説明

ラジオグラフィX線フィルム

【課題】ポリマ支持体を含むラジオグラフィX線フィルムを提供する。
【解決手段】1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層が、支持体の各面上にコーティングされる。青色色素は、ポリマ支持体または隣接する親水性層の少なくとも一方に、80以下のLおよび−25以下のbであるCIELAB測定値をもたらすのに十分な量で含有される。この構成は、画像形成および現像後に、所望の視覚コントラスト、画像トーン、b、および画像品質を有するラジオグラフィ画像をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、フィルム、撮像、およびラジオグラフィ(radiography)の分野、特にX線ラジオグラフィの分野に関する。より詳細には、本発明は、青みがかったX線フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
W.C.レントゲンは、ハロゲン化銀撮像要素の露光によって、X放射線を発見した。1913年、Eastman Kodak Companyは、特にX放射線(X線)で露光されることが意図される、その最初の製品を売り出した。今日、ラジオグラフィ用のハロゲン化銀フィルムは、世界中に広まった医学的診断画像の大部分を占める。そのようなフィルムは、像様露光後に適切な湿式現像および定着光化学物質で処理することによって、視認可能な白黒画像を提供する。
【0003】
医学的ラジオグラフィにおいて、患者の解剖学的構造の画像は、患者をX線で露光し、透過するX放射線のパターンを、透明な支持体にコーティングされた少なくとも1つの放射線感受性ハロゲン化銀エマルジョン層を含有するラジオグラフィフィルムを使用して記録することにより生成される。患者の被曝を減少させる手法は、1つ以上のリン含有増感スクリーンを、ラジオグラフィフィルムと組み合わせて(通常は、フィルムの正面および背面の両方で)用いることである。増感スクリーンは、X線を吸収し、より長い波長の電磁放射線、即ちハロゲン化銀エマルジョンがより容易に吸収する放射線を放出する。
【0004】
患者の被曝を減少させるための別の技法は、2つのハロゲン化銀エマルジョン層を、フィルム支持体の両面にコーティングして、「デュアルコーティングされた」ラジオグラフィフィルムを形成し、このフィルムがさらにより少ない露光量で適切な画像を提供できるようにすることである。当然ながら、いくつかの商品は、シングルおよびデュアルコーティングされたフィルムの両方を、1つまたは2つの増感スクリーンと組み合わせたアセンブリを提供し、X線に対して可能な限り低い患者の被曝量を可能にする。典型的な、フィルムとスクリーンとの配置構成は、例えば米国特許第4,803,150号(ディッカーソンら)、米国特許第5,021,327号(ブンクら)、および米国特許第5,576,156号(ディッカーソン)に、非常に詳細に記載されている。
【0005】
医療用ラジオグラフィX放射線フィルムは、現在、多様なラジオグラフィ撮像の要求を満たすために、いくつかの異なるコントラストのものが製造されている。これらのフィルムには、市販のCarestream Health TMAT−Gフィルムなどの高コントラストフィルム、およびCarestream Health TMAT−Lフィルムなどの低コントラストフィルムが含まれる。高コントラストフィルムは、狭い範囲のX放射線吸光度を示す解剖学的構造部分(骨など)を撮像するよう設計される。中および低コントラストフィルムは、異なるX放射線吸光度を有する解剖学的構造のいくつかの異なるタイプを同時に撮像するよう設計される。胸腔(胸)のラジオグラフィは、この要求の一例であり、放射線科医が、比較的放射線を通さない縦隔領域(脊柱、心臓、および横隔膜の裏)を撮像する必要がある場合である。これらの領域は、非常に稠密であり、フィルムの所望の透過および撮像に関してはより多くの量のX放射線を必要とする。しかし、より放射線を透過する肺を撮像することも望まれている。そのような撮像は、X放射線を少ししか必要としない。Carestream Health InSight(商標)ITフィルムおよびCarestream Health InSight(商標)VHCフィルムと、適切な増感スクリーンとは、この広範な組織密度を高い撮像品質でかつ様々な露出寛容度で記録するよう設計された、低クロスオーバシステムである。これらの低クロスオーバシステムにおいて、デュアルコーティングされたハロゲン化銀層は、層に最近接したX線増感スクリーンによって主に露光される。
【0006】
青みがかった色素を含有するX線ラジオグラフィフィルムは、数十年にわたり利用されてきた。そのような色素である主な理由は、得られたラジオグラフィ画像の画像トーンを改善することである。X線ラジオグラフィフィルムをX線で露光することによって形成されたラジオグラフィ画像は、多くの放射線科医にとって好ましくない黄褐色の外観を有する銀の堆積物からなる。現像した銀から得られた色は、スペクトル吸収技法を使用して測定することができ、可視スペクトルの青色部分ではより高い吸光度として測定される。この色を補正するために、青みがかった色素をフィルムに添加し、それによって、可視スペクトルの緑および赤色部分のスペクトル吸光度を増大させる。その結果は、許容可能な青−赤色外観を有するラジオグラフ、即ち改善された画像トーンのラジオグラフである。
【0007】
青みがかった色素の添加には、処理されたラジオグラフィフィルムの非露光または低露光領域フィルムのDminまたは全光学密度を増大させる効果もある。フィルムの露光および処理後に測定されたDmin値は、一般に、少なくとも以下の2つの因子、即ち、(1)処理の前後に存在する支持体および着色色素に起因した光学密度、および(2)処理そのものから得られた光学密度を含有すると見なされる。本発明について論じる目的で、因子(2)を、従来のシルバーフォグ(silver fog)と呼ぶ。ラジオグラフのDmin値は、医学的ラジオグラフィの分野においてX線フィルムの性能を監視する様々な規格委員会によって確立されたように、顧客使用におけるラジオグラフィフィルムの許容可能な性能に関する第1の判断基準と見なされる。これらの規格委員会は、X線フィルムの性能を測定する様々なフィルムのパラメータに制限を課す、地方、州全体、国家、またはさらに国際的な組織にすることができる。一般に、より低いDmin値は改善されたラジオグラフをもたらし、詳細および特徴を読むためのより高い画像品質が得られることが認められる。いくつかの規格委員会は、フィルムのDminに許容可能な制限を課し、フィルムの全寿命に対して0.25または0.30程度に低いものにした。これらの低Dmin仕様では、シルバーフォグから得られたDminが時間と共に増大するので、しばしばフィルム有効期限を短くする。
【0008】
米国特許第1,973,886号(スカンラン)は、X線ベース材料に青色の色合いを添加するステップを含むX線フィルムについて述べている。
【0009】
米国特許第5,851,243号(ディッカーソン)の特許は、X線フィルムの最小密度領域におけるニュートラル密度(neutral density)を増大させるための、青色色素の添加について述べている。
【0010】
米国特許第6,517,986号(ディッカーソン)は、着色剤を含有するX線フィルムのaおよびb値について述べている。
【0011】
Lawrence Berkeley National Laboratory in Berkeley、CA 94720のサム M.ベルマンによる刊行物「New Discoveries in Vision Effect Lighting Practice」は、眼の光感受性に関する発見について述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,803,150号明細書
【特許文献2】米国特許第5,021,327号明細書
【特許文献3】米国特許第5,576,156号明細書
【特許文献4】米国特許第1,973,886号明細書
【特許文献5】米国特許第5,851,243号明細書
【特許文献6】米国特許第6,517,986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
依然として、改善されたX線フィルムが求められている。特に、マンモグラフィおよび汎用ラジオグラフィで使用するための、改善されたフィルムが求められている。そのようなフィルムは、改善された視覚コントラスト、改善された画像品質を有すると考えられ、かつ/または改善されたラジオグラフィもしくは放射線学的診断の可能性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ポリマ支持体を含み、このポリマ支持体の両面に堆積された1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層を有する、ラジオグラフィX線フィルムを提供する。ハロゲン化銀エマルジョンは、異なる組成を有していてもよいが、全ハロゲン化銀粒子投影表面積の少なくとも50%は、平板状のハロゲン化銀を含む。青色色素は、ポリマ支持体内に、または1つ以上の追加の親水性層に、またはポリマ支持体および1つ以上の追加の親水性層の両方に含有される。青色色素は、80以下のLおよび−25以下のb値であるCIELAB測定値をもたらすよう、十分な量で存在する。
【0015】
本発明は、改善されたX線フィルムも提供する。
【0016】
本発明は、改善された視覚コントラストを有するX線フィルムも提供する。
【0017】
本発明はさらに、改善された画像品質を有するX線フィルムを提供する。
【0018】
本発明はさらになお、改善されたラジオグラフィまたは放射線学的診断の可能性を有するX線フィルムを提供する。
【0019】
