説明

ラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合用触媒系の使用

強酸性のイオン交換樹脂型のポリマー触媒と(コ)オリゴ重合添加剤とよりなる、ラクチド及びグリコリドの開環(コ)オリゴ重合用触媒系の使用及び該触媒系を用いるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開環によるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合触媒系として、触媒としての強酸性イオン交換樹脂と(コ)オリゴ重合添加剤とによって構成される触媒系の使用に関する。本発明はまたかかる触媒系を用いることからなるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、人工器官の製造及び医薬の処方のため合成ポリマーに増々注目が集まっている〔Chem. Eng. News 2001 79(6) 30〕。当該ポリマーは或る多数の基準に合致しなければならず、特に該ポリマーは生体混和性でなければならない。該ポリマーが生体へ移植した適当な期間後に除去しなければならないならば生分解特性は追加の利点である。この点に関して乳酸とグリコール酸とを基材とするコポリマー(PLGA)は多大の有用性を有する。何故ならば該コポリマーは加水分解に対して感受性であり、無毒の副生物を放出しながら生体内で分解する。PLGAの応用分野はきわめて広い(Adv. Mater, 1996, 8, 305及びChemosphere 2001, 43, 49)。外科分野では、PLGAはマルチストランド糸、縫合糸、移植体、人工器官等の合成に用いられる。薬理学においては、PLGAは活性成分のカプセル包蔵化、移動及び加減した放出を可能とする。
【0003】
全てのこれらの応用に対して、重要な要因はPLGAの分解速度であり、勿論これはPLGAの構造(モノマー類の連鎖長、分散度、割合、立体化学及び連鎖形成等)に応じて左右される。それ故、近年多数の研究が、調節した構造を有するPLGAの製造を可能としながらラクチド及びグリコリドの(共)重合即ち重合又は共重合用の触媒及び/又はプロモーターの開発に的を向けている。
【0004】
触媒として金属系の使用は、金属塩の存在によってかくして得られたコポリマーの汚染を通常生じ、これは時として想定した用途に応じて重大な制限を構成する。それ故ラクチドとグリコリドの調節した(共)重合を可能とする非金属系の開発が有意な結果である。本発明はこの範ちゅうに適合し、更に詳しく言えば低分子量のラクチド及びグリコリド(コ)ポリマー即ちラクチドとグリコリドの(コ)オリゴマーに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故本発明者は触媒と(コ)オリゴマー重合添加剤とによって構成される単純な触媒系の使用を提案し、これによって製造した(コ)オリゴマーの連鎖長を調節し得るのみならず連鎖末端の性状をもまた調節し得る。触媒としてイオン交換樹脂を用いると簡単で効率的な要領でオリゴマーを触媒から分離させることができ、該触媒は活性の損失なしに再使用し得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それ故本発明の要旨は (a) 強酸性のイオン交換樹脂型のポリマー触媒(1)と
(b) 一般式 (2)
R1−E−R2 (2)
〔式中、Eは16族の元素を表わし;
R1は水素又はジュウテリウム原子を表わし;
R2は水素又はジュウテリウム原子又は次式
−E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は14族の元素であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子、ジュウテリウム原子、次の置換基を有する又は有しない基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表わし、その際前記の1個又はそれ以上の置換基はハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル及びアリールオキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わす〕の(コ)オリゴ重合添加剤とによって構成される、開環によるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合用の触媒系の使用に関する。
【0007】
用語ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード基を意味し、クロロ基であるのが好ましい。用語アルキル基は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表わす。この表現は1〜16個の線状又は分枝鎖炭素原子を有するアルキル基、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル基の如き1〜4個の炭素原子のアルキル基を包含する。該アルキル基の表現はヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル及びエイコシル基の如く6個より多い炭素原子を含有するアルキル基をも包含する。
【0008】
用語アルコキシ基は、アルキル基が前述の如く1〜6個の炭素原子を有する基であるアルコキシ基を言い、例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ又はイソプロピルオキシ基のみならず線状又は第3級ブトキシ及びペンチルオキシ基を言う。用語アルコキシカルボニル基は例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル基の如く、アルコキシ基が前述の如くであるアルコキシカルボニル基を表わすのが好ましい。
【0009】
