説明

ラサギリンのタンニン酸塩

本発明は、タンニン酸ラサギリンの組成物及びそれを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願の全体において、様々な文献、公開された特許出願、および特許が参照される。これら文献の開示の全体は、当該発明が属する技術の状況をより完全に記載するために、本明細書での参照によって本出願に援用される。
【0002】
[発明の背景]
米国特許第5,532,415, 5,387,612, 5,453,446, 5,457,133, 5,599,991, 5,744,500, 5,891,923, 5,668,181, 5,576,353, 5,519,061, 5,786,390, 6,316,504, 6,630,514号は、ラサギリンとしても知られるR(+)-N-プロパルギル-l-アミノインダン (「R-π」)を開示する。ラサギリンは、酵素モノアミンオキシダーゼのB-型(「MAO-B」)の選択的なインヒビターとして報告されており、脳においてMAO-Bを阻害することによりパーキンソン病および様々な他のコンディションを治療するために有用である。米国特許第6,126,968号およびPCT公開WO 95/11016号は、ラサギリン塩を含んでいる薬学的組成物を開示する。
【0003】
ラサギリンメシレート(Rasagiline meslylate)は、パーキンソン病を単独療法として又は他の治療との補助的療法としてのいずれかで治療するために承認された。例えば、AGILECT(R)〔Physician's Desk Reference (2006), 60th Edition, Thomson Healthcare〕を参照されたい。
【0004】
ラサギリンのタンニン酸塩(tannate salt)又はその調製方法は、当該技術分野において開示されていない。
【0005】
[発明の概要]
本発明は、タンニン酸ラサギリン(rasagiline tannate)を提供する。
【0006】
また、本発明は、タンニン酸ラサギリンを製造するための方法を提供し、概方法は以下を含む:
a) タンニン酸の溶液をラサギリン塩基と混合して第一の混合物を形成すること;
b) 前記液体の少なくとも一部を前記第一の混合物から除去すること;
c) 極性の水溶性の溶媒を前記混合物に添加して第二の混合物を形成すること;および
d) 液体を周囲温度(ambient temperature)で前記第二の混合物から完全に除去すること;
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図 1は、ラサギリンの収量および組成における水溶性媒体中のタンニン酸:ラサギリンの比の効果を示す。
【0008】
[発明の詳細な記載]
本発明は、タンニン酸ラサギリン(rasagiline tannate)を提供する。
【0009】
本発明の態様において、タンニン酸ラサギリン含有量は、28 および 44重量%の間;または34 および 44重量%の間である。重量パーセントによって、範囲内の全ての小数第一位および整数(tenth and integer)のパーセンテージが本発明の一部として具体的に開示されることを意味している。従って、28.1, 28.2 ... 43.8, 43.9; 29, 30 ... 42, 43パーセントのタンニン酸ラサギリン含有量は、本発明の態様として含まれる。
【0010】
前記態様は、さらに1498, 1602, 2133, 2852, および3285 cm-1のポイントでのピークを含んでいる赤外線スペクトル;およびカールフィッシャー分析が10重量%未満であることによって決定される塩の含水量によって特徴づけられる。重量パーセントによって、範囲内の全ての小数第一位および整数のパーセンテージが本発明の一部として具体的に開示されることを意味している。従って、0.1, 0.2 ... 9.8, 9.9; 1, 2 ... 8, 9重量パーセントの含水量は、本発明の態様として含まれる。
【0011】
また、本発明は、タンニン酸ラサギリンおよび担体を含んでいる組成物を提供する。
【0012】
態様において、組成物は、タンニン酸塩(tannate)にイオン性に結合していないラサギリン塩基がフリー(free)である。
【0013】
別の態様において、前記組成物は、タンニン酸(tannic acid)がフリーである。
【0014】
なお別の態様において、前記組成物は薬学的組成物であり、前記担体は薬学的に許容される担体である。
【0015】
なお別の態様において、薬学的組成物は、経口剤形(oral dosage form)の形態である。
【0016】