これらの実施形態は、単なる例示的な例として与えられ、その目的は、本発明の1つ以上の実施形態の具体化と考えられる。開示された本発明によって生得的に実現されるその他の望ましい目的および利点が生じまたは当業者に明らかにされよう。本発明は、添付の請求項によって規定される。
【0020】
本発明の、前述のおよびその他の目的、特徴、および利点は、添付図面に示されるように、本発明の実施形態に関する以下のより具体的な説明から明らかにされよう。
【0021】
図面の要素は、互いに対して、必ずしも縮尺に合わせて示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】画像支持体の透過率を示す図である。
【図2】眼の感受性を示す図である。
【図3】商用フィルムの光学特性を示す図である。
【図4】商用フィルムの光学特性を示す図である。
【図5】商用フィルムの光学特性および青色色素被覆範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下は、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明である。
【0024】
CIELAB b値は、画像の黄色み対青みについて示しており、より高い正の値では黄色みがより強くなる傾向を示し、CIELAB a値は、緑色対赤みを比較するものであり、より高い正の値では赤みに対する割合がより高くなることを示す。CIELAB Lまたは明度(luminosity)は、対象から眼までどのくらいの光が透過するかの尺度である。L、a、およびbの測定技法は、ビルマイヤー(Billmeyer)およびザルツマン(Saltzman)のPrinciples of Color Technology、第2版、Wiley、New York、1981、第3章に記述されている。aおよびbの測定は、the Commission Internationale de L’Esclairage(International Commission on Illumination)によって開発された。
【0025】
「画像品質」という用語は、完全に処理されたフィルムにおいて放射線撮影上有意な情報を得る能力をランク付けする、主観的要因を指す。例えば、より高い画像品質は、より良好な画像診断能力を示すことができる。
【0026】
本明細書で用いられる「コントラスト」という用語は、第1の参照点(1)として最小密度よりも高い0.25という密度(D)を使用し、第2の参照点(2)として最小密度よりも高い2.0という密度(D)を使用する、ラジオグラフィフィルムの特性曲線から得られた平均コントラストを示し、このコントラストは、ΔD(即ち、1.75)÷Δlog10E(log10−log10)であり、EおよびEは、参照点(1)および(2)での露光レベルである。
【0027】
「視覚コントラスト」という用語は、上記にて定義された画像品質と、下記の定義についてのフィルムの特性曲線のコントラストとの両方に依存する、主観的要因であり、その定義とは、例えば、ラジオグラフから得られた情報の当業者によって通常使用される診断照明条件下で視認されるままの、完全に処理されたX線フィルム(ラジオグラフ)のより高い視覚コントラストは、フィルムの詳細なフィーチャがより容易に検出されることを、意味することができる。
【0028】
「完全に前もって硬化された」という用語は、湿式処理の過程で、ラジオグラフィフィルムの重量増加をその当初の(乾燥)重量の120%未満に制限するレベルまで、親水性コロイド層を予め硬化することを指す。重量増加は、そのような処理中の水の摂取にほぼ完全に起因し得る。
【0029】
「高速アクセス処理」という用語は、45秒以下でのラジオグラフィフィルムのドライトゥドライ処理(dry−to−dry processing)を示すのに用いられることを指す。即ち、乾式像様露光ラジオグラフィフィルムが湿式処理器に入る時間から乾式完全処理フィルムとして出て来るまでが45秒以下である。2種以上のハロゲン化物を含有する粒子およびハロゲン化銀エマルジョンに言及する場合、ハロゲン化物は、モル濃度を上昇させるために挙げられる。
【0030】
「全粒子投影面積」という用語は、フィルム内の全ての粒子を合計したエマルジョン粒子の基底面単位の面積を指す。本明細書に記述される平板状および立方体エマルジョン粒子の場合、基底面はそれぞれ(111)および(100)である。
【0031】
「等価円直径」(ECD)という用語は、ハロゲン化銀粒子と同じ投影面積を有する円の直径を定義する。
【0032】
エマルジョン粒子の「アスペクト比」という用語は、最大と最小の線形寸法の比を指す。例えば、平板状粒子のアスペクト比は、ECDと厚さとの比である。
【0033】
「変動係数」(COV)という用語は、粒子ECDの標準偏差を平均粒子ECDで割った値を100倍したものと定義される。より低いCOVは、エマルジョン粒度分布におけるより高い単分散度を意味する。
【0034】
「被覆力」という用語は、最大密度と、mg/dmを単位として測定された現像済みの銀との比を100倍した値を示す。
【0035】
「デュアルコーティングされた」という用語は、支持体の正面および背面の両方に配置されたハロゲン化銀エマルジョン層を有する、ラジオグラフィフィルムを指す。本発明で使用されるラジオグラフィハロゲン化銀フィルムは、「デュアルコーティングされ」ている。
【0036】
ラジオグラフィフィルムの「写真速度」という用語は、少なくとも1.0プラスDminの密度を得るのに必要な露光を指す。
【0037】
画像トーンを指す際の「より温かい」および「より冷たい」という用語は、それぞれ正または負の値がより高い、最小密度または密度=1.2で測定されたCIELAB b値を意味するのに使用される。b値は、画像の黄色み対青みについて記述しており、正の値が大きいほど黄色みがより大きくなる傾向を示し、a値は、緑色対赤みを比較するものであり、正の値が大きいほど赤みに対する割合がより高くなることを示す。Lまたは明度は、対象から眼まで光がどの程度透過するかの尺度である。L、a、およびbの測定技法は、ビルマイヤーおよびザルツマンのPrinciples of Color Technology、第2版、Wiley、New York、1981、第3章に記述されている。aおよびbの測定は、the Commission Internationale de L’Esclairage(International Commission on Illumination)によって開発された。
【0038】
「PAI」という用語は、材料中の「1次活性成分」を指す。
【0039】
本発明は、ラジオグラフィに関して記述されるが、当業者なら、本発明をその他の撮像適用に、例えばビジネスイメージング(business imaging)に適用できることが理解されよう。
【0040】
本発明によれば、改善されたX線フィルムの形成が可能になる。本発明のX線フィルムは、特にマンモグラフィ並びにその他の領域で使用される、より良好な視覚コントラストを有する。本発明のX線フィルムは、改善された画像品質を有する。本発明のX線フィルムは、改善されたラジオグラフィまたは放射線学的診断が可能である。フィルムは、既にX線フィルムに入っている材料に類似しているが異なる量の材料を利用して、低コストで改善された結果を実現させる。改善されたX線フィルムはさらに、X線露光を行い、露光されたX線フィルムをX処理し、処理された画像をX線フィルム上に表示するための、現行の装置または設備に使用することができる。
【0041】
2種以上のハロゲン化銀エマルジョンが、フィルム支持体のそれぞれの面に堆積される場合、「底面」のハロゲン化銀エマルジョン層は、フィルム支持体に最近接しており、それを本明細書では、支持体のどちらの面に層が存在するかに応じて「第1の」または「第3の」エマルジョンと定義する。「最上面」のハロゲン化銀エマルジョン層は、フィルム支持体から遠くにあり、これを本明細書では、支持体のどちらの面に層が存在するかに応じて、第2のまたは第4のエマルジョンと定義する。このように、「第1の」および「第2の」ハロゲン化銀エマルジョン層は、支持体の片面にあり、「第3の」および「第4の」ハロゲン化銀エマルジョン層は、支持体の反対側の面にある。
【0042】
本発明のラジオグラフィフィルムは、その両面に1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層と任意選択で1つ以上の非放射線感受性親水性層(複数可)とが配置された、柔軟な支持体を含む。様々な層の中のハロゲン化銀エマルジョンは、同じにまたは異ならせることができ、1つ以上の層内に任意の結晶形態の様々なハロゲン化銀粒子の混合物を含むことができる。これらのハロゲン化銀粒子は、エマルジョン粒子としてより一般に公知である。
【0043】
一実施形態では、本発明は、ポリマ支持体を含み、かつこのポリマ支持体の両面に1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層が配置されている、ラジオグラフィX線フィルムを提供する。ハロゲン化銀エマルジョンは、異なる組成を有していてもよいが、全ハロゲン化銀粒子投影表面積の少なくとも50%は、平板状のハロゲン化銀を含む。青色色素は、ポリマ支持体に、または1つ以上の追加の親水性層に、またはポリマ支持体と1つ以上の追加の親水性層との両方に含有される。青色色素が、Lが80以下でありb値が−25以下であるCIELAB測定をもたらすよう、十分な量で存在する。
【0044】
一実施形態では、ラジオグラフィX線フィルムは、支持体の両面にコーティングされた、同じ単一のハロゲン化銀エマルジョン層を有し、その中のハロゲン化銀エマルジョン粒子は、両方の層を組み合わせた中にハロゲン化銀粒子の全投影表面積の少なくとも50%が、5以上のアスペクト比を有する平板状粒子によってもたらされるように、異なる結晶形態の分布を含有する。フィルムは、支持体のそれぞれの面のハロゲン化銀エマルジョン上に、保護オーバコート(以下に記述する)を有することも好ましい。
