説明

ラジカル硬化性樹脂組成物

本発明は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分(I)と、XがCでもOでもないXH基を含有する成分(II)と、を含むラジカル硬化用の樹脂組成物に関する。この樹脂組成物は、(a)光開始剤を実質的に含まず;(b.)成分(I)の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数が2超であり;(c)成分(II)のXH基の平均個数が2以上であり、XH成分のXH基の少なくとも1種がチオール基であり;(d)その際、(b)および(c)の平均個数の少なくとも一方が2超であり;(e)かつ反応性不飽和の多くとも5mol%が単独重合を起こすことが可能であり;(f)それぞれ、モノエン官能性アルキレンの形態で存在し;しかも(g)XH基と反応性不飽和とのモル比が4:1〜1:4の範囲内であり;ただし、RU成分がトリス−(ノルボルン−5−エン−2−カルボキシ)プロポキシプロパンでない。本発明はまた、そのような樹脂組成物をとくに低温硬化により硬化させる方法に関する。最後に、本発明はまた、シクロペンタジエンとテレケリック炭素−炭素不飽和を含有する樹脂成分とのディールス・アルダー付加物を合成する新しい方法に関する。樹脂組成物は、迅速かつ調整可能なラジカル硬化により、しかもいわゆる酸素阻害の問題をなんら呈することなく、不粘着性表面を有する建設材料を提供しうる。好適な用途は、化学的固着、屋根葺き、床張り、(再)裏打ち、SMC、およびBMCである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分(「反応性不飽和成分」または「RU成分」とも記す)と、XがCでもOでもないXH基を含有する成分(「XH成分」とも記す)と、を含むラジカル硬化用の樹脂組成物に関する。本明細書の意図するところによれば、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分(「RU成分」)という用語は、周囲温度および周囲圧力の条件でラジカル過程の反応に関与しうる化合物を意味する。本明細書の意図するところによれば、XH基を含有する成分(「XH成分」)という用語は、反応活性X−H結合(Xは炭素原子でも酸素原子でもない)を有しかつ周囲温度および周囲圧力の条件でラジカル過程の反応に関与しうる化合物を意味する。
【0002】
本発明はまた、そのような樹脂組成物をとくに低温硬化により硬化させる方法に関する。そして最後に、本発明はまた、シクロペンタジエンと少なくとも1個のテレケリック炭素−炭素不飽和を含有する樹脂成分との反応から特定のディールス・アルダー付加物成分を合成する新しい方法に関する。これらのディールス・アルダー付加物成分は、本発明に係る樹脂組成物の反応性炭素−炭素不飽和含有成分として好適に使用可能である。
【0003】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分(「RU成分」)と、ポリチオール成分(XH成分)と、有効量のフリーラジカル開始剤と、を含むラジカル硬化用の樹脂組成物は、国際公開第88/02902号パンフレットから公知である。該参考文献に示された実施例は、いずれもテレケリック不飽和を扱っており、主に光開始に焦点をあてている。熱硬化に関して示された実施例は、わずか2つにすぎず、硬化に長時間を要することを教示している。とくに、国際公開第88/02902号パンフレットの実施例3からわかるように、12時間の硬化を行った後でさえも、ゲルが得られるにすぎない。国際公開第88/02902号パンフレットの配合物5は、サートマー(Sartomer)351TMのビスノルボルネン末端誘導体と、トリス−1,2,3−(ノルボルン−5−エン−2−カルボキシ)プロポキシプロパンと、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレートと、サッカリンと、クメンハイドロパーオキサイドと、の混合物よりなり;この配合物は、接着剤として使用に供されるが、構造用途にはまったく適さない。したがって、国際公開第88/02902号パンフレットには、建設用途における可能性のある使用および/または利点についても、硬化過程において硬化網状構造が形成されることについても、なんら教示されていない。したがって、国際公開第88/0292号パンフレットに係る樹脂組成物の使用は、明らかに、光開始と好適な接着剤用途とに限定される。
【0004】
また、EP−A−0156493号明細書には、チオール成分と反応性炭素−炭素不飽和とを含むラジカル硬化用の樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この文献では、(メタ)アクリレートと15重量%の最大量のチオール成分とに限定され、バナジウムの存在が必要とされる。EP−A−0156493号明細書に係る樹脂組成物は、コーティングに使用されるにすぎない。
【0005】
先行技術に基づく樹脂組成物が抱える問題点は、上述した欠点のほかに、硬化樹脂が建設材料や構造部品に適さないと思われる点、および樹脂組成物が熱硬化反応において迅速硬化を与えずかついわゆる酸素阻害の影響を受ける点である。ビニルエステル樹脂組成物を硬化させると、一般的には、粘着性表面を有する硬化生成物が得られる。
【0006】
したがって、迅速かつ調整可能なラジカル硬化により、しかもいわゆる酸素阻害の問題をなんら呈することなく、不粘着性表面を有する建設材料を提供しうる樹脂組成物を提供することが必要であると、長い間考えられてきた。
【0007】
驚くべきことに、これらの問題点は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分(「RU成分」)と、XがCでもOでもないXH基を含有する成分(「XH成分」)と、を含むラジカル硬化用の樹脂組成物を提供することにより克服された。ただし、
a.樹脂組成物は光開始剤を実質的に含まず;しかも
b.RU成分の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数は2超であり;しかも
c.XH成分のXH基の少なくとも1種はチオール基であり、かつXH成分のXH基の平均個数は2以上であり;しかもその際
d.それぞれ不飽和の平均個数、XH基の平均個数の少なくとも一方は2超であり;しかも
e.反応性不飽和の多くとも5mol%は単独重合を起こすことが可能であり;しかも
f.反応性不飽和の多くとも5mol%はモノエン官能性アルキレンの形態で存在し;しかも
g.XH基と反応性不飽和とのモル比は4:1〜1:4の範囲内であり;
ただし、RU成分はトリス−(ノルボルン−5−エン−2−カルボキシ)プロポキシプロパンではない。
【0008】
結果として、上述の問題は克服される。それに加えて、樹脂組成物が(メタ)アクリレートを含んでいたとしても硬化樹脂組成物は収縮をほとんど示さないというさらなる利点が得られる。本発明の意図するところによれば、「光開始剤を実質的に含まない」という用語は、組成物が、UV光線または可視光線の影響下、200℃未満の温度範囲で、ラジカル(少なくとも1種のラジカルは炭素中心ラジカルである)に分解される(ただし、該温度範囲で熱分解されるものではない)いかなる有意量の開始剤をも含有しないことを意味する。光開始剤はまた、当然ながら、そのようなラジカルに熱分解されうるが、そのような熱分解は、200℃超の温度で起こる。
【0009】
本発明のより良い理解のために、本明細書中で使用される専門用語に関する以下の説明が役立つと思われる。
【0010】
本出願で使用される反応性炭素−炭素不飽和(RU)という用語は、単一炭素−炭素二重結合もしくは三重結合(モノアルケンもしくはモノアルキンとも呼ばれる);および共役二重もしくは三重炭素−炭素不飽和結合(例は、共役ジエン、トリエンなど、および共役ポリエン;共役ジイン、トリインなどである;のいずれをも包含し;RUはまた、ホモアリル性であってもよく、すなわち、第1の(α,β;ただし、必ずしも末端である必要はない)炭素−炭素不飽和結合に隣接してδ,ε−不飽和二重もしくは三重結合を有していてもよい。
【0011】
RUの平均個数は、次のような個々のRUに関する官能価と区別しなければならない。1個のアルケン結合は官能価1を有し(すなわち、これはまた「モノエン官能性」と呼ぶことも可能である);1個のアルキン結合は官能価2を有し(すなわち、それは二官能性である);共役ジエン(1個のRUである)は同様に二官能性であり;共役トリエンは三官能性であり、他も同様である。非共役ジエンは、それぞれ単官能性である2個のRUからなる。明確にするために、ホモアリル性不飽和が共役不飽和であるとみなされる点に留意されたい。本発明に係る樹脂組成物では、RU成分の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数は2超である。しかしながら、各RUの官能価は1以上である。
【0012】