また、本発明は、タンニン酸ラサギリンを製造するための方法を提供し、概方法は以下を含む:
a) タンニン酸の溶液をラサギリン塩基と混合して第一の混合物を形成すること;
b) 前記液体の少なくとも一部を前記第一の混合物から除去すること;
c) 極性の水溶性の溶媒を前記混合物に添加して第二の混合物を形成すること;および
d) 液体を周囲温度(ambient temperature)で前記第二の混合物から完全に除去すること;
一態様において、極性の水溶性の溶媒は、エタノールである。
【0017】
別の態様において、工程 b)の液体の除去は、デカンテーションによって行われる。
【0018】
タンニン酸ラサギリンは、ラサギリンの他の塩と異なる新規の塩であり、低い水溶性を有する。この塩は、経皮性の遅延性または延長性で放出される経口の薬学的剤形を含む様々なタイプの薬学的剤形に使用しえる。これらのタイプの剤形は、患者のコンプライアンスを上げるだろう。
【0019】
活性成分のタンニン酸塩複合体は、他の塩または遊離塩基の形態と比較してより良い感覚特性(例えば、食味)を有することが見出されている。例えば、米国特許第6,869,618を参照されたい。
【0020】
[例]
メルク(Merck KGaA, 64271, Darmstadt, Germany)によって製造されたタンニン酸 (タンニン)の医薬品グレード(USP, EP)が、以下の例に使用された。
【0021】
以下の例における固形の結晶性(Solid crystalline)のラサギリン塩基は、以下のとおり調製された:
A) ラサギリン塩基油の調製
120 gのラサギリン メシレート (R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン メシレート)を、700 mlの脱イオン水に溶解した。400 mlのトルエンを添加し、混合物を25% NaOH 溶液でpH約 14の塩基性とした。撹拌後、二相が分離された。下の水相を、200mlのトルエンで抽出した。相を分離させ、水相を廃棄した。
【0022】
二つのトルエン抽出物を混合し、溶媒を減圧下で蒸留した。ラサギリン塩基の産物は、20゜C未満の融点の88.5 gの黄色の油であった。
【0023】
B) ラサギリン 塩基の結晶化
上記のとおり調製した148 gのラサギリン塩基油を、180 mlのイソプロパノールに溶解した。溶液を17゜Cに冷却し、252 mlの脱イオン水をこの温度で添加した。溶液を10゜Cに冷却し、固形のラサギリン塩基で種付け(seeded)した。直ちに結晶化が観察された。次に100 mlの水を、混合物に添加した。混合物を、1゜Cに冷やし、この温度で30 min撹拌し、濾過した。固形物を、フィルターで200 mlの水で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0024】
以下の例において、ラサギリン塩基, メシレート および タータラート(tartrate)は、水性媒体および極性および非極性の有機溶媒中でタンニン酸と反応させられた。生じる固形のタンニン酸ラサギリンを、濾過によって又は沈降させ液体層をデカンテーションすることによって反応混合物から単離した。
【0025】
例におけるタンニン酸とラサギリンとの比は1 および 4 g/gの間であり、反応温度は0゜ および 45゜Cの間であった。
【0026】
パラメータおよび実験の結果を、表 1に要約する。
【0027】
これらの実験において調製されたタンニン酸ラサギリンのサンプルを、分析に供試した。各実験のバッチにおいて、固形産物を乳鉢ですりつぶし、生じた粉末をラサギリン塩基含有量に関してHPLCで分析した。例 1 および 3-8の産物を、固形物の特徴に関する物理的な方法で分析して、ラサギリン遊離塩基 および タンニン酸の存在を決定した。
【0028】
粒子形態を粉剤の顕微鏡観察で試験し、結晶化度を粉末のX線回折(XRD)および差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)を用いて試験した。
【0029】
熱重量分析(TGA;Thermal gravimetric analysis)を、固形物における揮発性物質(残留する溶媒 および 水)の量の測定に適用した。含水量を、カール フィッシャー法(KF)で測定した。
【0030】
以下の全ての例の産物は、他に断らない限り、褐色で流動性を有する粉末として現れた。
【0031】
例 1: ラサギリン塩基(固形)およびタンニン酸溶液
0.5gのタンニン酸を20mlの水に含む溶液を調製し、0.5gの固形の結晶性ラサギリン塩基を緩徐に時々撹拌して溶液に添加し、色 および 粘性の変化を観察した。生じた懸濁液を、1 hr撹拌し、濾過し、固形物を水で洗浄した。固形物を、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0032】
