説明

ラサギリン成分を含有する固体組成物

本発明は、少なくとも1種の薬学的に適合性の賦形剤成分と、活性成分としてラサギリンまたは薬学的に適合性のその塩とを含有する固体組成物に関する。本発明はさらに、前記固体組成物の製造方法と前記固体組成物を含む薬剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、活性成分としてラサギリンまたは薬学的に許容されるその塩とを含有する固体組成物に関する。また、本発明は、この固体組成物の製造方法並びにこの固体組成物を含有する調合薬に関する。
【0002】
ラサギリン、N−プロパルギル−1−アミノインダンのR(+)−エナンチオマーは活性成分として知られており、特にパーキンソン病、痴呆およびアルツハイマー病の治療に用いられる。たとえば、米国特許第5,532,415号はラサギリンおよびこの化合物の種々の塩の製造、並びに多くの疾患、たとえばパーキンソン病、記憶障害、痴呆、うつ病、統合失調症、活動亢進等の治療のための活性成分の使用を開示している。ラサギリンの塩を製造する他の方法は WO 2002/068376 に開示されている。
【0003】
EP-A-0 436 492 に単一化合物としてラサギリンが記載されており、一般にラサギリンと薬学的に許容されるその酸付加塩、具体的にはラサギリンの塩酸塩および酒石酸塩を開示している。ラサギリンの別の塩、すなわちスルファート、ホスファート、メシラート、マレアート、エシラート、アセタート、フマラート、ヒドロブロミド、トシラートおよびベンゾアートが WO 95/11016 に記載されている。ラサギリンの別の酸付加塩が WO 2008/019871 に記載されている。
【0004】
しばしば微細にすり砕いた活性成分を粉末として種々の賦形剤と混合して医薬製剤にし、任意に造粒後、加圧して錠剤を形成する。この目的のため、第1に、活性成分の物理的形態、すなわち多形形態またはアモルファス形態が薬物の貯蔵中に変化しないことが重要である。第2に、活性成分を、用いられる賦形剤と十分に混合することができ、さらに処理できることが重要である。特に、少量の活性成分を扱う場合に、たとえば混合物から製造される錠剤が常に同量の活性成分を含むことを確実にするために、用いる多量の賦形剤の中での均一な分布が必要である。
【0005】
WO 2008/131961 は用いる活性成分であるラサギリンの物理的形態の安定性の問題に関する。この特許は薬学的に許容される水溶性有機活性成分に加えてアモルファス形態にあるラサギリンの薬学的に許容される塩を含む吸着質を開示している。吸着質は、活性成分と賦形剤との溶液を噴霧乾燥することにより調製される。このように、活性成分は賦形剤粒子に吸着するので、活性成分と賦形剤の別々の相がある。
【0006】
WO 2006/091657 は、賦形剤混合物中での活性成分粒子の均一分布の問題に関する。90体積%を超える活性成分の粒子が250μm 未満の大きさであるようにラサギリンの薬学的に許容される塩をすり潰すことにより、賦形剤混合物中での活性成分粒子の特に均一な分布が達成されている。しかしながら、このように微粉化させた活性成分粒子は、すり潰しおよびさらなる処理において静電荷蓄積および凝集体の形成が起こりうるという不都合を有する。さらに、微粉化させた活性成分は低い流動性を有し、さらなる処理において問題をもたらしうる。
【0007】
従って、医薬製剤中での均一分布を容易かつ確実に生じうるように、容易に調製でき、さらに処理することができる活性成分ラサギリンの形態についての要求がまだある。このことはラサギリンのような少量の活性成分に関して特に重要である。
【0008】
すなわち、本発明の1つの目的は、最新技術の不都合をもたない形態にある活性成分ラサギリンを得ることである。特に、任意に別の賦形剤と共にこの形態を処理して調合薬を製造し、それにより調合薬中での活性成分の均一分布、すなわち活性成分含量の均一性を確実にすることが容易であることが望ましい。さらに、最終的な調合薬中の活性成分形状が、特に貯蔵中物理的に安定であることが望ましい。
【0009】
