説明

ラッカーオーバースプレーを分離する分離デバイス

塗装施設のラッカーオーバースプレーを含んだ使用済み室内空気からラッカーオーバースプレーを分離する分離デバイスであって、異なる分離面(42a,42b)にそれぞれ割り当てられた電極装置(56)と、1つの電極装置(56)の幾つかの領域(56A,56B,56C)とのうちの少なくとも一方を具備した分離デバイスが提供される。幾つかの電極装置(56)と、1つの電極装置(56)の幾つかの領域(56A,56B,56C)とのうちの少なくとも一方には、互いに独立して高電圧が印加されうる。本発明の分離デバイスは、エネルギの節約を達成するのみならず、高電圧域における不具合の発見が容易になるとともに、高電圧域において故障が発生した場合において非常時の作動を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装施設のオーバースプレーを含んだ使用済みブース空気からラッカーオーバースプレーを分離する分離デバイスに関し、この分離デバイス(deposition apparatus)は、
a) 少なくとも1つの分離面を具備し、使用済みブース空気がこの分離面に沿って導かれうるとともに、この分離面が導電性を呈する態様で高電圧源の一極に接続されており、
さらに、
b) 空気の流れの中に配列されていて、分離面に関連付けられるとともに高電圧源の他極に接続された、少なくとも1つの電極手段を具備している。
【背景技術】
【0002】
塗料が手動または自動で製品に付与されるとき、一般的に固形物と、溶媒および結合剤のうちの少なくとも一方との両方を含む塗料の流れの一部は、製品に付与されない。この塗料の流れの一部は、専門家の間で「オーバースプレー(overspray)」と称されている。このオーバースプレーは、スプレーブースにおける空気流によって取り除かれ、分離処理部に供給される。
【0003】
特に塗料の消費が比較的大きいシステム、例えば車体を塗装するためのシステムの場合には、湿式分離システムを用いるのが好ましい。商業的に知られた湿式分離器においては、空気流を加速させるノズルに向けて上方から移動してくる使用済みブース空気とともに水が流れる。このノズルにおいて、ノズルを通過する使用済みブース空気が水とともに旋回される。オーバースプレーの粒子はこの処理の間に概ね水へと移り、その結果として、この空気が概ね浄化済みの状態で湿式分離器を離れるとともに、塗料オーバースプレーの粒子が水の中に存するようになる。そして、これら粒子は水の中から回収されうるし、或いは廃棄されうる。
【0004】
公知の湿式分離器の場合、要求される非常に多量の水を循環させるために比較的大量のエネルギが必要である。塗料結合用および接着剤除去用の化学薬品を大量に使用するとともに塗料スラッジを廃棄するので、洗浄水を用意するのに多大なコストがかかる。さらに、空気は、洗浄水との激しい接触の結果として非常に大量の水分を取り除き、このことにより、空気循環モードにおいて空気を用意するためのエネルギ消費が大きくなるという結果をもたらす。
【0005】
これとは対照的に、商業的に知られた冒頭で述べたタイプの分離デバイスの場合には、分離が乾燥状態で行われ、その乾燥状態において、通過する使用済みブース空気とともに運ばれる塗料オーバースプレーの粒子が電極手段によりイオン化する。そして、分離面と電極手段との間に形成される電場のために、塗料オーバースプレーの粒子が分離面に移動し、そこで分離される。
分離面に付着した塗料オーバースプレーの粒子は、例えば機械的に分離面から剥がされて移送されうる。
【0006】
これら公知の分離デバイスにおいて、すべての電極手段は、単一でかつ同一の高電圧源から同時に供給を受ける。高電圧域に不具合が発生した場合、障害箇所の発見は比較的複雑であり、望ましくないほど長時間の分離デバイスの停止が起こりうる。不具合が起きると、高電圧系全体をオフに切り替える必要があり、それにより能動的なフィルタ処理が分離デバイス全体において行われなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述したタイプの分離デバイスを発展させることであり、それにより、高電圧域において不具合が生じた場合に不具合の発見が容易になり、このようにして分離デバイス全体の停止時間を短縮する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明にしたがって、
c) 異なる分離面にそれぞれ割り当てられた、複数の電極手段と、1つの電極手段の複数の領域とのうちの少なくとも一方が付与されており、これらには高電圧が互いに独立して印加されうる、分離デバイスによって達成される。
