説明

ラジカル生成抑制剤

【課題】 ラジカル生成に起因する組成物の品質の低下を抑制するためのラジカル生成抑制剤、該ラジカル生成抑制剤を用いたラジカル生成抑制方法及びラジカル生成が抑制された組成物を提供する。
【解決手段】 α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有するラジカル生成抑制剤を開発し、組成物に該ラジカル生成抑制剤を配合するラジカル生成抑制方法、及び、ラジカル生成が抑制された組成物を提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラジカル生成抑制剤、ラジカル生成抑制方法及びその用途、より詳細には、α,α−トレハロースの糖質誘導体或いはこれを含有する糖質を有効成分とする新規なラジカル生成抑制剤、該抑制剤を組成物に配合することを特徴とするラジカル生成抑制方法及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質、染料、合成高分子をはじめとする有機化合物を主体とする製品が、その保存中に異臭の発生、変色・退色、硬化、分解、変性などにより品質劣化や機能低下を起こすことはよく知られている。また、飲食品や医薬品などの場合には、ラジカル生成により生じる過酸化物が、タンパク質、ペプチド及び/又はアミノ酸などの不飽和化合物以外の成分を変性させ、該製品の品質や機能の一層の低下をもたらすことが知られている。しかも、近年、ラジカル生成及びそれに引き続く一連の化学反応により生じる過酸化物は、細胞、組織に対する傷害作用があることから、皮膚の老化、生活習慣病、炎症性疾患、悪性新生物等の各種疾患の発症や増悪の主要原因の一つとされている。
【0003】
このような品質劣化、機能の低下やヒトの健康に害を及ぼすとさえいわれる成分の生成をもたらす主要な反応は、有機化合物が無触媒下に起こす化学反応である。つまり、ラジカル化し易い有機化合物ほど上記のような品質劣化、すなわち化学的変化を起こし易いといえる。そして、ラジカル化のし易さは、分子内に不飽和結合が存在するか否か、ならびに、その存在様式と密接に関連しているといわれている。更に、有機化合物のラジカルが何らかの原因で一旦生成すると、該ラジカルとその近傍に存在する他の未反応の分子や分子状酸素との間で多様な反応が連鎖的に進行し、より大きな品質劣化や機能低下を引き起こすこととなる。有機化合物からのラジカル生成は、光照射や加温など日常的に起こり得る環境条件下で容易に誘発されるため、ラジカル生成及びそれに引き続き、連鎖的に進行する一連の化学反応反応(以下、本明細書ではこれらの反応を合わせて「ラジカル生成」という。)による製品の化学的変化は、食品分野、化粧品分野、医薬品分野、化学工業品分野などの広範な分野で起こり得る問題である。このため、ラジカル生成を阻止、抑制することは、特定の分野に限らず、製品の品質や機能の保持、ヒトの健康維持の上で極めて重要な課題のひとつである。
【0004】
この課題を解決するための手段として、現在のところ、各分野において最も汎用されている手段は、一般にラジカルスカベンジャーと呼ばれる物質、すなわち、既に存在しているラジカルと反応し、それ自体が化学的に変化することによりラジカルの反応性を阻止ないしは抑制する物質を、製品又はその原料に配合する方法である。しかしながら、ラジカルスカベンジャーによるラジカルの抑制効果は長期間持続するものではないという欠点がある。
【0005】
このような状況をふまえて、例えば、特許文献1には、α,α−トレハロース及び/又はマルチトールを配合することにより、脂肪酸類からの揮発性アルデヒドの産生を抑制する方法が提案されている。しかしながら、現在の多様な食生活に対応するためには、継続的に摂取しても、食品の味、香り、食感などの風味の低下をもたらすことがなく、しかも、安全なラジカル生成抑制効果を有する機能性に優れた食品素材のさらなる開発が望まれている。
【0006】
一方、本発明者らは、特許文献2〜7において、α,α−トレハロースの糖質誘導体やそれを含む糖質が、飲食品の褐変などを起こさないこと、脂質の酸化防止効果、及び、タンパク質の変性抑制効果を有することを開示したものの、その抑制メカニズムの実体については依然として不明であり、また、これら特許文献1〜7には、α,α−トレハロースの糖質誘導体やそれを含む糖質が、不飽和化合物からのラジカルを抑制することについてはなんら記載されていない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−123194号公報
【特許文献2】特開平7−143876号公報
【特許文献3】特開平8−73504号公報
【特許文献4】特許第3182679号公報
【特許文献5】特開2000−228980号公報
【特許文献6】国際公開WO 2004/071472号明細書
【特許文献7】国際公開WO 2004/056216号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、組成物中に含まれる不飽和化合物などの有機化合物からのラジカルの生成、このラジカルの生成による該組成物の保存中の異臭、褐変、退色、硬化、分解、変性などの発生、さらには、これらの反応により生成する過酸化物による該組成物中の脂質、タンパク質、ペプチド、アミノ酸などの成分の修飾などに起因する、該組成物の品質や機能の低下を抑制するために、ラジカルの生成(過酸化物などの生成や、さらに、この過酸化物が共存する脂質、タンパク質、ペプチド類、アミノ酸類などの成分を修飾、変性させる反応も含む)を抑制、阻止するために、ラジカル生成抑制剤を提供することを第一の課題とし、該ラジカル生成抑制剤を用いた有機化合物のラジカルの生成を抑制する方法を提供することを第二の課題として、該ラジカル生成抑制剤を含有するラジカル生成が抑制された組成物を提供することを第三の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決する目的で、糖質を用いるラジカルの生成の抑制、並びに、タンパク質や脂質の変性抑制の方法について長年にわたり研究を進めてきた。その結果、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質が、不飽和化合物のラジカル生成の抑制に強く働くこと、さらには、これらの糖質が、該ラジカル生成により生じた過酸化物による脂質、タンパク質をはじめとする種々の成分の修飾乃至変性を抑制することを新たに見いだし、ラジカル生成抑制剤を確立するとともに、それを用いたラジカルの生成抑制方法を確立し、更に、ラジカル生成抑制剤を配合した組成物を確立することにより、本発明を完成するに至った。即ち、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質がラジカルの生成を抑制できることを明らかにし、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を有効成分として含有するラジカル生成抑制剤を確立し、ラジカル生成が起こる前、又は、起きている有機の不飽和化合物を含む反応系に上記のラジカル生成抑制剤を配合させることで、ラジカル生成を抑制する方法を確立し、更に、不飽和化合物を含有する飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、化学工業品などにラジカル生成抑制剤を配合した組成物を確立することにより、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ラジカルの生成により不飽和化合物の分解が進行すること、さらには、不飽和化合物の過酸化物による脂質、タンパク質などの修飾、変性をも抑制するために、グルコースを構成糖とする非還元性糖質であるα,α−トレハロースの糖質誘導体が、ラジカルの生成抑制作用が強いことを見出し、ラジカル生成が起こる前、又は、起きている有機の不飽和化合物を含む反応系に上記のα,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を有効成分とするラジカル生成抑制剤を配合させることで、不飽和化合物のラジカル生成を抑制し、さらには、発生した過酸化物によるタンパク質などの修飾、変性をも抑制するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で使用するα、α−トレハロースの糖質誘導体は、ラジカル生成を抑制できるものであればよく、α、α−トレハロースの糖質誘導体或いはこれを含有するシラップ、マスキット、非晶質粉末、含密結晶粉末、結晶などが有利に利用できる。α、α−トレハロースの糖質誘導体は、具体的には、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であれば、いずれでもよく、より具体的には、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれるいずれかが結合したものをいう。例えば、先に、本出願人が特許文献2などにおいて開示した、α−グルコシルα,α−トレハロース(別名α−マルトシルα−グルコシド)、α−イソマルトシルα−グルコシドなどのモノ−グルコシルα,α−トレハロースや、α−マルトシルα,α−トレハロース(別名α−マルトトリオシルα−グルコシド)、α−マルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−イソマルトシドなどのジ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース(別名α−マルトテトラオシルα−グルコシド)、α−マルトシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトシドなどのトリ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース(別名α−マルトペンタオシルα−グルコシド)、α−マルトトリオシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトトリオシドなどのテトラ−グルコシルα,α−トレハロースなど、グルコース重合度が3乃至6からなるα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
【0012】
これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体は、その由来や製法は問わず、発酵法、酵素法、有機合成法などにより製造されたものでもよい。例えば、本出願人が、特許文献2で開示した酵素法により澱粉や澱粉の部分加水分解物から直接製造してもよく、或いは、特許文献2で開示したマルトテトラオース生成アミラーゼや、特公平7−14962号公報で開示したマルトペンタオースを高率に生成するα−アミラーゼ或いは特開平7−236478号公報で開示したマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼなどを使用して、澱粉からマルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなどの特定のオリゴ糖の含量を高めた澱粉部分加水分解物を調製し、これに特許文献2で開示した非還元性糖質生成酵素を作用させて製造することも随意である。また、澱粉、或いは、澱粉の部分加水分解物とα,α−トレハロースとを含有する溶液にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどのグリコシル基の転移能を有する酵素を作用させて調製することも随意である。これらの方法により得られる反応液は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質を含む溶液として、そのままで、又は、部分精製して、或いは、高純度に精製して使用することも、さらには、これらの糖質の製造工程において共存する還元性の糖質を水素添加して、糖アルコールにしたものを使用することも可能である。これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率かつ安価にα,α−トレハロースの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に利用できる。また、上記方法により製造された市販のシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」や、これを水素添加して共存する還元性糖質をその糖アルコールに変換した糖質(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」)を使用することも有利に実施できる。
【0013】
上記のα,α−トレハロースの糖質誘導体のうち、とりわけ、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース及びα−マルトテトラオシルα,α−トレハロースなど、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が、ラジカル生成の抑制作用が強く、本発明に有利に利用できる。この糖質の一例としては、特許文献2に開示されたα−マルトシルα,α−トレハロースを主成分として含有し、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース、α−グリコシルα−グルコースから選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましく、とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約5質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量%」を単に「%」と表記する。)以上、望ましくは約10%以上、さらに望ましくは約30%以上含有する糖質が望ましい。また、本発明のラジカル生成抑制剤は、ラジカル生成抑制作用の強さの点からすると、α,α−トレハロースの糖質誘導体のいずれか2種以上を、少なくとも、α,α−トレハロースの糖質誘導体の全量に対して、無水物換算で各々5%以上含有する糖質の方が、そのいずれか1種のみを含有するものよりも望ましい。
【0014】
また、本発明のラジカル生成抑制剤を使用する組成物が、アミノ酸などのように分子内にアミノ基を有する物質を含む場合には、グルコースをはじめとする還元性糖類が混在するとメーラード反応などにより該組成物中の有効成分及び/又は該組成物自体の品質低下が特に問題となることが予想されるので、本発明のラジカル生成抑制剤として、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、98%以上、望ましく99%以上、さらに望ましくは99.5%以上含有するものや、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存する還元性の糖質に水素添加して、その還元性を低減したものが好適である。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体は安定な糖質なので、本発明のラジカル生成抑制剤を使用する組成物の品質を低下させない限り、必要に応じて、ラジカルスカベンジャーの他、分散性を高めたり、増量などの目的に応じて、還元性糖質類、α,α−トレハロースの糖質誘導体以外の非還元性糖質類、糖蜜、糖アルコール類、ヒアルロン酸やコンドロイチンなどのムコ多糖類を含む水溶性多糖類、無機塩類、アデノシンモノホスフェイト(AMP)などの核酸関連物質、乳化剤、動植物の由来の成分、酸化防止剤及びキレート作用を有する物質から選ばれる1種又は2種以上と併用することも随意である。さらに必要であれば、公知の着色料、着香料、保存料、安定剤などを適量併用することも随意である。
【0015】
また、本発明のラジカル生成抑制剤と併用される非還元性糖類としては、トレハロース(α,α−トレハロース、α,β−トレハロース或いはβ,β−トレハロースの1種又は2種以上の組み合わせ)や、同じ特許出願人による国際公開WO 02/10361号明細書或いは特開2005−95148号公報(特願2004−174880号明細書)などに記載の環状四糖が、又、糖アルコール類としてはマルチトールが、いずれも優れたラシカル産生抑制効果、脂質の変敗抑制効果や脂質からのアルデヒド類の生成抑制効果を有する点から望ましく、中でもα,α−トレハロースや環状四糖は、それらの効果が極めて高いことから、特に望ましい。
【0016】
本発明のラジカル生成抑制剤は、その各々の使用分野において通常使用される酸化防止方法と組み合わせて用いることにより、単独の使用よりも更に効率的にラジカル生成を抑制することができる。酸化防止方法としては、例えば、抗酸化剤、脱酸素剤、ラジカルスカベンジャー、カルボン酸、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ホスホン酸、アミノホスホン酸、ポリリン酸やこれらの塩類をはじめとする金属のキレート剤との併用や、本発明のラジカル生成抑制剤を含有する組成物を、カプセルへ封入したり、コーティング処理、密封容器での保存、不活性ガスの封入などにより酸素との接触の遮断、さらには、遮光、低温保存などから選ばれる1種又は2種以上の方法を適宜組み合わせて利用することができる。
【0017】
