説明

ラクトバチルス属菌を含む美容組成物

【課題】 本発明は、体の内面からの効果に基づく美容または美肌効果を有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 ラクトバチルス属菌を有効成分とする、美容または美肌効果を有する組成物を提供する。本発明の組成物は、皮膚水分蒸散量の増加抑制作用、皮膚バリア機能の向上作用、皮膚水分含量の維持または改善作用、皮膚皮脂量の維持または改善作用、皮膚弾力の維持または改善作用、皮膚色度の維持または改善作用からなる群から選ばれる1ないしそれ以上の作用を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、美容効果、特に美肌効果を有するラクトバチルス属菌を含有する組成物に関する。
【0002】
背景技術
美容効果、特に美肌効果を有する化粧料または外用剤は種々開発されており、それらは皮膚の外面から作用することにより所望の効果を発揮する。近年、健康志向の高まりから、体の内面からの作用に基づいた美容効果を有する食品、例えば、コラーゲン、エラスチンまたはローヤルゼリーを含有する食品等が市販されている。
【0003】
美容効果、特に美肌効果を有する食品としては、例えば皮膚を構成するムコ多糖類(ヒアルロン酸等)を主成分とする食品が知られている。このような食品は、皮膚の構成成分を供給することにより、美肌効果を得ようとするものである。また、特開2003−339353、特開2004−254632には、乳酸菌を含有する美容食品が記載されている。しかし、経口摂取による体の内面からの効果に基づく美容または美肌効果を有する食品に関する報告は少なく、優れた効果の有する食品の提供が望まれている。
【0004】
乳酸菌は、整腸作用や免疫賦活作用といった有益な生理活性を有することが知られている。また、一般消費者にとって健康効能感のある素材としての認知度も高い。このような有益な生理活性を有する乳酸菌の多くは発酵乳製品や腸管から分離された動物素材由来の乳酸菌である。一方で、植物素材を分離元とする植物性乳酸菌においても免疫賦活作用を有する株が見出されている。例えば、特開平10−167972号公報には免疫賦活作用を有する乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)L−137株が記載されている。また、京都の伝統的な漬物である「すぐき」から分離されたラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)Labre株や、「しば漬け」から分離されたラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)DA74N株なども免疫賦活作用を有することが知られている(参照:(1)特公平7-55908号公報、(2)Pasken Journal 15. 21-26, 2002,岸惇子、小久保あおい、赤谷薫、扇谷えり子、藤田晢也、岸田綱太郎:有用乳酸菌選定のためのスクリーニング1)ヒト末梢血における植物性乳酸菌のin vitro免疫賦活効果、(3)第6回腸内細菌学会(2002.05.30-31)要旨、赤谷薫、岸惇子、扇谷えり子、小久保あおい、藤田晢也、岸田綱太郎)。
【0005】
植物素材を分離源とする植物性乳酸菌は、漬物や酒類の醸造に深く関わっていることが知られており、醸造工程からは多くの菌が分離可能である。しかしながら、このような酒類の醸造工程から分離された菌については、醸造における作用や香味等への寄与に関する研究が主であり、菌自体が生体へ及ぼす効能についてはあまり研究されていない。
【特許文献1】特開2003−339353
【特許文献2】特開2004−254632
【特許文献3】特開平10−167972号公報
【特許文献4】特公平7−55908号公報
【非特許文献1】岸惇子、小久保あおい、赤谷薫、扇谷えり子、藤田晢也、岸田綱太郎:有用乳酸菌選定のためのスクリーニング1)ヒト末梢血における植物性乳酸菌のin vitro免疫賦活効果、Pasken Journal 15. 21-26, 2002
【非特許文献2】赤谷薫、岸惇子、扇谷えり子、小久保あおい、藤田晢也、岸田綱太郎:第6回 腸内細菌学会(2002.05.30-31)要旨
【0006】
発明の開示
本発明は、上記の現状に鑑み、美容効果、特に美肌効果を有する組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、酒類醸造工程からの生成品より分離された乳酸菌について、その免疫調節作用を調査し、その中から選択したラクトバチルス・プランタラムおよびラクトバチルス・ブレビスに属する乳酸菌が、高い免疫調節作用を有することを既に見出している(PCT/JP2006/321723)。本発明者らは、さらにそれらの菌株について、その生理作用を検討したところ、ラクトバチルス属菌を含有する組成物を経口摂取することにより、美容効果が得られること、特に美肌を作り出すことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
