説明

ラジエータ通風構造

【課題】部品点数を増加させず、小型化、コスト削減が図れるラジエータ通風構造を提供する。
【解決手段】車体前端部の開口部から車体前部に走行風を導入可能とする外気導入部に開閉手段が設けられ、この開閉手段を制御部27で制御されるトルクモータ26で開閉して車体前部に設けられたラジエータに送られる走行風の量を制御するラジエータ通風構造において、トルクモータ26は、少なくとも一部のステータコア65が金属部材(珪素鋼板)で形成され、制御基板からなる制御部27は、金属部材に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータ通風構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のラジエータ通風構造として、モータによりラジエータグリルを開閉してラジエータへの通風を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の第1図及び第2図によれば、モータ9の回転軸に歯車列8が連結され、この歯車列8の一つの歯車に取付けられた駆動軸6に食違い軸歯車4を介して連結ロッド3が連結され、この連結ロッド3に翼状の複数のラジエータグリル1が取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−025228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ラジエータグリル1の開閉要求が細かく複雑化するほどモータ9を制御する制御部の発熱量が増大し、制御部から放熱する何らかの手段が必要になる。
例えば、モータ9と制御部とが電気的に接続されている構成では、制御部に放熱手段を付設しただけでは、部品点数が増加し、大型化、コストアップとなる。
【0006】
本発明の目的は、部品点数を増加させず、小型化、コスト削減が図れるラジエータ通風構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前端部の開口部から車体前部に走行風を導入可能とする外気導入部に開閉手段が設けられ、この開閉手段を制御手段で制御される駆動手段で開閉して車体前部に設けられたラジエータに送られる走行風の量を制御するラジエータ通風構造において、駆動手段が、少なくとも一部が金属部材で形成され、制御基板からなる制御手段が、金属部材に接触していることを特徴とする。
駆動手段の少なくとも一部の金属部材に、制御基板からなる制御手段が接触することで、制御手段で発生する熱が金属部材に伝わり、金属部材から放熱される。
【0008】
請求項2に係る発明は、駆動手段が、金属部材からなるステータと、このステータの半径方向内側に配置されるとともに回動軸と同一方向に延びる回転軸で支持されるロータとから構成され、制御手段が、ロータの回転軸が延びる方向にステータと並べて配置されるとともに、ステータに取付けられることを特徴とする。
例えば、制御手段は、金属部材からなるステータの一側面に、ロータの回転軸が延びる方向に重ねられて取付けられる。
【0009】
請求項3に係る発明は、駆動手段が、金属部材からなるステータと、このステータの半径方向内側に配置されるとともに回動軸と同一方向に延びる回転軸で支持されるロータとから構成され、制御手段が、ロータの回転軸が延びる方向にステータと並べて配置されるとともに、ロータと干渉しないようにロータの外周面に沿うように形成された切欠き部を備えることを特徴とする。
【0010】
ステータの内側に配置されたロータと干渉しないようにロータに切欠き部が形成され、制御手段がステータの一側面に取付けられる。
制御手段で発生した熱は、主に、ステータの制御手段が取付けられていない面と、ステータの一側面の切欠き部に臨む面から逃げる。
【0011】
請求項4に係る発明は、ステータが、ロータに向けて突出する複数の歯部を有するステータコアと、複数の歯部の少なくとも1つに装着されるとともに通電中に発生する磁束によりロータを回転させるコイルとからなり、ロータが、回転軸に取付けられるロータコアと、このロータコアの外周面に取付けられた異なる磁極を有する少なくとも2つの磁石とからなり、ステータが、磁束を避けるように形成されるとともに制御手段が固定される突部を有することを特徴とする。