樹脂成分中のRUは、その中の種々の位置に位置しうる。RUが樹脂分子の(長いすなわち>10原子の鎖長の)鎖の末端近傍に位置する(すなわち最後の10末端原子内に位置する)場合、そのような位置はテレケリック位と称される。当然ながら、1個の樹脂分子中に、2個以上のテレケリックRUが存在しうる。少なくとも1個の長い主鎖と1個以上のかかる短い側鎖とを含む樹脂分子の短い側鎖中(すなわち、多くとも10原子の鎖長の側鎖中)のテレケリック位に存在する場合、RUの位置はペンダント位と称される。樹脂分子の主鎖中(および/または1個以上の側鎖中)の非テレケリック位に存在する場合、RUは主鎖RUと称される。
【0013】
樹脂分子は、直鎖原子からなるのであれば非分枝状と呼ぶことが可能であり、1個以上の短いペンダント側基(すなわち、それぞれ多くとも10原子)で置換されていてもよい。樹脂分子は、主鎖と該主鎖に結合された1個以上の側鎖(それぞれ10原子超)とを有するのであれば分枝状と称される。側鎖はまた、それ自体が分枝状であってもよい。樹脂成分の分枝度は、その分枝数により最も良好に表されうる。非分枝状樹脂成分は、分枝数0を有する。1個の長い側鎖(10原子超)が存在するのであれば、分枝数は1であり;1個の長い側鎖が他の長い側鎖で置換されている場合と同じように、2個の長い側鎖を有するときは、分枝数は2である。より大きい分枝数もまた可能であり、主鎖および/または長い側鎖に結合された長い(すなわち>10原子の)側鎖の分枝を数えることにより評価可能である。樹脂成分の分枝数を決定するときに樹脂成分中の炭素環式構造を考慮に入れる必要はない点に留意すべきである。樹脂分子中のテレケリック位の個数は、そのような樹脂分子の分枝数よりも2個多い。
【0014】
本発明によれば、XH成分に関して、XH成分のXH基の少なくとも1種は、チオール基でなければならず、XH基の平均個数は、XH成分の分子1個あたりのXH基の個数(XH成分の分子がすべて同等な場合)またはXH基の個数の加重平均(XH成分がXH基含有化合物の混合物である場合)を意味する。
【0015】
本明細書の意図するところによれば、XHは、任意の反応活性X−H結合を表すが、ただし、Xは、炭素原子と酸素原子を除くほとんど任意のタイプの原子を表すものとする。したがって、Xは、多種多様な元素から選択可能である。XH成分の分子中には、2タイプ以上のXH結合が存在しうる(すなわち、2種以上のXが存在しうる)。異なるXH基を含有する分子の例は、たとえば、アミノチオールである。当然ながら、XH成分のXH基の少なくとも1種がチオール基であるという条件で、XH成分の混合物を使用することも可能である。
【0016】
(特定のタイプの)反応性不飽和のmol%を計算する場合、最初に、樹脂成分の分子1個あたりのRUの(平均)全個数を決定し(これは100mol%のRUを表す)、次に、任意のそのような特定のタイプのRU(たとえばテレケリックRU)の個数を決定し、該全個数で割り算し、そして100%を掛ける。
【0017】
RUは、周囲温度および周囲圧力において同一タイプのRUとのラジカル重合に関与する場合、単独重合を起こしうると言われる。単独重合を起こしうる成分の例は、たとえば、アクリレート、メタクリレート、およびイタコネートである。周囲条件の温度および圧力でラジカル反応する異なるタイプのRU間に重合結合形成が起こる場合、本発明の枠内では、共重合が起こる。そのような反応は、たとえば、フマレートまたはマレエートと、ビニルエーテル、アリルエーテル、スチレンまたはスチレン性不飽和を有する誘導体と、の反応で、起こる。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物では、好ましくは、それぞれ反応性炭素−炭素不飽和の平均個数、XH基の平均個数の少なくとも一方は2.5超である。さらにより好ましくは、それぞれ反応性炭素−炭素不飽和の平均個数、XH基の平均個数の少なくとも一方は3超である。
【0019】
XH基と反応性炭素−炭素不飽和とのモル比が1.5:1〜1:1.5の範囲内にある樹脂組成物の場合、本発明に係る樹脂組成物を用いて良好な結果が達成される。最も好ましくは、反応性炭素−炭素不飽和のRU1個あたりの平均官能価は1〜2の範囲内である。
【0020】
先に述べたように、官能価(RU1個あたり)は、RUの個数と区別しなければならない。1個のアルケン結合は官能価1を有し(すなわち、これはまた「モノエン官能性」と呼ぶことも可能である);1個のアルキン結合は官能価2を有し(すなわち、それは二官能性である);ジエンは同様に二官能性であり;トリエンは三官能性であり、他も同様である。
【0021】
好ましくは、本発明に係る樹脂組成物では、XH基は、1molあたりのXH基の平均個数が3以上であるXH成分中またはXH成分の混合物中に存在する。より好ましくは、XH基は、1molあたりのXH基の平均個数が4以上であるXH成分中に存在する。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物では、反応性炭素−炭素不飽和の平均個数は、2.5以上、より好ましくは3以上、さらにより好ましくは4以上であることが、とくに好ましい。反応性炭素−炭素不飽和の平均個数とXH基の平均個数との総平均が2.5以上であれば、優れた結果が達成される。本明細書で意図される総平均は、RUおよびXH基の平均個数の値の合計の1/2の値を求めることにより容易に計算可能である。より好ましくは、反応性炭素−炭素不飽和の平均個数とXH基の平均個数との総平均は、3以上である。
【0023】
単独重合を起こしうる反応性炭素−炭素不飽和のmol%が5mol%以下であれば、本発明に係る樹脂組成物はラジカル硬化させるのに好適であるが、該mol%は、好ましくは0〜1mol%の範囲内である。最も好ましくは、該mol%は0超である。この理由は、単独重合性基の存在が貯蔵中に形成される可能性のあるラジカルに対する組成物の安定性に有利な影響を及ぼす点にある。なぜなら、単独重合性基は、そのようなラジカルの捕捉を助長しうるからである。EP−A−0156493号明細書に開示されている樹脂組成物では単独重合を起こしうる反応性炭素−炭素不飽和のmol%は5mol%をはるかに超える点に留意すべきである。本発明に係る樹脂組成物は、すでに述べた理由により、EP−A−0156493号明細書に開示されている樹脂組成物とはまったく異なる。
【0024】
さらに、本発明に係る樹脂組成物は、硬化時に良好な結果を得るべく、モノエン官能性アルキレンの形態で樹脂組成物中に多くとも5mol%の反応性炭素−炭素不飽和を含有しうるが、モノエン官能性アルキレンの形態で存在する反応性炭素−炭素不飽和のmol%は、0〜1mol%の範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る樹脂組成物では、XH成分は、好ましくは、チオール成分、ホスフィン成分、およびアミン成分からなる群から選択される。最も好ましくは、XH成分中のXH基の少なくとも1種はチオール基である。本発明に関連して使用しうるチオール成分の具体例の長いリストは、たとえば、EP−B−1066335号明細書の明細書の段落[015]、[016]、および[017]に見いだしうる。
【0026】
本発明に係る樹脂組成物中のXH成分は、好ましくは脂肪族チオール成分である。より好ましくは、チオール成分は、モノアルコール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、および他のポリオールのα−メルカプトアセテートエステルおよび/もしくはβ−メルカプトプロピオネートエステル、ならびに/またはメルカプトアルキル−トリアルコキシシラン化合物の誘導体からなる群から選択される。
【0027】
先に述べたように、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中の反応性不飽和は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の分子(または分子の混合物)の種々の位置に存在しうる。たとえば、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中に存在する反応性不飽和の一部は、その主鎖中に存在しうる。疑問を生じないように述べておくが、本明細書で意図される主鎖という用語は、主鎖および少なくとも10原子鎖長のすべての長い側鎖さらにはペンダント鎖を包含する。反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の主鎖中に存在する、反応性炭素−炭素不飽和の一部は、少なくとも、1以上の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数に対応することが好ましい。これは、たとえば、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の反応性不飽和の平均個数が2.5または3でありかつ主鎖中に存在する反応性不飽和の平均個数が1.2に等しい場合、主鎖中に存在しない反応性不飽和の平均個数が1.3または1.8であることを意味する。