今や、活性成分ラサギリンおよび薬学的に許容されるその塩を、薬学的に許容される賦形剤と共に処理して、賦形剤および活性成分が、非結晶の形態にある活性成分を含有する均一混合物の状態で存在する固体組成物を作ることができることがわかっている。むしろ、ここでは活性成分および賦形剤は、これらを分子レベルで混合させた固溶体の形態で存在する。
【0010】
従って本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、活性成分としてラサギリンまたは薬学的に許容されるその塩とを含有する固体組成物に関し、前記賦形剤と前記活性成分とが、均一な、分子状に分散した混合物の状態で存在することを特徴とする。
【0011】
この場合における均一混合物とは、賦形剤に入っている活性成分の固溶体であると理解される。すなわち、この固体組成物は1つの相のみを有し、溶解した活性成分は賦形剤中に均一分布の状態で存在する。従って均一混合物は純粋な賦形剤の相または純粋な活性剤の相をほとんど含まない。むしろ賦形剤と活性成分とは分子レベルで互いに混合されているので、賦形剤と活性成分との間の相境界を、視覚的にもまたは他の物理的方法でも観察することができない。従って、本発明による固体組成物中において活性成分は結晶形態またはアモルファス形態のいずれでも存在しない。むしろ活性成分は賦形剤の分子間に分子レベルで分布する。従って、たとえばX線粉末回折によっても、またはサンプルのプレスした錠剤を調製して、これらの錠剤の滑らかな表面上で共焦点マッピングできるようにする共焦点ラマン分光法のような分光法によっても、活性成分をもはや検知することができない。このマッピングは10μm×10mg の範囲で行う。これらの測定のため、NT-MDT(NTEGRA Spektra Nanofinder)社のラマン分光計(Δx,Δyの最高横方向分解能<400nm、垂直分解能Δz<700nm、レーザー励起488nm(Arレーザー),632.8nm(HeNeレーザー))。PMT(光電子増倍管)を検出器として用いる。
【0012】
対応する固体組成物を製造するにあたり、時には賦形剤中での活性成分の十分な溶解が困難であるかもしれない。従って、本発明は、少量の溶解していない活性成分粒子をも含有するような固体組成物も含む。このような少量の溶解していない粒子は、本発明による組成物の有利な性質を妨げない。しかしながら、活性成分の総量の15wt%未満、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt%未満、特により好ましくは1wt%未満が、固体組成物中で粒子の形態で存在することが望ましい。本発明による組成物は特に好ましくはどのような活性成分粒子も含まず、特に活性成分と賦形剤との間に生じる相境界のため、たとえば光学顕微鏡により視覚的に観察することができる活性成分粒子を全く含まない。本発明による固体組成物は十分に均一であり、視覚的に調べたときにどのような識別できる相境界もないように見えることが望ましい。
【0013】
本発明による固体組成物のおかげで、活性成分は賦形剤中に均一に分布し、つまり「予備希釈」されている。得られる組成物を直接またはたとえば別の賦形剤と共に調合薬に容易に処理することができる。特に、本発明による組成物は、複雑な微粒子化を必要とすることなく、他の賦形剤との均一な混合を可能にする。さらに活性成分の予備希釈のおかげで、それから製造される医薬製剤中での均一分布、したがってこれらの製剤の活性成分含量の均一性が保証される。このことは、たとえば、わずかに1mg のラサギリンを含有する200mgの錠剤の製造を容易にする。本発明による組成物の他の利点は、賦形剤中での活性成分の分子状に分散した分布が、活性成分の溶解を速めることである。このことは、たとえば、水にやや溶けにくいか、または少なくとも水溶性が低いラサギリン塩、たとえば例としてラサギリン酒石酸塩を用いる場合に重要であろう。
【0014】
