説明

ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法

【課題】 長期保存した後も、配合直後と同様なホルムアルデヒドの捕捉機能を有し、硬化成形物からのホルムアルデヒドの放散を抑えることができるラジカル重合性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 熱硬化性樹脂を主成分とするラジカル重合性樹脂組成物中のホルムアルデヒドを除去するにあたり、攪拌翼を備えた加熱装置に前記熱硬化性樹脂とホルムアルデヒド捕捉剤とを含む樹脂溶液を導入し、前記捕捉剤が樹脂に溶解しかつ分解しない温度で加熱すると同時に前記攪拌翼で攪拌することにより、前記捕捉剤でホルムアルデヒドを捕捉せしめ、かつホルムアルデヒドの少なくとも1部を気化せしめて装置外に除去することを特徴とする、ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド放散量が少ないラジカル重合性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、メタクリレート樹脂を代表とするラジカル重合性樹脂は、ラジカル硬化剤により、重合性不飽和二重結合を有する重合性不飽和樹脂と反応性不飽和単量体とを反応させることにより硬化物が得られるが、この硬化の際にホルムアルデヒドが発生することが知られている(例えば非特許文献1参照)。また、ラジカル重合性樹脂組成物、特にスチレンモノマーを反応性不飽和単量体として含む樹脂組成物からは、ラジカル重合反応が開始した後はもちろん、反応が開始される前にもホルムアルデヒドの放散があることが確認されている。
【0003】
ホルムアルデヒドは、シックハウス等環境問題の原因物質とされ、その放散量が平成15年7月より建築基準法により規制されることとなった。
この規制に対して、1)ホルムアルデヒドの放散量がある値より減少するまで硬化後の放置時間を長くする方法、2)高温で後硬化を行い、ホルムアルデヒドを強制的に揮散させ、塗膜または被覆材中に残存するホルムアルデヒドを放出させる方法が有用と考えられる。
また、樹脂中にホルムアルデヒド捕捉剤を配合し、ホルムアルデヒドの放散を抑制する手法も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【非特許文献1】Stanford Research Institute Volume1 Number 7 July,1968; Frank R. Mayo
【特許文献1】特開平11−197502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者が前記の提案による方法を検討した結果、添加したホルムアルデヒド捕捉剤の効果の持続性に問題があることを確認した。すなわち樹脂にホルムアルデヒド捕捉剤を配合した直後は、ホルムアルデヒドの放散が効率良く抑制されるが、時間の経過とともに、ホルムアルデヒド放散量の抑制が低下する傾向がみられることを確認した。
本発明は、ラジカル重合性樹脂組成物に配合したホルムアルデヒド捕捉剤の効果の持続性に着目し、長期保存した後も、配合直後と同様なホルムアルデヒドの捕捉機能を有し、硬化成形物からのホルムアルデヒドの放散を抑えることができるラジカル重合性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究の結果、熱硬化性樹脂にホルムアルデヒド捕捉剤を配合し、加熱撹拌、及び必要によりさらに減圧処理すると、得られる樹脂組成物のホルムアルデヒド捕捉効果が持続することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、熱硬化性樹脂を主成分とするラジカル重合性樹脂組成物中のホルムアルデヒドを除去するにあたり、攪拌翼を備えた加熱装置に前記熱硬化性樹脂と一般式(1)で表される化合物とを含む樹脂溶液を導入し、前記一般式(1)で表される化合物が樹脂に溶解しかつ分解しない温度で加熱すると同時に前記攪拌翼で攪拌することにより、前記一般式(1)で表される化合物でホルムアルデヒドを捕捉せしめ、かつホルムアルデヒドの少なくとも1部を気化せしめて装置外に除去することを特徴とする、ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
−NH−Y (1)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基、アミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基、カルボニル基を表す。Yは水素原子、−NH−R、−CO−NH−R、−COO−Rを表す。R、R及びRはアルキル基を表す。またR1とYとが結合し環状となっていてもよい。]
【発明の効果】
【0006】
本発明で得られるラジカル重合性樹脂組成物は、ホルムアルデヒド捕捉剤の効果の持続性に優れ、長期保存した後も、配合直後と同様なホルムアルデヒドの捕捉機能を有し、硬化成形物からのホルムアルデヒドの放散を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明に使用する加熱装置としては、例えば内部コイル型、ジャケット型等が挙げられるが、いずれの装置を用いても良い。ジャケット型の熱媒としては、サームS800、ダウサム等が挙げられる。
また加熱装置中に備え付けられた撹拌翼としては、従来から公知の1軸攪拌翼、多軸攪
拌翼を用いることができる。例えば例えば、プロペラ翼、アンカー翼、リボン翼、パドル
