説明

ラジカル硬化性不飽和樹脂組成物及び被覆材

【課題】 本発明の目的は、パラフィンワックスを添加する低臭性のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、パラフィンワックスの分散性に優れ、乾燥性に優れたラジカル硬化性不飽和樹脂組成物及び被覆材にある。
【解決手段】 重合性不飽和基を有する樹脂(A)、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体(B)、パラフィンワックス(C)を含有するラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、前記重合性不飽和単量体(B)が、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)とを含むもので、前記単量体(B)の溶解性パラメーターが8.5以下で、且つその分極率が1.5〜2.8×10−23であり、パラフィンワックス(C)が融点115〜150°Fのものであり、かつ前記不飽和樹脂組成物中に500〜10000ppm含まれるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィンワックスの分散性に優れ、乾燥性に優れたラジカル硬化性不飽和樹脂組成物及び被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル硬化性不飽和樹脂組成物は、硬化の際、空気中の酸素と接触する面が硬化阻害を受ける問題がある。その解決策として、パラフィンワックスの添加、空気乾燥性不飽和樹脂の添加等がなされている。
一方、ラジカル硬化性不飽和樹脂組成物は、環境問題の点から揮発性、臭気などが問題となり、溶剤・単量体の使用を規制する社会的な動きが高まっている。こうした問題を解決できる重合性不飽和単量体として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の使用も提案されているが、樹脂硬化物の物性、作業性、硬化性等のあらゆる点を考慮すると、1年を通じて使用できるラジカル硬化性不飽和樹脂組成物の開発はかなり困難な課題であった。
【0003】
特にパラフィンワックスを添加して常温硬化するラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、融点が40℃以上の芳香族化合物を添加することで硬化性を改善するする試みが為されている(特許文献1)が、乾燥性が充分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−169423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、パラフィンワックスを添加する低臭性のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、パラフィンワックスの分散性に優れ、乾燥性に優れたラジカル硬化性不飽和樹脂組成物及びそれを用いた被覆材を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、パラフィンワックスを添加する低臭性ラジカル硬化性不飽和樹脂組成物の低臭性の(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体とパラフィンワックスとの関係について、鋭意研究の結果、特定の単量体混合物を特定の溶解性パラメーターと特定の分極率となるようにすることで、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、重合性不飽和基を有する樹脂(A)、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体(B)、パラフィンワックス(C)を含有するラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、前記重合性不飽和単量体(B)が、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)とを含むもので、前記単量体(B)の溶解性パラメーターが8.5以下であり、且つその分極率が1.5〜2.8×10−23であり、パラフィンワックス(C)が融点115〜150°Fのものであり、かつ前記不飽和樹脂組成物中に500〜10000ppm含まれるものであることを特徴とするラジカル硬化性不飽和樹脂組成物およびそれを用いた被覆材を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、パラフィンワックスを含むラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)とを含む混合物不飽和単量体(B)を用い、その不飽和単量体(B)の溶解性パラメーターが8.5以下で、且つその分極率を1.5〜2.8×10−23とする(メタ)アクリロイル基含不飽和単量体(B)とすることで、パラフィンワックスの分散性と組成物の空気乾燥性に優れたラジカル硬化性不飽和樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物で使用される重合性不飽和基を有する樹脂(A)としては、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる1種以上のもので、これらは単独で使用しても良いし、用途により必要に応じて2種以上併用することができる。樹脂硬化物の耐水性、耐薬品性、機械的強度を目的とする場合にはエポキシ(メタ)アクリレートであり、樹脂硬化物の耐薬品性、柔軟性を目的とする場合にはウレタン(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0010】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂単独またはビスフェノールタイプのエポキシとノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合した樹脂であって、該エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを公知の方法で反応して得られるエポキシビニルエステルを言う。該エポキシ(メタ)アクリレートは、一般的に塗膜の機械的強度、耐薬品性等の向上のために用いられる。
