ラダーフィルタ、分波器及びモジュール
【課題】広帯域において高い抑圧を得ることが可能なラダーフィルタ、分波器、及びモジュールを提供すること。
【解決手段】本発明は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に直列接続された直列共振子S11〜Sxと、直列共振子S11〜Sxと並列接続された並列共振子P1〜P3と、直列共振子Sxと並列接続されたインダクタLsと、を具備し、直列共振子SxとインダクタLsとは、直列共振子S11〜Sxと並列共振子P1〜P3とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極B1を生成し、かつ通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極B2を生成し、第1の減衰極B1は、並列共振子P1〜P3のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上であって、通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置するラダーフィルタ、分波器及びモジュールである。
【解決手段】本発明は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に直列接続された直列共振子S11〜Sxと、直列共振子S11〜Sxと並列接続された並列共振子P1〜P3と、直列共振子Sxと並列接続されたインダクタLsと、を具備し、直列共振子SxとインダクタLsとは、直列共振子S11〜Sxと並列共振子P1〜P3とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極B1を生成し、かつ通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極B2を生成し、第1の減衰極B1は、並列共振子P1〜P3のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上であって、通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置するラダーフィルタ、分波器及びモジュールである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラダーフィルタ、分波器及びモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴い、携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。このため高周波用フィルタへの需要が拡大しており、特に小型で特性が急峻であるフィルタが要求されている。特に、新たな通信方式及び使用に対応するため、フィルタには減衰極の生成、及び広い帯域での抑圧が要求されている。このようなフィルタとして、例えば複数の弾性波共振子を接続したラダーフィルタが用いられることがある。また、複数のフィルタを備える分波器、又はモジュール等においては、例えば送信フィルタと受信フィルタ間で、互いの通過帯域において高い抑圧を得ることが求められる。フィルタの特性を調整するため、インダクタを備えるフィルタが提案されている。
【0003】
特許文献1には、直列共振子に並列にインダクタを接続し、通過帯域より高周波数側に減衰極を生成する発明が記載されている。特許文献2には、共振子にインダクタとキャパシタとを接続し、通過帯域外に減衰極を生成する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−296167号公報
【特許文献2】特開2010−11300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、抑圧の劣化する周波数帯域が生じることがある。本発明は上記課題に鑑み、広帯域において高い抑圧を得ることが可能なラダーフィルタ、分波器、及びモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続されたインダクタと、を具備し、前記少なくとも1つの直列共振子と前記インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上であって、前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置するラダーフィルタである。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【0007】
上記構成において、前記第1の減衰極は、前記最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下の周波数に位置する構成とすることができる。この構成によれば、通過帯域における損失が増大することは抑制される。
【0008】
本発明は、入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続された第1インダクタと、少なくとも1つの前記並列共振子とグランド端子との間に直列接続された第2インダクタと、を具備し、前記少なくとも1つの直列共振子と前記第1インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、前記少なくとも1つの並列共振子と前記第2インダクタとは、前記通過帯域よりも低い周波数に第3の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域より高い周波数に第4の減衰極を生成し、前記第1の減衰極は、前記第3の減衰極が位置する周波数以上、かつ前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置するラダーフィルタである。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下に位置する構成とすることができる。この構成によれば、通過帯域における損失が増大することは抑制される。
【0010】
上記構成において、前記第2インダクタの一端は、全ての前記並列共振子と接続され、前記第2インダクタの他端は接地されている構成とすることができる。この構成によれば、高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0011】
上記構成において、少なくとも1つの前記並列共振子と、前記第2インダクタの一端との間に直列接続された第3インダクタを具備する構成とすることができる。この構成によれば、高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0012】
本発明は、上記のラダーフィルタを少なくとも1つ備える分波器である。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【0013】
上記構成において、共通端子と第1の端子との間に接続された第1のフィルタと、前記共通端子と第2の端子との間に接続され、前記第1のフィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2のフィルタと、を具備し、前記第1のフィルタが前記ラダーフィルタである構成とすることができる。この構成によれば、効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0014】
本発明は、上記のラダーフィルタを少なくとも1つ備えるるモジュールである。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることが可能なラダーフィルタ、分波器、及びモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【図2】図2(a)は1段ラダーフィルタの構成図であり、図2(b)は1段ラダーフィルタの通過特性を示す図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、多段ラダーフィルタの構成図である。
【図4】図4(a)は、共振子を例示する図であり、図4(b)は、インダクタが並列接続された共振子を例示する図である。図4(c)は、図4(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図4(d)は、図4(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。
【図5】図5(a)は、共振子を例示する図であり、図5(b)は、インダクタが直列接続された共振子を例示する図である。図5(c)は、図5(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図5(d)は、図5(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。
【図6】図6(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図6(b)は、フィルタF12を例示する回路図である。
【図7】図7(a)は、インダクタを並列接続した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。図7(b)は、フィルタF12の減衰特性を例示する図である。
【図8】図8は、分波器が備える2つのフィルタの減衰特性を例示する図である。
【図9】図9(a)はフィルタF11を例示する回路図である。図9(b)は、フィルタF13を例示する回路図である。
【図10】図10(a)は、直列共振子Sx1及びSx2並びにインダクタL1のリアクタンス特性を例示する概念図である。図10(b)は、フィルタF13の減衰特性を例示する図である。
【図11】図11(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図11(b)は、フィルタF14を例示する回路図である。
【図12】図12(a)は、共振子とインダクタとのリアクタンス特性を例示する概念図である。図12(b)は、フィルタF14の減衰特性を例示する図である。
【図13】図13(a)は、フィルタF11aを例示する回路図である。図13(b)は、フィルタF15を例示する回路図である。
【図14】図14(a)は、共振子とインダクタとのリアクタンス特性を例示する概念図である。図14(b)は、フィルタF15の減衰特性を例示する図である。
【図15】図15(a)は、フィルタF16aを例示する回路図である。図15(b)は、フィルタF16を例示する回路図である。
【図16】図16(a)は、フィルタF16の減衰特性を例示する図である。図16(b)は、図16(a)の通過帯域の拡大図である。
【図17】図17は、実施例1に係る分波器を例示するブロック図である。
【図18】図18は、実施例1に係る分波器の回路構成を例示する構成図である。
【図19】図19(a)は、実施例1に係る分波器チップを例示する平面図であり、図19(b)は、実施例1に係る分波器チップを例示する断面図である。図19(c)は、実施例1に係る分波器を例示する平面図である。
【図20】図20は、実施例1に係る分波器が備える送信フィルタチップを例示する透視図である。
【図21】図21(a)及び図21(b)は、パッケージ基板を例示する平面図である。
【図22】図22(a)及び図22(b)は、パッケージ基板を例示する平面図である。
【図23】図23(a)は、比較例1に係るフィルタを例示する回路図であり、図23(b)は、比較例2に係る共振回路を例示する回路図である。
【図24】図24(a)は、実施例1に係るラダーフィルタの減衰特性を例示する図である。図24(b)は、図24(a)の通過帯域の拡大図である。
【図25】図25は、実施例2に係る分波器を例示する回路図である。
【図26】図26は、実施例3に係る分波器を例示する回路図である。
【図27】図27は、実施例4に係るRFモジュールを例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、ラダーフィルタについて説明する。図1(a)は直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【0018】
図1(a)に示すように、直列共振子は、共振子S21を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子In、他方を出力端子Outとしたものである。図1(b)に示すように、並列共振子は、共振子P21を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Inと出力端子Outの短絡線路に接続したものである。
【0019】
図1(c)の横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振子の通過特性は実線、並列共振子の通過特性は破線で示す。図1(c)に示すように、直列共振子の通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有する。共振点frsで通過量は最大となり、反共振点fasで通過量は最小となる。一方、並列共振子の通過特性は、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有する。共振点frpで通過量は最小となり、反共振点fapで通過量は最大となる。
【0020】
図2(a)は1段ラダーフィルタの構成図であり、図2(b)は1段ラダーフィルタの通過特性を示す図である。
【0021】
図2(a)に示すように、直列共振子S22が直列共振子として入力端子Inと出力端子Outに直列に接続され、並列共振子P22が並列共振子として出力端子Outとグランド間に接続される。このとき、直列共振子の共振点frsと並列共振子の反共振点fapは概一致するように設計する。
【0022】
図2(b)の横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図2(a)の構成により、直列共振子と並列共振子の通過特性が合成され,図2(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振子の共振点frsと並列共振子の反共振点fap付近が最大となり、直列共振子の反共振点fas及び並列共振子の共振点frpが極小となる。そして、並列共振子の共振点frpから直列共振子の反共振点fasの周波数帯域が通過帯域となり、並列共振子の共振点frp以下及び直列共振子の反共振点fas以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダーフィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0023】
次に多段ラダーフィルタについて説明する。図3(a)及び図3(b)は、多段ラダーフィルタの構成図である。図3(b)の横軸は周波数、縦軸は減衰量を表す。
【0024】
図3(a)に示すように、ラダーフィルタF10は直列共振子S1,S2a,S2b及びS3、並びに並列共振子P1a,P1b,P2a及びP2bを備える。入力端子Inと出力端子Outとの間に、直列共振子S1、S2a、S2b及びS3が直列に接続されている。直列共振子S1は入力端子Inに接続されている。直列共振子S4は出力端子Outに接続されている。
【0025】
直列共振子S1と直列共振子S2aとの間には、並列共振子P1a及び並列共振子P1bがそれぞれ並列に接続されている。直列共振子S2bと直列共振子S3との間には、並列共振子P2a及び並列共振子P2bがそれぞれ並列に接続されている。また並列共振子P1a、P1b、P2a及びP2bはグランド端子に接続されている。多段ラダーフィルタF10は、1段ラダーフィルタを複数接続して構成される。なお、各段間での信号の反射を抑制するため、1段ラダーがフィルタを反転させた形で接続される。
【0026】
図3(b)に示すように、フィルタの小型化のために、直列共振子S2a及びS2bを1つの直列共振子S2としてもよい。また並列共振子P1a及びP1bを1つの並列共振子P1とし、さらに並列共振子P2a及びP2bを1つの並列共振子P2としてもよい。つまり図3(a)中の点線で囲んだ構成を1つにまとめてもよい。
【0027】
フィルタにおいては、減衰極の生成、通過帯域の拡張等のように、特性の調整を行うために、インダクタを接続することがある。共振子にインダクタを接続した例について説明する。
【0028】
図4(a)は、共振子を例示する図であり、図4(b)は、インダクタが並列接続された共振子を例示する図である。図4(c)は、図4(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図4(d)は、図4(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。図4(c)及び図4(d)の横軸は周波数、縦軸はリアクタンスをそれぞれ表す。