【0045】
別の実施形態では、ラジオグラフィX線フィルムは、支持体のそれぞれの面に、異なってはいるがそれぞれX線フィルム中の全てのハロゲン化銀粒子の全投影表面積の少なくとも50%が5以上のアスペクト比を有する平板状粒子によって提供されている粒子結晶形態の分布を有している、単一のハロゲン化銀エマルジョン層を有する。
【0046】
その他の実施形態では、ラジオグラフィX線フィルムは、支持体の各面上にコーティングされた、平板状粒子、非平板状粒子、またはこれらの混合物をそれぞれが含んでいる異なるハロゲン化銀エマルジョン層を有し、このX線フィルム中の全てのハロゲン化銀粒子の全投影表面積の少なくとも50%は、5以上のアスペクト比を有する平板状ハロゲン化銀粒子を提供する。
【0047】
支持体は、X放射線および光の両方を透過させる、任意の従来の撮像またはラジオグラフィ要素支持体の形をとることができる。本発明のフィルムに有用な透明支持体は、Research Disclosure、1996年9月、Item 38957 XV:Supports、およびResearch Disclosure、Vol.184、1979年8月、Item 18431、XII:Film Supportsに記載されているものの中から選択することができる。Research Disclosureは、Kenneth Mason Publications,Ltd.、The Book Barn、Westbourne、Hampshire、UK PO10 8RSによって出版されている。
【0048】
その最も単純な形では、透明フィルム支持体は、親水性ハロゲン化銀エマルジョン層またはその他の親水性層の直接接着が可能になるよう選択された透明フィルムからなる。より一般的には、透明フィルムはそれ自体が疎水性であり、下塗り層がフィルム上にコーティングされて、親水性ハロゲン化銀エマルジョン層の接着を容易にする。典型的には、フィルム支持体は、無色または青みがかっている(青みがかった色素は、支持体フィルムおよび下塗り層の一方または両方に存在する)。上記にて引用されたResearch Disclosure、Item 38957、Section XV:Supportsを参照すると、関心は、下塗り層について記述している段落(2)および好ましいポリエステルフィルム支持体について記述している段落(7)に、特に向けられている。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、フィルムは、支持体、またはこの支持体にコーティングされた1つ以上の層、または支持体とコーティング層との両方に含有される十分な青色色素を含有し、支持体および全ての青色色素のCIELAB測定が80以下のLおよび−25以下のbを有するようになされている。
【0050】
その他の実施形態では、少なくとも1つの非光感受性親水性層が、フィルム支持体のそれぞれの面にある1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層に含まれる。この層を、中間層もしくはオーバコート、またはその両方で呼んでもよい。
【0051】
ハロゲン化銀エマルジョン層は、X放射線に応答する1つ以上のタイプのハロゲン化銀粒子を含む。そのようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化物の合計全モル数が銀のモル数に等しいことを受けて、臭化物、ヨウ化物、および塩化物の任意の組合せを有するハロゲン化物組成物を含んでいるものを含む。特に考えられるハロゲン化銀粒子の組成は、所定のエマルジョン層の銀の全モル数に対して少なくとも80モル%の臭化物(好ましくは少なくとも98モル%の臭化物)を有するものを含む。そのようなエマルジョンは、例えば臭化銀、ヨード臭化銀、クロロ臭化銀、ヨードクロロ臭化銀、およびクロロヨード臭化銀からなるハロゲン化銀粒子を含む。ヨウ化物は一般に、より迅速な処理を容易にするために、3モル%以下(エマルジョン層の銀の全モル数に対して)に制限される。好ましくは、ヨウ化物は、0から2モル%(エマルジョン層の銀の全モル数に対して)であり、または粒子から完全に除去される。各ハロゲン化銀エマルジョン層のハロゲン化銀粒子は、同じでも異なっていてもよく、または、異なる結晶形態および/または異なるハロゲン化銀組成を有する粒子と異なる化学的およびスペクトル増感剤との混合物であってもよい。
【0052】
本発明で有用なハロゲン化銀粒子は、平板状、立方体、8面体、立方8面体、正10面体、菱形、斜方晶、丸みを帯び、球状、またはその他の非平板状形態を含むがこれらに限定することのない、任意の所望の形態を有することができ、または、そのような形態の2種以上の混合物を含むことができる。平板状粒子の基底面は、6角形、3角形、丸みを帯び、および切頂6面体などの形態の、任意の組合せを有していてもよい。フィルムは、組み合わせた全てのハロゲン化銀エマルジョン層内の全粒子投影面積の少なくとも50%が平板状粒子により提供されている、エマルジョンから調製してもよい。好ましくは、フィルム内にコーティングされた粒子のほとんど(少なくとも50%)が平板状粒子であるが、平板状形態からの全投影表面積の少なくとも50%であることを条件に、任意の形態も可能である。一実施形態では、ハロゲン化銀層の少なくとも1つがさらに、1つ以上の追加のその他のハロゲン化銀粒子形態を含み、その1つは単分散立方ハロゲン化銀粒子である。
【0053】
したがって、異なるハロゲン化銀エマルジョン層は、フィルム内の全ての粒子の全投影表面積の少なくとも50%が平板状粒子からのものである限り、同じまたは異なる形態のハロゲン化銀粒子を有することができる。いくつかの画像形成層は、立方体エマルジョンを使用し、これらの粒子は、一般に直径が少なくとも0.5μmおよび2μm未満(好ましくは、約0.6から約1.4μm)である立方体形態を有する。その他の非平板状形態に有用な直径の値は、立方および平板状粒子に与えられた有用な直径の値に照らして、当業者に容易に明らかにされよう。
【0054】
一般に、フィルムで使用される平板状粒子の平均等価円直径(ECD)は、0.3μmより大きくかつ5μm未満であり、好ましくは0.5μmより大きく4μm未満である。最も好ましいECD値は、約1.0から約3.0μmである。本発明で使用される平板状粒子の平均厚さは、一般に、少なくとも0.03μmでありかつ0.2μm以下であり、好ましくは少なくとも0.04μmでありかつ0.15μm以下である。
【0055】
30%未満、好ましくは20%未満である粒子直径の変動係数(COV)を示すハロゲン化銀粒子を用いることも、望ましいと考えられる。マンモグラフィにおけるような、いくつかの実施形態では、都合よく実現できるほど高度な単分散性の粒子集団を用いることが望ましいと考えられる。高度な単分散性の粒子集団は、非常に低いCOVを有し、好ましくは10%よりも低い。単分散性立方体粒子集団のエマルジョンを生成するための方法は、当業者に周知である。
【0056】
一般に、全てのエマルジョン層から得たハロゲン化銀粒子投影面積の少なくとも50%(好ましくは少なくとも80%)は、平均アスペクト比が5以上であり、より好ましくは8よりも大きい平板状粒子によって提供される。
【0057】
所望の組成およびサイズを有する平板状粒子エマルジョンは、その開示が本願に引用して援用する下記の特許、即ち、米国特許第4,414,310号(ディッカーソン)、米国特許第4,425,425号(アボットら)、米国特許第4,425,426号(アボットら)、米国特許第4,439,520号(コフロンら)、米国特許第4,434,226号(ウィルガスら)、米国特許第4,435,501号(マスカスキー)、米国特許第4,713,320号(マスカスキー)、米国特許第4,803,150号(ディッカーソンら)、米国特許第4,900,355号(ディッカーソンら)、米国特許第4,994,355号(ディッカーソンら)、米国特許第4,997,750号(ディッカーソンら)、米国特許第5,021,327号(ブンクら)、米国特許第5,147,771号(ツァウアーら)、米国特許第5,147,772号(ツァウアーら)、米国特許第5,147,773号(ツァウアーら)、米国特許第5,171,659号(ツァウアーら)、米国特許第5,252,442号(ディッカーソンら)、米国特許第5,370,977号(ジートロウ)、米国特許第5,391,469号(ディッカーソン)、米国特許第5,399,470号(ディッカーソンら)、米国特許第5,411,853号(マスカスキー)、米国特許第5,418,125号(マスカスキー)、米国特許第5,494,789号(ダウベンディークら)、米国特許第5,503,970号(オルムら)、米国特許第5,536,632号(ウェンら)、米国特許第5,518,872号(キングら)、米国特許第5,567,580号(フェントンら)、米国特許第5,573,902号(ダウベンディークら)、米国特許第5,576,156号(ディッカーソン)、米国特許第5,576,168号(ダウベンディークら)、米国特許第5,576,171号(オルムら)、および米国特許第5,582,965号(ディートンら)に、非常に詳細に記載されている。
【0058】
アボットら、フェントンら、ディッカーソン、およびディッカーソンらの特許は、ゼラチン−ビヒクル、高臭化物(銀全体に対して80モル%以上の臭化物)平板状粒子エマルジョン、および本発明で有用なその他の特徴に加え、従来のラジオグラフィフィルムの特徴を示すためにも、引用されかつ本願に引用して援用する。
【0059】
コントラスト、並びに速度および相反特性などのその他の一般的な性質を改善するために、様々なハロゲン化銀ドーパントを個々に、また組み合わせて使用することができる。速度、相反性、およびその他の撮像特性を改善する従来のドーパントの要約は、上記にて引用されたResearch Disclosure、Item 38957、Section 1、Emulsion grains and their preparation、sub−section D、Grain modifying conditions and adjustments、段落(3)、(4)、および(5)によって提供されている。