シクロアルキル基は飽和又は不飽和の単環式シクロアルキル基から選択される。飽和単環式シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基の如き3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基から選択できる。不飽和のシクロアルキル基は、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン基から選択できる。用語シクロアルコキシ基は、シクロアルキル基が前述の如くであるシクロアルコキシ基を表わし、例えばシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロブテニルオキシ、シクロペンテニルオキシ、シクロヘキセニルオキシ、シクロペンタジエニルオキシ、シクロヘキサジエニルオキシ基を表わす。用語シクロアルコキシカルボニル基はシクロアルコキシ基が前述の如くであるシクロアルコキシカルボニル基例えばシクロプロピルオキシカルボニル、シクロブチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘプチルオキシカルボニル、シクロブテニルオキシカルボニル、シクロペンテニルオキシカルボニル、シクロヘキセニルオキシカルボニル基を表わす。
【0010】
アリール基は単環式又は多環式のアリール基であり得る。単環式のアリール基はトリル、キシリル、メシチル、クメニル基の如く1個又はそれ以上のアルキル基によって場合によっては置換されたフェニル基から選択できる。多環式のアリール基はナフチル、アンスリル、フェナンスリル基から選択できる。用語アリールオキシ基はアリール基が前述の如くであるアリールオキシ基例えばフェニルオキシ、トリルオキシ、ナフチルオキシ、アンスリルオキシ及びフェナンスリエルオキシ基を表わす。用語アリールオキシカルボニル基はアリールオキシ基が前述の如くであるアリールオキシカルボニル基例えばフェニルオキシカルボニル、トリルオキシカルボニル基を好ましくは表わす。
【0011】
本発明において、用語(コ)オリゴ重合は30未満の重合度(DP)を有するオリゴ重合又はオリゴ重合を意味する。即ちラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合はラクチドのオリゴ重合、グリコリドのオリゴ重合のみならずラクチドとグリコリドとのコオリゴ重合もまた包含する。
【0012】
本発明の触媒系においては、(コ)オリゴ重合添加剤に対するモノマーの量は2〜30モル当量であるのが好ましく、4〜10モル当量であるのが、より好ましい。
【0013】
本発明の要旨はより詳しく言えばポリマー触媒(1)がスルホン酸官能基を有するスチレン及びジビニルベンゼン基質のマクロ網状化樹脂(macroreticular resin)であることを特徴とする前述の触媒系の使用である。
【0014】
前述の触媒系において、ポリマー触媒(1)はアンバーリスト(登録商標)又はダウエックス(登録商標)型のマクロ網状化樹脂であるのが好ましく、アンバーリスト(登録商標)型の樹脂であるのがより好ましい。
【0015】
本発明によると、かくして用いた式(2)の(コ)オリゴ重合添加剤は(コ)オリゴ重合の開始剤(又はプロモーター)の役割を演じる。(コ)オリゴ重合添加剤の存在は絶対必要である。何故ならばかかる式(2)の化合物の不在下では(コ)オリゴ重合反応はずっと緩慢であり、ずっと低い収率を生じ、再現されず、それ故工業的に利用できない。
【0016】
本発明の要旨は、一般式(2)の化合物はEが酸素又は硫黄原子を表わし;
R1が水素原子を表わし;
R2が水素原子又は式 −E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素又はケイ素原子であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又は次の置換した又は非置換の基:アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際前記の1個又はそれ以上の置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わすようなものであり;
より詳しく言えば、Eが酸素原子を表わし;
R1が水素原子を表わし;
R2が水素原子又は次式 −E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素原子であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又は置換された又は非置換のアルキル基を表わし、その際前記の1個又はそれ以上の置換基はアルキル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わすようなものであり;
更に好ましくは、Eが酸素原子を表わし;
R1が水素原子を表わし;
R2が水素原子又は次式 −E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素原子を表わし、R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又はアルキル基を表わす)の基を表わすようなものであることを特徴とする前述の触媒系の使用に関する。
【0017】
本発明の要旨はより詳しく言えば前述の触媒系の使用に関し、一般式(2)の(コ)オリゴ重合添加剤が水又はアルコールのいずれかであることを特徴としている。本発明によると、このアルコールは式R2−OH(但しR2は前述の如くである)を有する。アルコール類のうちでは、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ペンタン−1−オール、長鎖アルコール例えばドデカノール又は置換アルコール例えばエチルラクテートを挙げ得る。前述の如き触媒系で用いたアルコールは脂肪族アルコールであるのが好ましく、脂肪族アルコールは、イソプロパノール、ペンタン−1−オール及びドデカン−1−オールから選ぶのがより好ましい。
【0018】
本発明の要旨はまた、当該の1種又はそれ以上のモノマーと、強酸性イオン交換樹脂型のポリマー触媒(1)と一般式(2)の(コ)オリゴ重合添加剤とにより構成される前述の触媒系とをオリゴ重合溶剤中で一緒に混合させることからなる、開環によるラクチドとグリコリドとの(コ)オリゴ重合方法に関する。
【0019】
反応溶剤は触媒反応それ自体を妨害しない溶剤から選択される。かかる溶剤の例としては、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン又はメシチレン)、1個又はそれ以上のニトロ基により場合によっては置換された芳香族炭化水素(例えばニトロベンゼン)、エーテル類(例えばメチルtertioブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン)、脂肪族又は芳香族ハライド(例えばジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン又はジクロロベンゼン)を挙げ得る。