【0029】
共振子Rの抵抗成分が十分に小さい場合、共振子Rのリアクタンス成分が、共振子Rを含む素子のインピーダンスに対して大きく影響する。従って、図4(c)及び図4(d)に示すリアクタンスが、共振子R、又は共振子R及びインダクタLにおける、信号の流れにくさを表す。
【0030】
図4(c)に示すように、図4(a)の共振子Rは、周波数fr0において共振点を有し、周波数fr0より高い周波数fa0において反共振点を有する。直流点(周波数がゼロとなる点)で、共振子Rは開放状態となる。
【0031】
図4(b)に示すように、共振子RにインダクタLが並列接続されると、リアクタンス特性が変化する。図4(d)に示すように、反共振点は周波数fa0から高い周波数fa1にシフトする。また、共振点の周波数fr0よりも低い周波数fa2に反共振点が生成される。直流点では、共振子R及びインダクタLは短絡状態となる。言い換えれば、リアクタンスはゼロ、又はゼロ付近の値となる。
【0032】
図5(a)は、共振子を例示する図であり、図5(b)は、インダクタが直列接続された共振子を例示する図である。図5(c)は、図5(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図5(d)は、図5(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。なお、図5(a)は図4(a)と同じであり、図5(c)は図4(c)と同じであるが、比較のために再掲した。
【0033】
図5(b)に示すように、共振子RにインダクタLを直列接続した場合、リアクタンス特性が変化する。図5(d)に示すように、共振点は、周波数fr0より低い周波数fr1にシフトする。また反共振周波数fa0より高い周波数fr2に、新たな共振点が生成される。高周波数側では、共振子R及びインダクタLは開放状態となる。言い換えれば、リアクタンスは発散する。
【0034】
次に、ラダーフィルタにインダクタを接続した例について説明する。まず、ラダーフィルタの直列共振子にインダクタを並列接続した例について述べる。図6(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図6(b)は、フィルタF12を例示する回路図である。
【0035】
図6(a)に示すように、フィルタF11は、入力端子In、出力端子Out、直列共振子S1〜Sn、及び並列共振子P1〜Pnを備えるラダーフィルタである。直列共振子S1〜Snは、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列接続されている。直列共振子S1の一端は入力端子Inに接続され、他端は直列共振子S2の一端に接続されている。直列共振子S1の他端と直列共振子S2の一端との間には、並列共振子P1の一端が並列接続されている。並列共振子P1の他端は接地されている。同様に、直列共振子S2〜Sn、及び並列共振子P2〜Pnはラダー型に接続されている。直列共振子Snの一端は出力端子Outに接続され、直列共振子Snの一端と出力端子Outとの間には並列共振子Pnの一端が並列接続されている。なお、フィルタF11の段数は任意に定めることができる。
【0036】
図6(b)に示すように、フィルタF12は、直列共振子S11〜Sxを備える。直列共振子SxとインダクタLsとは並列接続されている。直列共振子Sxの一端及びインダクタLsの一端は、直列共振子Snの一端、及び並列共振子Pnの一端に接続されている。直列共振子Sxの他端及びインダクタLsの他端は、出力端子Outに接続されている。
【0037】
次にフィルタF12の特性について説明する。図7(a)は、インダクタを並列接続した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。図7(b)は、フィルタF12の減衰特性を例示する図である。なお、減衰特性はシミュレーションしたものであり、図7(b)以降の減衰特性も同様にシミュレーションにより求めたものである。図7(a)は、図4(d)の横軸のスケールを図7(b)の横軸のスケールに合わせたものである。図7(b)の破線はフィルタF11の減衰特性、実線はフィルタF12の減衰特性をそれぞれ表す。
【0038】
図7(a)に示すように、反共振点は図4(b)の周波数fa0から周波数fa1へシフトする。図7(b)に示すように、反共振点のシフトに伴い、周波数fa1に減衰極が生成される。図7(a)に示すように、周波数fa2に新たな反共振点が生成される。図7(b)に示すように、新たな反共振点の生成に伴い、周波数fa2に新たな減衰極が生成される。また図7(a)に示すように、直流点では短絡が生じる。図7(b)中に楕円で囲んだように、直流点では短絡が生じることに伴い、周波数fa2より低い低周波数帯では、抑圧が劣化する。
【0039】
フィルタF12を分波器に搭載し、周波数fa2に生成される減衰極を相手方フィルタの通過帯域に配置することで、分波器のアイソレーション特性を高めることができる。図8は、分波器が備える2つのフィルタの減衰特性を例示する図である。ここでは、フィルタF12aとフィルタF12とを備える分波器を考える。フィルタF12aの回路構成の説明は省略するが、フィルタF12同様に、直列共振子と並列接続されたインダクタを備える。破線は、フィルタF12aの減衰特性を表す。実線は、フィルタF12の減衰特性を表す。
【0040】
図8に示すように、フィルタF12aは、フィルタF12よりも高周波数側に通過帯域を有し、また周波数fa3に減衰極を有する。フィルタF12が周波数fa2に有する減衰極が、フィルタF12aの通過帯域に位置する。フィルタF12aが周波数fa3に有する減衰極が、フィルタF12の通過帯域に位置する。この結果、高いアイソレーション特性を確保することができる。しかしながら図8に楕円で囲んだように、直流点近傍において、抑圧の劣化が生じることは図7(b)と同様である。例えばGHz帯のように、高周波数を使用周波数帯とする場合、このような低周波数帯における抑圧劣化は、フィルタ、分波器等の特性を大きく損なう可能性がある。低周波数帯における抑圧を改善するために、直列共振子を追加した例について説明する。
【0041】
図9(a)はフィルタF11を例示する回路図である。図9(b)は、フィルタF13を例示する回路図である。図6(a)及び図6(b)に示した構成と同じ構成については、説明を省略する。図9(a)は、図6(a)と同じものであるが、比較のために再掲した。なお、フィルタF11は、後述する図11(a)にも図示した。
【0042】
図9(b)に示すように、フィルタF13は、フィルタF11に直列共振子Sx1及びSx2、並びにインダクタLsを追加したものである。つまり、フィルタF13は、フィルタF12にさらに直列共振子を追加したものである。直列共振子Sx1の一端は直列共振子Snの一端に直列接続されている。直列共振子Sx1の他端は、直列共振子Sx2の一端及びインダクタLsの一端と接続されている。直列共振子SxとインダクタLsとは並列接続されている。直列共振子Sx2の他端とインダクタLsの他端とは、出力端子Outに接続されている。
【0043】
次にフィルタF13の特性について説明する。図10(a)は、直列共振子Sx1及びSx2並びにインダクタL1のリアクタンス特性を例示する概念図である。図10(b)は、フィルタF13の減衰特性を例示する図である。図10(b)の破線はフィルタF11の減衰特性、実線はフィルタF13の減衰特性をそれぞれ表す。
【0044】
図10(a)に示すように、周波数fr1、及び周波数fr1より低い周波数fr3に共振点が生成される。また、周波数fa1及びfa2に反共振点が生成される。言い換えれば、直列共振子Sx2とインダクタL1とを並列接続し、さらに直列共振子Sx1を直列に接続することで、周波数fr3に位置する新たな共振点が生成される。また直流点近傍では、直列共振子Sx1及びSx2並びにインダクタL1が開放状態となる。
【0045】
図10(b)に示すように、フィルタF13においては、周波数fa1及びfa2に減衰極が生成される。また、直流点近傍の開放状態の生成に伴い、低周波数帯における抑圧が改善している。しかしながら、周波数fr3の共振点の生成に伴い、周波数fr3において減衰量は極大値を示す。このため、フィルタF13のようなラダーフィルタでは、低周波数帯における抑圧が十分得られない可能性がある。
【0046】
次にラダーフィルタの並列共振子にインダクタを直列接続した例について説明する。図11(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図11(b)は、フィルタF14を例示する回路図である。図6(a)及び図6(b)に示した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0047】
図11(b)に示すように、フィルタF14は並列共振子にインダクタLp1を接続したラダーフィルタである。並列共振子P1〜Pnの他端には、インダクタLp1の一端が接続されている。インダクタLp1の他端は接地されている。このように、インダクタLp1は、並列共振子P1〜Pnとグランド端子との間に直列接続されている。次にフィルタF14の特性について説明する。
【0048】
図12(a)は、共振子とインダクタとのリアクタンス特性を例示する概念図である。図12(b)は、フィルタF14の減衰特性を例示する図である。図12(a)は、図5(d)の横軸のスケールを図12(b)の横軸のスケールに合わせたものである。図12(b)の実線はフィルタF14の減衰特性を、破線はフィルタF11の減衰特性をそれぞれ表す。
【0049】
図12(a)に示すように、共振点は図5(c)の周波数fr0から周波数fr1にシフトする。図12(b)に示すように、共振点のシフトに伴い、フィルタF14の通過帯域の低周波数端が周波数fr1にシフトする。図12(a)に示すように、周波数fr2に新たな共振点が生成される。図12(b)に示すように、新たな共振点の生成に伴い、周波数fr2に新たな減衰極が生成される。また、図12(a)に矢印で示すように、高周波数帯では開放状態が生成される。図12(b)に矢印で示すように、開放状態の生成に伴い、高周波数帯ではフィルタF14の抑圧が劣化する。
【0050】
高周波数帯における抑圧劣化を改善するために、並列腕に別のインダクタを追加することがある。図13(a)は、フィルタF11aを例示する回路図である。図13(b)は、フィルタF15を例示する回路図である。
【0051】
図13(a)に示すように、フィルタF11aは、直列共振子S1〜Sn及び並列共振子P1〜P(n−1)を備える。フィルタF11aは、フィルタF11から並列共振子Pnを除いたラダーフィルタである。
【0052】
図13(b)に示すように、フィルタF15は、直列共振子S1〜Sn、並列共振子P1〜P(n−1)、インダクタLp1及びLp2を備える。インダクタLp2の一端は、並列共振子P1の他端と直列接続されている。インダクタLp2の他端は、インダクタLp1の一端と直列接続され、並列共振子P2〜P(n−1)の他端と並列接続されている。このように、フィルタF15では、フィルタF14と比較して、図5(b)に示した共振子にインダクタを直列接続した構成が、さらに追加されることとなる。次にフィルタF15の特性について説明する。
【0053】
図14(a)は、並列共振子P1とインダクタLp2とのリアクタンス特性を例示する概念図である。図14(b)は、フィルタF15の減衰特性を例示する図である。図14(b)の実線はフィルタF15の減衰特性を、破線はフィルタF11の減衰特性をそれぞれ表す。フィルタF15においては、図12(a)に示すリアクタンス特性と、図14(a)に示すリアクタンス特性とが、重畳して影響する。
【0054】
図14(a)に示すように、共振点は図5(c)の周波数fr0から周波数fr4にシフトする。図12(b)に示すように、共振点のシフトに伴い、周波数fr4に減衰極が生成される。図14(a)に示すように、周波数fr5に新たな共振点が生成される。図14(b)に示すように、新たな共振点の生成に伴い、周波数fr5に新たな減衰極が生成される。なお、周波数fr4は、周波数fr1より高く、周波数fa0より低い。周波数fr5は、周波数fr2より高い。このようにフィルタF15によれば、高周波数帯においても、周波数fr5の減衰極付近では、部分的に高い抑圧を得ることができる。しかしながら図14(b)に矢印で示したように、周波数fr5よりさらに高周波数帯において、抑圧が大きく劣化する。
【0055】
以上のフィルタF12〜F15に示したように、インダクタを追加することで、減衰極を生成するようなラダーフィルタを形成することができる。しかしながら、例えば図7(b)及び図10(b)に示したように、フィルタF12及びF13によれば、低周波数帯において抑圧劣化が生じる。また図12(b)及び図14(b)に示したように、フィルタF14及びF15によれば、高周波数帯において抑圧劣化が生じる。このように、広帯域において高い抑圧を得ることは困難であった。
【0056】
次に、インダクタのインダクタンス値を変更した例について説明する。図15(a)は、フィルタF16aを例示する回路図である。図15(b)は、フィルタF16を例示する回路図である。
【0057】
図15(a)に示すように、フィルタF16aは、直列共振子S1〜S6、及び並列共振子P1〜P6を備える。直列共振子S1〜S6は、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列接続されている。直列共振子S1の一端は入力端子Inと直列接続されている。直列共振子S1の他端は、直列共振子S2の一端と直列接続されている。直列共振子S2の他端は、直列共振子S3の一端と直列接続されている。直列共振子S3の他端と出力端子Outとは直列接続されている
並列共振子P1の一端は、入力端子Inと直列共振子S1との間に並列接続されている。並列共振子P2の一端は、直列共振子S1と直列共振子S2との間に並列接続されている。並列共振子P3の一端は、直列共振子S2と直列共振子S3との間に並列接続されている。並列共振子P4の一端は、直列共振子S3と出力端子Outとの間に並列接続されている。並列共振子P1〜P4各々の他端は接地されている。
【0058】
図15(b)に示すように、フィルタF16は、フィルタF16aに直列共振子SxとインダクタLsとを、入力端子Inと直列共振子S1との間に追加したラダーフィルタである。直列共振子SxとインダクタLsとは並列接続されている。なお、インダクタLsは、別の直列共振子に並列接続されてもよい。
【0059】
次にフィルタF16の減衰特性について説明する。図15(b)に示したインダクタLsのインダクタンス値Lsを変化させ、減衰特性を計算した。減衰特性の計算に用いた条件について説明する。各共振子は、弾性表面波共振子とし、インピーダンスは50Ωとした。1つの直列共振子の容量Csと、1つの並列共振子の容量Cpとの比(容量比)Cp/Csは0.6である。また容量の積(容量積)Cp×Csは、1/(ω0×R)2の73.5%とした。ω0はフィルタF16の中心角周波数であり、Rは整合すべきインピーダンスである。Rは例えば50Ωである。
【0060】
図16(a)は、フィルタF16の減衰特性を例示する図である。図16(b)は、図16(a)の通過帯域の拡大図である。図15(b)に示したインダクタLsのインダクタンス値Lsは、0.5nH、1nH、2nH、3nH、4nH、及び5nH、とした。太い点線は、フィルタF16aの減衰特性を表す。太い実線は、Ls=0.5nHの例の減衰特性を表す。太い破線は、Ls=1nHの例の減衰特性を表す。一点鎖線は、Ls=2nHの例の減衰特性を表す。二点鎖線は、Ls=3nHの例の減衰特性を表す。細い実線は、Ls=4nHの例の減衰特性を表す。細い破線は、Ls=5nHの例の減衰特性を表す。
【0061】
図16(a)及び図16(b)に示すように、通過帯域において、各例の減衰特性は重なっている。図16(a)に示すように、フィルタF16では、インダクタLsを設けることにより、低周波数側及び高周波数側に減衰極が生成される。低周波数側の減衰極を第1の減衰極、高周波数側の減衰極を第2の減衰極とする。インダクタLsのインダクタンス値Lsを小さくするほど、第1の減衰極は、高周波数側にシフトする。例えばLs=5nHの例では、約1500MHzに、第1の減衰極が生成される。これに対し、Ls=0.5nHの例では、通過帯域内である約1860MHzに第1の減衰極が生成される。
【0062】
また、例えばLs=5nHの例では、600〜1200MHzにおいて抑圧が劣化する。この抑圧の劣化は、図7(b)に示した直流点近傍の抑圧劣化に対応するものである。これに対し、図16(a)中に楕円で囲んだように、第1の減衰極の高周波数側へのシフトに伴い、低周波数帯における抑圧が改善した。Ls=0.5nHの例では、1200MHz前後において、減衰量がほぼ平坦になるような、高い抑圧が得られた。
【0063】
