.6Hz),7.61(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.68(2H,d,J=8.6Hz),7.91(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),8.04(2H,d,J=8.6Hz)。
【0208】
実施例5(4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0209】
【化42】

【0210】
実施例2で得られた4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(300mg,0.62mmol)のジメチルホルムアミド(6mL)溶液に炭酸カリウム(128mg,0.93mmol)とヨウ化メチル(262mg,1.85mmol)を加え、60℃で一夜撹拌した。反応液は減圧下に溶媒留去し、残渣に水を加えジクロロメタンにて抽出した。ジクロロメタン抽出液は硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下に溶媒留去し、淡黄色固体状残渣を得た。本残渣をメタノールにて洗浄し、乾燥して4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(129mg,42%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:3.03(3H,s),3.71(3H,s),4.04(2H,s),4.94(2H,s),5.17(2H,s),6.65−6.71(2H,m),6.88−6.93(2H,m),7.27−7.32(2H,m),7.50−7.62(2H,m),7.88−7.95(3H,m)。
【0211】
実施例6(4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0212】
【化43】

【0213】
合成例5で得られた4−ブロモメチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1オン(1.00g,2.59mmol)と合成例3で得られたN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(0.596g,2.85mmol)のアセトニトリル(20mL)懸濁液に炭酸セシウム(1.10g,3.37mmol)を加え、室温にて3.5時間撹拌した。反応液は不溶物を濾過後、減圧下に溶媒留去し、茶色固体状残渣を得た。本残渣をエタノールにて洗浄後、乾燥して4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(1.03g,77%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.24(3H,t,J=7.1Hz),3.03(3H,s),4.02(2H,s),4.17(2H,q,J=7.1Hz),4.94(2H,s),5.17(2H,s),6.65−6.72(2H,m),6.87−6.95(2H,m),7.27−7.33(2H,m),7.50−7.62(2H,m),7.87−7.96(3H,m)。
【0214】
実施例7(4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0215】
【化44】

【0216】
合成例6で得られた4−ブロモメチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(316mg,1.00mmol)と合成例3で得られたN−(4−ヒドロキシフェニル)−N−メチルアミノ酢酸エチル(251mg,1.20mmol)のアセトニトリル(20mL)懸濁液に炭酸セシウム(391mg,1.20mmol)を加え、室温で一夜撹拌した。水を加え、得られた結晶をろ取し、乾燥して4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−メチルフェニル)イソインドリン−1−オン(392mg,88%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.24(3H,t,J=7.3Hz),2.36(3H,s),3.03(3H,s),4.01(2H,s),4.17(2H,q,J=7.3Hz),4.92(2H,s),5.15(2H,s),6.65−6.71(2H,m),6.87−6.94(2H,m),7.21−7.25(2H,m),7.51(1H,t,J=7.6Hz),7.58(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz),7.71−7.76(2H,m),7.89(1H,dd,J=1.3Hz,7.6Hz)。
【0217】
実施例8(4−{4−[N−エチル−N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0218】
【化45】

【0219】
実施例1で得られた4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(282mg,0.60mmol)のジメチルホルムアミド(8mL)溶液に炭酸カリウム(124mg,0.90mmol)とヨウ化エチル(140mg,0.90mmol)を加え、60℃で6時間、80℃で2時間撹拌した。さらに、ヨウ化エチル(187mg,1.20mmol)を追加し、60℃で一夜撹拌した。水を加え、得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4−{4−[N−エチル−N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)イソインドリン−1−オン(120mg,40%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.19(3H,t,J=7.3Hz),3.42(2H,q,J=7.3Hz),3.73(3H,s),4.00(2H,s),4.97(2H,s),5.17(2H,s),6.62−6.68(2H,m),6.87−6.93(2H,m),7.54(1H,t,J=7.6Hz),7.61(1H,dd,J=1.0Hz,7.6Hz),7.68(2H,d,J=8.6Hz),7.91(1H,dd,J=1.0Hz,7.6Hz),8.04(2H,d,J=8.6Hz)。
【0220】
実施例9(4−{4−[N−エチル−N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成)
【0221】
【化46】

【0222】
実施例2で得られた4−{4−[N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(250mg,0.51mmol)のジメチルホルムアミド(5mL)溶液に炭酸カリウム(428mg,3.10mmol)とヨウ化エチル(480mg,3.08mmol)を加え、60℃で一夜撹拌した。反応液は減圧下に溶媒留去し、残渣に水を加えジクロロメタンにて抽出した。ジクロロメタン抽出液は硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下に溶媒留去し、淡黄色固体状残渣を得た。本残渣をメタノールにて洗浄後、乾燥して4−{4−[N−エチル−N−(メトキシカルボニルメチル)アミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(166mg,63%)の結晶を得た。
H NMR(CDCl)δ:1.18(3H,t,J=7.1Hz),3.42(2H,q,J=7.1Hz),3.73(3H,s),3.99(2H,s),4.94(2H,s),5.16(2H,s),6.62−6.67(2H,m),6.87−6.92(2H,m),7.25−7.31(2H,m),7.50−7.62(2H,m),7.88−7.95(3H,m)。
【0223】
実施例10 4−{4−[N−(カルボキシメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0224】
【化47】