本発明による固体組成物中の活性成分の量は、特に限定されない。むしろそれは、第1に所望の希釈効果に、第2に選択された賦形剤への活性成分の溶解性に依存する。たとえば、本発明による組成物は、賦形剤と活性成分との総重量に基づいて、遊離塩基として計算して、0.5wt%ないし25wt%の活性成分を含有することができる。好ましい実施形態において、本発明による組成物は、賦形剤と活性成分との総重量に基づいて、遊離塩基として計算して、5wt%ないし15wt%の活性成分を含有する。
【0015】
ラサギリンまたは選択した薬学的に許容されるその塩と、均一な、分子状に分散した混合物を作ることができるあらゆる薬学的に許容される賦形剤が、賦形剤として選択されるであろう。したがって、賦形剤は活性成分を所望の濃度で溶解させることができる必要がある。適切な賦形剤は、たとえば、ポリマー、コポリマー、糖、オリゴ糖、多糖および糖アルコールを含む。以下の賦形剤が特に適切であることがわかっている:ショ糖、ソルビトール、キシリトール、オイドラギット、ポリエチレングリコール(PEG,たとえばPEG4000またはPEG20000)、ポリオキシエチレングリコールモノステアラート、グリセロールポリエチレングリコールリシノレアート、マクロゴールグリセロールステアラート(たとえば、Gelucire)、グリセロールパルミトールステアラート(たとえば、Precirol)、マクロゴールグリセロールラウラート(たとえば、Gelucire 50)、ポリエチレングリコールセチルステアリルエーテル(たとえば、Cremophor A25)、グリセロールモノステアラート(たとえば、Imwitor)、ポリビニルピロリドン(PVP、たとえばPVP30またはKollidon VA64)、メタクリラート、セルロースエーテル等のセルロース誘導体(たとえば、Methocel K4M CR Premium)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC,たとえば HPC HF)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC,たとえば HPMC615)、およびコポビドン(ビニルアセタートおよびビニルピロリドンによる)等のコポリマー、またはプルロニック(Pluronic)、たとえば、Pluronic F68、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー。
【0016】
本発明による組成物は1種の賦形剤または2種以上の賦形剤の混合物を含有していてもよい。
【0017】
本発明による固体組成物は、賦形剤と活性成分とを均一で、分子状に分散した混合物を生じるように混合することによって調製することができる。たとえば、対応する混合を賦形剤と活性成分との共溶融(combined melt)で、好ましくは溶融押出により行ってもよい。あるいは、賦形剤と活性成分とを溶媒に溶解させることにより混合した後、溶媒を蒸発させるという選択肢もある。溶媒を蒸発させる際に、賦形剤と活性成分とが同時に沈殿するのでなく、むしろ所望の均一な、分子状に分散した混合物を作ることを確実にすることが重要である。たとえば噴霧乾燥によるこの蒸発はあまり適切でない。というのも、その場合には活性成分がアモルファス形態で、すなわち別の相で吸着している賦形剤粒子が形成されうるためである。溶液からの賦形剤と活性成分との別々の沈殿を防ぐために、蒸発工程をたとえば少なくとも24時間、好ましくは24時間ないし150時間、たとえば特に72時間ないし120時間の長い時間に亘ってゆっくりと行ってもよい。
【0018】
活性成分と賦形剤との両方を溶解することができるあらゆる溶媒を溶媒として用いることができる。たとえば、水または水とエタノールの混合物、例として約20体積%ないし30体積%のエタノール水溶液が適している。さらに溶液を、たとえば、有機酸または無機酸、例として塩酸、酢酸、ギ酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸およびサリチル酸により酸性化してもよい。塩酸およびクエン酸、特にクエン酸が好ましい酸である。
【0019】
