説明

ラクトン光酸発生剤、これを含む樹脂およびフォトレジスト

【課題】電子デバイスの製造に有用であるラクトン含有光酸発生剤化合物(PAG)およびこのPAG化合物を含むフォトレジスト組成物の提供。
【解決手段】下記式(2)の光酸発生剤化合物:


式中、各Rは同じかもしくは異なっていて、水素もしくは非水素置換基であり;Yは連結基であり;各Rfは独立して水素、フッ素およびフルオロ(C1−C10)アルキルから選択され;Mはカチオンであり;nは0〜6の整数であり;並びに、mは1〜10の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年11月15日に出願された米国仮特許出願第61/458,015号に対する35U.S.C.119(3)の下での優先権の利益を主張し、その出願の全内容は参照によって組み込まれる。
本発明は新規のラクトンモノマーに関する。特に、本発明は、ラクトン含有光酸発生剤化合物(PAG)およびこのPAG化合物を含むフォトレジスト組成物に関する。さらに、本発明は、ラクトン繰り返し単位を含む樹脂、並びにこのラクトン樹脂を含むフォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは像を基体に転写するための感光膜である。これはネガもしくはポジの像を形成する。フォトレジストを基体上にコーティングした後で、この塗膜がパターン形成されたフォトマスクを通して活性化エネルギー源、例えば、紫外光に露光されて、フォトレジスト塗膜内に潜像を形成する。このフォトマスクは、下にある基体に転写されることが望まれる像を画定する活性化放射線に対して不透明な領域および透明な領域を有する。レジスト塗膜内の潜像パターンの現像によってレリーフ像が提供される。フォトレジストの使用は概して当業者に周知である。
【0003】
既知のフォトレジストは多くの既存の商業的用途に充分な解像度およびサイズを有するフィーチャを提供することができる。しかし、多くの他の用途のためには、サブミクロン寸法の高解像の像を提供できる新たなフォトレジストについての必要性が依然としてある。
【0004】
機能的特性の性能を向上させるために、フォトレジスト組成物の構成を変える様々な試みがなされてきた。特に、フォトレジスト組成物に使用するための様々な光活性化合物が報告されてきた。例えば、米国特許第7,304,175号および米国特許出願公開第2007/0027336号を参照。特に、制御された酸拡散およびポリマーとの向上した混和性を有するように適合した光酸発生剤(PAG)は、高解像リソグラフィによってもたらされるレジスト材料についての課題を満足させるのに非常に重要である。例えば、PAGがレジスト膜内に均一に分布しない場合には、Tトップ(T−topping)、フット形成(foot formation)およびノッチングのような特定の欠陥が生じる場合がある。PAGアニオンの構造は、他のフォトレジスト成分と光酸発生剤との相互作用に影響することによって、フォトレジストの全体的な性能に重要な役割を果たすと考えられている。この相互作用は、ひいては、光により発生した酸の拡散特性に著しい効果を有する。PAGの構造およびサイズはフォトレジスト膜内のPAGの均一な分布に大いに影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,304,175号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0027336号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特定の構造、化学的および物理的特性を有し、光酸拡散速度を向上させかつ他のフォトレジスト成分とのより良好な混和性を提供するPAGアニオンについての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン(oxa adamantan−one lactone)基を含む新規光酸発生剤化合物を提供する。好ましいオキサアダマンタン−オンラクトン基には、下記一般式(1)のものが挙げられる:
【化1】

式中、各Rは同じかもしくは異なっていて、水素もしくは非水素置換基であり、nは0〜6の整数である。
【0008】
1以上の上記オキサアダマンタン−オンラクトン基を含む光酸発生剤化合物も本発明により提供される。イオン性光酸発生剤(例えば、スルホニウム、ヨードニウムもしくは他のオニウム塩)の場合には、1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基はPAGのアニオンおよびカチオン成分の1以上に存在することができる。
本発明は1以上の上記オキサアダマンタン−オンラクトン基を含む樹脂をさらに提供する。
さらに、本発明は(a)少なくとも1種の光酸発生剤がオキサアダマンタン−オンラクトン基を含む、1種以上の光酸発生剤化合物、(b)1種以上の上記オキサアダマンタン−オンラクトン基を含む1種以上の樹脂、並びに/または(c)(a)と(b)との混合物を含むフォトレジスト組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は線状、分岐および環式アルキルを含む。用語「(メタ)アクリラート」はアクリラートおよびメタクリラートの双方を含む。同様に、用語「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを含む。以下の略語は以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;nm=ナノメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;cm=センチメートル;mJ=ミリジュール;重量%=重量パーセント;およびPAG=光酸発生剤。他に示されない限りは、全ての比率はモル比である。
【0010】
本発明の光酸発生剤化合物にはイオン性化合物および非イオン性化合物の双方が挙げられる。概して好ましいのは、オニウム化合物、例えば、スルホニウムおよびヨードニウム化合物;スルホナート化合物、例えば、N−オキシイミドスルホナート、N−オキシイミノスルホナート、フェノール系スルホナート アリールアルキルスルホナート、特にベンジルスルホナート;ジスルホン、例えば、ジアゾスルホン、およびα,α−メチレンジスルホン;およびジスルホニルヒドラジンの光活性化の際にフルオロスルホン酸、特にα,α−ジフルオロアルキルスルホン酸を発生させうる本発明のPAG化合物である。イオン性光酸発生剤化合物、特に光活性化の際にスルホン酸(−SO)を発生させるPAG化合物が好ましい。
【0011】
本発明の光酸発生剤化合物(すなわち、光酸発生剤)は1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基を含む。好ましいオキサアダマンタン−オンラクトン基には下記一般式(1)のものが挙げられる:
【化2】

