説明

ラジカル発生装置及び窒素酸化物発生装置

【課題】アーク放電が生じることを抑制しつつ多量のラジカル又は窒素酸化物を生成でき、生成したラジカル又は窒素酸化物を効率良く利用できるラジカル発生装置及び窒素酸化物発生装置を提供する。
【解決手段】高周波電圧を放電電極2に印加して放電を生じさせる放電領域4に空気を供給するファン10を備える。放電領域4に供給される空気の流速値と、ラジカルがファン10によって放電領域2より下流側に供給される供給量との関係において、空気流速値の増加に伴ってラジカル供給量がピーク値から低下して定常状態に移行したときにおけるラジカル供給量及び空気流速値の夫々の値を閾値とする。ファン10によって放電領域4に供給される空気流速値を、空気流速値の閾値よりも小さく、ラジカル供給量がラジカル供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電を生じさせてラジカルや窒素酸化物を発生させるラジカル発生装置及び窒素酸化物発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電によりラジカルや窒素酸化物を発生させる装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−196959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、放電によりラジカルや窒素酸化物を発生させる装置において、多量のラジカルや窒素酸化物を発生させるには、電極に印加される電圧を大きくすることが考えられるが、この場合、アーク放電が生じる恐れがある。そして、このようにアーク放電が生じると、エネルギーが無駄に消費され酸性成分を多量に発生させることができず、また、放電の制御が不能になったり、音鳴りが生じたりすることも懸念される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、アーク放電が生じることを抑制しつつ多量のラジカル又は窒素酸化物を生成でき、生成したラジカル又は窒素酸化物を効率良く利用できるラジカル発生装置及び窒素酸化物発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のラジカル発生装置は、高周波電圧を放電電極に印加して放電を生じさせることでラジカルを発生させるラジカル発生装置であって、前記放電領域に空気を供給すると共に当該空気で前記放電領域で生じたラジカルを供給先に送るファンを備え、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気の流速値と、前記ラジカルが前記ファンによって前記放電領域より下流側に供給される供給量との関係において、前記空気流速値の増加に伴って前記ラジカル供給量がピーク値から低下して略一定の定常状態に移行したときにおけるラジカル供給量及び空気流速値の夫々の値を閾値とし、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気流速値を、前記空気流速値の閾値よりも小さく、且つ、前記空気流速値とラジカル供給量の関係において前記ラジカル供給量が前記ラジカル供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の窒素酸化物発生装置は、高周波電圧を放電電極に印加して放電を生じさせることで窒素酸化物を発生させる窒素酸化物発生装置であって、前記放電領域に空気を供給すると共に当該空気で前記放電領域で生じた窒素酸化物を供給先に送るファンを備え、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気の流速値と、前記放電により生じた窒素酸化物が前記ファンによって前記放電領域より下流側に供給される供給量との関係において、前記空気流速値の増加に伴って前記窒素酸化物供給量がピーク値から低下して略一定の定常状態に移行したときにおける窒素酸化物供給量及び空気流速値を閾値とし、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気流速値を、前記空気流速値の閾値よりも小さく、且つ、前記空気流速値と窒素酸化物供給量の関係において前記窒素酸化物供給量が前記窒素酸化物供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、アーク放電が生じることを抑制しつつ多量のラジカル又は窒素酸化物を生成でき、また、生成したラジカル又は窒素酸化物を効率良く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】イオン発生装置を示す説明図である。