あるいは、たとえば不活性賦形剤粒子、いわゆるノンパレル(nonpareil)上に溶液を噴霧することもできる。たとえば流動床造粒機で噴霧を行ってもよい。賦形剤粒子上に溶液を噴霧することによって、賦形剤と活性成分とは一緒に溶液から、均一な、分子状に分散した混合物として沈殿する。
【0020】
本発明による固体組成物を、当業者が調合薬、特に固形剤を作るために熟知している従来の方法によりさらに処理してもよい。これは好ましくはカプセル、錠剤、口腔内崩壊錠、遅延放出錠、ペレットまたは顆粒である。この目的に一般的に用いられる賦形剤との直接圧縮によって製造される錠剤が好ましい。
【0021】
本発明による固体組成物を含有する調合薬は、特に、(存在しうるあらゆるコーティングを除いた)調合薬の全重量にそれぞれ基づいて、0.2重量%ないし20重量%の活性成分、40重量%ないし95重量%の1種以上の充填剤、0重量%ないし30重量%の1種以上の崩壊剤および0重量%ないし5重量%の1種以上の滑剤を含有する錠剤の形態にある。相当する調合薬は優れた含量均一性を有し、これは特に直接圧縮を用いた錠剤では、特に<5重量%の低い活性成分含量においては通常達成することができない。
【0022】
本発明をより詳細に以下の例により説明するが、これらの例に直接限定することはない。
【0023】
例1
10g の遊離塩基に基づくラサギリン酒石酸塩を、100g のポリマーまたは糖アルコールとペトリ皿で混合し、加熱オーブン内において150℃で溶融するまで(約1時間)加熱した。生成物を(均一性について)視覚的に、すなわち光学顕微鏡および肉眼で、並びにHPLC(活性成分含量と不純物)で分析した。ソルビトール、PEG 4000、グリセロールパルミトールステアラート(Precirol)、マクロゴールグリセロールラウラート(Gelucire 50)、PEGセチルステアリルエーテル(Cremophor A25)、およびグリセリルモノステアラート(Imwitor)が特に適切な溶媒であることがわかった。これらの賦形剤を用いて調製した溶融物は、40℃および75%大気湿度における4週間の貯蔵後に(視覚的におよびHPLCにより)安定であることもわかった。
【0024】
例2
50g の遊離塩基に基づくラサギリン酒石酸塩を500g のPEGと、自由落下ミキサー(free-fall mixer)(Turbula TB10)中で15分間混合し、二軸押出機(Leistritz Micro 18)に押出した。その後、複数の加熱可能なシリンダーを、スクリューに沿う20℃から65℃までの昇温に対して個々に調整した。得られた押出物を室温にまで冷やしてすり潰し、800ないし1000μm の平均サイズを有する粒子を作った。
【0025】
例3
100g の遊離塩基に基づくラサギリン酒石酸塩を500g のGelucireと、自由落下ミキサー(Turbula TB10)中で15分間混合して、二軸押出機(Leistritz Micro 18)に押出した。その後、複数の加熱可能なシリンダーを、スクリューに沿う25℃から100℃までの昇温に対して個々に調整した。
【0026】
例4
賦形剤およびラサギリン(酒石酸塩として)を、10:1の重量比でペトリ皿またはガラスビーカーで混合した。この固体の混合物に精製水を加えた後、全混合物をマグネチックスラーラーにより、固体が十分に溶解するまで(約2時間)撹拌した。続いて、溶液を真空オーブンにおいて30℃および0.1bar で72時間乾燥させた。生成物を(均一性について)視覚的に、すなわち光学顕微鏡によりおよび肉眼で検査し、並びにHPLC(活性成分含量と不純物)により分析した。ここではソルビトールが特に適切な賦形剤であることがわかった。ソルビトールを用いて調製した固溶体は、40℃および75%大気湿度における4週間の貯蔵後に(視覚的におよびHPLCにより)安定であることがわかった。
【0027】
例5