翼、コーンプレート翼、フルゾーン翼(商品名)(株式会社神鋼環境ソリューション製)、マックスブレンド翼(商品名)(住友重機械工業株式会社製)、タービン翼、ファウドラー翼、湾曲翼、ブルマージン翼、ウオールウエッター翼(商品名)(関西化学機械製作株式会社製)等を例示することができる。また、これら一般に知られる攪拌翼の改良翼でも良い。また、多軸攪拌翼は低速撹拌翼と高速撹拌翼を併せ持ったような攪拌翼が挙げられ、この場合低速攪拌翼としては、パドル翼、アンカー翼、高速攪拌翼としては、タービン翼、ディスパー翼が例示される。これらの撹拌翼のうち、撹拌効率のよいコーンプレート翼、マックスブレンド翼が好ましい。
【0008】
また本発明は、ホルムアルデヒド捕捉効果の持続性を高めるため、さらに加熱装置内を減圧することが好ましい。この場合の減圧装置としては、一般に用いられている減圧装置を使用することができる。例えばダイヤフラム式減圧ポンプ、油回転式減圧ポンプ、油拡散減圧ポンプ、ドライポンプ、ターボ分子ポンプ、水流アスピレーター等が挙げられる。
【0009】
本発明に使用する熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及び(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
かかる不飽和ポリエステル樹脂としては、α,β−不飽和カルボン酸又は飽和カルボン酸を含むα,β−不飽和カルボン酸と多価アルコールとを反応させて得られるものである。使用に際して、従来一般に慣用されている公知の不飽和ポリエステル樹脂をエチレン性不飽和単量体に溶解したものが使用できる。
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、あるいはこれらのジメチルエステル類などが挙げられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、飽和カルボン酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸などが挙げられる。これらの飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0010】
一方、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンモノアリルエーテル、水素化ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシプロボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどのジオール、トリメチロールプロパンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどが挙げられる。これらのアルコールはそれぞれ単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0011】
前記のエチレン性不飽和単量体としては、常温で液状のエチレン性二重結合を有する単量体である。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等、(メタ)アクリル酸エステル類の中から選ばれた1種以上の(メタ)アクリル酸エステル、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸アミド、炭素数1〜4のアルキル基を有するマレイン酸エステル及びフマール酸エステル等が挙げられる。これらのうち、特にスチレンが好ましい。
【0012】
また、前記エチレン性不飽和単量体に、多官能重合性単量体を併用することができる。
かかる多官能重合性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
不飽和ポリエステル樹脂とエチレン性不飽和単量体との混合割合は、重量比で40〜80:60〜20であることが好ましい。
【0013】
本発明に使用するビニルエステル樹脂は、例えばビスフェノールタイプのエポキシ樹脂単独、またはビスフェノールタイプのエポキシ樹脂とノボラックタイプのエポキシ樹脂とを混合したものに、不飽和一塩基酸を付加反応せしめて得られるエポキシ(メタ)アクリレートを意味する。
使用に際して、従来一般に慣用されている公知のエポキシ(メタ)アクリレートを前記のエチレン性不飽和単量体に溶解したものを用いることができる。エポキシ(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体との割合は、重量比で40〜80:60〜20であることが好ましい。
【0014】
ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAまたはビスフェノ―ルFとの反応により得られるグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールAまたはビスフェノールFとの反応により得られるジメチルグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとから得られるアルキレンオキサイド付加型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
ノボラックタイプのエポキシ樹脂としては、フェノールノボラックまたはクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂などがある。
【0015】
不飽和一塩基酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、ソルビン酸あるいはモノ(2−エチルヘキシル)マレート等が挙げられ、これらの不飽和一塩基酸は単独でも、2種以上混合しても用いられる。