具体的には、本発明者らは既に、酒類醸造工程からの生成品より分離された乳酸菌について、Th1型サイトカインのインターロイキン12(以下「IL−12」と略記する)誘導能を比較した結果、高効率で免疫調節作用を有する乳酸菌を分離できることを見出し、特にラクトバチルス・プランタラム、およびラクトバチルス・ブレビスに属する菌株が、マウスから調製した腹腔マクロファージに対してインビトロで処理した場合にIL−12の産生を上昇させること、マウス腹腔内へのインビボでの加熱菌液投与を行いTh1型サイトカインのIL−12の産生を誘導することを確認し、既に特許出願している(PCT/JP2006/321723)。上記菌株について、更なる生理作用を検討し、それら菌株をマウスに経口摂取したところ、UV照射による皮膚水分蒸散量の上昇が抑制されること、すなわちUV照射による皮膚バリア機能の損傷を抑制すること、ひいては美容または美肌効果を有することを見出した。
【0009】
さらに、健常人を対象にした臨床評価試験を実施し、上記菌株の摂取により皮膚状態の改善効果が見られることが確認した。
すなわち、本発明は、ラクトバチルス属菌を含んでなる美容組成物である。
【0010】
また、本発明は、ラクトバチルス属菌を含んでなる美肌組成物である。
本発明は、皮膚水分蒸散量の増加抑制作用、皮膚バリア機能の向上作用、皮膚水分量の維持または改善作用、皮膚皮脂量の維持または改善作用、皮膚弾力の維持または改善作用、皮膚色度の維持または改善作用からなる群から選ばれる1ないしそれ以上の作用を有する、ラクトバチルス属菌を含む美容または美肌組成物である。ここで、皮膚色度は、例えば紅斑値および/またはメラニン値である。
【0011】
本発明の一つの態様では、ラクトバチルス属菌がラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)である、美容または美肌組成物である。
本発明の一つの態様では、ラクトバチルス属菌がラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)である、美容または美肌組成物である。
【0012】
さらに本発明は、ラクトバチルス・プランタラムがラクトバチルス・プランタラムSAM2446株(FERM ABP-10438)またはラクトバチルス・ブレビスがラクトバチルス・ブレビスSAM2447株(FERM ABP-10439)である美容または美肌組成物である。
【0013】
また本発明は、ラクトバチルス属菌を含んでなる組成物を経口摂取することを含む、肌特性または機能を保持または改善する方法である。ここで、肌特性または機能の保持または改善は、例えば、皮膚からの水分の蒸散の抑制、皮膚の水分含量の維持または増加、皮膚の皮脂量の低減、皮膚弾力の維持または改善、皮膚紅斑値の上昇の抑制、またはメラニン値の上昇の抑制である。
【0014】
発明を実施するための最良の形態
1.美容または美肌組成物
本発明の美容組成物は、例えば、皮膚を含む表皮状態の全般が外観的および/あるいは機能的に好ましい状態に維持・改善される効果を有するものをいう。
本発明の美肌組成物は、例えば、皮膚水分蒸散量の増加抑制作用、皮膚バリア機能の向上作用、皮膚水分量の維持または改善作用、皮膚皮脂量の維持または改善作用、皮膚弾力の維持または改善作用、紅斑値やメラニン値等で示される皮膚色度の維持または改善作用を有するものをいう。
【0015】
即ち、本発明の組成物は、皮膚からの水分の蒸散を抑制することから、皮膚の水分含量を維持または増加することができる。また、本発明の組成物は、皮膚バリア機能の損傷を抑制することから、皮膚表皮組織の機能を正常に保ち、肌弾力の付与あるいは肌弾力を良好な状態で維持する効果をもたらすことができる。さらに、本発明の組成物は、皮膚組織の状態を良好にすることにより過剰な皮脂分泌をもたらす要因を緩和し、皮脂量を適正な方向に近づけることができる。また、本発明の組成物は、日常生活の中で皮膚のほてりや発赤を抑えることにより皮膚の紅斑値の上昇を抑制することができ、皮膚組織に存在するメラノサイトによるメラニン産生の活性化を抑えて皮膚のメラニン値上昇を抑制することができる。
【0016】
本発明の美容または美肌組成物は、ラクトバチルス属菌を含有する。
ラクトバチルス属菌は、乳酸菌の一種である。ラクトバチルス属菌の菌学的性質は、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(BERGEY'S MANUAL of Systematic Bacteriology)(第1巻1984年、第2巻1986年、第3巻1989年、第4巻1989年)に記載されている。
【0017】
本発明の美容または美肌組成物に含まれるラクトバチルス属菌は、例えば酒類製造工程の微生物含有成分に含まれるラクトバチルス属菌である。具体的には、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、またはラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)に属するラクトバチルス属菌が好ましい。
【0018】
本発明の美容または美肌組成物に含まれるラクトバチルス属菌の代表的なものとして、ラクトバチルス・プランタラムSAM2446株、およびラクトバチルス・ブレビスSAM2447株を挙げることができる。それらの菌は独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2005年10月26日付にて受領され国際寄託されており、その受託番号はそれぞれFERM BP-10438、およびFERM BP-10439である。ラクトバチルス・プランタラムSAM2446株(FERM ABP-10438)の菌学的性質を表1に、ラクトバチルス・ブレビスがラクトバチルス・ブレビスSAM2447株(FERM ABP-10439)の菌学的性質を表2に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