式中、各Rは同じかもしくは異なっていて、水素もしくは非水素置換基であり、nは0〜6の整数である。好ましくは、各Rは水素、ヒドロキシ、シアノ、(C−C12)アルコキシ、(C−C12)カルボニルオキシ、(C−C12)アルキルもしくはフルオロ(C−C12)アルキルから選択される。より具体的には、オキサアダマンタン−オンラクトン基を含む本光酸発生剤は式(2)の4−オキサ−5−ホモアダマンタン−5−オンラクトンを有し
【化3】

式中、各Rは同じかもしくは異なっていて、水素もしくは非水素置換基であり;Yは連結基であり;各Rは独立して水素、フッ素およびフルオロ(C−C10)アルキルから選択され;Mはカチオンであり;nは0〜6の整数であり;並びに、mは1〜10の整数である。本明細書において使用される場合、フルオロアルキルは、その水素原子の1つ〜全てがフッ素で置き換えられたアルキル基を含む。各Rは好ましくは、水素、ヒドロキシ、シアノ、(C−C20)アルコキシ、(C−C20)カルボニルオキシ、(C−C20)アルキルおよびフルオロ(C−C20)アルキルから選択される。より好ましくは、各Rは、水素、ヒドロキシ、シアノ、(C−C12)アルコキシ、(C−C10)カルボニルオキシ、(C−C10)アルキルおよび(C−C12)フルオロアルキルから選択される。Yは好適な連結基であることができ、好ましくは、化学結合、−O−、およびYから選択される。Yは1〜30個の炭素原子を有する基であり、これは場合によっては、O、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。より好ましくは、Yは1〜20個の炭素原子を有する基から選択され、これは場合によっては、O、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。酸素はYのための好ましいヘテロ原子である。各Rは水素、フッ素およびフルオロ(C−C10)アルキルから選択され、より好ましくは各Rは水素、フッ素およびフルオロ(C−C)アルキルから選択され、さらにより好ましくは水素およびフッ素から選択される。好ましくは、少なくとも1つのRはフッ素もしくはフルオロ(C−C10)アルキルから選択される。好ましくは、Mはオニウムカチオンであり、より好ましくはMはスルホニウムカチオンおよびヨードニウムカチオンから選択され、最も好ましくはMはスルホニウムカチオンである。
【0012】
式(2)の化合物においては、各Rは好ましくは、水素、ヒドロキシ、シアノ、(C−C20)アルコキシ、(C−C20)カルボニルオキシ、(C−C20)アルキルおよび(C−C20)フルオロアルキルから選択される。より好ましくは、各Rは水素、ヒドロキシ、シアノ、(C−C12)アルコキシ、(C−C10)カルボニルオキシ、(C−C10)アルキルおよび(C−C12)フルオロアルキルから選択される。典型的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシエチル、エトキシプロピル、tert−ブトキシ、ネオペントキシなどが挙げられる。典型的なカルボニルオキシ基には、カルボキシル、アセトキシ、および−C(O)O−(C−C29)アルキルが挙げられる。典型的なアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオ−ペンチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチルなどが挙げられる。典型的なフルオロアルキル基には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、ペルフルオロエチル、ジフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、ペルフルオロプロピル、ジフルオロブチル、テトラフルオロブチル、ペルフルオロブチルなどが挙げられる。
【0013】
式(2)における連結基Yは好ましくは、化学結合、−O−およびYから選択される。Yは1〜30個の炭素原子を有する基であり、これは場合によってはO、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。より好ましくは、Yは1〜20個の炭素原子を有する基から選択され、これは場合によってはO、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。酸素はYのための好ましいヘテロ原子である。Yの典型的な連結基には、−C(O)O−、−C(O)−CHO−、−O−C(O)−、−O−CHC(O)−、−OCH−C(O)O−、−NH−C(O)−、−S(O)O−、−O−S(O)−、−NH−S(O)−、−(SO)−NH−、−C(O)O−CHCH−、−C(O)−CH−、−O−C(O)−CHCH−などが挙げられる。
【0014】
基として、あらゆる好適なフルオロ(C−C10)アルキルが使用されうる。Rについて上述した1〜10個の炭素を有するフルオロアルキル基がR基として好適に使用されうる。
【0015】
Mのために好適なカチオンは式(3)のスルホニウムカチオンおよび式(4)のヨードニウムカチオンである:
【化4】

式中、R〜Rはそれぞれ独立して、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)炭素環式アリール基、アリル基、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)(C−C20)アルキル基、例えば、ペルフルオロ(C−C20)アルキル基、または(C−C15)アルアルキル基、例えば、ベンジルおよびフェネチルを表し、好ましくはR〜Rの少なくとも1つは炭素環式アリール基を表し;あるいは、RおよびRは互いに結合して、これらが結合している硫黄イオンと一緒に環を形成しており、Rは置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)炭素環式アリール基、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)(C−C20)アルキル基を表し;並びに、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)炭素環式アリール基を表す。
【0016】
好ましいスルホニウムカチオンは式(3a)〜(3f)のものである:
【化5】

式中、RおよびRは式(3)について上述した通りであり;R〜Rは独立して、水素、ヒドロキシ、(C−C20)アルキル基、ハロゲン、(C−C20)アルコキシ基、アリール、チオフェノキシ、チオ(C−C20)アルコキシ基および(C−C20)アルコキシカルボニルから選択され;Rは(C−C20)アルキルであり;q=1〜10;並びに、r=1〜2である。R〜Rのそれぞれは、独立して酸不安定基(acid labile group)、塩基不安定基(base labile group)もしくは塩基可溶性基を含むことができる。
【0017】
式(3c)の特に好ましいスルホニウムカチオンは構造C1〜C6によって示され、式(3d)の特に好適なスルホニウムカチオンは構造D1およびD2によって示され、並びに式(3e)の特に好適な構造は構造E1によって示される。
【化6】