【0020】
本発明の方法によると、反応は−20℃〜約150℃の温度で好ましくは20℃〜80℃の温度で行なう。反応時間は1時間〜64時間よりなり、好ましくは14時間〜48時間よりなる。(コ)オリゴ重合添加剤に対するモノマーの量は2〜30モル当量よりなり、4〜10モル当量よりなるのが更に好ましい。本発明の(コ)オリゴ重合方法の収率は一般に80%以上であり、実施例に例示した通り比較的温和な条件(40℃、数時間)下では100%に到達さえし得る。
【0021】
本発明の別の要旨は、更に詳しく言えば前述の如き触媒系を用いて、前述の如きラクチドとグリコリドとの(コ)オリゴ重合方法に関し、その際ポリマー触媒(1)はスルホン酸官能基を有するスチレン及びジビニルベンゼン基質のマクロ網状化樹脂である。ポリマー触媒(1)はアンバーリスト(登録商標)又はダウエックス(登録商標)型のマクロ網状化樹脂であるのが好ましく、アンバーリスト(登録商標)型の樹脂であるのが更に好ましい。
【0022】
本発明の別の要旨は更に詳しく言えば、前述の如き触媒系を用いて且つ一般式(2)の化合物
〔但しEは酸素又は硫黄原子を表わし;
R1は水素原子を表わし;
R2は水素原子又は式−E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素又はケイ素原子であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又は次の置換された又は非置換の基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基の1つを表わし、その際前記の1種又はそれ以上の置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わす〕、更に詳しく言えば
〔但しEは酸素原子を表わし;
R1は水素原子を表わし;
R2は水素原子又は式 −E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素原子であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又は置換された又は非置換のアルキル基(1個又はそれ以上の該置換基はアルキル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれる)を表わす)の基を表わす〕、更に好ましくは
〔Eは酸素原子を表わし;
R1は水素原子を表わし;
R2は水素原子又は式 −E14(R14)(R'14)(R''14)(但しE14は炭素原子を表わし、R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又はアルキル基を表わす)の基を表わす〕
を用いて前述の如きラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合方法に在る。
【0023】
本発明の要旨は更に詳しく言えば(コ)オリゴ重合添加剤が水又はアルコールの何れかである触媒系を用いて前述の如きラクチド及びグリコリド(コ)オリゴ重合方法に関する。アルコールは脂肪族アルコールであるのが好ましく、脂肪族アルコールはイソプロパノール、ペンタン−1−オール及びドデカン−1−オールから選択するのが更に好ましい。
【0024】
それ故本発明の開環によるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合方法によって(コ)オリゴマーの連鎖末端の性状を調節することができ、特に実験部分に例示した通り酸−アルコール又はエステル−アルコール末端を有する(コ)オリゴマーを得るのに適当である。反応の終了時には、該樹脂は媒質の簡単な濾過によってオリゴマーから分離でき、かくして回収した樹脂を活性の損失なしに再使用できる。
【0025】
本発明のラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合方法は300〜5000ダルトン、特に500〜3000ダルトンの質量(mass)を有する(コ)オリゴマーを得るのに特に適当である。
【0026】
本発明のラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合方法は多数の利点があり、特に、
(イ) 触媒系は強酸性のイオン交換樹脂と(コ)オリゴ重合添加剤とによって構成され、これらは容易に得やすく且つ安価であり;
(ロ) (コ)オリゴ重合開始剤として添加剤を用いることによって(コ)オリゴ重合手法をきわめて有意な程に改良し得るのみならず、当初モノマーと開始剤との比率に実際上等しい連鎖長を正確に加減でき;
(ハ) (コ)オリゴ重合開始剤として添加剤を用いることによって、製造した(コ)オリゴマーの連鎖末端の性状をも調節でき;
(ニ) (コ)オリゴ重合は、1種又はそれ以上のモノマーの殆んど全体の転化に必要な反応時間が数時間を越えることなく、精々48時間を越えることなく、40℃の如き比較的温和な温度条件下で実施でき;
(ホ) 得られた(コ)オリゴマーの質量分布はきわめて小さく;本発明により得られた(コ)オリゴマーの多分散度指数は実際に1.0〜1.4であり;
(ヘ) 得られた(コ)オリゴマーはそれらの特性を変更することなく容易に、迅速に且つ有効に精製でき、樹脂は簡単な濾過により定量的に除去され;
(ト)かくして回収した樹脂はその特性を保持し、活性の損失が見られることなく再使用できる。
【0027】
本発明は最後に前記の方法を用いて得られた又は得ることができるラクチド及びグリコリドのオリゴマー又はコ−オリゴマーに関する。かかる(コ)オリゴマーは300〜5000ダルトン、特に500〜3000ダルトンの低質量を有する。かかる(コ)オリゴマーは調節した酸−アルコール又はエステル−アルコール末端を有し得る。
【0028】
前記一般式(1)及び(2)の化合物は市販されて入手できあるいは当業者に既知の方法により製造できる。
【0029】
但し書きがなければ、本願で用いた全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する分野の専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。同様に本明細書に挙げた全ての刊行物、特許出願及び全ての他の文献は参考のためここに組入れてある。
【0030】
次の実施例は前記の方法を例示するために提示されており本発明の範囲を限定するものと何ら考えるべきでない。