【0009】
本発明にしたがって構成された分離デバイスにおいて、故障が高電圧域において発生した場合、不具合が発見された電極手段と電極手段の各領域とのうちの少なくとも一方を容易に確定し、それからオフに切り替えられる。この場合、デバイス全体を止める必要はなく、塗料オーバースプレーの十分な分離がなお可能である非常モードにおいて作動し続けられる。このタイプにおける望ましい第2の効果は、異なる電極手段と、同じ電極手段における異なる領域とのうちの少なくとも一方に対して高電圧を独立して供給できるようにするために、その時点で必要とされていない電極手段と電極手段の領域とのうちの少なくとも一方をオフに切り替えられることであり、その結果として大きなエネルギの節約が達成される。
【0010】
電極手段と、単一でかつ同一の電極手段の複数の領域とのうちの少なくとも一方に対して高電圧を互いに独立して印加するための第1の任意的形態において、これら電極手段と領域とのうちの少なくとも一方を単一でかつ同一の高電圧源に接続してもよい。したがって、この場合には単一の高電圧源のみが要求される。適切な接触器がスイッチングデバイスとして用いられうる。
【0011】
高電圧を伴う独立した衝突補集(impingement)に係る若干高コストな手法は、複数の電極手段のそれぞれと、1つの電極手段の複数の領域のそれぞれとのうちの少なくとも一方に対して別の高電圧源を与えることである。このようにすると、若干のコスト増と引き換えに、高電圧源の領域に不具合が生じた場合であっても非常時の作動が可能になる。したがって、他の電極手段と、電極手段の他の領域とのうちの少なくとも一方は、これらに与えられる高電圧源によってなお作動し続けることができる。さらに、この実施形態においては容量がより小さく、フラッシュオーバーにおいて発生する電荷がより小さくなる。
【0012】
エネルギ利用の観点からは、少なくとも1つの電極手段が、複数のコロナワイヤと、高電圧が独立して印加されうる領域としての平面状、好ましくは平坦なフィールド電極とを備えているのが得策である。オーバースプレーの粒子のイオン化がコロナワイヤの領域において生じる一方、分離面におけるオーバースプレーの粒子の分離は平面状のフィールド電極の領域において生じる。
【0013】
したがって、複数のコロナワイヤが複数の群に細分化されていて、各群は、高電圧が独立して印加されうる電極手段の領域をなしているのもまた特に有利である。この場合、高電圧域において不具合が生じた場合に望まれる冗長さが得られるのみならず、異なるレベルの高電圧を異なる群のコロナワイヤに印加することが可能になる。最も高い電圧は、一般に、平面状のフィールド電極から最も離れて位置するコロナワイヤの群に印加される。
【0014】
また、コロナワイヤを複数の群に細分化することには、個々の群が周期的な態様で付勢されうるようになるという利点がある。このこともある程度のエネルギ節約に関連している。さらに、電極手段の異なる領域が周期的にオンに切り替わることによって、分離面におけるオーバースプレーの粒子の付着性は、その付着性が望ましくないコロナワイヤに対向する領域において低下するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の例示的な実施形態に係るオーバースプレー分離デバイスを備えた表面仕上げシステムの塗装ブースを示す正面図である。
【図2】図1の塗装ブースの斜視図である。
【図3】図1の分離デバイスの2つの分離ユニットおよび3つの電極手段を示す斜視図である。
【図4】図3の電極手段を備えた2つの分離ユニットを示す鉛直方向の断面図である。
【図5】それぞれ第2の例示的な実施形態に係る2つの分離ユニットおよび3つの電極手段の斜視図である。
【図6】第2の例示的な実施形態に係る図5の分離ユニットおよび電極手段を複数個具備するオーバースプレー分離デバイスを示す斜視図である。
【図7】図3の電極手段を互いに独立した高電圧が印加される複数の領域に細分化したものを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の例示的な実施形態についてより詳細に以下に述べる。
まず始めに図1および図2を参照する。ここで、符号2は表面仕上げシステムにおける塗料ブースを全体として指しており、この塗装ブース内において、例えば塗装ブース2の上流に位置していて具体的には図示されない前処置部署において浄化されて脱脂された後の車体4が塗装される。
【0017】
