説明

ラジエータコアサポート

【課題】 エンジンフードやシール部材の耐久性を向上できるラジエータコアサポートの提供。
【解決手段】 自動車のラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートアッパ4の上面がエンジンフード26の下面に設けられたシール部材27と密着した状態で配置されるラジエータコアサポート1において、ラジエータコアサポートアッパ4の上面に下方へ凹設され、且つ、車両後方側に縦壁24を有して車両前方側へ切欠開口された排水構25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータコアサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンルームに搭載される熱交換器を固定支持するラジエータコアサポートの技術が公知となっている(特許文献1〜3参照)。
また、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパの上面は、車幅方向に亘ってエンジンフードの下面に設けられたシール部材と密着した状態で配置されており、これにより、車両前方からエンジンルーム内への車両走行風、水、塵等の異物の浸入を防止したり、エンジンルーム内から熱交換器の前面への熱気の吹き返しを防止している。
【特許文献1】特開2007−126020号公報
【特許文献2】特開2002−21528号公報
【特許文献3】特開2003−95011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、ラジエータコアサポートの上面に水溜まりが発生して、シール部材やエンジンフードの耐久性が低下する虞があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ラジエータコアサポートの上面に水溜まりが発生するのを防止できるラジエータコアサポートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、自動車のラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパの上面がエンジンフードの下面に設けられたシール部材と密着した状態で配置されるラジエータコアサポートにおいて、上記ラジエータコアサポートアッパの上面に下方へ凹設され、且つ、車両後方側に縦壁を有して車両前方側へ切欠開口された排水溝を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、ラジエータコアサポートアッパの上面に下方へ凹設され、且つ、車両後方側に縦壁を有して車両前方側へ切欠開口された排水溝を設けている。
これにより、ラジエータコアサポートの上面の水を排水溝で車両前方側へ排出でき、シール部材やエンジンフードの耐久性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
なお、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
図1は実施例1のラジエータコアサポートを示す前方斜視図、図2は実施例1のラジエータコアサポート本体の斜視図、図3は実施例1の要部拡大斜視図、図4は図3のS4−S4線における断面図、図5は実施例1のラジエータコアサポートの周辺部材を含む前方斜視図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、実施例1のラジエータコアサポート1は、樹脂製部分のラジエータコアサポート本体2と金属製部分のフードロックステイ部材3とから構成されている。
【0010】
ラジエータコアサポート本体2は、左右に延設されたラジエータコアサポートアッパ4と、ラジエータコアサポートアッパ4の下方に並行するラジエータコアサポートロア5と、ラジエータコアサポートアッパ4とラジエータコアサポートロア5の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド6,6と、これらラジエータコアサポートアッパ4、ラジエータコアサポートロア5、ラジエータコアサポートサイド6,6から内側に張り出して円形状の開口部7a,7aを形成するシュラウド部7等が備えられている。
【0011】
ラジエータコアサポートアッパ4の上面には、後述する排水構25が左右方向に沿って複数形成される他、その中央部前面には2箇所の固定孔4aが形成されている。
【0012】
各ラジエータコアサポートサイド6の上端部には上下方向に開口された3箇所の固定孔6aがそれぞれ形成されている。
また、各ラジエータコアサポートサイド6の中途部には、図示しないヘッドランプを固定するためのヘッドランプステイ8がそれぞれ外側に突設されている。
さらに、各ラジエータコアサポートサイド6の中途部には、前後方向に開口された4箇所の固定孔9aを有するサイドメンバ取付部9が設けられている。
【0013】
ラジエータコアサポートロア5の左右上面には、図示しない公知の熱交換器(特許文献2参照)の左右下端を固定するための固定孔5a(図1参照)が上下方向に開口された状態でそれぞれ形成される共に、この熱交換器の後方には、開口部7a,7aを臨んだ状態で図示しない2連のファンが設けられる。
また、ラジエータコアサポートロア5の中央部前面には、固定孔5bが設けられている。
なお、ラジエータコアサポート本体2は金属製としても良く、あるいは一部を金属製にして樹脂モールドさせても良い。
【0014】