【0028】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中に存在する反応性不飽和の一部は、環式もしくはヘテロ環式の構造中に存在しうる。反応性炭素−炭素不飽和の該一部は、好ましくはC5〜12の環式もしくはヘテロ環式の構造中、より好ましくはC7〜9の環式もしくはヘテロ環式の構造中に存在し、かつ少なくとも、1以上の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数に対応する。最も好ましくは、反応性炭素−炭素不飽和の該一部は、C5〜12炭素環式構造中、好ましくはC7〜9炭素環式構造中に存在する。炭素環式構造は、環中にいかなるヘテロ原子をも含有しない。先に述べたように、芳香環は、1個以上の反応性不飽和を含有する環式もしくはヘテロ環式の環構造の定義に包含されるとはみなされない。
【0029】
環式もしくはヘテロ環式の構造中に存在する反応性炭素−炭素不飽和の該一部は、C5〜12二環式構造中、より好ましくはC7〜9二環式構造中に存在することがとくに好ましい。そのような二環式構造の例は、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン(すなわち、ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン)、置換されたジシクロペンタジエンおよびノルボルネン、ビシクロ−[2.2.2]−オクタン、ビシクロ−[3.2.1]−オクタン、ビシクロ−[3.2.3]−ノナンである。5員環エチレン性ジシクロペンタジエン化合物は、とくに好ましい。
【0030】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中に存在する反応性不飽和の一部は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中のテレケリック位に存在しうる。テレケリック位という用語は、反応性不飽和が主鎖または長い側鎖の末端近傍に存在することを意味する。反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中のテレケリック位に存在する、反応性炭素−炭素不飽和の一部は、好ましくは、少なくとも、1以上の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数に対応する。
【0031】
しかしながら、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分はまた、より長い側鎖を生成することにより分枝状ポリマー種を形成する重合の結果として得られるものであってもよいし(分枝点から始まる各鎖はそれ自体がポリマー鎖である)、または部分的にある大きさの線状ポリマーに隣接してそのような分枝状ポリマーを含有するものであってもよい。本発明に係る樹脂組成物では、反応性炭素−炭素不飽和含有分枝状ポリマー鎖を含有する成分中に存在する、反応性不飽和の一部は、1以上、好ましくは1.5超、最も好ましくは2超の分枝数を有する。
【0032】
本発明によれば、分枝は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中だけでなく、XH成分中にも存在しうる。XH基がチオール基であるそのような分枝状XH成分の例は、トリメチロールエタントリス(3−メルカプト−プロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、ペンタエリトリトールテトラメルカプトアセテート、ジペンタエリトリトールヘキサメルカプトアセテート、トリビニルシクロヘキシルポリメルカプタン、トリチオシアヌル酸、およびそれらのエトキシル化またはプロポキシル化誘導体である。
【0033】
他の好適なXH成分の例は、ポリエチレンアミン;ホスフィン、ジホスフィン、ポリホスフィン、たとえば、フェニルホスフィンエタンジホスフィン;エタンジ(フェニルホスフィン);ホスファイト;チオホスフィン;アミノホスフィン;ならびにそれらの混合物およびポリマー形である。
【0034】
本発明に係る樹脂組成物中の反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分は、構造用途に使用するための当業者に公知のすべてのエチレン性不飽和ポリエステルからなる群から選択可能である。それらの例は、M.マリク(M.Malik)らによる上述の総説中に見いだしうる。彼らは、それらの構造に基づいて、次の5つのグループに分けてそのような樹脂の分類を記載している:(1)オルト樹脂;(2)イソ樹脂;(3)ビスフェノール−A−フマレート;(4)クロレンド酸類;および(5)ビニルエステル樹脂。これらのクラスの樹脂に加えて、いわゆるジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂もまた、際立って優れている可能性がある。そのような不飽和ポリエステルの多くは、大量スケールで市販されている。
【0035】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分は、好ましくは、
(i)フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、および/もしくはソルビン酸のエステルもしくはアミド、ならびに/またはそれらとジエン化合物とのディールス・アルダー付加物;ならびに
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、もしくはイタコン酸のエステルもしくはアミドとジエン化合物とのディールス・アルダー付加物;ならびに
(iii)5員環エチレン性ジシクロペンタジエン化合物;
からなる群から選択される。
【0036】
ディールス・アルダー付加物がブタジエンまたはシクロペンタジエンとの付加物である場合、とくに良好な結果が達成される。シクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加物が最も好ましい。反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分がディールス・アルダー付加物である場合、反応性炭素−炭素不飽和を含有する出発樹脂に対してディールス・アルダー付加物形成反応を行うことにより、調製することも可能である。しかしながら、他の選択肢として、樹脂調製用の出発原料としてのモノマー化合物に由来するディールス・アルダー付加物を用いることにより調製することが可能である。とくに、ビシクロ−[2.2.1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(マレイン酸とシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加物)が適用されるか、または樹脂中のマレイン酸基を用いて形成される対応するディールス・アルダー付加物が適用される。その場合、そのような樹脂はハイミック(HIMIC)樹脂と呼ぶことが可能である。最も好ましくは、ディールス・アルダー付加物は、RU成分の主鎖中に組み込まれる。
【0037】
周知のごとく、調製された不飽和ポリエステルまたは市販の不飽和ポリエステルは、それらの取扱いを単純化すべくそれらを流動状態またはより粘性の低い状態に保持するように特定量の希釈剤を含有しうる。そのような希釈剤は、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分および/または樹脂組成物中の他の反応物に対して不活性でありうるか、またはそれらに対して反応性でありうる。本発明に係る樹脂組成物では、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分に加えて、好ましくは、反応性不飽和を含有する反応性希釈剤もまた、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の多くとも25重量%の量で存在する。
【0038】
樹脂組成物の平均個数RUの計算は、反応性炭素−炭素不飽和を有する希釈剤がそこに存在する場合、全樹脂組成物に対してRUの加重平均をとることにより、すなわち、RU成分およびRU含有希釈剤の重量パーセントを考慮に入れることにより、簡単に行われる。
【0039】
本発明に係る樹脂組成物において、そのような不飽和を含有する成分中の反応性炭素−炭素不飽和の少なくとも一部に関して、反応性不飽和の官能価が2超である場合、優れた結果が達成される。
【0040】