塗装ブース2は、その頂部に配列されるとともに、鉛直方向の側壁8a,8bおよび水平方向のブース天井10によって境界決めされた塗装路6を備えており、塗装路6は、オーバースプレーを含む使用済みブース空気が下方に流れうるように端側部において下方に向かって開放している。ブース天井10は、従来の態様により空気供給室(図示せず)の下方の境界部としてのフィルタ天井を備えた構成になっている。
【0018】
公知であって本明細書においては詳述されないコンベヤシステム16を担持する鋼製構造体14は、側壁8a,8bの下方縁部を側面に配してなる塗装路6の下方開口部12の高さに配列されている。コンベヤシステム16は、塗装されるべき車体4を塗装路6の入口側から出口側まで移送するのに用いられうる。塗装路6の内部には塗料付与手段が形成されていて、これは具体的には図示されていないが、塗料を車体4に公知の態様で付与するために用いられうる。
【0019】
塗装路6の下方開口部12の下方には、塗装路6に向かって上方に開放している分離室18が形成されており、この分離室18において、塗装処理の際に生じる塗料オーバースプレーが分離される。
分離室18は、図2において視認可能なベースプレート20と、鉛直方向の2つの側壁22a,22bと、鉛直方向の2つの端壁とによって境界決めされているが、鉛直方向の2つの端壁は図1および図2において省略されている。
【0020】
分離室18の長手方向に並べて配列された複数の分離ユニット26を備えた分離デバイス24が分離室18内に配列されている。分離ユニット26のより詳細については後述する。
【0021】
2つの空気バッフル28a,28bは、分離デバイス24と塗装路6との間の分離室18の領域に形成されていて、分離室18の側壁22a,22bを始点としてまず下方に向かって収斂するとともに分離デバイス24に対面する端部領域において分離デバイス24の側方の境界部に向かって発散している。空気バッフル28a,28bおよび図示されない対応する空気バッフルは、これらの端部側において分離デバイス24に到るまで下方に延在している。
【0022】
分離ユニット26は、空気を分離デバイス24から下方に流出できるようにしてなる支持フレーム30に載置されている。さらに空気バッフル32が分離デバイス24の下方に形成されていて、分離室18内において分離デバイス24に沿って延在している。この空気バッフル32は、図1および図2において、分離室18の左側の側壁22aに対面する鉛直部32aと、分離室18の反対側の側壁22bの方向において斜め下方に延びる部分32bとを備えている。
【0023】
収集チャネル34は、空気バッフル32の鉛直部32aと、図1および図2における分離室18の左側の側壁22aとの間に配列されていて、図1においてその概略のみが示されている。収集チャネル34は、空気バッフル32の鉛直部32aに対して平行に延在するとともに、水平面に対して長手方向に傾斜している。
【0024】
図3および図4は、分離デバイス24の隣接する2つの分離ユニット26を示している。図から分かるように、分離ユニット26は、平行して互いに離間する2つの矩形の側方パネル36a,36bを備えていて、これらは上方の対向する端縁において湾曲部38によって互いに連結されており、湾曲部38の外形の内部形状の断面は半円に相当し、分離ユニット26の上側部を形成している。
分離ユニット26の湾曲部38は、その頂部においてオーバーフローチャネル40の形態をなすように形成されている。これについてはより詳しく後述する。
側方パネル36a,36bの各外表面は、分離面42a,42bをそれぞれ形成している。これらについてもより詳しく後述する。
【0025】
側方パネル36a,36bは、これらの下方縁部において、分離ユニット26の側方パネル36a,36bに対して平行に延びるとともに図3の手前側において分離ユニット26の第1の端側部46の方向に下方に傾斜する排出チャネル44a,44bをそれぞれ担持している。排出チャネル44a,44bは、分離ユニット26の側方パネル36a,36bを備えたこれらの端側部において終端している(図3参照)。排出チャネル44a,44bは、これらの端部48a,端部48bにおいて、分離ユニット26の第1の端側部46に対してそれぞれ開放している(図3参照)。
【0026】
図1および図2から分かるように、各分離ユニット26は、その第1の端側部46に配列された第1の端壁50aを備えている。参照符号が付与されていない分離ユニット26の反対側の端側部は、第2の端壁50bによって覆われている。分離ユニット26の端壁50a,50bは、関連付けられたオーバーフローチャネル40の端側部を遮断(close off)している。これら2つの端壁50a,50bは合成材料により形成される。分離ユニット26の第1の端壁50aには、2つの開口52a,52bが形成されており、排出チャネル44a,44bの各々が端部48a,48bにおいてこれら開口52a,52bにそれぞれ通じている。排出チャネル44a,44bに対向する各端壁50aの側部において、液滴受け54a,54bが開口52a,52bに取り付けられている。これら液滴受けは輪郭が定められた部分からなる形態をなしており、それらの断面は排出チャネル44a,44bの断面に対応する。