さらに、インダクタンス値Lsを小さくするほど、第2の減衰極も高周波数側にシフトした。例えばLs=2nHの例では約2700MHzに第2の減衰極が生成された。Ls=1nHの例では3600MHzを超えた位置に第2の減衰極が生成された。Ls=0.5nHの例では、5000MHzを超えた位置に第2の減衰極が生成された。またフィルタF16では、インダクタンス値Lsの大きさに関わらず、第2の減衰極よりも高周波数帯における抑圧の劣化は発生しなかった。なお、インダクタLsを設けないフィルタF16aでは、第2の減衰極が生成されなかった。
【0064】
フィルタF16のように、インダクタを直列共振子に並列接続し、かつインダクタンス値を変更することで、減衰特性は変化する。Ls=0.5nHの例のように、インダクタンス値を小さくすることで、第1の減衰極を、例えば通過帯域の低周波数端以上の周波数に生成することができる。図2(b)に示したように、ラダーフィルタの通過帯域の低周波数端は、並列共振子の共振周波数で定められる。つまり、インダクタンス値を小さくすることで、第1の減衰極を、フィルタF16の並列共振子P1〜P4のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上の周波数に生成することができる。これにより、図16(a)に示したように、低周波数帯における抑圧を改善することができる。また、高周波数帯においては第2の減衰極が生成され、かつ抑圧の劣化は生じない。特にインダクタンス値を小さくすることで、第2の減衰極をより高周波数側に生成することができる。
【実施例1】
【0065】
以上の考察に基づいた実施例1について説明する。図17は、実施例1に係る分波器を例示するブロック図である。
【0066】
図17に示すように、分波器100は受信フィルタ100a及び送信フィルタ100bを備えている。受信フィルタ100a及び送信フィルタ100bは共通に共通端子(アンテナ端子)102に接続されている。共通端子102はアンテナ104に接続されている。受信フィルタ100aは、アンテナ104から信号を受信し、受信した信号(受信信号)を例えばアンプ等に出力する。送信フィルタ100bは、アンプ等から入力された信号(送信信号)をアンテナ104に出力する。アンテナ104は信号を送信する。また、受信フィルタ100aは、送信信号が受信端子に流れることを抑制する。送信フィルタ100bは、受信信号が送信端子に流れることを抑制する。分波器100は、例えばW−CDMA(Wideband
Code Division Multiple Access) Band2方式に対応している。
【0067】
次に実施例1に係る分波器の構成について説明する。実施例1に係る分波器の回路構成について説明する。図18は、実施例1に係る分波器の回路構成を例示する構成図である。
【0068】
図18に示すように、実施例1に係る分波器100は、受信フィルタ100a及び送信フィルタ100b、インダクタLa及びLr、アンテナ端子Ant、受信端子Rx1及びRx2、並びに送信端子Txを備える。受信フィルタ100aの一端、送信フィルタ100bの一端、及びアンテナ端子Antは、互いに並列接続されている。インダクタLaの一端は、アンテナ端子Antに接続され、他端は接地されている。受信フィルタ100aの他端は受信端子Rx1及びRx2に接続されている。受信端子Rx1及びRx間にはインダクタLrが並列接続されている。受信フィルタ100aの回路構成の説明は省略する。
【0069】
送信フィルタ100bは、直列共振子S11〜S5、Sx、並列共振子P1〜P3、並びにインダクタLs、L1及びL2を備える。直列共振子S11〜Sxは、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に直列接続されている。アンテナ端子Antは送信フィルタ100bの出力端子に相当し、送信端子Txは送信フィルタ100bの入力端子に相当する。直列共振子S11の一端は、アンテナ端子Ant及び受信フィルタ100aに接続されている。直列共振子Sxの一端は送信端子Txに接続されている。直列共振子Sxには、インダクタLs(第1インダクタ)が並列接続されている。並列共振子P1の一端は、直列共振子S14と直列共振子S2との間に並列接続されている。並列共振子P1の他端はインダクタL1(第2インダクタ)の一端と直列接続されている。インダクタL1の他端は接地されている。このように、インダクタL1は、並列共振子P1とグランド端子との間に直列接続されている。並列共振子P2の一端は、直列共振子S3と直列共振子S41との間に並列接続されている。並列共振子P3の一端は、直列共振子S42と直列共振子S5との間に並列接続されている。並列共振子P2の他端と並列共振子P3の他端とは、インダクタL2(第2インダクタ)の一端に直列接続されている。インダクタL2の他端は接地されている。このように、インダクタL2は、並列共振子P2及びP3とグランド端子との間に直列接続されている。なお、送信フィルタF100bは、実施例1に係るラダーフィルタである。
【0070】
実施例1に係る分波器100の具体的な構成について説明する。図19(a)は、実施例1に係る分波器チップを例示する平面図であり、図19(b)は、実施例1に係る分波器チップを例示する断面図である。図19(c)は、実施例1に係る分波器を例示する平面図である。図19(b)は図19(a)のA1−A1に沿った断面図である。
【0071】
図19(a)及び図19(b)に示すように、分波器チップ101は、受信フィルタチップ100c、送信フィルタチップ100d、パッケージ基板120、及び封止部122を備える。図19(a)では封止部122を透視している。図19(b)に示すように、受信フィルタチップ100c及び送信フィルタチップ100dは、バンプ124によりパッケージ基板120上にフリップチップ実装されている。パッケージ基板120は、第1層120−1、及び第1層120−1下の第2層120−2、第2層120−2下の第3層120−3からなる三層構造の基板である。パッケージ基板120の上面、中間層及び下面の各々には配線層120a、120b、120c及び120dの各々が形成され、各配線層間はビア配線26により接続されている。配線層120bは、第1層120−1と第2層120−2との間に位置する。配線層120cは、第2層120−2と第3層120−3との間に位置する。配線層120dは、第3層120−3の下面に位置し、フットパッドとして機能する。パッケージ基板120に設けられた配線の一部、及びビア配線26の一部は、インダクタとして機能する。封止部122は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁体、又は半田等からなり、受信フィルタチップ100c及び送信フィルタチップ100dを封止する。パッケージ基板120は例えばセラミック等の絶縁体からなる。配線層120a〜120dは、例えばアルミニウム等の金属からなる。バンプ124は例えば金(Au)等の金属からなる。
【0072】
図19(c)に示すように、分波器チップ101は、配線層120cを介して、プリント基板130にフリップチップ実装されている。プリント基板130には、チップインダクタであるインダクタLr、及びLaが実装されている。これにより、実施例1に係る分波器100が形成される。なお図示は省略するが、アンテナ端子Ant、受信端子Rx1及びRx2、並びに送信端子Txは、プリント基板130に設けられている。分波器チップ101とインダクタLrとは配線131r−1及び配線131r−2により接続されている。また配線131r−1は、受信端子Rx1と接続されている。配線131r−2は、受信端子Rx2と接続されている。分波器チップ101とインダクタLaとは、配線131aを介して接続されている。配線131aは、アンテナ端子Antと接続されている。配線131sは、送信端子Txと接続されている。
【0073】
次に分波器が備えるフィルタの構成について説明する。図20は、実施例1に係る分波器が備える送信フィルタチップを例示する透視図である。
【0074】
図20に示すように、送信フィルタチップ100dは、圧電基板10、直列共振子S11〜Sx、及び並列共振子P1〜P3、アンテナ端子Ant1、送信端子Tx1、端子18a〜18cを備える。直列共振子S11〜Sx及び並列共振子P1〜P3は、弾性表面波(SAW:Surface
Acoustic Wave)共振子として形成される。
【0075】
直列共振子S11を例に、弾性表面波共振子の構成について説明する。直列共振子S11は、圧電基板10の上に、対向する一対の櫛型電極12を配置し、さらに櫛型電極12の両側に反射器14を配置することで構成される。櫛型電極12が電極指のピッチに応じた周波数の弾性波を励振する。反射器14は櫛型電極12から伝搬する弾性波を反射する。直列共振子S12〜Sx,及び並列共振子P1〜P3についても同様の構成である。
【0076】
各共振子が設けられた面とパッケージ基板120の上面とが対向するように、送信フィルタチップ100dはフリップチップ実装される。図13(b)に示したように、送信フィルタチップ100dとパッケージ基板120との間には空隙が形成されるため、各共振子による弾性波の励振は妨げられない。圧電基板10は、例えばリチウムタンタル酸(LiTaO3)又はリチウムニオブ酸(LiNbO3)等の圧電体からなる。櫛型電極、反射器及び各端子は、例えばアルミニウム(Al)等の金属からなる。
【0077】
直列共振子S11を構成する櫛型電極は、アンテナ端子Ant1と接続されている。アンテナ端子Ant1は、図17に示したアンテナ104と接続されている。並列共振子P1を構成する櫛型電極は、端子18aに接続されている。端子18aは、図18に示したインダクタL1と接続されている。並列共振子P2を構成する櫛型電極、及び並列共振子P3を構成する櫛型電極は、端子18bに接続されている。端子18bは、図18に示したインダクタL2と接続されている。直列共振子S5を形成する櫛型電極及び直列共振子Sxを形成する櫛型電極は、端子18cに接続されている。端子18cは、図18に示したインダクタLsと接続されている。直列共振子Sxを構成する櫛型電極は送信端子Tx1と接続されている。送信端子Tx1は、図18に示した送信端子Txに接続されている。各端子は、図19(b)に示したパッケージ基板120とのフリップチップ実装のための端子である。図中の白丸は、バンプ124が接続される箇所を示す。
【0078】
次にパッケージ基板120について説明する。図21(a)から図22(b)は、パッケージ基板を例示する平面図である。図21(a)は、パッケージ基板120の上面を示す。図21(b)は、パッケージ基板120の第1層120−1を透視し、第2層120−2の上面を示す。図22(a)は、第1層120−1及び第2層120−2を透視し、第3層120−3の上面を示す。図22(b)は、第1層120−1〜第3層120−3を透視した図を示す。
【0079】
図21(a)に示すように、第1層120−1の上面には配線層120aが設けられている。配線層120aは、アンテナ端子Ant2、送信端子Tx2、受信端子Rx1a及びRx2a、グランド端子GND1、端子20a、20b及び22a、配線20c及び22b、を備える。図21(a)中の破線で囲んだ領域は、送信フィルタチップ100dが実装される領域を示す。配線層120aのアンテナ端子Ant2は、送信フィルタチップ100dのアンテナ端子Ant1と接続される。配線層120aの送信端子Tx2は、送信フィルタチップ100dの送信端子Tx1と接続される。配線層120aの端子20aは、送信フィルタチップ100dの端子18aと接続される。配線層120aの端子20bは、送信フィルタチップ100dの端子18bと接続される。配線層120aの端子22aは、送信フィルタチップ100dの端子18cと接続される。端子20aは、グランド端子GND1と接続されている。端子20bは配線20cを介して、ビア配線26と接続されている。端子22aは配線22bを介してビア配線26と接続されている。
【0080】
図21(b)に示すように、第2層120−2の上面には配線層120bが設けられている。配線層120bは、アンテナパターンAnt3、送信パターンTx3、受信パターンRx1b及びRx2b、グランドパターンGND2、配線20d及び22cを含む。図19(b)において述べたように、配線層120aと配線層120bとは、ビア配線26により接続されている。具体的には、配線層120bのアンテナパターンAnt3は、配線層120aのアンテナ端子Ant2と接続されている。配線層120bの送信パターンTx3は、配線層120aの送信端子Tx2と接続されている。配線層120bの受信パターンRx1bは、配線層120aの受信端子Rx1aと接続されている。配線層120bの受信パターンRx2bは、配線層120aの受信端子Rx2aと接続されている。配線層120bの配線20dは、配線層120aの配線20cと接続されている。配線層120bの配線22cは、配線層120aの配線22bと接続されている。
【0081】
図22(a)に示すように、第3層120−3の上面には配線層120cが設けられている。配線層120cは、アンテナパターンAnt4、送信パターンTx4、受信パターンRx1c及びRx2c、グランドパターンGND3、配線20e及び22dを含む。配線層120bと配線層120cとは、ビア配線26により接続されている。配線層120cのアンテナパターンAnt4は、配線層120bのアンテナパターンAnt3と接続されている。配線層120cの送信パターンTx4は、配線層120bの送信パターンTx3と接続されている。配線層120cの受信パターンRx1cは、配線層120bの受信パターンRx1bと接続されている。配線層120cの受信パターンRx2cは、配線層120bの受信パターンRx2bと接続されている。配線層120cのグランドパターンGND3は、配線層120bのグランドパターンGND2と接続されている。配線層120cの配線20eは、配線層120bの配線20dと接続されている。配線層120cの配線22dは、配線層120bの配線22cと接続されている。また配線22dは、送信パターンTx4と接続されている。
【0082】
第3層120−3の下面には配線層120dが設けられている。配線層120dは、アンテナ端子Ant5、送信端子Tx5、受信端子Rx1d及びRx2d、グランド端子GND4、GND5、GND6、GND7a及びGND7bを含む。配線層120dと配線層120cとは、ビア配線26により接続されている。配線層120dのアンテナ端子Ant5は、配線層120cのアンテナパターンAnt4と接続されている。配線層120dの送信端子Tx5は、配線層120cの送信パターンTx4と接続されている。配線層120dの受信端子Rx1dは、配線層120cの受信パターンRx1cと接続されている。配線層120dの受信端子Rx2dは、配線層120cの受信パターンRx2cと接続されている。配線層120dのグランド端子GND4、GND5及びGND6は、配線層120cのグランドパターンGND3と接続されている。配線層120dのグランド端子GND7a及びGND7bは、配線層120cの配線20eと接続されている。
【0083】
端子20aは、インダクタL1の形成に寄与する。配線20c、20d及び20e、並びに上記の各配線を接続するビア配線26は、インダクタL2の形成に寄与する。配線22b、22c及び22d、並びに上記の各配線を接続するビア配線26は、インダクタLsの形成に寄与する。各配線の長さ等を変更することにより、インダクタンス値を調整することができる。
【0084】
次に実施例1に係るラダーフィルタの減衰特性について説明する。送信フィルタ100b、比較例1に係るフィルタF17、及び比較例2に係る共振回路C1、各々の減衰特性を計算した。まず比較例に係るフィルタの構成について説明する。
【0085】
図23(a)は、比較例1に係るフィルタを例示する回路図であり、図23(b)は、比較例2に係る共振回路を例示する回路図である。
【0086】
図23(a)に示すように、比較例に係るフィルタF17は、送信フィルタ100bから、直列共振子Sx及びインダクタLsを取り除いたラダーフィルタである。比較例2に係る共振回路C1は、直列共振子Sx及びインダクタLsにより構成したフィルタである。共振回路C1は、図4(b)に示したものと同じ構成である。送信フィルタ100bは、フィルタF17に共振回路C1を接続したフィルタである。
【0087】
送信フィルタ100b及びフィルタF17が備える並列共振子P1の共振周波数は1815MHz、並列共振子P2の共振周波数は1823MHz、並列共振子P3の共振周波数は1827MHzである。送信フィルタ100b及び共振回路C1が備える直列共振子Sx及びインダクタLsの反共振周波数は1836MHz及び2560MHzである。これは、例えば図4(d)において、fa1=2560MHz、及びfa2=1836MHzであることに相当する。反共振周波数fa1及びfa2は、並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数1827MHzより高い。
【0088】