【0011】
ここで、前記ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂として代表的なものを挙げれば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られる実質的に1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの反応により得られるジメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂あるいはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン若しくはメチルエピクロルヒドリンとから得られるエポキシ樹脂などである。また、前記ノボラックタイプのエポキシ樹脂として代表的なものには、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などである。
【0012】
前記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブテンマレート、ソルビン酸あるいはモノ(2−エチルヘキシル)マレート等がある。なお、これらの不飽和一塩基酸は、単独でも、2種以上を混合しても用いられる。前記エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応は、好ましくは60〜140℃、特に好ましくは80〜120℃の温度においてエステル化触媒を用いて行われる。
【0013】
前記のエステル化触媒としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン若しくはジアザビシクロオクタンなどの如き三級アミン、トリフェニルホスフィンあるいはジエチルアミン塩酸塩などの如き公知の触媒がそのまま使用できる。
【0014】
該エポキシ樹脂と該不飽和一塩基酸の組み合わせとしては、その平均エポキシ当量が、好ましくは150〜450のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応して得られる樹脂が好適に用いられ、例えばビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂をメタクリル酸と反応させた樹脂、およびビスフェノールF(BPF)型エポキシ樹脂をメタクリル酸と反応させた樹脂等が挙げられる。BPA型エポキシメタアクリレート樹脂に関しては、塗膜の機械的強度、耐薬品性等の優れた樹脂であるが、エンドクリン問題等の環境問題の観点から、好ましくは低粘性で作業性等の優れたBPF型エポキシメタアクリレート樹脂が用いられる。
【0015】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂とは、ポリオール、ポリイソシアネートおよび1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応によって得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものであり、好ましくはポリイソシアネートとポリオールをNCO/OH=1.3〜2で反応せしめて得られる末端イソシアネート化合物に、好ましくは1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートをイソシアネート基に対して水酸基がほぼ当量になるように反応せしめる方法、およびポリイソシアネートと1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートをNCO/OH=2以上で反応せしめて得られる片末端イソシアネート化合物に、ポリオールを反応せしめる方法が挙げられる。
【0016】
前記ポリオールとしては、好ましくは数平均分子量が200〜3000、より好ましくは400〜2000のものが用いられ、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカ−ボネ−トポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられ、好ましくはポリエーテルポリオールが用いられる。
【0017】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドの他に、ビスフェノールA及びビスフェノールFに前記アルキレンオキサイドを付加させたポリオールも含むことが出来る。
【0018】
前記ポリエステルポリオールとしては、飽和二塩基酸類又はその酸無水物と、多価アルコール類の縮合重合体又はポリカプロラクトンの様に環状エステル化合物の開環重合体である。かかる二塩基酸類としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。
【0019】
前記多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等を挙げられ、好ましくは2価アルコールが挙げられる。