本発明の美容または美肌組成物に含有されるラクトバチルス属菌の含有形態としては、ラクトバチルス属菌(生菌および死菌)、ラクトバチルス属菌含有物、ラクトバチルス属菌発酵物、ラクトバチルス属菌処理物等を挙げることができる。生菌は当該ラクトバチルス属菌培養液等のラクトバチルス属菌含有物から得ることができる。死菌は、例えば、生菌に対して加熱、紫外線照射、ホルマリン処理、酵素分解などを行うことにより得ることができる。得られた生菌、死菌は、さらに磨砕や破砕等により、処理物とすることができる。
【0022】
すなわち、本発明のラクトバチルス属菌含有組成物は、ラクトバチルス属菌、当該ラクトバチルス属菌含有物、当該ラクトバチルス属菌発酵物、当該ラクトバチルス属菌処理物の少なくともいずれか1つを含有していればよい。前記ラクトバチルス属菌含有物としては、例えば、ラクトバチルス属菌懸濁液、ラクトバチルス属菌培養物(菌体、培養上清、培地成分を含む)、ラクトバチルス属菌培養液(菌培養物から固形分を除去したもの)、ラクトバチルス属菌発酵乳(ラクトバチルス属菌飲料、酸乳、ヨーグルト等)を挙げることができる。ラクトバチルス属に属する微生物の培養に用いる培地としては、ラクトバチルス属に属する微生物が生育できる培地であれば特に制限なく用いることができる。また、ラクトバチルス属菌処理物としては、例えば、磨砕物、破砕物、液状物(抽出液等)、濃縮物、ペースト化物、乾燥物(噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物、酵素処理等)、希釈物等を挙げることができる。また、ラクトバチルス・プランタラムSAM2446株、およびラクトバチルス・ブレビスSAM2447株はワイン醸造工程から分離されたものであるので、例えば、果菜類や穀類、豆類を本発明に係るラクトバチルス属菌により発酵させた発酵物を含有するものも、ラクトバチルス属菌を利用する乳酸菌含有組成物の1形態として好ましい。なお、上述のように、ラクトバチルス属菌は元来食品から分離されたものであるため、安全性は高い。
【0023】
本発明の美容または美肌組成物は、主に飲食品として利用されるが、医薬品、飼料等としても用いることができる。
飲食品に用いる場合には、公知の甘味料、酸味料、ビタミン等の各種成分と混合してユーザーの嗜好に合う製品とすることができる。例えば、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ、ガム、ヨーグルト等の乳製品、アイスクリーム、飲料、アルコール飲料、調味料、加工食品、デザート類、菓子等の形態で提供することが可能である。
【0024】
また、医薬品の場合は、主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の医薬の製剤技術分野において通常使用する公知の補助剤を用いて製剤化することができる。剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、座剤、注射剤等を挙げることができ、特に限定されるものではない。本医薬品の投与経路としては、例えば、経口投与、直腸投与、経腸投与等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0025】
飼料の場合は、例えば、ペットフード、あるいは、家畜用飼料などの原料に菌体を混合することができる。あるいは、市販の動物用飼料に添加してもよい。中でも、犬や猫、あるいはニワトリの鳥類等の食餌に好適に用いることができる。
【0026】
本発明の美容または美肌組成物において、乳酸菌菌体末の1日の摂取量は、重量として、0.00001〜1g、好ましくは0.0001〜0.2g、さらに好ましくは0.0003〜0.002gである。また、菌体数として、0.05〜5000億CFU、好ましくは0.5〜1000億CFU、さらに好ましくは1.5〜10億CFUである。
【0027】
本発明の美容または美肌組成物中の菌体の含有量は特に限定されないが、0.00001〜99.5%、特に、0.0001%〜50%程度が望ましい。
本発明の美容または美肌組成物の1日の摂取量は、特に限定されないが、1日あたりの菌株の好ましい摂取量となるように組成物を摂取することができる。
2.肌特性または機能を保持または改善する方法
ラクトバチルス属菌を含む本発明の組成物は、肌特性または機能を保持または改善する作用を有することから、その組成物を経口摂取することにより、肌特性または機能を保持または改善することができる。
【0028】
肌特性または機能の保持または改善は、皮膚からの水分の蒸散の抑制、皮膚の水分含量の維持または増加、皮膚の皮脂量の低減、皮膚弾力の維持または改善、皮膚紅斑値の上昇の抑制、またはメラニン値の上昇の抑制により得られる。
【0029】
摂取する組成物に含まれるラクトバチルス属菌は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、またはラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)に属するラクトバチルス属菌が好ましく、ラクトバチルス・プランタラムSAM2446株、およびラクトバチルス・ブレビスSAM2447株が特に好ましい。