本発明によれば、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分中の反応性不飽和の多くとも5mol%は、単独重合を起こしうる。それにもかかわらず、本発明に係る樹脂組成物は、とくに樹脂組成物が反応性不飽和を含有する成分の混合物を含む場合、重量パーセントとして計算したとき、依然として比較的高いパーセントの共重合性成分を含有しうる。好ましくは、反応性炭素−炭素不飽和含有成分の混合物の多くとも50mol%、より好ましくは多くとも30mol%は、共重合性である。言い換えれば、そのような不飽和を含有する成分の混合物中の反応性不飽和の好ましくは50mol%超、より好ましくはその70mol%超は、硬化時に網状構造を形成するように重合される。本明細書の意図するところによれば、共重合性という用語は、そのような成分が周囲条件の温度および圧力で他の重合性成分と反応してコポリマーを形成しうることを表す。エチレン二重結合を含有しかつ互いに共重合しうる成分の例は、ビニル基とフマレート、ビニル基とマレエート、スチレンとフマレートまたはマレエート、(メタ)アクリレートと他のモノマーと、場合によりシクロペンタジエン、ビニル基とハイミック(HIMIC)などである。一般的には、そのような共重合反応は、電子豊富二重結合と電子欠乏二重結合との間で起こる。当然ながら、共重合はまた、炭素−炭素三重結合でも起こりうる。
【0041】
さらに、本発明に係る樹脂組成物では、反応性希釈剤に由来する任意選択的な反応性炭素−炭素不飽和を除いて、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の平均分子量は、好ましくは、少なくとも500、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも2000ダルトン、かつ多くとも15000ダルトンの範囲内である。反応性不飽和を含有する成分の平均分子量という用語は、該樹脂成分のMそれ自体を表す。したがって、該平均分子量を計算する場合、反応性炭素−炭素不飽和を含有する反応性希釈剤を除いて、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分のみを考慮に入れる。
【0042】
しかしながら、場合により、反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分と反応性希釈剤との合計質量中に存在する反応性不飽和1個あたりの平均分子量を算出するほうが便利なこともある。反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分と反応性希釈剤との合計質量中に存在する炭素−炭素反応性不飽和1個あたりの平均分子量は、好ましくは150ダルトン以上である。
【0043】
XH成分中のXH基に対しても、類似の分子量計算および/または特性決定を行うことが可能である。したがって、XH成分の平均分子量およびXH成分中に存在するXH基1個あたりの平均分子量の両者を区別することが可能である。XH成分の平均分子量は、好ましくは、少なくとも200、より好ましくは少なくとも300ダルトン、かつ多くとも2500ダルトンの範囲内である。さらに、XH成分中に存在するXH基1個あたりの平均分子量は、好ましくは100ダルトン以上である。
【0044】
本発明に係る樹脂組成物はまた、阻害剤(すなわち、早期硬化反応を防止する)、促進剤(すなわち、十分に速い速度で硬化(開始時)が確実に起こるようにする)、および/または開始剤(すなわち、適正条件下で硬化反応を開始しうる物質)として作用する物質をも含有しうる。そのような阻害剤、促進剤、および開始剤の存在は、樹脂の調製および硬化の分野の豊富な文献から、当業者の熟知するところである。
【0045】
とくに、本発明に係る樹脂組成物はまた、好ましくは、反応性炭素−炭素不飽和およびXH基を含有する成分の全質量を基準にして計算したときに、0.00001〜5.0重量%の量で阻害剤をも含有する。阻害剤は、好ましくは、(i)フェノール系阻害剤;(ii)ニトロシル阻害剤;(iii)フェノチアジン阻害剤;または(iv)フェノール系阻害剤および/もしくはニトロシル阻害剤および/もしくはフェノチアジン阻害剤の任意の組合せ;からなる群から選択される。
【0046】
本発明に係る樹脂組成物で使用しうる阻害剤の好適な例は、たとえば、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン−N−オキシル(ヒドロキシテンポ)、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニル−オキシ(プロキシル)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジンの誘導体もしくは類似体などである。
【0047】
さらに、本発明に係る樹脂組成物はまた、好ましくは、反応性炭素−炭素不飽和およびXH基を含有する成分の全質量を基準にして計算したときに、0.00001〜5.0重量%の量で促進剤をも含有する。
【0048】
本発明に係る樹脂組成物で使用しうる好適な促進剤は、たとえば、アセチルアセトン、エチルアセトアセテート、N,N−ジエチル−アセトアセトアミド、および芳香族促進剤(たとえば、ジメチルアニリン、ジメチル−p−トルイジン、ジ−i−プロパノール−p−トルイジン(DipT))からなる群から選択可能である。
【0049】
不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂の硬化に使用するための当業者に公知の過酸化物はすべて、使用可能である。そのような過酸化物としては、有機および無機の過酸化物(固体であるか液体であるかを問わず)が挙げられ;さらには過酸化水素を適用することも可能である。好適な過酸化物の例は、たとえば、パーオキシカーボネート(式−OC(O)O−で示される)、パーオキシエステル(式−C(O)OO−で示される)、ジアシルパーオキサイド(式−C(O)OOC(O)−で示される)、ジアルキルパーオキサイド(式−OO−で示される)などである。それらはまた、天然のオリゴマーまたはポリマーでありうる。好適な過酸化物の多数の一連の例は、たとえば、米国特許公開第2002/0091214A1号明細書の段落[0018]に見いだしうる。当業者であれば、過酸化物の製造業者により提供される説明書に記載の過酸化物および過酸化物の取扱い上の注意に関する情報を容易に入手しうる。
【0050】
過酸化物は、好ましくは、有機過酸化物からなる群から選択される。好適な有機過酸化物の例は、第三級アルキルハイドロパーオキサイド(たとえば、t−ブチルハイドロパーオキサイドなど)および他のハイドロパーオキサイド(たとえば、クメンハイドロパーオキサイドなど)、パーオキシエステルまたは過酸(たとえば、(ジ)パーオキシエステルを含めて、t−ブチルパーエステル、ベンゾイルパーオキサイド、パーアセテートおよびパーベンゾエート、ラウリルパーオキサイドなど)、パーエーテル(たとえば、パーオキシジエチルエーテルなど)、パーケトン(たとえば、メチルエチルケトンパーオキサイドなど)である。多くの場合、硬化剤として使用される有機過酸化物は、第三級パーエステルまたは第三級ハイドロパーオキサイド、すなわち、−O−O−アシル基または−OOH基に直接結合された第三級炭素原子を有するパーオキシ化合物である。明らかに、これらの過酸化物と他の過酸化物との混合物を本発明に関連して使用することも可能である。過酸化物はまた、混合過酸化物、すなわち、1分子中に任意の2つの異なる過酸素保有部分を含有する過酸化物でありうる。
【0051】
最も好ましくは、過酸化物は液体過酸化物である。最終的使用で樹脂を硬化させるときに液体過酸化物を取り扱うことは、一般的には、より容易である。すなわち、それらは、より良好な混合特性を有し、硬化される樹脂により迅速に溶解する。
【0052】
阻害剤および/または促進剤のタイプおよび量は、使用される反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分およびラジカル硬化に使用される開始剤に応じて選択しなければならない。たとえば、パーエステルもしくはパーアンハイドライド(たとえばベンゾイルパーオキサイド)を用いて硬化を行う場合、一般的には促進剤としてアミンが使用されるであろう;または、ベンゾイルパーオキサイド以外の他の過酸化物と組み合わせて使用する場合、コバルト、マンガン、またはバナジウムの配位子が促進剤として選択されるであろう。しかしながら、RU成分およびXH成分のタイプにもよるが、促進剤を用いずに硬化させることも可能である。
【0053】
本発明に係る樹脂組成物で使用される好ましい促進剤は、硬化開始剤としてのパーエステル化合物および/またはパーアンハイドライド化合物と組み合わせて硬化させるべく使用するときのアミンであるか、あるいは硬化開始剤としてのパーエステルおよび/またはパーアンハイドライド以外の任意の他のタイプの過酸化物と組み合わせて硬化させるべく使用するときのコバルト、バナジウム、銅、鉄、マンガン、またはチタンのいずれかから選択される単一金属の可溶性塩もしくは錯体またはそれらの混合物であるか、のいずれかである。