【図2】同上のペルチェユニットの拡大図である。
【図3】放電電極に印加される電圧の電圧波形を示すグラフであり、(a)は正方向の最大値を0Vとしたものであり、(b)は正方向の最大値を正としたものであり、(c)は正方向の最大値を負としたものである。
【図4】(a)は空気流速値とラジカル供給量の関係を示すグラフであり、(b)は空気流速値と窒素酸化物供給量の関係を示すグラフであり、(c)は空気流速値とオゾン供給量の関係を示すグラフである。
【図5】(a)は空気流速値と、ラジカル及び窒素酸化物の生成量、放出量、放出効率との関係を示すグラフであり、(b)は空気流速値と、オゾンの生成量、放出量、放出効率との関係を示すグラフである。
【図6】他の実施形態の静電霧化装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。本実施形態のラジカル発生装置又は窒素酸化物発生装置として利用されるイオン発生装置1は、放電がなされる放電領域4にミスト5を供給することで、ラジカルや窒素酸化物を含む帯電微粒子水26を生成し、これを送風により供給先に送るものである。
【0011】
図1に示すようにイオン発生装置1は、放電手段25、ミスト供給手段6、及びファン10を具備している。
【0012】
放電手段25は、放電電極2、放電電極2に対向する対向電極3、放電電極2に電圧を印加して放電を生じさせる電圧印加部7、及び対向電極3を保持するケース8を有している。
【0013】
放電電極2は先端部が円錐状に尖った棒状に形成されている。放電電極2の先端側は、ケース8の底部に形成された通気口9からケース8内に挿入されている。
【0014】
対向電極3は円環状に形成され、接地されている。対向電極3はケース8の天面部に設けられて放電電極2の先端に対向する位置に配置されており、ケース8内における放電電極2の先端部と対向電極3の間の領域が前記放電領域4となっている。円環状の対向電極3の中央に形成された孔24は通気口9に対向する位置にあり、この孔24は前記帯電微粒子水26をケース8外部の供給先に放出するための放出口を構成する。
【0015】
電圧印加部7は、例えば圧電素子を用いた発振回路等で構成され、放電電極2に接続されている。なお、電圧印加部7によって放電電極2に印加される電圧は10W以下に設定される。また、この電圧印加部7によって放電電極2に印加される電圧の周波数は50kHz〜250kHzの範囲内に設定される。具体的には放電電極2には1Wの電力が印加され、75kHzの高周波電圧が印加される。
【0016】
前記電圧印加部7によって放電電極2に印加される高周波電圧は、図3(a)〜図3(c)に示すように中心値が負となるものであってもよいし、中心値が0Vとなる交流電圧であってもよい。図3(a)に示される電圧は正方向の最大値が0Vであり、図3(b)に示される電圧は正方向の最大値が正に設定された交流電圧である。図3(c)に示される電圧は正方向の最大値が負である。なお、電圧印加部7によって放電電極2に印加される高周波電圧はこれらに限定されるものではなく、また、その波形は正弦波に限定されるものではない。また、50kHz〜250kHz以外の高周波電圧を印加するものであってもよい。
【0017】
図1に示すように、ミスト供給手段6は、ペルチェユニット13と、ペルチェユニット13を用いて生成した水23(結露水)を霧化する霧化装置11を備えている。
【0018】
ペルチェユニット13は、図2に示すように、一対のペルチェ回路板18と、両ペルチェ回路板18で挟持されたBiTe系の熱電素子19とで構成されている。各ペルチェ回路板18は、熱伝導性の高いアルミナや窒化アルミニウムからなる絶縁板の片面側に回路を形成したものであり、両ペルチェ回路板18は互いの回路が向き合うように対向している。熱電素子19は両ペルチェ回路板18の間において多数並べて設けられており、隣接する熱電素子19同士は両側のペルチェ回路板18が有する回路で電気的に接続されている。
【0019】
一方のペルチェ回路板18の上面には絶縁板20が接続され、他方のペルチェ回路板18の下面には放熱フィン21の上面が接続されている。図1に示すように絶縁板20の上面は、霧化装置11が有する圧電体14の下面に接続されており、これにより圧電体14に熱的に接続されている。
【0020】