賦形剤およびラサギリン(酒石酸塩として)を、10:1および/または2:1の重量比でペトリ皿またはガラスビーカーで混合した。この固体の混合物に30%(体積パーセント)のエタノール水溶液を加えた後、全混合物をマグネチックスラーラーにより、固体が十分に溶解するまで(約2時間)撹拌した。続いて、溶液を真空オーブンにおいて40℃および0.1barで120時間乾燥させた。生成物を(均一性について)視覚的に、すなわち光学顕微鏡によりおよび肉眼で検査し、並びにHPLC(活性成分含量と不純物)により分析した。2:1の重量比でPVP 30,HPMC 615 および Kollidon VA 64、10:1の重量比でPEG 20000,HPC HF および Pluronic F68、並びに両方の重量比でMethocel K4M CR Premium および PEG 4000が特に適切な賦形剤であることがわかった。各重量比でこれら賦形剤を用いて調製した固溶体は40℃および75%大気湿度における4週間の貯蔵後に(視覚的におよびHPLCにより)安定であることがわかった。
【0028】
例6
賦形剤およびラサギリン(酒石酸塩として)を、10:1および/または2:1の重量比でペトリ皿またはガラスビーカーで混合した。この固体の混合物に30%(体積パーセント)のエタノール水溶液を加え、0.1mol/リットルのHCl(100mL の溶媒に対して0.5mL)で酸性化した後、全混合物をマグネチックスラーラーにより、固体が十分に溶解するまで(約2時間)撹拌した。続いて、溶液を真空オーブンにおいて40℃および0.1bar で120時間乾燥させた。生成物を(均一性について)視覚的に、すなわち光学顕微鏡によりおよび肉眼で検査し、並びにHPLC(活性成分含量と不純物)により分析した。特に適切な賦形剤は、重量比に拘らず、ソルビトール、PVP 30、HPMC 615、PEG 4000、PEG 20000、HPC HF および Pluronic F68であることがわかった。それぞれの重量比でこれら賦形剤を用いて調製した固溶体は、40℃および75%大気湿度における4週間の貯蔵後に(視覚的におよびHPLCにより)安定であることがわかった。
【0029】
例7
10g の遊離塩基に基づくラサギリン酒石酸塩を20g のソルビトールと共に、200mL の30%(vol%)エタノール水溶液と混合した。1mL の0.1モルの塩酸溶液を加えた後、この混合物をマグネチックスターラーにより3時間撹拌した。得られた透明な溶液を、流動床造粒機(Glatt GPCG 3.1,入口温度70℃,出口温度45℃,噴霧圧1.6bar,噴霧速度約1.5g/min)中で500μm の直径を有する300g のノンパレルに噴霧した。
【0030】
例8
5g の遊離塩基に基づくラサギリン酒石酸塩を50g のHPMCと共に、500mLの20%(vol%)エタノール水溶液と混合した。1mL の0.1モルの塩酸溶液を加えた後、この混合物をマグネチックスターラーにより3時間撹拌した。得られた透明な溶液を、流動床造粒機(Glatt GPCG 3.1,入口温度70℃,出口温度45℃,噴霧圧1.6bar,噴霧速度約1.5g/min)中で400ないし500μm の直径を有するノンパレルに噴霧した。
【0031】
例9
1g の遊離塩基に基づくラサギリン酒石酸塩を2gのPluronic F68と共に、100mL の水と混合し、マグネチックスターラーにより3時間撹拌した。得られた透明な溶液を、流動床造粒機(Glatt GPCG 3.1,入口温度70℃,出口温度45℃,噴霧圧1.6bar,噴霧速度約1.5g/min)中で500ないし600μm の直径を有するノンパレルに噴霧した。
【0032】
例10
例2による72.05g のラサギリン酒石酸塩と500g のPEG 400 の押出物を以下の温度設定を用いて押出機で調製した:シリンダー1:55℃,シリンダー2:60℃,シリンダー3:63℃,シリンダー4:60℃,シリンダー5:55℃,出口ノズル55℃,生成物温度55℃。押出物のサンプルをアルミニウムバッグ中の密閉HDPEビンに結合させて、40℃および75%大気湿度で貯蔵した。貯蔵前、並びに4週間、8週間および12週間の貯蔵時間後のサンプル(n=3)を分析した。視覚的評価に加えて、含水率をカールフィッシャー(KF)に従って測定し、ラサギリン含量と不純物の量とをHPLCにより測定した。
【表1】