【0060】
ハロゲン化銀エマルジョンおよびその調製に関する全体の要約は、上記にて引用されたResearch Disclosure、Item 38957、Section 1:Emulsion grains and their preparationによって提供されている。沈殿後および化学増感前に、エマルジョンを、上記にて引用されたResearch Disclosure、Item 38957、Section III:Emulsion washingによって開示されたような任意の都合のよい従来の技法により、洗浄することができる。
【0061】
エマルジョンは、Research Disclosure、Item 38957、Section IV:Chemical Sensitizationによって例示されるような、任意の都合のよい従来の技法によって、化学的に増感させることができる。硫黄、セレン、または金の増感(または、これらの任意の組合せ)が、特に考えられる。硫黄の増感が好ましく、例えば、チオスルフェート、チオスルホネート、チオシアネート、イソチオシアネート、チオエーテル、チオ尿素、システイン、またはローダニンを使用して、実施することができる。金および硫黄増感の組合せが最も好ましい。
【0062】
ネガ型エマルジョンコーティングの最小密度が増大する不安定性(即ち、エマルジョンフォグ、シルバーフォグとしても知られている)は、安定化剤、かぶり防止剤、アンチキンキング剤、潜像安定化剤、および同様の付加物を、コーティング前にエマルジョンおよび隣接する層に組み込むことによって、防止することができる。そのような付加物は、Research Disclosure、Item 38957、Section VII:Antifoggants and stabilizers、およびItem 18431、Section II:Emulsion Stabilizers、Antifoggants and Antikinking Agentsにより例示されている。
【0063】
ラジオグラフィフィルムの支持体の両面にある、ハロゲン化銀エマルジョン層およびその他の親水性層は、一般に、合成によって調製されたものおよび天然に生ずるものの両方のコロイドまたはポリマを含む従来のポリマビヒクル(ペプタイザーおよび結合剤)を含有する。最も好ましいポリマビヒクルは、ゼラチンまたはゼラチン誘導体を単独で、またはその他のビヒクルと組み合わせて含む。従来のゼラチン−ビヒクルおよび関連した層の特徴は、Research Disclosure、Item 38957、Section II.Vehicles,vehicle extenders,vehicle−like addenda and vehicle related addendaに開示されている。エマルジョンそのものは、Section II、段落A.Gelatin and hydrophilic colloid peptizersに記述されるタイプのペプタイザーを含有することができる。親水性コロイドペプタイザーは、結合剤としても有用であり、一般に、解膠機能のみを発揮するのに必要とされるよりもさらに高い濃度で存在する。好ましいゼラチンビヒクルは、アルカリ処理されたゼラチン、酸処理されたゼラチン、またはゼラチン誘導体(アセチル化ゼラチン、脱イオン化ゼラチン、酸化ゼラチン、およびフタル化ゼラチンなど)を含む。平板状粒子のペプタイザーとして使用されるカチオン性デンプンは、米国特許第5,620,840号(マスカスキー)および米国特許第5,667,955号(マスカスキー)に記載されている。疎水性および親水性の両方の合成ポリマビヒクルも、使用することができる。そのような材料には、ポリアクリレート(ポリメタクリレートを含む)、ポリスチレン、およびポリアクリルアミド(ポリメタクリルアミドを含む)が含まれるが、これらに限定するものではない。デキストランも使用することができる。そのような材料の例は、例えば、本願に引用して援用する米国特許第5,876,913号(ディッカーソンら)に記載されている。
【0064】
本発明のラジオグラフィフィルムのハロゲン化銀エマルジョン層(およびその他の親水性層)は、一般に、1種以上の従来の硬化剤を使用して完全に硬化される。このように、支持体の各面上の硬化剤の量は、一般に、支持体のその面上のポリマビヒクルの全乾燥重量に対して少なくとも0.3%から3%まで(好ましくは1%まで)である。
【0065】
この目的のため、ホルムアルデヒドおよび遊離ジアルデヒドであってスクシンアルデヒドおよびグルタルアルデヒドなど、ブロックドジアルデヒド、α−ジケトン、活性エステル、スルホン酸エステル、活性ハロゲン化合物、s−トリアジンおよびジアジン、エポキシド、アジリジン、活性オレフィンであって2つ以上の活性結合を有するもの、ブロックド活性オレフィン、カルボジイミド、3位が置換されていないイソキサゾリウム塩、2−アルコキシ−N−カルボキシジヒドロキノリンのエステル、N−カルバモイルピリジニウム塩、カルバモイルオキシピリジニウム塩、ビス(アミジノ)エーテル塩、特にビス(アミジノ)エーテル塩、表面付着カルボキシル活性化硬化剤を錯体形成塩と組み合わせたもの、カルバモイルオニウム、カルバモイルピリジニウム、およびカルバモイルオキシピリジニウム塩をある特定のアルデヒドスカベンジャと組み合わせたもの、ジカチオンエーテル、イミド酸塩およびクロロホルムアミジニウム塩のヒドロキシルアミンエステル、ハロゲン置換アルデヒド酸(例えば、ムコクロロおよびムコブロム酸)などの混合官能基の硬化剤、オニウム置換アクロレイン、その他の硬化官能基を含有するビニルスルホン、ジアルデヒドデンプンやコポリ(アクロレイン−メタクリル酸)などのポリマ硬化剤を含むがこれらに限定することのない、従来の硬化剤を使用することができる。
【0066】
本発明の一実施形態では、ラジオグラフィフィルム支持体の各面は、一般に少なくとも4から30mg/dm以下、好ましくは少なくとも6から20mg/dm以下のレベルで銀を含有する。さらに、各ハロゲン化銀エマルジョン層のポリマビヒクルの全被覆範囲は、一般に少なくとも4から50mg/dm以下、好ましくは20mg/dm以下である。
【0067】
マンモグラフィ、歯科、および非破壊試験などの本発明のその他の実施形態では、銀およびゲルのレベルがより高くてもよい。
【0068】
その他のポリマビヒクルの量は、支持体の各面上の様々な非銀層に組み込まれる。支持体の2面上の銀およびポリマビヒクルの量は、同じにしまたは異ならせることができる。これらの量は、乾燥重量を指す。
【0069】
ラジオグラフィフィルムは一般に、支持体の各面上に、1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層の物理的保護を典型的にもたらす表面保護オーバコートを含む。各保護オーバコートは、2つ以上の個別の層に細分することができる。例えば、保護オーバコートは、表面オーバコートおよび中間層(オーバコート層とハロゲン化銀エマルジョン層との間)に細分することができる。上記にて論じたビヒクルの特徴の他に、保護オーバコートは、オーバコートの物理的性質を修正する様々な付加物を含有することができる。そのような付加物は、Research Disclosure、Item 38957、Section IX:Coating physical property modifying addenda、A.Coating aids、B.Plasticizers and lubricants、C.Antistats、およびD.Matting agentsによって例示される。典型的には薄い親水性コロイド層である中間層は、エマルジョン層と表面オーバコートとの間に分離をもたらすのに使用することができる。つや消し防止粒子など、いくつかのエマルジョン適合タイプの保護オーバコート付加物を中間層に位置付けることは、非常に一般的なことである。支持体の少なくとも片面にあるオーバコートは、必要に応じて青色調色染料またはテトラアザインデン(4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンなど)を含むこともできる。
【0070】
保護オーバコートは一般に、エマルジョン層と併せて上記にて開示した同じタイプの中から選択された親水性コロイドビヒクルを含む。従来のラジオグラフィフィルムでは、保護オーバコートは、2つの基本的な機能を発揮するために設けられる。これらのオーバコートは、取扱いおよび処理中にエマルジョン層を物理的に保護するために、エマルジョン層と要素の表面との間に層を提供する。第2に、これらのオーバコートは、付加物、特にラジオグラフィフィルムの物理的性質を修正しようとするものを配置するのに、都合のよい部位を提供する。本発明のフィルムの保護オーバコートは、これら基本的な機能の両方を発揮することができる。
【0071】
一実施形態では、本発明は、所望のLおよびb値を実現するのに十分なレベルで青色調色アントラキノン色素を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)支持体上にコーティングされた、感光性ラジオグラフィフィルムを特徴とする。さらに、支持体に色素を添加する代わりに、青色調色染料を、任意のその他の隣接する層に添加することもできる。これらのレベルの青色調色染料と共に用いられるフィルムは、マンモグラフィなどの医学的ラジオグラフィ、歯科または汎用ラジオグラフィ、および非破壊試験、例えば工業用X線を含むがこれらに限定するものではない、任意の白黒写真フィルムの適用に使用することができる。
【0072】
任意の適切な青色色素を、本発明で利用してよい。典型的には、そのような色素はアントラキノン色素である。例示的なアントラキノン色素を以下に示す。
【化1】