【0018】
このオキサアダマンタン−オンラクトン基が、フルオロメチレン基(−CHF−)、ジフルオロメチレン基(−CF−)、もしくはフルオロアルキル置換炭素の少なくとも1種をスルホナート(−SO−)基の隣に(すなわち、アルファすなわちα位置に)含むことがさらに好ましい。より好ましくは、本オキサアダマンタン−オンラクトン基はスルホナート(−SO−)基の隣にジフルオロメチレン基(−CF−)を含む。式(2)の特に好ましい化合物は一般式(2a)を有する:
【化7】

式中、R、Y、R、M、mおよびnは式(II)について上述した通りであり;Eは水素、フッ素もしくはフルオロ(C−C10)アルキルであり;Eはフッ素もしくはフルオロ(C−C10)アルキルであり、pは1〜6の整数である。好ましくはEはフッ素もしくはフルオロ(C−C10)アルキルであり、より好ましくはフッ素である。pは1〜4の整数であるのが好ましく、より好ましくは1〜3の整数、さらにより好ましくは1〜2の整数である。m=0〜4がさらに好ましく、より好ましくはm=0〜2である。式2aの特に好ましい化合物はE=フッ素;R=水素;Yは化学結合、−OC(O)−、−OC(O)CHO−、および−OCHC(O)O−から選択され;p=1〜2;並びに、m=0〜2である。
【0019】
特に好ましい本発明のPAGは式:
【化8】

を有するものである。
【0020】
本発明のPAGは好ましくはスキーム1に従って製造され、これは出発物質として化合物A1を使用する。
【化9】

【0021】
同様に、本発明の化合物を製造するために、構造A2もしくはA3の化合物も使用されうる。
【化10】

【0022】
これら構造A1、A2およびA3においては、Rは上述の通りであり、かつ価数によって許容される場合には複数存在することができ;Xは連結基であって、これは化学結合、(C−C12)アルキル、フルオロ(C−C12)アルキル鎖、(C−C12)アルコキシ、もしくは(C−C12)カルボニルオキシアルキルでありうる。好ましくは、各Rは水素、ヒドロキシ、シアノ、(C−C12)アルコキシ、(C−C12)カルボニルオキシ、(C−C12)アルキルおよびフルオロ(C−C12)アルキルから選択される。式(2)および(2a)の特に好ましい化合物は上記化合物A1、A2および/またはA3を経て合成されうる。構造A1、A2およびA3における連結基Xは好ましくは、化学結合、−O−、およびXから選択される。Xは1〜30個の炭素原子を有する基であり、これは場合によっては、O、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。より好ましくは、Xは1〜20個の炭素原子を有する基から選択され、これは場合によっては、O、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。酸素はXのための好ましいヘテロ原子である。典型的には、Xの連結基には、−C(O)O−、−C(O)−CHO−、−O−C(O)−、−O−CHC(O)−、−OCH−C(O)O−が挙げられる。
【0023】
好ましくは、本発明は1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基を含む重合性モノマーおよび樹脂も提供する。特に好ましいモノマーは、下記式(5a)〜(5c)によって示される。特に好ましい樹脂は、構造(6a)〜(6c)を含む繰り返し単位を有する下記樹脂によって示される。
【化11】

