説明

ラジエータサポート構造

【課題】前方からの入力による変位を抑制する軽量なラジエータサポート構造を提供する。
【解決手段】連結部材12は長手方向両端で被連結部材16および被連結部材22を挟持し、ピン26の周りに矢印25のように回転可能に支持されている。連結部材12は車体上方向端をバンパリインフォース14に設けられた被連結部材16に挿通されたピン26にて支持され、車体下方向端をラジエータサポートロア18に設けられた被連結部材22に挿通されたピン26にて支持されているため、バンパリインフォース14とラジエータサポートロア18との間隔を広げる/狭める力(例えば図3(B)に示す矢印23)に対しては矢印23Bのように抵抗し、バンパリインフォース14とラジエータサポートロア18の位置角度を変える力に対してはピン26の周りに回転することで影響しない構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジエータサポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントバンパ近傍下部に接触部材を設け、歩行者の保護を図る構造が存在する。例えばバンパ下部に、車体前方に突出するように設けられた接触部材が歩行者の膝下に接触し保護する構成が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−55543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1の構成ではラジエータサポートと一体に設けられた接触部材からの入力を受け止めるためには、ラジエータサポートの補強が必要であり、大幅に重量が増加する構成となってしまう。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、前方からの入力による変位を抑制する軽量なラジエータサポート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明におけるラジエータサポート構造は、車体前端に、車幅方向に延設されたバンパリインフォースと、前記バンパリインフォースの車体後方で、車幅方向に所定の間隔を空けて車体上下方向に延設された一対のラジエータサポートサイドと、車幅方向に延設され、車幅方向両端部で前記一対のラジエータサポートサイドの車体下側端と連結されるラジエータサポートロアと、車体前方向端が前記ラジエータサポートロアの車体前方端よりも車体前方側で且つバンパリインフォースの車体前方端よりも車体前方に位置するように、前記ラジエータサポートロアと一体的に設けられたロアアブソーバと、一端が車幅方向まわりに回転自在にバンパリインフォースに支持されると共に、他端が車幅方向まわりに回転自在にラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドに支持されることでバンパリインフォースと、ラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドとを連結する連結部材と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、ラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドを、バンパリインフォースと車体前後方向に回転自在に連結することで、ロアアブソーバへの車体前方からの入力に対してラジエータサポートロアの車体後方への変位を抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の本発明におけるラジエータサポート構造は、請求項1に記載の構成において、前記連結部材は、前記バンパリインフォースに設けられ、車幅方向にピン孔が貫通された第1の被連結部材と、前記前記ラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドに設けられ、車幅方向にピン孔が貫通された第2の被連結部材と、を車幅方向両側より挟持し、前記ピン孔に側面視で一致する保持孔が設けられた一対の板材が、前記保持孔が前記ピン孔に挿通されたピンで保持されたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、保持孔を設けた一対の板材で、ピン孔を設けた第1および第2の被連結部材を挟持し、ピンで保持孔とピン孔をかしめることで、単純で部品点数の少ない連結部材とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るラジエータサポート構造は上記構成としたので、軽量な構成で、前方からの入力による変位を抑制することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<構造の概要>
本発明に係るラジエータサポート構造の実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0011】
なお各図において、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印REは車体後方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは車体内側方向を、矢印OUTは車体外側方向を示す。
【0012】
図1〜図3には、本発明の実施形態に係るラジエータサポート構造が示されている。
【0013】
図1、図2に示すように、ラジエータサポート構造10は、車体の車幅方向両側に位置する強度部材であるサイドメンバ42に剛で連結されたバンパリインフォース14と、その車体後方で車体上下方向に延設された一対のラジエータサポートサイド20、ラジエータサポートサイド20の下端同士を車幅方向に連結するラジエータサポートロア18、ラジエータサポートサイド20の車体上側を連結し、全体で略四角形の枠を形成するラジエータサポートアッパ30、ラジエータサポートロア18と一体的に設けられ、車体前方端がバンパリインフォース14の車体下側に位置するロアアブソーバ24、バンパリインフォース14に設けられた被連結部材16とラジエータサポートロア18に設けられた被連結部材22とを車幅方向を回転軸として回転可能に連結する連結部材12と、から構成されている。
