説明

ラクトバチルス・ジョンソニーLa1NCC533(CNCMI−1225)及び免疫障害

本発明は一般に、特に内因性抗菌防御を促進することによって、炎症性及び感染性障害を予防及び/又は治療する分野に関する。本発明の一実施形態は、感染症を含めた免疫系に関連する障害の治療又は予防において使用するための、非複製性ラクトバチルス・ジョンソニーLa1 NCC533(寄託番号CNCM I−1225)の使用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は一般に、特に内因性抗菌防御を促進することによって、炎症性及び感染性障害を予防及び/又は治療する分野に関する。本発明の一実施形態は、感染症を含めた免疫系に関連する障害の治療又は予防において使用するための、非複製性ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)La1 NCC533(寄託番号CNCM I−1225)の使用である。
【0002】
我々の環境は、ありとあらゆる潜在的に病原性の微生物によって汚染されている。皮膚のケラチン生成細胞、消化管、気道、泌尿生殖器の内側を覆う上皮細胞は全て、体への微生物の侵入から保護する物理的バリアを実現する。
【0003】
さらに、これらの上皮は、抗菌物質を産生及び分泌し、細菌及び他の微生物が接近することを制限することによって宿主防御に貢献している。これらの抗菌分子は、自然免疫の基礎的な防御ラインの主要成分を構成する。
【0004】
デフェンシンは、ヒトにおける最も重要なクラスの抗菌ペプチドの1つである。デフェンシンは、肺、皮膚、口腔、尿生殖器、気道及び消化管の上皮細胞によって産生される。これらの中で、デフェンシン1(hBD1)及び2(hBD2)を含めたβ−デフェンシンのファミリーがある。
【0005】
HBD1は、口腔粘膜、唾液腺、胃、小腸、結腸、肝臓及び膵臓などの様々な粘膜表面において発現している。HBD2はまた、消化管の粘膜表面を含めた複数の粘膜表面において上皮細胞に存在する。さらに、これらの2つのデフェンシンはまた、唾液及び気道表面液中に存在する(Cunliffe,R.N.及びMahida,Y.R.2004、J Leukoc.Biol.75:49〜58)。
【0006】
HBD1は、恒常的に発現しており、細菌又は炎症によって一貫してアップレギュレートされることは示されてこなかった(Ou,G.ら、2009、Scand.J Immunol 69:150〜161)。
【0007】
プロバイオティクスは、消化管防御の様々なライン(免疫排除、免疫異物排除、及び免疫調節)を強化できることがよく知られている。プロバイオティクスはまた、病原性微生物に対する非特異的宿主抵抗性を刺激し、それによって病原性微生物の根絶を助けることが知られている。
【0008】
しかし、上記にもかかわらず、hBD1の恒常的発現は、プロバイオティクス細菌によって影響を受けず(O’Neil,D.A.ら、J Immunol 163:6718〜6724)、共生菌株(エシェリキア・コリ(Escherichia coli))及び病原性菌株(サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium))(Ou,G.ら、2009、Scand.J Immunol 69:150〜161)によって非常に穏やかにアップレギュレートされることが報告されてきた。
【0009】
プロバイオティクスの用途は現在、消化管バリア機能不全に関連する疾患の危険性を減少させることにある(E.Isolauriら、2002、Gut 2002;50:iii54〜iii59)。プロバイオティクスは、消化管内での生存、酸及び胆汁安定性、及び腸管内の粘膜表面の一時的コロニー形成によって有効であると考えられている。
【0010】
したがって、既刊文献の大部分は、生きたプロバイオティクスを論じている。しかし、いくつかの研究は非複製性細菌によって実現される健康上の利益を調査し、それらの研究の大部分は、例えば熱処理によるプロバイオティクスの不活性化がそれらの健康上の利益と称されるものの損失をもたらすことを示した(Rachmilewitz,D.ら、2004、Gastroenterology 126:520〜528;Castagliuoloら、2005、FEMS Immunol.Med.Microbiol.43:197〜204;Gill,H.S.及びK.J.Rutherfurd、2001、Br.J.Nutr.86:285〜289;Kaila,M.ら、1995、Arch.Dis.Child 72:51〜53)。
【0011】
食料製品において生細菌を扱うことは、今日ではいくつかの不都合を有する。生細菌は通常あまりストレス耐性ではなく、生存率を維持しながら、工業規模で取り扱うことが結果的に困難である。さらに、いくつかの製品カテゴリーについて、生存している微生物を配合物に加えることは安全上の懸念から最良ではないことがある。したがって、生物活性のある、生存していない微生物についての必要性が存在する。
【0012】
有利なことには、非複製性プロバイオティクス微生物を提供することは、消費者である患者についての健康上の利益を維持する一方で、例えば、粉末栄養組成物の高温の再構成を可能にするであろう。これに基づいて、生きた対応物の代わりに非複製性細菌を扱うことが望ましいことがあるが、この点において利用可能な研究は、肯定的な材料になるものではない。