【0031】
実施例1 エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)オリゴマー(1000Da近くのMw)の製造
磁気攪拌機を備えアルゴン下に掃気したシュレンク管中に、3.00gのD,L−ラクチド(0.021モル)と20mlのジクロロメタンと3.00gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.0135モル)と0.41mlのペンタン−1−オール(0.0037モル)とを連続的に装入する。反応混合物を40℃で45時間攪拌下に放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させた。残渣をジクロロメタン(1ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(15ml)中にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下で乾燥した後に、2.8gのオリゴマー(83%)が無色の粘稠液体の形で得られる。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量(calibration)を用いてGPC分析(ゲル透過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接する質量(Mw=1036ダルトン、Mw/Mn=1.22)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、コン跡量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0032】
実施例2 酸−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)オリゴマー(1000Da近くのMw)の製造
磁気攪拌機を備えアルゴン下に掃気したシュレンク管中に23.80gのD,L−ラクチド(0.165モル)と200mlのジクロロメタンと23.73gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.111モル)と0.74mlの水(0.041モル)とを連続的に装入する。反応混合物を40℃で48時間攪拌下に放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させた。残渣をジクロロメタン(6ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(120ml)中にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下での乾燥後に20.1gのオリゴマー(82%)が無色の粘稠液体の形で得られた。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量を用いてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接する質量(Mw=917ダルトン、Mw/Mn=1.16)を有するオリゴマーよりなる。酸−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、コン跡量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0033】
実施例3 エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド)オリゴマー(Mw<1000Da)の製造
磁気攪拌機を備えアルゴン下に掃気したシュレンク管中に、3.00gのD,L−ラクチド(0.021モル)、20mlのジクロロメタン、3.12gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂及び0.59mlのペンタン−1−オール(0.0054モル)を連続的に装入する。反応混合物を40℃で40時間攪拌下に放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させる。残渣をジクロロメタン(1ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(15ml)にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下での乾燥後に3.2gのオリゴマー(89%)が無色の粘稠液体の形で得られた。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量を用いてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接する質量(Mw=597ダルトン、Mw/Mn=1.3)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、コン跡量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0034】
実施例4 エステル−アルコール末端を有する(D,L−ラクチド/グリコリド)80/20コ−オリゴマー(Mw<1000Da)の製造
磁気攪拌機を備え、アルゴン下に掃気したシュレンク管中に、1.40gのD,L−ラクチド(0.0097モル)、0.30gのグリコリド(0.0026モル)、15mlのジクロロメタン、1.20gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.006モル)及び0.23mlのペンタン−1−オール(0.002モル)を連続的に装入する。反応混合物を40℃で40時間攪拌下に放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ;モノマーの転化率は95%以上である。ポリラクチド(5.2ppm)及びポリグリコリド(4.85ppm)部分に対応するシグナルの積分(integrals)の比率によってコポリマーの組成を79%のラクチド及び21%のグリコリドに評価することができる。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させた。残渣をジクロロメタン(1ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(15ml)にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下に乾燥させた後に、1.45gのオリゴマー(86%)が無色の粘稠液体の形で得られる。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量を用いてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接する質量(Mw=568ダルトン、Mw/Mn=1.28)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0035】
