説明

ラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具

【課題】 ヘッドランプと車体側との組み付け時における作業性を向上できるラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具の提供。
【解決手段】 フロントエンドモジュールとしてのラジエータコアサポート1にヘッドランプ20を仮保持させるためのラジエータコアサポート1のヘッドランプ仮保持用治具10であって、ラジエータコアサポート1を車体側に組み付ける際に、ヘッドランプ20が車体側との組み付け位置よりも車両前方側に位置するようにヘッドランプ仮保持用治具10がヘッドランプ20を仮保持することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体側の組付け工程の簡略化と組付け作業の自動化などを図るために、ラジエータコアサポートにヘッドランプユニットやバンパーフェイシャーなどを仮組みしてフロントエンドモジュールを構成し、このフロントエンドモジュールを車体側の組立ラインで車体側前部に組み付けている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003−220970号公報
【特許文献2】特開2004−203288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ラジエータコアサポートに仮組みされたヘッドランプは車体側との組み付けの際にその後方でバルブと配線を接続したり、メインハーネスを配設する必要があり、作業者はヘッドランプと車体側との狭い隙間に手を入れて作業しなければならず、作業性が悪いという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ヘッドランプと車体側との組み付け時における作業性を向上できるラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、フロントエンドモジュールとしてのラジエータコアサポートにヘッドランプを仮保持させるためのラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具であって、前記ラジエータコアサポートを車体側に組み付ける際に、ヘッドランプが車体側との組み付け位置よりも車両前方側に位置するようにヘッドランプ仮保持用治具がヘッドランプを仮保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、フロントエンドモジュールとしてのラジエータコアサポートにヘッドランプを仮保持させるためのラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具であって、前記ラジエータコアサポートを車体側に組み付ける際に、ヘッドランプが車体側との組み付け位置よりも車両前方側に位置するようにヘッドランプ仮保持用治具がヘッドランプを仮保持するため、ヘッドランプと車体側との組み付け時における作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1のラジエータコアサポート、ヘッドランプ仮保持用治具、ヘッドランプを示す分解斜視図、図2は本実施例1のラジエータコアサポートの正面図、図3は同斜視図、図4は本実施例1のヘッドランプ仮保持用治具の斜視図、図5は本実施例1のヘッドランプとヘッドランプ仮保持用治具の分解斜視図(a)と、同斜視図(b)である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1の発明では、ラジエータコアサポート1と、ヘッドランプ仮保持用治具10と、ヘッドランプ20が備えられている。
【0010】
図2、3に示すように、ラジエータコアサポート1は、車幅方向に延びるラジエータコアサポートアッパ2と、このラジエータコアサポートアッパ2と並行するラジエータコアサポートロア3と、ラジエータコアサポートアッパ2とラジエータコアサポートロア3の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド4,4と、ラジエータコアサポートアッパ2とラジエータコアサポートロア3の中央部同士を結合するフードロックステイ5が備えられ、ラジエータコアサポートアッパ2の中央部に設けられたフードロックプレートP1,P2以外は全て樹脂製となっている。
【0011】
ラジエータコアサポートアッパ2、ラジエータコアサポートロア3、ラジエータコアサポートサイド4,4、フードロックステイ5の内側にはファンシュラウド部6,6が設けられている。
【0012】
また、ラジエータコアサポートアッパ2の左右両端部には、前方側から熱交換器(図示を省略)の対応する車両搭載ピンを図外のブラケット及びインシュレータを介して固定するための固定部B1が形成される一方、ラジエータコアサポートロア3の左右両端部には、熱交換器の対応する車両搭載ピンをインシュレータを介して固定するための固定部B2が形成されている。
さらに、ファンシュラウド6,6には、後方側から図外のファンを臨んだ状態で配置するためのファン開口部O1,O1が形成されている。
【0013】
そして、ラジエータコアサポート1は、上記熱交換器やファンの他、ラジエータコアサポートサイド4,4にそれぞれ後述するヘッドランプ仮保持用治具10を介してヘッドランプ20が仮固定され、フロントエンドモジュールとして構成される。
【0014】
以下、ラジエータコアサポートサイド4,4にそれぞれ仮固定されるヘッドランプ仮保持用治具10及びヘッドランプ20は左右対称であるため、ここでは図1中右側のラジエータコアサポートサイド4に仮固定されるヘッドランプ仮保持用治具10及びヘッドランプ20についてのみ詳述する。
【0015】