【0225】
実施例6で得られた4−{4−[N−(エトキシカルボニルメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(0.100g,0.19mmol)のジオキサン(5mL)溶液に1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(1.5mL)を加え、室温にて7時間撹拌した。反応液に1N HCl水溶液(1.5mL)を加えた後、水で希釈した。生じた結晶をろ取し、水洗後乾燥して4−{4−[N−(カルボキシメチル)−N−メチルアミノ]フェノキシ}メチル−2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)イソインドリン−1−オン(0.086g,91%)の結晶を得た。
H NMR(DMSO−d)δ:2.92(3H,s),4.02(2H,s),5.12(2H,s),5.21(2H,s),6.62(2H,d,J=8.9Hz),6.95(2H,d,J=8.9Hz),7.47(2H,d,J=8.9Hz),7.58(1H,t,J=7.5Hz),7.75(1H,d,J=7.5Hz),7.76(1H,d,J=7.5Hz),8.05(2H,d,J=8.9Hz)。
【0226】
試験例1(PPARスクリーニング方法:PPARα,PPARγ又はPPARδアゴニスト活性の測定)
トランスフェクションの24時間前に0.6×10cellのCHO細胞を100mmプレートに播種した。RPMI1640(培地、IWAKI社製)に、TransIT LT-1(トランスフェクション試薬,Mirus社製)を添加、vortexミキサーを用いて混合し、静置した。この溶液に酵母の転写因子Gal4のDNA結合ドメインとPPARα(若しくはγ又はδ)リガンド結合ドメインとの融合タンパク質を発現させる受容体プラスミドpBIND−hPPARα(若しくはγ又はδ)及びレポータープラスミドpG5−Lucを混和し、静置した後、全量を100mmプレートに添加した。24時間後、細胞を回収して96ウェルプレートに播種した。次いで、被験物質をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した溶液(被験物質濃度1重量%)を添加し、薬物添加24時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0227】
被験物質の誘導倍率は次のようにして求めた。すなわち、被験物質非投与群のルシフェラーゼ活性をa1、対照薬の被験物質のルシフェラーゼ活性をa2、表1に示す濃度(30,10,3,及び1μg/mL)の被験物質のルシフェラーゼ活性をa3としたとき、被験物質非投与群のルシフェラーゼ活性a1に対して、対照薬のルシフェラーゼ活性a2の倍率A2(A2=a2/a1)と、表1に示す濃度(30,10,3,及び1μg/mL)の被験物質のルシフェラーゼ活性a3の倍率A3(A3=a3/a1)とをそれぞれ算出し、対照薬の倍率A2に対する各濃度での被験物質の倍率A3の比率R[R=(A3/A2)×100]を被験物質の誘導倍率Rとして算出した。
【0228】
PPARα活性:対照薬フェノフィブリン酸(基準添加濃度100μM)添加よりも強いPPARα活性を示した実施例の化合物は、各被験物質の添加濃度について、下記の通りであった。
【0229】
被験物質30μg/mL:実施例5及び6
被験物質10μg/mL:実施例5
PPARγ活性:対照薬トリグリタゾン(基準添加濃度10μM)添加よりも強いPPARγ活性を示した実施例の化合物は、各被験物質の添加濃度について、下記の通りであった。
【0230】
被験物質30μg/mL:実施例5
PPARδ活性:対照薬としてGW501516(基準添加濃度100nM)を用い、被験物質のPPARδ活性を、対照薬に対する誘導倍率の相対値(百分率)で評価した。結果を表1に示す。なお、対照薬GW501516(基準添加濃度100nM)添加よりも強いPPARδ活性を示した実施例の化合物は、表1において100%以上の数値を示した化合物である。
【0231】
【表1】