ステータに発生する磁束を避けるようにステータに突部が形成され、突部が磁束に影響を与えない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、駆動手段が、少なくとも一部が金属部材で形成され、制御基板からなる制御手段が、金属部材に接触しているので、制御手段で発生する熱を駆動手段の金属部材から放熱させることができ、制御手段専用の放熱手段を必要としないため、部品点数を削減することができる。従って、ラジエータ通風構造の小型化、コスト削減を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、駆動手段が、金属部材からなるステータと、このステータの半径方向内側に配置されるとともに回動軸と同一方向に延びる回転軸で支持されるロータとから構成され、制御手段が、ロータの回転軸が延びる方向にステータと並べて配置されるとともに、ステータに取付けられるので、駆動手段のステータの一側面に重ねて制御手段を取付けることができ、駆動手段・制御手段組立体の小型化を図ることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、駆動手段が、金属部材からなるステータと、このステータの半径方向内側に配置されるとともに回動軸と同一方向に延びる回転軸で支持されるロータとから構成され、制御手段が、ロータの回転軸が延びる方向にステータと並べて配置されるとともに、ロータと干渉しないようにロータの外周面に沿うように形成された切欠き部を備えるので、制御手段の切欠き部によってロータと制御手段との干渉を避けながら、ステータの露出面積を大きくしてステータからの放熱量を増すことができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、ステータが、ロータに向けて突出する複数の歯部を有するステータコアと、複数の歯部の少なくとも1つに装着されるとともに通電中に発生する磁束によりロータを回転させるコイルとからなり、ロータが、回転軸に取付けられるロータコアと、このロータコアの外周面に取付けられた異なる磁極を有する少なくとも2つの磁石とからなり、ステータが、磁束を避けるように形成されるとともに制御手段が固定される突部を有するので、制御手段を固定する突部がステータに発生する磁束に影響を与えないため、磁束を効果的に発生させることができ、駆動手段を効率良く作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るラジエータ通風構造を示す車体前部の斜視図である。
【図2】本発明に係るラジエータ通風構造を示す車体前部の第1断面図である。
【図3】本発明に係るラジエータ通風構造を示す車体前部の第2断面図である。
【図4】本発明に係るラジエータ通風構造のトルクモータ(実施例1)を示す説明図である。
【図5】本発明に係るラジエータ通風構造の作用を示す第1作用図(実施例1)である。
【図6】本発明に係るラジエータ通風構造の作用を示す第2作用図(実施例1)である。
【図7】本発明に係るラジエータ通風構造の作用を示す第3作用図(実施例1)である。
【図8】本発明に係るラジエータ通風構造のトルクモータにおける回動トルクとロータ回動角度との関係を示すグラフ(実施例1)である。
【図9】本発明に係るラジエータ通風構造のトルクモータ(実施例2)を示す説明図である。
【図10】本発明に係るラジエータ通風構造のトルクモータにおける回動トルクとロータ回動角度との関係を示すグラフ(実施例2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両前方を示している。
図1に示すように、車両のフロントボディを構成するバルクヘッド10の前面に、ラジエータに送られる走行風の量を制御するラジエータ通風装置11が取付けられている。
ラジエータ通風装置11は、バルクヘッド10の前面に取付けられたシャッター機構13を備える。
【0019】
シャッター機構13は、バルクヘッド10に取付けられたシャッターベース14と、このシャッターベース14に設けられた複数の縦長支持部材16と、これらの縦長支持部材16で開閉自在に支持された複数のシャッター17とを備える。なお、符号14a,14bはシャッターベース14の上部及び下部に設けられた通風口である。
【0020】
図2に示すように、ラジエータ通風装置11は、車体前端部に設けられたグリル21の開口部21aに前端部が接続されるとともに後端部がシャッター機構13に接続されたダクト22と、ラジエータ23の前方に配置されたシャッター機構13と、このシャッター機構13の各シャッター17にリンク機構24を介して連結されたトルクモータ26と、このトルクモータ26を制御する制御部27と、リンク機構24の可動部の移動を規制するストッパ部28とからなる。なお、符号31はシャッター機構13の後方で且つラジエータ23の前方に配置されたエアコンディショナ用コンデンサである。