図4に示すように、ヘッドランプ仮保持用治具10は、それぞれ前後方向に延設された延設部11a,11bが左右方向に連結されたような形状を成して樹脂製で一体的に形成されている。
ヘッドランプ仮保持用治具10は樹脂製に限らず、全体を金属製、または一部を金属製として樹脂モールドさせても良い。
【0016】
延設部11aの上面には、一対の爪部12a,12bを有して上方へ突設された支持部12が設けられると共に、この支持部12に近接して案内溝13が形成されている。
案内溝13は上方に開口したコ字状断面を成して斜め後方へ延設された直線部13aと、この直線部13aから後方へ延設された直線部13bで構成されると共に、この直線部13bの底部13cの前端部は直線部13aの底部13dと段差を有して低く形成される一方、後端部は後方へ切欠開口されている。
【0017】
延設部11bの上面には、略コ字状断面を有して上方へ突設された支持部15が設けられると共に、該コ字状断面の内側には突部15aが形成されている。
また、支持部15に近接して案内溝16が形成されている。
案内溝16は上方に開口したコ字状断面を成して斜め後方へ延設された直線部16aと、この直線部16aから後方へ延設された直線部16bで構成されると共に、この直線部16bの底部16cの前端部は直線部16aの底部16dと段差を有して低く形成される一方、後端部は後方へ切欠開口されている。
【0018】
延設部11aの車幅方向内側の側面には、固定孔17aを有して車幅方向内側へ突設された固定部17が設けられる一方、延設部11bの後方側の側面には、車幅方向外側へ向けて立ち上げられた押圧部18aを有して上方へ突設されたアーム部18が設けられている。
さらに、延設部11aの底部には下方に開口した円弧状の切欠溝19aを有して下方へ突設された固定部19が設けられている。
【0019】
図5(a)に示すように、ヘッドランプ20は、アウタレンズ20aとハウジング20bで囲まれた内部に図外のハイビームランプ灯室と、ロービームランプ灯室と、ターンシグナルランプ灯室等が備えられると共に、これら各室には図外のバルブ等が収容されている。
また、ヘッドランプ20の後面には、上記バルブ等と電気的に接続された図外のコネクタが設けられている。
【0020】
また、ハウジング20bには、ヘッドランプ仮保持用治具10の支持部12の爪部12a,12bと対応する位置に係止孔21aを有する係止部21と、支持部15の突部15aと対応する位置に係止孔22aを有する係止部22と、各案内溝13,16の直線部13a,16aの前端部とそれぞれ対応する位置に略円盤状の当接部23a,24aを有する摺動部23,24がそれぞれ所定の長さを有して下方へ突出した状態で設けられている。
【0021】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポートサイド1、ヘッドランプ仮保持用治具10、ヘッドランプ20を仮固定する際には、先ず、図5(a)、(b)に示すように、ヘッドランプ20の係止部21の係止孔21aにヘッドランプ仮保持用治具10の支持部12の爪部12a,12bを挿入係止する一方、ヘッドランプ20の係止部22をヘッドランプ仮保持用治具10の支持部15の略コ字状断面の内側に挿入して係止孔22aに突部15aを嵌合させることにより、ヘッドランプ20とヘッドランプ仮保持用治具10を仮固定する。
【0022】
この際、ヘッドランプ20の摺動部23,24の当接部23a,24aがそれぞれ対応する案内溝13,16の直線部13a,16aの前端部に上方から挿入された状態となる。
【0023】
従って、ヘッドランプ20とヘッドランプ仮保持用治具20とをボルトなどの締結部材を用いることなく容易に仮固定することができる。
【0024】
次に、図1に示すように、ヘッドランプ仮保持用治具10の固定部19の切欠溝19aをラジエータコアサポートサイド4のピン4a(図2、3参照)に上方から係止させた状態として、ヘッドランプ仮保持用治具10の固定部17の固定孔17aとラジエータコアサポートサイド4の固定孔4b(図2、3参照)を合致させてここに図外の締結部材を挿通して固定することにより、ヘッドランプ仮保持用治具10とラジエータコアサポートサイド1を仮固定する。
【0025】
次に、ラジエータコアサポート1にヘッドランプ20以外の熱交換器やファンなどの周辺部材を固定した状態としてフロントエンドモジュールを構成した後、車両の組立ラインへ搬送する。
【0026】
次に、ラジエータコアサポートサイド1を前方側から車体側に組み付ける。
この際、ヘッドランプ仮保持用治具10のアーム部18の押圧部18aが車体側のフェンダーを外側へ押し拡げた状態とし、ヘッドランプ20の後方側で該ヘッドランプ20のコネクタと車体側のコネクタを接続したり、メインハーネスを配設する。
【0027】
ここで、従来の発明にあっては、ヘッドランプが車体側との組み付け位置に配置されることとなるため、作業者はヘッドランプと車体側との狭い隙間に手を入れて上記作業しなければならず、作業性が悪いという問題点があった
これに対し、本実施例1では、ヘッドランプ20がヘッドランプ仮保持用治具に仮保持されることにより、車体側との組み付け位置よりも前方側に配置され、これによってヘッドランプ20と車体側との間に作業空間を形成でき、上記作業を容易に行うことができる。
【0028】
次に、ヘッドランプ20を少し持ち上げてヘッドランプ仮保持用治具10との仮固定を解いた後、各摺動部23,24の当接部23a,24aを案内溝13,16の直線部13a,16aに摺動させながら後方へスライド移動させ、当接部23a,24aをそれぞれ対応する直線部13b,16bの底部13d,16dの前端部に落下させて配置することにより、ヘッドランプ20を所定位置に配置する。
この際、ヘッドランプ20の上記直線部13a,16aの移動軌跡でもって該ヘッドランプ20と周辺部材との接触を回避できる。
【0029】