【0027】
分離デバイス24が塗装ブース2の分離室18内に配列されているとき、各分離ユニット26の液滴受け54a,54bは収集チャネル34の上方において突出している。
分離デバイス24において、隣接する分離ユニット26からなる対のそれぞれは、それらの間に維持される或る間隔を伴って配列されている。隣接する2つの分離ユニット26の間において、また、最も外側に位置する2つの分離ユニット26のそれぞれ開放している側方パネル36a,36bの場合には分離デバイス24内部において、それぞれ1つの電極手段56が延在している。
【0028】
各電極手段56は、互いに平行に延在する2つの直線状の電極ストリップ58a,58bを備えている。これら電極ストリップは、実施例においてグリッド電極の形態をなした平面電極62を電極手段56のフィールド部(field section)60に保持しており、このグリッド電極の縁部64a,64bは、電極ストリップ58a,58bの間において電極ストリップ58a,58bに直交して延在している。電極ストリップ58a,58bは、電極手段56のコロナ部(corona section)66において、放電電極として機能する複数のコロナワイヤ68を保持している。これらコロナワイヤ68は、電極ストリップ58a,58bにより予め定まる平面においてグリッド電極62の縁部64a,64bに対して平行に伸びていて、互いに等間隔に配列されている。
【0029】
図3および図4から分かるように、電極手段56の全体の範囲は分離ユニット26の側方パネル36a,36bの範囲に概ね対応している。電極手段56は、グリッド電極62の下方縁部64bが側方パネル36a,36bそれぞれの下方端の高さにおよそ配列されるように配列されている。
【0030】
分離デバイス24が作動しているときに、塗装処理の際に生じる塗料オーバースプレーから固体粒子を取り除ける分離液が、分離ユニット26の側方パネル36a,36bの各分離面42a,42bを排出チャネル44a,44bまで下方に流れる。
【0031】
この目的のために、この分離液は、分離ユニット26の湾曲部38におけるオーバーフローチャネル40に供給される。分離液は、オーバーフローチャネル40から、分離ユニット26の湾曲部38の湾曲した側部70a,70bにわたって移動する。湾曲した側部70a,70bは、オーバーフローチャネル40の隣を側方パネル36a,36bまで到るようにそれぞれ凝集性フィルムとして延びており、分離液は、やはり分離液の凝集性フィルムとしての分離面42a,42bを下方に流れる。
【0032】
電極手段56のコロナワイヤ68の数およびこれらの互いの間隔は、オーバースプレーの粒子の分離挙動の関数として変更されうる。例示的な当該実施形態において、4つのコロナワイヤ68が付与されていて、これらのうちの最も上方に位置するコロナワイヤ68は分離ユニット26の湾曲部38の隣に配列される一方で、その下方のコロナワイヤ68は、分離ユニット26の各側方パネル36a,36bにそれぞれ隣接する領域になお位置している。
【0033】
特に図7から導きだせるように、4つのコロナワイヤ68は2つの群68A,68Bに細分化されている。これらコロナワイヤ68は群68A,68B内において電気的に並列接続されていて、したがって、電極手段56の「領域」56A,56Bをそれぞれ形成している。これら領域56A,56Bの各々は、適切なスイッチングデバイス、例えば高電圧接触器を通じて高電圧源74に接続されていてもよい。スイッチングデバイスおよび高電圧源は、この例示的な実施形態の図面には示されていない。また、平面グリッド電極62は別の高電圧源74によって印加される。
【0034】
電極手段56の種々の領域56A,56B,56Cには周期的な態様で高電圧が印加され、それにより、例えばまず最も上方に位置する領域56Aが、次いでその最も上方に位置する領域に続く領域56Bが、次いでそれに続いてグリッド電極によって形成される領域56Cが、それぞれ高電圧源74に接続されるようになる。したがって、3つの領域56A,56B,56Cのうちの1つのみに高電圧がかかる。この周期的な高電圧の印加は、コロナワイヤ68の領域における所望のイオン化およびグリッド電極62の領域における分離を達成するのに十分である。しかし、こうすることは、連続的な高電圧の印加に比べてエネルギの節約を伴う。さらに、コロナワイヤ68に対向する分離ユニット26の領域においてオーバースプレーの粒子が既に分離されてしまうという比較的望ましくないことのリスクが低減する。