【0020】
前記したポリオールと反応するポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4−TDIと略す)、その異性体または異性体の混合物、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができ、それらの単独または2種以上で使用することができる。前記ポリイソシアネートのうちジイソシアネート、特に2,4−TDI、その異性体又は異性体の混合物が好ましく用いられる。
【0021】
前記した1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類等を挙げることができ、好ましくは1〜3価の(メタ)アクリレートが用いられる。
【0022】
前記のポリエステル(メタ)アクリレート樹脂とは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステル樹脂もしくは不飽和ポリエステル樹脂であり、飽和ポリエステル若しくは不飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させたものである。かかる樹脂の数平均分子量としては、好ましくは500〜5000、より好ましくは1000〜5000である。
【0023】
かかる飽和ポリエステル樹脂とは、飽和二塩基酸類と多価アルコール類との縮合反応で得られるもの、また、不飽和ポリエステル樹脂とはα,β−不飽和二塩基酸を含む二塩基酸類と多価アルコール類との縮合反応で得られるものであり、末端に(メタ)アクリル化合物を導入するための官能基を有しているものである。
【0024】
ここでいうα,β−不飽和二塩基酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ハロゲン化無水マレイン酸等を挙げることができる。飽和二塩基酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン2酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、またこれらのジアルキルエステル等を挙げることができる。
【0025】
また、前記した飽和二塩基酸又はα、β―不飽和二塩基酸を含む二塩基酸と縮合反応する多価アルコール類としては、前記した各種多価アルコール類と同様のものを用いることができる。
【0026】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂に用いられる(メタ)アクリル化合物としては、アクリル酸またはメタクリル酸のグリシジルエステル類等であり、好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレートの使用が望ましい。
【0027】
前記重合性不飽和単量体(B)とは、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)とを必須に含むものであり、前記(B)の溶解性パラメーターが8.5以下で、且つその分極率が1.5〜2.8×10−23となる範囲内で、その他の重合性不飽和単量体を併用できる。分極率や溶解性パラメーターがこの範囲を外れる不飽和単量体(B)を使用すると、パラフィンワックスの分散性が悪く、乾燥性の悪いものとなる。
【0028】
前記分極率とは、「(計算上の分子量/密度)×表面張力の1/4乗」で計算される値である。具体的には、Advanced Chemistry Development, Inc.製ソフト「ACD/ChemSketch Version 10.0 」(Microsoft社Windows(登録商標)対応)を用いた計算によって求められる値である。
【0029】
前記溶解性パラメーターとは、単量体(B)の構造式から、Hoyの式を用いて計算により求められる値である。単量体(B)の溶解性パラメーターは、溶解度パラメーター、SP値とも呼ばれ、δで表わされもので、単位が(cal/cm1/2で表わされる値を指称するものである。その値や値の求め方は、例えば非特許文献「Journal of Paint Technology Vol.42、No.541、February 1970」中のP76−P118に投稿されているK.L.Hoy著「New Values of the Solubility Parameters From Vapor Pressure Data」や、J.Brandrup他著「Polymer Handbook Fourth Edition」P−VII/675−P714などに記載されているものを使用する。
【0030】
前記単量体(B)に併用できるその他の重合性不飽和単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトンアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、メタアクリル酸メチル(以下、MMAと略す)、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ラウリル、メタアクリル酸ステアリル、ポリカプロラクトンメタアクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノメタアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノメタアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールメタアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0031】