本発明でいうラジカルスカベンジャーとは、反応中に生じるラジカルや活性酸素を効率的に捉えて消去するために使用される化合物であれば、いずれでもよく、ラジカル生成抑制剤の使途に応じて1種又2種以上が、適宜選択される。例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸2−グルコシドなどのアスコルビン酸誘導体、ビタミンB、ビタミンB誘導体、ヘスペリジン、ルチン、ナリンジン、ケルセチンなどのビタミンP類或いは糖転移ヘスペリジン、糖転移ルチン、糖転移ナリンジン、糖転移ケルセチンをはじめとするビタミンP類の誘導体などのビタミン類、コエンザイムQ10(CoQ10)を含むユビキノン類・ヒドロキノン類・レゾルシノール類やそれらの誘導体、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、リコピン、アスタキサンチンをはじめとするカロチノイド、カテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フラバンジェノール、アントシアニジン、プロアントシアニジン、タンニン、クロロゲン酸、エラグ酸、フェノール酸、アスタキサンチンをはじめとするポリフェノール類などのフラボノイド類や、これらの配糖体をはじめとする誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ジフェニルピクリルヒドラジル、ガルビノキシル、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、チオタウリン、アイエキス、アマチャエキス、アマモエキス、ウコンエキス、エイジツエキス、オウゴンエキス、オトギリソウエキス、ゴバイシエキス、ゲンノショウコウエキス、コンフリーエキス、サンショウエキス、シソエキス、シャクヤクエキス、チャエキス、チョウジエキス、ビワエキス、ボタンエキス、マロニエエキス、ユキノシタエキス、ルイボスエキス、ローズマリーエキス、クロレラエキス、ドナリエラエキスをはじめとするフラボノイド類やテルペン類を含有する植物エキス類(プロポリスエキスを含む)、レイシエキス、鹿角レイシエキスなどを挙げることができ、また、前記不飽和化合物の中からも、例えば、ビタミンA、ビタミンEやそれらの誘導体などに代表されるテルペン類、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などに代表される不飽和脂肪酸のようなラジカル消去能を有する化合物を、その用途に応じて適宜使用することも自由である。
【0018】
また、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、前記ラジカルスカベンジャーの持つ独特の、苦味、渋味、生臭味などの不快味や不快臭を効果的にマスクし、さらには、ラジカルスカベンジャー自身の酸化やメーラード反応などに起因する褐変や変色を抑制することから、ラジカルスカベンジャーを併用しても、それに由来する不快味や不快臭が抑制され、着色や変色も抑制された高品質の飲食品、医薬品、医薬部外品などを製造することができる。この場合の、ラジカルスカベンジャーの添加量に特に制限は無く、通常、組成物の約0.001〜20%が望ましく、0.01〜10%が特に望ましい。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体の添加量は、対象とする組成物の物性や品質に影響を及ぼさない限り特に制限はないものの、例えば、茶飲料などのように甘味を持たない組成物の場合には、組成物の約5%或いはそれ以下の量が望ましい。この場合、α,α−トレハロース、国際公開WO 02/10361号明細書や特開2005−95148号公報(特願2004−174880号明細書)などに記載の環状四糖、L−アスコルビン酸2−グルコシドから選ばれる何れか1種又は2種以上とを併用することにより、これらの物質の持つ不快味及び/又は不快臭の抑制効果がさらに増強され、ラジカルスカベンジャーの不快味及び/又は不快臭を効果的に低減することができる。
【0019】
本発明でいう、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を含んでなるラジカル生成抑制剤を含有させるとは、当該成分とそれ以外の成分が直接接触できるように、その利用目的に応じて、原料の段階から製品の段階に至るまでの適宜の工程、或いは、既存の製品に対して、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶出、固化、逆ミセル化などの1種又は2種以上の方法を適宜組み合わせて接触させることを意味し、これらの方法を、常圧条件下ではもとより、高圧条件下、減圧条件下、さらには、超臨界流体を利用して超臨界条件下で実施することも随意である。また、本発明で使用するα,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質の形態に特に制限はなく、例えば、シラップ、マスキット、ペースト、固状物、粉末、結晶、顆粒、錠剤などのいずれでもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤などの各種形状に成形して使用することも随意である。
【0020】
組成物に、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を含有させる量は、その組成物に含まれる不飽和化合物のラジカル生成抑制効果を発揮できる量であればよく、特に制限はないが、通常、不飽和化合物を含有する組成物に対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を無水物としての換算で約0.01%以上約99.9%未満、さらに好ましくは、約1.0%以上約90%未満をできるだけ均一に含有せしめるのが好適である。通常0.01%未満では、不飽和化合物のラジカル生成を効果的に抑制するには不充分である。
【0021】
本発明でいう不飽和化合物とは、炭素鎖に、炭素−炭素間の不飽和結合(以下、単に「不飽和結合」という。)すなわち、二重結合又は三重結合を有する炭化水素、ならびに斯かる炭化水素における水素原子を他の元素や基などで置換した誘導体を意味し、脂肪酸類、アルコール類、単純脂質類、複合脂質類、テルペン類、合成高分子類、ビニル類などに属する化合物を挙げることができる。また、紫外線を含む光、熱、放射線、圧力などの物理的な要因により、変成、分解してラジカル生成の原因となる不飽和結合を生成する物質を含む。
【0022】
本発明でいう脂肪酸類とは、カルボキシル基を1個又は2個有し、分岐構造、環状構造及び/又はヒドロキシル基を有することもある鎖式化合物ならびにその塩を意味する。具体例としては、オレイン酸、パルミトレイン酸、ネルボン酸、ツズ酸、トウハク酸、バクセン酸などのモノエン型脂肪酸(二重結合を1個有する)、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどのポリエン型脂肪酸(二重結合を2個以上有する)、リリン酸、キシメニン酸、エリトロゲン酸、クレペニン酸、マイコマイシンなどのアセチレン型脂肪酸(三重結合を1個以上有する)、ムコン酸などのポリエンジカルボン酸型脂肪酸(2個以上の二重結合と2個のカルボキシル基を有する)などが挙げられる。
【0023】
アルコール類とは、鎖式炭化水素の水素原子を水酸基で置換した化合物を意味し、水酸基を1個有する1価アルコールと、水酸基を2個以上有する多価アルコールとを含む。具体例としては、オレイルアルコールが挙げられる。
【0024】
単純脂質類とは、構成原子が炭素原子、水素原子及び酸素原子からなり、分子中に脂肪酸類化合物に相当する炭化水素鎖を有する有機化合物を意味し、代表的なものとしては、脂肪酸類化合物とアルコール類化合物との脱水縮合物(エステル)ならびにその相当物が挙げられる。具体的としては、アルコール部分が1価アルコールであるオレイン酸デシル及びオレイン酸オクチルドデシル、アルコール部分がプロピレングリコールであるジオレイン酸プロピレングリコール、アルコール部分がグリセロールであり、脂肪酸部分が上記に例示したような不飽和脂肪酸であって、1分子中に1個、2個又は3個の脂肪酸部分を含むモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールならびにトリアシルグリセロール(以上3種をまとめて「中性脂肪」という場合がある)、アルコール部分がグリセリン重合体であり、脂肪酸部分が上記に例示したような不飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル、アルコール部分がショ糖である(ショ糖脂肪酸エステル)、ショ糖モノオレアート、ショ糖モノリノラート及びショ糖ジオレアートなどが挙げられる。なお、通常「油脂」と呼ばれるものはトリアシルグリセロールを主体とする油溶性物質を含む組成物であり、また、油脂はさらに、常温で液体の「脂肪油」と常温で個体の「脂肪」とに分類されており、これらは通常不飽和化合物を含んでいるので、当然ながら本発明の対象となり得る。
【0025】
複合脂質類とは、上記で定義した単純脂質類と同じく分子中に脂肪酸類化合物に相当する炭化水素鎖を有する一方、構成原子として炭素原子、水素原子及び酸素原子に加えて、リン原子や窒素原子などを含む有機化合物を意味する。複合糖脂質類は一般に、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質の4種に大別され、さらに本発明においてはこれらの誘導体や部分分解物、例えば、セラミドなども複合脂質類に含まれるものである。具体例としては、グリセロリン脂質としては、レシチン(ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールなどが、グリセロ糖脂質としては、分子内に1個又は2個以上のグルコシル基やガラクトシル基などの糖残基を有するジアシルグリセロールなどが、スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴミエリンなどが、スフィンゴ糖脂質としては、セレブロシド、セラミドなどがそれぞれ挙げられる。
【0026】
テルペン類とは、化学式CH=C(CH)CH=CHで表されるイソプレンを構成単位とする有機化合物を意味し、鎖状構造を有するものと環状構造を有するものがある。また、本発明においては、イソプレン構造を部分的に含む複合テルペンもテルペン類に含まれるものとする。具体例としては、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、スクアレン、テトラテルペン、カロテノイドなどのほか、α−カロテン、β−カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、アブシジン酸、ビタミンA、ビタミンEなどの複合テルペンが挙げられる。
【0027】
合成高分子類とは、有機化学的に合成された高分子物質を意味し、合成ゴム、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂に大別される。合成ゴムの多くは不飽和結合を有しているので本発明の有効な対象であり、具体例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ニトリル−イソプレンゴムなどが挙げられる。また、熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アセタール樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、酢酸セルロース、ポリカーボネイト、メチルペンテン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエストラマーなどが挙げられる。
【0028】
ビニル類とは、化学式CH=CH−で表されるビニル基、化学式CH=C=で表されるビニリデン基若しくは化学式−CH=CH−で表されるビニレン基を有する有機化合物を意味する。具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのオレフィン炭化水素、ブタジエン、イソプレンなどのポリエン炭化水素、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどの酸ビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、ラウリルビニルエーテルなどのビニルエーテルのほか、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、マレイン酸、ビタミンD、ビタミンK、さらには、同じ特許出願人による特許第3232512号公報に開示されたスチリル色素、同じ特許出願人による国際公開WO 01/040382号明細書に開示されたインドレニン系ペンタメチンシアニン色素、同じ特許出願人による特開2002−212454号公報に開示されたトリメチンシアニン色素、同じ特許出願人による国際公開WO 01/062853号明細書に開示されたトリメチンシアニン色素、同じ特許出願人による国際公開WO 01/019923号明細書に開示されたジメチン系スチリル色素、同じ特許出願人による特開2001−32179号公報に開示されたスチリル色素、同じ特許出願人による特開2001−323179号公報に開示された非対称型インドレニン系ペンタメチンシアニン色素、同じ特許出願人による国際公開WO 00/061687号明細書に開示された非対称型トリメチン系シアニン色素、化粧品原料基準(日本公定書協会編、『化粧品原料基準 第二版注解 I』、1984年、薬事日報社発行)に収載されている感光素101号(別名プラトニン)、感光素201号(別名ピオニン)、感光素301号(別名タカナール)、感光素401号(別名ルミネキス)などが挙げられる。
【0029】
本発明でいうラジカル生成は特定の原因に限定されるものではない。例えば、不飽和化合物は一般に、無触媒下で光照射や加温などにより、また、金属触媒などの適宜の触媒の作用により、さらに、活性酸素などの他のラジカルの作用によりラジカル化することが知られている。
【0030】
本発明のラジカル生成抑制剤は、不飽和化合物又は不飽和化合物を含む組成物を原材料、添加物、製品などとして扱う分野であって、且つ、不飽和化合物の化学的変化の回避が求められる諸種の分野、例えば、飲食品分野、農林水産分野(飼料、餌料、ペットフードなどの家畜、家禽、ペット、養殖魚、養殖甲殻類などの餌を含む)、化粧品分野、医薬部外品分野、医薬品分野、日用品分野、化学工業分野、染料分野、塗料分野、コーティング剤分野、建材分野、香料分野、化学薬品分野、合成繊維分野、色素分野、感光色素分野、光記録媒体分野ならびに、これらの分野で利用される原材料、又は添加物の製造分野などの極めて広範な分野において有用である。
【0031】
本発明のラジカル生成抑制剤は、組成物に配合することにより当該組成物中でラジカル生成を抑制することから、発生する、過酸化脂質、ジオンやアルデヒドの生成抑制、メチオニン、システイン、チオタウリンなどの含硫アミノ酸の分解に起因する硫化物の生成、アミノ酸やペプチドと反応するメーラード反応による褐変などを抑制し、これらの反応に由来する、不快味、不快臭の発生の抑制や、着色・褐変の抑制、更には、香料や色素の劣化を抑制するなどにより、組成物の品質を長期間安定に保持することができる。また、野菜、切り花などの鮮度保持や、酸性度或いはアルカリ性度の強い飲食品を冷凍、冷蔵、チルド、常温、或いは加温して保存する際にも、これら飲食品の品質を長期間安定に保持することができる。
【0032】
従って、本発明のラジカル生成抑制剤は、飲食品分野にあっては、不飽和化合物である脂質と共にタンパク質を含有する組成物が大部分を占めることから、脂質からのラジカル生成を抑制し、その結果、ラジカル生成に起因する脂質過酸化物がタンパク質、着色料、香料などを修飾、変性させる過程を抑制することができるので、タンパク変性抑制剤、着色料や香料の安定化剤などとして飲食品の風味(品質)保持に極めて有利に利用できる。また、過酸化物を含有する飲食品を摂取した場合であっても、過酸化物によって組織や組織に存在する酵素、核酸関連物質、脂質などの機能性分子が修飾、変性することを効果的に抑制することができる。
【0033】
また、本発明のラジカル生成抑制剤は、化粧品などの皮膚外剤に配合して、頭皮や肌に適用した場合には、当該部位で、光などにより誘発される脂肪酸からのラジカル生成を抑制することにより、皮膚の老化、皺・小皺の発生、シミ・ソバカス発生などの防止、体臭の生成の抑制、過酸化脂質により誘発される炎症、ニキビの発生や増悪の抑制、化粧品などの皮膚外用剤の使用時の刺激性や炎症、それらに起因するかゆみの抑制などに効果を発揮することができる。本発明のラジカル生成抑制剤を、上記の皮膚の老化防止、抗皺・小皺、抗シミ・ソバカス、体臭抑制、抗ニキビ、抗炎症、抗老化などの目的で使用する場合、化粧品などの皮膚外用剤の原材料の総質量の0.01〜30%程度となるように配合するのが望ましい。また、特に、前記ラジカルスカベンジャー、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ハロカルバン、イソプロピルメチルフェノール、感光素などの抗菌剤、グリチルリチン酸およびその誘導体、アラントイン、ε−アミノカプロン酸などの抗炎症剤、イオウ、サリチル酸などの角質溶解剤、アルミニウムヒドロキシクロライド、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アラントインクロロヒドロアルミニウム、アルミニウムジルコニウムクロロハイドレート、p−フェノールスルホン酸亜鉛などの収斂剤、フラボノイド類含有植物抽出物、酸化亜鉛複合物、ハイドロキシアパタイトなどの消臭成分、香料などのマスキング剤、アミノトリメチルホスホン酸、β−アラニン二酢酸、フィチン酸、クエン酸をはじめとするオキシカルボン酸酸やその塩、シクロデキストリン、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ジエタノールアミンN−酢酸、エチレンジアミン四酢酸そのナトリウ塩、カルシウム二ナトリウム塩やジアンモニウム塩とそのトリエタノールアミンとの塩類、エチドロン酸、ガラクタン酸、ヒドロキシエチル−エチレンジアミン四酢酸とその三ナトリウム塩、コハク酸、グルコン酸、グルクロン酸、ニトリロ三酢酸とその三ナトリウム塩、ペンテト酸、フィチン酸、リボン酸、クエン酸ジアンモニウム、アザシクロヘプタン二ホスホン酸二ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、メチルシクロデキストリン、三リン酸五カリウム、アミノトリメチレンホスホン酸五ナトリウム、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸五ナトリウム、ペンテト酸五ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、クエン酸カリウム、キトサンメチレンホスホン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、ジヒドロキシエチルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコペプチン酸ナトリウム(sodium glucopeptate)、グリセレス−1−ポリリン酸ナトリウム(sodium glycereth−1 polyphosphate)、ピロリン酸四カリウム、ポリリン酸トリエタノールアミン、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸三ナトリウム、カリウムトリホスホノメチルアミンオキシド、メタケイ酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、ポリジメチルグリシノフェノールスルホン酸ナトリウム、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチドロン酸四カリウム、エチドロン酸四ナトリウム、イミノ二コハク酸四ナトリウム、エチレンジアミン二コハク酸三ナトリウム、エタノールアミンN,N−二酢酸、酢酸二ナトリウム、ジメルカプロール、デフェロキサミン、ジロックス(Zylox)、アスコルビン酸2−グルコシドなどのキレート剤及びフラボノイド類から選ばれる何れか1種又は2種以上を適宜組み合わせて併用することにより、本発明のラジカル生成抑制剤による、皮膚の老化防止、抗皺・小皺、抗シミ・ソバカス、体臭抑制、抗ニキビ、抗炎症などの作用を増強することも有利に実施できる。