(式中、G1、G2、およびG3はそれぞれ独立して、水素または任意のアルキル基である。)
4種の代表的な青色色素を、以下に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
一実施形態では、ラジオグラフィフィルムは、上記一般式によって表される1種以上のアントラキノン青色色素を含有するポリエチレンテレフタレート支持体にコーティングされる。これらの色素は、支持体、または1つ以上のエマルジョン層、中間層、および/または任意のその他の親水性層に添加することができる。色素は、ヒトの眼の暗順応応答を高めるのに十分なレベルで、フィルムに添加される。これらのレベルの青色調色染料と共に用いられるフィルムは、マンモグラフィなどの医学的ラジオグラフィ、歯科または汎用ラジオグラフィ、および非破壊試験、例えば工業用X線を含むがこれらに限定することのない、任意の白黒写真フィルムの適用で使用することができる。
【0075】
上述のように、ラジオグラフィフィルムは、何十年にもわたり、青みがかったフィルム支持体にコーティングされてきた。しかしその間、経験的観察および放射線科医の好みによること以外、なぜ青色調色染料が使用されたのかに関してはほとんど理解されなかった。照明の分野における最近の理解によれば(S.バーマン博士による上記参考文献参照)、医学的ラジオグラフィにおける青色調色染料の効果に関してより多くの洞察が得られる。この研究において、バーマン博士は、眼の網膜に達する発光体の暗順応含量を高めることによって、色収差のない(白黒)タスクの可視化に改善がもたらされることを主張している。
【0076】
図1は、青みがかったX線支持体の透過スペクトルを示し、この図は、使用された青色色素が、可視スペクトルの緑−赤領域の光を吸収しかつ青色光を透過することを示す。図2は、眼の杆体の感色性(暗所視)が、青色光に対してそのピーク感度を有することを示す。本発明者らは、ラジオグラフィフィルムの青色色素の量を増大させることによって、X線フィルムラジオグラフを視る際に眼に到達する光の暗順応含量が高められて、眼の視覚応答の改善がもたらされることを発見した。驚くべきことに、本発明者らは、X線ラジオグラフィの分野で教示されてきた値よりも著しく高い色素レベルで、画像品質(X線画像の診断能力)の改善が得られることを見出した。さらに、これらのより高いレベルの色素は、様々な監督官庁によって設定された規格の現行の許容される基準よりも高い、フィルムDmin値をもたらすことができる。文献の教示とは反対に、またラジオグラフィ規格によって確立されたように、本発明者らは驚くべきことに、これらのより高い色素レベルで画像品質が実際に上昇し、それに続いてフィルムDmin値が上昇することを見出した。
【0077】
上述のように、実質的により多くの青色色素を有するX線フィルムは、現行の規格よりも十分に高いレベルまで画像Dminを著しく上昇させ、X線画像の著しく高い診断能力をもたらす。シルバーフォグが持ち込まれて実現されたようなDmin値は、画像品質において著しく不十分である。
【0078】
本発明の適用のX線フィルムは、マンモグラフィフィルムに用いることができる。稠密な乳房は、X線をより多く吸収し、青色支持体がより過半を占めるより低いフィルム密度で提示される。サイコビジュアルコントラスト(pyschovisual contrast)による高い視覚化によって、稠密な乳房実質をより良好に撮像することになる。全体的な視覚コントラストも増大する。
【0079】
X線フィルムは、伝統的に、異なる画像トーン補正の求めに応じてかつ/またはフィルムDminに関する問題に応じて、異なる色素調色フィルム支持体にコーティングされてきた。上記背景技術のセクションで述べたように、フィルムのDminの部分は、フィルム支持体の光学密度から得られる。理解されるように、フィルム支持体Dminは、Lおよびbの両方に対して逆相関を有し、Dminレベルが高くなると、Lおよびb値がより低くなるように相関する。図3および図4は、いくつかの市販されているX線フィルム支持体に関するL、b、およびDminの間の関係を示す。
【0080】
本発明を、ラジオグラフィに関して述べてきたが、当業者なら、本発明をその他の撮像適用、例えば文書スキャンなどのビジネスイメージングに適用できることが理解されよう。
【実施例】
【0081】
<全ての実施例におけるサンプルの撮像および評価>
緑色放出X線スクリーン露光をシミュレートするように、Corning C4010フィルタでフィルタリングされた、2650°Kに較正された500ワットのGeneral Electric DMXプロジェクタランプに、0.5秒間、MacBeth感光計の漸加的密度ステップのタブレットを通して、フィルムのサンプルを露光した。次いでフィルムサンプルを、商標KODAK RP X−OMAT(商標)フィルムプロセッサM6A−N、M6B、M35A、またはX−OMAT 5000RAとして市販されているプロセッサを使用して処理した。
【0082】
現像は、下記の白黒現像組成物を使用して実施した。
【0083】
【表2】