【0024】
上記構造(5a)〜(5c)および(6a)〜(6c)においては、Lは好適な基であることができ、好ましくは水素、メチル、フッ素もしくはトリフルオロメチルである。Rは利用可能な価数によって許容されるように1個もしくは複数個存在することができ、各Rは同じかもしくは異なる、水素もしくは非水素置換基、例えば、ヒドロキシ、シアノ、(C−C12)アルコキシ、(C−C12)カルボニルオキシ、(C−C12)アルキルもしくはフルオロ(C−C12)アルキルでありうる。Z1は少なくとも1つのメチレン単位を含むことができる架橋基である。
【0025】
このような樹脂は多くの方法によって、例えば、1以上のこのようなオキサアダマンタン−オンラクトン基を含むモノマーを重合し、それにより1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基を含む樹脂繰り返し単位を提供することにより形成されうる。このようなモノマーは1種以上の他の別のモノマーと共に重合されて、それによりコポリマー(2種の異なる繰り返し単位)、ターポリマー(3種の異なる繰り返し単位)、テトラポリマー(4種の異なる繰り返し単位)、ペンタポリマー(5種の異なる繰り返し単位)などを提供することができる。
あるいは、1以上のこのようなオキサアダマンタン−オンラクトン基を含むモノマーを重合するのではなく、あらかじめ形成された樹脂上に1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基をグラフトするように、あらかじめ形成された樹脂が反応させられてもよい。
【0026】
ポジ型フォトレジスト組成物において使用するために、好ましくは本発明の樹脂は光酸不安定基を含む。オキサアダマンタン−オンラクトン部分は、好適に、このような光酸不安定基の構成要素であることができ、例えば、光酸不安定光開裂生成物はオキサアダマンタン−オンラクトン部分を含むことができる。
【0027】
1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基を含む本樹脂の少なくともあるものは、プラズマエッチャントに対して高水準の耐性を提供しうると考えられる。1以上のオキサアダマンタン−オンラクトン基を含む本樹脂の少なくともあるものは、高解像およびより低いライン幅ラフネス(LWR)のために有利な高いガラス転移温度を提供できることも考えられる。
【0028】
本発明のある好ましい形態においては、オキサアダマンタン−オンラクトン部分を含むエステル基は、上記構造(5a)、(5b)、(5c)、(6a)、(6b)および(6c)によって例示されるように、アダマンタン−オンラクトン部分の第2級炭素に連結することができる。
【0029】
オキサアダマンタン−オンラクトン化合物およびモノマーのための前駆体の合成は、J.Am.Chem.Soc.,Vol.108、No.15.1986年、4484およびJ.Org.Chem.,1981年、46,5332−5336に開示されるものをはじめとする手順によって好適に行われうる。
【0030】
好ましくは、本発明のPAGはポジ型もしくはネガ型化学増幅型フォトレジストにおいて使用され、すなわち、ネガ型レジスト組成物は光酸促進架橋反応を受けて、レジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも低い現像剤可溶性にし、ポジ型レジスト組成物は1種以上の組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受けて、レジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも水性現像剤中でより可溶性にする。
【0031】
好ましい像形成波長はサブ(sub)−300nmであり、より好ましくはサブ−200nm、例えば、193nmおよびEUVである。他のサブ−200nm波長が好適に使用されうる。
【0032】
本発明のフォトレジストは像形成有効量の1種以上の本発明のPAGを含む。あるいは、本発明のフォトレジストはオキサアダマンタン−オンラクトン基を重合単位として含む1種以上の樹脂を含むことができる。さらなる選択肢においては、本発明のフォトレジストは像形成有効量の1種以上の本発明のPAGとオキサアダマンタン−オンラクトン基を重合単位として含む1種以上の樹脂との双方を含むことができる。
【0033】
本発明のフォトレジストは典型的には樹脂バインダー(ポリマー)、上述のようなPAG、および場合によって、1種以上の他の成分、例えば、塩基(クエンチャー)、溶媒、化学線(actinic)およびコントラスト染料(contrast dye)、抗ストリエーション剤(anti−striation agent)、可塑剤、速度向上剤、増感剤などを含む。これらフォトレジスト成分の1種より多くが使用されうる。このような任意の添加剤は、使用される場合には、典型的にはフォトレジスト組成物の全固形分を基準にして0.1〜10重量%のような少量で組成物中に存在する。好ましくは、樹脂バインダーはフォトレジスト組成物に水性アルカリ現像可能性を付与する官能基を有する。例えば、好ましいのは極性官能基、例えば、ヒドロキシルもしくはカルボキシラートを含む樹脂バインダーである。好ましくは、樹脂バインダーは樹脂組成物中に、アルカリ水溶液でレジストを現像可能にするのに充分な量で使用される。
【0034】
本発明のポジ型化学増幅型フォトレジストにおける使用に好ましい、酸不安定デブロッキング(deblocking)基を有する樹脂は、欧州特許出願公開第0829766号(アセタールを有する樹脂およびケタール樹脂)、並びに欧州特許出願公開第EP0783136号(1)スチレン;2)ヒドロキシスチレン;および3)酸不安定基、特にアクリル酸アルキル酸不安定基、例えば、アクリル酸t−ブチルもしくはメタクリル酸t−ブチルの単位を含むターポリマーおよび他のコポリマー)に開示されている。概して、酸感受性エステル、カルボナート、エーテル、イミドなどの様々な酸不安定基を有する樹脂が好適でありうる。光酸不安定基はより典型的にはポリマー骨格からペンダントでありうるが、ポリマー骨格と一体になった酸不安定基を有する樹脂も使用されうる。
【0035】
本発明のフォトレジストの好ましい像形成波長には、サブ−300nm波長、例えば、248nm、およびより好ましくはサブ−200nm波長、例えば、193nmおよびEUVが挙げられるが、他のサブ−200nm波長が使用されてもよい。
【0036】
200nmより大きな波長、例えば、248nmでの像形成のためには、フェノール系樹脂が典型的に好ましい。好ましいフェノール系樹脂はポリ(ビニルフェノール)であり、これは触媒の存在下での対応するモノマーのブロック重合、乳化重合もしくは溶液重合によって形成されうる。これらの波長での像形成に有用な特に好ましい樹脂には以下のものが挙げられる:i)ビニルフェノールおよび(メタ)アクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、ここにおいて、重合された(メタ)アクリル酸アルキル単位は光酸の存在下でデブロッキング反応を受けうる。光酸誘起デブロッキング反応を受けうる代表的な(メタ)アクリル酸アルキルには、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および光酸誘起反応を受けうる他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートが挙げられ、例えば、米国特許第6,042,997号および第5,492,793号におけるポリマーが挙げられ、これら文献は参照によって本明細書に組み込まれる:ii)ビニルフェノール、場合によって置換されている(ヒドロキシもしくはカルボキシ環置換基を含まない)ビニルフェニル(例えばスチレン)、および上記ポリマーi)で記載されたデブロッキング基を有するもののような(メタ)アクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第6,042,997号に記載されたポリマー、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる:およびiii)光酸と反応しうるアセタールもしくはケタール部分を含む繰り返し単位、および場合によってフェニルもしくはフェノール性基のような芳香族繰り返し単位を含むポリマー。
【0037】