【0034】
なお、上記成分以外にも、本発明のラジカル生成抑制剤は、その効果を妨げられない限り、例えば、同じ出願人が、特許文献7などおいて開示した血行促進作用を有する物質、抗炎症作用を有する物質、抗菌作用を有する物質、抗ニキビ作用を有する物質、保湿作用を有する物質、抗肌荒れ作用を有する物質、美白作用を有する物質、紫外線吸収作用を有する物質、紫外線散乱作用を有する物質、収斂作用を有する物質、清涼作用を有する物質、抗シワ作用を有する物質、抗酸化作用を有する物質、細胞賦活作用を有する物質、抗老化活性を有する物質、抗シワ活性を有する物質、腋臭抑制作用を有する物質、育毛活性を有する物質、発毛活性を有する物質、抗ふけ作用を有する物質、経皮吸収促進作用を有する物質やこれら以外の皮膚外用剤に使用される公知の物質やその他の皮膚外用剤に使用しうる物質から選ばれる何れか1種又は2種以上と組み合わせて、化粧品や皮膚外用剤として利用することも随意である。また、その剤型も、従来知られているいずれの形態であっても良く、例えば、化粧石けん、透明石けん、洗顔料、シャンプー、リンス等の清浄用化粧品、クリーム、乳液、化粧水、化粧油、パック等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅、おしろい、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、ほほ紅、眉墨等のメークアップ化粧品、日焼け・日焼け止め化粧品、パーマネント液、毛髪のセット剤などの毛髪化粧品、生理用品などの皮膚外用剤やトイレタリー製品、台所用洗剤、消臭剤などの雑貨、靴下、ストッキング、下着類、シーツ、タオル、布巾、タオル、手ぬぐい、おしぼり、不織布などの繊維製品、ティッシュペーパー、ウエットティッシュ、トイレットペーパー、紙おむつ、化学雑巾、集塵袋、ペットの床敷などとして利用できる。また、当該化粧品は、塊状、ペンシル状、スティック状、乳液状、クリーム状、溶液状、粉状、ゲル状、ムース状、スプレー、エアゾール、ロールオンなどの様々な形態で使用することができる。
【0035】
さらに、本発明のラジカル生成抑制剤は、活性などを失い易い各種生理活性物質又はこれを含む健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの安定化剤として有利に適用できる。例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ツモア・ネクロシス・ファクター−α、ツモア・ネクロシス・ファクター−β、マクロファージ遊走阻止因子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、インターロイキン類などのリンホカイン含有液やインターロイキン含有液、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチン、卵細胞刺激ホルモン、胎盤ホルモンなどのホルモン含有液、BCGワクチン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワクチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免疫グロブリンなどの生物製剤含有液、フィコシアニン、フィコエリトリンをはじめとする色素タンパク質、リパーゼ、エラスターゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼ、抗体類、補体系などの酵素や血液成分などのペプチド或いはタンパク質の変性を抑制し、それらの生理活性を安定に保持することができる。また、本発明のラジカル生成抑制剤は、高品質の健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品或いは試薬などの製造にも有利に利用できる。
【0036】
また、本発明のラジカル生成抑制剤は、特に、組織や細胞レベルのラジカル生成をも抑制することから、生体内で発生するラジカル生成を伴う炎症反応の抑制剤や炎症性分子の発現抑制剤として、アトピー、アレルギーをはじめとする皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、虫刺され、火傷、日焼け、擦傷や切傷などの各種の炎症性疾患、口内炎、歯周病などによる歯肉炎、結膜炎、肺炎、慢性閉塞性呼吸器疾患、胃炎、大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などの臓器の炎症性疾患、手術後の患部の炎症、放射線障害、大気汚染、タバコなどにより発生するラジカルによる皮膚、口腔、鼻腔、肺などの細胞に発生する障害などの改善や発生防止にも有利に利用でき、さらには、生成したラジカルによる核酸や蛋白質の変成や細胞膜の破壊などに起因して発生する白血病や、消化器系・循環器系をはじめとする各種臓器に発生する悪性新生物、虚血再循環時のラジカル発生に起因する各種臓器や組織の不全、心臓・循環器系疾患や脳疾患、アルツハイマー病、パーキンソン氏病、シェーグレン症候群、リューマチなどの免疫性疾患の予防・治療、ドライアイや白内障をはじめとする眼性疾患の予防・治療、各種臓器や角膜などの移植臓器の劣化防止用の保存液、手術時の洗浄液、手術後などにおける臓器の癒着防止液、灌流液、透析液(腹膜透析液を含む)などに利用することも随意である。なお、医薬品(動物薬を含む)或いは医薬部外品として使用される本発明のラジカル生成抑制剤は、そのままで、或いは、製剤学的に許容される製剤用添加剤の1種又は2種以上と組み合わせた製剤として利用することができる。また、これら製剤は、液状、粉末、顆粒、シラップなどの何れの形態であってもよく、経口剤、注射剤(点滴や灌流を含む)、外用剤、点眼剤、点鼻剤、ハップ剤、坐剤などとして利用することができる。さらには、本発明のラジカル生成抑制剤、或いは、このラジカル生成抑制剤とラジカルスカベンジャーや他の製剤用添加剤を含有する液状製剤、微分製剤や微小カプセル製剤などを、ネブライザー、超音波加湿器、吸引器などを利用して飛散させて、生体に経鼻、経肺や経皮的にこれらの製剤を吸引させて、組織、器官、臓器などでのラジカル生成を抑制したり、さらには、室内で発生するラジカル生成を抑制することもできる。
【0037】
また、上記のように、本発明のラジカル生成抑制剤は、これと併用するラジカルスカベンジャーの持つ独特の、苦味、渋味、生臭味などの不快味や不快臭を効果的にマスクし、さらには、ラジカルスカベンジャー自身の酸化やメーラード反応などに起因する褐変や変色を抑制することから、ラジカルスカベンジャー自身やその酸化、分解などにより生じる不快味及び/又は不快臭や、褐変及び/又は変色の抑制剤として利用することができる。さらに、本発明のラジカル生成抑制剤は、ラジカル生成により発生する体臭や汗などの付着した衣類やシーツからの異臭の発生、ラジカル生成により進行する生体の炎症を抑制することから、皮膚の老化防止剤、抗皺・小皺剤、抗シミ・ソバカス剤、体臭抑制剤、抗炎症剤、抗ニキビ剤などとして利用することも随意である。さらに、体臭を抑制する場合には、当該ラジカル生成抑制剤と共に、乳化剤及びポリフェノール類を併用することにより、その抑制効果を増強することができる。
【0038】
また、本発明のラジカル生成抑制剤は、上記合成高分子樹脂に配合することにより、紫外線をはじめとする光、熱、放射線、圧力などにより誘発されるラジカル生成抑制効果にすぐれ、樹脂の劣化を防止することり利用できるだけでなく、塗料、インク、接着剤、コーティング剤などのように、その成分として上記合成高分子樹脂を含む組成物の増量や劣化(色、可塑性、剛性、接着性などの劣化を含む)抑制の目的で配合することも随意である。中でも、本発明のラジカル生成抑制剤、とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロース及び/又はα−マルトトリオシルα,α−トレハロースは、上記作用に加えて、塗料、インク(インクジェットプリンター用インクを含む)、或いは、コーティング剤(車や電化製品用の塗装面の保護、つや出しなどの目的で使用されるものはもとより、紙や上記以外の塗装面の保護やつや出し、印刷用の用紙のインクのにじみ防止などの目的で使用されるものを含む)の付着性、塗布性の改善効果が顕著なことから、塗料の付着性及び/又は塗布性改善剤として使用することも随意である。この場合の、α,α−トレハロースの糖質誘導体のこれら組成物への配合量は、当該組成物の目的から逸脱しない限り特に制限はなく、通常、該組成物の総質量の0.01〜30%程度であればよく、0.1〜10%がより望ましい。
【0039】
以下、実験例に基づいてα,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質による、不飽和化合物のラジカル生成抑制についてより詳細に説明する。
【0040】
<実験1>
<α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質及びα−マルトシルα,α−トレハロースの調製>
以下の実験で使用したα,α−トレハロースの糖質誘導体及びα−マルトシルα,α−トレハロースは、以下の方法で調製した。
<α−グルコシルα,α−トレハロース>
特許文献2の実験4に記載の方法により調製し、その純度は98.1%であった。
<α−マルトシルα,α−トレハロース>
後述の実施例5に記載の方法により調製し、その純度は97.8%であった。
<α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有)>
後述の実施例1の方法により調製した。本品は、濃度75%、DE13.7のシラップであり、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有していた。また、本品は、無水物換算で、還元性の糖質として、グルコースなどの単糖類を2.1%、マルトースなどの2糖類を8.9%、α−グルコシルα,α−トレハロース以外の3糖類を6.7%、α−マルトシルα,α−トレハロース以外の4糖類を17.6%、α−グリコシルα,α−トレハロース以外の5糖類以上の糖質を6.6%含有していた。
<α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を糖アルコールに変換)>
上記シラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖を含有)に水を加えて、濃度約60%に調製して、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約8.5%添加し、攪拌しながら温度を128℃に上げ、水素圧を80kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮して、濃度75%のシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を調製した。本品は、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを約53%、及び、これ以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約10%含有し、ソルビトール、マルチトールをはじめとする糖アルコールを約37%含有していた。
【0041】
<実験2>
<ラジカル生成抑制に及ぼす各種糖質の影響1>
ラジカル生成抑制に及ぼす各種糖質の影響を調べるための実験は次のようにして行った。
<試験用糖質溶液の調製>
マンニット(試薬特級)、試薬級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販売)、実験1で調製したα−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、又は、シラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を糖アルコールに変換)のいずれかの糖質を、精製水で、各々9.375mM、18.75mM、37.5mM或いは75mMとなるように希釈して、試験用糖質溶液を調製した。なお、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するシラップは、その主成分のα−マルトシルα,α−トレハロースが、上記モル濃度となるように調製した。
<ヒドロキシラジカルの生成量の測定>
1mM過酸化水素(H)溶液50μlの入った容器に、89mM5,5−ジメチル−1−ピロリン−オキシド(DMPO、和光純薬株式会社販売)溶液50μlを加えて攪拌し、これに上記試験用糖質溶液の何れか1種、50μlを加えて攪拌した。これらの溶液の各々に、1mMの硫酸鉄と1mMのジエチレントリアミン−N,N,N,N’’,N’’−5酢酸(DTPA、和光純薬株式会社販売)を含む溶液50μlを添加混合して反応を開始させ、電子スピン共鳴スペクトル(ESR)測定用セルに入れて、測定装置にセットして、反応開始40秒後のヒドロキシラジカルの生成量を測定した。対照として、試験用糖質溶液に代えて、精製水50μlを加えて、同様の測定を行った。なお、ESRの測定には(株)日本電子製「Free Radical Monitor JES−FR30」を用い、ヒドロキシラジカルの生成量は、スピントラップ剤として使用した5,5−ジメチル−1−ピロリン−オキシド−OH(ヒドロキシラジカル)に特有の4つのシグナルピークのうち、走査開始後最初に観察されるピークと、JES−FR30装置に装着されている外部標準のMn2+のピークの高さとの比を求めて、対照を100とした相対値として、表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
<結果>
表1から明らかなように、ヒドロキシラジカルの生成は、いずれの糖質においても、その添加量の増加とともに減少した。その抑制の程度は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を糖アルコールに変換)が最も強く、α−グルコシルα,α−トレハロース及びα−マルトシルα,α−トレハロースがこれに続いた。α,α−トレハロースは、これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体やこの糖質含有糖質よりも、ヒドロキシラジカル生成抑制の程度が弱く、マンニットが最も弱かった。
【0044】
<実験3>
<ラジカル生成抑制に及ぼす各種糖質の影響2>
<試験用糖質溶液の調製>
実験2と同様に、マンニット(試薬特級)、試薬級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販)、実験1で調製したα−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、シラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有、又は、還元性糖質を糖アルコールに変換)のいずれかの糖質を、精製水で、各々9.375mM、18.75mM、37.5mM或いは75mMとなるように希釈して、試験用糖質溶液を調製した。なお、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するシラップは、その主成分のα−マルトシルα,α−トレハロースが、上記モル濃度となるように調製した。
<ヒドロキシラジカルの生成量の測定>