図24(a)は、実施例1に係るラダーフィルタの減衰特性を例示する図である。図24(b)は、図24(a)の通過帯域の拡大図である。実線は実施例1に係るラダーフィルタ(送信フィルタ100b)の減衰特性を表す。破線は比較例1に係るフィルタF17の減衰特性を表す。点線は比較例2に係る共振回路C1の減衰特性を表す。
【0089】
図24(a)及び図24(b)に示すように、送信フィルタ100b及びフィルタF17は通過帯域を有する。通過帯域の低周波数端は、約1800MHzに位置する。また通過帯域の中心周波数は、約1880MHzである。例えば図2(b)に示したように、通過帯域の低周波数端は、並列共振子P1〜P3の共振周波数により定まる。中心周波数は、並列共振子P1〜P3の反共振周波数により定まる。
【0090】
図24(a)及び図24(b)に示すように、比較例2に係る共振回路C1は、反共振周波数に減衰極を有する。これは図4(d)に示した例と同様である。既述したように、送信フィルタ100bは、共振回路C1、つまり直列共振子SxとインダクタLsとを含む。このため送信フィルタ100bも、共振回路C1とほぼ等しい周波数に減衰極を有する。低周波数側(1830MHz付近)の減衰極を第1の減衰極B1、高周波数側(2600MHz付近)の減衰極を第2の減衰極B2とする。第1の減衰極B1は、並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数1827MHzより高い周波数に位置する。
【0091】
図24(a)に楕円で囲んだように、実施例1に係る送信フィルタ100bによれば、通過帯域より低周波数帯において抑圧の劣化が生じていない。これは、図16(a)と同様に、第1の減衰極B1を通過帯域の低周波数端より高周波数側に生成することで、劣化が抑制されたためである。
【0092】
図24(a)に示すように、送信フィルタ100b及びフィルタF17では、1700MHz付近及び2000MHz付近に減衰極が生成されている。1700MHz付近の減衰極を第3の減衰極B3、2000MHz付近の減衰極を第4の減衰極B4とする。第3の減衰極B3及び第4の減衰極B4は、並列共振子P1〜P3及びインダクタL1〜L3により生成される(図11(b)、図12(b)、図13(b)及び図14(b)参照)。フィルタF17では、2300MHz以上の高周波数帯において抑圧が劣化している。これは、図12(b)に示したフィルタF14及び図14(b)に示したフィルタF15と同様である。図24(a)中に円で囲んだように、送信フィルタ100bによれば、第2の減衰極B2が生成されるため、高周波数帯の抑圧を大きく改善することができる。
【0093】
実施例1に係る送信フィルタ100bは、直列共振子S11〜Sxと、並列共振子P1〜P3と、直列共振子Sxと並列接続されたインダクタLsと、を具備する。直列共振子SxとインダクタLsとは、通過帯域以下に第1の減衰極B1、通過帯域より高い周波数に第2の減衰極B2を生成する。第1の減衰極B1は、並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数以上であって、通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置する。この結果、低周波数帯における抑圧の劣化は抑制される。これにより広帯域において高い抑圧を得ることが可能となる。
【0094】
また、第2の減衰極B2により高周波数帯の抑圧劣化をキャンセルすることにより、広帯域おいて高い抑圧を得ることが可能となる。高周波数帯において高い抑圧を得るためには、第2の減衰極B2を、高周波数帯の好適な周波数に生成することが求められる。第1の減衰極B1が生成される周波数を調整することにより、第2の減衰極B2の位置も調整することができる。図24(a)に示したように、第1の減衰極B1が、第3の減衰極B3が位置する周波数以上、かつ通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置することで、第2の減衰極B2は高周波数帯の好適な位置に生成される。
【0095】
第1の減衰極B1は通過帯域以下の周波数に生成される。低周波数帯の抑圧を改善するため、第1の減衰極B1は並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数以上であって、通過帯域の高周波数端以下に位置すればよい。また、第2の減衰極B2を高周波数帯に生成するために、第1の減衰極B1は第3の減衰極B3以上の高周波数側に位置すればよい。しかしながら、第1の減衰極B1により、通過帯域内の損失が増大する可能性がある。従って、第1の減衰極B1は、通過帯域の中心周波数付近よりも低周波数側に位置することが好ましい。言い換えれば、第1の減衰極B1は、最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の反共振周波数以下の周波数に位置することが好ましい。これにより、通過帯域における損失が増大することは抑制され、フィルタの特性は良好に維持される。
【0096】
なお第1の減衰極B1は、最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数より高い周波数に位置してもよいし、第3の減衰極B3が位置する周波数より高い周波数に位置してもよい。第1の減衰極B1は、通過帯域の高周波数端より低い周波数に位置してもよいし、並列共振子P3の反共振周波数より低い周波数に位置してもよい。
【0097】
直列共振子Sx及びインダクタLsにより生成される第1の減衰極B1は、通過帯域以下の周波数に位置する。従って、通過帯域の低周波数端付近の特性は、直列共振子Sx及びインダクタLsに大きく影響される。一般に、インダクタのQ値は共振子に比べて、例えば1桁〜2桁程度低い。従って、通過帯域の低周波数端の急峻性が劣化する可能性がある。この結果、例えば相手方フィルタの通過帯域における抑圧が十分に確保できない恐れがある。低いQ値による劣化の影響を抑制するため、分波器が備える第1フィルタと、第1フィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2フィルタとのうち、第1フィルタに実施例1に係るラダーフィルタを適用することが好ましい。分波器100では、受信フィルタ100aと比較して低周波数側に通過帯域を有する送信フィルタ100bに実施例1を適用する。これにより低いQ値による劣化の影響を抑制し、効果的に高い抑圧を得ることができる。また、例えば第4の減衰極B4を受信フィルタ100aの通過帯域に配置することで、分波器100のアイソレーション特性を高めることができる。特に、例えばW−CDMA Band2方式のように、受信帯域と送信帯域とが近接する方式に対応する場合、通過帯域には急峻性が求められる。
【0098】
なお、第1フィルタは送信フィルタ及び受信フィルタのいずれでもよく、例えば通信方式に応じて変更することができる。分波器が備えるフィルタの両方に実施例1に係るラダーフィルタを適用してもよいし、第2フィルタに適用してもよい。言い換えれば、分波器は、実施例1に係るラダーフィルタを少なくとも1つ備えればよい。
【0099】
直列共振子Sx及びインダクタLsにより、通過帯域より高周波数側に第2の減衰極B2が生成される。並列共振子P1〜P3及びインダクタL1〜L3により、通過帯域より低周波数側に第3の減衰極B3、高周波数側に第4の減衰極B4が生成される。これらの減衰極を用いて、送信フィルタ100b、分波器100及びRFモジュール110の特性を改善することができる。例えば第2の減衰極B2を、例えばワイヤレスLAN(Local
Area Network)及びブルートゥース(登録商標、Bluetooth :BT)に用いられる帯域等に配置することができる。また、例えば第4の減衰極B4を受信フィルタ100aの通過帯域に配置することで、分波器100の特性を改善することができる。さらに、減衰極が通過帯域の2倍波又は3倍波に対応する帯域に位置するとしてもよい。
【0100】
実施例1では、直列共振子が10個、並列共振子が3個としたが、共振子の個数は変更可能である。実施例1に係るラダーフィルタが備える直列共振子及び並列共振子は、それぞれ1又は複数でよい。また、例えば複数の直列共振子とインダクタLsとが並列接続されてもよい。言い換えれば、少なくとも1つの直列共振子とインダクタLsとが並列接続される。また、例えば並列共振子P1以外に、P2又はP3がインダクタと直列接続されてもよい。並列共振子P1〜P3のうち少なくとも1つの並列共振子とインダクタとが直列接続されればよい。並列共振子とインダクタとが接続された並列腕を増設することで、新たに減衰極を生成することができる。
【0101】
インダクタL1、L2及びLsを、パッケージ基板120内の配線層120a〜120dにより形成している。このため、分波器100の小型化が可能となる。なお、インダクタLa及びLrも、配線層120a〜120dにより形成してもよい。これにより更に分波器100の小型化が可能となる。
【0102】
実施例1では、共振子として弾性表面波共振子を用いた。共振子として、例えばラブ波共振子、ラム波共振子、弾性境界波共振子、又は圧電薄膜共振子(FBAR:Film
Bulk Acoustic Resonator)等を用いてもよい。
【実施例2】
【0103】
実施例2は、並列共振子に1つのインダクタを接続した例である。図25は、実施例2に係る分波器を例示する回路図である。図18において既述した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0104】
図25に示すように、実施例2に係る分波器200は、送信フィルタ200bを含む。送信フィルタ200bは、実施例2に係るラダーフィルタである。送信フィルタ200bは、インダクタL3(第2インダクタ)を備える。インダクタL3の一端は、並列共振子P1〜P3の他端と直列接続されている。インダクタL3の他端は接地されている。
【0105】
実施例2によれば、実施例1と同様に、広帯域において高い抑圧を得ることができる。また、例えば図12(b)に示したフィルタF14の減衰特性のように、インダクタL3を設けることにより、通過帯域の高周波数端付近に減衰極を生成することができる。しかしながら、高周波数帯において抑圧が劣化する恐れがある。実施例2によれば、第2の減衰極B2により高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【実施例3】
【0106】
図26は、実施例3に係る分波器を例示する回路図である。図18及び図25において既述した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0107】
図26に示すように、実施例3に係る分波器300は、送信フィルタ300bを含む。送信フィルタ300bは、実施例3に係るラダーフィルタである。送信フィルタ300bは、送信フィルタ200bにインダクタL4(第3インダクタ)を追加したラダーフィルタである。並列共振子P1の他端はインダクタL4の一端と直列接続されている。インダクタL4の他端は、インダクタL3の一端と直列接続されている。このように、インダクタL4は、1つの並列共振子P1とインダクタL3の一端との間に直列接続されている。
【0108】
実施例3によれば、実施例1と同様に、広帯域において高い抑圧を得ることができる。また、例えば図14(b)に示したフィルタF15の減衰特性のように、インダクタL3及びL4を設けることにより、高周波数帯において抑圧が大きく劣化する恐れがある。実施例3によれば、第2の減衰極B2により高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0109】
なお、並列共振子P2又はP3にもインダクタが直列接続されてもよい。つまり、並列共振子P1〜P3のうち少なくとも1つにインダクタが直列接続されればよい。
【実施例4】
【0110】
実施例4は、ラダーフィルタを備えるRF(Radio Frequency)モジュールの例である。図27は、実施例4に係るRFモジュールを例示するブロック図である。
【0111】
図27に示すように、RFモジュール110は、アンテナ104、アンテナスイッチ112、分波器バンク114、並びにアンプモジュール116を備える。RFモジュール110は、GSM(Global
System for Mobile Communication)通信方式及びW−CDMA通信方式等、複数の通信方式に対応しており、例えば携帯電話等に搭載される。GSM方式については、850MHz帯(GSM850)、900MHz帯(GSM900)、1800MHz帯(GSM1800)、1900MHz帯(GSM1900)に対応している。アンテナ104は、GSM方式及びW−CDMA方式いずれの送受信信号をも送受信できる。分波器バンク114は、複数の分波器114a,114b及び114cを含む。複数の分波器の各々は、複数の通信方式の各々に対応した分波器である。なお、分波器バンク114が備える分波器は2つでもよいし、4つ以上でもよい。アンテナスイッチ112は、送受信する信号の通信方式に応じて、分波器バンク114が備える複数の分波器から、通信方式に対応する分波器を選択し、選択された分波器とアンテナ104とを接続する。各分波器はアンプモジュール116に接続されている。アンプモジュール116は分波器の受信フィルタが受信した信号を増幅し、処理部に出力する。またアンプモジュール116は、処理部により生成された信号を増幅し分波器の送信フィルタに出力する。
【0112】
RFモジュール110は、例えば図19(c)に示したプリント基板130に代えてモジュールボードを用い、複数の分波器チップ101をモジュールボードに実装することで形成制される。
【0113】
複数の分波器114a〜114cの少なくとも1つは、実施例1〜3いずれかに係る分波器である。実施例4によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。実施例4に係るモジュールとして、RFモジュール以外のモジュールを採用してもよい。このように、複数のフィルタを同一のモジュールボードに備え、かつ複数の帯域を利用するモジュールでは、広帯域における抑圧を確保することで、効果的に特性を改善することができる。
【0114】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
10 圧電基板
12 櫛型電極
14 反射器
100、200、300 分波器
100a 受信フィルタ
100b、200b、300b 送信フィルタ
100c 受信フィルタチップ
100d 送信フィルタチップ
104 アンテナ
120 パッケージ基板
120−1 第1層
120−2 第2層
120−3 第3層
120a、120b、120c、120d 配線層
L1、L2、L3、Ls インダクタ
S11、S12、S13、S14、S2、S3、S41、S42、S5、Sx 直列共振子
P1、P2、P3 並列共振子
【技術分野】
【0001】
本発明はラダーフィルタ、分波器及びモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴い、携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及している。このため高周波用フィルタへの需要が拡大しており、特に小型で特性が急峻であるフィルタが要求されている。特に、新たな通信方式及び使用に対応するため、フィルタには減衰極の生成、及び広い帯域での抑圧が要求されている。このようなフィルタとして、例えば複数の弾性波共振子を接続したラダーフィルタが用いられることがある。また、複数のフィルタを備える分波器、又はモジュール等においては、例えば送信フィルタと受信フィルタ間で、互いの通過帯域において高い抑圧を得ることが求められる。フィルタの特性を調整するため、インダクタを備えるフィルタが提案されている。
【0003】
特許文献1には、直列共振子に並列にインダクタを接続し、通過帯域より高周波数側に減衰極を生成する発明が記載されている。特許文献2には、共振子にインダクタとキャパシタとを接続し、通過帯域外に減衰極を生成する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−296167号公報
【特許文献2】特開2010−11300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、抑圧の劣化する周波数帯域が生じることがある。本発明は上記課題に鑑み、広帯域において高い抑圧を得ることが可能なラダーフィルタ、分波器、及びモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続されたインダクタと、を具備し、前記少なくとも1つの直列共振子と前記インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上であって、前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置するラダーフィルタである。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【0007】