【0013】
炎症性腸疾患を治療又は予防する戦略としての生きたプロバイオティクスの使用は、文献において報告されてきており、Dotanらによって最近概説された(Dotan,I.及びD.Rachmilewitz.2005;Curr.Opin.Gastroenterol.21:426〜430)。例えば、8種の生きたプロバイオティクス細菌の高濃縮のカクテル(VSL#3)は、ヒトにおける再発性又は難治性嚢炎の予防(Gionchetti,P.ら、2003、Gastroenterology 124:1202〜1209)及び治療(Gionchetti,P.ら、2000、Gastroenterology 119:305〜309;Mimura,T.ら、2004、Gut 53:108〜114)において有効であることが示された。興味深いことに、DSSが誘発する大腸炎のマウスモデルを使用して、Rachmilewitzら(Rachmilewitz,D.ら、2004、Gastroenterology 126:520〜528)は、生存しておりγ線照射したVSL#3による処理は大腸炎から保護したが、加熱殺菌したVSL#3による処理では大腸炎から保護しないことを報告した。同様に加熱殺菌したラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)は、DSSが誘発する大腸炎から保護することができなかったが、一方その生存している対応物は、体重の減少及び消化管内のMPO活性を明らかに減少させた(Castagliuoloら、2005、FEMS Immunol.Med.Microbiol.43:197〜204)。これらの研究は、プロバイオティクスは、消化管炎症との関連で、非複製性対応物より生きていて有効であることを示唆する。
【0014】
不活性化されたラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)(加熱殺菌及びγ線照射)は、T84細胞によるTNFαが誘発するIL−8産生を減少させることができないことが見出され、一方その生きた対応物は有意に有益な作用を示した(Ma,D.ら、2004、Infect.Immun.72:5308〜5314)。
【0015】
したがって、当技術分野で、工業的条件下で取り扱うことが容易であり、投与するのに安全及び容易であり、特に内因性抗菌防御を促進することによって炎症性及び感染性障害を予防及び/又は治療することを可能にする天然組成物が必要とされている。
【0016】
理想的には、天然組成物は、今日ではよく受け入れられており、健康上の利益を実現することについて消費者に認識されているプロバイオティクス培養物から、特に、プロバイオティクス微生物から調製すべきである。有利なことには、組成物は、非複製性細菌を含有すべきであり、生きた対応物より有効であるべきである。
【0017】
本発明者らは、このような必要性に取り組んできた。
【0018】
したがって、現況技術を改善し、特に内因性抗菌防御を促進することによって炎症性及び感染性障害の予防及び/又は治療を可能とし、上記で一覧表示した必要性を満たす、天然組成物を提供することは本発明の目的であった。
【0019】
本発明者らが独立請求項の主題によって本発明の目的を達成できたことは驚きであった。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態をさらに定義する。
【0020】
本発明の主題は、非複製性微生物、例えば熱処理された微生物などの微生物を含有する製品を投与することによって、哺乳動物の内因性抗菌防御を強化する。
【0021】
ラクトバチルス・ジョンソニー(La1、NCC533、寄託番号CNCM I−1225)、特に、非複製性ラクトバチルス・ジョンソニー(La1、NCC533、寄託番号CNCM I−1225)、例えば、熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニー(La1、NCC533、寄託番号CNCM I−1225)が、抗菌ペプチド発現の誘発に対して、文献において以前同定され記載されているものよりも優れた作用を有することを、本発明者らは記載する。
【0022】
例えば、以下について見出された。
ラクトバチルス・ジョンソニー(La1、NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、恒常的hBD1発現を強力に誘発する。
熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニー(La1、NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、その生きた対応物よりも強力にhBD1をアップレギュレートする。
【0023】