本発明のフォトレジストの好ましい任意成分の添加剤は追加塩基、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)もしくは様々なアミドであり、これらは現像されたレジストレリーフ像の解像度を向上させることができる。追加塩基は好適には比較的少量で、例えば、PAGに対して1〜10重量パーセント、より典型的には1〜5重量パーセントで使用される。他の好ましい塩基性添加剤には、スルホン酸アンモニウム塩、例えば、p−トルエンスルホン酸ピペリジニウム、およびp−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルアンモニウム;アルキルアミン、例えば、トリプロピルアミンおよびドデシルアミン;アリールアミン、例えば、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。
【0038】
本発明のフォトレジストは典型的には溶媒を含む。好適な溶媒には、例えば、グリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート;乳酸エステル、例えば、乳酸メチルもしくは乳酸エチル;プロピオン酸エステル、特にプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、エチルエトキシプロピオナートおよびメチル−2−ヒドロキシイソブチラート;セロソルブエステル、例えば、メチルセロソルブアセタート;芳香族炭化水素、例えば、トルエンおよびキシレン;並びにケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノンが挙げられる。上述の溶媒の2種、3種もしくはそれより多種のブレンドのような溶媒のブレンドも好適である。溶媒は典型的にはフォトレジスト組成物の全重量を基準にして90〜99重量%、より典型的には95〜98重量%の量で組成物中に存在する。
【0039】
本発明のフォトレジストは概して、既知の手順に従って製造される。例えば、本発明のレジストは好適な溶媒にフォトレジストの成分を溶解させることによってコーティング組成物として製造されうる。本発明のレジストの樹脂バインダー成分は、典型的には、レジストの露光された塗膜層を、アルカリ水溶液などを用いて現像可能にするのに充分な量で使用される。より具体的には、樹脂バインダーは好適に、レジストの全固形分の50〜90重量%を構成しうる。光活性成分は、レジストの塗膜層中の潜像の形成を可能にするのに充分な量で存在すべきである。より具体的には、光活性成分は、好適には、レジストの全固形分の1〜40重量%の量で存在しうる。典型的には、より少ない量の光活性成分が化学増幅型レジストに好適であり得る。
【0040】
本発明のフォトレジスト組成物の所望の全固形分量は組成物中の具体的なポリマー、最終層厚さおよび露光波長のような要因に応じて変動しうる。典型的には、フォトレジストの固形分量はフォトレジスト組成物の全重量を基準にして1〜10重量%、より典型的には2〜5重量%で変動する。
【0041】
好ましい本発明のネガ型フォトレジスト組成物は、本発明の光活性成分、並びに酸に曝露すると硬化し、架橋しまたは固化しうる材料の混合物を含む。好ましいネガ型組成物はフェノール系もしくは非芳香族樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分および本発明の光活性成分を含む。このような組成物およびその使用は、欧州特許出願公開第0164248号および第0232972号並びに米国特許第5,128,232号(Thackerayらへの)に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するのに好ましいフェノール系樹脂にはノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)、例えば、上述のものが挙げられる。好ましい架橋剤には、アミンベースの物質、例えば、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミンベースの物質および尿素ベースの物質が挙げられる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が概して最も好ましい。このような架橋剤は市販されており、例えばメラミン樹脂はCytecにより、商品名Cymel 300、301および303で販売されている。グリコールウリル樹脂はCytecにより、Cymel 1170、1171、1172の商品名で販売されており、尿素ベースの樹脂はBeetle 60、65および80の商品名で販売されており、ベンゾグアナミン樹脂はCymel 1123および1125の商品名で販売されている。
【0042】
本発明のフォトレジストは既知の手順に従って使用されうる。本発明のフォトレジストはドライフィルムとして適用されうるが、本発明のフォトレジストは好ましくは液体コーティング組成物として基体上に適用され、加熱により乾燥させられ、好ましくは塗膜層が粘着性でなくなるまで溶媒を除去し、フォトマスクを通して活性化放射線に露光され、場合によっては露光後ベークされて、レジスト塗膜層の露光領域と未露光領域との間の溶解度差を作り出すかまたは大きくし、次いで、好ましくは水性アルカリ現像剤で現像されてレリーフ像を形成する。本発明のレジストが適用され好適に処理される基体は、マイクロエレクトロニクスウェハのような、フォトレジストを伴うプロセスに使用されるあらゆる基体であり得る。例えば、基体は、ケイ素、二酸化ケイ素、アルミニウム−酸化アルミニウムマイクロエレクトロニクスウェハでありうる。ガリウムヒ素、セラミック、石英または銅基体も使用されうる。プリント回路板基体、例えば、銅張積層板も好適な基体である。液晶ディスプレイおよび他のフラットパネルディスプレイ用途に使用される基体、例えば、ガラス基体、インジウムスズ酸化物コーティング基体なども好適に使用される。液体コーティングレジスト組成物はスピニング、ディッピング、またはローラーコーティングのようなあらゆる標準的な手段で適用されうる。
【0043】
フォトレジスト層は(存在する場合には、上塗りバリア組成物層と共に)、好ましくは活性化放射線に、液浸リソグラフィシステム(すなわち、露光ツール(特に投影レンズ)と基体をコーティングするフォトレジストとの間の空間が液浸流体、例えば、水または1種以上の添加剤、例えば、向上した屈折率の流体を提供できる硫酸セシウムと混合された水で占有されている)において露光される。好ましくは、液浸流体(例えば、水)は気泡を回避するために処理されており、例えば、水はナノバブルを回避するために脱ガスされうる。本明細書における「液浸露光」または他の類似の用語についての言及は、露光ツールと塗布されたフォトレジスト組成物層との間にあるこのような流体層(例えば、水または添加剤含有水)を用いて露光が行われることを示す。
【0044】
露光エネルギーは、感放射線システムの光活性成分を効果的に活性化して、レジスト塗膜層にパターン形成された像を生じさせるのに充分であるべきである。好適な露光エネルギーは典型的には約1〜300mJ/cmの範囲である。好適な露光波長には、サブ−300nm、例えば、248nm、もしくはサブ−200nm、例えば、193nmもしくはEUVが挙げられ、または電子ビーム、イオンビームおよびx線放射線、並びに他のイオン化放射線のような他の高エネルギー露光源も使用されうる。好適な露光後ベーク温度は50℃以上、より具体的には50〜140℃である。酸硬化性ネガ型レジストについては、望まれる場合には、現像により形成されたレリーフ像をさらに硬化させるために100〜150℃の温度で数分以上で現像後ベークが使用されうる。現像および何らかの現像後硬化の後で、現像によって露出させられた基体表面は、次いで、選択的に処理、例えば、フォトレジストが除かれた基体領域を、当該技術分野で知られている手順に従って化学エッチングまたはめっきすることができる。好適なエッチング剤には、フッ化水素酸エッチング溶液およびプラズマガスエッチング、例えば、酸素プラズマエッチングが挙げられる。
【0045】
本発明は、本発明のフォトレジストのレリーフ像を形成する方法、例えば、サブクオーターμm寸法もしくはそれ未満、例えば、サブ−0.2もしくはサブ−0.1μm寸法の高解像パターン形成されたフォトレジスト像(例えば、本質的に垂直の側壁を有するパターン形成されたライン)を形成する方法も提供する。
【0046】
本発明は、本発明のフォトレジストおよびレリーフ像が基体上にコーティングされた、マイクロエレクトロニクスウェハもしくはフラットパネルディスプレイ基体のような基体を含む製造物品をさらに提供する。
【実施例】
【0047】
実施例1:フォトレジスト製造およびリソグラフィ処理
本発明のフォトレジストは、レジスト組成物の全重量を基準にした重量パーセントで表される量で以下の成分を混合することにより製造される:
【表1】