【0054】
本発明に係る樹脂組成物は、好ましくは過酸化物開始剤を用いて、より好ましくは液体過酸化物および(固体)ベンゾイルパーオキサイドからなる群から選択される過酸化物を用いて、硬化させることが可能な組成物である。
【0055】
さらに、本発明はまた、先に本明細書に記載したような樹脂組成物をラジカル硬化させる方法に関する。ただし、そのような樹脂組成物は、好適な温度において、過酸化物、アゾ化合物、またはベンゾピナコールで処理される。硬化は、好ましくは、過酸化物を用いてまたはリン酸とベンゾピナコールとの組合せを用いて行われる。ベンゾピナコールを用いる硬化、すなわち、ベンゾピナコール自体またはベンゾピナコール部分を含有するその誘導体を用いる硬化は、樹脂組成物をバルクモールディングコンパウンド(BMC)またはシートモールディングコンパウンド(SMC)として使用する場合、とくに好ましい。熱活性化不飽和ポリチオール化合物の硬化については、米国特許第4,020,233号明細書にかなり前にすでに報告されている。しかしながら、該文献は、コーティング用途などに関するものであり、本発明について教示も提示もしていない。
【0056】
とくに、本発明によれば、本硬化方法は、以下の実施形態のいずれかに基づく二成分樹脂組成物系から出発して実施される:
a.反応性炭素−炭素不飽和含有成分とXH基含有成分と場合により反応性希釈剤とを含む第1の成分;および過酸化物を含む第2の成分;
b.反応性炭素−炭素不飽和含有成分と場合により反応性希釈剤とを含む第1の成分;およびXH基含有成分と過酸化物とを含む第2の成分;
c.XH基含有成分を含む第1の成分;および過酸化物と反応性炭素−炭素不飽和含有成分と場合により反応性希釈剤とを含む第2の成分(ただし、この実施形態cでは、反応性炭素−炭素不飽和含有成分は、単独重合性および/または共重合性の反応性不飽和を実質的に含まない)。
【0057】
二成分樹脂組成物系(第1の成分+第2の成分)は、構造用樹脂およびその用途の分野の当業者に周知である。
【0058】
とくに、硬化は、本発明に係る方法では、−20〜+200℃の範囲内、好ましくは−20〜+100℃の範囲内、最も好ましくは−10〜+60℃の範囲内の温度で行われる。後者の最も好ましい温度範囲では、硬化方法は、低温硬化方法と呼ぶことも可能である。
【0059】
本発明に係る樹脂組成物および方法は、化学的固着、屋根葺き、床張り、(再)裏打ち、SMCおよびBMC、硬化材料の強度が不可欠であるあらゆる種類の構造用途、に使用される物質を提供するために好適に使用しうる。
【0060】
最後に、本発明は、シクロペンタジエンと少なくとも1個のテレケリック炭素−炭素不飽和を含有する樹脂成分との反応から特定のディールス・アルダー付加物成分を合成する新しい方法に関する。そのような成分は、先に述べたような本発明に係る樹脂組成物の実施形態の1つで非常に好適に使用可能であり、最も好ましい。本発明者らは、そのような成分を合成するための新規で独創的で最も便利な経路を見いだした。すなわち、(i)第1の工程で、1分子あたり少なくとも1個のテレケリック炭素−炭素不飽和を有する不飽和ポリエステル樹脂成分に150℃よりも十分に低い温度で該不飽和ポリエステル樹脂出発原料中のテレケリック炭素−炭素不飽和結合1molあたり少なくとも0.5molのジシクロペンタジエンの量でジシクロペンタジエンを添加し;かつ(ii)第2の工程で、第1の工程で得られた混合物を150〜180℃の範囲内の温度に加熱して;不飽和ポリエステル樹脂出発原料中のテレケリック炭素−炭素不飽和結合の変換に十分な時間をかけて反応させ;かつ(iii)最後に、過剰のジシクロペンタジエンおよびシクロペンタジエンを蒸発により除去する。
【0061】
150℃よりも十分に低い温度は、本明細書の意図するところによれば、周囲温度から該上限までの範囲内の任意の温度でありうるが、好ましくは100℃未満、より好ましくは50℃未満で選択されるであろう。周囲温度でジシクロペンタジエンを不飽和ポリエステル樹脂成分に添加することが最も好ましい。十分な転化率に達するまで反応させる時間は、一般的には5時間未満、多くの場合2時間未満の短時間であろう。当業者であれば、シクロペンタジエンの蒸発が定常状態に到達したかを評価することにより、変換が十分になされたとみなされる時間点を容易に決定しうる。
【0062】
当業者は150〜180℃の範囲内の温度への加熱工程によりゲル化生成物が得られると予想するであろうから、この新しい経路はまったく驚くべきものである。この経路は、テレケリックノルボルネン含有樹脂成分の合成にとくに好適である。したがって、好ましくは、テレケリック炭素−炭素不飽和結合は(メタ)アクリル性結合である。
【0063】
次に、それぞれ一連の実施例および比較例(樹脂の調製に関して)、実験および比較実験(樹脂の硬化に関して)を利用して本発明について説明するが、実施例および実験に示される特定の実施形態になんら限定されるものではない。
【0064】
以下の略号を実験の部で使用する:
略号 内容
20S パーカドックス(Perkadox)(登録商標)20S;オランダ国アクゾ(Akzo,the Netherlands)製の20%ベンゾイルパーオキサイド担持タルク製品
BMP ブタンジオールビスメルカプトプロピオネート
bzpl ベンゾピナコール
CPD シクロペンタジエン
DBH ジブチルハイドロキノン
DCPD ジシクロペンタジエン
DIPT N,N−ジイソプロパノールトルイジン
DMPT N,N−ジメチルトルイジン
HIMIC ビシクロ−[2.2.1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(マレイン酸とシクロペンタジエンとのディールス・アルダー付加物)
M50 ブタノックス(Butanox)(登録商標)M50;オランダ国アクゾ(Akzo)製のメチルエチルケトンパーオキサイド製品
MA 無水マレイン酸
Mn ホワイトスピリット中の40%Mn2−エチルヘキサノエート溶液;ドイツ国ABCR & Co KG製
NL−49 ホワイトスピリット中のCo(コバルト)の1%溶液;オランダ国アクゾ(Akzo)
ph.ac. リン酸
PMA ペンタエリトリトールメルカプトアセテート
PMP ペンタエリトリトールメルカプトプロピオネート
pTSA パラトルエンスルホン酸
TEGDVE トリエチレングリコールジビニルエーテル
TMP トリメチロールプロパントリメルカプトプロピオネート
TMPox トリメチロールプロパンオキセタン
U626 チバ(Ciba)(スイス国)のウルトラノックス(Ultranox)(登録商標)626
VN−2 ホワイトスピリット中のV(バナジウム)の0.2%溶液;オランダ国アクゾ(Akzo)
RU 反応性不飽和1個あたりの平均分子量
XH XH基1個あたりの平均分子量
【0065】
第A部:樹脂組成物用のRU成分(樹脂A〜J)の合成
実施例1:ノルボルネン官能性樹脂(樹脂A)の合成
攪拌機、還流冷却器、および窒素パージを備えた反応フラスコに、周囲温度で、256gのエトキシル化ビスフェノール−Aジアクリレート(0.5mol、1モルのアクリレート二重結合に対応する)、130gのDCPD(0.502mol;1.004molのCPDに対応する)、および0.5gのDBHを仕込んだ。反応混合物を攪拌下で170℃に30分間加熱し、170℃に2時間保持した。減圧下で過剰のCPDを蒸発させた後、透明樹脂が得られた。この樹脂(樹脂A)は、2個のテレケリックノルボルネン官能基を含有し、320Dの平均分子量毎RU(WRU)を有していた。
【0066】
比較例A:ノルボルネン官能性樹脂の合成
130gのDCPDを仕込んだ点以外は実施例1を反復した。その際、温度が170℃に達し次第、DCPDを添加した。しかしながら、温度が170℃に達しDCPDとのディールス・アルダー反応が開始されるかなり前にすでに、ジアクリレートはゲルに変化し、DCPDとの反応はゲル化状態を変化させえなかった。
【0067】
実施例2:テレケリックノルボルネン・主鎖HIMIC官能性樹脂(樹脂B)の合成
2.a 中間樹脂(樹脂Bint1)の合成
攪拌機、還流冷却器、および窒素パージを備えた反応フラスコに、1302gのエチレングリコール、880gのMA、および0.5gのDBHを仕込んだ。反応混合物を100℃に加熱し、その温度に2時間保持し、その後、それを170℃に加熱し、170℃に2時間保持した。混合物を100℃に冷却させ、650gのDCPDを添加した。次に、反応混合物を180℃に加熱し、その温度に6時間保持した。減圧下で過剰のCPDを蒸発させた後、透明樹脂が得られた。中間樹脂(樹脂Bint1)は、主鎖中に1個のRU(CPDとマレイン酸エステルとのディールス・アルダー付加物)を含有し、285DのWRUであった。
【0068】
2.b 第2の中間樹脂(樹脂Bint2)の合成