さらに、その他の重合性不飽和単量体としては、1分子中に少なくとも2個の重合性二重結合を有する化合物も使用することができ、硬化物表面の耐摩耗性、耐さっ傷性、耐煽動性、耐薬品性等を向上させる目的で用いられる。かかる1分子中に少なくとも2個の重合性二重結合を有する化合物、即ち多官能(メタ)アクリレートも併用できる。その具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン−グリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等があり、これらは単独又は2種以上の併用で用いられる。
【0032】
さらに、その他の重合性不飽和単量体としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド(EO)変性アクリレート、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、アクリロイルオキシエチルフタレート、フェノールEO変性メタアクリレート、ノニルフェニルカルビトールメタアクリレート、ノニルフェノールEO変性メタアクリレート、フェノキシプロピルメタアクリレート、フェノールPO変性メタアクリレート、ノニルフェノキシプロピルメタアクリレート、ノニルフェノールPO変性メタアクリレート、メタアクリロイルオキシエチルフタレート等が挙げられる。これらの単独又は2種以上を併用して用いられる。本発明には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが必須に使用されるが、その他アルキル基の炭素数が1、3及び4であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートも使用できる。例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等がある。
【0033】
さらに、その他の重合性不飽和単量体としては、樹脂組成物の表面乾燥性を向上させ得るような、ジシクロペンタジエン、ジシクロデカンまたはトリアジンの如き各種誘導体類、例えばジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタアクリレートまたはトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌルアクリレート等の(メタ)アクリレートを、本発明の目的を達成する範囲内で併用することができる。これらのなかで好ましくは分子量180〜500の(メタ)アクリレートが併用される。
【0034】
前記したジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)との重量比率に関しては、好ましくは(B1)/(B2)=95/5〜40/60であり、より好ましくは90/10〜50/50である。かかる範囲で使用することにより、常温硬化性、表面乾燥性、パラフィンワックスの分散性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の樹脂組成物には、空気乾燥性を有しラジカル重合により架橋できる不飽和基を有する重合体(D)を添加することができる。かかる重合体としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂やビニルウレタン系樹脂等に必須成分として空気乾燥性を付与する基または脂肪酸成分を導入することにより得られるものが挙げられ、より好ましくは不飽和ポリエステルに空気乾燥性を付与する基または脂肪酸成分を導入することにより得られる樹脂である。該重合体(D)の添加量としては、本発明に用いられる樹脂(A)100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。かかる空気乾燥性を有しラジカル重合により架橋できる不飽和基を有する重合体(D)を添加することで、塗膜の耐薬品性、耐水性等を損なうことなく表面乾燥性をさらに向上せしめることができる。
【0036】
前記した空気乾燥性を有する不飽和ポリエステルとしては、α,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物と芳香族飽和二塩基酸またはその酸無水物と、グリコール類の重縮合によって製造され、場合によって酸成分として脂肪族あるいは脂肪族飽和二塩基酸を併用して製造された不飽和ポリエステルが挙げられる。
【0037】
前記したα,β−不飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸及びこれらのエステル等があり、芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、脂肪族或いは脂環族飽和二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、それぞれ単独或いは併用して用いられる。前記した各種酸成分に関しては、好ましくはα,β―不飽和二塩基酸又はその酸無水物が用いられ、より好ましくはマレイン酸又はフマル酸が用いられる。
【0038】
次に、前記した酸成分と重縮合するグリコール類としては、例えばエステルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA,エチレングリコールカーボネート、2,2−ジ−(4−ヒドロキシプロポキシジフェニル)プロパン等が挙げられ、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコールが用いられ、単独或いは併用して使用されるが、そのほかにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の付加物も同様に使用できる。また、グリコール類と酸成分の一部としてポリエチレンテレフタレート等の重縮合物も使用できる。前記した各種グリコール類は、単独又は2種以上を併用して用いられるが、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコールが用いられる。