図2に示すペルチェユニット13の熱電素子19には図示しないペルチェ入力リード線が接続されている。このペルチェ入力リード線を介して熱電素子19に通電がなされると、絶縁板20が設けられた一方のペルチェ回路板18側から放熱フィン21が設けられた他方のペルチェ回路板18側に向けて熱が移動し、絶縁板20が冷却される。これにより圧電体14が冷却され、空気中の水蒸気が結露して前記圧電体14の上面に水23が付着するようになっている。
【0021】
霧化装置11はペルチェユニット13で生成した水23を弾性表面波を利用して霧化し、これにより生じたミスト5を前記放電領域4に供給するものである。霧化装置11は、板状の圧電体14にすだれ状電極15を設けた振動子16と、すだれ状電極15に接続された電源部17を備えている。電源部17によってすだれ状電極15に高周波電圧が印加されることで、圧電体14において弾性表面波が励振され、この弾性表面波により、前記ペルチェユニット13によって圧電体14の上面に付着した水23が霧化される。
【0022】
霧化装置11は、図1に示すように放電電極2を収納するケース8の側方に設けられており、ケース8の周壁部に形成されたミスト供給口22に対向する位置に配置されている。圧電体14において発生する弾性表面波は霧化装置11側に進行するように設定されており、これにより前記霧化装置11によって生成したミスト5は、ミスト供給口22を介してケース8内の放電領域4に供給されるようになっている。
【0023】
なお、本実施形態のミスト供給手段6は、霧化される水をペルチェユニット13により
生成するものであるが、前記霧化される水としてタンク等に溜められた水を霧化装置11に供給するようにしても構わない。また、本実施形態のミスト供給手段6によって放電領域4に供給されるミストは水であるが、他の液体であってもよい。
【0024】
ファン10はケース8外部において、ケース8の通気口9に対向する位置に設けられている。ファン10を駆動すると、ケース8外の空気が通気口9を介してケース8内に供給され、さらにこの空気は放電領域4を通過した後、対向電極3の孔24を介してケース8外の供給先に供給されるようになっている。
【0025】
イオン発生装置1を利用する場合、前記熱電素子19への通電、電源部17によるすだれ状電極15への高周波電圧の印加、及び前記電圧印加部7による放電電極2への高周波電圧の印加を行い、また、ファン10を駆動する。このようにすると、前述したように霧化装置11で生成されたミストがミスト供給口22を介してケース8内の放電領域4に供給される。また、放電領域4では、前記電圧印加部7による放電電極2及び対向電極3間への高周波電圧の印加により、放電が生じる。この放電に伴い、機能成分として、水(ミスト5)との反応によりヒドロキシラジカルが発生し、また、酸素分子から酸素ラジカルが発生する。さらに、機能成分として、二酸化窒素等の窒素酸化物(NO)や、硝酸イオン等の酸性成分も発生する。従って、放電領域4においては、霧化装置11から供給されたミスト5をもとに前記機能成分が含まれる多量の帯電微粒子水26が生成される。そして、このようにしてイオンが付加された帯電微粒子水26は、前記ファン10の駆動によって生じる送風により、対向電極3の孔24からケース8外の供給先に送られる。
【0026】
帯電微粒子水26に含まれるヒドロキシラジカル等の機能成分は、脱臭、除菌、アレルゲン物質の不活性化等の作用を有する。また、健康な毛髪、肌、頭皮等がアルカリ性になると細菌等に対する抵抗力が弱くなることが知られているが、帯電微粒子水26に含まれる窒素酸化物や硝酸イオン等の酸性成分を毛髪、肌、頭皮等に供給すれば、毛髪、肌、頭皮等を弱酸性化できて有効である。
【0027】
ところで、本実施形態のように放電電極2に印加される電圧が図3に示されるような高周波電圧であると、印加電圧が放電開始電圧を一時的に下回るので、アーク放電が生じ難くなる。このため、多くのエネルギーを安定して機能成分の生成に用いることができ、多量の機能成分を生成することができる。
【0028】
なお、図3(c)においては、印加電圧が放電開始電圧よりも大きくなる場合も考えられるが、この場合も以下の理由によりアーク放電が継続して生じ難くなる。すなわち、印加電圧が直流電圧であると、放電電極2において電極間距離の最も小さなところの1点のみで放電が生じる。これに対して、印加電圧が高周波電圧であると、両電極2、3間の抵抗値だけでなくコンデンサー容量等も考慮されて、電極間距離の多少の違いではインピーダンス(抵抗)に違いが現れず多数の点で放電が生じる。このため、アーク放電に移行し難くなると考えられる。