収量: 0.72g
無定形のタンニン酸ラサギリン, タンニン酸, および 結晶性のラサギリン塩基の混合物を形成した。ラサギリン含有量は、51重量%であった。
【0033】
例 2: ラサギリン塩基溶液およびタンニン酸溶液。
【0034】
0.5gの固形の結晶性ラサギリン塩基を5mlのエタノールに含む溶液および0.5gのタンニン酸を20mlの水に含む溶液を調製した。エタノール溶液を撹拌している間に緩徐に水溶液に添加し、粘着性の半固形(semi-solid)の物質が沈殿した。殆どの産物はフラスコ および 撹拌機に接着し、実験の産物を廃棄した。
【0035】
例 3: デカンテーション, エタノール蒸発
1.0gのタンニン酸を20mlの水に含む溶液を調製し、0.5gの結晶性のラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。混合物を36゜Cに熱した。粘着性の半固形の物質が沈殿し、撹拌機を停止し、沈殿物を沈降させた。沈降物のうえの液をデカントし、20mlのエタノールを添加して沈降させ、混合物を撹拌した。生じた混合物を、蒸発フラスコに移し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留する固形物を、すりつぶし、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0036】
収量: 1.17g
純粋な無定形のタンニン酸ラサギリンが形成された。ラサギリン含有量は、44重量%であった。
【0037】
例 4: デカンテーション, エタノール―水の蒸発
1.5gのタンニン酸を20mlの水に含む溶液を調製し、0.5gの固形の結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。粘着性で半固形の物質が沈殿した。撹拌機を停止し、沈殿物を沈降(settle)させた。沈降物のうえの液をデカントし、10mlのエタノールを添加して沈降させた。混合物を、38゜Cに熱し、溶解するまで撹拌した。水を滴下して混合物に添加し、沈殿を観察した。生じた懸濁液を、蒸発フラスコに移し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留する固形物を、すりつぶし、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0038】
収量: 1.45g
純粋な無定形(Pure amorphous)のタンニン酸ラサギリンが形成された。ラサギリン含有量は、34重量%であった。
【0039】
例 5: デカンテーション, エタノール蒸発
0.5gの固形の結晶性のラサギリン塩基を5mlのエタノールに含む溶液および2.0gのタンニン酸を20mlの水に含む溶液を調製した。エタノール溶液を撹拌している間に緩徐に水溶液に添加し、粘着性の半固形(semi-solid)の物質が沈殿した。撹拌機を停止し、沈殿物を沈降(settle)させた。沈降物のうえの液をデカントし、10mlのエタノールを添加して沈降させた。混合物を、40゜Cに熱し、溶解するまで撹拌し、蒸発フラスコに移し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留する固形物を、すりつぶし、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0040】
収量: 1.8g
無定形のタンニン酸ラサギリンおよびタンニン酸の混合物を形成した。ラサギリン含有量は、28重量%であった。
【0041】
例 6: デカンテーション, エタノール蒸発
1.0gの結晶性のラサギリン塩基を10mlのイソプロパノールに含む溶液および4.0gのタンニン酸を40mlの水に含む溶液を調製した。イソプロパノール溶液を撹拌している間に緩徐に水溶液に添加し、粘着性の半固形(semi-solid)の物質が沈殿した。撹拌機を停止し、沈殿物が沈降された。沈降物のうえの液をデカントし、20 mlのエタノールを添加して沈降させた。混合物を、40゜Cに熱し、溶解するまで撹拌し、蒸発フラスコに移し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留する固形物を、すりつぶし、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0042】
収量: 3.06g