【0030】
本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
<実施例>
実施例1 SAM2446株、SAM2447株の同定
SAM2446株の菌学的性質の検討結果を表1に、SAM2447株の菌学的性質の検討結果を表2に示した。
【0032】
これらの検討結果により、SAM2446株はラクトバチルス・プランタラムと、SAM2447株はラクトバチルス・ブレビスと推定された。ラクトバチルス・プランタラムはソルビトールの資化性のあるものと無いものの両者が知られているが、表1に示したように、SAM2446株はソルビトールの資化性を有する乳酸菌種である。また、ラクトバチルス・ブレビスはD-キシロースの資化性のあるものと無いものの両者が知られているが、表2に示したように、SAM2447株はD-キシロースの資化性を持たない乳酸菌種である。
【0033】
SAM2446株、およびSAM2447株よりDNAを抽出後、16S rRNA遺伝子領域について解読を行った。解読されたSAM2446株の16S rRNA遺伝子配列(配列番号1)は、ラクトバチルス・プランタラムJCM1149T(ATCC14917)の16S rRNA遺伝子配列と99%相同性が得られたため、ラクトバチルス・プランタラムと同定した(図1)。また、SAM2447株の16S rRNA遺伝子配列(配列番号2)は、ラクトバチルス・ブレビスJCM1059T(ATCC14869)の16S rRNA遺伝子配列と97%相同性が得られたため、ラクトバチルス・ブレビスと同定した(図2)。
【0034】
実施例2 経口摂取による、皮膚バリア機能改善作用
へアレスマウス(HOS:HR-1,8週齢,雌)に、SAM2446株、SAM2447株(死菌体)それぞれを予め1週間混餌(0.2 mg/匹/day 相当)にて自由に摂取させた(1群6匹)。その後、UVの単回照射(UV B,線量0.433 J/cm2相当)を行い、照射日を基準として−7日、0日および4日目における皮膚水分蒸散量(TEWL)を測定した。なお、UV照射後も継続して混餌にて自由に摂取させた。また、乳酸菌を摂取させない対照群(3匹)、UV照射を行わない非照射群(6匹)を設けた。
【0035】
結果を図3に示した。図3から明らかなように、SAM 2446株、SAM 2447株を経口摂取したマウスでは、対照群(control)と比較して有意に皮膚水分蒸散量(TEWL)の上昇が抑制されていた。
【0036】
以上のように、SAM2446株、SAM2447株を経口摂取したマウスにおいて、UV照射による皮膚水分蒸散量(TEWL)の上昇が抑制された。したがって、SAM2446株、SAM2447株は、UV照射による皮膚バリア機能の損傷を抑制する作用を有することが明らかとなった。
【0037】
実施例3 経口摂取による美容効果の検証試験
SAM 2446株の経口摂取による美容効果について検討する目的で、継続摂取による美容評価指標への影響を検証した。
【0038】
(1)試験対象:成人(24歳〜48歳)男女18名。
(2)試験食品:
・乳酸菌(SAM 2446株粉末)を含有するカプセルおよびプラセボ。
【0039】
・形状はハードカプセル。
・成分、含量: (数値は1日あたりの摂取量)
<乳酸菌含有品>
SAM2446株粉末(13.8mg)、マルチトール(48.1mg)、乳糖(96.2mg)、微粒二酸化ケイ素(1.9mg)
<プラセボ>
マルチトール(52.8mg)、乳糖(105.3mg)、微粒二酸化ケイ素(1.9mg)
(3)試験方法:
試験は二重盲検の並行群間比較試験の形式で実施した。被験者を乳酸菌群とプラセボ群に割り付けた。
【0040】
乳酸菌を含有するカプセルもしくはプラセボカプセルを1日あたり1個、8週間継続摂取させた。
肌状態に関する機器測定(肌水分含量(Corneometer CM825)、水分蒸散量(Tewameter TM300)、皮脂量(Sebumeter SM815)、肌弾力(Cutometer MPA580)、肌色度)を、非侵襲的な方法により、試験食品摂取開始時、2週間目、4週間目、6週間目、摂取終了時に実施した。
(4)結果:
・肌水分含量
顔(頬部)での水分含量測定結果を図4に示す。摂取4週目以降、乳酸菌群はプラセボ群よりも水分含量が高かった。
・肌色度
肌の発赤や黒化に対する影響の評価として、色度(紅斑値およびメラニン値)を測定した。図5は、顔(頬部)での紅斑値の測定結果を基に、紅斑値の変化を相対値で表した図である。図6は、顔(頬部)でのメラニン値の測定結果を基に、メラニン値の変化を相対値で表した図である。いずれもプラセボ群では微増傾向が見られたのに対し、乳酸菌群ではわずかではあるが低下傾向が見られた。
・肌弾力
結果を図7に示す。図7は、顔(頬部)での肌弾力測定結果を基に、肌弾力の変化を相対値で表した図である。摂取4週目以降、乳酸菌群はプラセボ群よりも高値であった。
・皮脂量
顔での測定結果は、乳酸菌群にて変化の認められなかった個体もあった一方、試験開始時において皮脂量の高い個体3例において、皮脂の低減効果が認められた(表3:表中の値の単位はμg/cm2)。プラセボ群では変化は認められなかった。
【0041】
【表3】