【0029】
また、放電電極2に印加される電圧が直流電圧である場合、放電電極2側から対向電極3側に向かうイオン風の流れを用いて、放電領域4で生成された帯電微粒子水26を対向電極3の孔24から効率良く放出することができる。ところが、本実施形態のように放電電極2に印加される電圧が周期的に変化するものであると、前記イオン風の流れが悪くなる可能性がある。特に放電電極2に印加される電圧が交流の場合、イオンが両電極2、3間を行き来し、生成した帯電微粒子水26を効率良く放出することが難しくなる。しかし、本実施形態では、前記ファン10を設けてあるので、放電領域4で生成された帯電微粒子水26をファン10による送風により供給先に送ることができ、生成された帯電微粒子水26を効率良く利用することができる。また、このファン10は、放電領域4に前記機能成分の生成に用いられる空気を供給するため、前記放電によって生成されるラジカルや窒素酸化物等の機能成分の生成量を増加させることができる。
【0030】
ここで、放電電極2に前記1Wの低電力を印加したとき、ファン10により放電領域4に供給される空気の流速値と、放電領域4より下流側に供給されるラジカル、窒素酸化物、及びオゾンの供給量とが、図4(a)〜(c)に示す関係を有することが認められた。なお、この実験では、すだれ状電極15から圧電体14に入力される電圧Vppを40V、100V、180Vに変更して、前記流速値及び前記供給量を計測した。また、前記流速値は放電電極2の近傍を流れる空気の流速値を計測した。また、前記ラジカル、窒素酸化物、及びオゾンの夫々の供給量は、前記対向電極3の孔24から放出される量を測定し、これを現行比で表した。以下、前記流速値を空気流速値と記載し、前記供給量の夫々を、ラジカル供給量、窒素酸化物供給量、オゾン供給量と記載する。
【0031】
図4(a)及び図4(b)から、ラジカル供給量及び窒素酸化物供給量は、空気流速値の増加に伴い増加し、ピーク値を超えた後に低下して略一定の定常状態に移行することがわかる。これに対して、オゾン供給量は、図4(c)に示すように空気流速値の増加に伴い、ラジカル供給量や窒素酸化物供給量がピーク値を超えた後においても増加していくことがわかる。
【0032】
ここで、ラジカル供給量、窒素酸化物供給量、及びオゾン供給量が、空気流速値の増加に伴い増加する理由は、放電領域4に供給される空気の供給量の増加に伴い、放電によって生成されるラジカル、窒素酸化物、及びオゾンの生成量が増すためと考えられる。
【0033】
また、ラジカル供給量及び窒素酸化物供給量はピーク値を超えた後に低下する理由としては、以下が考えられる。すなわち、空気によりイオンや電子が押し出されプラズマ密度が低下すること、空気が抵抗となって放電電流が低下すること、及び空気冷却によりプラズマ温度が低下することがその要因として挙げられる。従って、ラジカル及び窒素酸化物は、その生成量、放出量、及び放出効率が、空気流速値に応じて図5(a)に示すように変化すると推測される。なお、生成量とはラジカルや窒素酸化物が放電により電極2、3間において生成された量であり、放出効率とは生成されたラジカルや窒素酸化物において対向電極3の孔24からケース8外に放出される割合である。また、放出量とは、ラジカルや窒素酸化物が対向電極3の孔24からケース8外に放出される量であり、放出量=生成量×放出効率である。
【0034】
また、オゾン供給量がラジカル供給量や窒素酸化物供給量がピーク値を超えた後においても増加していく理由としては、以下が考えられる。すなわち、オゾンも、ラジカルや窒素酸化物と同様に、空気によりイオンや電子が押し出されプラズマ密度が低下することや、及び空気が抵抗となり放電電流が低下することを要因とし、その生成量が抑制されると推測される。しかし、低温であると分解が抑制されるオゾンは、その生成量が前記プラズマ温度の低下により増加し、また、空気温度が低くなるのでこの点でも分解が抑制されると思われる。すなわち、オゾンは、その生成量、放出量、及び放出効率が、空気流速値に応じて図5(b)に示すように変化すると推測される。従って、オゾン供給量はラジカル供給量や窒素酸化物供給量がピーク値を超えた後においても増加していくと考えられる。
【0035】
図4(a)及び図4(c)に示す結果から、イオン発生装置1をラジカル発生装置として利用する場合、ファン10を空気流速値が以下の範囲内に収まるように設定することで、ラジカル供給量を多くすると共にオゾン供給量を抑えることができる。
【0036】