図1に示すように、フードロックステイ部材3は、全体が略T字状に形成される他、上下方向に略柱状に延設されたフードロックセンタ10の下端はラジエータコアサポートロア5の固定孔5bに図示しないボルトで固定される一方、その上端は該フードロックセンタ10の一部でもある略L字型に屈折した平板状のセンタアッパ部11に図示しない溶接で固定されている。
センタアッパ部11は、ラジエータコアサポートアッパ4の固定孔4aに図示しないボルトで固定される他、その両端部には左右方向に略平板状に延設されたフードロックステイサイド12,12の基端部がそれぞれ図示をしない溶接で固定されている。
各フードロックステイサイド12の先端部は、それぞれ対応するラジエータコアサポートサイド6の固定孔6aに図示しないボルトで固定されている。
【0015】
また、各フードロックステイサイド12の中途部は、それぞれ近接するサイドメンバ取付部9に向かって延設された略パイプ状のフードロックステイブラケット13の一端部が結合されている。
【0016】
なお、ラジエータコアサポート1と車体との組み付け時において、図5に示すように、フードロックステイブラケット13の他端部はサイドメンバ取付部9の4つの固定孔9aのうちの上方の2つに挿通し固定される図示しないボルトにより、バンパアーマチュア15の屈折した両端部後面に結合されたバンパステイ16と車体のそれぞれ対応する図示しないサイドメンバに締結される。
また、各サイドメンバ取付部9の下方の2つの固定孔9aにも図示しないボルトが挿通されることより、バンパステイ16とサイドメンバとが共に締結される。
【0017】
さらに、フードロックステイ部材3の各フードロックステイサイド12の先端部は、それぞれ対応するラジエータコアサポートサイドサイド6の上端部と、図示しない車体のフードリッジに固定される金属製のラジエータコアサポートアッパサイド17の両方に図示しないボルトで共締めされる。
その他、フードロックステイ部材3にはフードロックステイセンタ10及びフードロックステイサイド12の前方に並行して金属製の補強部材18が設けられているが、この限りではない。
【0018】
また、各フードロックステイサイド12には、後述するエンジンフード21の前端部に設けられた図示しないストライカと係合・離脱して該エンジンフードの開閉を行うためのフードロック14が設けられている。
フードロック14はメインラッチであり、セカンダリラッチは図示を省略するが、センタアッパ部11の開口部11aに臨んで設けられる。
なお、フードロックステイ部材3の一部は樹脂製にしても良く、ラジエータコアサポート1との詳細な固定構造及び固定方法(溶接、ボルト締結、樹脂クリップ、樹脂モールド等)は適宜設定できる。
【0019】
次に、ラジエータコアサポートアッパ4の排水構造について詳細に説明する。
図3、4に示すように、ラジエータコアサポートアッパ4は、前方に開口した六角形の開口部20を有するハニカム形状の壁部21を有して車幅方向に延設され、これによってラジエータコアサポートアッパ4の剛性が大幅に高くなっている。
また、壁部21の一部である隣り合う上壁22と、交差するように配置される斜壁23と、縦壁24によって、前方側へ切欠開口された略V字型断面の排水構25が凹設されている。
排水構25の深さは、前方側へ行くに連れて低くなるように勾配が設けられている。
なお、実施例1の勾配の角度は比較的小さく、ラジエータコアサポート本体2の製造時に該ラジエータコアサポート本体2を前後方向の射出成形型から取り外すために設定されるテーパ角度が採用されているが、この限りではない。
【0020】
さらに、エンジンフード26が閉じられた状態において、図4に示すように、ラジエータコアサポートアッパ4の上面には、閉じたられ状態のエンジンフード26の下面に設けられたシール部材27がラジエータコアサポートアッパ4の全長に亘って密着した状態でシールされている。
また、排水構25が形成された部位においては縦壁24の後方側にシール部材27とのシール面28が確保されている。
なお、シール部材27の前後方向の長さL1は適宜設定できるが、その設置位置はシール面28を確保するために縦壁24の上部24aに掛かる位置とする。
【0021】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1では、図4に示すように、ラジエータコアサポートアッパ4の上面にエンジンフード26のシール部材27が密着することにより、一点鎖線矢印で示す前方側からの車両走行風や塵等の異物が後方のエンジンルーム内に進入したり、エンジンルームの熱気が熱交換器の前方へ吹き返すのを防止できる。
この際、排水構25が形成された部位においてはシール面28にシール部材27が密着するため、同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、一点鎖線矢印で示す前方側からの雨水、雪、洗車水等の水は同様にエンジンルーム内への進入を防止できるものの、その後、ラジエータサポートアッパ4の上面に残留したり、シール部材27との間に浸透した状態で溜まって排出されない虞がある。
【0023】
これに対し、実施例1では、上述した水(図中破線矢印で図示)を、排水構25に誘導して前方側から車外に落下させることができる。
さらに、車両振動や排水構25の略V字型の傾斜面を伝う水の毛細管現象により、排水構25付近の水やシール部材27との間に浸透した水を同様に排水溝25に誘導して排出できる。
【0024】
従って、ラジエータコアサポートアッパ4の上面に水が溜まるのを防止でき、これにより、エンジンフード26やシール部材27の耐久性を向上できる。
【0025】
また、ラジエータコアサポートアッパ4は、排水溝25の一部であるハニカム形状の壁部21を有して車幅方向に延設されるため、ラジエータコアサポートアッパ4の特に左右方向の剛性を向上できる。