無定形のタンニン酸ラサギリンおよびタンニン酸の混合物を形成した。ラサギリン含有量は、29重量%であった。
【0043】
例 7: ラサギリン塩基およびタンニン酸溶液の冷却。
【0044】
2.0gのタンニン酸を30mlの水に含む溶液を調製し、0-5゜Cに冷却し、1.0gの固形の結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。混合物の色 および 粘性が変化した。生じた懸濁液を、冷却している間に30 分間撹拌し、濾過した。固形物を水で洗浄した。洗浄の間、固形物は粘着性となり、濾過速度が低下した。固形物を、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0045】
収量: 2.15g
無定形のタンニン酸ラサギリン, タンニン酸, および 結晶性のラサギリン塩基の混合物が形成された。ラサギリン含有量は、45重量%であった。
【0046】
例 8: ラサギリン塩基およびタンニン酸溶液の冷却。
【0047】
1.5gのタンニン酸を30mlの水に含む溶液を調製し、0-5゜Cに冷却し、1.0gの結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。混合物の色 および 粘性が変化した。生じた懸濁液を、冷却している間に30 分間撹拌し、濾過した。生じた固形物を水で洗浄した。固形物を、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。
【0048】
収量: 1.65g
無定形のタンニン酸ラサギリン, タンニン酸, および 結晶性のラサギリン塩基の混合物が形成された。ラサギリン含有量は、53重量%であった。
【0049】
例 9: 固形のラサギリン塩基およびタンニン酸溶液。
【0050】
0.75gのタンニン酸を30mlの水に含む溶液を調製した。0.5gの固形の結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。生じた混合物を、2時間撹拌し、濾過した。固形物を水で洗浄した。固形物を、減圧下で恒量(constant weight)まで乾燥した。この乾燥産物は、サンプル 1と称された。
【0051】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥した。その乾燥産物は、サンプル 2と称された。
【0052】
サンプル 1 - 収量 - 1.08g, ラサギリン塩基含有量47重量%。
【0053】
サンプル 2 - 収量 -0.2g, ラサギリン塩基含有量24重量%。
【0054】
例 10: 固形のラサギリン塩基およびタンニン酸溶液。
【0055】
1.0gのタンニン酸を30mlの水に含む溶液を調製し、0.5gの固形の結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。生じた混合物を、2時間撹拌し、濾過し、半固形の分画が生じた。産物を、水で洗浄し、減圧下で恒量まで乾燥した。その乾燥産物は、サンプル 1と称された。
【0056】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥し、サンプル 2と称した。
【0057】
サンプル 1 - 収量 -0.9g, ラサギリン塩基含有量53重量%。
【0058】
サンプル 2 - 収量 -0.5g, ラサギリン塩基含有量12重量%。
【0059】
例 11: 固形のラサギリン塩基およびタンニン酸溶液。
【0060】
1.0gのタンニン酸を60mlの水に含む溶液を調製した。1.0gの固形の結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。生じた混合物を、2時間撹拌し、濾過し、半固形の分画が生じた。産物を、水で洗浄し、減圧下で恒量まで乾燥した。その乾燥産物は、サンプル 1と称された。
【0061】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥し、サンプル 2と称した。
【0062】
サンプル 1 - 収量 -1.66g, ラサギリン塩基含有量64重量%。
【0063】
サンプル 2 - 収量 -0.24g, ラサギリン塩基含有量19重量%。
【0064】
例 12: 固形のラサギリン塩基およびタンニン酸溶液。
【0065】
1.25gのタンニン酸を50mlの水に含む溶液を調製し、1.0gの固形の結晶性ラサギリン塩基を撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。生じた混合物を、2時間撹拌し、濾過した。半固形の分画が生じた。産物を、水で洗浄し、減圧下で恒量まで乾燥した。その乾燥産物は、サンプル 1と称された。