まず、図4(a)において、空気流速値の増加に伴ってラジカル供給量がピーク値から低下して略一定の定常状態に移行したときにおけるラジカル供給量及び空気流速値の夫々の値を閾値とする。すなわち、図4(a)の丸で示すポイントにおけるラジカル供給量及び空気流速値が夫々の閾値となる。そして、ファン10によって放電領域4に供給される空気流速値を、前記空気流速値の閾値よりも小さく、且つ、図4(a)に示す空気流速値とラジカル供給量の関係において、ラジカル供給量がラジカル供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定する。例えば、すだれ状電極15に対する入力電圧Vppが180Vppの場合、ラジカル供給量の閾値は現行比10程度となり、空気流速値の閾値は5m/sec程度となる。従って、ファン10は空気流速値が略2.5〜5m/secの範囲に収まるように設定すればよい。勿論、この場合、ファン10の空気流速値をラジカル供給量のピークとなる4m/secに設定するのが理想的である。
【0037】
また、図4(b)及び図4(c)に示す結果から、イオン発生装置1を窒素酸化物発生装置として利用する場合、ファン10を空気流速値が以下の範囲内に収まるように設定することで、窒素酸化物供給量を多くすると共にオゾン供給量を抑えることができる。
【0038】
まず、図4(b)において、空気流速値の増加に伴って窒素酸化物供給量がピーク値から低下して略一定の定常状態に移行したときにおける窒素酸化物供給量及び空気流速値の夫々の値を閾値とする。すなわち、図4(b)の丸で示すポイントにおける窒素酸化物供給量及び空気流速値が夫々の閾値となる。そして、ファン10によって放電領域4に供給される空気流速値を、前記空気流速値の閾値よりも小さく、且つ、図4(b)に示す空気流速値と窒素酸化物供給量の関係において、窒素酸化物供給量が窒素酸化物供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定する。例えば、すだれ状電極15に対する入力電圧Vppが180Vppの場合、窒素酸化物供給量の閾値は現行比13程度となり、空気流速値の閾値は3.5m/sec程度となる。従って、ファン10は空気流速値が略1〜3.5m/secの範囲に収まるように設定すればよい。勿論、この場合、ファン10の空気流速値を窒素酸化物供給量のピークとなる2m/secに設定するのが理想的である。
【0039】
また、図4(a)乃至図4(c)から、圧電体14に入力される電圧Vppが大きい程、ラジカル供給量、窒素酸化物供給量、及びオゾン供給量が増加することがわかる。従って、ラジカル発生装置や窒素酸化物発生装置として利用する場合、前記ファン10の設定は、圧電体14への入力電圧Vpp毎に設定するのが好ましく、すなわち、圧電体14への入力電圧Vppが大きい程、ファン10の空気流速値が大きくなるように設定するのが好ましい。
【0040】
また、本実施形態のイオン発生装置1は、放電電極2によって放電がなされる放電領域4にミスト5を供給して帯電微粒子水26を発生させるものであるが、本発明は静電霧化装置にも適用できる。
【0041】
図6に静電霧化装置の基本構成を示す。この静電霧化装置は、放電手段29と、放電手段29に水を供給するペルチェユニット13で構成されている。
【0042】
ペルチェユニット13は、図1に示す実施形態(以下、第一実施形態と記載する)におけるペルチェユニット13と同様の構成を有し、一方のペルチェ回路板18には絶縁板20が接続され、他方のペルチェ回路板18には放熱フィン21が接続されている。
【0043】
放電手段29は、第一実施形態における放電手段25と同様の放電電極2、対向電極3、及び電圧印加部7を備えており、放電電極2は絶縁板20に接続されている。電圧印加部7は、第一実施形態と同様に、放電電極2に10W以下の電力を印加し、且つ、周波数50kHz〜250kHzの範囲内における高周波電圧を放電電極2に印加する。
【0044】
ペルチェユニット13の熱電素子19にペルチェ入力リード線を介して通電がなされると絶縁板20に接続された放電電極2が冷却され、空気中の水蒸気が結露して放電電極2の先端部に水(結露水)が付着するようになっている。
【0045】