【0016】
本発明に使用する(メタ)アクリレート樹脂としては、従来一般に慣用されている公知のポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂等を挙げることができる。使用に際してこれらの樹脂を前記のエチレン性不飽和単量体に溶解して用いることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、一分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル酸エステル基を有する、飽和ないしは不飽和ポリエステル、あるいは該(メタ)アクリル酸エステル基含有(不)飽和ポリエステルであり、例えば、その製造法としては、飽和および不飽和のポリエステル樹脂にグリシジルメタアクリレートを付加せしめることにより得られる。
【0017】
本発明のウレタン(メタ)アクリレートの製造方法の一例を挙げれば、先ずポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを、好ましくは数平均分子量500〜30000、特に好ましくは700〜5000になるように、当量比NCO/OH=2〜1.5で反応させ、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを生成し、次いでそれに水酸基含有アクリル化合物を該プレポリマーのイソシアネート基に対して水酸基がほぼ当量となるように反応する。
別の方法としては、まず水酸基含有アクリル化合物とポリイソシアネートとを反応させ、次いで得られたイソシアネート基含有化合物とポリエーテルポリオールとを反応させて、好ましくは数平均分子量500〜30000、より好ましくは700〜5000のウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0018】
前記のポリオールとしては、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンジオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0019】
前記ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体又は異性体の混合物(以下TDIと略す)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。それらの単独又は2種以上で使用することができる。上記ポリイソシアネートのうちジイソシアネート、特にTDIが好ましく用いられる。
【0020】
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の様な水酸基を2個有するアルコールのモノ(メタ)アクリレート類;α−オレフィンエポキサイドと(メタ)アクリル酸の付加物、カルボン酸グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸の付加物;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の様な3個以上の水酸基を有するアルコールの部分(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0021】
また前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物の一部を、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基含有アリールエーテルや、高級アルコール等で置換しても良い。
水酸基含有アリールエーテル化合物としては、公知慣用のものが使用できるが、うちでも代表的なものには、エチレングリコールモノアリールエーテル、ジエチレングリコールモノアリールエーテル、トリエチレングリコールモノアリールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリールエーテル、プロピレングリコールモノアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノアリールエーテル、トリプロピレングリコールモノアリールエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリールエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリールエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリールエーテル、ヘキシレングリコールモノアリールエーテル、オクチレングリコールモノアリールエーテル、トリメチロールプロパンジアリールエーテル、グリセリンジアリールエーテル、ペンタエリスリトールトリアリールエーテル等の多価アルコール類のアリールエーテル化合物等が挙げられ、水酸基を1個有するアリールエーテル化合物が好ましい。
高級アルコールとしては、公知慣用のものが使用できるが、中でも代表的なものは、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0022】
本発明に使用する一般式(1)で表される化合物は、ホルムアルデヒド捕捉剤として用いるものである。
−NH−Y (1)
