説明

ラジコン受信装置

【課題】電池のフェールセーフ電圧の設定手段を備えた受信装置において、フェールセーフ電圧の設定及び設定変更を容易に行うこと。
【解決手段】送信装置TのディスプレイDPにフェールセーフ電圧のメニューを表示し、そのメニューから受信装置Rに搭載する電池BA2のフェールセーフ電圧を選択して送信スイッチSW1をオンにすると、フェールセーフ電圧は、ダイレクト・サーボ・コントローラケーブルCAを介して受信装置Rへ供給される。フェールセーフ電圧の取込み用のスイッチSW2をオンにすると、フェールセーフ電圧は、メモリMEに記憶される。即ちフェールセーフ電圧がメモリMEに設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、模型飛行機、模型自動車、クレーン等の産業用装置の遠隔操縦に用いるラジコン受信装置に関し、特にラジコン受信装置のフェールセーフ電圧の設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ラジコン受信装置は、搭載している電源用電池の出力電圧が一定値以下になると、遠隔操縦が不能になり、危険な状態になるため、その出力電圧が基準電圧(いわゆるフェールセーフ電圧)以下になると、サーボモータをフェールセーフ状態(フェールセーフモード)に切り替えるように構成されている(特許文献1参照)。
図2により従来のラジコン受信装置のフェールセーフ電圧の設定装置について説明する。
図2(a)は、ラジコン受信装置のブロック図を、図2(b)は、電池の放電電圧特性を示す。
まず図2(a)において、ラジコン受信装置は、電源用の電池11を搭載しており、電池11から高周波回路12、マイクロコンピュータ13、電圧検出回路15等の受信部の回路、及びサーボモータ14へ電力を供給する。ラジコン受信装置は、アンテナ16によって送信装置(図示せず)の送信電波を受信し、高周波回路12により増幅・復調してマイクロコンピュータ13へ供給する。マイクロコンピュータ13は、送信装置から送られて来た信号に基づいて各種の操縦信号を発生してサーボモータ14へ供給する。
【0003】
電圧検出回路15は、電池11の出力電圧を監視する回路で、所定のフェールセーフ電圧が設定されている。電圧検出回路15は、電池11の出力電圧がフェールセーフ電圧以下になると、フェールセーフ電圧検出信号をマイクロコンピュータ13へ供給する。マイクロコンピュータ13は、フェールセーフ電圧検出信号に基づいてフェールセーフ切換信号を発生してサーボモータ14へ供給し、サーボモータ14をフェールセーフモードに切り替える。フェールセーフモードに切り替わると、被操縦対象が例えば、模型飛行機の場合には水平旋回飛行に変わるとか、模型自動車の場合にはブレーキをかける等の安全状態へ移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−239796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2(a)の受信装置は、電池11に使用できる電池が1種類のみの場合、フェールセーフ電圧は電圧検出回路15に一度設定すれば途中で変える必要がない。しかし使用できる電池がNi−Cd電池、Ni−MH電池、Li−Po電池等多種類ある場合、電池の放電電圧特性は電池の種類により異なるからフェールセーフ電圧は、ラジコン受信装置に搭載する電池の種類に対応して設定を変更する必要がある。
【0006】
ここで図2(b)によりNi−Cd電池とLi−Po電池を例に、電池の放電電圧特性とフェールセーフ電圧の関係について説明する。
図2(b)において、縦軸は、電池の出力電圧V、横軸は放電時間tを示し、Vncは、Ni−Cd電池の放電電圧特性を、Vliは、Li−Po電池の放電電圧特性を示す。
ラジコン受信装置は、電池の出力電圧が動作下限電圧Vth以下になると操縦不能になるため、フェールセーフ電圧は、動作下限電圧Vthよりも高い電圧に設定してある。例えばNi−Cd電池は、フェールセーフ電圧をVnfsに設定し、Li−Po電池は、Vlfsに設定してある。フェールセーフ電圧Vnfs,Vlfsは、電池の出力電圧がフェールセーフ電圧から動作下限電圧Vthに低下するまでの時間(本願はフェールセーフ時間と呼ぶ)Tnfs,Tlfsを勘案して設定する。またフェールセーフ時間Tnfs,Tlfsは、サーボモータがフェールセーフモードに切り替わった後、操縦者が安全に対処できる時間を勘案して決定する。
【0007】
フェールセーフ時間Tnfs,Tlfsが同じ場合(Tnfs=Tlfsの場合)、フェールセーフ電圧Vnfs,Vlfsは、Vnfs>Vlfsとなる。即ちフェールセーフ時間が同じ場合、フェールセーフ電圧は、電池の種類によって相違する。したがって図1(a)の電圧検出回路15に設定するフェールセーフ電圧は、ラジコン受信装置に使用する電池の種類に対応して変更する必要がある。
従来の電圧検出回路15は、フェールセーフ電圧の設定を変更するとき道具を要する等設定変更が面倒であり、特に操縦現場における設定変更は大変であった。
本願発明は、ラジコン受信装置におけるフェールセーフ電圧の設定及び設定変更を容易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載のラジコン受信装置は、ラジコン送信装置において選択された電池のフェールセーフ電圧を受信して記憶するメモリを備えていることを特徴とする。