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)50μmlを入れた容器に、180mM5,5−ジメチル−1−ピロリン−オキシド(DMPO、和光純薬株式会社販売)溶液50μlを加えて攪拌し、これに上記試験用糖質溶液の何れか1種50μlを加えて攪拌した。これらの溶液の各々に、100mM 2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(AAPH)溶液50μlを添加混合して反応を開始させ、電子スピン共鳴スペクトル(ESR)測定用セルに入れて、測定装置にセットして、反応開始3分30秒後のヒドロキシラジカルの生成量を測定した。対照として、試験用糖質溶液に代えて、精製水50μlを加えて、同様の測定を行った。なお、ESRの測定は、実験2と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、ヒドロキシラジカル生成は、いずれの糖質においても、その添加量の増加とともに減少した。その抑制の程度は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質が最も強く、α−グルコシルα,α−トレハロース及びα−マルトシルα,α−トレハロースがこれに続いた。α,α−トレハロースは、これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体やこの糖質含有糖質よりも、ヒドロキシラジカル生成抑制の程度が弱く、マンニットが最も弱かった。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質同士を比較すると、還元性の糖質を含むものよりも、その還元性の糖質を糖アルコールに変換したものの方が、ヒドロキシラジカル生成を強く抑制した。
【0047】
<実験4>
<皮膚の炎症に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響>
ラジカルの発生は炎症にも深く関与しているといわれている。そこで、皮膚の炎症に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験を以下のように行った。
<皮膚への塗布剤>
実験1で調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を糖アルコールに変換)16gに、精製水80mlを加えて攪拌し、0.22μmのフィルターで除菌して、試験液とした。陰性対照として、精製水を、また、陽性対照として、プレドニゾロン軟膏(帝国製薬株式会社販売、商品名「ビスオコリームA」)を使用した。
<マウスでのアトピー性皮膚炎の誘発>
塩化ピクリル(東京化成株式会社販売)を、エタノールを用いて再結晶し、その5%溶液(エタノール:アセトン=4:1の溶液に溶解)及び1%溶液(オリーブ油に溶解)を調製した。この塩化ピクリルの5%溶液150μlを、5週令の雌性のNC/Ngaマウス(日本エスエルシー株式会社販売)の足蹠、バリカンで毛刈りした胸部及び腹部に塗布して、初回感作を行った。初回感作時に、背部をバリカンで毛刈りしておき、当該部位に、初回感作から、7日、14日、21日、28日、35日及び42日に、前記1%塩化ピクリル溶液150μlを塗布して、アトピー性皮膚炎の誘発を行った。
<アトピー性皮膚炎に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質の影響>
前記マウスの塩化ピクリルによるアトピー性皮膚炎誘発部位(バリカンで毛刈した背部)に、塩化ピクリルの初回感作日から、試験液150μlを、1日2回、5日間連続して塗布し、2日間休止するサイクルを、7回繰り返し、初回感作日から28日(皮膚炎の症状が最初に観察された日)、35日、42日及び49日目に背部の肉眼観察と体重測定を行った。肉眼観察は、発赤・出血、擦傷・組織欠損、痂皮形成・乾燥の範囲、擦傷の強度の4項目について、4段階の評点化を行い(0;無症状、1;軽度、2;中等度、3;重度)、その合計を求めて、皮膚炎症状のスコアとした。陰性対照は、その150μlを、試験液と同じスケジュールで投与した。また、陽性対照は、その0.1gを、皮膚炎症状が確認された後の、初回感作から29日、32日、34日、36日、39日、42日、46日に、背部の炎症誘発部位に塗布した。なお、試験は、いずれの群も10匹のマウスを使用した。10匹のマウスの、皮膚炎症状のスコアの平均の推移を表3に、平均体重の推移を表4に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
表3から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する試験液を塗布した場合は、陽性対照として使用した抗炎症剤として常用されているプレドニゾンを塗布した場合よりは劣るものの、塩化ピクリルにより誘発されたアトピー性皮膚炎の症状を、陰性対照を塗布した場合に比べて、抑制することが確認された。また、表4から明らかなように、試験液を塗布したマウスの体重は、陰性対照と同様に、経時的に増加しているのに対して、陽性対照を塗布したマウスでは、体重の増加が、塩化ピクリルの初回感作から42日目以降減少しており、ステロイド剤投与の副作用が認められた。この実験の結果は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質が、皮膚の炎症の予防、或いは、治療に有効で、かつ、副作用のない安全な糖質であることを物語っている。
【0051】
<実験5>
<アスコルビン酸の褐変に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響>
アスコルビン酸は、ラジカルスカベンジャーとして利用されているものの、溶液状態や水分を含んだ状態では、容易に酸化されて褐変を生じることから、組成物に配合すると、当該組成物の品質低下の原因となる場合がある。そこで、アスコルビン酸の褐変に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験を以下のようにして行った。即ち、糖質として、実験1で調製したα−マルトシルα,α−トレハロース、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有)、α,α−マルトシルα,α−トレハロース含有糖質(還元性糖質を糖アルコールに還元)、含水結晶α,α−トレハロース、スクロース(和光純薬工業株式会社販売)及びグルコース(和光純薬工業株式会社販売)を用いた。各々の糖質をそれぞれ無水物換算で5gメスフラスコに秤量し、適量の精製水を加えて溶解した。これらの糖質溶液のそれぞれにL−アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社販売)を無水物換算で0.5g加え、それぞれを1%クエン酸ナトリウム水溶液でpHを3.0に調整した後、精製水を加えて全量を50mlに調整した。また、対照として糖質無添加のL−アスコルビン酸水溶液を同様に調製した。それぞれの水溶液20mlを30ml容の試験管に入れスクリューキャップで密栓した後、50℃で14日間保存した。保存開始時、保存7日目、及び、保存14日目の水溶液について、光路1cmのセルを用いて、420nmの吸光度を測定し、着色度として表5にまとめた。また、各糖質を添加した溶液の着色度を対照の着色度で除し、100倍し、100から減じて、着色の抑制率(%)として、表5にまとめた。
【0052】
【表5】

【0053】
表5から明らかなように、糖質無添加の対照に比べ、いずれの糖質を添加した溶液においても、L−アスコルビン酸の着色は抑制された。実験に使用した糖質のうち、α−マルトシルα,α−トレハロース、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有)及びα,α−マルトシルα,α−トレハロース含有糖質(還元性糖質を糖アルコールに還元)を添加した場合には、保存開始7及び14日目でともに、着色の抑制率が50%以上となったのに対して、その他の3種類の糖質を添加した場合は、着色度の抑制率が50%未満となり、α,α−トレハロースの糖質誘導体及びこれを含有する糖質は、アスコルビン酸の着色を抑制する効果に優れていることが確認された。また、実験に使用した、α,α−トレハロースの糖質誘導体或いはこれを含有する糖質の中では、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有)が、他の2種類の糖質よりもアスコルビン酸の着色を強く抑制することが判明した。
【0054】
<実験6>
<アスコルビン酸の褐変に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体及びpHの影響>
実験5において、最も強くL−アスコルビン酸の着色を抑制したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有)を用いて、アスコルビン酸の褐変に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体及びpHの影響を調べる実験を以下のようにして行った。即ち、実験1で調製したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含有)を、無水物換算で5gずつメスフラスコ5本に秤量し、各々適量の精製水を加えて溶解した後、その各々にL−アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社販売)を無水物換算で0.5g加えた。これらのL−アスコルビン酸水溶液に、それぞれ1%クエン酸ナトリウム水溶液を加えて、pHを3.0、4.0又は5.0に、4%水酸化ナトリウムを加えてpHを6.0又は7.0のいずれかに調整した後、精製水を加えて全量を50mlに調整し試験液とした。また、対照として、試験液で使用したトレハロース5gに代えて、スクロース(和光純薬工業株式会社販売)を無水物換算で5g使用する以外は試験液と同じ条件のL−アスコルビン酸の水溶液、及び、糖質を使用しないこと以外は試験液と同じ条件のL−アスコルビン酸水溶液を調製した。これらのL−アスコルビン酸の水溶液20mlを、各々30ml容の試験管に入れスクリューキャップで密栓した後、50℃で7日間保存した。保存開始時及び保存開始7日目の水溶液について、実験5と同様の方法により着色度(褐変)と着色の抑制率(%)を求め、表6にまとめた。
【0055】
【表6】

【0056】
表6から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(還元性糖質を含む)は、糖質無添加及びスクロース添加の場合と比較して、弱酸性条件(pH3.0及び4.0)において、L−アスコルビン酸水溶液の着色を、強く抑制することが判明した。また、中性付近(pH5.0乃至7.0)では、糖質無添加或いはスクロース添加の場合に比して、L−アスコルビン酸の着色を抑制はしたものの、その程度は弱く、特に、pH7.0の条件では、スクロース添加の場合と、その抑制の程度にはほとんど差が認められなかった。これらの結果から、α,α−トレハロースの糖質誘導体又はα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質が、L−アスコルビン酸の着色を、酸性域で特に効果的に抑制できることが判明した。
【0057】
以上の実験結果は、本発明を応用し、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を、ラジカル生成により、保存中に異臭の発生、硬化、分解、変性、着色(褐変)、変色、退色などの品質劣化や、更には、機能低下が生じる恐れのある不飽和化合物を含む組成物に含有させることにより、ラジカル生成を抑制できることを物語っている。また、このα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を皮膚などの炎症部位に適用することにより、当該部位でのラジカル生成を抑制し、その炎症を抑制することができることを物語っている。更に、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は、ラジカルスカベンジャーと併用した場合に、ラジカルスカベンジャーに起因する褐変(着色や退色も含む)も抑制できることを物語っている。
【0058】
以下に、本発明のラジカル生成抑制剤及び該ラジカル生成抑制剤を含んでなる組成物の例を具体的に挙げて説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0059】
<ラジカル生成抑制剤>
濃度20%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.5に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社販売、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるよう加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、pHを5.8に調整後、澱粉グラム当たり特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を5単位と、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を500単位となるように加え、48時間反応させ、これにα−アミラーゼ(上田化学株式会社販売、商品名「α−アミラーゼ2A」)を澱粉グラム当たり30単位加え、更に、65℃で4時間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで45℃に冷却し、特許文献2に開示されたアルスロバクター・スピーシーズQ36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、48時間反応させた。その反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製した糖化液を、更に濃縮して濃度70%のシラップ状のラジカル生成抑制剤を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE13.7で、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有していた。また、本品は、中華まんじゅうや蒸しパンなどにムチムチした食感を与える飲食品の品質改良剤として使用することもできる。
【実施例2】
【0060】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例1の方法で得たシラップを常法により噴霧乾燥して非晶質粉末状のラジカル生成抑制剤を調製した。
【実施例3】
【0061】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例1の方法で得た、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製した糖化液を、さらに、精製するために、塩型強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社販売、商品名「ダウエックス50W−X4」、Mg++型)を用いたカラム分画を行った。樹脂を内径5.4cmのジャケット付ステンレス製カラム4本に充填し、直列につなぎ樹脂層を全長20mとした。カラム内温度を55℃に維持しつつ、糖液を樹脂に対して5%(v/v)加え、これに55℃の温水をSV0.13で流して分画し、グルコース及びマルトース高含有画分を除去し、α,α−トレハロースの糖質誘導体高含有画分を集め、更に精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質粉末状のラジカル生成抑制剤を調製した。本品は、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体としてα−マルトシルα,α−トレハロース70.2%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース6.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース2.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース4.1%を含有していた。本品は、ラジカル生成抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなどの脂溶性ビタミンやアスコルビン酸、これらビタミンの誘導体をはじめとするラジカルスカベンジャーを配合した液状の製剤を、噴霧乾燥などにより粉末化するための粉末化基剤としても極めて有利に利用できる。
【実施例4】
【0062】
<ラジカル生成抑制剤>
馬鈴薯澱粉1質量部に水6質量部を加え、更に、澱粉当たり0.01%の割合になるようにα−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製造、商品名「ネオスピターゼ」)を加えて撹拌混合し、pH6.0に調整後、この懸濁液を85乃至90℃に保ち、糊化と液化を同時に起こさせ、直ちに120℃に5分間加熱して、DE1.0未満にとどめ、これを55℃に急冷し、pH7.0に調整し、これにデンプン枝切り酵素(株式会社林原生物化学研究所製造、商品名「プルラナーゼ」(EC 3.2.1.41))及び特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼを、それぞれ澱粉グラム当たり150単位及び8単位の割合で加え、pH7.0、50℃で36時間反応させた。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで、53℃まで冷却し、特許文献5に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、噴霧乾燥して非晶質粉末状態のラジカル生成抑制剤を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE 11.4で、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース62.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース2.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース0.8%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.5%を含有していた