図2ではシャッター機構13の各シャッター17は閉じた状態(全閉)にあり、ラジエータ23には走行風が導かれない。
【0021】
シャッター機構13は、シャッターベース14の縦長部材16で支持された複数の回動軸35を備え、これらの回動軸35に各シャッター17が回動自在に取付けられている。
リンク機構24は、複数のシャッター17に連結された縦に延びるスライドリンク37と、このスライドリンク37の下端部に一端部が連結ピン38を介して連結されるとともに他端部がトルクモータ26に取付けられたアームリンク39とからなる。
【0022】
シャッター17とスライドリンク37とは、継手41を介して揺動自在に連結されている。
トルクモータ26は、その回転軸63が制限された回転角度の範囲内で回転し、その回転軸63に発生するトルクを利用するDCモータであり、モータケース43を備え、このモータケース43内に制御部27が収納されている。
【0023】
ストッパ部28は、上下にスライドするスライドリンク37の下降を規制するロアストッパ46と、スライドリンク37の上昇を規制するアッパストッパ47とからなる。
図の状態では、スライドリンク37の下端がロアストッパ46に当たっている。
【0024】
図3はシャッター機構13の各シャッター17が開いた状態(全開)を示している。この状態で車両が走行中は、グリル21の開口部21aから導入された走行風は、ダクト22を通り、各シャッター17間を通ってエアコンディショナ用コンデンサ31及びラジエータ23内を通過し、エアコンディショナ用コンデンサ31及びラジエータ23から熱を奪う。
図の状態では、スライドリンク37の上端がアッパストッパ47に当たっている。
【0025】
図4(a),(b)はトルクモータ26のモータケース43(ケース本体51と、このケース本体51の開口を塞ぐケースカバー(不図示)とからなる。)からケースカバーを外した状態を示している。
【0026】
図4(a)において、ケース本体51の底側にモータ本体部44が配置され、このモータ本体部44の一部を覆うように、プリント基板に電子部品が実装された制御基板からなる制御部27が配置され、これらのモータ本体部44及び制御部27が複数のビス53でケース本体51に共締めされている。
【0027】
図4(b)において、モータ本体部44は、ケース本体51に取付けられたステータ61と、このステータ61の内側に配置されたロータ62と、このロータ62を支持するとともにモータケース43(図2参照)に回動自在に支持された回転軸63とからなる。
【0028】
図4(c)はモータ本体部44の正面図であり、ステータ61は、複数枚の珪素鋼板が積層されて形成されたステータコア65と、このステータコア65に装着されたコイル66とからなる。
【0029】
ステータコア65は、矩形の外周部を形成する枠状部65gと、この枠状部65gの長手方向の一端部からロータ62側へ突出する主歯部65aと、枠状部65gの長手方向の他端部の角部からロータ62側へ突出する2つの副歯部65b,65cとを備え、これらの主歯部65a及び副歯部65b,65cがロータ62に近接するように設けられている。
【0030】
ここで、符号65dは枠状部65gに出来る磁束に影響を与えないように枠状部65gから外方に突出させた突部、65eはステータコア65をケース本体51(図5(a)参照)にビスで取付けるビスを通すために突部65dに開けられたビス挿通穴である。
【0031】
主歯部65aの中心を通る中心線71と、副歯部65b,65cの中心線72,73とのなす角度をそれぞれθ1とすると、例えば、θ1は40°〜60°であり、θ1=60°の場合は、主歯部65a及び副歯部65b,65cは、ロータ62の回転軸63を中心にして周方向に3等分した位置に配置される。
【0032】
このように、主歯部65a及び副歯部65b,65cは、ロータ62の回転軸63を中心に周方向に3等分する位置に配置される、又は周方向に略3等分する位置に配置される。
【0033】
ロータ62は、複数枚の珪素鋼板が積層されて形成されたロータコア76と、このロータコア76の外周面76aに形成された凹部76b,76bに嵌め込まれた円弧状の永久磁石77,78とからなり、ロータコア76は回転軸63に取付けられている。