【0033】
例11
以下の組成の錠剤を例10による押出物を用いて製した:
【表2】

【0034】
マンニトール、コーンスターチおよびアルファ化コーンスターチ(pregelatinized cornstarch)をガラス容器に量り入れ、23rpmで T10B 撹拌ミキサーにより20分間混合した後、500μm メッシュの篩いを通して篩い分けした。ステアリン酸、タルクおよび Aerosil を250μm メッシュの篩いを通して篩い分けし、他の賦形剤と共に5分間混合した。押出物を加えた後、全バッチをさらに7分間混合した。ハンドプレスおよび約4kN ないし 8kN の押圧を用いて、この混合物から錠剤をプレスした。
【0035】
得られた錠剤をアルミニウムバッグ中の密閉HDPEビンに結合させて、25℃および60%相対湿度で貯蔵した。貯蔵前と3ヶ月の貯蔵後に、サンプル(n=2)を分析した。視覚的評価に加えて、含水率をカールフィッシャー(KF)に従って測定し、ラサギリン含量と不純物の量とをHPLCにより測定した。
【表3】

【0036】
例12
以下の組成の錠剤を、例10による押出物を用いて調製した。
【表4】

【0037】
Avicel とアルファ化コーンスターチとをガラス容器に量り入れ、Turbula T10B 撹拌ミキサーを用いて23rpm で20分間混合した後、500μm メッシュの篩いを通して篩い分けした。ステアリン酸Mg、クエン酸および Aerosil を250μm メッシュの篩いを通して篩い分けし、他の賦形剤と共に5分間混合した。押出物を加えた後、全バッチを7分間さらに混合した。ハンドプレスおよび約4kN ないし 8kN の押圧を用いて、この混合物から錠剤をプレスした。
【0038】
得られた錠剤をアルミニウムバッグ中の密閉HDPEビンに結合させて、25℃および60%大気湿度で貯蔵した。貯蔵前と3ヶ月の貯蔵後に、サンプル(n=2)を分析した。視覚的評価に加えて、含水率をカールフィッシャー(KF)に従って測定し、ラサギリン含量と不純物の量とをHPLCにより測定した。
【表5】

【0039】
例13
ラサギリン酒石酸塩(3g)を、6g のPVP 30、1.5g のクエン酸および300mL の水と共にガラスビーカー中に入れ、マグネチックスターラーにより十分に溶解するまで撹拌した。得られた透明な溶液を、流動床造粒機(Innojet Ventilus,入口温度40℃,出口温度30℃,噴霧圧1.7bar,噴霧速度約1g/min)中で300μm の直径を有する200g のノンパレルに噴霧した。これらのペレットのサンプルをアルミニウムバッグ中の密閉HDPEビンに結合させて、30℃および65%大気湿度で貯蔵した。貯蔵前と12週間の貯蔵時間後に、サンプル(n=3)を分析した。視覚的評価に加えて、含水率をカールフィッシャー(KF)に従って測定し、ラサギリン含量と不純物の量とをHPLCにより測定した。
【表6】

【0040】
例14
PEG 4000(6g)を200mL の水と共にガラスビーカー中に入れ、マグネチックスターラーにより十分に溶解するまで撹拌した。続いて8g のクエン酸を加えることにより、pHを1〜2の値に調節した。次に3g のラサギリン酒石酸塩を加え、固形物が十分に溶解するまで撹拌を続けた。得られた透明な溶液を、流動床造粒機(Innojet Ventilus,入口温度42℃,出口温度29℃ないし33℃,噴霧圧1.7bar,噴霧速度約1g/min)中で300μm の直径を有する300gのノンパレルに噴霧した。これらのペレットのサンプルをアルミニウムバッグ中の密閉HDPEビンに結合させて、30℃および65%大気湿度で貯蔵した。貯蔵前と12週間の貯蔵時間後に、サンプル(n=3)を分析した。視覚的評価に加えて、含水率をカールフィッシャー(KF)に従って測定し、ラサギリン含量と不純物の量とをHPLCにより測定した。
【表7】