静電霧化を生じさせるには、前記熱電素子19への通電を行って放電電極2の先端部に結露水を供給しつつ、電圧印加部7によって放電電極2に前記高周波電圧を印加する。このようにすると、放電電極2と対向電極3との間に印加された電圧により、放電電極2の先端部に保持された水と対向電極3との間にクーロン力が働き、水の液面には局所的に錐状の盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。このテーラーコーンの先端には電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、当該部分に生じるクーロン力が大きくなり、更にテーラーコーンを成長させる。そして、このようにテーラーコーンが成長してテーラーコーンの先端に電荷が集中すると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散を繰り返す。これにより負に帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水が発生する。
【0046】
このように生成された帯電微粒子水はナノメータサイズのミストであって非常に小さいため、長時間浮遊し、また、拡散性も高い。この帯電微粒子水はヒドロキシラジカルやスーパーオキサイド等の活性種を有し、また、窒素酸化物も有する。
【0047】
そして、このような静電霧化装置において、第一実施形態と同様のファン10を設け、このファン10の空気流速値を第一実施形態と同様に設定することで、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
なお、放電電極2に水を供給する手段はペルチェユニット13に限定されるものではなく、タンク等で構成される水溜部から放電電極2に毛細管等を利用して水を供給する等の公知の技術を用いてもよい。また、放電電極2で霧化される液体は水に限定されるものではない。また、電圧印加部7によって放電電極2又は対向電極3に印加される電圧の周波数は50kHz〜250kHzの範囲外の高周波であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 イオン発生装置
2 放電電極
4 放電領域
10 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電圧を放電電極に印加して放電を生じさせることでラジカルを発生させるラジカル発生装置であって、前記放電領域に空気を供給すると共に当該空気で前記放電領域で生じたラジカルを供給先に送るファンを備え、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気の流速値と、前記ラジカルが前記ファンによって前記放電領域より下流側に供給される供給量との関係において、前記空気流速値の増加に伴って前記ラジカル供給量がピーク値から低下して略一定の定常状態に移行したときにおけるラジカル供給量及び空気流速値の夫々の値を閾値とし、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気流速値を、前記空気流速値の閾値よりも小さく、且つ、前記空気流速値とラジカル供給量の関係において前記ラジカル供給量が前記ラジカル供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定したことを特徴とするラジカル発生装置。
【請求項2】
高周波電圧を放電電極に印加して放電を生じさせることで窒素酸化物を発生させる窒素酸化物発生装置であって、前記放電領域に空気を供給すると共に当該空気で前記放電領域で生じた窒素酸化物を供給先に送るファンを備え、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気の流速値と、前記放電により生じた窒素酸化物が前記ファンによって前記放電領域より下流側に供給される供給量との関係において、前記空気流速値の増加に伴って前記窒素酸化物供給量がピーク値から低下して略一定の定常状態に移行したときにおける窒素酸化物供給量及び空気流速値を閾値とし、前記ファンによって前記放電領域に供給される空気流速値を、前記空気流速値の閾値よりも小さく、且つ、前記空気流速値と窒素酸化物供給量の関係において前記窒素酸化物供給量が前記窒素酸化物供給量の閾値よりも高くなるときの空気流速値に設定したことを特徴とする窒素酸化物発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111558(P2013−111558A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262447(P2011−262447)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】