説明

ラジオアイソトープジェネレータ

【課題】 放射性成分を含有する流体を生成する装置を提供する。
【解決手段】 本装置は、放射性同位体(7)を収容する同位体容器(6)が内部に配置された遮蔽室(5)を備えていて、遮蔽室が同位体容器の両端との第1及び第2の流体接続部(12,13)と、第1及び第2の流体接続部の各々からそれぞれ流体入口(16)及び流体出口(17)まで延在する流体導管(14,15)とを含んでおり、流体入口は、略円形断面を有する単一のスパイク(22)を備えており、スパイクはバイアルのゴムシールを貫通するように適合しており、スパイクが2つの内孔を有していて、第1の内孔がスパイクの先端に隣接する第1の開口部から流体導管との流体接続部まで延材しており、第2の内孔がスパイクの第2の別個の開口部から濾過吸気口まで延材していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、準安定テクネチウム99m(99mTc)のような放射性同位体の調製に常用されるタイプのラジオアイソトープジェネレータに関する。
【背景技術】
【0002】
核医学における病気の診断及び/又は治療は、短寿命放射性同位体の主な用途の1つである。核医学において世界中で年間実施される診断処置の90%以上が99mTc標識放射性医薬品を使用していると推定される。放射性医薬品の半減期が短いことから、現場で適切な放射性同位体を生成するための施設があれば有益である。そのため、可搬型の病院/診療所規模の99mTcジェネレータの採用が年々大幅に増加している。可搬型ラジオアイソトープジェネレータは短寿命娘放射性同位体を得るために使用されているが、短寿命娘放射性同位体は長寿命の親放射性同位体の放射性崩壊の生成物であり、長寿命親放射性同位体は通常イオン交換カラム内の床に吸着されている。従来、ラジオアイソトープジェネレータは、親放射性同位体を収容したイオン交換カラムの周囲に遮蔽を、食塩水のような溶離液でカラムから娘放射性同位体を溶離するための手段と共に備えている。使用時に、溶離液をイオン交換カラムに流して、娘放射性同位体を溶離液と共に溶液中で回収し、必要に応じて使用される。
【0003】
99mTcの場合、この放射性同位体は99Moの放射性崩壊の主要生成物である。ジェネレータ内で、従来、99Moは酸化アルミニウムの床に吸着され、崩壊して99mTcを生成する。99mTcは比較的短い半減期を有するので、約24時間後にイオン交換カラム内で過渡平衡が成立する。従って、塩化物イオンの溶液、すなわち無菌食塩水をイオン交換カラム内に流せば、イオン交換カラムから99mTcを毎日溶出することができる。これによって、99Moではなく99mTcを塩化物イオンで置換するイオン交換反応が促進される。
【0004】
放射性医薬品の場合、放射性同位体生成プロセスは、無菌条件下で、すなわちジェネレータ内への細菌の混入が決して起こらないように、実施するのが極めて望ましい。さらに、ジェネレータのイオン交換カラムに用いられる同位体が放射性であり、適切に取り扱わなければ極めて危険であることから、放射性同位体生成プロセスは放射線医学的に安全な条件下で実施しなければならない。そのため、現在のラジオアイソトープジェネレータは、内部のイオン交換カラムとの外部流体接続部を与える流体出入口を備えた閉鎖ユニットとして組み立てられている。
【0005】
米国特許第3564256号明細書には、イオン交換カラムが円筒形ホルダ内にあり、ホルダが2つの箱形要素内部に配置され、箱形要素が適切な放射線遮蔽の内部に配置されたラジオアイソトープジェネレータが記載されている。ホルダは両端がゴム栓で閉鎖されており、箱形要素はゴム栓の両端に通路を有しており、その内部にそれぞれ針が配置されている。針の最外端部には迅速結合部材が設けられていて、食塩水を収容した注入器容器を2つの針の一方と接続し、回収容器をもう一方の針と接続できるようになっている。同明細書では、2つの注入器が閉鎖系を形成するので、空気を抜いたり追加する必要が全くないことを認めている。
【0006】
米国特許第4387303号明細書には、分岐管を介して溶離液導管に空気を導入するラジオアイソトープジェネレータが記載されているが、空気は上流で流体に導入されるので、回収すべき溶離液を供給するのに用いられる中空スパイクは単一の内孔を有する。
【0007】