ロータ62の凹部76b,76b間に設けられるロータ凸部76d,76eは、2つの磁石77,78の間に位置するため、磁極を持たない非磁極部である。
【0034】
磁石77,78は、図の状態では、主歯部65aの中心線71に対して対称な位置に配置されている。磁石77,78の円弧の開き角をθ2とすると、例えば、θ2は60°〜100°である。
【0035】
一方の磁石77は、円弧の外面にN極、円弧の内面にS極が着磁されているが、図中では外面側の磁極「N」を記載している。
他方の磁石78は、円弧の外面にS極、円弧の内面にN極が着磁されているが、図中では外面側の磁極「S」を記載している。
【0036】
図4(d)は制御部27の正面図であり、制御部27は、プリント基板81と、このプリント基板81に取付けられた電子部品(FET82、ダイオード83、コンデンサ84等)とからなる。なお、符号87は制御部27をステータコア65と共にビスで取付けるビスを通すためにプリント基板81に開けられたビス挿通穴、88はロータ62(図4(c)参照)との干渉を避けるためにロータ62の外周面に沿うようにプリント基板81に形成された切欠き部である。
【0037】
図4(a),(c)において、ステータ61のステータコア65を金属製とし、このステータコア65に制御部27を取付けることで、制御部27で発生した熱を、ステータコア65から逃がすことができ、制御部27の動作を安定させることができる。また、特別に制御部27用の冷却手段を設けなくて済み、コストを抑えることができる。
【0038】
以上に述べたシャッター機構13及びトルクモータ26の作用を次に説明する。
図5(a)は、シャッター機構13のシャッター17が閉じた状態(全閉)を示している。ステータ61のコイル66には通電されていない。
このとき、磁石77の周囲の磁場によって、ステータコア65の副歯部65bの先端部にS極が発生するとともに主歯部65aの先端部にN極が発生する。
【0039】
この結果、ステータコア65の副歯部65bから枠状部65gを介して主歯部65aに向かって流れる磁束(磁力線の束であり、図では細線で示している。以下同じ。)が発生し、磁石77と副歯部65bとが吸引し合うため、この磁力によって、コイル66に通電しなくても、ロータ62は、シャッター17が閉じられる位置に位置決めされるとともに保持される。
【0040】
図5(b)において、ステータ61のコイル66に通電すると、ステータコア65が電磁石となり、ステータコア65内に太線で示す磁束が発生する。
この結果、副歯部65bの先端部にはN極(太字で示している。)、主歯部65aの先端部にはS極(太字で示している。)、副歯部65cの先端部にはN極(太字で示している。)が発生する。
【0041】
電磁石により発生する磁極の強さは、磁石77の強さを上回るため、副歯部65bのN極と磁石77のN極とが反発し合い、主歯部65aのS極と磁石78のS極とが反発し合い、副歯部65cのN極と磁石78のS極とが吸引し合うため、ロータ62は、白抜き矢印で示す向きに回動する。
【0042】
これにより、図5(c)に示すように、シャッター17が開く。
また、ロータ62の磁石78が副歯部65cに近接し、磁石78の周囲の磁場によって、ステータコア65の副歯部65cの先端部にN極(カッコ付き)が発生するとともに主歯部65aの先端部にS極(カッコ付き)が発生する。
【0043】
図6(a)は、シャッター機構13のシャッター17が開いた状態を示している。ステータ61のコイル66には通電されていない。
図5(c)のときと同様に、ステータコア65の副歯部65cの先端部にN極が発生し、主歯部65aの先端部にS極が発生している。
【0044】
この結果、主歯部65aから枠状部65gを介してステータコア65の副歯部65cに向かって流れる磁束(細線で示している。)が発生し、磁石78と副歯部65cとが吸引し合うため、コイル66に通電しなくても、ロータ62は、シャッター17を開いた位置に位置決めされるとともに保持される。
【0045】
図6(b)において、ステータ61のコイル66に、図5(b),(c)とは逆向きに通電すると、ステータコア65が電磁石となり、ステータコア65内に太線で示す磁束が発生する。
【0046】
この結果、副歯部65cの先端部にはS極(太字)、主歯部65aの先端部にはN極(太字)、副歯部65bの先端部にはS極(太字)が発生する。