次に、ヘッドランプ20の係止部21の係止孔21a及び係止部22の係止孔22aと、それぞれ対応する図外の車体側の設けられた係止孔を合致させてここに締結部材を挿通して固定することにより、ヘッドランプ20と車体側を固定する。
この際、当接部23a,24aをそれぞれ対応する直線部13b,16bの底部13d,16dの前端部に落下させて配置することにより、ヘッドランプ20を所定位置に配置でき、作業者は容易にヘッドランプ20を位置決めした状態で車体側に固定できる。
【0030】
次に、ヘッドランプ仮保持用治具10を前方側へ移動させて取り外すことによりフロントエンドモジュールと車体側との組み付けを終了する。
【0031】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1のラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具10にあっては、フロントエンドモジュールとしてのラジエータコアサポート1にヘッドランプ20を仮保持させるためのラジエータコアサポート1のヘッドランプ仮保持用治具10であって、ラジエータコアサポート1を車体側に組み付ける際に、ヘッドランプ20が車体側との組み付け位置よりも車両前方側に位置するようにヘッドランプ仮保持用治具10がヘッドランプ20を仮保持するため、ヘッドランプ20と車体側との組み付け時における作業性を向上できる。
【0032】
また、ヘッドランプ20に設けられた当接部23a,24aをヘッドランプ仮保持用治具10に設けられた案内溝13,16に摺動させてヘッドランプ20を所定の移動軌跡で車両後方側へ移動可能としたため、ヘッドランプ20を車体側へ所定の移動軌跡で移動させることでヘッドランプ20と周辺部材との接触を回避できる他、ヘッドランプ20を車体側に対して位置決めした状態で容易に組み付け可能となる。
【0033】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、当接部、案内溝の断面形状を含む形状、形成数等は適宜設定でき、例えば、図6に示すように案内溝13(16)の上部に係止壁30,30を設けて、当接部23a(24a)が後方へスライド移動している最中に上方へ離脱するのを防止しても良い。
なお、この際、ヘッドランプ20を少し持ち上げてヘッドランプ仮保持用治具10との仮固定を解くために、案内溝13(16)の直線部13a(16a)の前端部において係止壁30,30と当接部23a(24a)との間に隙間W1を設けておく。
【0034】
また、ラジエータコアサポート、ヘッドランプ仮保持用治具、ヘッドランプの固定点の位置や数、固定構造については適宜設定できる。
また、案内溝13(16)をヘッドランプ20側に設け、当接部23a(24a)をヘッドランプ仮保持用治具10側に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1のラジエータコアサポート、ヘッドランプ仮保持用治具、ヘッドランプを示す分解斜視図である。
【図2】本実施例1のラジエータコアサポートの正面図である。
【図3】本実施例1のラジエータコアサポートの斜視図である。
【図4】本実施例1のヘッドランプ仮保持用治具の斜視図である。
【図5】本実施例1のヘッドランプとヘッドランプ仮保持用治具の分解斜視図(a)と、同斜視図(b)である。
【図6】その他の実施例の案内溝の断面形状を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
B1、B2 固定部
O1 ファン開口部
P1、P2 フードロックプレート
1 ラジエータコアサポート
2 ラジエータコアサポートアッパ
3 ラジエータコアサポートロア
4 ラジエータコアサポートサイド
4a ピン
4b 固定孔
5 フードロックステイ
6 ファンシュラウド部
10 ヘッドランプ仮保持用治具
11a、11b 延設部
12 支持部
12a、12b 爪部
13、16 案内溝
13a、13b、16a、16b 直線部
13c、13d、16c、16d 底部
15 支持部
15a 突部
17 固定部
17a 固定孔
18 アーム部
18a 押圧部
19 固定部
19a 切欠溝
20 ヘッドランプ
20a アウタレンズ
20b ハウジング
21、22 係止部
21a、22a 係止孔
23、24 摺動部
23a、24a 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントエンドモジュールとしてのラジエータコアサポートにヘッドランプを仮保持させるためのラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具であって、
前記ラジエータコアサポートを車体側に組み付ける際に、ヘッドランプが車体側との組み付け位置よりも車両前方側に位置するようにヘッドランプ仮保持用治具がヘッドランプを仮保持することを特徴とするラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具。
【請求項2】
請求項1記載のラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具において、
前記ヘッドランプ仮保持用治具またはヘッドランプの一方側に設けられた当接部を他方側に設けられた案内溝に摺動させてヘッドランプを所定の移動軌跡で車両後方側へ移動可能としたことを特徴とするラジエータコアサポートのヘッドランプ仮保持用治具。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−7038(P2008−7038A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181764(P2006−181764)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】