【0084】
フィルムサンプルを、90秒未満で処理した。定着は、KODAK RP X−OMAT(登録商標)LO FixerおよびReplenisher定着組成物(Eastman Kodak Company)を使用して実施した。光学密度は、ANSI標準PH2.19に較正されかつNational Bureau of Standards較正ステップタブレットに帰すことが可能な、従来のX−rite Model 310TMデンシトメータによって測定した拡散密度として以下に表す。特性D対logE曲線を、画像形成され処理された各ラジオグラフィフィルムごとにプロットした。速度は、1.0+Dminの密度で測定した。γは、記述される曲線の勾配(導関数)である。
【0085】
画像品質は、詳細試験対象(DTO)を使用しかつそのような試験対象をフィルム上に撮像して確立した。画像品質の主観的測定は、1から10までのスケールで測定される画像の鮮明度(10は、最も高い鮮明度である)を含む。画像の鮮明度は画像品質の一部である。コントラストおよび振幅伝達関数(modulation−transfer function:MTF)の両方は画像の鮮明度に寄与する。
【0086】
<実施例1>
下記の図は、実施例1におけるコーティング要素の層構造である。各層を、その後の図に詳述する。実施例1のコーティング要素を、表Iにさらに詳述する。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
[支持体]
支持体は、0.727mg/dmの青色色素1を含有する、0.170μmの厚さのポリエチレンテレフタレートである。
【0092】
【表7】