請求項2に記載のラジコン受信装置は、請求項1に記載のラジコン受信装置において、フェールセーフ電圧は、送信装置のディスプレイに表示されるフェールセーフ電圧のメニューから選択することを特徴とする。
請求項3に記載のラジコン受信装置は、請求項1に記載のラジコン受信装置において、フェールセーフ電圧は、ラジコン送信装置のフェールセーフ電圧源の出力電圧から選択することを特徴とする。
請求項4に記載のラジコン受信装置は、請求項1、請求項2叉は請求項3に記載のラジコン受信装置において、フェールセーフ電圧をメモリに取込むスイッチを備えていることを特徴とする。
請求項5に記載のラジコン受信装置は、請求項1、請求項2叉は請求項3に記載のラジコン受信装置において、ラジコン受信装置の電源をオンにしてから所定時間所定レベルの電圧が受信されたときその電圧をフェールセーフ電圧とみなしてメモリに取込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、送信装置においてフェールセーフ電圧を選択して受信装置へ供給するのみで、受信装置にフェールセーフ電圧を設定することができ、またフェールセーフ電圧の設定変更を行うことができる。したがって本願発明は、フェールセーフ電圧の設定及び設定変更の作業が簡単になり、操縦現場においても道具を使うことなくフェールセーフ電圧の設定変更を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本願発明の実施例に係るラジコン用の送信装置と受信装置のブロック図である。
【図2】図2は、従来のラジコン受信装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1により本願発明の実施例に係るラジコン送信装置とラジコン受信装置を説明する。
【実施例】
【0012】
図1において、送信装置Tは、マイクロコンピュータM1、電池BA1、電源回路POW1、フェールセーフ電圧設定時に使用するスイッチSW1とディスプレイDP、アンテナAT1、高周波回路RF1、ダイレクト・サーボ・コントローラ(DSC)ケーブルCAを接続するDSCコネクタCON1、被操縦対象の操縦時に使用するスティックST、デジタル・アナログ変換器DACを備えている。そして受信装置Rは、マイクロコンピュータM2、電源回路POW2、フェールセーフ電圧設定時に使用するスイッチSW2、アンテナAT2、高周波回路RRF2、DSCケーブルCAを接続するDSCコネクタCON2、フェールセーフ電圧を記憶するメモリME、電池BA2の出力電圧を検出する電圧検出回路DE、アナログ・デジタル変換器ADCを備えている。また受信装置Rには、電池BA2が接続され、マイクロコンピュータM2には、サーボモータSEMが接続されている。
なおDSCケーブル及びDSCコネクタは、一般に使用されているケーブル及びコネクタであってもよい。
【0013】
ディスプレイDPには、各種電池のフェールセーフ電圧のメニューが表示される。フェールセーフ電圧メニューは、例えば受信装置Rの電池BA2に使用できる電池の種類とフェールセーフ電圧の一覧表からなる。なおディスプレイDPは、フェールセーフ電圧メニューの外、他の諸設定情報や被操縦対象の操縦情報等も表示することができる。
DSCケーブルCAは、フェールセーフ電圧の設定等の諸設定に使用するケーブルで、DSCコネクタCON1,CON2に接続して使用する。DSCケーブルCAは、その設定後DSCコネクタCON1,CON2から外す。メモリMEは、送信装置Tから送られて来たフェールセーフ電圧を記憶するメモリである。
電源回路POW1,POW2は、送信装置Tの諸回路、受信装置Rの諸回路とサーボモータSEMへ電力を供給する電源回路で、電池BA1,BA2の出力電圧に基づいてそれらの回路等の駆動に必要な電圧を発生する。電圧検出回路DEは、電池BA2の出力電圧を検出する回路で、その検出した電圧をマイクロコンピュータM2へ供給する。
【0014】
なおスティックSTは、従来のものと同様に被操縦対象の操縦信号を発生する。操縦信号は、マイクロコンピュータM1、高周波回路RF1、アンテナAT1、アンテナAT2、高周波回路RF2を介してマイクロコンピュータM2へ供給される。マイクロコンピュータM2は、操縦信号に基づいてサーボモータSEMを制御する信号を発生する。
【0015】
受信装置Rのフェールセーフ電圧の設定及び設定変更は、次の手順で行う。
送信装置Tと受信装置Rを手近に準備し、DSCケーブルCAをDSCコネクタCON1,CON2に接続して送信装置T、受信装置Rの電源をオンにする。ディスプレイDPに表示されるフェールセーフ電圧メニューから、受信装置Rに搭載する電池BA2に対応するフェールセーフ電圧を選択して、送信用のスイッチSW1をオンにする。マイクロコンピュータM1は、選択されたフェールセーフ電圧に相当するデジタル電圧をデジタル・アナログ変換器DACへ供給してアナログ電圧に変換し、DSCケーブルCAを介して受信装置Rへ供給する。受信装置Rのアナログ・デジタル変換器ADCは、アナログ電圧をデジタル電圧に変換してマイクロコンピュータM2へ供給する。フェールセーフ電圧の取込み用(設定用)のスイッチSW2をオンにすると、デジタル電圧は、メモリMEに記憶される。即ちメモリMEにフェールセーフ電圧が設定される。フェールセーフ電圧の設定等が完了すると、DSCケーブルCAは、DSCコネクタCON1,CON2から外す。