【0039】
次に、前記した不飽和ポリエステル樹脂に空気乾燥性(空乾性)を付与することに関して、該不飽和ポリエステルに導入される空気乾燥性を付与する基としては、例えばアリル基をはじめとするアルケニル基、アルケニルエーテル基、アクリロイル基及びジシクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0040】
前記した空気乾燥性を有する基を、前記した不飽和ポリエステル樹脂に導入する方法としては、例えば(イ)多価アルコール成分としてアリルエーテル基を含有する化合物を用いる方法、(ロ)多価アルコールと乾性油等の脂肪油とのエステル交換反応で得られるアルコリシス化合物をアルコール成分に用いる方法、(ハ)二塩基酸成分として環状不飽和脂肪族多塩基酸及びその誘導体を含有する化合物を用いる方法および(二)ジシクロペンタジエニル基を含有する化合物を用いる方法などが挙げられ、これらを単独又は2種以上併用することができる。
【0041】
前記(イ)の方法で、多価アルコール成分として用いられるアリルエーテル基を含有する化合物としては、特に限定されるものではないが、その代表的なものとしてエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等多価アルコール類のアリルエーテル化合物、アリルグリシジルエーテルなどの如きオキシラン環を有するアリルエーテル化合物等の、アリルエーテル基を1個以上、好ましくは1〜3個を有し、好ましくはモノ、ジまたはトリ−アルコールが挙げられ、より好ましくはそれらのうち水酸基を1個有するアルコールであり、例えばエチレングリコールモノアリルエーテルが挙げられる。
【0042】
前記した(ロ)の方法で用いられる乾性油としては、好ましくはヨウ素価130以上の油脂で、例えば、アマニ油、大豆油、綿実油、落花生油、やし油等が挙げられる。また、エステル交換反応で得られるアルコリシス化合物に用いる多価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、好ましくは4価アルコールが挙げられる。
【0043】
前記した(ハ)の方法で用いられる環状脂肪族不飽和多価塩基酸及びその誘導体としては、例えばテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、α−テルヒネン・無水マレイン酸付加物、ロジン、トランス−ピペリレン・無水マレイン酸付加物等が挙げられ、また前記した(二)の方法に用いられるジシクロペンタジエニル基を含有する化合物としては、例えばヒドロキシ化ジシクロペタンジエン等が挙げられる。
【0044】
前記した不飽和ポリエステル成分に空気乾燥性を付与する基又は脂肪酸成分を導入する4種類の方法のうち、二塩基酸成分として環状不飽和脂肪族多塩基酸及びその誘導体を併用する方法(ハ)が好適に用いられ、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トランス−ピペリレン・無水マレイン酸付加物がより好ましく用いられる。
次に空乾性を有するビニルウレタン樹脂とは、例えばポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオール等のポリオール、アクリルポリオール、およびポリイソシアネートとを反応させて得られるビニルウレタン樹脂に、空乾性を付与したものである。
【0045】
ここでいうポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとは、例えばポリエーテルポリオールとしてはポリオキシプロピレンジオール(以下PPGと略す)、ポリテトラメチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンジオール等が挙げられ、要求性能に応じて数平均分子量400〜3000のPPGを使用することが好ましい。
【0046】
同様にポリエステルポリオールとしては、飽和二塩基酸またはその酸無水物と、前記したグリコール類の重縮合によって製造され、場合によって酸成分として芳香族並びに脂肪族あるいは脂肪族飽和二塩基酸を併用して製造された飽和ポリエステルが挙げられる。
【0047】
かかる芳香族飽和二塩基酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、脂肪族或いは脂環族飽和二塩基酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、グルタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びこれらのエステル等があり、それぞれ単独又は2種以上を併用して用いられる。
【0048】
また、アクリルポリオールとしては、アクリロイル基を有する重合性単量体(例えばアクリル酸メチル)ならびに共重合可能なエチレン化合物(例えばスチレン、酢酸ビニル)、または共役ジエン化合物(例えばブタジエン)と水酸基を含有するアクリル系重合性単量体(例えば2−ヒドロキシメタアクリレート)、及び他のアクリル系重合性単量体(例えばペンタエリスリトールトリアリルエーテル)から反応して得られた両末端または側鎖に水酸基を有するアクリル系重合体である。かかる反応は、ラジカル重合開始剤の存在下、通常のアクリル重合物の製造方法を用いて得ることができる。