HBD1は、エシェリキア・コリ及びシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)を含めた広範囲の細菌に対して(Nuding,S.ら、2009,Microbes.Infect.11:384〜393)、並びにまたカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの酵母に対して(O’Neil,D.A.2003、Mol.Immunol 40:445〜450)、並びにウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)に対して(Kota,S.ら、2008、J.Biol.Chem 283:22417〜22429)抗菌活性を示す。したがって、これらの抗菌ペプチドは、粘膜バリアを強化し、結果的に細菌付着及び侵入を制限し得る。
【0024】
なお一層の証拠によって、特定の病態生理学的条件においてデフェンシンのレベルが減少し、この減少は以下のものなどの感染性及び炎症性疾患の病態形成及び合併症における危険因子であることが示される(Doss,M.ら、2010、J Leukoc.Biol.87:79〜92);Rivas−Santiago,B.ら、2009、Infect.Immun.77:4690〜4695)。
【0025】
気道において、
嚢胞性線維症、反応性気道疾患、肺感染症及びタバコ喫煙、喘息、肺炎、鼻炎、耳炎、副鼻腔炎、結核
【0026】
消化管において、
クローン病(結腸及び回腸)、潰瘍性大腸炎、ヘリコバクター・ピロリ感染症によって誘発される胃炎及び胃潰瘍、感染性下痢症、壊死性腸炎、抗生物質が関連する下痢症、セリアック病、未成熟な腸
【0027】
尿生殖路において、
細菌性腟症、HIV、単純ヘルペスウイルス、尿路感染症
【0028】
皮膚において、
アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、癌腫、アトピー性湿疹、熱傷
【0029】
口腔において、
HIV患者、扁桃炎、歯肉炎、虫歯
【0030】
目の角膜炎
【0031】
本明細書において示す結果は、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)が、以前に同定されたプロバイオティクス細菌よりも内因性抗菌防御を促進するより強い能力を有し、したがって、SIBO(小腸内細菌過剰増殖)、炎症性及び感染性障害の予防及び治療においてより効率的であり得ることを示す。
【0032】
さらに、本発明者らのデータは、文献から予想されるであろうことに反して、熱処理がラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の強力な抗菌作用を減少させず、さらに増加させることを示す。
【0033】
したがって、本発明の一実施形態は、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含む、感染症を含めた免疫系に関連する障害の治療又は予防用組成物である。
【0034】
本発明によると、免疫系に関連する障害は、内因性hBD1発現を増加させることによって治療又は予防し得る。
【0035】
本発明はまた、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含む、例えば、微生物感染症などのhBD1発現の減少に関連する障害の治療又は予防用組成物に関する。
【0036】
本発明はまた、免疫系に関連する障害の治療又は予防用組成物の調製におけるラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の使用に関する。
【0037】
非複製性ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を、少なくとも部分的に使用し得る。非複製性の、特に熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、生きた対応物よりさらにより有効であるという利点を有する。
【0038】
生きた対応物の代わりに、熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)などの非複製性微生物を使用することは、以下のさらなる利点を有する。
感受性の標的集団における生きたプロバイオティクスが関連する敗血症の潜在的リスクを減少させ、
免疫不全患者に対して安全な代替物を示し、
加工のハードルを下げ、長い保存寿命を有する貯蔵安定性の液体製品に組み込むことができる。
【0039】
したがって、本発明の一実施形態において、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%、理想的には少なくとも99.9%、又は全ては、非複製性である。
【0040】
本発明はまた、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%、理想的には少なくとも99.9%、又は100%が非複製性である、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含む組成物に関する。
【0041】
したがって、本発明はまた、生物活性のある非複製性、例えば、熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)に関する。
【0042】