上記構成において、前記第1の減衰極は、前記最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下の周波数に位置する構成とすることができる。この構成によれば、通過帯域における損失が増大することは抑制される。
【0008】
本発明は、入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続された第1インダクタと、少なくとも1つの前記並列共振子とグランド端子との間に直列接続された第2インダクタと、を具備し、前記少なくとも1つの直列共振子と前記第1インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、前記少なくとも1つの並列共振子と前記第2インダクタとは、前記通過帯域よりも低い周波数に第3の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域より高い周波数に第4の減衰極を生成し、前記第1の減衰極は、前記第3の減衰極が位置する周波数以上、かつ前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置するラダーフィルタである。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下に位置する構成とすることができる。この構成によれば、通過帯域における損失が増大することは抑制される。
【0010】
上記構成において、前記第2インダクタの一端は、全ての前記並列共振子と接続され、前記第2インダクタの他端は接地されている構成とすることができる。この構成によれば、高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0011】
上記構成において、少なくとも1つの前記並列共振子と、前記第2インダクタの一端との間に直列接続された第3インダクタを具備する構成とすることができる。この構成によれば、高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0012】
本発明は、上記のラダーフィルタを少なくとも1つ備える分波器である。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【0013】
上記構成において、共通端子と第1の端子との間に接続された第1のフィルタと、前記共通端子と第2の端子との間に接続され、前記第1のフィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2のフィルタと、を具備し、前記第1のフィルタが前記ラダーフィルタである構成とすることができる。この構成によれば、効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0014】
本発明は、上記のラダーフィルタを少なくとも1つ備えるるモジュールである。本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広帯域において高い抑圧を得ることが可能なラダーフィルタ、分波器、及びモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【図2】図2(a)は1段ラダーフィルタの構成図であり、図2(b)は1段ラダーフィルタの通過特性を示す図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、多段ラダーフィルタの構成図である。
【図4】図4(a)は、共振子を例示する図であり、図4(b)は、インダクタが並列接続された共振子を例示する図である。図4(c)は、図4(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図4(d)は、図4(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。
【図5】図5(a)は、共振子を例示する図であり、図5(b)は、インダクタが直列接続された共振子を例示する図である。図5(c)は、図5(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図5(d)は、図5(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。
【図6】図6(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図6(b)は、フィルタF12を例示する回路図である。
【図7】図7(a)は、インダクタを並列接続した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。図7(b)は、フィルタF12の減衰特性を例示する図である。
【図8】図8は、分波器が備える2つのフィルタの減衰特性を例示する図である。
【図9】図9(a)はフィルタF11を例示する回路図である。図9(b)は、フィルタF13を例示する回路図である。
【図10】図10(a)は、直列共振子Sx1及びSx2並びにインダクタL1のリアクタンス特性を例示する概念図である。図10(b)は、フィルタF13の減衰特性を例示する図である。
【図11】図11(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図11(b)は、フィルタF14を例示する回路図である。
【図12】図12(a)は、共振子とインダクタとのリアクタンス特性を例示する概念図である。図12(b)は、フィルタF14の減衰特性を例示する図である。
【図13】図13(a)は、フィルタF11aを例示する回路図である。図13(b)は、フィルタF15を例示する回路図である。
【図14】図14(a)は、共振子とインダクタとのリアクタンス特性を例示する概念図である。図14(b)は、フィルタF15の減衰特性を例示する図である。
【図15】図15(a)は、フィルタF16aを例示する回路図である。図15(b)は、フィルタF16を例示する回路図である。
【図16】図16(a)は、フィルタF16の減衰特性を例示する図である。図16(b)は、図16(a)の通過帯域の拡大図である。
【図17】図17は、実施例1に係る分波器を例示するブロック図である。
【図18】図18は、実施例1に係る分波器の回路構成を例示する構成図である。
【図19】図19(a)は、実施例1に係る分波器チップを例示する平面図であり、図19(b)は、実施例1に係る分波器チップを例示する断面図である。図19(c)は、実施例1に係る分波器を例示する平面図である。
【図20】図20は、実施例1に係る分波器が備える送信フィルタチップを例示する透視図である。
【図21】図21(a)及び図21(b)は、パッケージ基板を例示する平面図である。
【図22】図22(a)及び図22(b)は、パッケージ基板を例示する平面図である。
【図23】図23(a)は、比較例1に係るフィルタを例示する回路図であり、図23(b)は、比較例2に係る共振回路を例示する回路図である。
【図24】図24(a)は、実施例1に係るラダーフィルタの減衰特性を例示する図である。図24(b)は、図24(a)の通過帯域の拡大図である。
【図25】図25は、実施例2に係る分波器を例示する回路図である。
【図26】図26は、実施例3に係る分波器を例示する回路図である。
【図27】図27は、実施例4に係るRFモジュールを例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、ラダーフィルタについて説明する。図1(a)は直列共振子の構成図であり、図1(b)は並列共振子の構成図であり、図1(c)は直列共振子及び直列共振子の通過特性を示す図である。
【0018】
図1(a)に示すように、直列共振子は、共振子S21を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方を入力端子In、他方を出力端子Outとしたものである。図1(b)に示すように、並列共振子は、共振子P21を一端子対共振子としたとき、その2つの信号端子のうち、一方をグランド端子に接続し、他方を入力端子Inと出力端子Outの短絡線路に接続したものである。
【0019】
図1(c)の横軸は周波数、縦軸は通過量である。直列共振子の通過特性は実線、並列共振子の通過特性は破線で示す。図1(c)に示すように、直列共振子の通過特性は、1つの共振点(共振周波数)frsと1つの反共振点(反共振周波数)fasとを有する。共振点frsで通過量は最大となり、反共振点fasで通過量は最小となる。一方、並列共振子の通過特性は、1つの共振点frpと1つの反共振点fapとを有する。共振点frpで通過量は最小となり、反共振点fapで通過量は最大となる。
【0020】
図2(a)は1段ラダーフィルタの構成図であり、図2(b)は1段ラダーフィルタの通過特性を示す図である。
【0021】
図2(a)に示すように、直列共振子S22が直列共振子として入力端子Inと出力端子Outに直列に接続され、並列共振子P22が並列共振子として出力端子Outとグランド間に接続される。このとき、直列共振子の共振点frsと並列共振子の反共振点fapは概一致するように設計する。
【0022】
図2(b)の横軸は周波数、縦軸は通過量を示す。図2(a)の構成により、直列共振子と並列共振子の通過特性が合成され,図2(b)の通過特性が得られる。通過量は、直列共振子の共振点frsと並列共振子の反共振点fap付近が最大となり、直列共振子の反共振点fas及び並列共振子の共振点frpが極小となる。そして、並列共振子の共振点frpから直列共振子の反共振点fasの周波数帯域が通過帯域となり、並列共振子の共振点frp以下及び直列共振子の反共振点fas以上の周波数帯域が減衰域となる。このように、ラダーフィルタはバンドパスフィルタとして機能する。
【0023】
次に多段ラダーフィルタについて説明する。図3(a)及び図3(b)は、多段ラダーフィルタの構成図である。図3(b)の横軸は周波数、縦軸は減衰量を表す。
【0024】
図3(a)に示すように、ラダーフィルタF10は直列共振子S1,S2a,S2b及びS3、並びに並列共振子P1a,P1b,P2a及びP2bを備える。入力端子Inと出力端子Outとの間に、直列共振子S1、S2a、S2b及びS3が直列に接続されている。直列共振子S1は入力端子Inに接続されている。直列共振子S4は出力端子Outに接続されている。
【0025】
直列共振子S1と直列共振子S2aとの間には、並列共振子P1a及び並列共振子P1bがそれぞれ並列に接続されている。直列共振子S2bと直列共振子S3との間には、並列共振子P2a及び並列共振子P2bがそれぞれ並列に接続されている。また並列共振子P1a、P1b、P2a及びP2bはグランド端子に接続されている。多段ラダーフィルタF10は、1段ラダーフィルタを複数接続して構成される。なお、各段間での信号の反射を抑制するため、1段ラダーがフィルタを反転させた形で接続される。
【0026】
図3(b)に示すように、フィルタの小型化のために、直列共振子S2a及びS2bを1つの直列共振子S2としてもよい。また並列共振子P1a及びP1bを1つの並列共振子P1とし、さらに並列共振子P2a及びP2bを1つの並列共振子P2としてもよい。つまり図3(a)中の点線で囲んだ構成を1つにまとめてもよい。
【0027】
フィルタにおいては、減衰極の生成、通過帯域の拡張等のように、特性の調整を行うために、インダクタを接続することがある。共振子にインダクタを接続した例について説明する。
【0028】
図4(a)は、共振子を例示する図であり、図4(b)は、インダクタが並列接続された共振子を例示する図である。図4(c)は、図4(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図4(d)は、図4(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。図4(c)及び図4(d)の横軸は周波数、縦軸はリアクタンスをそれぞれ表す。
【0029】
共振子Rの抵抗成分が十分に小さい場合、共振子Rのリアクタンス成分が、共振子Rを含む素子のインピーダンスに対して大きく影響する。従って、図4(c)及び図4(d)に示すリアクタンスが、共振子R、又は共振子R及びインダクタLにおける、信号の流れにくさを表す。
【0030】
図4(c)に示すように、図4(a)の共振子Rは、周波数fr0において共振点を有し、周波数fr0より高い周波数fa0において反共振点を有する。直流点(周波数がゼロとなる点)で、共振子Rは開放状態となる。
【0031】
図4(b)に示すように、共振子RにインダクタLが並列接続されると、リアクタンス特性が変化する。図4(d)に示すように、反共振点は周波数fa0から高い周波数fa1にシフトする。また、共振点の周波数fr0よりも低い周波数fa2に反共振点が生成される。直流点では、共振子R及びインダクタLは短絡状態となる。言い換えれば、リアクタンスはゼロ、又はゼロ付近の値となる。
【0032】
図5(a)は、共振子を例示する図であり、図5(b)は、インダクタが直列接続された共振子を例示する図である。図5(c)は、図5(a)に示した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図であり、図5(d)は、図5(b)に示したインダクタンスが接続された共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。なお、図5(a)は図4(a)と同じであり、図5(c)は図4(c)と同じであるが、比較のために再掲した。
【0033】
図5(b)に示すように、共振子RにインダクタLを直列接続した場合、リアクタンス特性が変化する。図5(d)に示すように、共振点は、周波数fr0より低い周波数fr1にシフトする。また反共振周波数fa0より高い周波数fr2に、新たな共振点が生成される。高周波数側では、共振子R及びインダクタLは開放状態となる。言い換えれば、リアクタンスは発散する。
【0034】
次に、ラダーフィルタにインダクタを接続した例について説明する。まず、ラダーフィルタの直列共振子にインダクタを並列接続した例について述べる。図6(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図6(b)は、フィルタF12を例示する回路図である。
【0035】
図6(a)に示すように、フィルタF11は、入力端子In、出力端子Out、直列共振子S1〜Sn、及び並列共振子P1〜Pnを備えるラダーフィルタである。直列共振子S1〜Snは、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列接続されている。直列共振子S1の一端は入力端子Inに接続され、他端は直列共振子S2の一端に接続されている。直列共振子S1の他端と直列共振子S2の一端との間には、並列共振子P1の一端が並列接続されている。並列共振子P1の他端は接地されている。同様に、直列共振子S2〜Sn、及び並列共振子P2〜Pnはラダー型に接続されている。直列共振子Snの一端は出力端子Outに接続され、直列共振子Snの一端と出力端子Outとの間には並列共振子Pnの一端が並列接続されている。なお、フィルタF11の段数は任意に定めることができる。
【0036】
図6(b)に示すように、フィルタF12は、直列共振子S11〜Sxを備える。直列共振子SxとインダクタLsとは並列接続されている。直列共振子Sxの一端及びインダクタLsの一端は、直列共振子Snの一端、及び並列共振子Pnの一端に接続されている。直列共振子Sxの他端及びインダクタLsの他端は、出力端子Outに接続されている。
【0037】
次にフィルタF12の特性について説明する。図7(a)は、インダクタを並列接続した共振子のリアクタンス特性を例示する概念図である。図7(b)は、フィルタF12の減衰特性を例示する図である。なお、減衰特性はシミュレーションしたものであり、図7(b)以降の減衰特性も同様にシミュレーションにより求めたものである。図7(a)は、図4(d)の横軸のスケールを図7(b)の横軸のスケールに合わせたものである。図7(b)の破線はフィルタF11の減衰特性、実線はフィルタF12の減衰特性をそれぞれ表す。
【0038】
図7(a)に示すように、反共振点は図4(b)の周波数fa0から周波数fa1へシフトする。図7(b)に示すように、反共振点のシフトに伴い、周波数fa1に減衰極が生成される。図7(a)に示すように、周波数fa2に新たな反共振点が生成される。図7(b)に示すように、新たな反共振点の生成に伴い、周波数fa2に新たな減衰極が生成される。また図7(a)に示すように、直流点では短絡が生じる。図7(b)中に楕円で囲んだように、直流点では短絡が生じることに伴い、周波数fa2より低い低周波数帯では、抑圧が劣化する。
【0039】