【0066】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥し、サンプル 2と称した。
【0067】
サンプル 1 - 収量 -1.8g, ラサギリン塩基含有量56重量%。
【0068】
サンプル 2 - 収量 -0.3g, ラサギリン塩基含有量20重量%。
【0069】
例 13: ラサギリン メシレートおよびタンニン酸の間の反応
3.0gのタンニン酸を30mlの水に含む溶液を調製し、次に1.5gのラサギリン メシレートを撹拌している間に緩徐に溶液に添加した。固形の完全な溶解は、周囲温度(ambient temperature)で観察された。
【0070】
25% NaOH溶液の液滴が混合物に添加された。直ちに沈殿が生じた。バッチを廃棄した。
【0071】
例 14: ラサギリン タータラートおよびタンニン酸の間の反応。
【0072】
2.8gのタンニン酸を30mlの水に含む溶液を調製し、次に1.44gのラサギリン タータラートを撹拌して緩徐に溶液に添加した。油状で粘着性の産物の沈殿が観察された。バッチ(batch)を廃棄した。
【0073】
例 15: 酢酸エチル中での反応。
【0074】
0.5gの固形のラサギリン塩基, 2.0gのタンニン酸および30 mlの酢酸エチルを2 時間撹拌した。生じた懸濁液を濾過し、固形物をフィルターで酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0075】
収量: 1.7g
例 16: 酢酸エチル中での反応。
【0076】
0.5gの固形のラサギリン塩基, 2.0gのタンニン酸および30 mlの酢酸エチルを2 時間撹拌した。生じた懸濁液を濾過し、固形物を減圧下で乾燥した。
【0077】
収量: 1.7g
例 17: 酢酸エチル中での反応。
【0078】
0.5gの固形のラサギリン塩基を10 mlの酢酸エチルに含む溶液を、2.0 gのタンニン酸を30 mlの酢酸エチルに含む懸濁液に45゜Cで導入した。混合物を45゜Cで2時間撹拌し、生じた懸濁液を0-5゜Cに冷却し、濾過した。固形物を減圧下で乾燥し、サンプル 1と称した。
【0079】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥し、サンプル 2と称した。
【0080】
サンプル 1 - 収量 -0.28g, ラサギリン塩基含有量19重量%。
【0081】
サンプル 2 - 収量 -2.33g, ラサギリン塩基含有量26重量%。
【0082】
例 18: 酢酸エチル中での反応。
【0083】
0.5gの固形のラサギリン塩基, 2.0gのタンニン酸および30 mlの酢酸エチルを6 時間撹拌した。生じた懸濁液を濾過し、固形物をフィルターで酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥した。その乾燥した固形物は、サンプル 1と称された。
【0084】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥し、サンプル 2と称した。
【0085】
サンプル 1 - 収量 -1.7g, ラサギリン塩基含有量3重量%。
【0086】
サンプル 2 - 収量 -0.83g, ラサギリン塩基含有量63重量%。
【0087】
例 19: 酢酸エチル中での反応。
【0088】
0.5gの固形のラサギリン塩基および2.0gのタンニン酸を、30 mlの酢酸エチルと混合し、45゜Cに熱した。混合物を45゜Cで1.25時間撹拌し、生じた懸濁液を0-5゜Cに冷却し、濾過した。固形物を、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥し、サンプル 1と称した。
【0089】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。蒸発後の残渣を、減圧下で恒量まで乾燥し、サンプル 2と称した。
【0090】
サンプル 1 - 収量 -0.8g, ラサギリン塩基含有量9重量%。
【0091】
サンプル 2 - 収量 -1.9g, ラサギリン塩基含有量33重量%。
【0092】
例 20: ヘキサン中での反応。
【0093】
0.5 gの固形のラサギリン塩基を、50 mlのヘキサンに溶解した。1.5gのタンニン酸を、溶液に添加した。混合物を、2時間撹拌し、濾過した。固形物を、ヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥し、サンプル 1と称した。
【0094】
