説明

ラジコンボート

【技術課題】 スクリューやラダーに水生生物や浮遊物が絡み付くのを防止すると共に岩礁等に衝突して破損したりするのを防止し、更に方向転換のキレが良く、危険等を素早く回避できるラジコンボートを提供する。
【解決手段】 ラジコンボート1において、船底3の中央部に船尾において開放したスクリュー8及びラダー9全体を収容する凹溝流路5を形成し、前記ラダー9は、その回転支軸10に対して船首方向に向けて微調整自在に取り付け、前記凹溝流路5の外側には網状のガード11を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上から水中又は水底あるいは水上の物体を観察するための機材等を搭載する無線操縦ボートであって、所謂ラジコンボートと称されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
水上を無線操縦で航行するラジコンボートの場合、そのスクリューと方向舵(ラダー)は船底面から突出し、露出した状態となっているため、藻等の水生植物や岩礁あるいはロープ等の浮遊物に接触したり、植物や浮遊物が絡み付いて航行不能、あるいは破損したりすることがある。
【0003】
このような場合に、岸まで帰還できる場合は修理して再び使用できるが、帰還できない場合にはそのまま放置せざるを得ない場合がある。このため、大型ボートの場合にはボート自体が高価なことと、このボートに搭載したカメラとか探査用の各種機材の回収もできなくなるため、損害が多額になる。
【0004】
勿論、有人のボートで回収に向うことができる場所の場合は回収することもできるが、危険な場所では回収が困難となる。
【0005】
そこで、スクリューや方向舵を水生植物等から保護する目的で、特開2003−199466号公報には、ボート本体の船底部にスクリューと方向舵を下方から覆うスキー状板のものを取り付けることにより、スクリューと方向舵を守る提案が紹介されている。
【0006】
しかし、このスキー状板は、船底面から突出しているため、板自体が岩礁などに衝突したりすると共に何よりの欠点は、スキー状板は船底において船尾方向に向けて取り付けられているため、スクリューが回転したときの推進力はスキー状板内においてのみ水に作用し、ボートに十分な推進力が伝わらないと共に方向舵もこのスキー状板内において作用することから、舵の利き方が緩慢となり、使い勝手が悪いという欠点がある。
【0007】
また、船底においてスキー状板の両脇は大きく開いていることから、ここから水生植物等がスクリューや方向舵に絡み付く欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、叙上の如き欠点の解消を目的として提供されるものであって、スクリューや方向舵(以下「ラダー」という。)に水生植物等が絡み付いて航行不能になったり、岩礁に衝突して破損したりしないと共にスクリューの推進力とラダーの方向転換力が効果的にボートに伝わるように工夫したラジコンボートを提供することを発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ラジコンボートにおいて、船底の中央部に船尾側を開放した凹溝流路を形成すると共にこの凹溝流路内にはスクリューとこの後にラダーを組み付け、前記ラダーは、その回転支軸に対して船首方向に向けて取り付けられていると共に前記凹溝流路の外側には、船底面から突出しないように網状のガードが取り付けられていること、を特徴とするものである。
【0010】
更に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のラジコンボートにおいて、前記凹溝流路には、船尾方向に向って徐々に深くなるようにテーパーがつけられていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によると、船底に接触する水は、テーパーに沿ってスムーズに流れることから、推進力を阻害せず、スクリュー及びラダーの機能を存分に発揮させることができる。
【0012】
更に、請求項3に記載の発明は、前記ラダーは、その回転支軸において回転角度が微調整できるように取り付けられていること、を特徴とするものである。
【0013】
この発明によると、船体の大きさや航行条件に応じて舵の利き方を微調整することができる。
【0014】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のラジコンボートにおいて、前記凹溝流路の船尾開口部にも網状のガードが取り付けられていること、を特徴とするものである。
【0015】
この発明によると、船尾方向からの障害を回避することができる。
【0016】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1又は4に記載のラジコンボートにおいて、前記網状のガードは、防鎖性を有する素材としての金属又は樹脂製の線材で形成されていること、を特徴とするものである。
この発明によると、網状のガードの耐久性を向上させることができる。
【0017】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のラジコンボートにおいて、前記ラジコンボートには、遠隔操作機能付の金属探知機又はカメラ又は無線通信機又はGPS又は照明用ライト等の探査機器が単独で又はこれら任意の組み合せで搭載されていること、を特徴とするものである。
【0018】
この発明によると、ラジコンボートにより、水中あるいは水底の観察とか、金属類の発見を信号あるいは映像で行うことが出来ると共にGPSによりボートを任意の場所に誘導したり、あるいは観察地点を特定したりすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、次の効果を奏する。
【0020】
1.スクリュー及びラダーを凹溝流路内に取り付けると共にこの流路の外を船底と同一面となる網状のガードで保護したことにより、スクリューやラダーに水生植物が絡み付いたり、岩礁に衝突して損傷したりする心配がない。
【0021】
2.水は凹溝流路内を船尾方向に流れるため、スクリューでの推進力が有効に発生し、かつ方向転換の応答性も良くなる。
【0022】