【0035】
それぞれの第2の例示的な実施形態として、図5は、変更した分離ユニット126および変更した電極手段156を示しており、図6は、前述した構成要素を具備する変更した分離デバイス124を示している。図1から図4における分離ユニット26、電極手段56および分離デバイス24のそれぞれの構成要素に対応する、分離ユニット126、電極手段156および分離デバイス124のそれぞれの構成要素には、同じ参照符号に100を足した符号がそれぞれ付されている。
【0036】
分離ユニット126は、とりわけ排出チャネル144a,144bが分離ユニット126の端側部146を越えて突出している点において、分離ユニット26とは異なる。突出部172a,172bは、前述した液滴受け54a,54bに相当するものであり、この理由のため、これらについては分離デバイス124に関連して説明を要さない。
【0037】
図6から分かるように、分離ユニット126の排出チャネル144a,144bの突出部172a,172bは、分離デバイス124の各端壁150aにおける開口152a,152bをそれぞれ通って延在している。
【0038】
図5は複数の高電圧源174のうちの1つを示しており、この高電圧源174は、各分離ユニット126の側方パネル136a,136bの間に配列されていて、電極手段156の領域156A,156B,156Cのうちの1つにそれぞれ接続されている。また、高電圧源174は、第1の例示的な実施形態に係る分離ユニット26のそれぞれについて対応して存在していてもよい。それぞれの場合において、個々の分離ユニット126および個々の電極手段156は、この態様で分離モジュール176を形成している。したがって、図1から図4において、個々の分離ユニット26および個々の電極手段56もまたそれぞれ分離モジュール76を形成する。
【0039】
また、図5において、ストラット178a,178b,178cが視認可能であり、これらは、分離ユニット126の底部、中央部および頂部のそれぞれにおいて、分離ユニット126の2つの側方パネル136a,136bの内面を互いに連結している。
【0040】
第2の例示的な実施形態に係る電極手段156の場合において、保護棒180が、最も上方に位置するコロナワイヤ168の上方において、電極ストリップ158a,158bに対して直交してそれらの間に伸びており、物体または粒子が、塗装路6から、コロナワイヤ168に接触するようになる電極手段156に落下しうるリスクを低減している。
【0041】
これら以外については、分離ユニット26、電極手段56および分離デバイス24に関してそれぞれ前述したことが、分離ユニット126、電極手段156および分離デバイス124にもそれぞれ対応して当てはまる。
ここで、図1から図4に係る分離デバイス24の例示のために、前述した分離デバイスの基本原理について説明する。図5および図6に係る分離デバイス124は塗装ブース2内において同様の態様で用いられる。
【0042】
車体が塗装路6において塗装されるとき、塗装路6内のブース空気は塗料オーバースプレーの粒子を含んでいる。これら粒子は、そのときになお液体であるか、または粘性を有し、或いは粘性を有する液体でありうるうが、既におおよそ固体になったものでもよい。塗料オーバースプレーを含んだ使用済みブース空気は、塗装路6の下方開口部12を通って分離室18内に流れる。分離室において、この空気は、空気バッフル28a,28bにより分離デバイス24の方向に進路を変えられ、そして隣接する分離ユニット26の間を通って下方空気バッフル32の方向に流れる。
コロナワイヤ68において公知の態様でコロナ放電が発生し、このコロナ放電は、そこを通過する使用済みブース空気中のオーバースプレーの粒子を効果的にイオン化させる。
【0043】
イオン化したオーバースプレーの粒子は、2つの隣接する分離ユニット26の接地された側方パネル36a,36bおよびそれらの間に延在するグリッド電極62を通り過ぎる。グリッド電極62と側方パネル32a,32bとの間に形成される電場のため、イオン化したオーバースプレーの粒子は分離ユニット26の分離面42a,42bにおいて分離され、これら分離面に沿って流れる分離液によってそこで取り除かれる。
【0044】