フィルタF12を分波器に搭載し、周波数fa2に生成される減衰極を相手方フィルタの通過帯域に配置することで、分波器のアイソレーション特性を高めることができる。図8は、分波器が備える2つのフィルタの減衰特性を例示する図である。ここでは、フィルタF12aとフィルタF12とを備える分波器を考える。フィルタF12aの回路構成の説明は省略するが、フィルタF12同様に、直列共振子と並列接続されたインダクタを備える。破線は、フィルタF12aの減衰特性を表す。実線は、フィルタF12の減衰特性を表す。
【0040】
図8に示すように、フィルタF12aは、フィルタF12よりも高周波数側に通過帯域を有し、また周波数fa3に減衰極を有する。フィルタF12が周波数fa2に有する減衰極が、フィルタF12aの通過帯域に位置する。フィルタF12aが周波数fa3に有する減衰極が、フィルタF12の通過帯域に位置する。この結果、高いアイソレーション特性を確保することができる。しかしながら図8に楕円で囲んだように、直流点近傍において、抑圧の劣化が生じることは図7(b)と同様である。例えばGHz帯のように、高周波数を使用周波数帯とする場合、このような低周波数帯における抑圧劣化は、フィルタ、分波器等の特性を大きく損なう可能性がある。低周波数帯における抑圧を改善するために、直列共振子を追加した例について説明する。
【0041】
図9(a)はフィルタF11を例示する回路図である。図9(b)は、フィルタF13を例示する回路図である。図6(a)及び図6(b)に示した構成と同じ構成については、説明を省略する。図9(a)は、図6(a)と同じものであるが、比較のために再掲した。なお、フィルタF11は、後述する図11(a)にも図示した。
【0042】
図9(b)に示すように、フィルタF13は、フィルタF11に直列共振子Sx1及びSx2、並びにインダクタLsを追加したものである。つまり、フィルタF13は、フィルタF12にさらに直列共振子を追加したものである。直列共振子Sx1の一端は直列共振子Snの一端に直列接続されている。直列共振子Sx1の他端は、直列共振子Sx2の一端及びインダクタLsの一端と接続されている。直列共振子SxとインダクタLsとは並列接続されている。直列共振子Sx2の他端とインダクタLsの他端とは、出力端子Outに接続されている。
【0043】
次にフィルタF13の特性について説明する。図10(a)は、直列共振子Sx1及びSx2並びにインダクタL1のリアクタンス特性を例示する概念図である。図10(b)は、フィルタF13の減衰特性を例示する図である。図10(b)の破線はフィルタF11の減衰特性、実線はフィルタF13の減衰特性をそれぞれ表す。
【0044】
図10(a)に示すように、周波数fr1、及び周波数fr1より低い周波数fr3に共振点が生成される。また、周波数fa1及びfa2に反共振点が生成される。言い換えれば、直列共振子Sx2とインダクタL1とを並列接続し、さらに直列共振子Sx1を直列に接続することで、周波数fr3に位置する新たな共振点が生成される。また直流点近傍では、直列共振子Sx1及びSx2並びにインダクタL1が開放状態となる。
【0045】
図10(b)に示すように、フィルタF13においては、周波数fa1及びfa2に減衰極が生成される。また、直流点近傍の開放状態の生成に伴い、低周波数帯における抑圧が改善している。しかしながら、周波数fr3の共振点の生成に伴い、周波数fr3において減衰量は極大値を示す。このため、フィルタF13のようなラダーフィルタでは、低周波数帯における抑圧が十分得られない可能性がある。
【0046】
次にラダーフィルタの並列共振子にインダクタを直列接続した例について説明する。図11(a)は、フィルタF11を例示する回路図である。図11(b)は、フィルタF14を例示する回路図である。図6(a)及び図6(b)に示した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0047】
図11(b)に示すように、フィルタF14は並列共振子にインダクタLp1を接続したラダーフィルタである。並列共振子P1〜Pnの他端には、インダクタLp1の一端が接続されている。インダクタLp1の他端は接地されている。このように、インダクタLp1は、並列共振子P1〜Pnとグランド端子との間に直列接続されている。次にフィルタF14の特性について説明する。
【0048】
図12(a)は、共振子とインダクタとのリアクタンス特性を例示する概念図である。図12(b)は、フィルタF14の減衰特性を例示する図である。図12(a)は、図5(d)の横軸のスケールを図12(b)の横軸のスケールに合わせたものである。図12(b)の実線はフィルタF14の減衰特性を、破線はフィルタF11の減衰特性をそれぞれ表す。
【0049】
図12(a)に示すように、共振点は図5(c)の周波数fr0から周波数fr1にシフトする。図12(b)に示すように、共振点のシフトに伴い、フィルタF14の通過帯域の低周波数端が周波数fr1にシフトする。図12(a)に示すように、周波数fr2に新たな共振点が生成される。図12(b)に示すように、新たな共振点の生成に伴い、周波数fr2に新たな減衰極が生成される。また、図12(a)に矢印で示すように、高周波数帯では開放状態が生成される。図12(b)に矢印で示すように、開放状態の生成に伴い、高周波数帯ではフィルタF14の抑圧が劣化する。
【0050】
高周波数帯における抑圧劣化を改善するために、並列腕に別のインダクタを追加することがある。図13(a)は、フィルタF11aを例示する回路図である。図13(b)は、フィルタF15を例示する回路図である。
【0051】
図13(a)に示すように、フィルタF11aは、直列共振子S1〜Sn及び並列共振子P1〜P(n−1)を備える。フィルタF11aは、フィルタF11から並列共振子Pnを除いたラダーフィルタである。
【0052】
図13(b)に示すように、フィルタF15は、直列共振子S1〜Sn、並列共振子P1〜P(n−1)、インダクタLp1及びLp2を備える。インダクタLp2の一端は、並列共振子P1の他端と直列接続されている。インダクタLp2の他端は、インダクタLp1の一端と直列接続され、並列共振子P2〜P(n−1)の他端と並列接続されている。このように、フィルタF15では、フィルタF14と比較して、図5(b)に示した共振子にインダクタを直列接続した構成が、さらに追加されることとなる。次にフィルタF15の特性について説明する。
【0053】
図14(a)は、並列共振子P1とインダクタLp2とのリアクタンス特性を例示する概念図である。図14(b)は、フィルタF15の減衰特性を例示する図である。図14(b)の実線はフィルタF15の減衰特性を、破線はフィルタF11の減衰特性をそれぞれ表す。フィルタF15においては、図12(a)に示すリアクタンス特性と、図14(a)に示すリアクタンス特性とが、重畳して影響する。
【0054】
図14(a)に示すように、共振点は図5(c)の周波数fr0から周波数fr4にシフトする。図12(b)に示すように、共振点のシフトに伴い、周波数fr4に減衰極が生成される。図14(a)に示すように、周波数fr5に新たな共振点が生成される。図14(b)に示すように、新たな共振点の生成に伴い、周波数fr5に新たな減衰極が生成される。なお、周波数fr4は、周波数fr1より高く、周波数fa0より低い。周波数fr5は、周波数fr2より高い。このようにフィルタF15によれば、高周波数帯においても、周波数fr5の減衰極付近では、部分的に高い抑圧を得ることができる。しかしながら図14(b)に矢印で示したように、周波数fr5よりさらに高周波数帯において、抑圧が大きく劣化する。
【0055】
以上のフィルタF12〜F15に示したように、インダクタを追加することで、減衰極を生成するようなラダーフィルタを形成することができる。しかしながら、例えば図7(b)及び図10(b)に示したように、フィルタF12及びF13によれば、低周波数帯において抑圧劣化が生じる。また図12(b)及び図14(b)に示したように、フィルタF14及びF15によれば、高周波数帯において抑圧劣化が生じる。このように、広帯域において高い抑圧を得ることは困難であった。
【0056】
次に、インダクタのインダクタンス値を変更した例について説明する。図15(a)は、フィルタF16aを例示する回路図である。図15(b)は、フィルタF16を例示する回路図である。
【0057】
図15(a)に示すように、フィルタF16aは、直列共振子S1〜S6、及び並列共振子P1〜P6を備える。直列共振子S1〜S6は、入力端子Inと出力端子Outとの間に直列接続されている。直列共振子S1の一端は入力端子Inと直列接続されている。直列共振子S1の他端は、直列共振子S2の一端と直列接続されている。直列共振子S2の他端は、直列共振子S3の一端と直列接続されている。直列共振子S3の他端と出力端子Outとは直列接続されている
並列共振子P1の一端は、入力端子Inと直列共振子S1との間に並列接続されている。並列共振子P2の一端は、直列共振子S1と直列共振子S2との間に並列接続されている。並列共振子P3の一端は、直列共振子S2と直列共振子S3との間に並列接続されている。並列共振子P4の一端は、直列共振子S3と出力端子Outとの間に並列接続されている。並列共振子P1〜P4各々の他端は接地されている。
【0058】
図15(b)に示すように、フィルタF16は、フィルタF16aに直列共振子SxとインダクタLsとを、入力端子Inと直列共振子S1との間に追加したラダーフィルタである。直列共振子SxとインダクタLsとは並列接続されている。なお、インダクタLsは、別の直列共振子に並列接続されてもよい。
【0059】
次にフィルタF16の減衰特性について説明する。図15(b)に示したインダクタLsのインダクタンス値Lsを変化させ、減衰特性を計算した。減衰特性の計算に用いた条件について説明する。各共振子は、弾性表面波共振子とし、インピーダンスは50Ωとした。1つの直列共振子の容量Csと、1つの並列共振子の容量Cpとの比(容量比)Cp/Csは0.6である。また容量の積(容量積)Cp×Csは、1/(ω0×R)2の73.5%とした。ω0はフィルタF16の中心角周波数であり、Rは整合すべきインピーダンスである。Rは例えば50Ωである。
【0060】
図16(a)は、フィルタF16の減衰特性を例示する図である。図16(b)は、図16(a)の通過帯域の拡大図である。図15(b)に示したインダクタLsのインダクタンス値Lsは、0.5nH、1nH、2nH、3nH、4nH、及び5nH、とした。太い点線は、フィルタF16aの減衰特性を表す。太い実線は、Ls=0.5nHの例の減衰特性を表す。太い破線は、Ls=1nHの例の減衰特性を表す。一点鎖線は、Ls=2nHの例の減衰特性を表す。二点鎖線は、Ls=3nHの例の減衰特性を表す。細い実線は、Ls=4nHの例の減衰特性を表す。細い破線は、Ls=5nHの例の減衰特性を表す。
【0061】
図16(a)及び図16(b)に示すように、通過帯域において、各例の減衰特性は重なっている。図16(a)に示すように、フィルタF16では、インダクタLsを設けることにより、低周波数側及び高周波数側に減衰極が生成される。低周波数側の減衰極を第1の減衰極、高周波数側の減衰極を第2の減衰極とする。インダクタLsのインダクタンス値Lsを小さくするほど、第1の減衰極は、高周波数側にシフトする。例えばLs=5nHの例では、約1500MHzに、第1の減衰極が生成される。これに対し、Ls=0.5nHの例では、通過帯域内である約1860MHzに第1の減衰極が生成される。
【0062】
また、例えばLs=5nHの例では、600〜1200MHzにおいて抑圧が劣化する。この抑圧の劣化は、図7(b)に示した直流点近傍の抑圧劣化に対応するものである。これに対し、図16(a)中に楕円で囲んだように、第1の減衰極の高周波数側へのシフトに伴い、低周波数帯における抑圧が改善した。Ls=0.5nHの例では、1200MHz前後において、減衰量がほぼ平坦になるような、高い抑圧が得られた。
【0063】
さらに、インダクタンス値Lsを小さくするほど、第2の減衰極も高周波数側にシフトした。例えばLs=2nHの例では約2700MHzに第2の減衰極が生成された。Ls=1nHの例では3600MHzを超えた位置に第2の減衰極が生成された。Ls=0.5nHの例では、5000MHzを超えた位置に第2の減衰極が生成された。またフィルタF16では、インダクタンス値Lsの大きさに関わらず、第2の減衰極よりも高周波数帯における抑圧の劣化は発生しなかった。なお、インダクタLsを設けないフィルタF16aでは、第2の減衰極が生成されなかった。
【0064】
フィルタF16のように、インダクタを直列共振子に並列接続し、かつインダクタンス値を変更することで、減衰特性は変化する。Ls=0.5nHの例のように、インダクタンス値を小さくすることで、第1の減衰極を、例えば通過帯域の低周波数端以上の周波数に生成することができる。図2(b)に示したように、ラダーフィルタの通過帯域の低周波数端は、並列共振子の共振周波数で定められる。つまり、インダクタンス値を小さくすることで、第1の減衰極を、フィルタF16の並列共振子P1〜P4のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上の周波数に生成することができる。これにより、図16(a)に示したように、低周波数帯における抑圧を改善することができる。また、高周波数帯においては第2の減衰極が生成され、かつ抑圧の劣化は生じない。特にインダクタンス値を小さくすることで、第2の減衰極をより高周波数側に生成することができる。
【実施例1】
【0065】
以上の考察に基づいた実施例1について説明する。図17は、実施例1に係る分波器を例示するブロック図である。
【0066】
図17に示すように、分波器100は受信フィルタ100a及び送信フィルタ100bを備えている。受信フィルタ100a及び送信フィルタ100bは共通に共通端子(アンテナ端子)102に接続されている。共通端子102はアンテナ104に接続されている。受信フィルタ100aは、アンテナ104から信号を受信し、受信した信号(受信信号)を例えばアンプ等に出力する。送信フィルタ100bは、アンプ等から入力された信号(送信信号)をアンテナ104に出力する。アンテナ104は信号を送信する。また、受信フィルタ100aは、送信信号が受信端子に流れることを抑制する。送信フィルタ100bは、受信信号が送信端子に流れることを抑制する。分波器100は、例えばW−CDMA(Wideband
Code Division Multiple Access) Band2方式に対応している。
【0067】
次に実施例1に係る分波器の構成について説明する。実施例1に係る分波器の回路構成について説明する。図18は、実施例1に係る分波器の回路構成を例示する構成図である。
【0068】
図18に示すように、実施例1に係る分波器100は、受信フィルタ100a及び送信フィルタ100b、インダクタLa及びLr、アンテナ端子Ant、受信端子Rx1及びRx2、並びに送信端子Txを備える。受信フィルタ100aの一端、送信フィルタ100bの一端、及びアンテナ端子Antは、互いに並列接続されている。インダクタLaの一端は、アンテナ端子Antに接続され、他端は接地されている。受信フィルタ100aの他端は受信端子Rx1及びRx2に接続されている。受信端子Rx1及びRx間にはインダクタLrが並列接続されている。受信フィルタ100aの回路構成の説明は省略する。
【0069】
送信フィルタ100bは、直列共振子S11〜S5、Sx、並列共振子P1〜P3、並びにインダクタLs、L1及びL2を備える。直列共振子S11〜Sxは、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に直列接続されている。アンテナ端子Antは送信フィルタ100bの出力端子に相当し、送信端子Txは送信フィルタ100bの入力端子に相当する。直列共振子S11の一端は、アンテナ端子Ant及び受信フィルタ100aに接続されている。直列共振子Sxの一端は送信端子Txに接続されている。直列共振子Sxには、インダクタLs(第1インダクタ)が並列接続されている。並列共振子P1の一端は、直列共振子S14と直列共振子S2との間に並列接続されている。並列共振子P1の他端はインダクタL1(第2インダクタ)の一端と直列接続されている。インダクタL1の他端は接地されている。このように、インダクタL1は、並列共振子P1とグランド端子との間に直列接続されている。並列共振子P2の一端は、直列共振子S3と直列共振子S41との間に並列接続されている。並列共振子P3の一端は、直列共振子S42と直列共振子S5との間に並列接続されている。並列共振子P2の他端と並列共振子P3の他端とは、インダクタL2(第2インダクタ)の一端に直列接続されている。インダクタL2の他端は接地されている。このように、インダクタL2は、並列共振子P2及びP3とグランド端子との間に直列接続されている。なお、送信フィルタF100bは、実施例1に係るラダーフィルタである。
【0070】
実施例1に係る分波器100の具体的な構成について説明する。図19(a)は、実施例1に係る分波器チップを例示する平面図であり、図19(b)は、実施例1に係る分波器チップを例示する断面図である。図19(c)は、実施例1に係る分波器を例示する平面図である。図19(b)は図19(a)のA1−A1に沿った断面図である。