【0042】
これらの試験結果により、SAM2446株摂取による皮膚状態の改善効果が確認された。
実施例4 豆乳発酵物の製造
SAM2446株発酵菌液を、他の微生物汚染を受けないよう市販の豆乳に添加し、30℃で24時間静置して豆乳発酵物を得た。発酵は速やかに進行し、酸度上昇およびpHの低下が見られた。得られた発酵物は、従来の植物発酵品にくらべ不快な発酵臭等を示さず、官能的に優れた香味を示した。
【0043】
実施例5 乳酸菌末添加豆乳の製造
SAM2447株発酵菌液を加熱殺菌後、遠心分離(3000rpm、10分)により菌体を回収し、得られた菌体について凍結乾燥を行った。この乳酸菌菌体末を市販の豆乳に添加・攪拌し豆乳中に懸濁溶解させて得られる乳酸菌末添加豆乳は、従来の乳酸菌含有発酵食品にくらべ不快な発酵臭等を示さず、官能的にも優れた香味を示した。
【0044】
実施例6 乳酸菌含有組成物の製造
製造例1:乳酸菌を含有する医薬品
錠剤:
以下に示す方法により、乳酸菌を含有する医薬品(錠剤)を製造した。
【0045】
SAM2446株菌体末50gを、乳糖250gおよびステアリン酸マグネシウム2gとともに混合し、単発式打錠機にて打錠することにより、直径10mm、重量300mgの錠剤を製造した。
顆粒剤:
SAM2447株菌体末100gに、ステアリン酸マグネシウム0.5gを加え、圧縮、粉砕、整粒し、篩別して20〜50メッシュの顆粒剤を得た。