【0014】
図2、図3に示すように、連結部材12は長手方向両端で被連結部材16および被連結部材22を挟持し、ピン26の周りに矢印25のように回転可能に支持されている。連結部材12は車体上方向端をバンパリインフォース14に設けられた被連結部材16に挿通されたピン26にて支持され、車体下方向端をラジエータサポートロア18に設けられた被連結部材22に挿通されたピン26にて支持されているため、バンパリインフォース14とラジエータサポートロア18との間隔を広げる/狭める力(例えば図3(B)に示す矢印23)に対しては矢印23Bのように抵抗し、バンパリインフォース14とラジエータサポートロア18の位置角度を変える力に対してはピン26の周りに回転することで影響しない構成とされている。なお図3に示す連結部材近傍の部品配置は概念図であり位置関係や角度等は正確なものではない。
【0015】
バンパリインフォース14に設けられた被連結部材16の構造を図4に示す。図4(A)、図4(B)に示すように被連結部材16には車幅方向にピン孔16Aが貫通しており、連結部材12の端部が被連結部材16を把持した状態で、連結部材12に設けられた保持孔12Aを通してピン孔16Aに車幅方向にピン26が挿通され、連結部材12を回転可能に保持している。
【0016】
車幅方向反対側でも同様に連結部材12の保持孔12Aを通してピン26が挿通され、かしめられることで、被連結部材16は連結部材12により車幅方向両側から挟持される状態となり、連結部材12はピン26を回転中心として回転可能に保持される。
【0017】
また被連結部材16には車体前方向にボルト穴16Bが設けられ、バンパリインフォース14を挟んで車体前方からボルト28で締結される。これにより被連結部材16はバンパリインフォース14に対して剛となるように固定される。
【0018】
連結部材12は単独でも、あるいは車幅方向に複数並列に設けられていてもよく、その際には要求される強度やスペース効率を加味して太さや材質、断面形状などにバリエーションを持たせてもよい。
【0019】
図5には本発明に係る連結部材12の、他の形状が示されている。上記のように一対の板状の連結部材12を用いて、被連結部材16および被連結部材22を挟持する構造に代えて、両端が断面H形状とされた連結部材12を用いてもよい。すなわち、棒状あるいはパイプ状の連結部材12の長手方向両端に設けられた挟持部22Aにて被連結部材16および被連結部材22を車幅方向両側から挟持し、ピン26で回転可能に保持することで、バンパリインフォース14とラジエータサポートロア18とを車体前後方向に回転可能に連結する。このとき連結部材12は角柱、丸棒でも、あるいは角パイプ、丸パイプなどの中空部材でもよい。
【0020】
<作用効果>
次に本発明の実施形態の作用および効果について説明する。
【0021】
図6、図7には従来のラジエータサポート構造を示す側面図が示されている。図6(A)に示すように、矢印23のような車体前方からの入力がロアアブソーバ24に加わったとき、車体とラジエータサポートサイド201との締結位置42Bは、ロアアブソーバ24の入力点と車体上下方向に高さdだけオフセットしているため曲げ荷重が発生し、ラジエータサポートサイド201の断面の小さい箇所(201B)で局部変形が発生し、本来であればロアアブソーバ24で受けるべき荷重を発生させることができない。
【0022】
また図6(B)のようにラジエータサポートサイド202の局部変形を防止するため、板厚や寸法を大きくしたり、補強部材203を設けて補強することで上記の問題は解決できるが、重量の増加を招く。
【0023】
さらに図7のようにラジエータサポートサイド20の周辺には車幅方向内側にはラジエータ32、外側にはクラッシュボックス34等が配置されるためラジエータサポートサイド20の形状変更を行う自由度は少ない。
【0024】
本願発明は図1〜3に示すように、ロアアブソーバ24が設けられたラジエータサポートロア18あるいはラジエータサポートサイド20を、連結部材12でバンパリインフォース14に対して回転可能に連結したため、ロアアブソーバ24に対する車体前方よりの入力に対してラジエータサポートロア18あるいはラジエータサポートサイド20の、バンパリインフォース14からの後退量を抑制することができる。
【0025】
<脚部保護性能>
図8に示すように、脚部インパクタ40によってバンパリインフォース14の車体前方に設けられたアッパアブソーバ36と、ロアアブソーバ24とに、それぞれ矢印35および矢印23のような入力があった場合の脚部保護性能について以下に説明する。
【0026】
ラジエータサポートロア18とバンパリインフォース14とが連結されておらず、またラジエータサポートサイド201が補強されていない場合、図9に示す矢印23のような入力によってラジエータサポートサイド201は変形し、ラジエータサポートロア18は車体後方に後退するように移動する。このときロアアブソーバ24が後退するので、アッパアブソーバ36は十分に変形せず、荷重を発生させることができない。これにより脚部インパクタ40の変形角度はθ1と大きい値になり、良好な脚部保護性能を得ることは難しい。
【0027】
これに対して、図10に示すように本願発明は矢印23の入力に対して連結部材12がラジエータサポートロア18とバンパリインフォース14との間に引っ張り荷重を発生させ、ロアアブソーバ24の後退を抑制する。このためロアアブソーバ24で発生する反力が大きく取れ、アッパアブソーバ36で大きな荷重が発生し変形量が大きくなる。これにより脚部インパクタ40の変形角度はθ2のように小さい値となり、良好な脚部保護性能を得ることができる。
【0028】