【0071】
図19(a)及び図19(b)に示すように、分波器チップ101は、受信フィルタチップ100c、送信フィルタチップ100d、パッケージ基板120、及び封止部122を備える。図19(a)では封止部122を透視している。図19(b)に示すように、受信フィルタチップ100c及び送信フィルタチップ100dは、バンプ124によりパッケージ基板120上にフリップチップ実装されている。パッケージ基板120は、第1層120−1、及び第1層120−1下の第2層120−2、第2層120−2下の第3層120−3からなる三層構造の基板である。パッケージ基板120の上面、中間層及び下面の各々には配線層120a、120b、120c及び120dの各々が形成され、各配線層間はビア配線26により接続されている。配線層120bは、第1層120−1と第2層120−2との間に位置する。配線層120cは、第2層120−2と第3層120−3との間に位置する。配線層120dは、第3層120−3の下面に位置し、フットパッドとして機能する。パッケージ基板120に設けられた配線の一部、及びビア配線26の一部は、インダクタとして機能する。封止部122は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁体、又は半田等からなり、受信フィルタチップ100c及び送信フィルタチップ100dを封止する。パッケージ基板120は例えばセラミック等の絶縁体からなる。配線層120a〜120dは、例えばアルミニウム等の金属からなる。バンプ124は例えば金(Au)等の金属からなる。
【0072】
図19(c)に示すように、分波器チップ101は、配線層120cを介して、プリント基板130にフリップチップ実装されている。プリント基板130には、チップインダクタであるインダクタLr、及びLaが実装されている。これにより、実施例1に係る分波器100が形成される。なお図示は省略するが、アンテナ端子Ant、受信端子Rx1及びRx2、並びに送信端子Txは、プリント基板130に設けられている。分波器チップ101とインダクタLrとは配線131r−1及び配線131r−2により接続されている。また配線131r−1は、受信端子Rx1と接続されている。配線131r−2は、受信端子Rx2と接続されている。分波器チップ101とインダクタLaとは、配線131aを介して接続されている。配線131aは、アンテナ端子Antと接続されている。配線131sは、送信端子Txと接続されている。
【0073】
次に分波器が備えるフィルタの構成について説明する。図20は、実施例1に係る分波器が備える送信フィルタチップを例示する透視図である。
【0074】
図20に示すように、送信フィルタチップ100dは、圧電基板10、直列共振子S11〜Sx、及び並列共振子P1〜P3、アンテナ端子Ant1、送信端子Tx1、端子18a〜18cを備える。直列共振子S11〜Sx及び並列共振子P1〜P3は、弾性表面波(SAW:Surface
Acoustic Wave)共振子として形成される。
【0075】
直列共振子S11を例に、弾性表面波共振子の構成について説明する。直列共振子S11は、圧電基板10の上に、対向する一対の櫛型電極12を配置し、さらに櫛型電極12の両側に反射器14を配置することで構成される。櫛型電極12が電極指のピッチに応じた周波数の弾性波を励振する。反射器14は櫛型電極12から伝搬する弾性波を反射する。直列共振子S12〜Sx,及び並列共振子P1〜P3についても同様の構成である。
【0076】
各共振子が設けられた面とパッケージ基板120の上面とが対向するように、送信フィルタチップ100dはフリップチップ実装される。図13(b)に示したように、送信フィルタチップ100dとパッケージ基板120との間には空隙が形成されるため、各共振子による弾性波の励振は妨げられない。圧電基板10は、例えばリチウムタンタル酸(LiTaO3)又はリチウムニオブ酸(LiNbO3)等の圧電体からなる。櫛型電極、反射器及び各端子は、例えばアルミニウム(Al)等の金属からなる。
【0077】
直列共振子S11を構成する櫛型電極は、アンテナ端子Ant1と接続されている。アンテナ端子Ant1は、図17に示したアンテナ104と接続されている。並列共振子P1を構成する櫛型電極は、端子18aに接続されている。端子18aは、図18に示したインダクタL1と接続されている。並列共振子P2を構成する櫛型電極、及び並列共振子P3を構成する櫛型電極は、端子18bに接続されている。端子18bは、図18に示したインダクタL2と接続されている。直列共振子S5を形成する櫛型電極及び直列共振子Sxを形成する櫛型電極は、端子18cに接続されている。端子18cは、図18に示したインダクタLsと接続されている。直列共振子Sxを構成する櫛型電極は送信端子Tx1と接続されている。送信端子Tx1は、図18に示した送信端子Txに接続されている。各端子は、図19(b)に示したパッケージ基板120とのフリップチップ実装のための端子である。図中の白丸は、バンプ124が接続される箇所を示す。
【0078】
次にパッケージ基板120について説明する。図21(a)から図22(b)は、パッケージ基板を例示する平面図である。図21(a)は、パッケージ基板120の上面を示す。図21(b)は、パッケージ基板120の第1層120−1を透視し、第2層120−2の上面を示す。図22(a)は、第1層120−1及び第2層120−2を透視し、第3層120−3の上面を示す。図22(b)は、第1層120−1〜第3層120−3を透視した図を示す。
【0079】
図21(a)に示すように、第1層120−1の上面には配線層120aが設けられている。配線層120aは、アンテナ端子Ant2、送信端子Tx2、受信端子Rx1a及びRx2a、グランド端子GND1、端子20a、20b及び22a、配線20c及び22b、を備える。図21(a)中の破線で囲んだ領域は、送信フィルタチップ100dが実装される領域を示す。配線層120aのアンテナ端子Ant2は、送信フィルタチップ100dのアンテナ端子Ant1と接続される。配線層120aの送信端子Tx2は、送信フィルタチップ100dの送信端子Tx1と接続される。配線層120aの端子20aは、送信フィルタチップ100dの端子18aと接続される。配線層120aの端子20bは、送信フィルタチップ100dの端子18bと接続される。配線層120aの端子22aは、送信フィルタチップ100dの端子18cと接続される。端子20aは、グランド端子GND1と接続されている。端子20bは配線20cを介して、ビア配線26と接続されている。端子22aは配線22bを介してビア配線26と接続されている。
【0080】
図21(b)に示すように、第2層120−2の上面には配線層120bが設けられている。配線層120bは、アンテナパターンAnt3、送信パターンTx3、受信パターンRx1b及びRx2b、グランドパターンGND2、配線20d及び22cを含む。図19(b)において述べたように、配線層120aと配線層120bとは、ビア配線26により接続されている。具体的には、配線層120bのアンテナパターンAnt3は、配線層120aのアンテナ端子Ant2と接続されている。配線層120bの送信パターンTx3は、配線層120aの送信端子Tx2と接続されている。配線層120bの受信パターンRx1bは、配線層120aの受信端子Rx1aと接続されている。配線層120bの受信パターンRx2bは、配線層120aの受信端子Rx2aと接続されている。配線層120bの配線20dは、配線層120aの配線20cと接続されている。配線層120bの配線22cは、配線層120aの配線22bと接続されている。
【0081】
図22(a)に示すように、第3層120−3の上面には配線層120cが設けられている。配線層120cは、アンテナパターンAnt4、送信パターンTx4、受信パターンRx1c及びRx2c、グランドパターンGND3、配線20e及び22dを含む。配線層120bと配線層120cとは、ビア配線26により接続されている。配線層120cのアンテナパターンAnt4は、配線層120bのアンテナパターンAnt3と接続されている。配線層120cの送信パターンTx4は、配線層120bの送信パターンTx3と接続されている。配線層120cの受信パターンRx1cは、配線層120bの受信パターンRx1bと接続されている。配線層120cの受信パターンRx2cは、配線層120bの受信パターンRx2bと接続されている。配線層120cのグランドパターンGND3は、配線層120bのグランドパターンGND2と接続されている。配線層120cの配線20eは、配線層120bの配線20dと接続されている。配線層120cの配線22dは、配線層120bの配線22cと接続されている。また配線22dは、送信パターンTx4と接続されている。
【0082】
第3層120−3の下面には配線層120dが設けられている。配線層120dは、アンテナ端子Ant5、送信端子Tx5、受信端子Rx1d及びRx2d、グランド端子GND4、GND5、GND6、GND7a及びGND7bを含む。配線層120dと配線層120cとは、ビア配線26により接続されている。配線層120dのアンテナ端子Ant5は、配線層120cのアンテナパターンAnt4と接続されている。配線層120dの送信端子Tx5は、配線層120cの送信パターンTx4と接続されている。配線層120dの受信端子Rx1dは、配線層120cの受信パターンRx1cと接続されている。配線層120dの受信端子Rx2dは、配線層120cの受信パターンRx2cと接続されている。配線層120dのグランド端子GND4、GND5及びGND6は、配線層120cのグランドパターンGND3と接続されている。配線層120dのグランド端子GND7a及びGND7bは、配線層120cの配線20eと接続されている。
【0083】
端子20aは、インダクタL1の形成に寄与する。配線20c、20d及び20e、並びに上記の各配線を接続するビア配線26は、インダクタL2の形成に寄与する。配線22b、22c及び22d、並びに上記の各配線を接続するビア配線26は、インダクタLsの形成に寄与する。各配線の長さ等を変更することにより、インダクタンス値を調整することができる。
【0084】
次に実施例1に係るラダーフィルタの減衰特性について説明する。送信フィルタ100b、比較例1に係るフィルタF17、及び比較例2に係る共振回路C1、各々の減衰特性を計算した。まず比較例に係るフィルタの構成について説明する。
【0085】
図23(a)は、比較例1に係るフィルタを例示する回路図であり、図23(b)は、比較例2に係る共振回路を例示する回路図である。
【0086】
図23(a)に示すように、比較例に係るフィルタF17は、送信フィルタ100bから、直列共振子Sx及びインダクタLsを取り除いたラダーフィルタである。比較例2に係る共振回路C1は、直列共振子Sx及びインダクタLsにより構成したフィルタである。共振回路C1は、図4(b)に示したものと同じ構成である。送信フィルタ100bは、フィルタF17に共振回路C1を接続したフィルタである。
【0087】
送信フィルタ100b及びフィルタF17が備える並列共振子P1の共振周波数は1815MHz、並列共振子P2の共振周波数は1823MHz、並列共振子P3の共振周波数は1827MHzである。送信フィルタ100b及び共振回路C1が備える直列共振子Sx及びインダクタLsの反共振周波数は1836MHz及び2560MHzである。これは、例えば図4(d)において、fa1=2560MHz、及びfa2=1836MHzであることに相当する。反共振周波数fa1及びfa2は、並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数1827MHzより高い。
【0088】
図24(a)は、実施例1に係るラダーフィルタの減衰特性を例示する図である。図24(b)は、図24(a)の通過帯域の拡大図である。実線は実施例1に係るラダーフィルタ(送信フィルタ100b)の減衰特性を表す。破線は比較例1に係るフィルタF17の減衰特性を表す。点線は比較例2に係る共振回路C1の減衰特性を表す。
【0089】
図24(a)及び図24(b)に示すように、送信フィルタ100b及びフィルタF17は通過帯域を有する。通過帯域の低周波数端は、約1800MHzに位置する。また通過帯域の中心周波数は、約1880MHzである。例えば図2(b)に示したように、通過帯域の低周波数端は、並列共振子P1〜P3の共振周波数により定まる。中心周波数は、並列共振子P1〜P3の反共振周波数により定まる。
【0090】
図24(a)及び図24(b)に示すように、比較例2に係る共振回路C1は、反共振周波数に減衰極を有する。これは図4(d)に示した例と同様である。既述したように、送信フィルタ100bは、共振回路C1、つまり直列共振子SxとインダクタLsとを含む。このため送信フィルタ100bも、共振回路C1とほぼ等しい周波数に減衰極を有する。低周波数側(1830MHz付近)の減衰極を第1の減衰極B1、高周波数側(2600MHz付近)の減衰極を第2の減衰極B2とする。第1の減衰極B1は、並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数1827MHzより高い周波数に位置する。
【0091】
図24(a)に楕円で囲んだように、実施例1に係る送信フィルタ100bによれば、通過帯域より低周波数帯において抑圧の劣化が生じていない。これは、図16(a)と同様に、第1の減衰極B1を通過帯域の低周波数端より高周波数側に生成することで、劣化が抑制されたためである。
【0092】
図24(a)に示すように、送信フィルタ100b及びフィルタF17では、1700MHz付近及び2000MHz付近に減衰極が生成されている。1700MHz付近の減衰極を第3の減衰極B3、2000MHz付近の減衰極を第4の減衰極B4とする。第3の減衰極B3及び第4の減衰極B4は、並列共振子P1〜P3及びインダクタL1〜L3により生成される(図11(b)、図12(b)、図13(b)及び図14(b)参照)。フィルタF17では、2300MHz以上の高周波数帯において抑圧が劣化している。これは、図12(b)に示したフィルタF14及び図14(b)に示したフィルタF15と同様である。図24(a)中に円で囲んだように、送信フィルタ100bによれば、第2の減衰極B2が生成されるため、高周波数帯の抑圧を大きく改善することができる。
【0093】
実施例1に係る送信フィルタ100bは、直列共振子S11〜Sxと、並列共振子P1〜P3と、直列共振子Sxと並列接続されたインダクタLsと、を具備する。直列共振子SxとインダクタLsとは、通過帯域以下に第1の減衰極B1、通過帯域より高い周波数に第2の減衰極B2を生成する。第1の減衰極B1は、並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数以上であって、通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置する。この結果、低周波数帯における抑圧の劣化は抑制される。これにより広帯域において高い抑圧を得ることが可能となる。
【0094】
また、第2の減衰極B2により高周波数帯の抑圧劣化をキャンセルすることにより、広帯域おいて高い抑圧を得ることが可能となる。高周波数帯において高い抑圧を得るためには、第2の減衰極B2を、高周波数帯の好適な周波数に生成することが求められる。第1の減衰極B1が生成される周波数を調整することにより、第2の減衰極B2の位置も調整することができる。図24(a)に示したように、第1の減衰極B1が、第3の減衰極B3が位置する周波数以上、かつ通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置することで、第2の減衰極B2は高周波数帯の好適な位置に生成される。
【0095】
第1の減衰極B1は通過帯域以下の周波数に生成される。低周波数帯の抑圧を改善するため、第1の減衰極B1は並列共振子P1〜P3のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数以上であって、通過帯域の高周波数端以下に位置すればよい。また、第2の減衰極B2を高周波数帯に生成するために、第1の減衰極B1は第3の減衰極B3以上の高周波数側に位置すればよい。しかしながら、第1の減衰極B1により、通過帯域内の損失が増大する可能性がある。従って、第1の減衰極B1は、通過帯域の中心周波数付近よりも低周波数側に位置することが好ましい。言い換えれば、第1の減衰極B1は、最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の反共振周波数以下の周波数に位置することが好ましい。これにより、通過帯域における損失が増大することは抑制され、フィルタの特性は良好に維持される。
【0096】