【0041】
例15
ソルビトール(6g)を200mL の水と共にガラスビーカー中に入れ、マグネチックスターラーにより十分に溶解するまで撹拌した。続いて8g のクエン酸を加えることにより、pHを1〜2の値に調節した。次に3g のラサギリン酒石酸塩を加え、固形物が十分に溶解するまで撹拌を続けた。得られた透明な溶液を、流動床造粒機(Innojet Ventilus,入口温度63℃ないし70℃,出口温度34℃ないし50℃,噴霧圧2bar,噴霧速度約1g/min)中で300μm の直径を有する300g のノンパレルに噴霧した。これらペレットのサンプルをアルミニウムバッグ中の密閉HDPEビンに結合させて、30℃および65%大気湿度で貯蔵した。貯蔵前と12週間の貯蔵時間後に、サンプル(n=3)を分析した。視覚的評価に加えて、含水率をカールフィッシャー(KF)に従って測定し、ラサギリン含量と不純物の量とをHPLCにより測定した。
【表8】

【0042】
例16
以下の組成の錠剤を、例13によるペレットを用いて調製した:
【表9】

【0043】
Avicel,Macrogol および Kollidon CL を600μm メッシュの篩いを通して篩い分けし、ガラス容器に入れた。PRUV を300μm の篩いを通して篩い分けし前記混合物に加えた。秤量したペレットを加え、自由落下ミキサー(Turbula T10B)を用いて全混合物を15分間混合した。偏心プレスを用いてこの混合物をプレスし、それぞれ210mg の重量の錠剤を作った。
【0044】
例17
例13によるペレットを用いて、以下の組成の錠剤を調製した:
【表10】

【0045】
Avicel および Ac-Di-Sol を600μm の手動篩いを通過させ、ガラス容器に入れた。PRUV を300μm の篩いを通して篩い分けし前記混合物に加えた。秤量したペレットを加え、全混合物を自由落下ミキサー(Turbula T10B)により15分間混合した。続いてこの混合物を偏心プレスによりプレスし、210mg の重量の錠剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、活性成分としてラサギリンまたは薬学的に許容されるその塩とを含有する固体組成物であって、前記賦形剤と前記活性成分とが、均一な、分子状に分散した混合物の状態で存在することを特徴とする固体組成物。
【請求項2】
その総量に基づき、15wt%未満、好ましくは5wt%未満の前記活性成分が粒子の形態で存在している請求項1に記載の固体組成物。
【請求項3】
前記賦形剤および前記活性成分の全重量に基づいて、遊離塩基として計算して0.5wt%ないし20wt%の前記活性成分を含有する請求項1および2のいずれか1項に記載の固体組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容される賦形剤がポリマー、コポリマー、糖、オリゴ糖、多糖および糖アルコールから成る群から選択される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体組成物。
【請求項5】
前記薬学的に許容される賦形剤がショ糖、ソルビトール、キシリトール、オイドラギット、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールモノステアラート、グリセロールポリエチレングリコールリシノレアート、マクロゴールグリセロールステアラート、グリセロールパルミトールステアラート、マクロゴールグリセロールラウラート、ポリエチレングリコールセチルステアリルエーテル、グリセロールモノステアラート、ポリビニルピロリドンメタクリラート、セルロース誘導体およびコポビドンから成る群から選択される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固体組成物。
【請求項6】
賦形剤と活性成分とを混合して、均一な、分子状に分散した混合物を作ることを含む請求項1から5のいずれか1項に記載の固体組成物を製造する方法。
【請求項7】
賦形剤と活性成分との共溶融(combined melt)で前記混合を行う請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合を溶融押出により行う請求項7に記載の方法。
【請求項9】
賦形剤と活性成分とを溶媒中に溶解させることにより前記混合を行った後、前記溶媒を蒸発させる請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の方法により得られる固体組成物。
【請求項11】
請求項1ないし5または10のいずれか1項に記載の固体組成物を含有する調合薬。
【請求項12】
カプセル、錠剤、口腔内崩壊錠、遅延放出錠、ペレットまたは顆粒である請求項11に記載の調合薬。

【公表番号】特表2012−512840(P2012−512840A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541468(P2011−541468)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067508
【国際公開番号】WO2010/070090
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(509350608)ラティオファーム ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】