【0048】
樹脂バインダーはメタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル/ベータ−ヒドロキシ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリラート/メタクリル酸シアノ−ノルボルニルのターポリマーである。光酸発生剤は上記スキーム1に示される化合物である。樹脂およびPAG成分は乳酸エチル溶媒中で混合される。
配合されたレジスト組成物は150mm(6インチ)シリコンウェハ上に配置された反射防止塗膜層上にスピンコートされ、真空ホットプレートにおいて130℃で、60秒間ソフトベークされる。レジスト塗膜層はフォトマスクを通した193nmで露光され、次いで露光された塗膜層は130℃で、90秒間露光後ベークされる。コーティングされたウェハは、次いで、像形成されたレジスト層を現像するために0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で処理される。
【0049】
実施例3:光酸発生剤PAG−A1の合成
光酸発生剤PAG−A1はスキーム2および以下のパラグラフに概説されるように5工程の合成によって製造された。詳細な合成プロセスは以下に示される。出発材料である2−アンチ−ヒドロキシ−4−オキサ−5−ホモアダマンタン−5−オン(1)がHelmut Duddeckら、J.Org.Chem.1981年、46,5332−5336によって発行された手順に従って製造された。
【0050】
【化12】

【0051】
100mLの塩化メチレン中の5−ブロモ−4,4,5,5−テトラフルオロペンタン酸(2)(10g、39.52mmol)の溶液に、数滴のN,N−ジメチルホルムアミド、次いで塩化オキサリル(3)(5g、39.50mmol)が添加され、反応混合物は室温で2時間攪拌された。生成物である5−ブロモ−4,4,5,5−テトラフルオロペンタノイルクロリド(4)は単離されなかった。上記反応混合物に2−アンチ−ヒドロキシ−4−オキサ−5−ホモアダマンタン−5−オン(1)(7.2g、39.51mmol)が添加され、次いで1当量のピリジンが添加された。この反応混合物が室温で16時間攪拌された。反応混合物の内容物を分離漏斗に移し、塩化メチレン溶液が100mLの1NのHCl水溶液で洗浄され、次いで水(2回×100mL)で洗浄された。有機相が分け取られ、MgSOで乾燥させられ、濾過され、減圧下で溶媒が除去されて、14gの粗生成物(5)が得られ、これはさらに精製することなく次の工程に使用された。
【0052】
化合物(6)は以下の手順を用いて製造された。14g(33.55mmol)の化合物(5)が75mLのアセトニトリル中に溶かされ、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび凝縮器、並びにNガス入口を備えた丸底フラスコにおいて、100mLの水中の亜ジチオン酸ナトリウム(12.85g)および炭酸水素ナトリウム(8.40g)の溶液に注がれた。この反応混合物は70℃で約18時間加熱され、次いで室温に冷却された。次いで水性層が除かれ、生成物(6)を含むアセトニトリル溶液(上層)が、100%変換率と仮定されて、次の工程に使用された。スルフィナート誘導体(6)のアセトニトリル溶液に50mLの水、次いで1.5当量の過酸化水素の水溶液が添加され、この反応系は室温で48時間攪拌された。次いで、塩化ナトリウム(50g)および亜硫酸ナトリウム(10g)が添加された。この混合物は2層に分かれた。上のアセトニトリル層が分け取られて、MgSOで乾燥させられ、濾過され、減圧下で溶媒が除去されて、白色ワックス状固体として生成物(7)を得た。(5)から(7)への変換についての全体の単離収率は44%であった。
【0053】
光酸発生剤PAG−A1(8)の合成は次のように達成された:50mLの塩化メチレンおよび50mLの水からなる二相系に、5g(11.33mmol)の(7)および3.9g(11.36mmol)の臭化トリフェニルスルホニウム(TPSBr)が添加され、この反応混合物は室温で18時間攪拌された。有機相が分け取られ、脱イオン水(5回×50mL)で洗浄された。分け取られた有機相は濃縮され、メチルt−ブチルエーテルに注がれ、目的の光酸発生剤であるPAG−A1(8)を得た。メチルt−ブチルエーテル中での2回目の沈殿で50%単離収率で純粋な生成物を得た。PAGのサンプルはHPLC MSを用いて純度について評価された。230nmでのUVによって検出されるカチオン純度は99.8%であり、正イオン質量分析によって検出される純度は99.4%である。負イオン液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)によって測定されるアニオン純度は100%であった。
【0054】
実施例3:
光酸発生剤PAG−A2はスキーム3および以下のパラグラフに概説されるように5工程の合成によって製造された。詳細な合成プロセスは以下に示される。
【化13】