濾過物および洗浄物を、混合し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。固形の残渣は、無色の結晶性の物質であり、サンプル 2と称された。
【0095】
サンプル 1 - 収量 -1.46g, ラサギリン塩基含有量3重量%。
【0096】
サンプル 2 - 収量 - 0.52g, 純粋な結晶性のラサギリン塩基 (m.p. 39.0-39.3゜C)
例 20の結果は、非極性の溶媒(ヘキサン)においてラサギリン塩基がタンニン酸と実質的に反応しないことを示している。未反応の純粋なラサギリン塩基は、蒸発の間に濾過物から結晶化する。
【0097】
[結果の概要]
例の産物のラサギリン塩基含有量, 組成物, 吸湿性および含水量は、以下の表にリストされる。
【0098】
【表1】

【0099】
吸湿性を、室温で空気(相対湿度 〜 50-80%)中で閉鎖容器において一月後に決定した。
【0100】
観察されたサンプルは、これらの吸湿性の特性にしたがって以下の四群に分けることができた:
1 = 非吸湿性(non-hygroscopic), 視認できる変化は観察されない
2 = わずかに吸湿性, 凝集および塊(lumping)の発生, 流動性(flowability)の欠損
3 = 吸湿性, 半固形の物質
4 = 潮解性(deliquescent), 液状(liquefied)のシロップ様産物
サンプルの吸湿性およびタンニン酸塩サンプル中のラサギリン含有量の間に強い相関性があった。45%未満のラサギリン含有量を有するサンプルは吸湿性を示さないが、45%ラサギリン以上を有するサンプルは示す。サンプル中のラサギリン含有量が増加すると、吸湿性も増加する。
【0101】
考 察
活性な医薬品のタンニン酸塩の調製は、日常的な仕事(routine endeavor)ではない。タンニン酸塩を、作ること及び作業することは困難である。たとえタンニン酸塩を作ったとしても、各々の活性な医薬品がタンニン酸塩に作られた場合にそれ自身の独特の問題が生じ、その問題はタンニン酸塩を作ることを試みる前に容易に予測することはできない。たとえタンニン酸塩を首尾よく作ったとしても、その特性および実際の薬学的な使用は許容されないだろう。調製の特定の問題およびタンニン酸ラサギリンの特性は、以下で議論される。
【0102】
タンニン酸ラサギリンの特徴および収量
示されたデータは、ラサギリンに対して高比率のタンニン酸が高収量のタンニン酸ラサギリンを提供することを実証している。また、タンニン酸ラサギリンの収量が単離技術によって影響されることは明らかである。水性または水性/アルコールの媒体中に濾過で調製されたバッチは、デカンテーションおよび蒸発で調製されたバッチと比較して、より低い収量であった。濾過バッチの収量は1.44 - 2.15 g/g ラサギリンの範囲内であり、デカンテーションバッチは2.24 - 3.6 g/g ラサギリンの収量を有する。この現象を説明しえる理由を、以下に記載する:
濾過を使用して固形物を母液から分離する場合、全ての母液は沈殿物から分離される。デカンテーションが使用される場合、溶解した物質を有する幾つかの液には沈殿物が残る。蒸発の間に溶解した物質は、固形物として沈殿し、収量が増加する。
【0103】
例15-20は、非極性の有機溶媒におけるタンニン酸ラサギリンの調製が可能ではないことを示している。酢酸エチルにおいて及びヘキサンにおいて行われる反応の産物は、固形産物において低いラサギリン含有量を有している。実験17 - 20は、大抵のラサギリンが濾過物に残ることを実証している。これらの実験において濾過で収集される固形の産物は、僅か3 - 19%のラサギリンを含む。酢酸エチル中で低い温度で行われた実験15, 16 および 18は、高収量の固形の産物を示した(ラサギリン および タンニン酸の間の不完全な反応の結果可能である)。
【0104】
例 20において明らかなとおり、ヘキサン中のラサギリン塩基 および タンニン酸の間の反応は、ヘキサン中のラサギリン塩基の溶解性にもかかわらず生じない。固形産物は僅か3%のラサギリンを含み、実際には全てのラサギリン塩基は反応液中に残る。同時に、濾過した液は、タンニン酸を含まなかった。
【0105】
不完全な反応の類似する現象は、水性媒体で行われた実験において見出された。低い温度で行われた反応(実験1, 7 および 8)は、無定形のタンニン酸ラサギリン, タンニン酸および未反応の結晶性ラサギリン塩基の混合物を生じた。フリーの結晶性ラサギリン塩基は、XRD および FTIR技術でこれらのタンニン酸ラサギリンのサンプルにおいて検出された。また、これらのサンプルのDSC 分析は、ラサギリン塩基の40゜Cでの融解に関連する特徴的な吸熱ピークを示した。