【実施例5】
【0063】
<ラジカル生成抑制剤>
試薬級のマルトテトラオース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)の20%溶液をpH7.0に調整後、特許文献2に開示された非還元性糖質生成酵素を、無水物換算で、糖質グラム当たり2単位となるように加えて、46℃で、48時間、糖化して、固形物あたり79.8%のα−マルトシルα,α−トレハロースを含有する溶液を得た。この溶液を、pH6.0に調整後、無水物換算で、糖質グラム当たり10単位となるようにβ−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社販売)を加えて、50℃で48時間反応させて、マルトテトラオースを分解した。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、冷却した後、ろ過して得られる溶液を、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(東京有機化学工業株式会社販売、「XT−1016」、Na型、架橋度4%)を用いて分画し、α−マルトシルα−トレハロース高含有画分を集め、精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質粉末状態のラジカル生成抑制剤を調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを98.1%含有しており、ソモジ ネルソン法による測定での還元力測定では、還元力は検出限界以下であった。
【0064】
この標品を、再度水に溶解し、活性炭処理して、パイロジェンを除去し、噴霧乾燥して、非晶質粉末状のラジカル生成抑制剤を調製した。本品は、パイロジェンを除去しているので、特に医薬品などのようなパイロジェンを含まないことが要求される組成物や医薬品用のラジカル生成抑制剤として好適である。
【実施例6】
【0065】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例1の方法で得たα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するシラップに水を加えて、濃度約60%に調製して、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約8.5%添加し、攪拌しながら温度を128℃に上げ、水素圧を80kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮して濃度70%のシラップ状のラジカル生成抑制剤を調製した。
【実施例7】
【0066】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例3の方法で得た非晶質状態のラジカル生成抑制剤を水に溶解し、濃度約60%水溶液にし、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約9%添加し、攪拌しながら温度を130℃に上げ、水素圧を75kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮してシラップ状のラジカル生成抑制剤を調製した。更にこのシラップを、常法により噴霧乾燥して、非晶質粉末状のラジカル生成抑制剤を調製した。
【実施例8】
【0067】
<ラジカル生成抑制剤>
濃度6%の馬鈴薯澱粉乳を加熱糊化後、pH4.5、温度50℃に調整し、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を澱粉グラム当たり2500単位加えて20時間反応させた。その反応液をpH6.0に調整後、120℃で10分間オートクレーブした後、45℃に冷却し、これにα−アミラーゼ(ノボ社販売、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり150単位になるよう加え、24時間反応させた。その反応液を、120℃で20分間オートクレーブし、45℃に冷却後、特許文献2に開示されたアルスロバクター・スピーシーズQ36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を、澱粉グラム当たり2単位の割合で加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に、濃縮して、濃度65%のシラップ状のラジカル生成抑制剤を、無水物換算で、収率約89%で得た。本品は、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース3.2%、α−マルトシルα,α−トレハロース6.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース28.5%及びグルコース重合度6以上のα−グリコシルα,α−トレハロース11.9%含有していた。
【0068】
本品を、実施例7の方法に準じて、水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、その糖アルコールに変換した後、常法により精製して、シラップ状のラジカル生成抑制剤を調製した。さらに、このシラップを、常法により噴霧乾燥して、非晶質状態の粉末状のラジカル生成抑制剤を調製した。
【実施例9】
【0069】
<ラジカル生成抑制剤>
濃度33%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.0に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社販売、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるように加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120℃で30分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を澱粉グラム当たり500単位及び特開平7−236478号に記載のマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼを澱粉グラム当たり1.8単位の割合になるように加え、40時間反応させた。本反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、53℃まで冷却後、pH5.7に調整して、特許文献5に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、噴霧乾燥して非晶質状態の粉末状のラジカル生成抑制剤を、無水物換算で、収率約87%で得た。本品は、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース8.2%、α−マルトシルα,α−トレハロース6.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース5.6%、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース21.9%、α−マルトペンタオシルα,α−トレハロース9.3%、及びグルコース重合度8以上のα−グリコシルα,α−トレハロース14.1%含有していた。
【0070】
本品を、実施例7の方法に準じて、水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、その糖アルコールに変換した後、常法により精製後、噴霧乾燥して、非晶質粉末状のラジカル生成抑制剤を調製した。
【実施例10】
【0071】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例2で得たα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末60質量部に対して、市販の無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名「マビット」)35質量部を混合し、粉末混合物を調製した。本品は、ラジカル生成抑制剤として有利に利用できる。
【実施例11】
【0072】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例2で得た粉末状のラジカル生成抑制剤70質量部に対して、リンゴ酸2質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「アスコフレッシュ」)10質量部、酵素処理ヘスペリジン2質量部(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)を混合して、粉末混合品を調製した。本品は、ラジカル生成抑制剤として有利に利用できる。
【実施例12】
【0073】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例2で得た粉末状のラジカル生成抑制剤70質量部に対して、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)10質量部を混合し、さらに酵素処理ルチン2質量部(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGルチン」)を加えて、粉末混合品を調製した。本品は、加工飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、化学工業品を始めとする、ラジカル生成により、保存中に異臭の発生、退色、硬化、分解、変性などの品質劣化や機能低下が生じ易い不飽和化合物を含有する組成物に含有させることにより、ラジカル生成を抑制し、安定に保つためのラジカル生成抑制剤として利用することができる。
【実施例13】
【0074】
<ラジカル生成抑制剤>
実施例2で得たラジカル生成抑制剤50質量部に対して、市販の食品級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)50質量部を混合し、粉末混合物を得た。本品は、加工飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、化学工業品を始めとする、ラジカル生成により、保存中に異臭の発生、退色、硬化、分解、変性などの品質劣化や機能低下が生じ易い不飽和化合物を含有する組成物に含有させることにより、ラジカル生成を抑制し、安定に保つためのラジカル生成抑制剤として利用することができる。また、本品は、直接、或いは、シュガーエステルなどを添加して、造粒、さらには、打錠して、顆粒、錠剤の形態での利用も容易である。
【実施例14】
【0075】
<ラジカル生成抑制剤>
市販の食品級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)を、水に溶解し、60℃に加熱しながら、減圧濃縮して、トレハロースの濃度が75%の溶液を調製し、室温に放置して結晶を析出させ、該結晶を水で洗浄する操作を2回くり返した後、乾燥、粉砕して調製した、純度99.8%の含水結晶α,α−トレハロース粉末50質量部と、実施例5で得た粉末状のα−マルトシルα,α−トレハロース50質量部とを均質混合して、粉末混合物を得た。本品は、加工飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、化学工業品を始めとする、ラジカル生成により、保存中に異臭の発生、褐変、変色、退色、硬化、分解、変性などの品質劣化や機能低下が生じ易い不飽和化合物を含有する組成物に含有させることにより、ラジカル生成を抑制し、安定に保つためのラジカル生成抑制剤として利用することができる。本品は、高純度のα−マルトシルα,α−トレハロース及びα,α−トレハロースで構成されているので、反応性が極めて低く、安定なので、特に、分子内にアミノ基を含み、還元性の糖とメーラード反応を起こし、その品質に劣化を来すような組成物に対して好適に使用できる。また、本品は、直接、或いは、シュガーエステルなどを添加して、造粒、さらには、打錠して、顆粒、錠剤の形態での利用も容易である。
【実施例15】
【0076】
<魚肉練製品>
水晒ししたスケトウダラの生肉4,000質量部に対し、実施例12で調製した粉末状のラジカル生成抑制剤200質量部、クエン酸ナトリウム5質量部、アスコルビン酸2−グルコシド1質量部(株式会社林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」)を加えて、スリ身を製造し、−20℃で凍結して冷凍スリ身を製造した。冷凍スリ身を90日間−20℃で冷凍保存後に解凍し、グルタミン酸ナトリウム80質量部、馬鈴薯澱粉200質量部、氷水300質量部、トリポリリン酸ナトリウム8質量部、食塩120質量部及びマルチトール10質量部とを溶解しておいた水溶液100質量部を加えて擂漬し、約120gずつを定形して板付した。これらを、30分間で内部の品温が約80度になるように蒸し上げた。次いで、室温で放冷したのち、4℃で24時間放置して魚肉練製品を得た。ラジカル生成抑制剤は、スケトウダラの冷凍スリ身のタンパク質に対して優れた冷凍耐性を付与するため、冷凍保存後も、該冷凍スリ身の鮮度は十分に保持されており、それを原料とした本品は、風味良好、肌面が細やかで、艶やかな光沢を有していた。しかも、本品に含まれる脂質をはじめとする不飽和化合物の安定性が、α,α−トレハロースの糖質誘導体により高められているばかりでなく、ラジカル化した不飽和化合物の過酸化物によるタンパク質やアミノ酸の修飾、変性も抑制されるので、保存安定性にも優れているという特徴がある。
【実施例16】
【0077】
<生鮮魚介類の鮮度保持剤>
実施例12で調製した粉末状のラジカル生成抑制剤100質量部と、フィチン酸10質量部、グレープシードポリフェノール2質量部とを均一に混合し、粉末状の生鮮魚介類の鮮度保持剤を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、魚の油脂成分のラジカル生成を抑制することに加えて、α,α−トレハロースの糖質誘導体、α,α−トレハロース、グレープシードポリフェノール、有機酸、酵素処理ルチンが相乗的に作用して、魚肉の冷凍変性を抑制することから、生鮮魚介類及びその冷凍品の鮮度保持剤として、さらには、煮魚やその煮こごりの不快味や不快臭の改善剤としても好適である。
【0078】
本品400質量部を12Lの海水に溶解し、さらに、細かく砕いた市販の氷4kgを入れて冷却した。この水溶液に、漁港で水揚げした直後のアジ5kgを、浸漬処理し、10時間後に取り出して、体表及び鰓の状態を観察した。このアジは、α,α−トレハロースの糖質誘導体、α,α−トレハロース、グレープシードポリフェノール、有機酸、酵素処理ルチンが相乗的に作用して、ラジカルの生成を抑制し、脂質などの変性が抑制されることから、水揚げ直後と変わらない外観を呈していた。さらに、これを密封容器に入れて、−20℃の冷凍庫で10日間保存後、解凍してその状態を観察したところ、アジの体表は全く変化が起きておらず新鮮な状態を保っていた。
【実施例17】
【0079】
<米飯>
水洗いして水切りした米300質量部に水を米の1.25倍量と実施例4の方法で調製した粉末状のラジカル生成抑制剤13.5質量部、ビタミンE0.1質量部を混合して浸漬後、家庭用炊飯器にて炊飯して米飯を得た。本品は、米飯中の脂質をはじめとする不飽和化合物の安定性がα,α−トレハロースの糖質誘導体により高められているばかりでなく、ラジカル化した不飽和化合物の過酸化物によるタンパク質やアミノ酸の修飾、変性も抑制されるので、不快な米糠臭の発生やビタミンEに由来する不快臭が抑制され比較的長期間炊飯直後の好ましい風味が保持されるという特徴がある。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、澱粉の老化防止効果、タンパク質の冷蔵・冷凍変性防止効果を併せ持っているので、本品は、老化や冷凍変性の発生するチルド冷蔵用や冷凍保存用の米飯として有利に利用できる。
【実施例18】
【0080】
<パスタ>
実施例1の方法で得たラジカル抑制剤、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)及びマルトース(株式会社林原商事販売、商品名「サンマルト」)を水に溶解し、それぞれを10%含有する処理液を調製した。市販のパスタを常法により茹でた直後の熱いままで、80℃に加熱したこの処理液10質量部に対して、その1質量部を、5分間浸漬し、処理液から引き上げ、処理液をよくきって、冷却しパスタを調製した。対照として、処理液に浸漬しない以外は、同じ条件でパスタを調製して、これらパスタを4℃で3日間保存し、その食味を比較しところ、処理液で処理したパスタは、α,α−トレハロースの糖質誘導体、α,α−トレハロース及びマルトースが、ラジカルの生成を抑制し油脂の酸化や変腐を抑制すると共に、澱粉の老化も抑制することから、着色や異臭の発生もなく、製造直後のパスタ本来の食感と味質をよく保持していた。これに対して、処理液で処理しなかった対照のパスタでは、ぱさぱさした食感で、異臭が発生し、食味が低下した。なお、処理液は、α,α−トレハロースの糖質誘導体、α,α−トレハロース及びマルトースを含む糖質を、固形分換算で30%含有しているものの、これらの糖質の大部分は、パスタ中に均質浸透しているため、その甘味が、パスタ自身の味質に影響を及ぼすことはなかった。
【実施例19】
【0081】
<粉末油脂>