【0049】
次に、前記した各種ポリオールと反応するポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート(以下、2,4−TDIと略す)と及びその異性体または異性体の混合物、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
前記したビニルウレタン樹脂に空気乾燥性を付与する基を導入する方法として、合成上好ましいのは、空気乾燥性付与構成成分である少なくとも2つ以上の水酸基を含有するアリルエーテル化合物を、前記したポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールに併用して用いるものである。少なくとも2つ以上の水酸基を含有するアリルエーテル化合物としては、公知慣用のものが使用できるが、代表的なものとして、例えばエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0051】
また、前記した空気乾燥性を有しラジカル重合により架橋できる不飽和基を有する重合体(D)中に於ける空気乾燥性付与構成比率に関しては、本発明の樹脂組成物を例えば床材として用いる場合で、特に鏡面性を求められる場合に関しては、かかる空気乾燥性付与構成比率が30〜70重量%であるのが好ましく、40〜60重量%であるのがより好ましい。
【0052】
本発明の樹脂組成物に用いられる前記した重合性不飽和基を有する樹脂(A)、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体(B)の混合割合は、好ましくは(A)/(B)=70/30〜30/70であり、より好ましくは60/40〜40〜60である。
【0053】
本発明の樹脂組成物には、塗膜表面において空気遮断作用を示し、空気乾燥性を向上させる目的で融点115〜150°Fのパラフィンワックス(C)を単独あるいは混合して含有させている。その濃度は、前記(A)と(B)の組成物中500〜10000ppmであり、好ましく800〜9000ppmである。この融点或いは濃度の範囲を外れると、パラフィンワックス(C)の十分な分散性、組成物の空気乾燥性が得られないものとなる。そのパラフィンワックス(C)の添加量としては、前記(A)と(B)の100重量部に対し好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.8重量部添加して使用する。なお、パラフィンワックスの融点とは、示差走査熱量分析計(DSC)によって測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピーク、すなわち融解ピークの頂点の温度のことであり、ティーエイインストルメント社製DSC−9−100を用い、試料を温度20℃から昇温速度毎分10℃で150℃まで昇温させ、次いで150℃から20℃に降温速度毎分10℃で冷却する操作を2回繰返し、2回目の操作で測定されるDSC曲線から得られるものである。
【0054】
パラフィンワックス(C)以外のワックス等を本発明の目的を達成する範囲内において用いることができる。パラフィンワックス(C)以外のワックスとしては、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。
【0055】
次に、本発明の樹脂組成物には、通常ラジカル硬化剤、硬化促進剤が添加される。
【0056】
かかるラジカル硬化剤としては、有機過酸化物が挙げられ、例としてジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等公知公用のものが挙げられる。ラジカル硬化剤の添加量は、本発明の目的を達成することのできる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂の合計量100重量部に対して0.5〜5重量部であり、かかる範囲で使用することで可使時間、物性等の優れた被覆構造体を得ることができる。
【0057】
硬化促進剤としては、例えばナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等金属石鹸類、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4-(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4-(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられ、アミン系、金属石鹸系促進剤が好ましい。なお、硬化促進剤は、2種以上の組み合わせで使用しても良く、更に予め樹脂に添加しておいても良いし、使用時に添加しても良い。硬化促進剤の添加量は、本発明の目的を達成することのできる範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは樹脂の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部である。
【0058】
また、かかる組成物には、硬化速度を調整するためにさらに光ラジカル重合開始剤、重合禁止剤などを使用することができる。
【0059】
光ラジカル重合開始剤としては、例としてベンゾインアルキルエーテルのようなベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエートなどのベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系等が挙げられる。光ラジカル開始剤の添加量は、好ましくは樹脂の合計量100重量部に対して、0.1〜3重量部である。