電磁石により発生する磁極の強さは、磁石78の強さを上回るため、副歯部65cのS極と磁石78のS極とが反発し合い、主歯部65aのN極と磁石77のN極とが反発し合い、副歯部65bのS極と磁石77のN極とが吸引し合うため、ロータ62は、白抜き矢印で示す向きに回動する。
【0047】
これにより、図6(c)に示すように、シャッター17が閉じる。
また、ロータ62の磁石77が副歯部65bに近接するため、磁石77の周囲の磁場によって、ステータコア65の副歯部65bの先端部にS極(カッコ付き)が発生するとともに主歯部65aの先端部にN極(カッコ付き)が発生する。
従って、コイル66への通電を停止しても、図5(a)のときと同様に、ロータ62は、シャッター17が閉じられる位置に位置決めされるとともに保持される。
【0048】
図7に示すように、モータ本体部44のロータ62によって、コイル66に通電しない状態で、シャッター17を、全閉位置(二点鎖線で示された位置)と全開位置(破線で示された位置)との間の中間位置(実線で示された位置)で位置決めして保持することも可能である。
【0049】
即ち、磁石77の端部が副歯部65bに近接するとともに磁石78の端部が副歯部65cに近接することで、副歯部65bの先端部にS極が発生し、副歯部65cの先端部にN極が発生して、磁石77と副歯部65b、磁石78と副歯部65cがそれぞれ吸引し合うため、コイル66に通電しなくても、ロータ62によって、シャッター17を、中間開度位置に位置決めするとともに保持することができる。
【0050】
図8(a)において、グラフの縦軸はトルクモータのロータを回動させるための回動トルクであり、ゼロに対して正側はシャッターの開方向のトルク、負側はシャッター閉方向のトルクである。横軸はロータの回動角度であり、ゼロは中間開度、正側は開方向、αはシャッター全開時の回動角度、負側は閉方向、−αはシャッター全閉時の回動角度である。
【0051】
また、実線はトルクモータに通電しない場合にロータを外部から回転させるのに必要な回動トルク、破線はトルクモータに通電した場合のロータの駆動トルク(回動トルク)である。
【0052】
トルクモータに通電しない場合は、ロータ回動角度が全閉の状態である−αからロータが開方向へ回動すると、回動トルクは負側の−Taから次第に大きくなり(回動トルクの絶対値は小さくなってゼロに近くなり)、ロータ回動角度−βで回動トルクはゼロになり、更にロータが回動すると、回動トルクの向きがシャッター閉方向からシャッター開方向の向きになるとともに、ロータ回動角度−γでシャッター開方向における極大値Tbとなり、この極大値Tbを境にして回動トルクは再び小さく(ゼロに近く)なり、ロータ開度角度ゼロ(シャッターの中間開度である。)で回動トルクはゼロになる。
【0053】
更に、ロータ回動角度が大きくなると、回動トルクの向きが変わってシャッター閉方向の向きになるとともに、ロータ回動角度γで回動トルクはシャッター閉方向における極小値−Tbとなり、この極小値−Tbを境にして回動トルクは再び大きくなり(回動トルクの絶対値は小さくなってゼロに近くなり)、ロータ回動角度βで回動トルクはゼロになる。更にロータが回動すると、回動トルクの向きが変わってシャッター開方向の向きになるとともに、ロータ回動角度がαで回動トルクがTaとなり、シャッターは全開となる。
【0054】
ロータ回動角度−γ付近で回動トルクの向きがシャッター開方向、ロータ回動角度γ付近でシャッター閉方向になるので、シャッターを中間開度位置に保持する回動トルクが発生する。水撃等の衝撃によって想定されるシャッターに入力されるトルクに対して、ロータの回動トルク(即ち、Tb)を高く設定すると、衝撃が入力されてもロータを元の位置(中間開度位置)に復帰させることができ、シャッター開閉状態を保持できる。
【0055】
また、Ta>Tbであるから、シャッターが全閉又は全開のときにも、水撃等の衝撃によるトルクよりも回動トルクTaは大きいから、衝撃が入力されてもシャッターを元の全閉位置又は全開位置に復帰させることができる。
【0056】
シャッターを全閉状態から開く際には、トルクモータに通電した場合のトルクモータの駆動トルク(回動トルク)は、ロータ回動角度−αにおいて、非通電時の回動トルク−Taと逆向き(シャッター開方向)で、絶対値が大きいTcとなり、ロータ回動角度が大きくなるにつれて大きくなるが、ロータ回動角度が大きくなるに従って回動トルクの増加率は次第に小さくなり、ロータ回動角度がゼロを過ぎた直後に最大となり、その後はロータ回動角度がαになるまで次第に減少する。
【0057】