【0093】
[フィルタ色素層]
フィルタ色素層は、X線フィルムで一般に用いられる光吸収フィルタ色素を含有する。これらの色素は、処理中に除去される。この構成において、この層は、いかなる青色調色染料も含有しない。
【0094】
【表8】

【0095】
【表9】

【0096】
【表10】

【0097】
「中間層1+2の青色色素1」という用語は、要素B、C、およびDで中間層1および2のフィルムに添加された青色色素1の総量(mg/dm)を指す。各要素に関し、中間層1および2での青色色素1のレベルは同一である。
【0098】
「前かぶりとしてのPct.エマルジョン層1」という用語は、コーティング溶融物に添加する前にエマルジョンを3分間露光することによって対照E、F、およびGで前かぶりを起こしたエマルジョン層1での、ハロゲン化銀のパーセンテージを指す。
【0099】
「密度1.2でのb」という用語は、密度1.2まで露光されたフィルムに関して測定された、bまたは画像トーンのCIELAB測定値を指す。
【0100】
Dminという用語は、フィルムの処理済み細片の、最小密度を指す。
【0101】
速度およびコントラストという用語は、この文書の前半で述べた測定値を指す。
【0102】
「画像品質」という用語は、前述の画像鮮明度の主観的測定値を指す。表Iは、さらにより高いDminでより多くの色素を添加したときに改善された画像品質を示す。
【0103】
「要素からの全青色色素1を有する予測されるPET支持体」という用語は、本発明の仕様に関連する実施例1を支援する、3つのカラムの群を指す。
【0104】
「全青色色素1(mg/dm)」という用語は、要素中の青色色素1の総量を指す。
【0105】
およびDminという用語は、このレベルの青色色素1を含有するが他の層ではないPET支持体の予測値を指す。これらの値は、図5に示される、b、Dmin、および青色色素1コーティングレベルの間の関係に基づく。
【0106】
下記の表Iは、マンモグラフィで使用されるフィルムコーティングの結果を示す。これらのフィルムは、青色色素1を0.727mg/dm含有しかつ83.0のL値および−18.6のb値を有する、PET支持体にコーティングした。要素A(対照)は、0.24のDminおよび妥当な画像品質を有する。要素B、C(対照)、およびD(本発明)は、マンモグラフィに関していくつかの規格委員会で確立された限界値である0.25のDmin値、またはそれを超えるDmin値を有する。これらのDmin値に関わらず、画像トーンは改善され(bはより負になる)、画像品質は改善される(より高い主観的ランク付け)。要素E〜G(対照)は、標準限界を超えるDmin値を有するが、画像トーンおよび画像品質は改善されない。事実、最も高いDminレベル(要素G)、画像トーン、および画像品質は、わずかに劣化する。
【0107】
【表11】