【0055】
150mLのアセトニトリル中の2−アンチ−ヒドロキシ−4−オキサ−5−ホモアダマンタン−5−オン(1)(20g、0.1mol)および塩化2−ブロモ−2,2−ジフルオロアセチル(8)(23.34g、0.12mol)の混合物に、ピリジン(9.55g、0.12mol)が添加され、反応混合物が室温で16時間攪拌された。溶媒が完全に除去され、残っている残留物は150mLの塩化メチレンに溶解された。この塩化メチレン溶液が分離漏斗に移され、100mLの1NのHCl水溶液で洗浄され、次いで水(2回×100mL)で洗浄された。有機相が分け取られ、MgSOで乾燥させられ、濾過され、減圧下で溶媒が除去されて、36.7gの粗生成物(9)を得て、これはさらに精製することなく次の工程に使用された。次の工程において、次の手順を用いて化合物(10)が製造された。36.7g(0.1mol)の(9)が150mLのアセトニトリルに溶解され、温度計、オーバーヘッドスターラーおよび凝縮器、並びにw/Nガス入口を備えた丸底フラスコにおいて、150mLの水中の亜ジチオン酸ナトリウム(37.6g、0.215mol)および炭酸水素ナトリウム(18.0g、0.215mol)の溶液に注がれた。この反応混合物は室温で16時間攪拌された。反応混合物からのサンプルのH−NMRは予想される生成物(10)の存在を示した。この反応混合物に塩化ナトリウム(100g)が添加され、次いで水性相が除かれて、生成物(10)を含んでいたアセトニトリル溶液(上層)が、100%変換率と仮定されて、次の工程に使用された。スルフィナート誘導体(10)のアセトニトリル溶液に50mLの水、次いで過酸化水素の30%水溶液22gが添加され、この反応系は室温で48時間攪拌された。次いで、塩化ナトリウム(50g)および亜硫酸ナトリウム(10g)が添加された。この混合物は2層に分かれた。上のアセトニトリル層が分け取られて、MgSOで乾燥させられ、濾過され、減圧下で溶媒が除去されて、白色ワックス状固体として生成物(11)を得た。
【0056】
光酸発生剤PAG−A2(12)の合成は次のように達成された:75mLの塩化メチレンおよび75mLの水からなる二相系に、25g(69.0mmol)の(11)および23.6g(68.7mmol)の臭化トリフェニルスルホニウム(TPSBr)が添加され、この反応混合物は室温で18時間攪拌された。有機相が分け取られ、脱イオン水(5回×50mL)で洗浄された。分け取られた有機相は濃縮され、メチルt−ブチルエーテルに注がれ、目的の光酸発生剤であるPAG−A2(12)を得た。メチルt−ブチルエーテルを用いたアセトン溶液からの2回目の沈殿で28gの純粋生成物(収率67.5%)を生じた。H−NMR(アセトン−d6)δ:7.90(m,15H)、5.06(1H,m)、4.32(1H,m)、2.89(m,1H)、2.4−1.5(10H,コンプレックス);19F NMR(アセトン−d6):19F NMR(アセトン−d6)δ:−111.1(CFSO)。
【0057】
実施例4:酸拡散測定
酸拡散測定は二層系を使用して行われた。このプロセスフローにおいては、有機反射防止塗膜層がシリコン基体上に配置された。従来の193nmフォトレジストからなる酸検出層がこの反射防止塗膜層上に配置された。次いで、酸不活性ポリマーと検討対象の光酸発生剤とから構成される酸ソース層が酸検出層上に配置された。193nm波長のソースを用いた露光の際に、酸ソース層において光酸が発生させられる。後の加熱(露光後ベークすなわちPEB)は酸ソース層から酸検出層への酸の拡散をもたらし、酸検出層では脱保護および可溶性変換事象が起こる。後の水性塩基での現像が露光領域における膜の喪失をもたらす。PAGの拡散率Dはフィック(Fick)の拡散の法則によって定義される:
D=(ΔL/2erfcEth/E)2/tPEB
式中、ΔLは露光領域と未露光領域との間の膜厚さの差(膜喪失厚さとも称される)、tPEBはPEB時間であり、erfcは誤差関数補正(error function complement)であり、Ethは膜喪失厚さが最初に観察された露光線量であり、並びにEは露光線量である。拡散率が決定されたら、次いで次の式に従って拡散長さDLが計算されうる:
DL=2(DPEB1/2
【0058】
具体的な二層組成物、製造およびプロセス条件は以下の通りである:
酸検出層は、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(PGMEA)およびメチル2−ヒドロキシイソブチラートの50/50混合物中の酸開裂性ポリマーA1(以下に示される)(溶液の5.981%)およびクエンチャーとしてのtert−ブチル4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボキシラート(溶液の0.019%)から構成されていた。酸ソースは2−メチル−1−ブタノールおよびデカンの80/20混合物中のアクリル酸t−ブチル/メタクリル酸メチル30/70コポリマー(溶液の0.891%)およびPAG(溶液の153.40μmol/g)から構成されていた。これら上記溶液はPTFE0.2μmシリンジフィルターを用いて濾過され、そして、TEL ATC8コーターを用いて、AR商標77−840A反射防止剤(ダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能)の層でコーティングされたシリコンウェハ上にスピンコートされた。まず、酸検出層が1200Åでコーティングされ、110℃で60秒間プレベークされた。酸検出層がベーキングを終えた後で、酸ソース層が300Åでコーティングされ、そして90℃で60秒間ベークされて、二層系を形成した。この積層物は次いで、ASML 1100ステッパを用いて193nmで露光された。このウェハは110℃で60秒間もしくは120℃で60秒間の露光後ベーク(PEB)にかけられた。この工程中に、露光中に酸ソースにおいて遊離した酸は酸検出層に拡散する。PEBが完了したら、ウェハは0.26Nの水性トリメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を用いて現像される。未露光領域の膜厚さと露光領域の膜厚さとの間の差が、合計膜喪失(ΔL)を与える。この結果は表1に報告される。DL=nmで報告されるPAG拡散長さ。
【0059】
【化14】