攪拌機、ディーン・スターク装置、および窒素パージを備えた反応フラスコに、270gの中間樹脂Bint1、145gのアクリル酸、80gのトルエン、4gのpTSA、0.5gのDBH、および0.5gのU626を仕込み、その後、反応フラスコを還流するまで加熱し、ディーン・スターク装置で水を分離した。4時間後、それ以上の水は、共沸分離により除去されなかった。混合物をさらに1時間攪拌し、真空下でトルエンを除去し、第2の中間樹脂(樹脂Bint2)を得た。
【0069】
2.c 樹脂Bの合成
ディーン・スターク装置を還流冷却器と交換し、得られた中間体(樹脂Bint2)に86gのDCPDを添加した。反応混合物を攪拌下で170℃に加熱し、170℃に4時間保持した。次に、過剰のDCPDを真空中で除去し、その後、2個のテレケリックRUと主鎖中の1個のRUとを含有する樹脂Bを得た。WRUは220Dである。
【0070】
実施例3:分枝状ノルボルネン官能性樹脂(樹脂C)の合成
攪拌機、還流冷却器、および窒素パージを備えた反応フラスコに、100gのエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、22gのDCPDおよび0.1gのDBHおよび0.1gのU626を仕込んだ。反応混合物を攪拌下で170℃に加熱し、170℃に2時間保持した。減圧下で過剰のCPDを蒸発させた後、透明樹脂が得られた。得られた樹脂(樹脂C)は、3個のノルボルネン官能基を含有し、370DのWRUであった。
【0071】
実施例4:クロトニル官能性樹脂(樹脂D)の合成
攪拌機、ディーン・スターク装置、および窒素パージを備えた反応フラスコに、800gのエトキシル化ビスフェノール−A、440gのクロトン酸、250gのトルエン、12gのpTSA、0.5gのDBH、および0.5gのU626を仕込み、その後、反応フラスコを還流するまで加熱し、ディーン・スターク装置で水を分離した。6時間後、それ以上の水は、共沸分離により除去されなかった。混合物をさらに1時間攪拌し、真空下でトルエンを除去し、2個のテレケリッククロトン反応性不飽和を有する290DのWRUの樹脂Dを得た。
【0072】
実施例5:クロトニル系ノルボルネン樹脂(樹脂E)の合成
樹脂Dの合成を反復し、トルエンを蒸発させた後、ディーン・スターク装置を還流冷却器と交換した。260gのDCPD、1.1gのDBH、および1.1gのU626を添加し、その後、混合物を170℃に加熱し、170℃に3時間保持した。減圧下で過剰のCPDを蒸発させた後、透明樹脂が得られた。樹脂(樹脂E)は、2個の二環式RUを含有し、315DのWRUを有していた。
【0073】
実施例6:マレエート官能性樹脂(樹脂F)の合成
攪拌機、ディーン・スターク装置、および窒素パージを備えた反応フラスコに、606gのエトキシル化ビスフェノール−Aおよび294gの無水マレイン酸および220gのトルエンを仕込んだ。混合物を125℃に加熱し、125℃に1時間保持した。1gのpTSA、0.5gのDBH、0.5gのU626、100gのトルエン、および244gのブタノールを添加し、その後、反応フラスコを還流するまで加熱し、ディーン・スターク装置で水を分離した。3時間後、それ以上の水は、共沸分離により除去されなかった。混合物をさらに1時間攪拌した後、6.5gのTMPoxを添加し、混合物を30分間攪拌した。トルエンを真空下で除去し、2個のテレケリックマレエートRUを有しかつ315DのWRUを有する樹脂Fを得た。
【0074】
実施例7:HIMIC官能性樹脂(樹脂G)の合成
樹脂Fの合成を反復した。トルエンを蒸発させた後、ディーン・スターク装置を還流冷却器と交換した。200gのDCPD、0.5gのDBH、および0.5gのU626を添加し、その後、混合物を170℃に加熱し、170℃に2時間保持した。減圧下で過剰のCPDを蒸発させた後、透明樹脂が得られた。樹脂(樹脂G)は、2個の二環式RUを含有し、380DのWRUを有していた。
【0075】
実施例8:分枝状ノルボルネンテレケリック・主鎖RU官能性樹脂(樹脂H)の合成
攪拌機、ディーン・スターク装置、窒素パージ、および真空装置を備えた反応フラスコに、152gのテトラヒドロフタル酸無水物、550gのエトキシル化トリメチロールプロパン、302gのアクリル酸、1gのDBH、1gのトリノニルホスファイト、10gのpTSA、および150gのトルエンを仕込み、その後、反応フラスコを900mbarの圧力下、115℃で還流するまで加熱し、ディーン・スターク装置で水を分離した。6時間後、それ以上の水は、共沸分離により除去されなかった。混合物をさらに1時間攪拌した後、10gのTMPoxを添加し、混合物を30分間攪拌した。トルエンを真空下で除去し、中間体Iを得た。
【0076】
ディーン・スターク装置を還流冷却器と交換し、中間体I250gあたり86gのDCPDを添加した。反応混合物を攪拌下で170℃に加熱し、170℃に4時間保持した。次に、過剰のDCPDを真空中で除去し、その後、4個のテレケリックRUと主鎖中の1個のRUとを含有しかつ分枝数2を有する樹脂(樹脂H)を得た。WRUは、235Dであった。
【0077】
実施例9:HIMIC官能性樹脂(樹脂I)の合成
攪拌機、還流冷却器、および窒素パージを備えた反応フラスコに、483gのビシクロ−[2.2.1]−ヘプト−5−エン−2,3−カルボン酸無水物、および112gのプロピレングリコールを仕込んだ。反応混合物を攪拌下で200℃に加熱し、200℃に2時間保持し、その後、1gのファスカット(Fascat)(登録商標)4101(米国のアトフィナ・ケミカル・インコーポレーテッド(Atofina Chemicals Inc.)製の有機スズ系エステル交換触媒)、1gのDBH、および1gのU626を添加し、続いて450gのプロピレングリコールを添加した。反応系を攪拌下で200℃にさらに7時間保持した後、室温まで冷却し、その後、1分子あたり平均で2個のRUを含有する280DのWRUの樹脂(樹脂I)を得た。
【0078】
実施例10:プロパルギル官能性樹脂(樹脂J)の合成
攪拌機、還流冷却器、および窒素パージを備えた反応フラスコに、444gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)および0.1gのジブチルスズジラウレートを仕込み、その後、温度が40℃未満に保持されるような速度で112gのプロパルギルアルコールを滴下した。プロパルギルアルコールを添加した後、反応混合物を30分間攪拌してから温度を70℃に上昇させた。次に、1000gのポリTHF1000を30分間かけて添加し、反応混合物を70℃に2時間保持した。冷却後、2個のテレケリックRUを含有する2の官能価および780DのWRUの樹脂(樹脂J)を得た。
【0079】
実施例1、3、5、7、および8を実施例Aと比較することにより、DCPDのin situ分解を介してテレケリック不飽和とCPDとのディールス・アルダー反応を行う新しい独創的な合成手順の有用性が明確に示される。
【0080】
第B部:樹脂の硬化
B.1 熱硬化
以下の実験1〜7のために、表1に示される量で成分を1分間攪拌混合することにより、熱硬化用の配合物を調製した。次に、得られた混合物をアルミニウムディスク中に注ぎ、その後、オーブン中に1時間配置した。次に、固体材料の生成により、硬化作用を評価した。
【0081】
【表1】

【0082】
いずれの実験においても、1時間の硬化工程で固体硬質材料が得られた。
【0083】
実験1〜7は、本発明に係る熱硬化により広範にわたるRUとXHとの比で固体硬質材料が得られることを示している。実際に、樹脂と種々の硬化系との混合物を本発明に係る熱硬化に適用することが可能である。
【0084】
B.2 低温硬化
以下の表に示されるような成分をプラスチックビーカー中で混合することにより、低温硬化用の配合物を調製した。熱電対を用いて硬化をモニターした。ピーク温度は、硬化の良好な指標を与える。それぞれの実験の結果を次の表にまとめる(実験8A〜Fについては表2;実験9A〜Gについては表3;実験10A〜Dについては表4;実験11A〜Gについては表5;実験12A〜Dについては表6)。
【0085】
実験8A〜F:樹脂AとPMPとを用いる低温硬化
【0086】
【表2】

【0087】
これらの実験8A〜Fは、種々の硬化方法を利用して(たとえば、ハイドロパーオキサイドと組み合わせてコバルトまたはバナジウムを用いて)かつ種々のRUとXHとの比で本発明により低温硬化を達成しうることを明確に示している。
【0088】
実験9A〜G:樹脂BとPMPとを用いる低温硬化
【0089】
【表3】

【0090】
これらの実験9A〜Gは、種々の過酸化物を用いて低温硬化を達成しうることを示しており、また、マンガンがハイドロパーオキサイドと組み合わせてまたはアミンがベンゾイルパーオキサイドと組み合わせて適用しうることも示される。さらに、実験9Fは、阻害剤の存在下で硬化を行いうることを示している。
【0091】
実験10A〜D:阻害剤の存在下におけるPMPを用いる樹脂Iの硬化
【0092】
【表4】

【0093】