一般式(1)中、Rは、プロトン基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基又はアミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基又はカルボニル基を表すものである。Yは水素原子、−NH−R、−CO−NH−R又は−COO−Rを表すものである。但し、R、R及びRはアルキル基でありRとYとが結合し環状となっても良い。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば尿素、モノメチル尿素、モノメチロール尿素、ジメチロール尿素、ジメチル尿素、ジフェニル尿素、ポリメチロール尿素、メチレン尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、アルコシキメチル尿素、チオ尿素等の尿素化合物、ヒドラジド化合物、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらのうち、硬化性、塗膜性能の点でエチレン尿素が好ましい。
前記ホルムアルデヒド捕捉剤を用いることにより、ラジカル硬化性樹脂組成物を硬化させる際、塗膜の硬化阻害等の問題がなく、効果的にホルムアルデヒド放散量を削減することができる。
一般式(1)で表される化合物の樹脂組成物中の含有率は、0.1〜5重量%であり、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0023】
本発明のラジカル重合性樹脂組成物の製造方法を具体例を挙げて説明する。
例えばジャケット型の設備が備え付けられ、コーンプレート型攪拌翼を有する加熱装置
(熱媒はサームS800)内に投入した熱硬化性樹脂に前記ホルムアルデヒド捕捉剤を加
熱装置上部のマンホールより仕込み、加熱攪拌を行う。
このことにより、樹脂組成物にホルムアルデヒド捕捉剤を効率良く溶解させることがで
き、樹脂組成物中に存在するホルムアルデヒドとの反応を促進することができる。
【0024】
加熱攪拌の際の加熱温度としては、前記ホルムアルデヒド捕捉剤が分解しない150℃
以下であることが好ましく、またホルムアルデヒド捕捉剤を樹脂溶液に溶解させるため、
80℃以上であることが好ましい。
加熱時間としては、樹脂組成物の貯蔵安定性がよく、ゲル化の発生が懸念されない点で
1時間〜10時間であることが好ましい。攪拌翼の回転速度は、特に限定されないが、通
常、毎分100回転から120回転である。
加熱攪拌することにより、ホルムアルデヒド捕捉剤により、熱硬化性樹脂の硬化の際発
生するホルムアルデヒドが捕捉され、捕捉されずに気化したホルムアルデヒドの一部が加
熱装置に付属のリフトトレイから系外に排出される。
【0025】
本発明の製造方法は、前記装置内を減圧処理することが好ましい。かかる減圧処理は、前記の加熱装置内での加熱撹拌処理が終了した後に行うことが特に好ましい。かかる減圧処理により、樹脂組成物中に存在するホルムアルデヒドをさらに除去し、ホルムアルデヒド捕捉効果を持続することができる。この場合の減圧の条件としては、−500mmHg以下が好ましく、−600mmHg以下が特に好ましい。その際の樹脂組成物の温度としては80℃以上を維持することが好ましい。また減圧処理の時間としては1時間〜5時間であることが好ましい。この範囲の時間減圧処理を行えば、樹脂組成物の貯蔵安定性を向上し、またゲル化の問題が生じることが少ない。
本発明のラジカル重合性樹脂組成物の用途としては、塗料、化粧板用途、FRPライニング用途、樹脂モルタル用途、FRP成型品用途として有用であり、特に、現場施工型のFRP防水、防食ライニング、床ライニングに有用である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、文中「部」及び「%」とあるのは、特段の断りがない限り重量基準のものである。
【0027】
実施例1、2及び3、比較例1及び2
温度計、アンカー型攪拌翼及び冷却器を具備した5L三口フラスコに、ジエチレングリコール(DEG)3.5モル、テレフタル酸(TPA)1.2モル、アジピン酸(AA)0.5モル、ジブチル錫オキサイド1000ppmを仕込んで窒素気流下215℃で12時間反応を続け、ソリッド酸価が3以下になったところで、150℃まで冷却し、無水フタル酸0.8モル、無水マレイン酸1.0モルを仕込み、205℃まで昇温する。同温度で16時間反応を続ける。サンプリングは60%スチレン溶液で行い、酸価10〜20、ガ−ドナ−粘度K〜Lで冷却する。トルハイドロキノン30ppm、ナフテン酸銅10ppmを添加し、スチレンで希釈し、不揮発分60%の液状の不飽和ポリエステル樹脂を得た。(UP−1)
この不飽和ポリエステル樹脂に純度87%のエチレン尿素(BASF社製)2.3部(樹脂100部に対して)を混合し、撹拌して、(UP−2)を得た。このUP−2を80℃で2時間撹拌して(UP−3)を得た。
次に、油回転式減圧ポンプにより、UP−2の入ったフラスコ内の圧力を−660mmHgまで減圧し、80℃で更に2時間撹拌し、不飽和ポリエステル樹脂(UP−4)を得た。また油回転式減圧ポンプにより、UP−3の入ったフラスコ内の圧力を−660mmHgまで減圧し、80℃で更に2時間撹拌し、不飽和ポリエステル樹脂(UP−5)を得た。
【0028】
実施例4、5及び6、比較例3及び4
温度計、アンカー型攪拌翼及び冷却器を具備した5L三口フラスコで、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量が470なる「エピクロ ン1050」[大日本インキ化学工業(株)製のエポキシ樹脂]の4600g、メタクリル酸860g(エポキシ基/カルボキシル基=1/1モル比)とハイドロキノンの1.36gおよびトリエチルアミン の10.8gを仕込んで120℃まで昇温させ、同温度で10時間反応を続けた処、酸価が3.5で、色数が2なる液状のビニルエステル樹脂が得られた。(VE−1)