【0232】
製剤例1(錠剤)
下記処方について日局XIVの製剤総則記載の公知方法に従って錠剤を得た。
【0233】
錠剤1錠中の処方例:
実施例3の化合物 50mg
結晶セルロース 100mg
乳糖 20mg
トウモロコシデンプン 28mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 200mg
製剤例2(カプセル剤)
下記処方について日局XIVの製剤総則記載の公知方法に従ってカプセル剤を得た。
【0234】
カプセル剤1カプセル中の処方例:
実施例3の化合物 50mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプン 28mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 200mg
製剤例3(顆粒剤及び錠剤)
実施例3の化合物30重量部、乳糖20重量部、結晶セルロース50重量の混合物にヒドロキシプロピルメチルセルロース2910水溶液(HPMC、固形分13重量部)を添加して練合し、押出造粒した後、整粒し、乾燥し、篩いにかけて顆粒剤を得た。得られた顆粒剤100重量部に、結晶セルロース65重量部及びステアリン酸マグネシウム2重量部を添加して混合し、打錠することにより、下記組成の錠剤を得た。
【0235】
実施例3の化合物 30mg
乳糖 20mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 13mg
結晶セルロース 115mg
クロスポピドン 20mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 207mg
【産業上の利用可能性】
【0236】
本発明の新規ラクタム化合物又はその塩(薬理学的に許容可能な塩など)は、PPAR(PPARα、PPARγ及び/又はPPARδ)に対して高い結合特性を有しており、PPARを活性化することができるため、PPAR活性化剤(PPARα活性化剤、PPARγ活性化剤及び/又はPPARδ活性化剤など)として有用である。そのため、前記化合物又はその薬理学的に許容可能な塩は、脂肪酸、脂質(油脂、りん脂質を含む)又は糖の代謝異常及び代謝に比較した過剰摂取に起因する各種疾患(例えば、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、拡張型心筋症、高血圧、高脂血症、低HDL血症、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性であってもよい糖尿病、肥満など)の予防及び/又は治療剤として有用である。すなわち、前記化合物又は又はその薬理学的に許容可能な塩は、医薬組成物の薬効成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるラクタム化合物又はその塩。
【化1】

[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
係数aは0〜5の整数を示し、
は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
係数bは、0〜4の整数を示し、
及びXは、それぞれ、アルキレン基又は酸素原子を示し、Xがアルキレン基であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはアルキレン基であり、
は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
は、直接結合又はアルキレン基を示し、
は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を示す]。
【請求項2】
が、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状ハロC1−6アルコキシ基であり、係数aが1〜3の整数であり、
が、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基であり、係数bが0又は1の整数であり、
及びXが、それぞれ、C1−4アルキレン基又は酸素原子であり、XがC1−4アルキレン基であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはC1−4アルキレン基であり、
が、C1−4アルキレン基であり、
が、水素原子又はC1−6アルキル基であり、
が、水素原子、C1−6アルキル基である請求項1記載のラクタム化合物又はその塩。
【請求項3】
式(1)で表されるラクタム化合物が、下記式(1a)
【化2】

(式中、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−4アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−4アルコキシ基を示し、
及びXは、それぞれ、C1−3アルキレン基又は酸素原子を示し、XがC1−3アルキレン基であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはC1−3アルキレン基であり、
は、水素原子又はC1−4アルキル基を示し、
は、C1−4アルキレン基を示し、
は、水素原子、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基を示す)
で表される化合物である請求項1又は2記載のラクタム化合物又はその塩。
【請求項4】
が、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−3アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルコキシ基、又は直鎖状又は分岐鎖状フルオロC1−3アルコキシ基であり、
及びXが、それぞれ、C1−2アルキレン基又は酸素原子であり、XがC1−2アルキレン基であるときXは酸素原子であり、Xが酸素原子であるときXはC1−2アルキレン基であり、
が、水素原子又はC1−3アルキル基であり、
が、C1−3アルキレン基であり、
が、水素原子、又は直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキル基である請求項3記載のラクタム化合物又はその塩。
【請求項5】
下記式(3)
【化3】

[式中、Lは脱離基又は脱離原子を示し、X、R及び係数aは請求項1の記載に同じ]
で表されるラクタム化合物又はその塩と、下記式(4)
【化4】

[式中、Lは脱離原子又は脱離基を示し、R、係数b、X、R、R、及びRは請求項1の記載に同じ]
で表される化合物又はその塩とを反応させて、請求項1記載のラクタム化合物又はその塩を製造する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のラクタム化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有するPPAR活性化剤。
【請求項7】
PPARα、PPARγ及びPPARδから選択された少なくとも一種を活性化するための活性化剤である請求項6記載のPPAR活性化剤。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のラクタム化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
【請求項9】
(i)脂肪酸、脂質又は糖の代謝異常に起因する疾患、及び/又は(ii)脂肪酸、脂質又は糖の代謝に比較して、脂肪酸、脂質又は糖の過剰摂取に起因する疾患の予防又は治療剤であって、請求項1〜4のいずれかの項に記載のラクタム化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する予防又は治療剤。
【請求項10】
疾患が、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、拡張型心筋症、高血圧、高脂血症、低HDL血症、メタボリックシンドローム、糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病及び肥満からなる群より選択される疾患である請求項9記載の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2010−280592(P2010−280592A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133915(P2009−133915)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】