製造例2:乳酸菌を含有する各種飲食物
以下に示す組成にて、乳酸菌入りの、各種飲食品を製造した。
飴:
(組成) (重量部)
粉末ソルビトール 99.7
香料 0.2
SAM2446株菌体末 0.05
ソルビトールシード 0.05
全量 100.00

ゼリー(コーヒーゼリー):
(組成) (重量部)
グラニュー糖 15.0
ゼラチン 1.0
コーヒーエキス 5.0
水 78.93
SAM2447株菌体末 0.07
全量 100.00

ゼリー飲料
(組成) (重量部)
カラギーナン 0.80
こんにゃくマンナン 0.60
グラニュー糖 12
ぶどう糖 12
トレハロース 6.0
ビタミンC 2.0
クエン酸ナトリウム 0.3
乳酸Ca 0.3
香料 適量
水 66
SAM2447株菌体末 0.003
全量 100.00

ジュース:
(組成) (重量部)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
SAM2446株菌体末 0.05
香料 0.2
色素 0.1
水 83.43
全量 100.00

炭酸飲料:
(組成) (重量部)
グラニュー糖 8.0
濃縮レモン果汁 1.0
L−アスコルビン酸 0.10
クエン酸 0.09
クエン酸ナトリウム 0.05
着色料 0.05
香料 0.15
炭酸水 90.55
SAM2447株菌体末 0.01
全量 100.00

乳酸菌飲料:
(組成) (重量部)
乳固形分21%発酵乳 14.76
果糖ブドウ糖液糖 13.31
ペクチン 0.5
クエン酸 0.08
香料 0.15
水 71.14
SAM2446株菌体末 0.06
全量 100.00

乳酸菌飲料:
(組成) (重量部)
乳固形分21%のSAM2447株発酵乳 14.82
果糖ブドウ糖液糖 13.31
ペクチン 0.5
クエン酸 0.08
香料 0.15
水 71.14
全量 100.00