実施例5 エステル n−ペンチルアルコール末端を有する(D,L−ラクチド/グリコリド)50/50コ−オリゴマー(Mw>1000Da)の製造
磁気攪拌機を備え、アルゴン下に掃気したシュレンクフラスコ中に、5.00gのD,L−ラクチド(0.035モル)、5.00gのグリコリド(0.043モル)、60mlのジクロロメタン、10.00gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.050モル)及び1.83mlのペンタン−1−オール(0.0168モル)を連続的に装入する。反応混合物を還流で(45℃)攪拌しながら40時間放置する。オリゴマーはプロトンNMRにより特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。ポリラクチド(5.20ppm)及びポリグリコリド(4.85ppm)部分に対応するシグナルの全体の比率によってコポリマーの組成を49%のラクチド及び51%のグリコリドに評価することができる。反応媒質を濾過して樹脂を除去し溶剤を減圧下に蒸発させる。残渣をジクロロメタン(3ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(44ml)にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下で乾燥した後に、7.50gのオリゴマー(65%)を無色−白みがかった粘稠液体の形で得る。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量を用いてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接するモル質量(Mw=1550ダルトン、Mw/Mn=1.19)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正のイオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0036】
実施例6 エステル n−ドデシルアルコール末端を有する(D,L−ラクチド/グリコリド)50/50コ−オリゴマー(Mw>1000Da)の製造
磁気攪拌機を備えアルゴン下に掃気したシュレンクフラスコ中に、5.00のD,L−ラクチド(0.035モル)、5.00gのグリコリド(0.043モル)、60mlのジクロロメタン、10.00gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.050モル)及び3.82mlのドデカン−1−オール(0.0168モル)を連続的に装入する。反応混合物を還流(45℃)で攪拌下に40時間放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。ポリラクチド(5.20ppm)及びポリグリコリド(4.85ppm)部分に対応するシグナルの全体の比率によってコポリマーの組成を53%のラクチド及び47%のグリコリドに評価することができる。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させた。残渣をジクロロメタン(3ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(44ml)にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下に乾燥した後に9.50gのオリゴマー(72%)が無色−白みがかった粘稠液体の形で得られた。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量を用いてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接するモル質量(Mw=1470ダルトン、Mw/Mn=1.17)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0037】
実施例7 エステル n−ドデシルアルコール末端を有する(D,L−ラクチド)オリゴマー(Mw>1000Da)の製造
磁気攪拌機を備え、アルゴン下に掃気したシュレンクフラスコ中に、5.00gのD,L−ラクチド(0.035モル)、30mlのジクロロメタン、5.00gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.025モル)及び1.42mlのドデカン−1−オール(0.0063モル)を連続的に装入する。反応混合物を還流で(45℃)で攪拌下に40時間放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させる。残渣をジクロロメタン(1.5ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(22ml)中にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下に乾燥した後に4.70gのオリゴマー(76%)が無色の粘稠液体の形で得られた。400〜400000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量を用いてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接するモル質量(Mw=1209ダルトン、Mw/Mn=1.3)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。
【0038】
実施例8 エステル n−ペンチルアルコール末端を有する(D,L−ラクチド)オリゴマー(Mw>2000Da)の製造