米国特許第4801047号明細書には、ラジオアイソトープジェネレータ用の分注装置が記載されており、イオン交換カラムからの所望放射性同位体の溶出に用いられる食塩水を収容したバイアルが、バイアルのシールの穿刺及び食塩水の抽出に用いられる中空針に対して移動可能なキャリアに取り付けられている。この特許の図面には、一方が空気を送るためのもので他方が流体を回収するためのものである2本の別個の離間した中空針がはっきりと図示されている。分注装置は弾性ストッパを貫通するためのもので、そのため溶離剤容器の回転運動でストッパが引き裂かれ、ひいてはシステムに空気が制御不能な状態で導入され無菌環境が破壊されるという問題が起こる。同様の二重針システムは米国特許第5109160号明細書にも記載されている。
【0008】
米国特許第4211588号明細書に例示されているように2つの流路を備える単一のスパイクを使用する穿刺装置が知られているが、そうした穿刺装置の用途は概して静脈注射システムに制限されてきた。
【特許文献1】米国特許第3564256号明細書
【特許文献2】米国特許第4387303号明細書
【特許文献3】米国特許第4801047号明細書
【特許文献4】米国特許第5109160号明細書
【特許文献5】米国特許第4211588号明細書
【特許文献6】特開平09−178899号公報
【特許文献7】実願昭53−157731号(実開昭55−075334号)のマイクロフィルム
【特許文献8】実願昭47−108302号(実開昭49−065094号)のマイクロフィルム
【特許文献9】実願昭63−148913号(実開平02−068855号)のマイクロフィルム(周知例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、構成が単純でありながら、使用時に必要とされる程度の無菌性を担保しかつ放射線防護が維持されるラジオアイソトープジェネレータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、放射性成分を含有する流体を生成する装置を提供するが、当該装置は、放射性同位体を収容する同位体容器が内部に配置された遮蔽室を備えていて、遮蔽室が同位体容器の両端との第1及び第2の流体接続部と、第1及び第2の流体接続部の各々からそれぞれ流体入口及び流体出口まで延在する流体導管とを含んでおり、流体入口は、略円形断面を有する単一のスパイクを備えており、スパイクはバイアルのゴムシールを貫通するように適合しており、スパイクが2つの内孔を有していて、第1の内孔がスパイクの先端に隣接する第1の開口部から流体導管との流体接続部まで延材しており、第2の内孔がスパイクの第2の別個の開口部から濾過吸気口まで延材していることを特徴とする。
【0011】
そこで、本発明では、スパイクが貫通したバイアルが回転運動しても、未濾過空気の混入を生じるようなゴムシールの引裂きを生じない。従って、この構成のラジオアイソトープジェネレータは、使用中にジェネレータの無菌条件が維持されることを担保する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、例示を目的として、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1に、外容器2と、外容器2に密閉可能に固定されるトッププレート3と、トッププレート3の上方で外容器2に固定される別個のトップカバー4とを備えたラジオアイソトープジェネレータ1を例示する。外容器2の内側には、放射線遮蔽を与える内部遮蔽容器5が配置されており、該内部遮蔽容器は、限定的ではないが好ましくは、ステンレス鋼シェル内部に鉛又は劣化ウランコアいずれかを配したものから作られる。遮蔽容器5は、イオン交換カラム7を収容した管6を包囲している。イオン交換カラム7は好ましくはアルミニウムとシリカの混合物からなり、これにモリブデンがその放射性同位体の形態の99Moとして吸着されている。イオン交換カラムを収容した管6は脆破性ゴムシール8及び9を両端10及び11に備えており、脆破性ゴムシール8及び9は、図示した通り、使用時にそれぞれ中空針12及び13によって穿刺される。
【0014】