これは、特に、ロータ回動角度が−α〜−βでは、磁石と副歯部との吸引力により発生する閉方向のコギングトルクに抗してロータを回転させる必要があり、また、ロータ回動角度がβ〜αでは、磁石と副歯部との吸引力により発生する開方向のコギングトルクが発生するためにトルクモータの駆動トルクが小さくて済むためである。
【0058】
シャッターを全開状態から閉じる際には、トルクモータに通電した場合のトルクモータの駆動トルク(回動トルク)は、ロータ回動角度αにおいて、非通電時の回動トルクTaと逆向き(シャッター閉方向)で、絶対値が大きい−Tcとなり、ロータ回動角度が小さくなるにつれて次第に小さくなるが、ロータ回動角度が小さくなるに従って回動トルクの減少率は次第に小さくなり(回動トルクの絶対値の増加率は次第に小さくなり)、ロータ回動角度がゼロを過ぎた直後に最小(絶対値は最大)となり、その後はロータ回動角度が−αになるまで次第に増加する。
【0059】
図8(b)〜(f)は図8(a)の所定のロータ回動角度に対応したロータ回動位置を示している。
図8(b)はロータ回動角度が−αのときのロータ62の回動位置を示している。即ち、磁石77の周方向の中央部が副歯部65bの幅の中央部に対向するように近接している。
【0060】
図8(c)はロータ回動角度が−βのときのロータ62の回動位置を示している。即ち、磁石77が副歯部65bに対向するとともに、磁石78が副歯部65cと主歯部65aとの間に位置している。
【0061】
図8(d)はロータ回動角度がゼロのときのロータ62の回動位置を示している。即ち、磁石77と副歯部65bとの吸引力と、磁石78と副歯部65cとの吸引力とが釣り合った状態である。
【0062】
図8(e)はロータ回動角度がβのときのロータ62の回動位置を示している。即ち、磁石78が副歯部65cに対向するとともに、磁石77が副歯部65bと主歯部65aとの間に位置している。
【0063】
図8(f)はロータ回動角度がαのときのロータ62の回動位置を示している。即ち、磁石78の周方向の中央部が副歯部65cの幅の中央部に対向するように近接している。
【実施例2】
【0064】
次に本発明の実施例2を説明する。
図9に示すように、トルクモータ90は、その回転軸63が制限された回転角度の範囲内で回転し、その回転軸63に発生するトルクを利用するDCモータであり、モータケース43(図2参照)と、このモータケース43に取付けられたステータ61と、このステータ61の内側に配置されたロータ91と、このロータ91を支持するとともにモータケース43に回動自在に支持された回転軸63とからなる。
【0065】
ロータ91は、複数枚の珪素鋼板が積層されて形成されたロータコア93と、このロータコア93の外周面93aに取付けられた円弧状の永久磁石95,96とからなり、ロータコア93が回転軸63に取付けられている。
磁石95,96は、図の状態では、主歯部65aの中心線71に対して対称な位置に配置されている。磁石95,96の円弧の開き角は180°である。
【0066】
一方の磁石95は、円弧の外面にN極、円弧の内面にS極が着磁されているが、図中では外面側の磁極「N」を記載している。
他方の磁石96は、円弧の外面にS極、円弧の内面にN極が着磁されているが、図中では外面側の磁極「S」を記載している。
【0067】
図の磁石95,96の位置では、ステータ61の副歯部65bの先端部にS極、副歯部65cの先端部にN極が発生して、磁石95のN極と副歯部65bのS極とが吸引し合い、磁石96のS極と副歯部65cのN極とが吸引し合って、回動軸63の回動トルクはゼロになり、回動軸63に連結されたシャッターは中間開度に位置決めされるとともに保持されている。
【0068】
図10において、グラフの縦軸はトルクモータのロータを回動させるための回動トルクであり、ゼロに対して正側はシャッターの開方向のトルク、負側はシャッター閉方向のトルクである。横軸はロータの回動角度であり、ゼロは中間開度、正側は開方向、αはシャッター全開時の回動角度、負側は閉方向、−αはシャッター全閉時の回動角度である。
また、実線はトルクモータに通電しない場合にロータを外部から回転させるのに必要な回動トルク、破線はトルクモータに通電した場合のロータの駆動トルク(回動トルク)である。
【0069】
トルクモータに通電しない場合は、ロータ回動角度が全閉の状態である−αからロータが開方向へ回動すると、回動トルクは負側の−Taから直線的に次第に大きくなり(回動トルクの絶対値は直線的に次第に小さくなってゼロに近くなり)、ロータ回動角度ゼロ(シャッターの中間開度である。)で回動トルクはゼロになる。