イオン化したオーバースプレーの粒子の一部には、分離ユニット26におけるコロナワイヤ68の領域において既に分離されるものがある。分離ユニット26のコロナワイヤ68と各側方パネル36a,36bとの間に存在する電場は、グリッド電極62の領域における電場よりも不均一であるが、しかしながら、この理由のため、対応する分離ユニット26におけるイオン化したオーバースプレーの粒子の分離は、より管理し易く、かつより効果的である。
【0045】
これら分離ユニット26の間を通過する際に浄化される空気は、図1および図2において右手に示された分離室18の側壁22bの方向に、下方空気バッフル32によって進路を変えられ、そこから空気は、必要に応じて特定の処置を受けた後に、新鮮な空気として再び塗装路6に供給されうる。この処置としては、特に温度および空気湿度の再調整、さらに必要に応じて空気中になお存在する溶剤の除去がありうる。
【0046】
分離ユニット26にわたって下方に流れるとともに、このときオーバースプレーの粒子を含んだ分離液は、分離ユニット26の排出チャネル44a,44bまで下方に移動する。排出チャネル44a,44bが傾斜している結果として、オーバースプレーの粒子を含んだ分離液は、各端壁50aに形成された開口52a,52bの方向に流れ、これらを通ってそこから液滴受け54a,54bを介して収集チャネル34に流入する。オーバースプレーの粒子を含んだ分離液は、収集チャネル34を通って塗装ブース2から流出する。そして、オーバースプレーの粒子を分離液から除去する浄化処理および再処理のために、或いは廃棄するために移送されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装施設のオーバースプレーを含んだ使用済みブース空気からラッカーオーバースプレーを分離する分離デバイスであって、
a) 少なくとも1つの分離面(42a,42b;142a,142b)を具備し、前記ブース空気が前記分離面に沿って導かれうるとともに、前記分離面が導電性を呈する態様で高電圧源(74;174)の一極に接続されており、
さらに、
b) 空気の流れの中に配列されていて、前記分離面(42a,42b;142a,142b)に関連付けられるとともに前記高電圧源(74;174)の他極に接続されうる少なくとも1つの電極手段(56;156)を具備する、分離デバイスにおいて、
c) 異なる分離面(42a,42b;142a,142b)にそれぞれ割り当てられた、複数の電極手段(56;156)と、単一でかつ同一の電極手段(56;156)の複数の領域(56A,56B,56C)とのうちの少なくとも一方が付与されており、これらには高電圧が互いに独立して印加されうることを特徴とする、分離デバイス。
【請求項2】
複数の電極手段(56;156)と、単一でかつ同一の電極手段(56;156)の複数の領域(56a,56b,56c)とのうちの少なくとも一方が、単一でかつ同一の高電圧源(74;174)にそれぞれ任意に接続されうることを特徴とする、請求項1に記載の分離デバイス。
【請求項3】
前記複数の電極手段(56;156)のそれぞれと、単一でかつ同一の電極手段(56;156)の前記複数の領域(56a,56b,56c)のそれぞれとのうちの少なくとも一方に別の高電圧源(74;174)が与えられる、請求項1に記載の分離デバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの電極手段(56;156)が、複数のコロナワイヤ(68;168)と、独立して高電圧を印加可能な領域としての平面状、好ましくは平坦なフィールド電極(62;162)とを具備することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の分離デバイス。
【請求項5】
複数のコロナワイヤ(68;168)が複数の群(68A,68B)に細分化されていて、各群は、高電圧が独立して印加されうる前記電極手段(15;156)の領域(56A,56B,56C)であることを特徴とする、請求項4に記載の分離デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−501819(P2012−501819A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525428(P2011−525428)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005864
【国際公開番号】WO2010/025811
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511056714)アイゼンマン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】