【0106】
例3-6からのタンニン酸ラサギリンの無定形サンプルは、フリーのラサギリン塩基を含まない。例1, 5, 6 および 7からのサンプルは、DSCで決定され、フリーのタンニン酸に関連する小さいピークを含んでいた。例 8からのサンプルは、僅か少量のフリーのタンニン酸を含んでいた。例3 および 4からのサンプルは、検出可能な量のタンニン酸またはフリーのラサギリン塩基を含まなかった。これらの二つのサンプル(実験3 および 4)は、遊離酸 および 遊離塩基を含まない純粋なタンニン酸ラサギリンを表す。
【0107】
タンニン酸ラサギリンは、顕微鏡下で不規則な固形の粒子として現れる。物質は可変性の組成物の無定形の固形であるので、固溶体(solid solution), 封入複合体(inclusion complex)または任意の他の型の物理的な混合物でありえる。タンニン酸ラサギリンは、XRDで無定形の塩であると決定された。
【0108】
例 3からのタンニン酸, 固形のラサギリン塩基および純粋なタンニン酸ラサギリンのFTIRスペクトルが比較された。比較は、表 2に要約される。
【0109】
【表2】

【0110】
N.A.: 入手不可能(not available)
RT: タンニン酸ラサギリン
TA: タンニン酸
TGA: 熱重量分析
KF: カールフィッシャー分析
【0111】
Perkin Elmer Spectrum One FT-IR Spectrometer S/N 58001が使用された。サンプルを、ドリフトモードで試験した。全てのスペクトルを、16スキャンで測定した。解像度は、4.0 cm-1であった。
【0112】
スペクトルによって、検出可能な量のラサギリン塩基およびタンニン酸を含まないタンニン酸ラサギリンのサンプルはIRスペクトルに有意差を有していることが実証されている。1498, 1602, 2133, 2852 および 3285 cm-1でのピークは、タンニン酸ラサギリンの特徴であることが見出された。
【0113】
FTIRの結果は、実験3 および 4で純粋なタンニン酸ラサギリンが生じたことを示している(というのも、タンニン酸またはラサギリン塩基に関連するピークが固形物中に検出されないからである)。この所見はXRD および DSCの結果と一致し、これらの実験はラサギリンの純粋な無定形なタンニン酸塩が提供されることを明解に証明している。
【0114】
タンニン酸ラサギリンの組成物
タンニン酸ラサギリンにおけるアミン塩基 および タンニン酸の間に定常(constant)な化学量論比は存在しない。水性媒体中に調製されたタンニン酸塩において、ラサギリン塩基の含有量は28 および 64重量%の間で変動する。この事実はタンニン酸の化学的な性質によって説明できるだろう: 薬学的グレードのタンニン酸は、僅かの(三またはそれ以上)タイプのフェノール性質の酸性官能基を含んでいるタンニンの複合混合物である。これらの酸性基は、異なる pKa 値を有し、不溶性のタンニン酸塩を形成しているアミン塩基と反応することができる。フェノール類基(phenolic groups)の部分とアミン塩基とをタンニン酸に対して低い比の塩基で反応させることによって、不溶性のタンニン酸塩の沈殿を生じる。従って、沈殿工程で異なる酸と塩基との比率によって、異なる組成のタンニン酸塩の沈殿を生じる。
【0115】
異なる組成のタンニン酸塩は、上記のように異なる吸湿特性を有する。タンニン酸における酸性基のラサギリン塩基での完全な置換によって、吸湿性の産物の形成が生じる。表 1に示される経験的なデータによって、45重量%以上のラサギリン塩基を有しているタンニン酸ラサギリンが吸湿性であることが実証される。塩中で塩基が高い含有量であることによって、高吸湿性の固形物が生じる。
【0116】
図 1に示されるグラフによって、タンニン酸ラサギリンの収量および組成におけるタンニン酸 および ラサギリン塩基の間の比率の効果が実証される。
【0117】
高いタンニン酸 対 ラサギリンの比率は、水性媒体中で沈殿するタンニン酸ラサギリンが多量〔質量の収率(mass yield)〕であることの原因であることをデータは示している。同時に、タンニン酸塩中のラサギリン塩基の含有量は、塩が塩基に対して高いタンニン酸比率で形成された場合に低い。
【0118】
図 1は、表 1に示される実験1 - 12の結果に基づいている。異なるタンニン酸ラサギリンを単離する方法がこれらの実験に適用されたにもかかわらず、タンニンとラサギリンとの比およびタンニン酸ラサギリンの組成および収量の間に良好な相関が見出された(R2 > 0.88)。この所見によって、沈殿工程でタンニンと塩基の比率を変動させることによってタンニン酸塩DS 組成の制御が提供される。