【0060】
【表2】

【0061】
表1から認められうるように、発明サンプルのPAG−A1およびPAG−A2についての酸拡散測定は、比較PAGと比べて、著しく短い酸拡散長さを示した。これらの結果は、優れたパターン形成特性の高解像フォトレジストの製造における本発明のPAGの有用性を示す。
【0062】
実施例5:リソグラフィ評価
フォトレジスト製造:フォトレジストは表2に示される成分および比率を用いて配合された。全ての例において市販のポリマーA2が使用された。ポリマーA2はM1、M2、M3、M4およびM5のモノマーを組み込んでいるペンタポリマーである。モノマーのモル比はM1/M2/M3/M4/M5=2/2/3/2/1である。ポリマーのMwは8000であった。PAG(表を参照)、塩基(t−ブチルオキシカルボニル−4−ヒドロキシピリジン、TBOC−4HP)および表面レベリング剤(界面活性剤)PF656(Omnovaから入手可能)がそれぞれ100%固形分量を基準にした重量パーセントで以下に示されるように提供され、固形分の残部はポリマーである。これら配合物に使用される溶媒はプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(S1)およびメチル2−ヒドロキシイソブチラート(S2)である。両方の例における最終の固形分%は4重量%であった。最終配合物中の溶媒S1:S2の重量比は1:1であった。比較サンプル2および発明サンプル2についてのフォトレジスト配合組成は以下の表2に示される:
【0063】
【化15】

【0064】
【表3】

【0065】
リソグラフィ評価:
上記フォトレジストは以下のようにリソグラフィ処理された。有機反射防止コーティング(AR商標77、ダウエレクトロニックマテリアルズ)を有する200mmシリコンウェハ上にフォトレジストがスピンコートされ、100℃で60秒間ベークされて、厚さ100nmのレジスト膜を形成した。このフォトレジストは、ArF露光装置ASML−1100(ASMLにより製造)を用いて、フォーカスオフセット/ステップ0.10/0.05で、0.89/0.64のアウター/インナーシグマで、環状照明下、NA(開口数)=0.75で、90nmのライン幅および180nmのピッチを有するラインアンドスペースパターン(L/Sパターン)を目的とするマスクパターンを通してArFエキシマレーザー(193nm)で露光された。その後、100℃で60秒間、露光後ベーク(PEB)が行われ、次いで0.26Nの水性テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液で現像され、その後水洗浄が行われた。その結果、各例において、90nmのライン幅および180nmのピッチを有するL/Sパターンが形成された。日立9380CD−SEMを用いて、800ボルト(V)の加速電圧で操作し、8.0ピコアンペア(pA)のプローブ電流で、200Kx倍率を用いるトップダウン走査型電子顕微鏡検査(SEM)によって捕捉された像を処理することによって、マスクエラーファクター(Mask Error Factor;MEF)、露光許容度(Exposure Latitude;EL)が決定された。露光許容度(EL)はサイジング(sizing)エネルギーによって正規化された目標直径の±10%をプリントするための露光エネルギーの差として定義された。マスクエラーファクター(MEF)はマスクパターン上の相対的な寸法変化に対する、解像されたレジストパターンにおけるCD変化の比率として定義された。
【0066】
上記フォトレジスト配合物のリソグラフィ評価からの結果は表3に報告される。認められうるように、PAGとしてPAG−A1およびPAG−A2をそれぞれ使用する発明例4および5は、露光許容度(EL)、マスクエラーファクター(MEF)およびライン幅ラフネス(LWR)に基づいて向上したリソグラフィ性能を示した。
【0067】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の光酸発生剤化合物:
【化1】

式中、各Rは同じかもしくは異なっていて、水素もしくは非水素置換基であり;Yは連結基であり;各Rは独立して水素、フッ素およびフルオロ(C−C10)アルキルから選択され;Mはカチオンであり;nは0〜6の整数であり;並びに、mは1〜10の整数である。
【請求項2】
Yが化学結合、−O−、およびYから選択され、Yが1〜30個の炭素原子を有する基であって、これは場合によってはO、SおよびNから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、請求項1に記載の光酸発生剤。
【請求項3】
Mが下記式を有する請求項1に記載の光酸発生剤:
【化2】

式中、R〜Rはそれぞれ独立して、場合によって置換されていてよい炭素環式アリール基、アリル基、場合によって置換されていてよい(C−C20)アルキル基、または(C−C15)アルアルキル基を表し、RおよびRはこれらが結合している硫黄と一緒なって環を形成していてもよい。
【請求項4】
Mが下記式のスルホニウムカチオンから選択される請求項3に記載の光酸発生剤:
【化3】

式中、RおよびRはそれぞれ独立して、場合によって置換されていてよい炭素環式アリール基、アリル基、場合によって置換されていてよい(C−C20)アルキル基、または(C−C15)アルアルキル基を表し;R〜Rは独立して、水素、ヒドロキシ、(C−C20)アルキル基、ハロゲン、(C−C20)アルコキシ基、アリール、チオフェノキシ、チオ(C−C20)アルコキシ基および(C−C20)アルコキシカルボニルから選択され;Rは(C−C20)アルキルであり;q=1〜10;並びに、r=1〜2である。
【請求項5】
スルホナート基の隣にフルオロメチレン基もしくはジフルオロメチレン基をさらに含む、請求項1に記載の光酸発生剤。
【請求項6】
下記式を有する請求項5に記載の光酸発生剤:
【化4】

は水素、フッ素もしくはフルオロ(C−C10)アルキルであり;Eはフッ素もしくはフルオロ(C−C10)アルキルであり;並びにpは1〜6の整数である。
【請求項7】
A=フッ素;R=水素;Yが化学結合、−OC(O)−、−OC(O)CHO−、および−OCHC(O)O−から選択され;p=1〜2;並びに、m=0〜2である、請求項6に記載の光酸発生剤。
【請求項8】
以下のもの
【化5】

から選択される式を有する請求項1に記載の光酸発生剤。
【請求項9】
ポリマーおよび請求項1の光酸発生剤を含むフォトレジスト組成物。
【請求項10】
(a)請求項9のフォトレジスト組成物の塗膜層を基体上に適用し;並びに
(b)フォトレジスト塗膜層をパターン形成された活性化放射線に露光し、そして露光されたフォトレジスト層を現像してレリーフ像を提供する;
ことを含む、基体上にフォトレジストレリーフ像を形成する方法。

【公開番号】特開2012−111753(P2012−111753A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−249145(P2011−249145)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】