このビニルエステル樹脂に純度87%のエチレン尿素(BASF社製)2.3部(樹脂100部に対して)を投入、撹拌し(VE−2)を得た。次にVE−2を80℃で2時間撹拌し(VE−3)を得た。
次に、油回転式減圧ポンプにより、VE−2の入ったフラスコ内を−660mmHgまで減圧し、80℃で更に2時間撹拌し、ビニルエステル樹脂(VE−4)を得た。
また油回転式減圧ポンプにより、VE−3の入ったフラスコ内の圧力を−660mmHgまで減圧し、80℃で更に2時間撹拌し、ビニルエステル樹脂(VE−5)を得た。
【0029】
実施例7、8及び比較例5
温度計センサー、コーンプレート型攪拌翼及び冷却器(リフトトレイ)、ジャケット型加熱装置を具備した6mのステンレス製の釜に、ジエチレングリコール(DEG)590kg、テレフタル酸(TPA)317kg、アジピン酸(AA)116kg、ジブチル錫オキサイド1000ppmを仕込んで窒素気流下215℃で12時間反応を続け、ソリッド酸価が3以下になったところで、150℃まで冷却し、無水フタル酸188kg、無水マレイン酸156kgを仕込み、205℃まで昇温する。同温度で16時間反応を続ける。サンプリングは60%スチレン溶液で行い、酸価10〜20、ガ−ドナ−粘度K〜Lで冷却する。トルハイドロキノン30ppm、ナフテン酸銅10ppmを添加し、スチレンで希釈し、不揮発分60%の液状の不飽和ポリエステル樹脂を得た。(UP−7)
この不飽和ポリエステル樹脂に純度87%のエチレン尿素(BASF社製)2.3部(樹脂100部に対して)を釜上部のマンホールから投入し、80℃で2時間撹拌して(UP−8)を得た。次に、油回転式減圧ポンプにより、UP−8の入った釜の圧力を−660mmHgまで減圧し、80℃で更に2時間撹拌し、不飽和ポリエステル樹脂(UP−9)を得た。
【0030】
<基材に塗布した後のホルムアルデヒド放散量の測定方法>
前記実施例及び比較例で得られた不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂(UP−1〜UP−5、VE1〜VE5)100部に6%ナフテン酸コバルト0.5部、55%メチルエチルケトンパーオキサイド1.0部(VE1〜VE5の場合2.0部)を配合したラジカル重合性樹脂組成物を作製し、これをJISH4000に規定するアルミ板(15cm角)に約11g塗布し、常温で7日間養生した後、JISK5601−4−1(デシケータ法)により、放散時間24時間で、ホルムアルデヒド放散量を測定した。
上記の方法によるホルムアルデヒド放散量の測定試験は、樹脂製造直後、1ヶ月後、3ヶ月後に行った。
【0031】
(ラジカル重合性樹脂組成物からのホルムアルデヒド放散量の測定方法)
<試験紙光電光度法>
測定機器:ホルムアルデヒド検知器RP−30型(理研計器(株)製)
測定方法:5Lの金属容器内に前記実施例で得られた液状樹脂(UP−1〜UP−5、V
E1〜VE5)を試料として20gを採取し、密閉後、ただちに金属容器内の空気をホル
ムアルデヒド検知器により30分間吸引採取した。
吸引された空気はホルムアルデヒド濃度定量用の試験紙付タブに吹き付けられ、その変
色の程度を光電光度法により、ガス濃度に換算、定量した。
上記の方法によるホルムアルデヒド放散量の測定試験は、樹脂製造直後、1ヶ月後、3
ヶ月後に行った。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を主成分とするラジカル重合性樹脂組成物中のホルムアルデヒドを除去するにあたり、攪拌翼を備えた加熱装置に前記熱硬化性樹脂と一般式(1)で表される化合物とを含む樹脂溶液を導入し、前記一般式(1)で表される化合物が前記樹脂に溶解しかつ分解しない温度で加熱すると同時に前記攪拌翼で攪拌することにより、前記一般式(1)で表される化合物でホルムアルデヒドを捕捉せしめ、かつホルムアルデヒドの少なくとも1部を気化せしめて装置外に除去することを特徴とする、ラジカル重合性樹脂組成物の製造方法。
−NH−Y (1)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基、アミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基又はカルボニル基を表す。Yは水素原子、−NH−R、−CO−NH−R又は−COO−Rを表す。R、R及びRはアルキル基を表す。またRとYとが結合し環状となっていてもよい。]
【請求項2】
前記装置内を減圧する請求項1記載のラジカル重合性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、エチレン尿素である請求項1又は2記載のラジカル重合性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物の樹脂に溶解しかつ分解しない温度が、80〜150℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のラジカル重合性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記装置内を減圧するときの圧力が、−500mmHg以下である請求項2〜4のいずれか1項に記載のラジカル重合性樹脂組成物の製造方法。





【公開番号】特開2006−213843(P2006−213843A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28885(P2005−28885)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】