【0060】
重合禁止剤としては、例えばトリハイドロベンゼン、トルハイドロキノン、14−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。重合禁止剤の添加量は、樹脂に10〜1000ppm添加するのが好ましく、50〜200ppm添加するのがさらに好ましい。かかる範囲で使用することで貯蔵安定性、作業性、強度発現性の優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0061】
次に、本発明の樹脂組成物には、各種添加剤、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、顔料、増粘剤、低収縮化剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、繊維強化材等を本発明の目的を達成する範囲内において用いることができる。
【0062】
かかる充填剤としては、例えば水硬性ケイ酸塩材料、炭酸カルシウム粉、クレー、アルミナ粉、硅石粉、タルク、硫酸バリウム、シリカパウダー、ガラス粉、ガラスビーズ、マイカ、水酸化アルミニウム、セルロース系、硅砂、川砂、寒水石、大理石屑、砕石等が挙げられ、硬化時の半透明性を考慮すると、好ましくは水酸化アルミニウム、ガラス粉および炭酸カルシウムが用いられる。
【0063】
繊維強化材としては、例えばガラス繊維、アミド、アラニド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維あるいはこれらを組み合わせて用いられる。施工性、経済性を考慮した場合、好ましくはガラス繊維および有機繊維である。また、繊維の形態は平織り、朱子織り、不織布およびマット状等が挙げられる。
【0064】
前記した本発明の樹脂組成物の用途としては、好ましくは工場、倉庫、クリーンルームなどの床材、舗装材、防水材、塗料、プライマー、壁面コーティング材、道路マーキング材、注入材、シール材、注型品、積層品、接着剤、ライニング材、波平板等の土木建築材料、被覆材、注形品、積層品、封止材、波板、化粧板、電気絶縁用基板、光通信ガラスファイバー用コーティング材、生物医学材料、樹脂カプセルアンカー用材料等に使用できる。
【0065】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明する。また、文中に「部」「%」とあるのは、重量部、重量%を示すものである。
【実施例】
【0066】
合成例1<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた三口フラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量が185なるエポキシ樹脂 1850g、メタクリル酸860g、ハイドロキノン1.36gおよびトリエチルアミン10.8gを仕込み、120℃まで昇温させ、同温度で10時間反応させ、酸価3.5のエポキシメタアクリレート1を得た。
【0067】
合成例2<エポキシメタクリレートの調整−2>
温度計、攪拌機、ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、エピクロン830(DIC(株)製エポキシ樹脂:エポキシ当量172)1720部、メタアクリル酸1740部、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール1.55部、トリエチルアミン13.3部を仕込み、窒素/空気(流量比1/1)混合気流下90℃まで昇温し、2時間反応させた。次いで、反応温度を105℃まで昇温させ、30時間反応を続け、残存酸価8.87のエポキシアクリレート2を得た。
【0068】
合成例3 <ウレタン(メタ)アクリレート樹脂>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量984.2)2461部、トリレンジイソシアネート739.5部、イソホロンジイソシアネート166.8部を仕込み、窒素雰囲気中80℃まで昇温し、3時間反応させ、NCO当量697になったところで、50℃まで冷却した後、窒素/空気(流量比1/1)混合気流下でトルハイドロキノン0.337部、ヒドロキシエチルメタクリレート657.7部を加え、90℃まで再度昇温させる。3時間反応させ、残存NCO量0.0343%のウレタン(メタ)アクリレート1を得た。
【0069】
合成例4<ポリエステルメタクリレート1の調整>
温度計、攪拌機および冷却器を具備した5L三ツ口フラスコに、ジエチレングリコール1229.6g(11.6モル)、PETボトルの粉砕物1536g(テレフタル酸/エチレングリコール各8モル相当分)、ジブチル錫オキサイド1.38gを仕込んで窒素雰囲気下220℃まで昇温させ、同温度で4時間反応を続け、ソリッド酸価が3.5 になったところで、120℃まで冷却し、無水フタル酸1776g(12.0モル)を仕込んで、210 ℃まで昇温させ、同温度で6.5時間反応を続け、70%スチレン(以下SMと略す)溶液が酸価23.5、ガードナー粘度U−V2になったところで、トルハイドロキノン0.514gを加え、130℃まで冷却し、窒素/空気=1/1雰囲気下でグリシジルメタアクリレート379.7g(2.67モル)を仕込み、130℃で2時間反応を行い、75%メチルメタアクリレート(以下MMAと略す)溶液が酸価2.0になったところで、90゜Cまで冷却し、5%ナフテン酸銅0.087g、t−ブチルカテコール0.291gを加え、ポリエステルメタクリレート1を得た。
【0070】
実施例1〜6
合成例1〜4に示す樹脂、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体、パラフィンワックスを表1に示す配合で、60℃×1時間で混合、溶解し、パラフィンワックスの分散性試験および組成物の乾燥性の試験を行い、評価を行った。