大豆サラダ油100質量部及びレシチン1質量部に水10質量部を室温で混合した後、これに実施例2の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤100質量部を混合して粉末化し、篩にかけて粉末油脂を得た。本品における不飽和化合物は、α,α−トレハロースの糖質誘導体によりラジカルの生成及びラジカル生成の進行が抑制され、又、α,α−トレハロースが不飽和化合物と会合物を形成することによって、その安定性が高められているうえ、種々の食品素材とともに配合された際に、その配合される食品素材における不飽和化合物の安定化をも達成することができ、また、食品素材がタンパク質やアミノ酸を含有するものにあっては、ラジカル化した不飽和化合物の過酸化物によるタンパク質やアミノ酸の修飾、変性も抑制されるので、マヨネーズ、ドレッシングなどの調味材料、高カロリー経管栄養剤、配合飼料などに有利に利用できる。
【実施例20】
【0082】
<粉末牛乳>
生鮮乳200質量部に、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式会社林原商事販売、商品名『ハローデックス』)2質量部とデキストリン(三和澱粉工業株式会社販売、商品名『サンデックス』#100)8質量部とを加えて攪拌、溶解し、これを常法により噴霧乾燥して、粉末牛乳を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体によりラジカル生成が抑制されるので、比較的長期間生鮮乳の好ましい風味が保持される。また、この粉末牛乳は、α,α−トレハロースの糖質誘導体とデキストリンとを粉末化基剤として使用しているので、α,α−トレハロースの糖質誘導体のみを粉末化基剤として使用した場合に比して吸湿性が低く、デキストリンのみ粉末化基剤として使用した場合に比して、水や湯への溶解性が高いという特徴を有している。
【実施例21】
【0083】
<サラダドレッシング>
水40.8質量部、蒸留ホワイトビネガー20質量部、植物油15質量部、砂糖5質量部、食塩2質量部、ガーリックパウダー1.0質量部、タマネギパウダー0.7質量部、グランドホワイトペッパー0.1質量部、キサンタンガム0.3質量部、ソルビン酸カリウム0.1質量部、実施例2の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤15質量部を混合してサラダドレッシングを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体によりラジカル生成が抑制されるので、油性成分の劣化や、ガーリックパウダー、タマネギパウダー、グランドホワイトペッパーなどの風味の劣化が抑制されるので、長期間、その品質が安定に保持される。
また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体及び環状四糖により、ビネガーの酢酸による刺激性が低減されるので、まろやかな美味しいドレッシングである。
【実施例22】
【0084】
<クリーム>
シア分別脂(融点38℃)80部と菜種ヤシ油(融点35℃)20部との混合油脂35質量部、大豆レシチン(HLB3)0.3質量部、モノグリセリン脂肪酸エステル (HLB3)0.03質量部、ヘキサグリセリンペンタエステル(HLB4)0.15質量部、水60質量部、脱脂粉乳4質量部、リン酸のアルカリ金属塩0.1質量部を使用し、常法により、予備乳化を行い、70kg/cmの加圧条件で均質化後、145℃、数秒程度の超高温加熱滅菌処理し、70kg/cmの加圧条件にて再均質化した後、冷却し、約24時間エージングを行い、起泡性乳化物を調製した。この起泡性乳化物100質量部に対して、実施例3の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤8質量部を加えて、ケンウッドミキサーを使用して、2分45秒間ホイップして、オーバーラン75% のクリームを調製した。本品は、ラジカル生成が抑制されるので、風味の劣化が抑制されており、5〜20℃で7日間保存後のもの、或いは、−20℃に14日間凍結保存後解凍したものは、いずれも、保形性、風味、口溶けがよく、また、冷凍保存時にも、ひび割れも認められなかった。
【実施例23】
【0085】
<マヨネーズ>
卵1個分の卵黄、サラダ油140ml、実施例2の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤1g、国際公開WO 02/10361号明細書に開示された環状四糖5含水結晶1g、塩少々、胡椒少々を使用して、常法によりマヨネーズを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体及び環状四糖によりラジカル生成が抑制されて、油性成分の劣化が抑制されるので、長期間、その品質が安定に保持される。
【実施例24】
【0086】
<カット野菜>
カットしたレタスを次亜鉛塩素酸ナトリウムの90ppm水溶液に10分間浸漬して殺菌した後、実施例13の方法で得たラジカル生成抑制剤1%と食塩1%を含有し、クエン酸でpHを3.2に調整した水溶液に3分間浸漬してカット野菜を調製した。本品はα−トレハロースの糖質誘導体及びα,α−トレハロースによりラジカル生成が抑制されて、長期間、その鮮度が安定に保持される。
【実施例25】
【0087】
<可食性フィルム>
プルラン(商品名「PI−20」、株式会社林原商事販売)30質量部、水70質量部、及び実施例2の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤1.5質量部を加えて完全に溶解した。この溶解液100質量部に対して、カラギーナン1質量部及びレシチン0.1質量部を加えて溶解混合し、均一な溶液とした。これを、常法にしたがって、ポリエステルフィルム上に流延し、引取速度3m/分で、厚さ0.03mmのフィルムとし、90℃の熱風で乾燥させて製品とした。本品は、プルランのみを使用したフィルムとは違って、水系で速溶せず、徐々に溶解、崩壊する可食性フィルムであり、しかも、本品に含まれる不飽和化合物の安定性がα,α−トレハロースの糖質誘導体により高められているので、保存安定性にも優れているという特長がある。従って、本品はオブラートなどと同様に、食品分野や医薬品分野などで有利に利用できる。
【実施例26】
【0088】
<焙煎アーモンド>
精選したアーモンド100質量部を常法により焙煎し、この高温のアーモンドを撹拌しつつ、実施例8の方法で得たシラップ状のラジカル生成抑制剤(水素添加していない)を予め水で希釈して20%水溶液としたもの3質量部をできるだけ均一に噴霧混合し、次いで、食塩粉末をまぶして焙煎アーモンドを得た。本品は風味の優れた焙煎アーモンドであり、脂質のラジカル生成が抑制されることから、その保存安定性に優れており、そのまま食すことも、或いは、製菓・製パンや調理用の材料としても好適である。
【実施例27】
【0089】
<茶飲料>
緑茶(煎茶)3質量部を熱水180質量部に浸出し、この浸出液に、アスコルビン酸、実施例1の方法で得たラジカル生成抑制剤、カテキン、糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名「林原ヘスペリジンS」)及びβ−サイクロデキストリンを、各々最終濃度が0.05%(w/v)、2%(w/v)、1.5%(w/v)、1%(w/v)及び0.1%(w/v)となるように添加して溶解し、除菌した後、500ml容プラスチック製透明ボトルに充填し、ボトル入り緑茶飲料を調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体及びサイクロデキストリンが、ラジカル生成を抑制すると共に、カテキンの渋味や苦味をマスクし、アスコルビン酸の褐変も抑制することから、長期間保存しても、褐変や異臭の発生もない、まろやかで風味の良い、飲みやすい茶飲料である。また、本品は、糖転移ヘスペリジンを含有しているので、体内の脂質調節の目的で飲用することもできる。
【実施例28】
【0090】
<中華まんじゅう>
豚肉20質量部、豚脂5質量部、タマネギ35質量部、シイタケ3質量部、タケノコ2質量部、澱粉3質量部、パン粉4質量部、実施例1の方法で得たシラップ状のラジカル生成抑制剤3質量部、醤油4質量部、砂糖4質量部、食塩0.7質量部、ごま油0.7質量部、生姜0.7質量部、ニンニク0.2質量部、ポークエキス3質量部、胡椒0.1質量部、うま味調味料0.5質量部、水を加えて全量を125質量部としたものを、常法により、熱調理したものを具材として調製した。これを、生イースト2.5質量部を水44質量部に溶き、強力粉30質量部、薄力粉70質量部、砂糖15質量部、実施例1で調製したシラップ状のラジカル生成抑制剤2質量部、食塩1.3質量部およびベーキングパウダー0.6質量部を加え、攪拌機で混合した後、ラード5質量部を加えさらに混合して、常法により調製した皮部生地で包み、常法により、38℃で40分間発酵後、15分間蒸して中華まんじゅうを調製した。本品はムチムチした食感の皮とジューシーな具からなる美味しい中華まんじゅうであり、冷凍、冷蔵、チルド条件で保存しても、調製直後の美味しさがよく保持されていた。
【実施例29】
【0091】
<ぎょうざ>
小麦粉16質量部、タピオカ加工澱粉4質量部、粉状の小麦蛋白0.2質量部、粉状の大豆蛋白0.1質量部、食塩0.2質量部、静菌剤0.1質量部をよく混合した後、水6.4質量部を加えて攪拌し、次いで、実施例1の方法で得たラジカル生成抑制剤3質量部を投入して混合し、これに、固形状乳化油脂1質量部を投入し、混合して生地を作成した。次いで得られたこの生地を、厚さ0.8mm程度にのばして、1枚の質量が約6gの餃子の皮を得た。この餃子の皮6gに餃子類の具15gを包み込み、成形した生餃子を蒸し器に入れ15分間、100℃前後で蒸し、次に、急速冷凍を60分間行い、冷凍餃子とした。これらの冷凍餃子を樹脂製袋に入れ、脱気して密封した上で箱詰めにして−20℃で保存した。本品を30日間冷凍保存後、解凍し、蒸し焼きして焼き餃子(製品)とし、さらに常温(20℃前後)で1日置いた。これを電子レンジで再加熱して食したところ冷凍、蒸し焼き、常温による保管、電子レンジ再加熱という餃子の皮の硬化や脂質の劣化が起こりやすいプロセスを経たにもかかわらず、脂質の劣化や、不快味、不快臭の発生もなく、また、皮は硬化することなく、耳まで柔らかい状態であった。
【実施例30】
【0092】
<脂肪含有乳剤>
精製大豆油100gに精製大豆レシチン12g及びグリセリン25gを加え、湯浴で加温し、ポリトロンホモジナイザーで乳化を行った後、ミクロンフルイダイザーを使用して、さらに乳化した。得られた乳化液に予め、実施例9の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤(水素添加していない)80gを溶解した水溶液250mlを加え、さらに蒸留水を加えて、全液量を1,000mlに調整した。次いで、炭酸水素ナトリウムを加えて、pHを7.2に調整し、メンブランフィルターで濾過後、濾液を250mlのバイアルに充填し、120℃で20分間高圧蒸気滅菌を行い脂肪乳剤を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体によりラジカル生成が抑制されるので、ブドウ糖などの糖の使用時に問題となるギ酸をはじめとする有機酸の発生や、生体に有害な遊離脂肪酸の生成が抑制されており、長期に安定な、脂肪乳剤であり、そのままで、或いは、アミノ酸やビタミン類などを添加して、経口或いは非経口的な栄養補給に有利に利用できる。
【実施例31】
【0093】
<香料>
水100gにHLB15のショ糖脂肪酸エステル5g、実施例4の方法で調製した粉末状のラジカル生成抑制剤75gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌した。この溶液を約40℃に冷却後ホモミキサーで撹拌しながら、レモンオイル10gを混合して乳化液を得た。本品は、さらに、噴霧乾燥などの方法で乾燥することにより、容易に粉末香料とすることができる。本品及び本品を粉末化したレモンオイル香料は、いずれも長期保存による劣化臭の発生がなく良好な香気・香味を保持していた。
【実施例32】
【0094】
<ビタミンD錠剤>
ビタミンDとしてビタミンD(コレカルシフェロール、和光純薬株式会社製)をエタノール(試薬特級、片山化学株式会社販売)に溶解し、ビタミンDを3%濃度含むエタノール溶液1.5mlに、実施例3の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤10gに添加し、減圧乾燥後、粉末化して、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するビタミンD製剤粉末を調製した。この粉末約0.3gを採り、打錠機で200kg/cm、2分間加圧して、ビタミンD錠剤を調製した。本品は、長期保存によるビタミンDの劣化が少ない、保存安定性に優れているビタミンD製剤である。
【実施例33】
【0095】
<洗顔フォーム>
下記の構成処方に基づき、常法により、その全量を75〜85℃で加熱溶解した後、徐々に室温まで攪拌冷却し、目的の洗顔フォームを得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、変色や異臭の発生が抑制され、しかも、クリーミィな泡立ちで、すっきりした洗浄感を有し、洗い上がり時はシットリとした感じが持続する洗顔フォームである。なお、以下の実施例33〜実施例48における各原料成分の配合量は、いずれも質量部を意味する。
N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム 20
N−ヤシ油脂肪酸/硬化牛脂肪酸アシル−L−グルタ
ミン酸ナトリウム 2
パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド 1
ポリオキシエチレンヤシ油ソルビタン(20E.O.) 5
1,3−ブチレングリコール 4
プロピレングリコール 27
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 1
実施例7の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤 2
チョウジエキス 0.5
パラオキシ安息香酸エステル 0.3
精製水を加えて全量を100とする。
【実施例34】
【0096】
<口紅>
以下に示す構成処方に基づき、常法により、そのA成分を混合して、85℃で攪拌溶解したものに、B成分の各成分をヒマシ油の一部に加えローラーで処理したものを加えて均一に分散した。これを、モールド型に流し込み急冷し、スティック状とし、目的の口紅を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、変色や異臭の発生が抑制され、しかも、滑らかなのびで、化粧仕上がりがよく、保湿性があり、潤った唇状態を保つことのできる口紅である。
<A成分>
ヒマシ油 25
2−エチルヘキサン酸セチル 14.5
ラノリン 11
イソプロピルミリスチン酸エステル 10
キャンデリラロウ 9
パラフィン 8
ミツロウ 5
カルナウバロウ 5
フラバンジェノール 0.5
パラオキシ安息香酸プロピル 適量
香料 適量
<B成分>
実施例7の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤 4
酸化チタン 6
赤色202号 0.6
赤色201号 0.2
赤色223号 0.2
【実施例35】
【0097】
<アイシャドー>
以下に示す構成処方に基づき、常法により、そのA成分をヘンシェルミキサーで混合し、これに均一に加熱溶解したB成分を加え、混合粉砕し、中皿に圧縮成型し、アイシャドーを得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、変色や異臭の発生が抑制され、しかも、密着性と化粧仕上がり感が良く、塗布した瞼から目尻は保湿感が得られる、使用感の良いアイシャドーである。
<A成分>
シリコン処理タルク 27
シリコン処理酸化チタン 9
チッ化ホウ素 9
シリコン処理(タルク・ケイフッ化K)焼成物 9
シコパール・ピンク(BASF社販売) 9
実施例3の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤 8.5
カテキン 0.5
メチルパラベン 1
<B成分>
ジメチコン 5
ジオクタン酸ネオペンチルグリコール 1
スクワラン(植物性) 4
トコフェロール 0.01
プロピルパラベン 0.01
【実施例36】
【0098】
<化粧下地>
下記に示す配合処方に基づき、常法により、そのB成分を加熱溶解したものの中にC成分を添加・分散後、別の容器で加熱・溶解したA成分を添加・乳化して充分に均一混合して、室温まで攪拌冷却し、目的の化粧下地を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、変色や異臭の発生が抑制され、しかも、ファンデーションとの密着性がよく、化粧崩れしにくく、更に、シットリとした感触が持続し、良好な使用感を有する化粧下地である。また、ニキビやアトピー性の疾患を有する肌や、化粧品に過敏な肌の場合でも、炎症性の反応が抑制されるので、これらの疾患の増悪を懸念することなく使用することができる。
<A成分>
精製水 48
1,3−ブチレングリコール 2
グリセリン 1
実施例7の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤 1.5
エラグ酸 0.5
モンモリロナイト 0.5
プルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルラン
PI−20」) 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
エチレンジアミン4酢酸ナトリウム 0.05
水酸化ナトリウム 0.1
<B成分>
ステアリン酸 1
パルミチン酸 1
イソステアリルパルミテート 3
ワセリン 1
ジメチルポリシロキサン(6CS) 10
流動パラフィン 10
POEグリセリルモノステアレート 1
グリセリルモノステアレート 1