中空針12及び13はそれぞれ流体導管14,15と流体連絡しており、流体導管14,15はそれぞれ溶離剤入口16及び溶出液出口17と流体連絡している。流体導管14,15は好ましくは可撓性プラスチックチューブである。中空針12から延在するチューブ14は、遮蔽容器5の上部開口部19を塞ぐ容器プラグ18内の経路を通って、容器プラグ18から溶離剤入口16まで延在する。中空針13から延在するチューブ15は、遮蔽容器5内の経路を通って溶出液出口17に至る。内部遮蔽容器5は外容器2よりも小さく、そのため外容器2内の遮蔽容器5の上方に自由空間20が存在する。チューブ14,15の長さはいずれも中空針12,13をそれぞれ溶離剤入口16及び溶出液出口17に接続するのに要する最小長さよりも格段に大きいので、中空針から溶離剤入口及び溶出液出口まで延在するチューブ14,15の一部がこの自由空間20に収容される。
【0015】
ラジオアイソトープジェネレータ1のトッププレート3は1対の開口部21を有しており、それらを貫通してそれぞれ溶離剤入口及び出口構成部品が突出している。溶離剤入口及び溶出液出口構成部品は各々中空スパイク22であるが、入口構成部品の場合には、中空スパイクは2つの穴を有しており、その一方は流体を流すためのもので、もう一方は濾過吸気口に接続している。これは図2に一段と明瞭に図示されており、以下でさらに詳しく説明する。中空スパイク22は、細長い概略円筒形のスパイク本体23と、スパイク本体23の一端に装着又はそれと単一部品として成形された環状保持プレート24とからなる。スパイク本体23の反対端は尖端として造形されており、尖端の近傍にスパイク本体の内部と連絡した開口部を有している。このスパイク本体23の尖端は、試料バイアルに一般にみられるタイプのシール膜を穿刺することができるように造形されている。環状保持プレート24はスパイク本体23から外側に突き出たスカート部を形成しており、スパイク本体の周囲に連続していてもよいし、或いは複数の個別の突出部の形態として不連続であってもよい。
【0016】
ラジオアイソトープジェネレータ1のトップカバー4も、トッププレート3の開口部21と整列するように構成され、スパイク本体23が貫通できるように造形された1対の開口部25を備えている。こうして、中空スパイク22の各々は、トッププレート3の内側に設けられた部材支持体26によってその環状保持プレート24に保持・支持されるように構成されており、中空スパイク本体23はトッププレート3及びトップカバー4両方の開口部を通して外容器2の外部に突出する。トップカバー4の各開口部25は、同位体回収バイアル又は食塩水供給バイアルのいずれか一方を受け入れて支持するように造形されたウェル27の底に配置される。このように、いずれのバイアルも外容器2の外側に収容され、イオン交換カラム7からの放射線に曝露されない。
【0017】
放射性同位体の溶離に必要な塩化物イオンをイオン交換カラムに供給するため、イオン交換カラムに圧力差を成立させて食塩水をイオン交換カラム7内に引込む。これは、チューブ14及び中空針12によってイオン交換カラム7の頂端部10と流体連絡した溶離剤入口16に食塩水供給バイアルを接続し、真空排気した回収バイアルをチューブ15及び中空針13によってイオン交換カラム7の底端部11と流体連絡した溶出液出口17に接続することによって達成される。圧力差は、供給バイアル内の食塩水の液圧と真空排気した回収バイアル内の極めて低い圧力とによって確立される。これによってイオン交換カラム7を通して食塩水が流れ、回収バイアルに娘放射性同位体が運ばれる。
【0018】
図2に示す通り、溶離剤入口16の中空スパイク22は断面が略円形の単一本体28であり、スパイクの尖端の両側の開口部に通じた2つの内孔29、30を有している。第1の内孔29は溶離剤内孔であり、チューブ14に接続されたスパイクの出口流体接続部と直接連絡している。2つの内孔の第2の内孔30は空気内孔であり、フィルタ室31及び空気穴32に通じている。スパイクの2つの開口部は、図示の通り、いずれもスパイクの先端に隣接しているが、これは必ずしもすべての事例で必須なわけではない。空気内孔用の開口部は、スパイクの本体の下側の低い位置に配置してもよい。フィルタ室31には、好ましくは、吸い込んだ空気から細菌を除去するのに適したPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPVDF(ポリフッ化ビニリデン)のような材料のフィルタディスク33を収容されている。