「非複製性」ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)には、熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニーLa1が含まれる。これには、不活性化された、死んだ、生存していない、並びに/又はフラグメント(DNA、代謝物、細胞質化合物、及び/若しくは細胞壁材料など)として存在するラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)が含まれる。
【0043】
「非複製性」とは、古典的なプレーティング法によって生存細胞及び/又はコロニー形成単位を検出することができないことを意味する。このような古典的なプレーティング法は、微生物学の書籍:James Monroe Jay、Martin J.Loessner、David A.Golden.2005.Modern food microbiology、第7版、Springer Science、New York、N.Y.、790頁に要約されている。典型的には、生存細胞が存在しないことは、下記のように示すことができる。異なる濃度の細菌調製物(「非複製性」試料)による播種、並びに適切な条件(少なくとも24時間の好気性及び/又は嫌気性雰囲気)下でのインキュベーション後に、寒天プレート上で目に見えるコロニーがない、又は液体増殖培地の混濁度の増加がない。
【0044】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、熱不活性化によって非複製性にし得る。熱不活性化は、少なくとも約70℃で行い得る。
【0045】
不活性化を達成するのに十分に長く行われる限り、任意の熱処理を使用して、プロバイオティクスを不活性化し得る。例えば、このような熱処理は、少なくとも10秒間行い得る。
【0046】
典型的には、高温では短い加熱時間を必要とし、一方ではより低い温度ではより長い加熱を必要とする。
【0047】
例えば、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、110°〜140°で1〜30秒間、例えば10〜20秒間で非複製性にし得る。
【0048】
このような所与の時間枠は、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1が所与の温度に曝される時間を意味する。ラクトバチルス・ジョンソニーLa1がそれ中に供給される組成物の性質及び量によって、並びに使用される加熱装置の構造によって、熱を加える時間は異なり得ることを留意されたい。温度処理は通常の大気圧で行ってもよいが、また高圧下で行ってもよい。典型的な圧力範囲は、1〜50バール、好ましくは1〜10バール、さらにより好ましくは2〜5バールである。加える理想的な圧力は、微生物がそれ中に供給される組成物の性質及び使用される温度によって決まる。
【0049】
La1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)がそれ中に供給される組成物が、例えば、包装及び分配される前に何らかの方法で熱処理される場合、この熱処理ステップを使用して、La1 NCC533を不活性化することが好ましいことがある。
【0050】
典型的には、La1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含有する組成物は、高温短時間(HTST)処理、瞬間殺菌又は超高温(UHT)処理によって処理し得る。
【0051】
UHT処理は、組成物を短時間、概ね1〜10秒間、乳中の細菌胞子を殺すのに必要とされる温度である135℃(275°F)を超える温度で加熱することによる組成物の少なくとも部分殺菌を伴う、超高温加工又は超熱処理(両方とも、UHTと省略)である。例えば、135℃を超える温度を使用してこのように乳を加工することは、必要な保持時間(2〜5秒まで)で細菌負荷の減少を可能にし、それによって連続流れ操作が可能となる。
【0052】
2つの主要なタイプのUHTシステム(直接及び間接システム)がある。直接システムにおいて、製品を蒸気噴射又は蒸気注入によって処理し、一方では間接システムにおいて、製品を、プレート熱交換器、チューブ式熱交換器又はかき取り式熱交換器を使用して熱処理する。UHTシステムの組合せは、製品調製の工程において、任意のステップで又は複数のステップで適用し得る。
【0053】
HTST処理は、下記のように定義される(高温/短時間):乳中の生存している微生物の数の99.9999%を殺す、5対数の減少を達成するように設計される低温殺菌法。これはほぼ全ての酵母、カビ及び一般の腐敗細菌を破壊するのに適当であると考えられ、一般の耐熱性の病原生物の適当な破壊をまた確実なものとする。HTST工程において、乳を71.7℃(161°F)に15〜20秒間加熱する。
【0054】
瞬間殺菌は、果汁及び野菜汁、ビール及び乳製品などの腐敗しやすい飲料の低温殺菌の方法である。腐敗微生物を殺し、製品をより安全なものとし、それらの保存寿命を延ばすために、瞬間殺菌は容器への充填の前に行う。液体は、71.5℃(160°F)〜74℃(165°F)の温度に約15〜30秒間曝される間、制御された連続流れに流入する。
【0055】
本発明の目的のために、「短時間高温処理」という用語には、例えば、高温短時間(HTST)処理、UHT処理、及び瞬間殺菌が含まれる。