【0070】
更に、ロータ回動角度が大きくなると、回動トルクの向きがシャッター閉方向の向きからシャッター開方向の向きになるとともに、更に直線的に大きくなり、ロータ回動角度がαで回動トルクがTaとなり、シャッターは全開となる。
このように、トルクモータ90(図9参照)では、非通電時にシャッターの全閉、中間開度及び全開位置でロータ、回転軸を保持することが可能である。
【0071】
シャッターを全閉状態から開く際には、トルクモータに通電した場合のトルクモータの駆動トルク(回動トルク)は、ロータ回動角度−α(シャッター全閉)において、非通電時の回動トルク−Taと逆向き(シャッター開方向)で、絶対値が大きいTcとなり、ロータ回動角度が大きくなるにつれて大きくなるが、ロータ回動角度が大きくなるに従って回動トルクの増加率は次第に小さくなり、ロータ回動角度がゼロを過ぎた直後に最大となり、その後はロータ回動角度がα(シャッター全開)になるまで次第に減少する。
【0072】
これは、ロータ回動角度が−α〜ゼロでは、磁石と副歯部との吸引力により発生する閉方向のコギングトルクに抗してロータを回転させる必要があり、また、ロータ回動角度がゼロ〜αでは、磁石と副歯部との吸引力により発生する開方向のコギングトルクが発生するためにトルクモータの駆動トルクが小さくて済むためである。
【0073】
シャッターを全開状態から閉じる際には、トルクモータに通電した場合のトルクモータの駆動トルク(回動トルク)は、ロータ回動角度αにおいて、非通電時の回動トルクTaと逆向き(シャッター閉方向)で、絶対値が大きい−Tcとなり、ロータ回動角度が小さくなるにつれて次第に小さくなるが、ロータ回動角度が小さくなるに従って回動トルクの減少率は次第に小さくなり(回動トルクの絶対値の増加率は次第に小さくなり)、ロータ回動角度がゼロを過ぎた直後に最小(絶対値は最大)となり、その後はロータ回動角度が−αになるまで次第に増加する。
【0074】
上記の図2、図4(a)〜(d)に示したように、車体前端部の開口部21aから車体前部に走行風を導入可能とする外気導入部としてのグリル21及びダクト22に開閉手段としてのシャッター機構13が設けられ、このシャッター機構13を制御手段としての制御部27で制御される駆動手段としてのトルクモータ26で開閉して車体前部に設けられたラジエータ23に送られる走行風の量を制御するラジエータ通風構造において、トルクモータ26は、少なくとも一部が金属部材(珪素鋼板)で形成され、制御基板からなる制御部27は、金属部材に接触していることを特徴とする。
【0075】
上記構成により、制御部27で発生する熱をトルクモータ26の金属部材から放熱させることができ、制御部27の専用の放熱手段を必要としないため、部品点数を削減することができる。従って、ラジエータ通風装置11の小型化、コスト削減を図ることができる。
【0076】
上記の図4(a)〜(d)に示したように、トルクモータ26が、金属部材からなるステータ61、詳しくはステータコア65と、このステータコア65の半径方向内側に配置されるとともに回動軸35と同一方向に延びる回転軸63で支持されるロータ62とから構成され、制御部27は、ロータ62の回転軸63が延びる方向にステータコア65と並べて配置されるとともに、ステータコア65に取付けられるので、トルクモータ26のステータコア65の一側面に重ねて制御部27を取付けることができ、トルクモータ26・制御部27組立体の小型化を図ることができる。
【0077】
また、トルクモータ26は、金属部材からなるステータ61、詳しくはステータコア65と、このステータコア65の半径方向内側に配置されるとともに回動軸35と同一方向に延びる回転軸63で支持されるロータ62とから構成され、制御部27は、ロータ62の回転軸63が延びる方向にステータコア65と並べて配置されるとともに、ロータ62と干渉しないようにロータ62の外周面に沿うように形成された切欠き部88を備えるので、制御部27の切欠き部88によってロータ62と制御部27との干渉を避けながら、ステータコア65の露出面積を大きくしてステータコア65からの放熱量を増すことができる。
【0078】