【0071】
【表1】

【0072】
(表中の略号)
DCPEMA ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
MMA メチルメタクリレート
HEMA 2−エチルヒドロキシエチルメタクリレート
CHMA シクロヘキシルメタクリレート
PEMA フェノキシエチルメタクリレート
DEGDMA ジエチレングリコールジメタクリレート
【0073】
(パラフィンワックスの分散性の試験)
表の配合で、60℃1時間でパラフィンワックスを溶解した樹脂組成物を、23℃の水浴中に1時間放置し、外観を目視で確認した。
(評価基準)
◎:溶解
○:均一分散(0.1mm未満)
△:均一分散(0.1mm以上)
×:凝集
【0074】
(乾燥性試験)
表の配合で、60℃×1時間でパラフィンワックスを溶解し表1記載の樹脂配合物100部に促進剤RP−191(トルイジン化合物イソプロパノール溶液、DIC株式会社製)1部加えて攪拌、更にナイパーFF(50%過酸化ベンゾイル、日油株式会社製)2部を加えて均一に混合する。
この組成物を0.102mmアプリケーターでガラス板上に塗布塗装した。
(評価基準)
◎:ゲル化から10分以内で乾燥、
○:同10〜30分で乾燥、
△:ゲル化後30〜60分、
×:乾燥せず
【0075】
(性能の合否判断)
◎と○とを合格とした。
【0076】
比較例1〜6
合成例1〜4に示す樹脂、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体、パラフィンワックスを表2に示す配合で、60℃×1時間で混合、溶解し、実施例と同様にパラフィンワックスの分散性試験および組成物の乾燥性試験を行い、評価した。
【0077】
【表2】

【0078】
(表中の略号)
DCPEMA ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
MMA メチルメタクリレート
HEMA 2−エチルヒドロキシエチルメタクリレート
CHMA シクロヘキシルメタクリレート
PEMA フェノキシエチルメタクリレート
DEGDMA ジエチレングリコールジメタクリレート
【0079】
比較例1は、2−エチルヒドロキシエチルメタクリレートを用いないことから単量体(B)の分極率が範囲外となり、乾燥性が悪いものであった。比較例2は、2−エチルヒドロキシエチルメタクリレートを少し用いたが分極率が範囲外となり、乾燥性が充分ではないものであった。比較例3は、SP値が範囲外となるためワックス分散性が悪く、乾燥性試験ができなかった。比較例4は、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを使用しないでフェノキシエチルメタクリレートを使用したためワックスの分散性と乾燥性が十分ではなかった。比較例5は、パラフィンワックスの濃度が200ppmであるため乾燥性が悪かった。比較例6は、融点の高いパラフィンワックスを使用したためワックス分散性が充分でなく乾燥性も十分ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和基を有する樹脂(A)、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体(B)、パラフィンワックス(C)を含有するラジカル硬化性不飽和樹脂組成物において、
前記重合性不飽和単量体(B)が、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)とを含むもので、前記単量体(B)の溶解性パラメーターが8.5以下であり、且つその分極率が1.5〜2.8×10−23であり、パラフィンワックス(C)が融点115〜150°Fのものであり、かつ前記不飽和樹脂組成物中に500〜10000ppm含まれるものであることを特徴とするラジカル硬化性不飽和樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合性不飽和基を有する樹脂(A)が、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂から選ばれる樹脂である請求項1記載のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物。
【請求項3】
前記ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(B1)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(B2)との重量比率は、(B1)/(B2)=95/5〜40/60である請求項1または2記載のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物。
【請求項4】
重合性不飽和基を有する樹脂(A)、(メタ)アクリロイル基含有重合性不飽和単量体(B)との混合割合が、重量基準で(A)/(B)=70/30〜30/70である請求項1〜3いずれか1項記載のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のラジカル硬化性不飽和樹脂組成物を含有することを特徴とする被覆材。

【公開番号】特開2011−231231(P2011−231231A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103444(P2010−103444)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】