酸化防止剤 0.05
防腐剤 0.2
香料 適量
<C成分>
酸化チタン 4
セリサイト 8
黄酸化鉄 0.1
微粒子酸化チタン 5
チタン酸コバルト 0.7
【実施例37】
【0099】
<乳液>
以下に示す配合処方に基づき、常法により乳液を調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、はりのあるみずみずしい肌の維持をはじめ、皮膚刺激やかゆみの予防、美白、シミ、ソバカス、日焼け等の色素沈着症、或いは、皮膚の老化の治療用、予防用等に有利に使用できる。しかも、ニキビやアトピー性の疾患を有する肌や、化粧品に過敏な肌の場合でも、炎症性の反応が抑制されるので、これらの疾患の増悪を懸念することなく使用することができる。
ステアリン酸 2.5
セタノール 1.5
ワセリン 5
流動パラフィン 10
ポリオキシエチレン(10モル)オレート 2
プロピルパラベン 0.1
酢酸dl−α−トコフェロール 0.5
香料 0.2
ポリエチレングリコール(1500) 3
トリエタノールアミン 1
糖蜜エキス 0.5
L−アスコルビン酸2−グルコシド(林原生物化学研
究所株式会社販売、商品名「AA2G」) 2
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式
会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 2.5
国際公開WO 02/10361号明細書の実施例A−2
に開示された環状四糖含有シラップを水素添加したシ
ラップ(株式会社林原生物化学研究所製造) 0.5
脱イオン水を加えて全量を100とする。
【実施例38】
【0100】
<化粧水>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、化粧水を調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、はりのあるみずみずしい肌の維持をはじめ、皮膚刺激やかゆみの予防、美白、シミ、ソバカス、日焼け等の色素沈着症、或いは、皮膚の老化の治療用、予防用等に有利に使用できる。しかも、ニキビやアトピー性の疾患を有する肌や、化粧品に過敏な肌の場合でも、炎症性の反応が抑制されるので、これらの疾患の増悪を懸念することなく使用することができる。
実施例6の方法で得たラジカル生成抑制剤 0.5
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
グリセロール 2
エタノール 5
チオタウリン 1
感光素201号 0.0001
エチルパラベン 0.1
精製水を適量加えて、全量を100とする。
【実施例39】
【0101】
<化粧水型スプレー>
以下に示す配合処方に基づき、無水エタノールの下記の成分を溶解後、ろ過して化粧水型スプレーの原液を調製した。これの1質量部をエアゾール容器に充填後、液体プロパンガス1質量部を充填して、化粧水型スプレーを調製した。本品は、α,α−−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、はりのあるみずみずしい肌の維持をはじめ、皮膚刺激やかゆみの予防、ニキビの抑制、美白、シミ、ソバカス、日焼け等の色素沈着症、或いは、皮膚の老化の治療、予防、体臭の抑制などに有利に使用できる。
パラフェノールスルホン酸亜鉛 2
無水エタノール 92.3
塩化ベンザルコニウム液(48%) 0.2
1,3−ブチレングリコール 2
実施例6の方法で得たラジカル生成抑制剤 1.5
ミリスチン酸イソプロピル 2
アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物
化学研究所販売、「AA2G」) 0.8
アルブチン 0.5
香料 適量
精製水を適量加えて、全量を100とする。
【実施例40】
【0102】
<ローション>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、ローションを調製した。本品は、α,α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、はりのあるみずみずしい肌の維持をはじめ、皮膚刺激やかゆみの予防、ニキビの抑制、美白、シミ、ソバカス、日焼け等の色素沈着症、或いは、皮膚の老化の治療、予防、体臭の抑制などに有利に使用できる。
実施例6の方法で得たラジカル生成抑制剤 10
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
エタノール 10
1,3−ブチレングリコール 5
糖転移ルチン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名
「アルファグルコシルルチン」) 1
感光素201号 0.005
ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油 1
香料 適量
精製水を適量加えて、全量を100とする。
【実施例41】
【0103】
<ローション>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、ローションを調製した。本品は、α,α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、はりのあるみずみずしい肌の維持をはじめ、皮膚刺激やかゆみの予防、ニキビ、美白、シミ、ソバカス、日焼け等の色素沈着症、皮膚の老化の治療、予防や体臭の抑制などに有利に使用できる。
実施例6の方法で得たラジカル生成抑制剤 10
アルミニウムクロロハイドレート 10
エタノール 50
1,3−ブチレングリコール 3
アルブチン 0.5
塩化ベンザルコニウム 0.2
ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油 0.5
香料 0.1
精製水を適量加えて、全量を100とする。
【実施例42】
【0104】
<化粧用クリーム>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、A成分を加熱溶解し、これにB成分を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化して撹拌混合して化粧用クリームを製造した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、はりのあるみずみずしい肌の維持をはじめ、皮膚刺激やかゆみの予防、ニキビ、美白、シミ、ソバカス、日焼け等の色素沈着症、或いは、皮膚の老化の治療、予防等に有利に使用できる。
<A成分>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール 2
自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 5
ベヘニルアルコール 1
エイコサテトラエン酸 2
流動パラフィン 5
トリオクタン酸グリセリル 10
防腐剤 適量
<B成分>
実施例6の方法で得たラジカル生成抑制剤 2
dl−乳酸ナトリウム 5
1,3−ブチレングリコール 5
ニンジンエキス 1
シソエキス 1
香料 適量
精製水を加えて全量を100とする。
【実施例43】
【0105】
<ヘアトニック>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、ヘアトニックを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、本品は、使用後も頭皮がベタ付くこともなく、毛髪のセット力にも優れた、使用感に優れたヘアトニックである。また、使用後は頭髪の櫛の通りもよくなった。また、ニキビやアトピー性の疾患を有する肌や、化粧品に過敏な体質の場合でも、炎症性の反応が抑制されるので、これらの疾患の増悪を懸念することなく使用することができる。
エタノール 50
ポリオキシエチレン(8モル)オレエート 1.5
ヒノキチオール 0.1
感光素301号 0.01
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式
会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 7
α−グリコシルグリチルリチン粉末(株式会社林原生
物化学研究所製造) 3
アイエキス(水抽出) 0.5
エチルパラベン 0.1
香料 0.05
精製水を適量加えて全量を100とする。
【実施例44】
【0106】
<ヘアダイ>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、ジェルタイプのヘアダイ(染毛剤)を調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、本品は、皮膚に対する刺激性が低減されており、しかも、使用後も頭皮がベタ付くこともなく、毛髪のセット力にも優れた、使用感に優れたヘアダイである。また、使用後は頭髪の櫛の通りもよくなるだけでなく、ニキビやアトピー性の疾患を有する肌や、化粧品に過敏な体質の場合でも、炎症性の反応が抑制されるので、これらの疾患の増悪を懸念することなく使用することができる。
酸性染料 1
ベンジルアルコール 6
イソプロピルアルコール 18
実施例1の方法で得たシラップ状のラジカル生成抑制剤 3
アントシアニジン 0.5
クエン酸 0.3
キサンタンガム 1
精製水を加えて100とする。
【実施例45】
【0107】
<パーマネントウェーブ用剤>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、パーマネントウェーブ剤を調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、本品は、皮膚に対する刺激性が低減されており、しかも、使用後も頭皮がベタ付くこともなく、毛髪のセット力にも優れた、使用感に優れたパーマネントウェーブ剤である。また、使用後は頭髪の櫛の通りもよくなるだけでなく、ニキビやアトピー性の疾患を有する肌や、化粧品に過敏な体質の場合でも、炎症性の反応が抑制されるので、これらの疾患の増悪を懸念することなく使用することができる。
チオグリコール酸アンモニウム(50%水溶液) 10
アンモニア水(28%) 3
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.1
実施例1の方法で得たシラップ状のラジカル生成抑制剤 1.5
プロピレングリコール 5
糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名
「αGヘスペリジン」) 1
エデト酸塩 適量
香料 適量
精製水を加えて100とする(チオグリコール酸アンモニウム、アンモニア水
は最後に混合する。)。
【実施例46】
【0108】
<歯磨き>
以下に示す構成処方に基づき、常法により、そのA成分を加熱混合して均一にした後、B成分、C成分を順次添加、攪拌して均一にし、攪拌冷却して、目的の歯磨きを得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、本品は、口腔内の炎症作用を有すると共に、泡立ちがよく、すっきりした洗浄後感で、歯垢もきれいに除去することのできる歯磨きである。
<A成分>
酢酸トコフェロール 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
精製水 25
グリセリン 10
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式
会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 30
糖転移ルチン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αG
ルチン」) 0.5
アイエキス(水抽出、株式会社林原生物化学研究所販売、
商品名「藍ルーロス」) 1.5
カラギーナン 0.5
耐塩性カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3
香料 適量
<B成分>
第2リン酸カルシウム 20
ハイドロキシアパタイト 5
炭酸カルシウム 5
<C成分>
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
精製水を適量加えて全量を100とする。
【実施例47】
【0109】
<入浴剤>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、全量を均一に混合した後、打錠して入浴剤を製造した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、変色や異臭の発生もなく、その品質が長期間安定に保持される。また、本品は、体臭の抑制作用を有すると共に、入浴後も肌がベタ付くこともなく、使用感に優れた浴用剤である。
硫酸ナトリウム 44
炭酸水素ナトリウム 14
炭酸ナトリウム 7
コハク酸 21
国際公開WO 02/10361号明細書に開示され
た環状四糖5含水結晶(株式会社林原生物化学研
究所製造) 5
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式
会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 3
L−アスコルビン酸2−グルコシド(林原生物化学研
究所株式会社販売、商品名「AA2G」) 0.5
滑沢剤 適量
色素 適量
香料 適量
【実施例48】
【0110】
<化粧用石けん>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、化粧用石けんを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、ラジカル生成が抑制されて、石鹸の基剤、乳化作用を有する物質、香料、色素等の酸化、分解が抑制され褐変、変色、異臭の発生等が長期間抑制されるので、その品質が長期間安定に保持される。また、本品は、体臭の抑制作用を有すると共に、使用後も肌がかさつくこともなく、使用感に優れた石けんである。
質量比4対1の牛脂及びヤシ油を通常のけん化・塩析
法に供して得たニートソープ 95.5
実施例6の方法で得たラジカル生成抑制剤 0.5
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物
学研究所販売、商品名「化粧品用トレハロース」) 1
L−アスコルビン酸2−グルコシド(林原生物化学研
究所株式会社販売、商品名「AA2G」) 0.5
白糖 0.5
糖転移ナリンジン(株式会社林原生物化学研究所製造) 0.5
マルチトール 1
感光素201号 0.001
香料 適量
【実施例49】
【0111】
<点眼剤>
実施例5の方法で得たラジカル生成抑制剤4.5質量部、塩化ナトリウム0.4質量部、塩化カリウム0.15質量部、リン酸2水素ナトリウム0.2質量部、硼砂0.15質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「AA2G」)0.1質量部を滅菌精製水に溶解し、全量を100mlとして、公知の方法により無菌製剤を調製して点眼剤を調製した。pHは7.3に調整した。本品は、ラジカル生成抑制剤に含有されるα,α−トレハロースの糖質誘導体が眼の炎症を抑制するとともに、α,α−トレハロースが眼の粘膜を乾燥から保護する効果を発揮し、しかも、アスコルビン酸2−グルコシドが、酵素的により徐々に分解されてビタミンCの持続的な給源となることから、本点眼剤は、眼の疲労の回復や、アレルギー性の眼の炎症やドライアイ、飛蚊症などの眼性疾患の予防或いは治療に有利に使用できる。また、これら眼性疾患の治療及び/又は予防用の、眼の洗浄液や灌流液、更には、移植用角膜の保存液などに利用することも随意である。
【実施例50】
【0112】
<外傷治療用軟膏>
実施例2の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤500質量部に、感光素101号0.02質量部を添加混合後、更に10%プルラン水溶液200質量部を加えて混合し、適度の伸び、付着性を有する外傷治療用軟膏を得た。本品は創傷面に直接塗るか、ガーゼなどに塗るなどして患部に使用することにより、切傷、擦り傷、火傷、水虫などの外傷を治療することができる。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、感光素101号のラジカル生成を抑制して製剤を安定化すると共に、ラジカル生成に起因する患部の炎症を抑制するので、その治療期間が短縮され、創面もきれいに回復することができる。
【実施例51】
【0113】
<インターフェロン−α含有坐剤>
インターフェロン−α製剤(大塚製薬株式会社販売、商品名「オーアイエフOIF注射用1,000万単位」)を0.1mlの蒸留水に溶解し、その0.1質量部を、実施例3の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤1質量部と、予め40℃に加温溶解した油脂性基剤のファーマゾル9質量部と混合し、これを型に流し、冷却してインターフェロン−α含有坐剤を得た。本品1gは、インターフェロン活性100万単位を含有している。本品は、インターフェロン−αが安定化された坐剤であり、ヘルペスウイルス感染症、肝炎、悪性新生物をはじめとするインターフェロン−α感受性疾患の治療に有利に利用できる。
【実施例52】
【0114】
<酵素剤>