これにより、各ラジエータコアサポートサイド6の上端部に締結されたラジエータコアサポートアッパサイド17及びフードリッジの剛性、ひいては車体の剛性を向上させると共に車両運転者の操縦安定性を確保することができる。
【0026】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、実施例1の発明では、自動車のラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートアッパ4の上面がエンジンフード26の下面に設けられたシール部材27と密着した状態で配置されるラジエータコアサポート1において、ラジエータコアサポートアッパ4の上面に下方へ凹設され、且つ、車両後方側に縦壁24を有して車両前方側へ切欠開口された排水構25を設けたため、ラジエータコアサポートアッパ4の上面に水が溜まるのを防止でき、エンジンフード26やシール部材27の耐久性を向上できる。
【0027】
また、ラジエータコアサポート1の上面における少なくとも縦壁24の上部23aとシール部材27とを密着させたため、排水構25が形成された部位においてもシール部材27のシール性を損なうことなく、エンジンフード26やシール部材27の耐久性を向上できる。
【0028】
また、排水構25を略V字型断面に形成したため、排水構25の略V字型の傾斜面を伝う水の毛細管現象により、排水構25付近のシール部材27の下面に付着した水を同様に排出できる。
【0029】
また、ラジエータコアサポートアッパ4をハニカム形状に配置された壁部21で構成し、排水構25を壁部21の一部で形成したため、ラジエータコアサポート1の剛性を向上させつつ、排水構25を形成でき、換言すると、排水構25を利用してラジエータコアサポート1の剛性を向上できる。
【0030】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、排水構25の形状、形成数、形成位置、各部の寸法等については適宜設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1のラジエータコアサポートを示す前方斜視図である。
【図2】実施例1のラジエータコアサポート本体の斜視図である。
【図3】実施例1の要部拡大斜視図である。
【図4】図3のS4−S4線における断面図である。
【図5】実施例1のラジエータコアサポートの周辺部材を含む前方斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ラジエータコアサポート
2 ラジエータコアサポート本体
3 フードロックステイ部材
4 ラジエータコアサポートアッパ
4a、5a、5b、6a、9a 固定孔
5 ラジエータコアサポートロア
6 ラジエータコアサポートサイド
7 シュラウド部
7a 開口部
8 ヘッドランプステイ
9 サイドメンバ取付部
10 フードロックステイセンタ
11 センタアッパ部
11a 開口部
12 フードロックステイサイド
13 フードロックステイブラケット
14 フードロック
15 バンパアーマチュア
16 バンパステイ
17 ラジエータコアサポートアッパサイド
18 補強部材
20 開口部
21 壁部
22 上壁
23 斜壁
24 縦壁
24a 上部
25 排水構
26 エンジンフード
27 シール部材
28 シール面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパの上面がエンジンフードの下面に設けられたシール部材と密着した状態で配置されるラジエータコアサポートにおいて、
前記ラジエータコアサポートアッパの上面に下方へ凹設され、且つ、車両後方側に縦壁を有して車両前方側へ切欠開口された排水溝を備えることを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項2】
請求項1記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記ラジエータコアサポートの上面における少なくとも縦壁の上部とシール部材とを密着させたことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項3】
請求項1または2記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記排水溝の深さが車両前方側に行くに連れて低くなるように勾配を設けたことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれかに記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記排水溝を略V字型断面に形成したことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項5】
請求項4記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記ラジエータコアサポートアッパをハニカム形状に配置された壁部で構成し、
前記排水溝を前記壁部の一部で形成したことを特徴とするラジエータコアサポート。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−234304(P2009−234304A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79539(P2008−79539)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】