コーヒー飲料:
(組成) (重量部)
グラニュー糖 8.0
脱脂粉乳 5.0
カラメル 0.2
コーヒー抽出物 2.0
香料 0.1
ポリグリセリン脂肪酸エステル 0.05
食塩 0.05
水 84.56
SAM2446株菌体末 0.04
全量 100.00

アルコール飲料:
(組成) (重量部)
50容量%エタノール 32.0
砂糖 8.4
果汁 2.4
SAM2447株菌体末 0.2
精製水 57.0
全量 100.0

発泡酒:
(組成) (重量部)
発泡酒 99.98
SAM2447株菌体末 0.02
全量 100.0

製造例3:乳酸菌を含有する飼料
以下に示す組成にて、乳酸菌入りの飼料を製造した。
飼料:
(組成) (重量部)
市販ドックフード 99.98
SAM2446株菌体末 0.02
全量 100.0
発明の効果
ラクトバチルス属菌を含有する組成物を摂取することにより、UV照射による皮膚水分蒸散量(TEWL)の上昇が抑制され、さらには肌状態が改善され、美容または美肌効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、解読されたSAM2446株の16S rRNA遺伝子配列を示す。下線部は、ラクトバチルス・プランタラムJCM1149Tとの配列の相違部分を示す。
【図2】図2は、解読されたSAM2447株の16S rRNA遺伝子配列を示す。下線部は、ラクトバチルス・ブレビスJCM1059T(ATCC14869)との配列の相違部分を示す。
【図3】図3は、各群における、UV照射前後の皮膚水分蒸散量(TEWL)の測定結果を示す。
【図4】図4は、各群における顔(頬部)での水分含量測定結果を示す。
【図5】図5は、各群における顔(頬部)での紅斑値の変化を相対値で示した図である。
【図6】図6は、各群における顔(頬部)でのメラニン値の変化を相対値で示した図である。
【図7】図7は、各群における顔(頬部)での肌弾力の変化を相対値で示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス属菌を含んでなる美容組成物。
【請求項2】
ラクトバチルス属菌を含んでなる美肌組成物。
【請求項3】
皮膚水分蒸散量の増加抑制作用、皮膚バリア機能の向上作用、皮膚水分含量の維持または改善作用、皮膚皮脂量の維持または改善作用、皮膚弾力の維持または改善作用、皮膚色度の維持または改善作用からなる群から選ばれる1ないしそれ以上の作用を有することを特徴とする請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
皮膚水分蒸散量の増加抑制作用または皮膚バリア機能の向上作用を有することを特徴とする請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
皮膚色度が紅斑値および/またはメラニン値である、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
食品である、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
ラクトバチルス属菌がラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
ラクトバチルス属菌がラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)である、請求項1〜6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
ラクトバチルス・プランタラムがソルビトール資化性を有するものである、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
ラクトバチルス・ブレビスがD-キシロースの資化性を有しないものである、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
ラクトバチルス・プランタラムがラクトバチルス・プランタラムSAM2446株(FERM ABP-10438)である、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
ラクトバチルス・ブレビスがラクトバチルス・ブレビスSAM2447株(FERM ABP-10439)である、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
肌特性または機能を保持または改善する方法であって、ラクトバチルス属菌を含んでなる組成物を経口摂取することを含む、前記方法。
【請求項14】
肌特性または機能の保持または改善が、皮膚からの水分の蒸散の抑制、皮膚の水分含量の維持または増加、皮膚の皮脂量の低減、皮膚弾力の維持または改善、皮膚紅斑値の上昇の抑制、またはメラニン値の上昇の抑制である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ラクトバチルス属菌がラクトバチルス・プランタラムまたはラクトバチルス・ブレビスである、請求項13または14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179601(P2008−179601A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193894(P2007−193894)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】