3.ラダーは、その回転支軸に対して船首方向(前向き)に取り付けられているため、舵を切ったときに水の抵抗がラダーに有効に作用し、舵の利きが良くなり、方向転換や危険の回避を素早く行うことができる。
【0023】
4.凹溝流路を覆う網状のガードは、船底面から突出しないように取り付けられているため、水の抵抗とはならないと共に凹溝流路内にスムーズに水流をつくることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実施したラジコンボートの側面図。
【図2】(A)船底の説明図,(B)はA−A’線断面図。
【図3】船尾の説明図。
【図4】凹溝流路内のスクリューとラダーの説明図。
【図5】凹溝流路内のラダーとスクリューを船尾方向から見た説明図。
【図6】(A)〜(C) ラダー操作による方向転換の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記した本発明について、図1〜図6を参照しながらその実施例を詳細に説明する。
【0026】
符号の1は、ラジコンボート全体を示し、このラジコンボート1は、無線操縦により航行を制御できる構成であって、本実施例において船体の大きさは長さが160cm、幅が80cm、重量はバッテリーで駆動する推進モーター及び通信機器類を含めて36.5kgである。
【0027】
2は、船上に搭載された無線通信機器であって、陸上からの各種信号の受信と、ラジコンボート1に搭載された機器(本実施例では金属探知機13)で探査されたデータ信号等を陸上の機器に向けて送信することができる(請求項6に対応)。
【0028】
3は、船底であって、この船底3の中央部には、ほぼその中央から船尾4方向に向けて徐々に深くなるようにテーパー5a付の凹溝流路5が形成されていて、この凹溝流路5内には、モーター6により回転伝達手段7を介して駆動されるスクリュー8と、このスクリュー8の後方であって、船尾4に近い位置にラダー9が組み付けられている。
【0029】
前記ラダー9は、この回転支持軸10に対して船首1a方向に向けて取り付けられていて、方向の転換を図6を基に説明すると、(A)に示すようにラダー9が真直ぐ船首方向に向けられているときは、ラジコンボート1は直進し、右方向にラダー9が向けられると、凹溝流路5内を流れる水流Pがラダー9に作用して船首1aを左方向に向け、ラダー9が左方向に向けられると、(C)に示すように船首1aを右方向に向けて進行することができる。
【0030】
このように、ラダー9の向きを船首1a方向に向けると、従来のラダーのように船尾4方向に向けた場合に比較して、方向転換の応答性、キレが良くなり、狭い場所での進行あるいは危険回避行動を素早く行うことができる。
【0031】
なお、凹溝流路5には、上記実施例ではテーパー5aがつけてあるが(請求項2に対応)、このテーパー5aは、水の流れをスムーズに行う効果があり、水の抵抗を減じる意味ではつけた方が好ましいが、必須ではない。
【0032】
11は、船底3面から突出しないようにして凹溝流路5を覆うステンレス線材(直径2mm)で形成された網状のガードであって、凹溝流路5内のスクリュー8、ラダー9に水生植物、浮遊物等が絡み付いたり、岩礁などに衝突して破損したりするのを防止する。
【0033】
なお、この網状のガード11は、船底3面側だけでなく、船尾4において凹溝流路5の出口開口部5b側にも取り付けても良い(請求項4)。
また、ガード11は線材以外の断面形状のもので形成しても良い。
【0034】
また、網状のガード11は、スクリュー8、ラダー9の前まで取り付け、スクリュー8とラダー9を露出させても目的は達成できる。
【0035】
また、網状のガード11は、アルミあるいは樹脂製の線材で形成しても良く、防鎖性を有し、ある程度の耐久性を有する限り、その材質は実施例のステンレス、アルミ、樹脂以外の材質のものでも利用可能である。
【0036】
また、網状のガード11は、船底3に着脱自在に取り付けるようにしておくことにより、メンテナンスとか、網状のガード11が破損したような場合に修理や交換ができて便利となる。
【0037】
図2(A)において、12は船底3の中央部に取り付けられた(B)に示すような断面傘状の船底ガードである。図1において、14は金属探知13の制御装置、15はケーブルである。
【符号の説明】
【0038】
1 ラジコンボート
5 凹溝流路
8 スクリュー
9 ラダー
11 ガード溝
13 金属探知機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジコンボートにおいて、船底の中央部に船尾側を開放した凹溝流路を形成すると共にこの凹溝流路内にはスクリューとこの後にラダーを組み付け、前記ラダーは、その回転支軸に対して船首方向に向けて取り付けられていると共に前記凹溝流路の外側には、船底面から突出しないように網状のガードが取り付けられていること、を特徴とするラジコンボート。
【請求項2】
前記凹溝流路には、船尾方向に向って徐々に深くなるようにテーパーがつけられていること、を特徴とする請求項1に記載のラジコンボート。
【請求項3】
前記ラダーは、その回転支軸において回転角度が微調整できるように取り付けられていること、を特徴とする請求項1に記載のラジコンボート。
【請求項4】
前記凹溝流路の船尾開口部にも網状のガードが取り付けられていること、を特徴とする請求項1に記載のラジコンボート。
【請求項5】
前記網状のガードは、防鎖性を有する素材としての金属又は樹脂製の線材で形成されていること、を特徴とする請求項1又は4に記載のラジコンボート。
【請求項6】
前記ラジコンボートには、遠隔操作機能付の金属探知機又はカメラ又は無線通信機又はGPS又は照明用ライト等の探査機器が単独で又はこれら任意の組み合せで搭載されていること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のラジコンボート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91467(P2013−91467A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235948(P2011−235948)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(510288910)株式会社エスアイ (3)