実験10A〜Dは、阻害剤を用いてゲル化時間を調整しうることを明確に示している。
【0094】
実験11A〜G:さまざまなXH成分を用いるかつRU対XH基のさまざまなモル比における種々の樹脂の低温硬化
【0095】
【表5】

【0096】
実験11H:
5cmの厚さを有する材料のサンプルを用いて実験11Fを反復した(樹脂H、66部;PMP 34部)。低温硬化により、材料層の深さ(5cm)全体にわたり完全に硬化された生成物が得られた。
【0097】
したがって、実験11A〜Hは、さまざまなXH成分をRU対XH基のさまざまなモル比で有する種々の樹脂を低温硬化させることにより優れた結果が得られることを示している。
【0098】
実験12A〜D:樹脂の混合物と、そのような樹脂の少なくとも1種と共重合しうる反応性希釈剤(TEGDVE)と、を用いる硬化
【0099】
【表6】

【0100】
共重合は反応性希釈剤の存在下でさまざまなタイプの樹脂の硬化に対してマイナスの影響を及ぼさないことが明確に示されうる。
【0101】
C.比較実験
比較実験A1:
53部の樹脂A(2個のRU)と20部のBMP(2個のXH)との混合物(すなわち、1:1のRU対XHの比)を実験11Aのときのように低温硬化に付した。
【0102】
網状構造の形成は観測されず;得られた硬化生成物は、強度を有しておらず、脆弱なポリマーであるようにみえた。
【0103】
比較実験A2:
53部の樹脂A(2個のRU)と20部のBMP(2個のXH)との混合物(すなわち、1:1のRU対XHの比)を実験1のときのように熱硬化に付した。
【0104】
網状構造の形成は観測されず;得られた硬化生成物は、強度を有しておらず、脆弱なポリマーであるようにみえた。
【0105】
比較実験B:
40部の樹脂Eと40部のTMPと20部のスチレンとの混合物を実験11Aのときのように低温硬化に付した。硬化は、非常に緩速で不十分であり;ピーク温度は、40℃に到達しなかった。得られた硬化生成物は、まったく強度を有しておらず、脆弱なポリマーであるようにみえた。
【0106】
比較実験C:
実験11Hを反復した(樹脂H、66部;PMP、34部)。ただし、この場合には、光開始剤(すなわち、1重量%のイルガキュア(Irgacure)(登録商標)184(スイス国のチバ(Ciba)))の存在下で、1cmの厚さを有する材料のサンプルを用いて、かつフュージョン(Fusion)F600 D−バルブを用いて2J/cmのエネルギー入力の影響下で光硬化を行った。この硬化により、材料の上端の1mmの層で完全硬化生成物を生じたが、下端の9mmの部分は、液体のままであったので、完全に未硬化の状態であった。
【0107】
比較実験D:
52部の樹脂Dと38部のPMPと10部のメチルアクリレートとの混合物を実験11Aのときのように6%のM50および3部のMnを用いて低温硬化に付した。これにより10分後に軟質ゼリー物質が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分(「RU成分」)と、XがCでもOでもないXH基を含有する成分(「XH成分」)と、を含むラジカル硬化用の樹脂組成物であって、
a.該樹脂組成物が光開始剤を実質的に含まず;
b.該RU成分の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数が2超であり;
c.該XH成分のXH基の少なくとも1種がチオール基であり、かつ該XH成分のXH基の平均個数が2以上であり;その際
d.それぞれ該不飽和の平均個数、該XH基の平均個数の少なくとも一方が2超であり;
e.該反応性不飽和の多くとも5mol%が単独重合を起こすことが可能であり;
f.該反応性不飽和の多くとも5mol%がモノエン官能性アルキレンの形態で存在し;
g.該XH基と該反応性不飽和とのモル比が4:1〜1:4の範囲内であり;
ただし、該RU成分がトリス−(ノルボルン−5−エン−2−カルボキシ)プロポキシプロパンではない;
ことを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
それぞれ前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数、前記XH基の平均個数の少なくとも一方が2.5超であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
それぞれ前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数、前記XH基の平均個数の少なくとも一方が3超であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記XH基と前記反応性炭素−炭素不飽和とのモル比が1.5:1〜1:1.5の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性炭素−炭素不飽和のRU1個あたりの平均官能価が1〜2の範囲内であることを特徴とする、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記XH基が、1molあたりのXH基の平均個数が3以上であるXH成分中またはXH成分の混合物中に存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記XH基が、1molあたりのXH基の平均個数が4以上であるXH成分中に存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数が2.5以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数が3以上であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数が4以上であることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数と前記XH基の平均個数との総平均が2.5以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記反応性炭素−炭素不飽和の平均個数とXH基の平均個数との総平均が3以上であることを特徴とする、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
単独重合を起こすことが可能な反応性炭素−炭素不飽和のmol%が0〜1モル%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
モノエン官能性アルキレンの形態でに存在する反応性炭素−炭素不飽和のmol%が0〜1モル%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記XH成分が、チオール成分、ホスフィン成分、およびアミン成分からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記XH成分中のXH基の少なくとも1種がチオール基であることを特徴とする、請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記XH成分が脂肪族チオール成分であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記チオール成分が、モノアルコール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、および他のポリオールのα−メルカプトアセテートエステルおよび/もしくはβ−メルカプトプロピオネートエステル、ならびに/またはメルカプトアルキル(mercaptopropalkyl)−トリアルコキシシラン化合物の誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する前記成分の主鎖中に存在する、反応性炭素−炭素不飽和の一部が、少なくとも、1以上の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数に対応することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
5〜12の環式もしくはヘテロ環式の構造中、好ましくはC7〜9の環式もしくはヘテロ環式の構造中に存在する、反応性炭素−炭素不飽和の一部が、少なくとも、1以上の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数に対応することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
反応性炭素−炭素不飽和の前記一部が、C5〜12炭素環式構造中、好ましくはC7〜9炭素環式構造中に存在することを特徴とする、請求項20に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