なお第1の減衰極B1は、最も高い共振周波数を有する並列共振子P3の共振周波数より高い周波数に位置してもよいし、第3の減衰極B3が位置する周波数より高い周波数に位置してもよい。第1の減衰極B1は、通過帯域の高周波数端より低い周波数に位置してもよいし、並列共振子P3の反共振周波数より低い周波数に位置してもよい。
【0097】
直列共振子Sx及びインダクタLsにより生成される第1の減衰極B1は、通過帯域以下の周波数に位置する。従って、通過帯域の低周波数端付近の特性は、直列共振子Sx及びインダクタLsに大きく影響される。一般に、インダクタのQ値は共振子に比べて、例えば1桁〜2桁程度低い。従って、通過帯域の低周波数端の急峻性が劣化する可能性がある。この結果、例えば相手方フィルタの通過帯域における抑圧が十分に確保できない恐れがある。低いQ値による劣化の影響を抑制するため、分波器が備える第1フィルタと、第1フィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2フィルタとのうち、第1フィルタに実施例1に係るラダーフィルタを適用することが好ましい。分波器100では、受信フィルタ100aと比較して低周波数側に通過帯域を有する送信フィルタ100bに実施例1を適用する。これにより低いQ値による劣化の影響を抑制し、効果的に高い抑圧を得ることができる。また、例えば第4の減衰極B4を受信フィルタ100aの通過帯域に配置することで、分波器100のアイソレーション特性を高めることができる。特に、例えばW−CDMA Band2方式のように、受信帯域と送信帯域とが近接する方式に対応する場合、通過帯域には急峻性が求められる。
【0098】
なお、第1フィルタは送信フィルタ及び受信フィルタのいずれでもよく、例えば通信方式に応じて変更することができる。分波器が備えるフィルタの両方に実施例1に係るラダーフィルタを適用してもよいし、第2フィルタに適用してもよい。言い換えれば、分波器は、実施例1に係るラダーフィルタを少なくとも1つ備えればよい。
【0099】
直列共振子Sx及びインダクタLsにより、通過帯域より高周波数側に第2の減衰極B2が生成される。並列共振子P1〜P3及びインダクタL1〜L3により、通過帯域より低周波数側に第3の減衰極B3、高周波数側に第4の減衰極B4が生成される。これらの減衰極を用いて、送信フィルタ100b、分波器100及びRFモジュール110の特性を改善することができる。例えば第2の減衰極B2を、例えばワイヤレスLAN(Local
Area Network)及びブルートゥース(登録商標、Bluetooth :BT)に用いられる帯域等に配置することができる。また、例えば第4の減衰極B4を受信フィルタ100aの通過帯域に配置することで、分波器100の特性を改善することができる。さらに、減衰極が通過帯域の2倍波又は3倍波に対応する帯域に位置するとしてもよい。
【0100】
実施例1では、直列共振子が10個、並列共振子が3個としたが、共振子の個数は変更可能である。実施例1に係るラダーフィルタが備える直列共振子及び並列共振子は、それぞれ1又は複数でよい。また、例えば複数の直列共振子とインダクタLsとが並列接続されてもよい。言い換えれば、少なくとも1つの直列共振子とインダクタLsとが並列接続される。また、例えば並列共振子P1以外に、P2又はP3がインダクタと直列接続されてもよい。並列共振子P1〜P3のうち少なくとも1つの並列共振子とインダクタとが直列接続されればよい。並列共振子とインダクタとが接続された並列腕を増設することで、新たに減衰極を生成することができる。
【0101】
インダクタL1、L2及びLsを、パッケージ基板120内の配線層120a〜120dにより形成している。このため、分波器100の小型化が可能となる。なお、インダクタLa及びLrも、配線層120a〜120dにより形成してもよい。これにより更に分波器100の小型化が可能となる。
【0102】
実施例1では、共振子として弾性表面波共振子を用いた。共振子として、例えばラブ波共振子、ラム波共振子、弾性境界波共振子、又は圧電薄膜共振子(FBAR:Film
Bulk Acoustic Resonator)等を用いてもよい。
【実施例2】
【0103】
実施例2は、並列共振子に1つのインダクタを接続した例である。図25は、実施例2に係る分波器を例示する回路図である。図18において既述した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0104】
図25に示すように、実施例2に係る分波器200は、送信フィルタ200bを含む。送信フィルタ200bは、実施例2に係るラダーフィルタである。送信フィルタ200bは、インダクタL3(第2インダクタ)を備える。インダクタL3の一端は、並列共振子P1〜P3の他端と直列接続されている。インダクタL3の他端は接地されている。
【0105】
実施例2によれば、実施例1と同様に、広帯域において高い抑圧を得ることができる。また、例えば図12(b)に示したフィルタF14の減衰特性のように、インダクタL3を設けることにより、通過帯域の高周波数端付近に減衰極を生成することができる。しかしながら、高周波数帯において抑圧が劣化する恐れがある。実施例2によれば、第2の減衰極B2により高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【実施例3】
【0106】
図26は、実施例3に係る分波器を例示する回路図である。図18及び図25において既述した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0107】
図26に示すように、実施例3に係る分波器300は、送信フィルタ300bを含む。送信フィルタ300bは、実施例3に係るラダーフィルタである。送信フィルタ300bは、送信フィルタ200bにインダクタL4(第3インダクタ)を追加したラダーフィルタである。並列共振子P1の他端はインダクタL4の一端と直列接続されている。インダクタL4の他端は、インダクタL3の一端と直列接続されている。このように、インダクタL4は、1つの並列共振子P1とインダクタL3の一端との間に直列接続されている。
【0108】
実施例3によれば、実施例1と同様に、広帯域において高い抑圧を得ることができる。また、例えば図14(b)に示したフィルタF15の減衰特性のように、インダクタL3及びL4を設けることにより、高周波数帯において抑圧が大きく劣化する恐れがある。実施例3によれば、第2の減衰極B2により高周波数帯において効果的に高い抑圧を得ることができる。
【0109】
なお、並列共振子P2又はP3にもインダクタが直列接続されてもよい。つまり、並列共振子P1〜P3のうち少なくとも1つにインダクタが直列接続されればよい。
【実施例4】
【0110】
実施例4は、ラダーフィルタを備えるRF(Radio Frequency)モジュールの例である。図27は、実施例4に係るRFモジュールを例示するブロック図である。
【0111】
図27に示すように、RFモジュール110は、アンテナ104、アンテナスイッチ112、分波器バンク114、並びにアンプモジュール116を備える。RFモジュール110は、GSM(Global
System for Mobile Communication)通信方式及びW−CDMA通信方式等、複数の通信方式に対応しており、例えば携帯電話等に搭載される。GSM方式については、850MHz帯(GSM850)、900MHz帯(GSM900)、1800MHz帯(GSM1800)、1900MHz帯(GSM1900)に対応している。アンテナ104は、GSM方式及びW−CDMA方式いずれの送受信信号をも送受信できる。分波器バンク114は、複数の分波器114a,114b及び114cを含む。複数の分波器の各々は、複数の通信方式の各々に対応した分波器である。なお、分波器バンク114が備える分波器は2つでもよいし、4つ以上でもよい。アンテナスイッチ112は、送受信する信号の通信方式に応じて、分波器バンク114が備える複数の分波器から、通信方式に対応する分波器を選択し、選択された分波器とアンテナ104とを接続する。各分波器はアンプモジュール116に接続されている。アンプモジュール116は分波器の受信フィルタが受信した信号を増幅し、処理部に出力する。またアンプモジュール116は、処理部により生成された信号を増幅し分波器の送信フィルタに出力する。
【0112】
RFモジュール110は、例えば図19(c)に示したプリント基板130に代えてモジュールボードを用い、複数の分波器チップ101をモジュールボードに実装することで形成制される。
【0113】
複数の分波器114a〜114cの少なくとも1つは、実施例1〜3いずれかに係る分波器である。実施例4によれば、広帯域において高い抑圧を得ることができる。実施例4に係るモジュールとして、RFモジュール以外のモジュールを採用してもよい。このように、複数のフィルタを同一のモジュールボードに備え、かつ複数の帯域を利用するモジュールでは、広帯域における抑圧を確保することで、効果的に特性を改善することができる。
【0114】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
10 圧電基板
12 櫛型電極
14 反射器
100、200、300 分波器
100a 受信フィルタ
100b、200b、300b 送信フィルタ
100c 受信フィルタチップ
100d 送信フィルタチップ
104 アンテナ
120 パッケージ基板
120−1 第1層
120−2 第2層
120−3 第3層
120a、120b、120c、120d 配線層
L1、L2、L3、Ls インダクタ
S11、S12、S13、S14、S2、S3、S41、S42、S5、Sx 直列共振子
P1、P2、P3 並列共振子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、
前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、
少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続されたインダクタと、を具備し、
前記少なくとも1つの直列共振子と前記インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、
前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上であって、前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置することを特徴とするラダーフィルタ。
【請求項2】
前記第1の減衰極は、前記最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下の周波数に位置することを特徴とする請求項1記載のラダーフィルタ。
【請求項3】
入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、
前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、
少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続された第1インダクタと、
少なくとも1つの前記並列共振子とグランド端子との間に直列接続された第2インダクタと、を具備し、
前記少なくとも1つの直列共振子と前記第1インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、
前記少なくとも1つの並列共振子と前記第2インダクタとは、前記通過帯域よりも低い周波数に第3の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域より高い周波数に第4の減衰極を生成し、
前記第1の減衰極は、前記第3の減衰極が位置する周波数以上、かつ前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置することを特徴とするラダーフィルタ。
【請求項4】
前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下に位置することを特徴とする請求項3記載のラダーフィルタ。
【請求項5】
前記第2インダクタの一端は、全ての前記並列共振子と接続され、前記第2インダクタの他端は接地されていることを特徴とする請求項3又は4記載のラダーフィルタ。
【請求項6】
少なくとも1つの前記並列共振子と、前記第2インダクタの一端との間に直列接続された第3インダクタを具備することを特徴とする請求項5記載のラダーフィルタ。
【請求項7】
請求項1から6いずれか一項記載のラダーフィルタを少なくとも1つ備えることを特徴とする分波器。
【請求項8】
共通端子と第1の端子との間に接続された第1のフィルタと、
前記共通端子と第2の端子との間に接続され、前記第1のフィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2のフィルタと、を具備し、
前記第1のフィルタが前記ラダーフィルタであることを特徴とする請求項7記載の分波器。
【請求項9】
請求項1から6いずれか一項記載のラダーフィルタを少なくとも1つ備えることを特徴とするモジュール。
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、
前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、
少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続されたインダクタと、を具備し、
前記少なくとも1つの直列共振子と前記インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、
前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち、最も高い共振周波数を有する並列共振子の共振周波数以上であって、前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置することを特徴とするラダーフィルタ。
【請求項2】
前記第1の減衰極は、前記最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下の周波数に位置することを特徴とする請求項1記載のラダーフィルタ。
【請求項3】
入力端子と出力端子との間に直列接続された1又は複数の直列共振子と、
前記1又は複数の直列共振子と並列接続された1又は複数の並列共振子と、
少なくとも1つの前記直列共振子と並列接続された第1インダクタと、
少なくとも1つの前記並列共振子とグランド端子との間に直列接続された第2インダクタと、を具備し、
前記少なくとも1つの直列共振子と前記第1インダクタとは、前記1又は複数の直列共振子と前記1又は複数の並列共振子とにより生成される通過帯域以下の周波数に第1の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域よりも高い周波数に第2の減衰極を生成し、
前記少なくとも1つの並列共振子と前記第2インダクタとは、前記通過帯域よりも低い周波数に第3の減衰極を生成し、かつ前記通過帯域より高い周波数に第4の減衰極を生成し、
前記第1の減衰極は、前記第3の減衰極が位置する周波数以上、かつ前記通過帯域の高周波数端以下の周波数に位置することを特徴とするラダーフィルタ。
【請求項4】
前記第1の減衰極は、前記1又は複数の並列共振子のうち最も高い共振周波数を有する並列共振子の反共振周波数以下に位置することを特徴とする請求項3記載のラダーフィルタ。
【請求項5】
前記第2インダクタの一端は、全ての前記並列共振子と接続され、前記第2インダクタの他端は接地されていることを特徴とする請求項3又は4記載のラダーフィルタ。
【請求項6】
少なくとも1つの前記並列共振子と、前記第2インダクタの一端との間に直列接続された第3インダクタを具備することを特徴とする請求項5記載のラダーフィルタ。
【請求項7】
請求項1から6いずれか一項記載のラダーフィルタを少なくとも1つ備えることを特徴とする分波器。
【請求項8】
共通端子と第1の端子との間に接続された第1のフィルタと、
前記共通端子と第2の端子との間に接続され、前記第1のフィルタより高周波数側に通過帯域を有する第2のフィルタと、を具備し、
前記第1のフィルタが前記ラダーフィルタであることを特徴とする請求項7記載の分波器。
【請求項9】
請求項1から6いずれか一項記載のラダーフィルタを少なくとも1つ備えることを特徴とするモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−239039(P2012−239039A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106719(P2011−106719)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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