微生物由来の乳酸脱水素酵素(東洋紡株式会社製造、フナコシ株式会社販売、429単位/mg)4mgを10mlの脱イオン水に溶解した酵素剤の水溶液0.3mlと、脱イオン水に実施例4の方法で得たラジカル生成抑制剤を3.5%となるように溶解した水溶液0.3mlを凍結乾燥用ガラス容器(液溜まり部の直径10mm、高さ50mm)内で穏やかに撹拌、混合後、常法により凍結乾燥して、乳酸脱水素酵素の粉末標品を調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体により、凍結乾燥時の冷凍、乾燥変性が抑制されるために、製造時の活性に酵素活性が減少することもなく、また、室温、冷蔵、或いは冷凍保存でも活性は長期間安定に保持される。さらに、本品の水溶液を約4乃至約−1℃で冷蔵保存、或いは、それを凍結して保存した場合にも、その酵素活性は長期間安定に保持することが可能である。
【実施例53】
【0115】
<凍結乾燥補体製剤>
モルモットから血液を採取後、血清画分を分離し、その1質量部に対して、予め実施例5の方法で得たラジカル生成抑制剤1質量部を生理食塩水(商品名「大塚生食注」、大塚製薬工場製造)9質量部に溶解しておいた溶液1質量部を加え、均質になるように撹拌溶解し、0.2mlずつ2ml容の管瓶に分注し、常法に従って、最終到達温度25℃の乾燥条件で、凍結乾燥した。本品は、本品に含まれる脂質をはじめとする不飽和化合物の安定性がα,α−トレハロースの糖質誘導体により高められているため、血清中の不飽和化合物のラジカル化により生成する過酸化物による補体の修飾、変性が抑制されるので、補体の持つ一連の酵素反応系やその他の生理活性は、冷蔵或いは室温で長期保存した場合にも安定に保持されるという特徴がある。しかも、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、凍結及び/又は乾燥による変性からタンパク質を保護するために、凍結乾燥時の補体活性の低下も抑制されるので、本品は、高品質の臨床診断、或いは、免疫学の試験用の試薬として有利に利用できる。
【実施例54】
【0116】
<塩化ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂100質量部、テトラヒドロフラン500質量部、ステアリン酸バリウム0.001質量部、ステアリン酸亜鉛0.001質量部に実施例3の方法で得たラジカル生成抑制剤0.6質量部を添加して、均質になるように混合し、更に、180℃に加温して、5分間混練し、厚さ0.5mmのシートを作成した。本品は、添加したα,α−トレハロースの糖質誘導体により紫外線などに起因するラジカル生成が抑制されるため、耐光性に優れた塩化ビニル樹脂である。また、本品はα,α−トレハロースの糖質誘導体を添加することにより、その耐熱性も向上することから、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、樹脂の安定化剤として好適であることが判明した。
【実施例55】
【0117】
<塗料>
ポリエステル樹脂100質量部、β−ヒドロキシアルキルアミド3.3質量部、炭酸カルシウム11質量部、実施例8の方法で得た粉末状のラジカル生成抑制剤3質量部、ベンゾイン1質量部、レベリング剤2質量部、二酸化チタン33質量部、カーボンブラック0.3質量部、トリポリリン酸二水素アルミニウム8質量部を、常法により、混合攪拌して塗料を調製した。本品は、ラジカル生成が抑制されているので、長期間光沢が保持される耐久性に優れた塗料である。また、塗料塗布時の付着性がよく、塗装性にも優れている。
【実施例56】
【0118】
<塗料>
水性樹脂の製造反応容器にイソフタル酸203質量部、ペンタエリスリトール235質量部、アマニ油脂肪酸301質量部、安息香酸380質量部、ジブチル錫オキサイド2質量部及びキシレン3質量0部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら240℃に加熱し、樹脂酸価が2.5になるまで6.5時間反応を行なって理論水酸基価7.2、樹脂固形分100%、ガードナー粘度(75%n−ブチルセロソルブ溶液)Z3−のアルキド樹脂を得た。次いで別の反応容器においてイソフタル酸189質量部、ペンタエリスリトール234質量部、アマニ油脂肪酸299質量部、安息香酸397質量部、ジブチル錫オキサイド2部及びキシレン30質量部を入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら240℃に加熱し、樹脂酸価が2.5になるまで6.5時間反応を行なった。該アルキド樹脂は理論水酸基価7.2である。ひきつづき温度を200℃まで下げて、無水マレイン酸28部を加え、200℃で3時間マレイン化反応を行い、樹脂固形分100%、樹脂酸価29.9、ガードナー粘度(75%n−ブチルセロソルブ溶液)Z5+のマレイン化アルキド樹脂を得た。上記アルキド樹脂とマレイン化アルキド樹脂とをそれぞれ500質量部ずつ反応容器に入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながら200℃に加熱し、2時間反応を行なった。反応終了後140℃に下げ、同温度において、脱イオン水6質量部を反応容器に加え開環反応を1時間行なった。次にn−ブチルセロソルブ330質量部を加え、樹脂固形分75%、樹脂酸価13.3、ガードナー粘度(60%n−ブチルセロソルブ溶液)V+ の水分散用樹脂とし、これをトリエチルアミン1.0当量で中和し、脱イオン水を加えて乳化分散し、固形分52%のアルキドエマルジョンを得た。水性セルロース系誘導体の調整水57質量部とブチルセロソルブ21質量部の混合液に、旭化成工業社製水性セルロース誘導体「WHH」(カルボキシメチルセルロースの硝酸エステル、固形分50%)20質量部をディスパーで撹拌しながら添加し、徐々にトリエチルアミンを質量2部加えることで10%水性セルロース溶液(B)を得た。これらとは別に、撹拌混合容器に、脱イオン水90質量部と「ナトラゾール330」(アクアロン社製、ヒドロキシエチルセルロース)0.6質量部及び「ノプコスパース44C」(サンノプコ社製、分散剤)2.35質量部を加え、残渣がないように撹拌、溶解させた。該溶液に「BYK−024」(ビー・ワイ・ケー・ケミー社製、消泡剤)0.3質量部を加え、ディスパーで高速撹拌しながら、チタン白20.3質量部、タルク51.7質量部、クレー51.7質量部、特開平7−291987号公報の実験A−2に開示された方法で調製した含水結晶α−マルトトリオシルα,α−トレハロース45質量部を添加した。さらにこれを卓上サンドミルを用いて5分間分散し、固形分65%の顔料ペーストを得た。別の撹拌混合容器に、上記で得た顔料ペースト262質量部を、さらに上記で得たアルキドエマルジョン76.3質量部、アクリルエマルジョン72.9質量部を順次撹拌下に添加した後、水性セルロース溶液300質量部を撹拌下に添加し、さらに1時間撹拌した。この混合液をアンモニア水でpH8として塗料を得た。本品は、ラジカル生成が抑制されるため、耐久性に優れた塗料で、プライマー/サーフェーサーとして使用することができる。また、本品は、乾燥性、研磨作業性に、付着性に優れている。
【実施例57】
【0119】
<コーティング剤>
ハイドランHW−970(大日本インキ化学工業(株)製アルキレンオキサイド鎖を有するポリウレタンの水性分散液、平均粒子径0.2ミクロン)45質量部とエチレン変性ポリビニルアルコール(重合度1700、けん化度98.0%、エチレン変性量6.0mol%)の15%水溶液を固形分換算50質量部配合、実施例1の方法で得たシラップ状のラジカル生成抑制剤1質量部を混合し、水性コーティング剤およびインキジェット用記録剤を得た。本品は、ラジカル生成が抑制されているので、これを使用したインクや印刷物は耐久性に優れている。また、本品は、塗布時の付着性にも優れている。
【実施例58】
【0120】
<コーティング剤>
疎水性シリカ(日本アエロジル社販売、製品番号「RX300」)1.5質量部、アミノ変性シリコーン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社販売、製品番号「BY16−849」)0.005質量部、特開平7−291987号公報の実験A−2に開示された方法で調製した含水結晶α−マルトトリオシルα,α−トレハロースを、100℃で一晩減圧乾燥して得た無水結晶α−マルトトリオシルα,α−トレハロース0.5質量部にイソパラフィン(出光石油化学社販売、商品名「IPPソルベント2028」)を加えて全量を100質量部とし、この混合物を、超音波洗浄器を用いて90分間分散して、撥水コーティング剤を調製した。本品は、ラジカル生成が抑制されているので、耐久性に優れている。また、本品は、塗布時の付着性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、ラジカルの生成、ラジカルの生成により不飽和化合物の分解が進行すること、さらには、不飽和化合物の過酸化物による脂質、タンパク質などの修飾、変性をも抑制するために、グルコースを構成糖とする非還元性糖質であるα,α−トレハロースの糖質誘導体が、ラジカルの生成抑制作用が強いことを見出し、ラジカル生成が起こる前、又は、起きている有機の不飽和化合物を含む反応系に上記のα,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を有効成分とするラジカル生成抑制剤を配合させることで、不飽和化合物からのラジカル生成を抑制し、さらには、発生した過酸化物によるタンパク質、脂質、核酸関連物質などの修飾、変性をも抑制するものである。しかも、α,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質は、食品として安全で、且つ、非常に安定であることから、本発明によるα,α−トレハロースの糖質誘導体、又は、これを含有する糖質を配合するラジカル生成抑制剤の利用分野は、飲食品分野、農林水産分野(飼料、餌料、ペットフードなどの家畜、家禽、ペット、養殖魚、養殖甲殻類などの餌を含む)、化粧品分野、医薬部外品、医薬品分野を含めて、日用品分野、化学工業分野、染料分野、塗料分野、建材分野、香料分野、化学薬品分野、合成繊維分野、色素分野、感光色素分野、光記録媒体分野など多岐にわたる。本発明は、かくも顕著な作用効果を奏する発明であり、産業上の貢献度が誠に多大な意義ある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とするラジカル生成抑制剤。
【請求項2】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロースから選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項3】
α,α−トレハロースの糖質誘導体と共に、ラジカルスカベンジャーを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項4】
ラジカルスカベンジャーが、ビタミン類、フラボノイド類、ポリフェノール類、テルペン類、これらの誘導体、ハーブ類のエキス、不飽和脂肪酸及び酸化防止剤から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3に記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項5】
フラボノイド類、ポリフェノール類、テルペン類及びこれらの誘導体が、カテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フラバンジェノール、プロアントシアニジン、アントシアニジン、タンニン、クロロゲン酸、エラグ酸、フェノール酸及びこれらの誘導体から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項4に記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項6】
ビタミン類が、アスコルビン酸、ルチン、ヘスペリジン、ナリンジン、これらの誘導体及びコエンザイムQ10から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項4に記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項7】
α,α−トレハロースの糖質誘導体と共に、還元性糖質、α,α−トレハロースの糖質誘導体以外の非還元性糖質、糖アルコール、サイクロデキストリン類、環状四糖、水溶性多糖類、香辛料、酸味料、旨味料、無機塩、乳化剤、香料及び色素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項8】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を5質量%以上含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤とともに不飽和化合物を含む、ラジカル生成の抑制された組成物。
【請求項10】
不飽和化合物が、脂肪酸類、単純脂質類、複合脂質類、テルペン類、アルコール類、配糖体、ビタミン類、タンパク質、ペプチド、アミノ酸類、酵素類、ホルモン類、サイトカイン類、抗体類、香料、色素、乳化剤、合成高分子類及びビニル類から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項9記載のラジカル生成の抑制された組成物。
【請求項11】
飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品、又は高分子成形物のいずれかである請求項9又は10に記載のラジカル生成の抑制された組成物。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤を、不飽和化合物を含む組成物に配合することを特徴とするラジカル生成の抑制方法。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤を、不飽和化合物を含む組成物に配合して、ラジカル生成により生じる不飽和化合物の過酸化物が、不飽和化合物以外の成分を変性させることを抑制することを特徴とするラジカル生成抑制方法。
【請求項14】
不飽和化合物が、脂肪酸類、単純脂質類、複合脂質類、テルペン類、アルコール類、配糖体類、ビタミン類、タンパク質類、ペプチド類、アミノ酸類、酵素類、ホルモン類、サイトカイン類、抗体類、香料、色素、乳化剤、合成高分子類及びビニル類から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項12又は13に記載のラジカル生成の抑制方法。
【請求項15】
不飽和化合物を含む組成物が飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品、又は高分子成形物のいずれかであることを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載のラジカル生成の抑制方法。
【請求項16】
請求項1乃至8の何れかに記載のラジカル生成抑制剤を利用することを特徴とするラジカルスカベンジャー由来の不快及び/又は不快臭の抑制方法。
【請求項17】
ラジカルスカベンジャーがカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フラバンジェノール、プロアントシアニジン、アントシアニジン、タンニン、クロロゲン酸、エラグ酸、フェノール酸、ビタミンP及びこれらの誘導体から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項16に記載の不快及び/又は不快臭の抑制方法。
【請求項18】
請求項1乃至8の何れかに記載のラジカル生成抑制剤を利用することを特徴とするラジカルスカベンジャーの褐変又は変色の抑制方法。
【請求項19】
ラジカルスカベンジャーがアスコルビン酸、ビタミンE、ビタミンA、ヘスペリジン、ルチン、ナリンジン、これらの誘導体及びコエンザイムQ10から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項18記載の褐変又は変色の抑制方法。
【請求項20】
ラジカルスカベンジャー由来の不快味及び/又は不快臭の抑制剤としての請求項1乃8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項21】
ラジカルスカベンジャーがカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、フラバンジェノール、プロアントシアニジン、アントシアニジン、タンニン、クロロゲン酸、エラグ酸、フェノール酸及びこれらの誘導体から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項20に記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項22】
抗ニキビ剤としての請求項1乃至8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項23】
体臭抑制剤としての請求項1乃至8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項24】
ラジカルスカベンジャーの褐変防止剤としての請求項1乃至8の何れかに記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項25】
ラジカルスカベンジャーが、アスコルビン酸、ビタミンE、ビタミンA、ヘスペリジン、ルチン、ナリンジン及びこれらの誘導体体から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項24記載のラジカル生成抑制剤。
【請求項26】
コーティング剤又は塗料の付着性及び/又は塗布性の改善剤としての請求項1乃至8のいずれかに記載のラジカル生成抑制剤。

【公開番号】特開2006−188672(P2006−188672A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351866(P2005−351866)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】