【0108】
<実施例2>
下記の図は、実施例2のコーティング要素の層構造を表す。各層を、この後の図で詳述する。実施例2のコーティング要素は、表IIにさらに詳述する。
【0109】
【表12】

【0110】
【表13】

【0111】
【表14】

【0112】
【表15】

【0113】
[支持体]
支持体は、0.727mg/dmの青色色素1を含有する、0.170μmの厚さのポリエチレンテレフタレートである。
【0114】
【表16】

【0115】
【表17】

【0116】
【表18】

【0117】
「中間層1および2の青色色素1(mg/dm)」という用語は、要素B、C、およびDにおいて中間層1および2のフィルムに添加された青色色素1の総量(mg/dm)である。各要素に関し、中間層1および2での青色色素1のレベルは同一である。
【0118】
「前かぶりとしてのPct.エマルジョン層1および2(mg/dm)」という用語は、コーティング溶融物に添加する前にエマルジョンを3分間露光することによって対照E〜Hで前かぶりを起こしたエマルジョン層1および2での、ハロゲン化銀のパーセンテージを指す。
【0119】
「密度1.2でのb」という用語は、密度1.2まで露光したフィルムに関して測定された、bまたは画像トーンのCIELAB測定値を指す。
【0120】
Dminという用語は、フィルムの露光済み細片の、最小密度を指す。
【0121】
「速度」および「コントラスト」という用語は、この文書の前半で述べた測定値を指す。
【0122】
「画像品質」という用語は、前述の画像鮮明度の主観的測定値を指す。
【0123】
「要素からの全青色色素1を有する予測されるPET支持体」という用語は、本発明の仕様に関連する実施例2を支援する、3つのカラムの群を指す。
【0124】
「全青色色素1(mg/dm)」という用語は、要素中の青色色素1の総量を指す。
【0125】
およびDminという用語は、このレベルの青色色素1を含有するが他の層ではないPET支持体の予測値を指す。これらの値は、図5に示される、b、Dmin、および青色色素1コーティングレベルの間の関係に基づく。
【0126】
下記の表IIは、汎用ラジオグラフィで使用されるフィルムコーティングの結果を示す。これらのフィルムは、青色色素1を0.727mg/dm含有しかつ83.0のL値および−18.6のb値を有する、青みがかったPET支持体にコーティングした。要素A(対照)は、0.24のDminおよび妥当な画像品質を有する。要素B、C(対照)、およびD(本発明)は、汎用ラジオグラフィに関していくつかの規格委員会で確立された限界値である0.25のDmin値、またはそれを超えるDmin値を有する。これらのDmin値に拘わらず、画像トーンは改善され(bはより負になる)、画像品質は改善される(より高い主観的ランク付け)。要素E〜Hは、標準限界を超えるDmin値を有するが、画像トーンおよび画像品質は改善されない。事実、画像トーンおよび画像品質は、最も高いDminレベルを有するラジオグラフィ要素(E〜H)の全てに関して、著しく劣化する。
【0127】
【表19】

【0128】
本発明について、現在のところ好ましい実施形態を特に参照しながら詳細に記述してきたが、本発明の精神および範囲内で変更および修正を行うことができることが理解されよう。したがって、現在開示された実施形態は、あらゆる点で例示的なものでありかつ制限するものではないと見なされる。本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によって示され、その均等物の意味および範囲内に含まれる全ての変更は、その中に包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマ支持体と、
その両面に配置された、同じまたは異なる1つ以上のハロゲン化銀エマルジョン層であって、全ハロゲン化銀粒子投影表面積の少なくとも50%が平板状ハロゲン化銀を含んでいるハロゲン化銀エマルジョン層と、
前記ポリマ支持体に、または1つ以上の追加の親水性層に、または前記ポリマ支持体および前記1つ以上の追加の親水性層の両方に、80以下のLおよび−25以下のb値であるCIELAB測定値をもたらすのに十分な量で含有される青色色素と、
を含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記青色色素がアントラキノン色素を含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、Lが70から80の間であることを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、b値が−25から−35の間にあることを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記ハロゲン化銀が臭化ヨウ化銀を含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項6】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記ハロゲン化銀層の少なくとも1つが、1つ以上の追加のハロゲン化銀粒子形態をさらに含み、その1つが単分散性立方体ハロゲン化銀粒子であることを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項7】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記ハロゲン化銀は、ハロゲン化物のモル数の総計が銀のモル数に等しいことを条件に、臭化物、ヨウ化物、および塩化物の任意の組合せを有するハロゲン化物組成物を含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項8】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、1つ以上の追加の親水性層が中間層であり、前記青色色素が、前記支持体内、または前記1つ以上の中間層内、または前記支持体および1つ以上の中間層の両方の内部にあることを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項9】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記青色色素がポリマ支持体であることを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項10】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記青色色素が下式を含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【化1】


(式中、G1、G2、およびG3のそれぞれは、水素または任意のアルキル基である。)
【請求項11】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記ポリマ支持体がポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項12】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記青色色素が下式の1つであることを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【化2】

【請求項13】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記ラジオグラフィX線フィルムがマンモグラフィフィルムであり、現像後に、前記青色色素が少なくとも0.834mg/dmの総量で存在し、画像トーンbが−9.5よりも負側の値であり、Dminが約0.25よりも大きいことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項14】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、前記ラジオグラフィX線フィルムが汎用ラジオグラフィフィルムであり、現像後に、前記青色色素が少なくとも0.834mg/dmの量で存在し、画像トーンbが−8.9よりも負側の値であり、Dminが0.25よりも大きいことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項15】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、同じハロゲン化銀エマルジョンが、前記支持体の両面にコーティングされ、アスペクト比が5以上の平板状ハロゲン化銀エマルジョンを含むことを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。
【請求項16】
請求項1に記載のラジオグラフィX線フィルムであって、平板状粒子、非平板状粒子、またはこれらの混合物をそれぞれ含む異なるハロゲン化銀エマルジョンが、前記支持体の各面にコーティングされ、平板状ハロゲン化銀粒子が、5以上のアスペクト比を有することを特徴とするラジオグラフィX線フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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