【0056】
本発明の組成物は、感染症及び免疫系に関連する障害、並びに/又はそれらの合併症を少なくとも部分的に治療するのに十分な量でLa1を含み得る。これを達成するのに適当な量は、「治療有効用量」と定義される。この目的のために有効な量は、疾患の重症度、並びに消費者の体重及び身体全体の健康状態などの当業者には公知のいくつかの要因、並びに食品マトリックスの作用によって決まる。
【0057】
予防的用途において、本発明による組成物を、障害の影響を受けやすい又はそうでなければ免疫系に関連する障害の危険性がある消費者に、このような障害が発生する危険性を少なくとも部分的に減少させるのに十分な量で投与する。このような量は、「予防有効用量」であると定義される。ここでまた、正確な量は、患者の健康状態及び体重などのいくつかの患者に特異的な要因、並びに食品マトリックスの作用によって決まる。
【0058】
当業者であれば、治療有効用量及び/又は予防有効用量を適切に調節することができるであろう。
【0059】
一般に、本発明の組成物は、治療有効用量及び/又は予防有効用量でLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含有する。
【0060】
典型的には、治療有効用量及び/又は予防有効用量は、1日用量当たり約0.005mg〜1000mgのLa1の範囲である。
【0061】
数値量に関して、La1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、組成物中に10〜1012当量cfu/g乾燥組成物に相当する量で存在し得る。明らかに、非複製性微生物は、コロニーを形成しない。結果的に、治療有効用量及び/又は予防有効用量という用語は、10〜1012cfu/gの複製細菌から得られる非複製性微生物の量と理解される。これには、不活性化された、生存していない、又は死んだ、又はフラグメント(DNA若しくは細胞壁若しくは細胞質化合物など)として存在する微生物が含まれる。すなわち、組成物が含有する微生物の量は、全ての微生物が、実際は不活性化された、又は死んだ、断片化された、又はこれらの状態の任意若しくは全ての混合物などの非複製性であろうとなかろうとに関わりなく、生きているかのように、微生物の量のコロニー形成能(cfu)に関して表される。
【0062】
例えば、本発明による組成物は、1日用量当たり約10〜1012cfuに相当する量のラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含有し得る。
【0063】
本発明の組成物は、1日用量当たり約0.005mg〜1000mgのラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含有し得る。
【0064】
本発明の組成物は、任意の種類の組成物でもよい。組成物は、例えば、経口的、経腸的、非経口的(皮下又は筋肉内)、局所的若しくは目から、又は吸入によって、直腸内及び腟内に投与し得る。
【0065】
したがって、本発明の組成物は、食品組成物、ペットフードを含めた食料製品、飲料、完全栄養のための調製乳、栄養サプリメント、栄養補助食品、食品添加物、医薬組成物、化粧組成物、医薬及び局所組成物からなる群から選択し得る。
【0066】
プレバイオティクスを加えてもよい。プレバイオティクスは、プロバイオティクスが非複製性となる前に、プロバイオティクスの増殖をサポートし得る。プレバイオティクスはまた、組成物中に存在する、及び/又は組成物に加えてもよい、生存しているプロバイオティクス細菌と相乗的に作用し得る。
【0067】
免疫系に関連する障害は、感染症、特に、細菌、ウイルス、真菌及び/又は寄生虫の感染症;炎症;食細胞欠損;上皮性関門異常、未成熟な免疫系、SIBO及びこれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0068】
本発明の一実施形態において、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含む組成物は、ウイルス、真菌及び/又は寄生虫の感染症などの微生物感染症の治療又は予防において使用し得る。
【0069】
免疫系に関連する障害はまた、低下したレベルのデフェンシン、特にhBD1に関連する障害の群から選択し得る。このような障害は、嚢胞性線維症、反応性気道疾患、タバコ喫煙からの肺感染症、喘息、肺炎、鼻炎、耳炎、副鼻腔炎、結核、クローン病(結腸及び回腸)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、未成熟な腸、ヘリコバクター・ピロリ感染症によって誘発される胃炎及び胃潰瘍、感染性下痢症、壊死性腸炎、抗生物質が関連する下痢症、細菌性腟症、HIV、単純ヘルペスウイルス、尿路感染症、アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、癌腫、アトピー性湿疹、熱傷、扁桃炎、歯肉炎、虫歯、目の角膜炎、並びにこれらの組合せからなる群から選択し得る。
【0070】
本発明の組成物を使用して、内因性抗菌防御を促進し得る。
【0071】
例えば、hBD1発現を促進することによって、これを達成し得る。