磁気攪拌機を備え、アルゴン下に掃気したシュレンクフラスコ中に、10.00gのD,L−ラクチド(0.070モル)、69mlのジクロロメタン、6.50gのアンバーリスト(登録商標)15樹脂(酸の0.0326モル)及び0.50mlのペンタン−1−オール(0.0046モル)を連続的に装入する。反応混合物を還流(45℃)で攪拌下に168時間放置する。オリゴマーはプロトンNMRによって特徴付けられ、モノマーの転化率は95%以上である。反応媒質を濾過して樹脂を除去し、溶剤を減圧下に蒸発させる。残渣をジクロロメタン(3ml)に溶解させ、攪拌下にペンタン(44ml)にそそいだ。上澄み液を除去し、真空下で乾燥した後に、8.20gのオリゴマー(79%)が白色粉末の形で得られた。400〜5000の質量を有するポリスチレン標準品(PS)を用いて生成した検量の助けを借りてGPC分析(ゲル濾過クロマトグラフィー)によると、試料は隣接するモル質量(Mw=2096ダルトン、Mw/Mn=1.27)を有するオリゴマーよりなる。エステル−アルコール連鎖末端の性状は質量分析法(電子スプレーによるイオン化、正イオンモードでの検出、微量の水酸化アンモニウムを有するアセトニトリルに溶解した試料)により測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 強酸性のイオン交換樹脂型のポリマー触媒(1)と
(b) 一般式 (2)
R1−E−R2 (2)
〔式中、Eは16族の元素を表わし;
R1は水素又はジュウテリウム原子を表わし;
R2は水素又はジュウテリウム原子又は次式
−E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は14族の元素であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子、ジュウテリウム原子、次の置換基を有する又は有しない基;アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表わし、その際前記の1個又はそれ以上の置換基はハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニル及びアリールオキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わす〕の(コ)オリゴ重合添加剤とによって構成される、開環によるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合用の触媒系の使用。
【請求項2】
(コ)オリゴ重合添加剤に対するモノマーの量は2〜30モル当量、好ましくは4〜10モル当量よりなる請求項1記載の使用。
【請求項3】
ポリマー触媒(1)はスルホン酸官能基を有するスチレン及びジビニルベンゼン基質のマクロ網状化樹脂である請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
ポリマー触媒(1)はアンバーリスト(Amberlyst;登録商標)又はダウエックス(Dowex;登録商標)型のマクロ網状化樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の使用。
【請求項5】
ポリマー触媒(1)はアンバーリスト(登録商標)型のマクロ網状化樹脂である請求項4記載の使用。
【請求項6】
一般式(2)の化合物は、Eが酸素又は硫黄原子を表わし;
R1が水素原子を表わし;
R2が水素原子又は式−E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素又はケイ素原子であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又は次の置換基を有する又は有しない基の1つ;アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表わし;その際前記の1つ又はそれ以上の置換基はハロ、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ナフチル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わすようなものである請求項1〜5の何れかに記載の使用。
【請求項7】
一般式(2)の化合物は、Eが酸素原子を表わし;
R1が水素原子を表わし;
R2が水素原子又は式 −E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素原子であり;
R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又は置換又は非置換のアルキル基を表わし、その際前記の1つ又はそれ以上の置換基はアルキル、カルボキシ及びアルコキシカルボニル基から選ばれる)の基を表わすようなものである請求項1〜6の何れかに記載の使用。
【請求項8】
一般式(2)の化合物は、Eが酸素原子を表わし;
R1が水素原子を表わし;
R2が水素原子又は式 −E14(R14)(R'14)(R''14)
(但しE14は炭素原子を表わし、R14、R'14及びR''14は個々に水素原子又はアルキル基を表わす)の基を表わすようなものである請求項1〜7の何れかに記載の使用。
【請求項9】
一般式(2)の化合物は水又はアルコールの何れかである請求項1〜8の何れかに記載の使用。
【請求項10】
アルコールは脂肪族アルコールである請求項9記載の使用。
【請求項11】
脂肪族アルコールはイソプロパノール、ペンタン−1−オール及びドデカン−1−オールから選ばれる請求項10記載の使用。
【請求項12】
当該の1種又はそれ以上のモノマーと請求項1〜11の何れかに記載の触媒系とオリゴ重合溶剤とを一緒に混合することからなる、開環によるラクチド及びグリコリドの(コ)オリゴ重合方法。
【請求項13】
温度は−20℃と約150℃との間よりなる請求項12記載の方法。
【請求項14】
20℃と80℃の間の温度で溶液中で行なう請求項13記載の方法。
【請求項15】
反応時間は1時間〜64時間、好ましくは14時間〜48時間よりなる請求項12〜14の何れかに記載の方法。

【公表番号】特表2007−529480(P2007−529480A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503372(P2007−503372)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000616
【国際公開番号】WO2005/100439
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【Fターム(参考)】