更に、ステータ61は、ロータ62に向けて突出する複数の歯部としての主歯部65a、副歯部65b,65cを有するステータコア65と、複数の主歯部65a、副歯部65b,65cの少なくとも1つに装着されるとともに通電中に発生する磁束によりロータ62を回転させるコイル66とからなり、ロータ66は、回転軸63に取付けられるロータコア76と、このロータコア76の外周面76aに取付けられた異なる磁極を有する少なくとも2つの磁石77,78とからなり、ステータ61は、磁束を避けるように形成されるとともに制御部27が固定される複数の突部65dを有するので、制御部27を固定する突部65dがステータ61に発生する磁束に影響を与えないため、磁束を効果的に発生させることができ、トルクモータ26を効率良く作動させることができる。
【0079】
尚、実施例1では、図4(a),(d)に示したように、制御部27のプリント基板81にロータ62との干渉を避ける切欠き部88を形成したが、これに限らず、プリント基板にロータ62との干渉を避ける円形の穴部を形成してもよい。
【0080】
また、図4(a)に示したように、制御部27をステータ61に取付けたが、これに限らず、モータケース43(図2参照)又はケース本体51を金属製とし、このモータケース43又はケース本体51に制御部27を取付けて放熱してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のラジエータ通風構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0082】
11…ラジエータ通風装置、13…開閉手段(シャッター機構)、21,22…外気導入部(グリル、ダクト)、21a…開口部、23…ラジエータ、26,90…駆動手段(トルクモータ)、27…制御手段(制御部)、35…回動軸、61…ステータ、62,91…ロータ、63…回転軸、65…ステータコア、65a,65b,65c…歯部(主歯部、副歯部、副歯部)、65d…突部、66…コイル、76,93…ロータコア、77,78,95,96…磁石(永久磁石)、88…切欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前端部の開口部から車体前部に走行風を導入可能とする外気導入部に開閉手段が設けられ、この開閉手段を制御手段で制御される駆動手段で開閉して前記車体前部に設けられたラジエータに送られる前記走行風の量を制御するラジエータ通風構造において、
前記駆動手段は、少なくとも一部が金属部材で形成され、制御基板からなる前記制御手段は、前記金属部材に接触していることを特徴とするラジエータ通風構造。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記金属部材からなるステータと、このステータの半径方向内側に配置されるとともに前記回動軸と同一方向に延びる前記回転軸で支持されるロータとから構成され、
前記制御手段は、前記ロータの回転軸が延びる方向に前記ステータと並べて配置されるとともに、前記ステータに取付けられることを特徴とする請求項1記載のラジエータ通風構造。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記金属部材からなるステータと、このステータの半径方向内側に配置されるとともに前記回動軸と同一方向に延びる前記回転軸で支持されるロータとから構成され、
前記制御手段は、前記ロータの回転軸が延びる方向に前記ステータと並べて配置されるとともに、前記ロータと干渉しないようにロータの外周面に沿うように形成された切欠き部を備えることを特徴とする請求項1記載のラジエータ通風構造。
【請求項4】
前記ステータは、前記ロータに向けて突出する複数の歯部を有するステータコアと、前記複数の歯部の少なくとも1つに装着されるとともに通電中に発生する磁束により前記ロータを回転させるコイルとからなり、
前記ロータは、前記回転軸に取付けられるロータコアと、このロータコアの外周面に取付けられた異なる磁極を有する少なくとも2つの磁石とからなり、
前記ステータは、前記磁束を避けるように形成されるとともに前記制御手段が固定される突部を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載のラジエータ通風構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−51530(P2011−51530A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203838(P2009−203838)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】