【0119】
結 論
新規の塩(タンニン酸ラサギリン)が、調製され、特徴づけられ、薬学的な開発のための実用性(practical)が見出された。タンニン酸ラサギリンが可変性の組成の無定形の塩であることが証明された。
【0120】
タンニン酸ラサギリンを反応混合物から単離する二つの方法が評価された。両方の方法(デカンテーションおよび濾過)が、可能であることが見出された。しかしながら、デカンテーション法によって、高収量のタンニン酸ラサギリンが提供された。
【0121】
タンニン酸ラサギリンの吸湿性におけるラサギリン塩基とタンニン酸との比の効果が達成された。45%以上のラサギリン塩基を含んでいるタンニン酸ラサギリンが吸湿性であり、高い含有量の塩基によって高い吸湿性のタンニン酸塩が提供されることが見出された。
【0122】
遊離ラサギリン塩基および遊離タンニン酸の存在が発見され、タンニン酸ラサギリンの幾つかのサンプルにおいて特徴が調べられた。例3 および 4において、固形のラサギリン塩基およびタンニン酸がフリーの塩を調製することが可能なことが示されている。
【0123】
タンニン酸ラサギリンの組成は可変性であり、それは反応物比(reactant ratio)および単離条件に依存するので、至適なタンニン酸ラサギリンにおけるラサギリン含有量が28 および 44%の間で達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニン酸ラサギリン。
【請求項2】
ラサギリン含有量が28 および 44重量%の間である、請求項 1に記載のタンニン酸ラサギリン。
【請求項3】
ラサギリン含有量が34 および 44重量%の間である、請求項 1に記載のタンニン酸ラサギリン。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のタンニン酸ラサギリンであって、1498, 1602, 2133, 2852 および 3285 cm-1のポイントでピークを含んでいる赤外線スペクトルを特徴とするタンニン酸ラサギリン。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のタンニン酸ラサギリンであって、カールフィッシャー分析によって決定される塩の含水量が10重量%未満であるタンニン酸ラサギリン。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のタンニン酸ラサギリンおよび担体を含んでいる組成物。
【請求項7】
タンニン酸塩(tannate)にイオン性に結合していないラサギリン塩基がフリー(free)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
タンニン酸(tannic acid)がフリーである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が薬学的組成物であり、前記担体が薬学的に許容される担体である、請求項6〜8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
経口剤形の形態の請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
タンニン酸ラサギリンを製造するための方法であって、以下を備える方法:
a. タンニン酸の溶液をラサギリン塩基と混合して第一の混合物を形成すること;
b. 前記液体の少なくとも一部を前記第一の混合物から除去すること;
c. 極性の水溶性の溶媒を前記混合物に添加して第二の混合物を形成すること;および
d. 液体を周囲温度(ambient temperature)で前記第二の混合物から完全に除去すること。
【請求項12】
前記極性の水溶性の溶媒がエタノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法であって、工程 b)の液体の除去はデカンテーションによって行われる方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513280(P2010−513280A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541379(P2009−541379)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025516
【国際公開番号】WO2008/076315
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】