【0072】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)がhBD1の恒常的発現を強力に誘発し、非複製性、例えば、熱処理されたラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)がその生きた対応物よりhBD1発現をアップレギュレートすることを、本発明者らは見出した。
【0073】
結果的に、本発明の主題はまた、例えば、熱処理によってラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を非複製性にするステップを含む、免疫系に関連する障害の治療又は予防におけるラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の有効性を増加させる方法を包含する。
【0074】
免疫系に関連する障害は、例えば上記で一覧表示した障害の1つでもよい。
【0075】
本発明の一実施形態において、方法は、少なくとも約70℃での少なくとも約10秒間の熱処理ステップを含む。
【0076】
開示されているように本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている本発明の全ての特徴を自由に合わせることができることは、当業者であれば理解するであろう。特に、本発明の組成物について記載されている特徴は、本発明の使用及び/又は方法に適用してもよく、逆の場合も同じである。
【0077】
本発明のさらなる利点及び特徴は、下記の実施例及び図から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】120℃で15秒間熱処理されたLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、他の熱処理された菌株と比較して、腸上皮細胞においてhBD1 mRNAをインビトロで強力に誘発することを示す。T84細胞を、熱処理された菌株と共に4時間インキュベートした。hBD1の遺伝子発現を、リアルタイムPCRによって分析した。バーは、刺激されていない細胞の基礎的発現に規準化された、平均±標準誤差を表す。
【図2】La1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の高温短時間の処理は、hBD1 mRNA発現を誘発するのに最適である傾向にあることを示す。T84細胞を、生きた及び熱処理されたLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)によって4時間刺激した(120℃で15秒間又は85℃で20分間)。hBD1の遺伝子発現を、リアルタイムPCRによって分析した。バーは、刺激されていない細胞の基礎的発現に規準化された、平均±標準誤差を表す。
【実施例】
【0079】
実験のプロトコル
T84細胞は30〜40代継代から使用し、5%のウシ胎仔血清(FCS)(Amined BioConcept)及び2mMのグルタミンを含有するダルベッコ改変必須培地/F−12(Sigma D6421)中で培養した。細胞を、6ウェル培養プレート中で2×10の細胞/ウェルの濃度で播種し、37℃にて5%CO、95%空気雰囲気中で単層として増殖させた。コンフルエンス後1週間まで増殖させた細胞を、血清及び抗生物質を含有しない培地と共に少なくとも12時間インキュベートした。血清が誘発するデフェンシン発現を除去し、プロバイオティクス及び細胞免疫応答に対する抗生物質の影響を防止するために、このステップは必要であった。細胞をプロバイオティクス又は熱処理された菌株と共に4時間さらにインキュベートした。インキュベーション時間の終わりに、細胞をPBSで洗浄し、供給業者のプロトコルに従ってトリピュア(TriPure)(商標)単離試薬によって収集した。このように処理された細胞におけるヒトhBD1及びhBD2遺伝子発現を、定量的PCRによって評価した。
【0080】
この実験において使用する菌種は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(NCC2705、寄託番号CNCM I−2618)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(B.lactis)(NCC2818、寄託番号CNCM I−3446)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)(La1、NCC533、寄託番号CNCM I−1225)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)(ST11、NCC2461、寄託番号CNCM I−2116)である。これらの菌株を、生きたまま試験、又は120℃で15秒間若しくは85℃で20分間熱処理して試験した。
【0081】
結果
120℃、15秒間で熱処理されたLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)は、他の試験した熱処理された菌株とは対照的に、4時間のインキュベーション後にhBD1 mRNA発現を強力に誘発した(図1)。恒常的に発現するhBD1の発現は現時点では、微生物、微生物製品又は炎症により事実上調節不可能であると科学界により考えられていることから、これらのデータは独特である。