【0019】
流体入口のこの構成によって、バイアル内の圧力を等しくするのに必要な空気が流体流れに入り込むことなく、バイアルから食塩水を抜き取ることができる。さらに重要なことは、食塩水バイアルのシールを貫通するのに略円形断面の単一のスパイクを用いているので、ウェル27内でバイアルが回転運動しても、未濾過空気の混入や放射性同位体回収時の無菌条件の破壊を招きかねないシールの引裂きその他の損傷を生じない。
【0020】
このように、上述のラジオアイソトープジェネレータの実施形態は、無菌条件下で放射性同位体を回収するための信頼性が高く効果的な装置を提供する。ラジオアイソトープジェネレータ及びジェネレータの構築法のその他の代替的特徴は、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲から逸脱することなく想定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るイオン交換カラムとの流体接続部を有するラジオアイソトープジェネレータを示す図。
【図2】図1のラジオアイソトープジェネレータの流体入口の拡大断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽容器(5)が内部に配置された外容器(2)と、外容器(2)に密閉可能に固定されるトッププレート(3)と、トッププレート(3)の上方で外容器(2)に固定される別個のトップカバー(4)とを備えたラジオアイソトープジェネレータ(1)であって、
上記遮蔽容器(5)が、容器プラグ(18)で塞がれる上部開口(19)を備えているとともに、イオン交換カラム(7)を収容した管(6)を包囲しており、該管(6)はその両端(10,11)に脆破性ゴムシール(8,9)を備えていて、脆破性ゴムシール(8,9)は使用時にそれぞれ、流体導管(14,15)と流体連絡する中空針(12,13)によって穿刺され、流体導管(14,15)はそれぞれ溶離剤入口(16)及び溶出液出口(17)と流体連絡していて、流体導管(14)は容器プラグ(18)内の経路を通って容器プラグ(18)から溶離剤入口(16)まで延在し、流体導管(15)は遮蔽容器(5)内の経路を通って溶出液出口(17)まで延在しており、
上記トッププレート(3)が1対の開口部(21)を有していて、それらの開口部(21)を貫通してそれぞれ溶離剤入口部品及び溶出液出口部品が突出しており、該溶離剤入口部品及び溶出液出口部品が各々、細長い概略円筒形のスパイク本体(23)と環状保持プレート(24)とからなる中空スパイク(22)であり、スパイク本体(23)の反対端は尖端として形作られているとともに、尖端の近傍にスパイク本体の内部と連絡した開口部を有しており、環状保持プレート(24)はスパイク本体(23)から外側に突き出たスカート部を形成しており、溶離剤入口部品用のスパイク本体(23)は、流体を流すための穴と濾過吸気口に接続される穴との2つの穴を有しており、各中空スパイク(22)は、トッププレート(3)の内側に設けられた部材支持体(26)によってその環状保持プレート(22)で保持・支持されるように構成されており、
上記トップカバー(4)が、トッププレート(3)の開口部(21)と整列するように構成された1対の開口部(25)であって、スパイク本体(23)が貫通できるように形作られた1対の開口部(25)を備えており、開口部(25)の各々が、同位体回収バイアル又は食塩水供給バイアルのいずれか一方を受け入れて支持するように形作られたウェル(27)の底に配置されている、
ラジオアイソトープジェネレータ(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−66275(P2010−66275A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284627(P2009−284627)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2003−585112(P2003−585112)の分割
【原出願日】平成14年12月11日(2002.12.11)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】