車体前方からの入力に対するロアアブソーバ24の荷重と、ラジエータサポートサイド20/ラジエータサポートロア18の連結部分の移動量との関係を図11に示す。本願発明の連結構造を備えたグラフbでは、連結構造を備えていないグラフaに比較して短いストローク(小さい移動量)で、ロアアブソーバ24に大きな荷重を発生させることができる。
【0029】
<ダメージャ性能>
図12(A)に示すように、剛体バリア44からの入力が車体前方よりあった場合、本願発明の構造では連結部材12が車体前後方向に回転可能とされているため、クラッシュボックス34の変形モード等に対して影響を少なく抑えることができる。
【0030】
すなわち、図12(B)に示すように剛体バリア44からの入力でアッパアブソーバ36、クラッシュボックス34等に荷重が発生し、変形した際においてラジエータサポートロア18とバンパリインフォース14とは連結部材12にて連結されている一方、矢印12Rのように回転可能とされているため、クラッシュボックス34の変形モードやラジエータサポートロア18の破損に対して、連結部材12が与える影響を少なく抑えることができる。
【0031】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0032】
すなわち、上記各実施形態では連結部材12をラジエータサポートロア18に設けられた被連結部材22に連結する構造を例としたが、これに限定せず例えばラジエータサポートサイド20の車体上面に連結する構造としてもよい。
【0033】
また、連結部材12に設けられた保持孔12Aにピン26を車幅方向に挿通する代わりに、連結部材12自体が車幅方向外側に延設されたピンを備えていてもよく、あるいは被連結部材16および被連結部材22に設けられた挟持部で連結部材12を挟み、車幅方向にピン26を挿通してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係るラジエータサポート構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示されるラジエータサポート構造を拡大し本発明の原理を示した斜視図である。
【図3】図1に示されるラジエータサポート構造における連結部材の構造を示した平面図および側面図である。
【図4】図3に示される被連結部材の構造を示した平面図および側面図である。
【図5】図3に示される連結部材の他の形状を示した平面図である。
【図6】従来のラジエータサポート構造を示す側面図である。
【図7】従来のラジエータサポート構造を示す正面図である。
【図8】脚部インパクタを用いた歩行者保護脚部試験を示す側面図である。
【図9】従来のラジエータサポート構造における構造歩行者保護脚部試験を示す側面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るラジエータサポート構造における構造歩行者保護脚部試験を示す側面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るラジエータサポート構造と従来のラジエータサポート構造における、正面入力時のロアアブソーバ荷重とラジサポ連結部ストロークの関係を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係るラジエータサポート構造のダメージャ性能を示した側面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ラジエータサポート構造
12 連結部材
14 バンパリインフォース
16 被連結部材(第1の被連結部材)
18 ラジエータサポートロア
20 ラジエータサポートサイド
22 被連結部材(第2の被連結部材)
24 ロアアブソーバ
26 ピン
28 ボルト
30 ラジエータサポートアッパ
32 ラジエータ
34 クラッシュボックス
36 アッパアブソーバ
40 脚部インパクタ
42 サイドメンバ
44 剛体バリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前端に、車幅方向に延設されたバンパリインフォースと、
前記バンパリインフォースの車体後方で、車幅方向に所定の間隔を空けて車体上下方向に延設された一対のラジエータサポートサイドと、
車幅方向に延設され、車幅方向両端部で前記一対のラジエータサポートサイドの車体下側端と結合されるラジエータサポートロアと、
車体前方向端が前記ラジエータサポートロアの車体前方端よりも車体前方側で且つバンパリインフォースの車体前方端よりも車体前方に位置するように、前記ラジエータサポートロアと一体的に設けられたロアアブソーバと、
一端が車幅方向まわりに回転自在にバンパリインフォースに支持されると共に、他端が車幅方向まわりに回転自在にラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドに支持されることでバンパリインフォースと、ラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドとを連結する連結部材と、
を備えたラジエータサポート構造。
【請求項2】
前記連結部材は、
前記バンパリインフォースに設けられ、車幅方向にピン孔が貫通された第1の被連結部材と、
前記前記ラジエータサポートロアまたはラジエータサポートサイドに設けられ、車幅方向にピン孔が貫通された第2の被連結部材と、
を車幅方向両側より挟持し、前記ピン孔に側面視で一致する保持孔が設けられた一対の板材が、前記保持孔が前記ピン孔に挿通されたピンで保持されたことを特徴とする請求項1に記載のラジエータサポート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−89736(P2010−89736A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264037(P2008−264037)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】