【0082】
生菌La1及び熱処理されたLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の両方が、hBD1 mRNA発現を強力に誘発したが、hBD1の最も高い誘発は、熱処理されたLa1(高温短時間の処理)により惹起された(図2)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含む、感染症を含めた免疫系に関連する障害の治療又は予防用組成物。
【請求項2】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の少なくとも90%、例えば、少なくとも95%又は全てが、非複製性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非複製性ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)が、好ましくは少なくとも約70℃での処理によって、熱不活性化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
熱処理が、少なくとも10秒間行われる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)が、5〜30秒間、110°〜140°で非複製性にされる、請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
1日用量当たり約10〜1012cfuに相当する量のラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1日用量当たり約0.005mg〜1000mgのラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
食品組成物、ペットフードを含めた食料製品、飲料、完全栄養のための調製乳、栄養サプリメント、栄養補助食品、食品添加物、医薬組成物、化粧組成物、局所組成物及び医薬からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
免疫系に関連する障害が、感染症、特に、細菌、ウイルス、真菌及び/又は寄生虫の感染症;炎症;食細胞欠損;上皮性関門異常;未成熟な免疫系;小腸内細菌過剰増殖(SIBO)及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
免疫系に関連する障害が、低下したレベルのデフェンシン、特にhBD1に関連する障害の群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
低下したレベルのhBD1に関連する障害が、嚢胞性線維症、反応性気道疾患、タバコ喫煙による肺感染症、喘息、肺炎、鼻炎、耳炎、副鼻腔炎、結核、クローン病(結腸及び回腸)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、未成熟な腸、ヘリコバクター・ピロリ感染症によって誘発される胃炎及び胃潰瘍、感染性下痢症、壊死性腸炎、抗生物質が関連する下痢症、細菌性腟症、HIV、単純ヘルペスウイルス、尿路感染症、アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、癌腫、アトピー性湿疹、熱傷、扁桃炎、歯肉炎、虫歯、目の角膜炎からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
内因性抗菌防御、及び/又は内因性hBD1発現を促進するために使用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を非複製性にするステップを含む、感染症及び免疫系に関連する障害の治療又は予防におけるラクトバチルス・ジョンソニーLa1の有効性を増加させる方法。
【請求項14】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)が、少なくとも約10秒間少なくとも約70℃の熱処理ステップによって非複製性にされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)の少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%、理想的には少なくとも99.9%、又は100%が、非複製性である、ラクトバチルス・ジョンソニーLa1(NCC533、寄託番号CNCM I−1225)を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526751(P2012−526751A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510236(P2012−510236)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056295
【国際公開番号】WO2010/130662
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】