反応性炭素−炭素不飽和の前記一部が、C5〜12二環式構造中、好ましくはC7〜9二環式構造中に存在することを特徴とする、請求項21に記載の樹脂組成物。
【請求項23】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する前記成分中のテレケリック位に存在する、反応性炭素−炭素不飽和の一部が、少なくとも、1以上の反応性炭素−炭素不飽和の平均個数に対応することを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項24】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の少なくとも一部が1以上の分枝数を有することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項25】
前記反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分が、
(i)フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、および/もしくはソルビン酸のエステルもしくはアミド、ならびに/またはそれらとジエン化合物とのディールス・アルダー付加物;ならびに
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、もしくはイタコン酸のエステルもしくはアミドとジエン化合物とのディールス・アルダー付加物;ならびに
(iii)5員環エチレン性ジシクロペンタジエン化合物;
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項26】
前記ディールス・アルダー付加物がブタジエンまたはシクロペンタジエンとの付加物であることを特徴とする、請求項25に記載の樹脂組成物。
【請求項27】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する前記成分に加えて、反応性炭素−炭素不飽和を含有する反応性希釈剤が、反応性炭素−炭素不飽和を含有する前記成分の多くとも25重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項28】
少なくとも、そのような不飽和を含有する成分中の反応性炭素−炭素不飽和の一部に関して、反応性不飽和の官能価が2超である、請求項1〜27のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項29】
前記樹脂組成物が、反応性不飽和の多くとも50mol.%、好ましくは多くとも30mol.%が共重合性である反応性炭素−炭素不飽和含有成分の混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜28のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項30】
前記反応性希釈剤に由来する任意選択的な反応性炭素−炭素不飽和を除いて、前記反応性炭素−炭素不飽和を含有する成分の平均分子量が、少なくとも500、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも2000ダルトン、かつ多くとも15000ダルトンの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜29のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項31】
反応性炭素−炭素不飽和を含有する前記成分と前記反応性希釈剤との合計質量中に存在する炭素−炭素反応性不飽和1個あたりの平均分子量が150ダルトン以上であることを特徴とする、請求項1〜30のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項32】
前記XH成分の平均分子量が少なくとも200、好ましくは少なくとも300ダルトン、かつ多くとも2500ダルトンの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜31のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項33】
前記XH成分中に存在するXH基1個あたりの平均分子量が100以上であることを特徴とする、請求項1〜32のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項34】
前記樹脂組成物が、反応性炭素−炭素不飽和含有成分およびXH基含有成分の全質量を基準にして計算したときに、0.00001〜5.0重量%の量で阻害剤をも含有することを特徴とする、請求項1〜33のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項35】
前記樹脂組成物が、反応性炭素−炭素不飽和含有成分およびXH基含有成分の全質量を基準にして計算したときに、0.00001〜5.0重量%の量で促進剤をも含有することを特徴とする、請求項1〜34のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項36】
前記促進剤が、硬化開始剤としてのパーエステル化合物および/またはパーアンハイドライド化合物と組み合わせて硬化させるべく使用するときのアミンであるか、あるいは硬化開始剤としての任意の他の過酸化物と組み合わせて硬化させるべく使用するときのコバルト、バナジウム、銅、鉄、マンガン、またはチタンのいずれかから選択される単一金属の可溶性塩もしくは錯体またはそれらの混合物であるか、のいずれかであることを特徴とする、請求項35に記載の樹脂組成物。
【請求項37】
前記樹脂組成物が、過酸化物開始剤を用いて、好ましくは液体過酸化物および(固体)ベンゾイルパーオキサイドからなる群から選択される過酸化物を用いて、硬化させることが可能であることを特徴とする、請求項1〜36のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項38】
前記樹脂組成物が、好適な温度において、過酸化物、アゾ化合物、またはベンゾピナコールで処理されることを特徴とする、請求項1〜37のいずれか一項に記載の樹脂組成物のラジカル硬化方法。
【請求項39】
前記硬化が、以下の実施形態:
a.反応性炭素−炭素不飽和含有成分とXH基含有成分と場合により反応性希釈剤とを含む第1の成分;および過酸化物を含む第2の成分;
b.反応性炭素−炭素不飽和含有成分と場合により反応性希釈剤とを含む第1の成分;およびXH基含有成分と過酸化物とを含む第2の成分;
c.XH基含有成分を含む第1の成分;および過酸化物と反応性炭素−炭素不飽和含有成分と場合により反応性希釈剤とを含む第2の成分(ただし、この実施形態cでは、反応性炭素−炭素不飽和含有成分は、単独重合性および/または共重合性の反応性炭素−炭素不飽和を実質的に含まない);
のいずれかに基づく二成分樹脂組成物系から出発して実施されることを特徴とする、請求項38に記載のラジカル硬化の方法。
【請求項40】
前記硬化が、−20〜+200℃の範囲内、好ましくは−20〜+100℃の範囲内、最も好ましくは−10〜+60℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする、請求項38または39のいずれか一項に記載のラジカル硬化方法。
【請求項41】
シクロペンタジエンと少なくとも1個のテレケリック炭素−炭素不飽和を含有する樹脂成分との反応からディールス・アルダー付加物成分を合成する方法であって、
第1の工程で、1分子あたり少なくとも1個のテレケリック炭素−炭素不飽和を有する不飽和ポリエステル樹脂成分に150℃よりも十分に低い温度で該不飽和ポリエステル樹脂出発原料中のテレケリック炭素−炭素不飽和結合1molあたり少なくとも0.5molのジシクロペンタジエンの量でジシクロペンタジエンを添加し;かつ
第2の工程で、第1の工程で得られた混合物を150〜180℃の範囲内の温度に加熱して;該不飽和ポリエステル樹脂出発原料中のテレケリック炭素−炭素不飽和結合の変換に十分な時間をかけて反応させ;かつ
最後に、過剰のジシクロペンタジエンおよびシクロペンタジエンを蒸発により除去する;
ことを特徴とする、方法。
【請求項42】
前記テレケリック炭素−炭素不飽和結合が(メタ)アクリル性結合であることを特徴とする、請求項41に記載の方法。

【公表番号】特表2007−532730(P2007−532730A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507722(P2007−507722)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003724
【国際公開番号】WO2005/100436
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】