【0016】
メモリMEにフェールセーフ電圧が設定されると、マイクロコンピュータM2は、電池BA2の電圧検出回路DEの検出電圧と比較して、その検出電圧がフェールセーフ電圧以下になると、サーボモータSEMへフェールセーフ信号を供給して、サーボモータSEMをフェールセーフ状態(フェールセーフモード)に切り替える。その際、受信装置Rに発音器や発光器を設置して、操縦者にフェールセーフ状態に切り替わったことを報知するように構成することもできる。
【0017】
次に上記実施例における各部の変形例について説明する。
上記実施例は、送信装置Tに送信用のスイッチSW1を設けてあるが、スイッチSW1の代わりにディスプレイDPに送信ボタンを表示し、その送信ボタンを選択するように構成してもよい。
上記実施例は、送信装置Tにおいてフェールセーフ電圧のデジタル電圧をアナログ電圧に変換して受信装置Rへ供給し、受信装置Rにおいてデジタル電圧をアナログ電圧に変換しているが、送信装置Tにおいてデジタル電圧をアナログ電圧に変換することなく受信装置Rへ供給することもできる。この場合には、送信装置Tのデジタル・アナログ変換器DAC、受信装置Rのアナログ・デジタル変換器ADCを省略することができる。
【0018】
上記実施例は、フェールセーフ信号によりサーボモータをフェールセーフ状態へ切り替える例について説明したが、フェールセーフ信号により制御する対象は、サーボモータに限らず、模型自動車、模型飛行機等の駆動モータ、エンジン等の駆動装置であってもよい。
上記実施例は、ディスプレイDPにフェールセーフ電圧メニューを表示し、ディスプレイDP上でフェールセーフ電圧を選択しているが、ディスプレイDPを使わずに、複数のフェールセーフ電圧を発生するフェールセーフ電圧源を設けて、フェールセーフ電圧源の出力から所定のフェールセーフ電圧を選択して受信装置Rへ供給し、受信装置Rは、そのフェールセーフ電圧をデジタル電圧に変換してメモリMEに記憶するように構成してもよい。フェールセーフ電圧源には、例えば電源電圧を分圧する分圧回路を用いて構成することができる。
【0019】
上記実施例は、フェールセーフ電圧の取込み用スイッチSW2を受信装置Rに設けてあるが、スイッチSW2を用いずに、例えば、受信装置Rの電源をオンにした時から所定時間、所定レベルの電圧が継続して受信された時は、フェールセーフ電圧とみなしてメモリMEに記憶するように構成することもできる。
【0020】
本実施例は、送信装置Tにおいてフェールセーフ電圧を選択して受信装置Rへ供給するのみで、受信装置Rにフェールセーフ電圧を設定することができ、またフェールセーフ電圧の設定変更を行うことができるから、フェールセーフ電圧の設定及び設定変更の作業が簡単になり、操縦現場においても道具を使うことなくフェールセーフ電圧の設定変更を簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
ADC アナログ・デジタル変換器
BA1,BA2 電池
CA ダイレクト・サーボ・コントローラ(DSC)ケーブル
CON1,CON2 DSCコネクタ
DAC デジタル・アナログ変換器
DE 電圧検出回路
DP ディスプレイ
M1,M2 マイクロコンピュータ
ME メモリ
POW1,POW2 電源回路
R 受信装置
SEM サーボモータ
SW1,SW2 スイッチ
T 送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジコン送信装置において選択された電池のフェールセーフ電圧を受信して記憶するメモリを備えていることを特徴とするラジコン受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラジコン受信装置において、フェールセーフ電圧は、送信装置のディスプレイに表示されるフェールセーフ電圧のメニューから選択することを特徴とするラジコン受信装置。
【請求項3】
請求項1に記載のラジコン受信装置において、フェールセーフ電圧は、ラジコン送信装置のフェールセーフ電圧源の出力電圧から選択することを特徴とするラジコン受信装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2叉は請求項3に記載のラジコン受信装置において、フェールセーフ電圧をメモリに取込むスイッチを備えていることを特徴とするラジコン受信装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2叉は請求項3に記載のラジコン受信装置において、ラジコン受信装置の電源をオンにしてから所定時間所定レベルの電圧が受信されたときその電圧をフェールセーフ電圧とみなしてメモリに取込むことを特徴とするラジコン受信装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78707(P2011−78707A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235773(P2009−235773)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【Fターム(参考)】